JP4006817B2 - 偽造防止用紙用スレッドおよび偽造防止用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、偽造防止用紙用スレッドおよび偽造防止用紙に関するものである。さらに詳しくは、従来のスレッドが有した欠点を改良し、偽造防止用紙印刷時に偽造防止用紙用スレッド表面の印刷汚れがない偽造防止用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機技術の進歩によって、有価証券類の偽造が容易となり、大きな社会問題となっているため、紙幣、商品券、小切手、株券、パスポート、身分証明書、カードなどは不正に変造、偽造できないように、各種の偽造防止対策が施されている。
【0003】
偽造防止対策としては、特開昭48−75808号、特公昭52−48660号、特開昭51−130308号公報等に記載の、紙層間に糸状物(スレッドと称す)を抄き込んだ、いわゆる糸入り紙と称する偽造防止用紙がある。
【0004】
紙層間に抄き込むスレッドの形態は、一般的に10〜100μm程度の厚みで、0.2〜30mm程度の巾の糸状あるいはテープ状のものであり、金属蒸着フィルムが一般的に使用されている。近年は、高度な複写機の技術による偽造を防止するため、複製が非常に困難なホログラム、ピクセルグラム、グレーティングイメージ等がクレジットカード、紙幣等に貼付されているが、これらを応用した金属蒸着フィルムもスレッドとして使用される。これらのスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙は複写機で複写してもスレッドの金属光沢部分は偽造できず、変造することが困難である。
【0005】
また、紙層間に抄き込んだスレッドの脱落を防ぐためにスレッドと漉き込んだ紙層とを強固に接着させる必要がある。そのため、スレッドの表裏に接着剤を塗布し紙と両面において接着させることが好ましい。
【0006】
しかしながら、スレッドを抄き込んだ偽造防止用紙を印刷する際において、紙層とスレッドが強固に接着する必要性からスレッドの視認される側に塗布された接着剤がブランケットロール等印刷機ロール上のインキと接触し、該接着剤にインキが転着、スレッド表面を汚してしまう場合がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スレッドを紙層間中に漉き込んだ偽造防止用紙において、印刷加工によるスレッド表面印刷汚れがなく、安定して製造できる偽造防止用紙に関するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは偽造防止用紙の製造に使用するスレッドに塗布する接着剤について鋭意研究を行った結果、スレッドと紙層との接着強度に優れ、しかもスレッド表面が偽造防止用紙印刷時にインキ付着による印刷汚れのないという性質を両立できる接着剤層の構成を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、糸状またはテープ状の基材の両面に熱可塑性樹脂の接着剤層を設けたスレッドにおいて、該スレッドの視認される側に設けた表面接着剤層が、滴下15秒後の水に対する接触角が60度以上で、ガラス転移温度が20℃以上であるソープフリー型エマルジョンである熱可塑性樹脂で構成される接着剤層を塗布、乾燥して得られることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は上記のスレッドを紙層間に抄き込んだことを特徴とする偽造防止用紙である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の偽造防止用紙用スレッドは基材の表裏両面に熱可塑性樹脂からなる接着剤を塗布、乾燥して得られる。また本発明のスレッド入り偽造防止用紙は、多層抄きの抄紙機で少なくとも最終の抄き合わせを行うよりも前に、糸状またはテープ状の基材の両面にあらかじめ熱可塑性の接着層剤を設けたスレッドを、抄紙機の抄き合わせ工程において巻きもどしながら紙層間に挿入し、乾燥工程の熱によりスレッドの接着剤層を可塑化させて紙層と接着させて得られるものである。
【0012】
なお、偽造防止用紙は各種印刷機で印刷され、製品として仕上げられることから、スレッド表面が印刷機ロール等に付着しているインキで汚れないことが必要である。なお、本発明でいう、接触角の測定は、実施例の欄に記載する。
【0013】
印刷汚れを防止するため、本発明に使用されるスレッドの視認される側の接着剤(以下、単に接着剤という)は、滴下15秒後の水に対する接触角が60度以上でガラス転移温度が20℃以上のソープフリー型エマルジョンからなる接着剤であることが好ましい。印刷時にスレッド表面が汚れる原因としては、印刷時に使用される浸し水に流出した接着剤乾燥後もスレッド表面に残留する低分子モノマーや界面活性剤等が、印刷インキとの親和性を高めるためだと考えられ、スレッド表面接着剤の水に対する接触角が60度以上であると、接着剤上で浸し水が接触する面積が小さくなり、その結果印刷汚れが軽減出来るものである。界面活性剤含有エマルジョン型もしくは水溶性のものは、印刷時に使用される浸し水を媒体とし、印刷汚れを引き起こしやすくなるため使用が困難となる。
またスレッド表面接着剤のガラス転移温度が20℃未満であると、偽造防止用紙の製造時に抄紙機のドライヤーが熱溶融した接着剤で汚染されるという問題が発生しやすくなり、使用が困難となる。
