JP4006512B2 - 純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層の表面処理方法 - Google Patents

純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層の表面処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般構造材料として使用される鉄鋼の耐食性を上げ、かつ表面平坦性を向上させる技術に関する。鉄鋼母材表面が清浄であるほど、その上に形成される酸化皮膜が結晶化しやすくなるが、本発明は電気化学的表面処理により、原子レベルでの平坦(平滑)化された面を備え、これにより従来の粗い表面よりも耐食性を向上させ、かつガス等の吸着を減少させることのできる鉄鋼表面処理方法に関する。
なお、本発明の鉄鋼は、純鉄、ステンレス鋼等の不働態化処理が可能である鉄を主成分とする材料を意味する。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼の耐食性を高め、あるいは鉄鋼を高真空容器として使用する場合等において、ガス等の吸着を抑制するために、鉄鋼表面に均質かつ平坦な結晶性酸化皮膜を形成することが必要であるが、このためにまず、鉄鋼母材表面が平滑であることが要求される。
従来、この表面平坦性に優れた鉄鋼表面を得る方法の1つとして、平滑ロールを使用して仕上冷間圧延を行い、高光沢の鉄鋼を製造する方法が提案されている(特開平6−79611)。しかし、この技術における鉄鋼の表面粗度はRa≦1.0μmと規定されているが、原子レベルの平坦さにはほど遠く、十分な表面平坦性を有するとは言い難い。
また、低酸素分圧雰囲気中で加熱処理することにより、あるいは冷間引抜き後光輝熱処理することにより、表面粗さRmaxを1μm以下とする表面処理法が提案されている(特開平6−322512、WO95/28239)。しかし、これらの場合も同様に表面粗さRmaxを1μm以下とする程度のことで、原子レベルの平坦さにはほど遠い。
【0003】
一方で、湿式不働態化処理において、硫酸溶液中で飽和カロメル電極基準0.2〜0.6Vの電位で5分以上保持することにより耐食性を向上させる処理方法が提案されている(特開平9−3655)。
しかし、この技術には原子レベルの平坦化を実現する際のキープロセスである製造後に形成された汚れや非晶質皮膜の処理方法および不働態化処理への移行プロセスが提案されていない。また従来、鉄鋼表面において原子レベルで平坦なテラスを拡張しようとする方法は記述されていない。
このようなことから、より高い耐食性およびより少ないガス吸着性を有する点において優れた平坦性を備えた鉄鋼および鉄鋼による表面被覆層ならびに原子レベルで平坦なテラスを拡張しようとする表面処理法の開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は鉄鋼母材表面または鉄鋼による表面被覆層の平坦性を向上させることにより、鉄鋼の表面に形成される酸化膜の性状を改善して耐食性を向上させ、かつガスや汚れ等の吸着が少なく清浄性において格段に優れた表面を有する鉄鋼およびそのような表面の製造方法を確立する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電気化学的表面処理を改善し、ステップ−テラス構造を備える鉄鋼又は鉄鋼による表面被覆層のテラスの広さを拡張することにより、耐食性をさらに向上させかつガス吸着の少ない構造材としての鉄鋼を得ることができるとの知見を得た。
この知見に基づき本発明は、1)電気化学的処理として、純鉄若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)を不働態化させる溶液中で−800mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位で表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を−300〜1000mVに保持して不働態化処理する純鉄若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)又は純鉄若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)による表面被覆層の表面処理において、前記表面処理電位を15分間〜10時間保持し、不働態化処理後、前記純鉄若しくは鉄鋼表面を相対湿度50%未満のより低い湿度環境に保持することにより、中心線表面粗さRaが10nm以下及び最大高さRmaxが30nm以下の電気化学的処理表面を形成することを特徴とする原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄又若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)又は純鉄若