JP4006851B2 - 加熱調理器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、調理物から発生する調理ガスの脱臭を行う脱臭装置を備えた加熱調理器に関し、特に脱臭装置の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
加熱調理器は、調理物から発生する排出調理ガスが、不快臭を発したり周囲の壁紙を汚したりすることのないようにと、調理室に連通する排気筒に触媒を内部に配置した脱臭装置を取り付けて、きれいな空気として排出するための工夫が種々提案されている。
【0003】
図5は特開平4−29722号公報に記載されている従来の加熱調理器の断面を、また図6は図5における触媒装置の要部拡大断面を示す。調理器本体1は、その加熱室2に排気通路3を連接し、この排気通路3に触媒装置4を取り付けている。触媒装置4は、電気ヒータ5と、この電気ヒータ5により加熱される第1の酸化触媒6および第2の酸化触媒7から構成される。この第1の酸化触媒6および第2の酸化触媒7は、いずれも調理ガスが通る多数の小孔8を有する直方体形状物であり、丸棒を蛇行状に成形した電気ヒータ5を挟んでいる。電気ヒータ5が第1の酸化触媒6および第2の酸化触媒7を所定温度まで加熱する。加熱室2から排出される排出調理ガスは、第1の酸化触媒6および第2の酸化触媒7の小孔8を通る際に浄化される。
【0004】
一方、触媒は種々の構成品が提案されているが、特開平05‐301048号公報には、通電を可能としたエキスパンド加工(ラス網加工とも称す)のステンレス鋼薄板に絶縁性無機物を被覆して担体とし、この担体に触媒成分を担持させる構成が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の加熱調理器に使用されている触媒装置4は、大容積の第1の酸化触媒6および第2の酸化触媒7を小型の電気ヒータ5が挟む構成としたものである。そのため、第1の酸化触媒6および第2の酸化触媒7の加熱に電気ヒータ5は大きな電力と長い加熱時間を必要とし、また第1の酸化触媒6および第2の酸化触媒7の温度分布が悪いという問題があった。
【0006】
一方、新しく提案されている触媒構成品は通電を可能としたエキスパンド加工のステンレス鋼薄板に絶縁性無機物を被覆して担体とし、この担体に触媒成分を担持させるというもので、水分に対する電気絶縁対策が施こされていない。そのため、この構成品を加熱調理器の排気通路に配設しても、調理物から発生する水分が通電を可能としたステンレス鋼薄板の表面に付着し、この付着水分を介してステンレス鋼薄板と調理器本体が電気的に導通し、ステンレス鋼薄板に流れている電流が調理器本体に流れる恐れがあり、これを防ぐために検査を厳重にしたり、複雑な絶縁構成にしたりする必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、前記する従来例の問題を解消し、簡単な構成で電気絶縁性能の良い触媒装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、通電により発熱する金属薄板の上に絶縁層を介して臭気分解触媒を形成し、この触媒構成品を耐熱絶縁性の筐体内に配置した脱臭装置の外側周囲を、撥水耐熱絶縁性被膜を調理ガス排出面に形成した排気筒に取り付けた加熱調理器としたものである。
【0009】
上記構成によれば、通電される金属薄板を有する脱臭装置の外側を、撥水耐熱絶縁性被膜を調理ガス排出面に形成した排気筒に取り付けているため、排気筒や脱臭装置に付着する水分によって起こされる両者の電気的導通が、撥水耐熱絶縁性被膜の撥水作用および絶縁作用によって遮断される。従って、金属薄板に流れている電流が加熱調理器に流れることが防止される。また、発熱する金属薄板に絶縁層を介して臭気分解触媒が直接的に形成されているため、触媒の加熱が小電力ですみしかも短時間で均一に昇温できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、調理物を収納する調理室と、前記調理物を加熱する加熱熱源と、前記調理室に取り付けられ内面に撥水耐熱絶縁性被膜を設けた排気筒と、前記排気筒の調理ガスに含まれる臭気成分を分解する脱臭装置とを備え、前記脱臭装置は、ガス通過用空洞を内部に形成した耐熱絶縁性の筐体と、前記筐体のガス通過用空洞に配置した複数の開孔部を有し通電により発熱する金属薄板と、前記金属薄板の表面に絶縁層を介して設けた臭気分解触媒とで構成することで、実施することができる。
【0011】
そして、通電される金属薄板を有する脱臭装置の外側を、撥水耐熱絶縁性被膜を調理ガス排出面に形成した排気筒に取り付けているため、排気筒や脱臭装置に付着する水分によって起こされる両者の電気的導通が、撥水耐熱絶縁性被膜の撥水作用および絶縁作用によって遮断される。従って、金属薄板に流れている電流が加熱調理器に流れることが防止される。また、発熱する金属薄板に絶縁層を介して臭気分解触媒が直接的に形成されているため、触媒の加熱が小電力ですみしかも短時間に均一に昇温できる。
【0012】
また、撥水耐熱絶縁性被膜がフッソ樹脂を主成分とする被膜で構成した。そして、撥水性の優れたフッソ樹脂系の撥水耐熱絶縁性被膜を使用しているため、付着水分に起因する排気筒と脱臭装置との電気的絶縁が充分に行われ、金属薄板に流れている電流が加熱調理器に流れることが一層防止される。しかも、耐熱性の優れたフッソ樹脂系の撥水耐熱絶縁性被膜であるため、高温の調理ガスに曝されても劣化することなく長期間安心して使用できる。
【0013】
また、脱臭装置の金属薄板を通電した後、加熱熱源を作動させる構成とした。脱臭装置の金属薄板を加熱熱源の作動前に予め通電しておくと、金属薄板が瞬時に高温に保持されるため周囲の付着水分が蒸発し、付着水分に起因する排気筒と脱臭装置との電気的絶縁が充分に行われる。
【0014】
また、凹状に成形したセラミックからなる筐体底部と筐体蓋部を上下に配置して空洞を有する筐体を構成し、前記空洞をガス通過用空洞とするとともに、前記筐体底部および前記筐体蓋部の空洞側に溝を設け、金属薄板もしくは通気板を前記溝に略垂直に配置する構成とした。セラミック片を2個上下に配置して空洞を有する筐体を構成し、空洞側に設けた溝に金属薄板もしくは通気板を略垂直に配置すると、ガス漏れすることなくガスは効果的に臭気分解触媒を形成した金属薄板と接触し、臭気成分の分解率が高まる。また、筐体がセラミックでできているため断熱効果が高まり、臭気分解触媒の温度が高まって臭気成分の分解率がさらに高まる。
【0015】
また、金属薄板をラス網状に加工することで複数の開孔部を形成した後に更に波付け加工したステンレス薄体からなる構成とした。そして、箔体をラス網状に加工して複数の開孔部を形成しているため、熱容量や重量%が小さくしかも開孔率が大きい金属薄板となり、一層小さな消費電力で早い昇温スピードを得ることができる。また、金属薄板がステンレスであるので耐食性に優れるとともに、ラス網加工し更に波付け加工することで単位体積当たりの発熱面積が大きくなって高い温度が得られる。
【0016】
また、金属薄板がラス網状に加工したステンレス薄板であり、絶縁層が少なくともアルミニウムを10〜45重量%含む琺瑯とする構成とした。そして、琺瑯にアルミニウムが10〜45重量%含まれると、焼き付けた際にアルミニウムは体積膨張しその表面に酸化アルミニウムの被膜を形成して電気不導体となる。そのため琺瑯は多孔質からなる絶縁層となり、琺瑯を焼き付けた際の金属薄体の熱変形や琺瑯の剥離が生じない。