【0014】
なお、ガラス転移温度は、DSC(示差走査型熱量計)により実験的に求めることが可能であり、また、下記Foxの式
1/Tgm=Σwi/Tgi
Tgm:複合成分のガラス転移温度、
wi:各成分の重量分率、
Tgi:各成分のガラス転移温度、
により求めることも出来る。
【0015】
本発明に使用する接着剤の樹脂は、滴下15秒後の水に対する接触角が60度以上で、ガラス転移温度が20℃以上であれば特に限定されないが、アクリル系樹脂、スチレンーブタジエン系樹脂、スチレンーイソプレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンー酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニルービニルアルコール系樹脂等、一般にヒートシール接着剤として使用できる公知、公用の樹脂組成物であるが、エチレンー酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル―酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂またはアクリルースチレン系樹脂が特に好ましく用いられる。
【0016】
これらの樹脂はそのまま接着剤として使用してもよいし、複数の樹脂を混合して使用しても良い。また必要に応じて、滴下15秒後の水に対する接触角が60度以上で、ガラス転移温度が20℃以上を維持出来る限り、各種公知の染料や顔料、消泡剤や濡れ剤等の界面活性剤、ブロッキング防止剤、滑剤、増粘剤等の助剤を添加しても良い。
【0017】
接着剤の塗布方法は、ハケ塗り、スプレー塗布、ロールコーター、マイヤーバーコーター、グラビアロールコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター等の各種塗布装置によって行われ、乾燥は上記の塗布装置に組み合わせた従来の方法で行われる。なお、塗布量は乾燥重量で0.5〜15g/m2 程度が好ましいが、これより少ないと十分な接着強度が得られず、多いと接着機能の飽和や過剰な乾燥を必要とし経済上好ましくない。
【0018】
本発明で使用するスレッド基材は特に限定されないが、薄くて強度にも優れる厚さ10〜100μm程度のPETフィルムが一般によく使用される。PETフィルムには偽造防止や装飾的な目的から金属蒸着や、文字、図柄等の印刷、ホログラム、グレーティングイメージ等の光学的な特殊処理等を施したり、磁気記録層を設けて情報を付与したりすることもできる。なお、スレッド基材は接着剤を塗布、乾燥後に所定の巾にスリット加工し、スレッドとして使用される。
【0019】
こうして得られたスレッドを、各種のワイヤーパートを組み合わせた公知の多層抄き抄紙機の抄き合わせ工程で紙層間に挿入し、必要に応じて抄紙途中で各種表面サイズ等をサイズプレス装置等で塗工し、ドライヤーで乾燥して目的とする偽造防止用紙を得る。また、得られた偽造防止用紙にマシンカレンダーやスーパーカレンダー処理を施したり、各種塗工装置で表面に顔料塗被層、感熱記録層、熱転写受像層等を設けてもよい。
【0020】
本発明で得られた偽造防止用紙は、通常さらに所望の印刷および断裁等を行い、紙幣や商品券、磁気記録層を設けて切符やプリペイドカード等として使用される。
【0021】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、もちろんのこと、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0022】
参考例1
〔スレッドの作製〕基材として、厚さ12μmのアルミ蒸着PETフィルム(商品名「G1302E−12」ダイヤホイルヘキスト株式会社製)のPETフィルム面側(こちらの面が視認される面になる。以下同様。)に、ガラス転移温度約30℃のエチレンー酢酸ビニル系有機溶剤溶液型接着剤(商品名「AD−1790−15」東洋モートン株式会社製、溶剤:トルエン)を乾燥重量で1.0g/m2 となるように、グラビアロールコーターで塗布、乾燥させた。得られた表面接着剤層の滴下15秒後の水に対する接触角は105.1度であった。
【0023】
次にアルミ蒸着面側にガラス転移温度約32℃のポリエステル系水溶液型接着剤(商品名「プラスコートRZ―648」互応化学工業株式会社製)を乾燥重量で3.0g/m2 となるように、グラビアロールコーターで塗布、乾燥させた。ついで、マイクロスリッターで1mm巾にスリット後、ボビンに巻き取り、スレッドを得た。
【0024】
〔偽造防止用紙の製造〕
二槽のシリンダーバットを備えた円網抄紙機の、一槽目の円網シリンダーの同一円周表面上にあらかじめ1cm×1cmの形のテープを1cm間隔で貼り付けて網目を塞いでおき、第一紙層として1cmおきに1cm×1cmの穴が空いた紙層を形成するようにした。二槽目の円網シリンダーには細工を施さず、無地の第二紙層を形成するようにした。また、スレッド巻き出し装置を第一槽目と第二槽目の円網シリンダー間に設置し、スレッドが第一紙層の穴と重なる位置に、第二紙層とアルミ蒸着面側が接する向きで挿入されるようにした。なお、この抄紙機で抄造される湿潤紙(水分約50%)は、12本のシリンダードライヤー(表面温度約70〜100℃)で乾燥後、マシンカレンダー処理される。上記抄紙機により、作成したスレッドを使用して、スレッドが片面で露出と埋没を繰り返したタイプの偽造防止用紙を得た。