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)による表面被覆層表面処理方法、2)電気化学的処理として、ステンレス鋼を不働態化させる溶液中で−800mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位で表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を−300〜1000mVに保持して不働態化処理するステンレス鋼又はステンレス鋼による表面被覆層の表面処理において、前記表面処理電位を15分間〜10時間保持し、かつカソード還元工程と不働態化処理工程を繰り返し、不働態化処理後、ステンレス鋼表面を相対湿度50%未満のより低い湿度環境に保持することにより、中心線表面粗さRaが10nm以下及び最大高さRmaxが30nm以下の電気化学的処理表面を形成することを特徴とする原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張したステンレス鋼又はステンレス鋼による表面被覆層表面処理方法、3)表面処理電位を700〜900mV(飽和カロメル電極基準)に保持して不働態化処理することを特徴とする上記1)又は2)記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法、4)不働態化処理する際の溶液温度を室温(20°C)〜100°Cの範囲の温度にすることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法、5)溶液温度を30°Cから100°Cの範囲の温度にすることを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法、を提供する。
【0006】
また、本発明はさらに、6)電気化学的処理として、純鉄若しくは鉄鋼を不働態化させる溶液中で−800mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位で表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を−300〜1000mVに保持して不働態化処理する純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層の表面処理において、不働態化処理後、純鉄若しくは鉄鋼表面を相対湿度50%未満のより低い湿度環境に保持し、中心線表面粗さRaが10nm以下及び最大高さRmaxが30nm以下の電気化学的処理表面を形成することを特徴とする原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法、7)不働態化処理後、純鉄若しくは鉄鋼表面を相対湿度50%未満のより低い湿度環境に保持することを特徴とする上記1)、3)〜5)のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法、8)カソード還元工程と不働態化処理工程を繰り返すことを特徴とする上記1)、3)〜7)のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法、9)純鉄若しくは鉄鋼を不働態化させる溶液として、硼酸、過塩素酸、酢酸、硝酸、硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、フッ化水素酸から選択した1種類の溶液又は2種類以上の混合溶液又はそれらを50%以上含む溶液を用いて不働態化処理を行うことを特徴とする上記1)〜8)のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法、を提供する。
【0007】
また、本発明はさらに、10)中心線表面粗さRaが1nm以下及び最大高さRmaxが3nm以下であることを特徴とする上記1)〜9)のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法、11)スパッターデポジットにより被覆した被覆層であることを特徴とする上記1)〜10)のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は鉄鋼による表面被覆層表面処理方法、を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、電気化学的処理方法について鋭意研究を重ねた結果、鉄鋼表面を覆っている汚れや非晶質の酸化皮膜を除去した後、他の電位を経由することなく、直ちに不働態化し、その後、酸化表面が徐々に再構成されて、均一かつ緻密なステップ−テラス構造が形成されることを見出し、そしてこれにより当該テラスにおいて原子レベルで平坦な表面を得ることに成功した。
【0009】
すなわち、鉄鋼製造後に形成された非晶質酸化物や水酸化物及び汚れを除去することが、不働態化電位に保持したときに形成される酸化皮膜の高純度化を可能にしている。この不純物を含まない酸化皮膜が50%未満のより低い湿度環境において水分を排除して結晶化し、原子レベルで平坦な表面を形成させることができる。