【0017】
また、金属薄板がラス網状に加工したステンレス薄板であり、絶縁層がアルミニウムの10〜45重量%と酸化チタンの10〜25重量%を少なくとも含む琺瑯とする構成とした。前述のようにアルミニウムが10〜45重量%含まれると琺瑯はその焼き付けで多孔質な絶縁層となり、酸化チタンの10〜25重量%の更なる含有で耐熱水性に優れた絶縁層となる。そのため、琺瑯を焼き付けた際の金属薄体の熱変形が無く、しかも蒸気に長時間曝されても剥離が生じない。
【0018】
また、水酸化アルミニウムを主成分とするゾルを付着させ焼成した担体層と、前記担体層に担持された白金とパラジウムのいずれかまたは両方を備えた臭気分解触媒を、絶縁層の表面に形成する構成とした。アルミニウムを10〜45重量%混合した琺瑯は、前述のようにステンレス製の金属薄板の表面に多孔質絶縁層となって密着している。そのため、水酸化アルミニウムのゾルを琺瑯に付着させると、このゾルは多孔質な琺瑯の空隙に浸入し、焼成によって多孔質なアルミナとなって強固に付着する。また、高活性な白金もしくはパラジウムの1種以上の貴金属は、この多孔質な担体層に担持されるため強固に付着する。従って、臭気分解触媒は、優れた浄化特性と密着性を示す。
【0019】
また、複数の開孔部を有するステンレスからなる非通電の通気板を、筐体のガス通過用空洞における金属薄板の後流側に、ガス通過方向に対して略垂直に配置するとともに、前記通気板の表面に、通気板を熱処理することによって形成した酸化被膜と、前記酸化被膜に水酸化アルミニウムを主成分とするゾルを付着させ焼成した担体層と、前記担体層に担持された白金とパラジウムのいずれかまたは両方を備えた臭気分解触媒を絶縁層の表面に形成する構成とした。通気板を金属薄板の後流側に配置すると、通気板によってガスの通過速度が低下して、前流側の金属薄板上の臭気分解触媒との反応時間が長くなり臭気の分解率が高まる。しかも、後流側の通気板の表面にも臭気分解触媒を形成しているため、触媒との反応回数が増え臭気成分の分解率がさらに高まる。
【0020】
また、高周波加熱装置を調理室に連通する外側空間に配置し、調理室と排気筒の間に、複数の開口孔を有する金属製の高周波電波漏洩防止材を取り付けて、高周波加熱機能も有する加熱調理機器とし、調理室と排気筒の間に、複数の開口孔を有する金属製の高周波電波漏洩防止材を取り付け、前記高周波電波漏洩防止材の開口孔と非開口孔部を合計した面積を、脱臭装置に形成したガス通過用空洞の開口面積と同一もしくは大きくする構成とした。そして、高周波加熱装置を併設するとその電波漏洩防止のため、複数の開口孔を有する金属製の高周波電波漏洩防止材を、調理室と排気筒の間に取り付ける必要がある。この高周波電波漏洩防止材は、調理ガスの排出に対して比較的圧力損失となるのだが、高周波電波漏洩防止材の開口孔と非開口孔部を合計した面積を、脱臭装置に形成したガス通過用空洞の開口面積と同一もしくは大きくすることで、高周波電波漏洩防止材の圧力損失が低減され、その分だけ脱臭装置を小型化できる。
【0021】
また、撥水耐熱絶縁性シートを介在させて脱臭装置を排気筒に取り付ける構成とした。撥水耐熱絶縁性シートの持つ弾力作用により脱臭装置が排気筒に隙間なく嵌合され、取り付ける際のガス洩れが防止される。また、排気筒の調理ガス排出面に形成した撥水耐熱絶縁性被膜に塗布ミスが有っても、その撥水作用により電気絶縁性低下が防止できる。
【0022】
また、撥水耐熱絶縁性シートの設定幅が、脱臭装置に取り付けた取り付け部の幅より、調理ガス流れの前流側に大きく設定する構成とした。撥水耐熱絶縁性シートの設定幅を調理ガス流れの前流側に大きく設定しているため、付着水分に起因する排気筒と脱臭装置との電気的絶縁が益々一層強固に行われ、金属薄板に流れている電流が加熱調理器に流れることが益々一層防止される。
【0023】
また、排気筒の前流側端部を耐熱絶縁シートを介在させて調理室外壁に取り付け、設定寸法を大きくした耐熱絶縁部材を介在させて電気絶縁した固定部材を用いて排気筒の外側と調理室外壁を固定する構成とした。そして、排気筒の前流側端部を耐熱絶縁シートで、排気筒の外側を耐熱絶縁部材を介在させて調理室外壁に固定しているので、これらが2重安全対策となって電気絶縁が充分に行われる。そのため、排気筒と加熱調理器との電気的絶縁が一層強固に行われ、金属薄板に流れている電流が加熱調理器に流れることが一層防止される。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
(実施例1)
図1は本発明の実施例である加熱調理器の断面図、図2は同加熱調理器に用いる脱臭装置の要部拡大断面図である。
【0026】
加熱調理器9は、調理物を収納する調理室10と、調理室10に調理物を出し入れするドア11と、調理物を加熱する加熱熱源12と、調理室10に連通しており調理物から発生する調理ガスを排出する排気筒13と、排気筒13の内面に形成した撥水耐熱絶縁性被膜14と、排気筒13に取付けた調理ガスに含まれる臭気成分を分解する脱臭装置15を備えている。
【0027】
脱臭装置15は、その外側の前流側周囲が脱臭装置の取り付け部16として利用されており、ガス通過用空洞17を内部に形成した耐熱絶縁性の筐体18と、ガス通過用空洞17に配置されておりガスが通過する複数の開孔部19を有し通電により発熱する金属薄板20と、金属薄板20の表面に形成した耐熱性の絶縁層21と、絶縁層21の表面に形成した臭気分解触媒22とで構成されている。
【0028】
以下、具体的実施例および各種検討結果について述べる。
本発明の加熱調理器9は、ステンレス製の排気筒13の調理ガス排出面に4フッ化エチレン樹脂の塗料を塗布して撥水耐熱絶縁性被膜14を形成し、この撥水耐熱絶縁性被膜14に脱臭装置の外側周囲に存在する取り付け部16を取り付けたものである。
【0029】
一方、脱臭装置15は、雲母製の筐体18と、ラス網状に加工し更に波付け加工したステンレス製の金属薄板20と、琺瑯製の絶縁層21と、水酸化アルミニウムを主成分とするゾルを付着させ焼成したアルミナ系の担体層とこの担体層に担持した白金とパラジウムの貴金属から構成される臭気分解触媒22で構成した。金属薄板20は、クロムの18重量%とアルミニウム3.5重量%を少なくとも含むフェライト系ステンレスであり、ラス網状でしかも波付け加工した板厚65μmの箔体である。金属薄板20はラス網状としたためその孔開口率は約85%であり、その表面に絶縁層20さらにその表面に臭気分解触媒22を形成しても孔開口率は75%であった。金属薄板20は、通電により発熱して臭気分解触媒22を加熱し、筐体18のガス通過用空洞17にガス通過方向に対して略垂直に配置されている。脱臭装置15は、特にその通電条件を断らない限り、加熱調理器9の通電と同時に通電することとしている。
【0030】
上記構成において、絶縁抵抗、消費電力および温度到達時間、調理ガスの洩れ状況、炭化水素除去率の4項目につき検討を行った。その結果につき述べる。
【0031】
絶縁抵抗は、調理室内で水300ccを30分かけて予め蒸発させて調理室内を湿った状態にしておき、その後に、若とり2枚重量500gを30分調理した際における金属薄板20と加熱調理器9間の絶縁抵抗を測定しその最低値を表したものである。なお、絶縁抵抗は、その測定最大値が300MΩである測定器を使用して測定したものである。
【0032】
消費電力および所定温度到達時間は、触媒が効果的に働く温度である400℃になるのに必要な脱臭装置15の消費電力と、この温度400℃に到達するまでの所用時間を求めたものである。