【0025】
参考例2
アルミ蒸着PETフィルムのPETフィルム面側に、ガラス転移温度約66℃の塩化ビニル―酢酸ビニル系有機溶剤溶液型接着剤(商品名「SE−600」サイデン化学株式会社製、溶剤:酢酸エチル)を乾燥重量で1.5g/m2となるように塗布、乾燥させてスレッドを得た以外は、参考例1と全く同様にして偽造防止用紙を得た。なお、得られた表面接着剤層の滴下15秒後の水に対する接触角は67.8度であった。
【0026】
実施例1
アルミ蒸着PETフィルムのPETフィルム面側に、ガラス転移温度約40℃のアクリル系ソープフリー型エマルジョン接着剤(商品名「GD−902」日本NSC株式会社製)を乾燥重量で1.5g/m2となるように塗布、乾燥させてスレッドを得た以外は、参考例1と全く同様にして偽造防止用紙を得た。なお、得られた表面接着剤層の滴下15秒後の水に対する接触角は62.5度であった。
【0027】
比較例1
アルミ蒸着PETフィルムのPETフィルム面側に、ガラス転移温度約35℃のアクリル系エマルジョン型接着剤(商品名「Nipol LX855」日本ゼオン株式会社製)を乾燥重量で2g/m2 となるように塗布、乾燥させてスレッドを得た以外は、参考例1と全く同様にして偽造防止用紙を得た。なお、得られた表面接着剤層の滴下15秒後の水に対する接触角は18.4度であった。
【0028】
比較例2
基材として、厚さ12μmのアルミ蒸着PETフィルム(商品名「G1302E−12」ダイヤホイルヘキスト株式会社製)のPETフィルム面側に、ガラス転移温度約28℃のポリエステル系有機溶剤溶液型接着剤(商品名「PES−370」東亜合成株式会社製、溶剤:酢酸エチル/アセトン)を乾燥重量で1.5g/m2となるように塗布、乾燥させスレッドを得た以外は、参考例1と同様にして偽造防止用紙を得た。なお、得られた表面接着剤層の滴下15秒後の水に対する接触角は48.7度であった。
【0029】
比較例3
基材として、厚さ12μmのアルミ蒸着PETフィルム(商品名「G1302E−12」ダイヤホイルヘキスト株式会社製)のPETフィルム面側に、ガラス転移温度約11℃のポリエステル系有機溶剤溶液型接着剤(商品名「SKダイン5273」東亜合成株式会社製、溶剤:トルエン/酢酸エチル/アセトン)を乾燥重量で1.5g/m2となるように塗布、乾燥させスレッドを得た以外は、参考例1と同様にして偽造防止用紙を得た。なお、得られた表面接着剤層の滴下15秒後の水に対する接触角は84.9度であった。
【0030】
「評価」
各偽造防止用紙での印刷時に発生するスレッド表面印刷汚れ状態を下記の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0031】
〔接触角〕
アルミ蒸着PETフィルムのPETフィルム側に施した接着剤塗布面に、水を5μl滴下し、15秒後に接触角を測定した。(測定装置;協和界面科学(株)、CA−X型接触角計)
【0032】
〔印刷汚れ〕
得られた各偽造防止用紙を1000mUVインキを使用して印刷し、表面スレッドの汚れ状態を目視評価から、下記の基準で判断した。
◎;印刷汚れは全くない。
○;長時間の加工で僅かに印刷汚れが発生する。
△;印刷開始初期では印刷汚れは発生しないが、長時間の加工で印刷汚れが発生する。
×;印刷汚れがひどく、加工に適さない。
【0033】
〔ドライヤー汚れ〕
得られた各偽造防止用紙用スレッドを1000m漉き込み、マシンコーターのシリンダードライヤーの汚れ状態を目視評価から、下記の基準で判断した。
◎;ドライヤーは全く汚れていない。
○;長時間の漉き込みで僅かにドライヤー汚れが発生するが、加工には影響しない。
△;漉き込み初期ではドライヤー汚れは発生しないが、長時間の漉き込みでドライヤー汚れが発 生する。
×;ドライヤー汚れがひどく、加工に適さない。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
表1の結果から明らかなように、本発明は印刷汚れのない優れた偽造防止用紙用スレッドであり、この偽造防止用紙用スレッドを紙層間に漉き込んだ偽造防止用紙である。
Claims (2)
- 糸状またはテープ状の基材の両面に熱可塑性樹脂の接着剤層を設けたスレッドにおいて、該スレッドの視認される側に設けた表面接着剤層が、滴下15秒後の水に対する接触角が60度以上で、ガラス転移温度が20℃以上であるソープフリー型エマルジョンである熱可塑性樹脂で構成される接着剤層を塗布、乾燥して得られることを特徴とする、偽造防止用紙用スレッド。
- 請求項1記載の偽造防止用紙用スレッドを紙層間に漉き込んだことを特徴とする偽造防止用紙。
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JP8592898A JP4006817B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 偽造防止用紙用スレッドおよび偽造防止用紙 |
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1998
- 1998-03-31 JP JP8592898A patent/JP4006817B2/ja not_active Expired - Lifetime
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