その表面状態は下記に説明する走査型トンネル顕微鏡で原子像を観測することにより確認できた。
【0010】
鉄鋼表面の汚れや付着物により、そこに常時水分が保持されるようになり、そのようなところから錆が生成してゆく。本発明の処理方法のように原子レベルで平坦な表面では処理前に比べて吸着サイトとなる表面の凸凹の量を著しく減少させることができる。汚れや吸着を減少させることによって清浄な鉄鋼表面を保ち、耐食性を向上させるという極めて有効な方法を含んでいる。
【0011】
本発明の平坦化処理方法の概略は、次の工程からなる。
(1)機械研磨工程
(2)表面清浄化処理工程
(3)上記工程直後の不働態化処理工程
これにより鉄鋼上に原子レベルの平坦な表面を得ることができる。
【0012】
次に、上記工程をそれぞれ詳しく説明する。
前記(1)の機械研磨工程においては、例えば#250〜#3000までの耐水研磨紙をいくつか組み合わせて用い研磨した後、1μm以下、好ましくは0.25μmのダイヤモンドぺーストを用いてバフ研磨する。その後、エチルアルコール、プロピルアルコールまたはアセトン中で超音波洗浄機を用いて脱脂洗浄して十分な洗浄を行う。
スパッターデポジット等による被覆層を形成した材料では、すでに被覆層自体が研磨面と同等以上の平滑面を有するので、この機械研磨工程は不要であり、主として板材等のバルク材に用いる。
【0013】
次に、前記(2)の表面清浄化処理の工程においては、鉄鋼材料が不働態化現象を起こす溶液、例えば硼酸溶液中において−800mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位で、5分間以上カソード領域に保持することによって非晶質皮膜や表面の汚れをカソード還元して除去し、表面清浄化を図ることからなる。
この工程は、本発明の鉄鋼表面に均一かつ緻密なステップ−テラス構造を形成し、さらにテラスにおいて原子レベルで平坦な表面を達成させる重要な工程である。
【0014】
前記(3)の不働態化処理工程においては、清浄化処理後、不働態化領域以外の他の電位を経由することなく、直ちに不働態化電位に16分間以上保持する。
このときの保持電位は鉄鋼の不働態領域、すなわち−300〜1000mVの電位、好ましくはより貴な電位(700〜900mV)に保持する。前記(3)の処理後しばらくすると、不働態化により形成された酸化皮膜が結晶化し、原子レベルで平坦な表面を得ることができる。
不働態化電位により、その皮膜の構造安定性が異なる。低電位では皮膜密度が低く、電位が高くなるにつれて皮膜密度が高くなる。さらに250mVよりも電位が高くなると2次元的な構造から3次元的な構造をとりはじめ、700mV以上では2重3重の構造になるなど、皮膜が厚くなり、大きな粒子が形成されて、その粒子上では広いテラスになる、すなわちテラスの拡張がより可能となる。
【0015】
特に、前記表面処理電位を15分間〜10時間保持することによって原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した鉄鋼又は鉄鋼による表面被覆層を得ることができる。不働態化電位に保持すると電流が急激に低下し、15分間を超えるとほぼ安定な電流値を示す。このとき、皮膜が島状に生じ始め、徐々に面積を広げ、やがて全面を覆うようになる。全面を覆うと電流値はほぼ一定になる。
しかし、詳細に観察すると、わずかながら徐々に電流値が低下している。この段階では処理時間が長いほど電流値が低下し、厚い不働態化皮膜ができ、再構成により大きなテラスも生じる。しかし、処理時間が長すぎるとポーラスな皮膜が生じてくるため、テラス幅の拡張に適する処理時間に調整することが必要である。この不働態化処理時間は、10時間以内に保持するのが適当である。
【0016】
不働態化処理する際の溶液温度は室温(20°C)〜100°Cの範囲の温度にすることが望ましい。また、不働態化処理後は、鉄鋼表面を相対湿度50%未満のより低い湿度環境に保持することによって、さらに好適なテラスを有する表面を得ることができる。
処理温度で不働態維持電流密度が異なり、温度が高いほど電流密度は大きくなる。電流密度が大きくなると不働態皮膜が厚くなり、粒子径も大きくなるので、その粒子を構成するテラスも広くなる。特に、不働態化処理電位が高いほど、わずかな温度上昇でも電流密度の顕著な上昇が起こる。このことから、不働態化処理する際の溶液温度は、好ましくは30°C以上とするのが良い。
溶液中で不働態化処理した後、湿度が高いと電位は急速に自然浸漬電位へと戻ってしまう。不働態化処理した後、数時間は表面構造が再構成するために必要であり、その間は吸着水による電位降下を抑制するために低湿度の環境が必要である。したがって、鉄鋼表面の不働態化処理後、相対湿度50%未満の低い湿度環境に保持することが望ましい。
【0017】