【0033】
調理ガスの洩れ状況は、若とり2枚を調理した際の、脱臭装置15以外の場所からの調理ガスの洩れ状況であり、脱臭装置15の圧力損失を知る手懸かりとして求めたものである。
【0034】
炭化水素除去率は、若とり2枚を調理した際の、調理室庫内濃度および脱臭装置出口濃度を炭化水素濃度として求め、そこから算出したものである。
その測定結果を(表1)に示す。
【0035】
なお、従来品は、触媒装置を、調理ガスが通る多数の小孔8を有する第1の酸化触媒6と第2の酸化触媒7と、第1の酸化触媒6と第2の酸化触媒7で挟まれた電気ヒータ5で構成し、ステンレス製の排気通路3の内側にそのまま取り付けたものである。第1の酸化触媒6と第2の酸化触媒7は、小孔8を多数有するハニカム成形であり、酸化アルミニウムを主成分とする担体層に白金とパラジウムを担持させた組成としたため、強度や成形性との兼ね合いでその孔開口率は45%が上限であった。電気ヒータ5は、ヒータ線を蛇行状金属管の内部に収納した電気絶縁対策品であり、通電により発熱して周囲にある第1の酸化触媒6と第2の酸化触媒7を加熱する。なお、触媒装置の見かけ寸法や白金とパラジウムの量は、本発明品と同一とした。
【0036】
参考品は、本発明品より撥水耐熱絶縁性被膜14を除外した加熱調理器である。
【0037】
【表1】
【0038】
本発明品は、従来品と比較して、消費電力が小さいうえに短時間に所定温度に上昇すること、脱臭装置以外からの調理ガスの洩れがないこと、炭化水素除去率が高いことの利点があることがわかる。また、本発明品は、参考品と比較して絶縁抵抗が高く、電気的に絶縁されていることがわかる。
【0039】
本発明品の優れた利点は、次の理由からである。
絶縁抵抗が高い理由は、撥水作用と電気絶縁作用の優れた4フッ化エチレン樹脂の被膜を排気筒の調理ガス排出面に形成し、この被膜に脱臭装置の外側を取り付けているため、排気筒の表面に付着した水分を介在させての脱臭装置と排気筒との電気的導通がこの被膜により遮断されるためである。なお、従来品は、予め電気絶縁された電気ヒータを使用しているため絶縁抵抗に優れていた。一方、参考品は、調理室内で予め蒸発させておいた水分を介しての電気導通が、通電により金属薄板が約150℃以上に保持されるまでの間(通電後の約10秒間)ある。そのため、この間は絶縁抵抗値が小さく、例えば金属薄板を通電した直後は1MΩ、通電後10秒後は5MΩの絶縁抵抗値を示した。そして、10秒を越えると絶縁抵抗値はどんどん大きくなり1分を過ぎると300MΩとなった。
【0040】
消費電力が小さくしかも短時間に所定温度に上昇する理由は、金属薄板が開口率の高いラス網でしかもこの箔体を更に波付け加工しているためであり、この加工により熱容量が小さくなりさらに単位体積当たりの発熱面積も大きくなっているのである。
【0041】
調理ガスの洩れが無い理由は、金属薄板をラス網状としその表面に絶縁層さらに臭気分解触媒を形成しても、孔開口率が75%と大きく、圧力損失がその分小さいためである。その点、従来品は、孔開口率が45%と小さいため圧力損失が大きくなり、調理ガスが加熱調理器の前面ドアから洩れる問題が発生した。
【0042】
炭化水素除去率が高い理由は、孔開口率が75%と高いため表面積が大きくなったためである。
【0043】
さて、金属薄板20の材料であるが、ニッケル−クロム合金、鉄−ニッケルークロム合金、鉄−ニッケル合金、鉄−クロム−アルミニウム合金、が適切である。これは、比抵抗が高いので発熱特性に優れていること、加工性に優れているのでその薄板に孔を開けてガスが通過する複数の開孔部を形成することが容易であるとの理由からである。
【0044】
一方、金属薄板20の表面に形成する絶縁層21の材料は、ガラス、琺瑯、アルミナゾル、シリカゾル、ポリシロキサン、ポリリン酸が密着性に優れている理由から適切であり、これらはその粘性水溶液を金属表面に付着させ焼成することで絶縁層を形成した。
【0045】
これらの組み合わせ品において、鉄−ニッケル−クロム合金、鉄−ニッケル合金、鉄−クロム−アルミニウム合金のステンレス製の金属薄板に、琺瑯製の絶縁層を形成した試作品は、特に密着性が優れている。この理由は、金属薄板に含有する鉄成分と琺瑯に含有されるガラス成分が琺瑯焼成中に反応して固着するためである。またこの中で特に、鉄−クロム−アルミニウム合金は、金属薄板に含有するアルミニウム成分が琺瑯に含有されるガラス成分と反応して強固に固着するため、密着性が最も優れていた。この鉄−クロム−アルミニウム合金は、クロムの13〜33重量%とアルミニウムの3〜8重量%を少なくとも含む組成品が市販させており、この組成範囲において特に組成を限定するものではないが、この市販品は耐熱性、耐食性、機械的強さ、比抵抗の点で他の金属発熱材料より優れる利点があった。
【0046】
一方、琺瑯は多孔質ほど焼き付けた際の金属薄体の熱変形が少なく良好である。実験に使用した多孔質琺瑯の組成を以下に示す。琺瑯は、ガラス成分15重量%と、金属酸化物系顔料30重量%と、アルミニウム35重量%と、酸化チタン20重量%から構成されており、各々の組成物はその配合割合が最大で±5重量%変動することが許容されているものを使用した。
【0047】
臭気分解触媒22は、白金、パラジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄などの酸化反応触媒活性物質が適切であり、これらは絶縁層21に直接担持する方法もしくはアルミナやシリカ系の担体を絶縁層21の表面に形成しこの担体に担持する方法で形成している。
【0048】
筐体18は、雲母(マイカとも称す)もしくはセラミックが適切である。
撥水耐熱絶縁性被膜14は、フッソ樹脂、シリコン樹脂、ポリシリキサン樹脂が適切である。
【0049】
(実施例2)
実施例2は、排気筒に形成する撥水耐熱絶縁性被膜の材質を変えて、絶縁効果を確認したものである。
【0050】
実験は、調理室内で水300ccを30分かけて予め蒸発させて調理室内を湿った状態にしておき、その後に、若とり2枚重量500gを30分調理した際における金属薄板20と加熱調理器9間の絶縁抵抗値を経過時間ごとに測定し、その最低絶縁抵抗値の大小で効果の判定を行った。沿面距離を10mmとして撥水耐熱絶縁性被膜の材質を変化させて、加熱調理器の動作中における最低絶縁抵抗を測定した結果を(表2)ないし(表15)に示す。
【0051】
以下、表中における「判定」の記号は下記に示す相対的な基準を示す。すなわち、◎非常に良好、○良好、△普通、×不可である。
【0052】
(表2)において撥水耐熱絶縁性被膜が、フッソ樹脂であると絶縁抵抗特性に優れることがわかる。また、フッソ樹脂が60重量%以上含有した樹脂であると、絶縁抵抗は充分に確保されることがわかる。また、耐熱性の有るフッソ樹脂であるため、特に耐熱性が優れた4フッ化エチレン樹脂であると、調理温度の250℃前後でも優れた耐久性を長期間維持できる。
【0053】
【表2】
【0054】
(実施例3)
加熱調理器を長期間使用すると、撥水耐熱絶縁性被膜に調理物残渣が付着してその撥水性が低下してくる。そのため、この長期間使用に伴う撥水性低下を予測して、撥水耐熱絶縁性被膜は絶縁に必要な沿面距離に余裕をもたせてその寸法および形状を決めている。しかしながら、加熱調理器の使用形態が当初予想した以上に過酷であり、長期間使用に伴う撥水性低下が当初の予想以上に過酷であった場合、電気絶縁性の低下が起こることが予想される。
【0055】
そこで、この予想できない加熱調理器の過酷使用形態に伴う電気絶縁性低下が起こった際の、漏電の危険性を低減できる手段の検討を行った。
【0056】
漏電の危険性を低減するには、付着水分が存在する環境でおいて使用する電源の印加電力値を低くするとよい。そのためには、小電力で動作する脱臭装置の金属薄板を予め通電しておいて付着水分を除いておき、付着水分が無い環境になったら大電力で動作する加熱熱源を作動させる手段が有効である。
【0057】
実施例3は、撥水耐熱絶縁性被膜の撥水性低下を沿面距離の減少と想定し、脱臭装置の金属薄板を予め通電した後、加熱熱源を作動させる方法の絶縁効果を確認したものである。
【0058】
実験は、調理室内で水300ccを30分かけて予め蒸発させておいて調理室内を多湿状態にしておき、その後、若とり2枚重量500gを30分調理した際における金属薄板20と加熱調理器9間の最低絶縁抵抗値を測定し、その最低絶縁抵抗値の大小で効果の判定を行った。撥水耐熱絶縁性被膜として用いたフッソ樹脂被膜の沿面距離および、金属薄板の事前通電の有無が、加熱調理器の動作中における最低絶縁抵抗に与える影響を(表3)に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
撥水耐熱絶縁性被膜の沿面距離を減少させて撥水性を低下させると絶縁抵抗が低下するが、金属薄板を事前通電すると絶縁抵抗が元の特性に戻ることがわかる。この効果について説明する。脱臭装置の金属薄板を加熱熱源の作動前に予め通電しておくと、金属薄板が瞬時に高温に保持されるため周囲の付着水分が蒸発する。そのため、加熱熱源の作動前に、付着水分に起因する排気筒と脱臭装置との電気的絶縁が充分に行われている。
【0061】
一方、金属薄板の事前通電を行なわないで加熱熱源を作動させると、調理室内に残存している多量の水分が蒸発して排気筒の調理ガス排出面や脱臭装置の金属薄板に付着し、この付着水分を介して電気的導通が誘発される。そのため、通電により金属薄板が150℃前後以上まで昇温されるまでの10秒間は、付着水分を介しての電気的導通が幾分有る。そのため、撥水耐熱絶縁性被膜の沿面距離減少があると、絶縁抵抗の低下が起こる。
【0062】
(実施例4)
実施例4は、筐体の構造について検討したものである。
【0063】
図3は、本発明の実施例の加熱調理器で使用する脱臭装置の分解斜視図である。 筐体は、凹状に成形したセラミック製の筐体底部23と、平板状に成形したセラミック製の筐体蓋部24とで構成されており、筐体底部23の上部に筐体蓋部24を配置してガスが通過するためのガス通過空洞17をその内部に形成している。一方、筐体底部23の空洞側窪みには溝25が設けられており、筐体蓋部24の空洞側に設けられた溝(記載せず)とともに、金属薄板20がこの溝25へのはめ込みで略垂直に配置されるようにしている。このため、ガス漏れすることなくガスは効果的に臭気分解触媒を形成した金属薄板と接触し、溝25の無い場合より臭気成分の分解率が高まった。また、筐体がセラミックでできているため断熱効果が高まり、マイカで構成した場合より臭気分解触媒の温度が高くなって臭気成分の分解率が向上した。なお、筐体蓋部24も逆凹状に成形しても同様の効果が有ることは言うまでもない。
【0064】
(実施例5)
実施例5は、金属薄板の形状と配置方法を変えて効果を確認したものである。
【0065】
金属薄板は、ラス網状に加工することで複数の開孔部を形成した後に更に波付け加工したステンレス製箔体であり、その表面に絶縁層さらにその表面に臭気分解触媒が形成されている。そして、図3のように金属薄板20は、筐体底部23と筐体蓋部24で構成させる筐体のガス通過用空洞17にガス通過方向に対して略垂直に配置されている。
【0066】
形状と配置方法を変えた金属薄板を試作しその効果を前述と同様に、消費電力50W時の最大到達温度、調理ガスの洩れ状況、炭化水素除去率(HC除去率と記す)の3項目で判定した結果を(表4)に示す。
【0067】
試作番号1は、図3記載の実施例であり、ラス網状に加工したのち更に波付け加工したステンレス製箔体を、ガス通過方向に対して略垂直に配置している。
【0068】
試作番号2は、プレスで孔あけ加工したのち更に波付け加工したステンレス製箔体を、ガス通過方向に対して略垂直に配置したものである。
【0069】
試作番号3は、ラス網状に加工したステンレス製箔体を、ガス通過方向に対して略垂直に配置したものである。
【0070】
試作番号4は、ラス網状に加工したのち更に波付け加工したステンレス製箔体を、ガス通過方向に対して略平行に配置したものである。
【0071】
なお、いずれの試作番号品も、ステンレス製箔体の表面には、琺瑯製の絶縁層と、酸化アルミニウムを主成分とする担体層とこの担体層に担持した白金とパラジウムの貴金属から構成される臭気分解触媒が、順に形成されており、脱臭装置として加熱調理器に取り付けて効果を確認した物である。
【0072】
【表4】
【0073】
試作番号1は、金属薄板の箔体をラス網状に加工して複数の開孔部を形成しているため、熱容量や重量%が小さくしかも開口率が大きい金属薄板が得られ、圧力損失が低減して調理ガスが加熱調理器の前面ドアから洩れる問題が発生しなかった。しかも、更に波付け加工しているため、単位体積当たりの発熱面積が大きくなって高い温度が得られ、炭化水素除去率の分解率が高まる。また、金属薄板がガス通過方向に対して略垂直方向に配置されているため、ラス網に設けた開孔部を効果的にガスが通過して触媒との接触が良くなり、炭化水素除去率が一層高まった。
【0074】
試作番号2は、プレスで孔あけ加工したため孔開口率が最大でも50%であった。そのため、抵抗が小さくなって到達温度がやや低くなり炭化水素除去率が低下するとともに、逆に孔開口率を大きくできないため圧力損失が大きくなり調理ガスが加熱調理器の前面ドアから洩れる問題が発生したため、不適格である。
【0075】
試作番号3は、金属薄板の波付け加工が無いため、単位体積当たりの発熱面積が小さくなって低い温度となり、炭化水素除去率も低くなることがわかる。
【0076】
試作番号4は、金属薄板をガス通過方向に対して略平行に配置しているため、相当量のガスが金属薄板と金属薄板との間を通過して、触媒との接触が悪くなり炭化水素除去率も低くなることがわかる。
【0077】
(表4)の結果より、試作番号1は金属薄板の形状と配置方法として最適な構成であった。
【0078】
(実施例6)
実施例6は、絶縁層を多孔質にするために琺瑯に混合する材料とその混合量を検討したものである。
【0079】
実験はまず、クロムの18重量%とアルミニウム3.5重量%を少なくとも含むフェライト系ステンレスの板厚65μm箔体を、Lwが5mmでSwが2mmできざみ幅0.2mmのラス網に加工した。そしてこのラス網加工品(以下に、特に限定しない限りこの加工品を使用)に、30重量%の多孔質形成材を少なくとも含む琺瑯を850℃で焼き付けた。そしてこの膜物性を、電気絶縁性、琺瑯の多孔度、琺瑯を焼き付けた際の金属薄体の熱変形度、耐蒸気性(温度80℃で相対湿度95%雰囲中に100時間晒す)で評価した。試作に用いた多孔質形成材の種類とその評価結果を(表5)に示す。
【0080】
多孔質形成材としてアルミニウムを混入した試作番号1の琺瑯層は、電気絶縁性に問題がないとともに、多孔度に優れるため琺瑯を焼き付けた際の金属薄体の熱変形が無く、しかも剥離がない。そのため、多孔質形成材として最適であった。
【0081】
アルミニウムは、融点が660℃であるため琺瑯焼成温度850℃では完全に溶融し、溶融後はその表面に酸化アルミナの被膜が形成される。この表面に形成された酸化アルミナ被膜により、試作番号1の琺瑯層は、電気絶縁性が充分に確保できていた。一方、アルミニウムは、熱膨張係数の値(この値に10の−6乗を乗じた値が真の値、単位は1/deg)が24であり、フェライト系ステンレスの11、琺瑯に含まれるガラス成分の7〜12に比べてその値が非常に大きい。この熱膨張係数の大きさが多孔度の優れた琺瑯を形成する源であり、琺瑯が多孔質なため金属薄体はその熱変形が防止されている。また琺瑯は、優れた多孔度を有するにもかかわらず、金属薄体から剥離していない。これは、アルミニウムが融点660℃で溶融して琺瑯と金属薄体の密着を助けているためである。
【0082】
【表5】
【0083】
次に、多孔質形成材であるアルミニウムの量を変化させた琺瑯を試作し、その膜物性を検討した。実験は、アルミニウムの量を変化させた琺瑯を使用すること以外は、前述と同じである。その結果を(表6)に示す。
【0084】
【表6】
【0085】
アルミニウムを10〜45重量%混入してその膜性状を多孔質とした試作番号3〜7の琺瑯層は、電気絶縁性に問題がない、多孔度に優れるため琺瑯を焼き付けた際の金属薄体の熱変形が無い、外観的にも琺瑯の剥離がない、の利点があり最適な組成であった。さらに、抵抗の変化は極めて微小であり実用上問題とならないレベルであった。また特に、アルミニウムを20〜40重量%混入した琺瑯は、上記利点が極めて優れていた。一方、アルミニウムが10重量%未満の琺瑯だと、多孔度に乏しいため琺瑯を焼き付けた際の金属薄体の熱変形が発生した。また、アルミニウムが45重量%を越える琺瑯層だと、多孔質過ぎて金属薄体に対する密着性が確保されなかった。
【0086】
さて、本実施例で用いた琺瑯は、上記量のアルミニウム以外に、溶融するガラス成分(シリカが略9割であり少量の酸化ナトリウムや酸化カリウムや酸化カルシウムなどを含有)と、酸化マンガンと酸化鉄を略等量混合した金属酸化物系顔料が、残部成分として混合されている。この残部成分は、ガラス成分の1部に対して金属酸化物系顔料を3〜4部の割合で混合した組成物であり、この組成物が一般に琺瑯と呼ばれておりステンレスとの密着性を高める作用がある。
【0087】
一方、アルミニウムを10〜45重量%と変化させる範囲において琺瑯層の残部成分を、ガラス成分の1部に対して金属酸化物系顔料を2〜5部と変化させたり、ガラス成分におけるシリカ組成を9〜6割まで変化させたり、金属酸化物系顔料における酸化マンガンの組成を8〜3割まで変化させたり酸化亜鉛もしくは酸化コバルトを略等量づつ更に混合して同様の検討を行ったが、上記の利点が同様に得られた。以上のことより、琺瑯層中にアルミニウムが10〜45重量%混合されることが、この優れた利点の主原因と思われる。
【0088】
また、金属薄体の材料はステンレスを使用する範囲において特に限定されるものでなく、ステンレスであれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0089】
(実施例7)
実施例7は、耐蒸気性向上のために琺瑯に混合する酸化チタンの量を検討したものである。
【0090】
実験は、アルミニウムおよび酸化チタンの混合量を変化させた琺瑯を使用すること以外は、前述の実施例6と同じである。膜物性の評価方法は、琺瑯の多孔度、琺瑯を焼き付けた際の金属薄体の熱変形度、耐蒸気性(温度80℃で相対湿度95%雰囲中に100時間晒す)で評価した。その結果を(表7)に示す。
【0091】
【表7】
【0092】
アルミニウムを10〜45重量%混合した物にさらに酸化チタンを10〜25重量%混入した琺瑯層は、多孔度に優れるとともに琺瑯を焼き付けた際の金属薄体の熱変形が無く、蒸気に長時間曝されされた際の密着性が極めて優れる、利点があった。さらに、抵抗の変化は極めて微小であり実用上問題とならないレベルであった。また特に、アルミニウムの30〜40重量%と酸化チタンの15〜20重量%を混入した琺瑯層は、上記利点が特に優れていた。一方、酸化チタンが15重量%未満の琺瑯だと耐蒸気性は期待するほど向上しないし、酸化チタンが25重量%を越える琺瑯だと金属薄体の熱変形が低下する傾向にあるため、混合する酸化チタンの量としては好ましくなかった。
【0093】
本実施例で用いた琺瑯は、上記量のアルミニウムおよび酸化チタン以外に、ガラス成分の1部に対して金属酸化物系顔料を2〜3部の割合で混合した組成物が残部成分として混合されており、琺瑯の溶着を助けている。ガラス成分は、シリカが9割で、ナトリウムやカリウムやカルシウムやマグネシウムの酸化物が残部である。また金属酸化物系顔料は、酸化マンガンと酸化鉄を略等量混合したものである。
【0094】
一方、アルミニウムの10〜45重量%と酸化チタンの10〜25重量%の変化範囲において琺瑯の残部成分を、ガラス成分の1部に対して金属酸化物系顔料を1〜4部と変化させたり、ガラス成分におけるシリカ組成を9〜6割まで変化させたり、金属酸化物系顔料における酸化マンガンの組成を8〜3割まで変化させたり酸化亜鉛や酸化コバルトを略等量づつ更に混合して同様の検討を行っても、優れた密着性が同様に得られた。
【0095】
以上のことより、琺瑯中にアルミニウムの10〜45重量%と酸化チタンの10〜25重量%混入が、この優れた密着性の主原因と思われる。
【0096】
また、金属薄体の材料はステンレスを使用する範囲において特に限定されるものでなく、ステンレスであれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0097】
(実施例8)
実施例8は、金属薄板および絶縁層に対して密着性に優れた臭気分解触媒の材料組成について検討したものである。
【0098】
検討は以下の方法で行った。まず、ラス網状に加工したステンレス製の金属薄板の表面に、アルミニウムの混合量を変化させた琺瑯を850℃で焼き付け絶縁層とした。次に絶縁層の表面に、水酸化アルミニウムのゾルを付着させ600℃で焼成してアルミナの担体層とし、最後にこの担体層に白金やパラジウムの貴金属を担持させ600℃で焼き付けて臭気分解触媒とした。そして筐体に2層構造として収納して脱臭装置とし、加熱調理器に取り付けて炭化水素除去率(HC除去率と称す)、を評価した。また、高温多湿環境(温度80℃で相対湿度95%)に200時間放置した際の、絶縁層、臭気分解触媒の密着性をテープ剥離方法で評価した。その結果を(表8)に示す。
【0099】
アルミニウムを10〜45重量%混合した琺瑯層に、水酸化アルミニウムのゾルを付着させ焼成してアルミナの担体層とし白金やパラジウムの貴金属を担持させた臭気分解触媒は、優れた浄化特性と密着性を示している。また、アルミニウムを20〜40重量%混合した琺瑯層に対して特に優れた密着性を示した。
【0100】
【表8】
【0101】
アルミニウムは、融点660℃であり琺瑯の焼成時に溶融してその表面は比表面の大きいアルミナに変化するとともに、熱膨張係数が他の琺瑯成分やステンレス製の金属薄体さらにアルミナの担体層に対して格段に大きい性質がある。そのため、アルミニウムを10〜45重量%混合した琺瑯は、表面にアルミナが露出した多孔質体となって金属薄体に強固に密着しているとともに、水酸化アルミニウムのゾルがこの表面露出のアルミナに付着し易いため焼成で得られるアルミナの担体層も強固に密着させる。一方、アルミニウムが10重量%未満の琺瑯層だと、表面露出のアルミナが少ない緻密体であるため、担体層に対する密着性が確保されなかった。また、アルミニウムが45重量%を越える琺瑯層だと、多孔質過ぎて金属薄体に対する密着性が確保されなかった。
【0102】
さて、上記実施例で用いた琺瑯は、上記量のアルミニウム以外に、ガラス成分(シリカが略9割でナトリウムやカリウムやカルシウムやマグネシウムの酸化物が残部)の1部に対して、金属酸化物系顔料(酸化マンガンと酸化鉄が略等量混合)を3〜4部混合した組成物が、残部成分として混入した物である。そこで実施例6に記載の様に、ガラス成分と金属酸化物系顔料の混合割合やその組成を変動させて検討したが、上記効果が同様に得られた。
【0103】
次に、さらに酸化チタンをさらに混合した琺瑯で同様の検討を行った。実験はまず、酸化マンガンと酸化鉄を略等量混合した金属酸化物系顔料の2〜3部と、ガラス成分の1部とを混合した組成物に、アルミニウムを10〜45重量%と酸化チタンを10〜25重量%変化させて混合して琺瑯を試作した。そして、前述と同様に実験したその結果を(表9)に示す。
【0104】
【表9】
【0105】
アルミニウムを10〜45重量%混合した物にさらに酸化チタンを10〜25重量%混入した琺瑯は、優れた浄化特性と一層優れた密着性を示すことがわかる。さらに実施例7に記載の様に、ガラス成分と金属酸化物系顔料の混合割合やその組成を変動させて検討したが、上記効果が同様に得られた。
【0106】
このように、金属酸化物系顔料およびガラス成分の材料組成や配合が変化してもアルミニウムが10〜45重量%混合された琺瑯であれば、金属薄体および臭気分解触媒に対する密着性は問題ないことより、琺瑯層中にアルミニウムが10〜45重量%混合されることが、この優れた密着性の主原因と思われる。
【0107】
一方、担体層として用いる水酸化アルミニウムのゾル組成を検討したところ、他化合物の30重量%以内好ましくは15重量%以内の混合なら、琺瑯と担体層の密着性は特に変化しなかった。そのため、酸素吸着能力の優れた酸化セリウムをゾルに2〜30重量%好ましくは2〜15重量%混合すると、琺瑯との密着性を保持しつつ浄化特性の向上がはかれる特性が得られた。また、調理油煙のガス化能力の優れた酸化バリウムや酸化カルシウムさらに酸化マグネシウムをゾルに1〜30重量%好ましくは1〜10重量%混合すると、琺瑯との密着性や浄化特性を保持しつつ嫌な臭気が低減できる特性があり、特に酸化バリウムはこの特性が優れていた。
【0108】
また、金属薄体の材質はステンレスを使用する範囲において特に限定されるものでなく、ステンレスであれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0109】
なお、水酸化アルミニウムのゾルは、酸化アルミニウム含水物のゾル、アルミナゾルと称される場合があるが、特にその名称を限定するものでない。
【0110】
(実施例9)
実施例9は、臭気分解触媒付き金属薄板20の後流側に、複数の開孔部を有する非通電の通気板26を配置し、この通気板23の表面に臭気分解触媒を形成した脱臭装置の効果について検討したものである。
【0111】
図3に記載したように、複数の開孔部を有する通電なしの通気板26が、筐体底部23の空洞側窪みに設けられた溝27および、筐体蓋部24の空洞側に設けられた溝(記載せず)とともに、これら溝27へのはめ込みで略垂直に配置されるようにしている。このことで、ガス漏れすることなくガスは効果的に臭気分解触媒を形成した通気板26と接触し、臭気成分の分解率が高まるようにした。
【0112】
通気板の効果は、この脱臭装置を加熱調理器に取り付け、消費電力と到達温度、調理ガスの洩れ状況、炭化水素除去率の3項目で判定した。その結果を(表10)に示す。
【0113】
【表10】
【0114】
試作番号1は、通気板なしの脱臭装置であり、臭気分解触媒付き金属薄板だけが1層構造で配置されている。
【0115】
試作番号2は、ラス網加工で複数の開孔部を形成したステンレス製の通気板(通電なし)を、臭気分解触媒付き金属薄板の後流側に配置した脱臭装置である。
【0116】
なお、いずれの試作番号も、通電により発熱する臭気分解触媒付き金属薄板が前流側に配置されている。この臭気分解触媒付き金属薄板は、ラス網加工し更に波付け加工したステンレス製箔体の表面に、琺瑯製の絶縁層と、水酸化アルミニウムのゾルを付着させ焼成してアルミナの担体層とこの担体層に担持した白金とパラジウムの貴金属から構成される臭気分解触媒を、順に形成したものである。そして、50Wの通電で400℃に保持されている。
【0117】
複数の開孔部を有する通気板を、臭気分解触媒付き金属薄板の後流側に配置すると、臭気成分の分解率が一層高まることがわかる。これは、通気板によってガスの通過速度が低下して、金属薄板に設けている臭気分解触媒との反応時間が長くなるためである。また、調理ガスの漏れもなかった。
【0118】
通気板の表面に形成した臭気分解触媒の効果を、この脱臭装置を加熱調理器に取り付けて、到達温度、調理ガスの洩れ状況、炭化水素除去率の3項目で判定した。その結果を(表11)に示す。
【0119】
【表11】
【0120】
試作番号1は、通気板だけを有する脱臭装置であり、通気板はラス網加工し更に波付け加工したステンレス製箔体を使用した。
【0121】
試作番号2は、通気板に臭気分解触媒を形成した脱臭装置である。臭気分解触媒を形成した通気板は、ラス網加工し更に波付け加工したステンレス製箔体の表面に、熱処理により形成した酸化被膜と、水酸化アルミニウムのゾルを付着させ焼成してアルミナの担体層とこの担体層に担持した白金とパラジウムの貴金属から構成される臭気分解触媒を、順に形成したものを使用した。
【0122】
なお、いずれの試作番号品も、前流側には通電により発熱する臭気分解触媒付き金属薄板が配置されており、後流側の通気板は通電なしである。
【0123】
通気板に臭気分解触媒を形成すると、臭気成分の分解率が一層高まることがわかる。これは、前流側に配置した臭気分解触媒付き金属薄板が通電によって400℃まで昇温し、この熱が後流側に配置した通気板に伝わって通気板が380℃まで上昇し、触媒の効果が発揮されるためである。また、臭気分解触媒は、ステンレス製箔体を熱処理にして形成した酸化被膜の表面に、水酸化アルミニウムのゾルを付着させ焼成してアルミナの担体層を形成しさらにこの担体層に白金とパラジウムの貴金属を担持させた製法で得ているため、密着性が優れている。
【0124】
一方、通気板は通電されないため、金属薄板だけに電力が集中しその結果、金属薄板は高い温度に保持されその表面に形成した臭気分解触媒の分解特性が益々向上する。
【0125】
(実施例10)
実施例10は、高周波加熱装置を有する加熱調理器への応用例であり、その応用例を図1に示す。
【0126】
高周波加熱装置28を併設すると、その電波漏れ防止のため調理室10と排気筒13の間に、複数の開口孔を有する金属製の高周波電波漏洩防止材29を取り付ける必要がある。そのため、この高周波電波漏洩防止材29と脱臭装置15が排出調理ガスの流れを妨げ、取り付け条件が最適でないと加熱調理器の前面ドア11などから調理ガスが漏れ、脱臭が効果的になされない。そこで、その取り付け条件の最適化を検討した。
【0127】
実験はまず、脱臭装置を取り付けない状態にある高周波加熱装置付き加熱調理器において、最適な高周波電波漏洩防止材の条件を求めた。電波漏れ防止のためには、その開口孔は開口孔と非開口孔部の合計面積に対して45%以下(以下、開口比45%以下と称す)とし、金属板の板厚1.0mm以上とする必要がある。そこで、開口比45%で板厚1.0mmの条件において、加熱調理器のドアなどから調理ガスが漏れない寸法を求めたところ、その開口孔と非開口孔部の合計面積が高さ2.5cm×横幅6cm以上あれば調理ガスが漏れないことを確認した。以後、これを基礎に最適化の検討を進めた。(表12)は、高周波電波漏洩防止材の開口孔と非開口孔部の合計面積と、脱臭装置の筐体に形成したガス通過用空洞の開口面積の関係について検討したものである。
【0128】
【表12】
【0129】
高周波電波漏洩防止材の開口孔と非開口孔部の合計面積を、筐体に形成したガス通過用空洞の開口面積と同一もしくは大きくすることで、調理ガスの漏れがなく、しかも脱臭装置を小型にできる。
【0130】
(実施例11)
排気筒の調理ガス排出面に脱臭装置の外側を取り付ける場合、脱臭装置の外寸法が嵌合に必要な寸法より小さいと隙間が生じ、この隙間より調理排ガスが漏れる。この漏れた調理排ガスは脱臭装置の外側に付着し、この付着した調理排ガスに含まれる水分を介して脱臭装置の外側と排気筒の外側との電気的導通を誘発する。そこで、脱臭装置を排気筒に嵌合する際に生じる隙間に伴う電気絶縁性低下を低減できる手段の検討を行った。
【0131】
実施例を図4に記載する。脱臭装置15を排気筒13に嵌合する際に生じる隙間に伴う電気絶縁性低下を低減するために、排気筒13の内側と脱臭装置15の外側の間に撥水耐熱絶縁性シート30を介在させた。
【0132】
実験は、調理室内で水300ccを30分かけて予め蒸発させておいて調理室内を多湿状態にしておき、その後、若とり2枚重量500gを30分調理した際における金属薄板20と加熱調理器9間の最低絶縁抵抗値を測定し、その最低絶縁抵抗値の大小で効果の判定を行った。脱臭装置と排気筒の隙間および、フッソ樹脂製の撥水耐熱絶縁性シートの介在の有無が、加熱調理器の動作中における最低絶縁抵抗に与える影響を(表13)に示す。
【0133】
【表13】
【0134】
脱臭装置と排気筒の間に隙間が有ると絶縁抵抗が減少するが、撥水耐熱絶縁性シートで隙間を閉塞すると、絶縁抵抗が元の特性に戻ることがわかる。また、弾力性の優れた撥水耐熱絶縁性シートで両者の閉塞ができるため、脱臭装置の外寸法および排気筒の内寸法の寸法精度が粗くてもよく、その分加工しやすいため量産性に優れたものとなる。さらに、ステンレス製の排気筒に撥水耐熱絶縁性被膜を形成する際に稀におこる、被膜の塗布斑やピンホール発生に起因する電気絶縁性低下を、撥水耐熱絶縁性シートはその介在により撲滅してくれるため、電気絶縁性の信頼性が一層優れたものとなる。
【0135】
(実施例12)
撥水耐熱絶縁性シート30は、脱臭装置15と排気筒13の間の隙間閉塞による電気絶縁性の向上や、撥水耐熱絶縁性被膜14の塗布ミスに起因する電気絶縁性低下撲滅の効果がある。この効果を一層高めるため、撥水耐熱絶縁性シート30の設定幅について検討した。
【0136】
まず、調理室側方向に設定する撥水耐熱絶縁性シートの幅について検討した。実験は、効果を顕著にするため、排気筒の調理ガス排出面に塗布する撥水耐熱絶縁性被膜の塗布ミスを想定して、撥水耐熱絶縁性被膜であるフッソ樹脂被膜を斑状に塗布したもので行った。撥水耐熱絶縁性シートは、4フッ化エチレン樹脂製の厚み0.5mmの帯状シート(長さ190mmを周囲介在分として使用)であり、幅5mmを脱臭装置の取り付け部16として利用している。そして、撥水耐熱絶縁性シートの調理ガス通過方向への設定幅を変えて、電気絶縁性の評価を行った。なお、撥水耐熱絶縁性シートの調理ガス通過方向への設定幅は、取り付け部16からの調理ガス通過方向における端部からの距離で表している。
【0137】
調理室内で水300ccを30分かけて予め蒸発させておいて調理室内を多湿状態にしておき、その後、若とり2枚重量500gを30分調理した際における金属薄板17と加熱調理器9間の最低絶縁抵抗値を測定し、その最低絶縁抵抗値の大小で効果の判定を行った結果を(表14)に示す。
【0138】
【表14】
【0139】
撥水耐熱絶縁性シートは、取り付け部端部から調理ガス通過方向へ幅5mm以上設定すれば、絶縁抵抗が充分に確保されることがわかる。
【0140】
また、取り付け部からはみ出す撥水耐熱絶縁性シートの設定幅は、水分量の多い排出調理ガス側を大きく設定し、水分量の少ない大気側は小さくすると、水分の撥水が充分に行われ、付着水分に起因する排気筒と脱臭装置との電気的絶縁が一層充実し、金属薄板に流れている電流が加熱調理器に流れることが一層防止された。
【0141】
次に、撥水耐熱絶縁性シートの材質について検討したものである。
実験は、撥水耐熱絶縁性シートの材質が異なる以外は、前述と同じでありそのポイントは以下の通りである。撥水耐熱絶縁性シート14は、厚み0.5mmの帯状シート(長さ190mmを周囲介在分と使用)であり、調理ガス通過方向に設定される幅20mmの内側部5mmを脱臭装置15および排気筒13への取り付け部16とし、外側部5mmを大気側方向への設定幅、他方の外側部10mmを調理室側方向への設定幅としている。撥水耐熱絶縁性シートの材質を変化させて、最低絶縁抵抗を測定した結果を(表15)に示す。
【0142】
撥水耐熱絶縁性シートは、フッソ樹脂であると絶縁抵抗特性に優れ、特にフッソ樹脂が60重量%以上含有した樹脂であると、絶縁抵抗は充分に確保されることがわかる。また、耐熱性の有るフッソ樹脂であるため、特に耐熱性が優れた4フッ化エチレン樹脂であると、調理温度の250℃前後でも優れた耐久性を長期間維持できる。
【0143】
【表15】
【0144】
(実施例13)
排気筒13をステンレスなどの金属で構成し、この内側表面に撥水耐熱絶縁性被膜14を形成する際に、塗布ミスで被膜の塗布斑やピンホール発生が有ると、金属を介しての導通が生じて電気絶縁性の低下が起こる。さらに、排気筒13の調理室外壁31への取り付けが不充分で、製作ミスで両者の取り付け部分に隙間が有った場合、調理ガス中水分を介して両者の電気導通が起こる。
【0145】
実施例13は、この問題発生による電気導通を防止するため、排気筒13の調理室外壁31への固定方法を検討したものである。その構成は、図4に記載した通りであるが、実施例13では撥水耐熱絶縁性シート30を除外して検討を進めている。
【0146】
ステンレス製の排気筒13は、その前流側端部35が外側に略90度に折り曲げられており、この排気筒の前流側端部35が、その寸法を大きく設定したフッソ樹脂製シートからなる耐熱絶縁シート32の介在により、ステンレス製の調理室外壁31に固着されている。一方、フッソ樹脂製の耐熱絶縁部材33がその設定寸法を大きくして、固定部材34と排気筒13の外側との間に介在されており、この固定部材34により排気筒13と調理室外壁31が固定されている。
【0147】
この構成品の効果を確認した。効果を顕著にするため、排気筒13をステンレスで構成し、この内側表面に塗布斑やピンホール発生が有るフッソ樹脂製の撥水耐熱絶縁性被膜14を形成するとともに、排気筒13の前流側端部35を調理室外壁31へ取り付ける部分に微小の隙間が有る加熱調理器を模擬的に製作した。そして、この加熱調理器に、フッソ樹脂製シートからなる耐熱絶縁シート32およびフッソ樹脂製の耐熱絶縁部材33を図4のように取り付けた。調理室内で水300ccを30分かけて予め蒸発させておいて調理室内を多湿状態にしておき、その後、若とり2枚重量500gを30分調理した際における金属薄板20と加熱調理器9間の最低絶縁抵抗値を測定したところ300MΩを示した。
【0148】
一方、耐熱絶縁シート32および耐熱耐熱絶縁部材33の介在の無い構成品は、最低絶縁抵抗値が1MΩであった。この挙動を詳しく説明すると以下の通りである。最初は電気絶縁されていたが、水を予め蒸発させる段階で排気筒13と調理室外壁31が導通し1MΩを示した。そして、調理開始直後の10秒間は絶縁抵抗が1MΩを示したが、10秒を過ぎると絶縁抵抗がどんどん大きくなり1分を過ぎると300MΩを示した。
【0149】
このように実施例13は、耐熱絶縁シート32および耐熱絶縁部材33を外側に介在させて調理室外壁に固定しているため、調理ガス水分に起因する排気筒と脱臭装置との電気的絶縁が2重安全対策となっている。そのため、撥水耐熱絶縁性被膜14の塗布ミスで被膜の塗布斑やピンホール発生が有っても、排気筒13の調理室外壁31への取り付けミスで両者の取り付け部分に隙間が有っても、排気筒と加熱調理器との電気的絶縁が強固に行われ、金属薄板に流れている電流が加熱調理器に流れることが一層防止されることがわかる。なお、耐熱絶縁シート32や耐熱絶縁部材33は、フッソ樹脂以外にマイカ、シリコン樹脂などが適している。また、排気筒13の前流側端部35は、外側に略90度に折り曲げなくとも同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0150】
【発明の効果】
以上の説明から明らかのように本発明の加熱調理機器によれば、次の効果が得られる。
【0156】
本発明の請求項1記載の発明によれば、調理物を収納する調理室と、調理物を加熱する加熱熱源と、調理室に取り付けられ、内面に撥水耐熱絶縁性被膜を設けた排気筒と、排気筒の取付部に取付けた調理ガスに含まれる臭気成分を分解する脱臭装置とを備え、脱臭装置は、ガス通過用空洞を内部に形成した耐熱絶縁性の筐体と、筐体のガス通過用空洞に配置した複数の開孔部を有し通電により発熱する金属薄板と、金属薄板の表面に絶縁層を介して設けた臭気分解触媒とを有する構成とした加熱調理器において、琺瑯層にアルミニウムが10〜45重量%含まれるため、焼き付けた際にアルミニウムは体積膨張しその表面に酸化アルミニウムの被膜を形成する。そのため琺瑯層は多孔質な絶縁層となり、琺瑯焼き付け時のラス網状金属薄体の熱変形や琺瑯層の剥離が発生しない。
【0157】
本発明の請求項2記載の発明によれば、琺瑯層はアルミニウムの10〜45重量%のほかに酸化チタンが10〜25重量%含まれているため、耐熱水性に優れた多孔質絶縁層となり蒸気に長時間曝されても剥離が生じないし、琺瑯焼き付け時のラス網状金属薄体の熱変形や琺瑯層の剥離も発生しない。
【0158】
本発明の請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載のアルミニウムを10〜45重量%混合した琺瑯層に、水酸化アルミニウムを主成分とするゾルを付着させ焼成した担体層とこの担体層に担持された白金とパラジウムのうち少なくともいずれかもしくは両方の貴金属から構成される臭気分解触媒を形成したため、臭気分解触媒は、優れた浄化特性と密着性を示す。これは、アルミニウムの混合で多孔質となった琺瑯層の空隙に担体層が浸入して強固に付着するとともに、高活性な白金とパラジウムのうち少なくともいずれかもしくは両方の貴金属がこの多孔質な担体層に強固に付着しているためである。
【0159】
本発明の請求項4記載の発明によれば、複数の開孔部を有する通気板を、筐体のガス通過用空洞における金属薄板の後流側に、ガス通過方向に対して略垂直に配置するため、通気板によってガスの通過速度が低下して、金属薄板に設けている臭気分解触媒との反応時間が長くなり臭気成分の分解率が一層高まる。またさらに、金属製の通気板を熱処理することによって形成した酸化被膜の表面に、水酸化アルミニウムを主成分とするゾルを付着させ焼成した担体層とこの担体層に担持された白金とパラジウムのうち少なくともいずれかもしくは両方の貴金属から構成される臭気分解触媒を形成したため、触媒との反応回数が増え臭気成分の分解率がさらに高まり、その密着性も良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である加熱調理器の断面図
【図2】同加熱調理器に用いる脱臭装置の要部拡大断面図
【図3】同脱臭装置の分解斜視図
【図4】本発明の他実施例の加熱調理器に用いる排気筒の断面図
【図5】従来の加熱調理器の断面図
【図6】同加熱調理器に用いる触媒装置の拡大断面図
【符号の説明】
9 加熱調理器
10 調理室
12 加熱熱源
13 排気筒
14 撥水耐熱絶縁性被膜
15 脱臭装置
16 脱臭装置の取り付け部
17 ガス通過用空洞
18 筐体
19 開孔部
20 金属薄板
21 絶縁層
22 臭気分解触媒
23 筐体底部
24 筐体蓋部
25 溝
26 通気板
28 高周波加熱装置
29 高周波電波漏洩防止材
30 撥水耐熱絶縁性シート
31 調理室外壁
32 耐熱絶縁シート
33 耐熱絶縁部材
34 固定部材
35 排気筒の前流側端部
Claims (4)
- 調理物を収納する調理室と、前記調理物を加熱する加熱熱源と、前記調理室に取り付けられ、内面に撥水耐熱絶縁性被膜を設けた排気筒と、前記排気筒の取付部に取付けた調理ガスに含まれる臭気成分を分解する脱臭装置とを備え、前記脱臭装置は、ガス通過用空洞を内部に形成した耐熱絶縁性の筐体と、前記筐体のガス通過用空洞に配置した複数の開孔部を有し通電により発熱する金属薄板と、前記金属薄板の表面に絶縁層を介して設けた臭気分解触媒とを有する構成とした加熱調理器において、前記金属薄板がラス網状に加工したステンレス薄板であり、前記絶縁層はアルミニウムを少なくとも10〜45重量%含む琺瑯とした加熱調理器。
- 調理物を収納する調理室と、前記調理物を加熱する加熱熱源と、前記調理室に取り付けられ、内面に撥水耐熱絶縁性被膜を設けた排気筒と、前記排気筒の取付部に取付けた調理ガスに含まれる臭気成分を分解する脱臭装置とを備え、前記脱臭装置は、ガス通過用空洞を内部に形成した耐熱絶縁性の筐体と、前記筐体のガス通過用空洞に配置した複数の開孔部を有し通電により発熱する金属薄板と、前記金属薄板の表面に絶縁層を介して設けた臭気分解触媒とを有する構成とした加熱調理器において、前記金属薄板がラス網状に加工したステンレス薄板であり、前記絶縁層はアルミニウムの10〜45重量%と酸化チタンの10〜25重量%を少なくとも含む琺瑯とした加熱調理器。
- 水酸化アルミニウムを主成分とするゾルを付着させ焼成した担体層と、前記担体層に担持された白金とパラジウムのいずれかまたは両方を備えた臭気分解触媒を、絶縁層の表面に形成した請求項1または2記載の加熱調理器。
- 調理物を収納する調理室と、前記調理物を加熱する加熱熱源と、前記調理室に取り付けられ、内面に撥水耐熱絶縁性被膜を設けた排気筒と、前記排気筒の取付部に取付けた調理ガスに含まれる臭気成分を分解する脱臭装置とを備え、前記脱臭装置は、ガス通過用空洞を内部に形成した耐熱絶縁性の筐体と、前記筐体のガス通過用空洞に配置した複数の開孔部を有し通電により発熱する金属薄板と、前記金属薄板の表面に絶縁層を介して設けた臭気分解触媒とを有する構成とした加熱調理器において、複数の開孔部を有するステンレスからなる非通電の通気板を、筐体のガス通過用空洞における金属薄板の後流側に、ガス通過方向に対して略垂直に配置し、前記通気板の表面に、通気板を熱処理することによって形成した酸化被膜と、前記酸化被膜に水酸化アルミニウムを主成分とするゾルを付着させ焼成した担体層と、前記担体層に担持された白金とパラジウムのうちの少なくともいずれかまたは両方を備えた貴金属とから構成される臭気分解触媒を、形成した加熱調理器。
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