前記カソード還元工程と不働態化処理工程は、1回でも原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した鉄鋼又は鉄鋼による表面被覆層を得ることができるが、さらにこれを繰り返すことによって、より安定してテラスの広さを拡張した鉄鋼又は鉄鋼による表面被覆層を得ることができる。
通常、バルク材は被覆材に比べて平坦化が非常に難しい。したがって、バルク材には還元−不働態化の繰返しが極めて有効である。また、特にSUS430の不働態化処理に有効である。
【0018】
上記にも述べたように、原子レベルで平坦であることは走査型トンネル顕微鏡で原子像を観測することにより確認できる。このときテラスにおける中心線平均粗さRaを10nm以下及び最大高さRmaxを30nm以下にすることができる。
なお、中心線平均粗さRaを10nm以下に、最大高さRmaxを30nm以下にする理由は、原子レベルの平坦化を期待できるからである。好ましくは、テラスにおける中心線平均粗さRaを1nm以下及び最大高さRmaxを3nm以下とすると良い。
【0019】
下記の例では特定の鉄鋼を用いて説明しているが、これらの例以外の鉄鋼及びステンレス鋼においても当然本発明が適用でき、同等の作用・効果を有する。
また、不働態化させる溶液としては、鉄鋼が不働態化するような溶液、すなわち、硼酸、過塩素酸、酢酸、硝酸、硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、フッ化水素酸及びこれらの中の少なくとも2種類以上による混合溶液又はそれらを50%以上含む溶液においても当然本発明が適用でき、同等の作用・効果を有する。
また、本発明において使用できる鉄鋼は鉄鋼板等のバルク材だけでなく、鉄鋼と同成分の被覆層をめっき、スパッターデポジット等の物理的蒸着法、化学的蒸着法等の手段により、鉄鋼板(バルク材)や他の金属またはセラミックス等に被覆層を形成した材料にも適用できる。
【0020】
本発明に使用できる鉄鋼は、純鉄からステンレス鋼までの、鉄を主成分とする材料を意味する。本発明においては、特に純鉄、ステンレス鋼(鉄−12%クロム鋼等)に有効である。
例えば機械研磨ができないような装置や器具の構造あるいは材料に対しては、スパッターデポジット等により鉄鋼と同等成分の被覆層を形成し、これに本発明の方法による表面処理を施し、酸化膜の性状を改善して耐食性を向上させ、かつガス等の吸着が少なく清浄性において優れた表面をもつ材料とすることができる。
いずれの場合においても、鉄鋼または同等成分の表面被覆層をもつ表面の問題であり、本発明の条件を達成できれば、同等の作用・効果を有する。
【0021】
本発明で処理した鉄鋼表面の走査型トンネル顕微鏡観察例を、図1および図2に示す。
図1は99.9%の鉄を基板上にスパッターデポジットにより表面被覆層を形成し、これに本発明の処理を施したものである。この場合の表面における中心線平均粗さRaは0.06nmであり、最大高さRmaxは0.31nmであった。ステップ−ラテス構造が観察されている。
図2は、同様に99.9%の鉄を基板上にスパッターデポジットにより表面被覆層を形成し、これに本発明の処理を施したものである。この場合の中心線平均粗さRaは0.03nmであり、最大高さRmaxは0.18nmであった。そして、原子像が見えることから、原子レベルの平坦性を有していることが明瞭に観察されている。
【0022】
【実施例および比較例】
次に実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲における他の例、態様あるいは変形等を当然含むものである。
【0023】
(実施例1)
99.9%純鉄の板材を供試材として用いた。これを、#400,#600、#1000、#1500の耐水研磨紙および0.25μmのダイヤモンドペーストを用いて機械研磨し、その後エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びアセトン中で各3分間ずつ超音波洗浄した。
次に、硼酸溶液中において、飽和カロメル電極基準で−1100mVに5分間、−1500mVに5分間、−1100mVに30分間、それぞれ保持した。
そして、その直後に+400mVに30分間保持した後水洗し、これを大気中に保持した。なお、不働態化処理する際の溶液温度は60°Cとし、また不働態化処理後は、純鉄表面の相対湿度を30%の低い湿度環境に保持した。
これにより得られた純鉄を、走査型トンネル顕微鏡により表面構造と原子像を観測した結果、ステップ−ラテス構造および原子レベルの平坦性が観察された。
また、このときの中心線平均粗さRaは0.1nmであり、最大高さRmaxは2.3nmであった。
また、本実施例1の表面処理を施したものは、従来のものに比べ耐食性が20%以上向上した。
【0024】
(実施例2)
99.9%純鉄をターゲットにしてスパッターし、シリコン基板上に数百nm積層した純鉄被覆シリコン基板を供試材とし使用した。この場合、機械研磨はしていない。
次に、これをアセトン中で1分間超音波洗浄後、硼酸溶液中において、飽和カロメル電極基準で−1100mVに5分間、−1500mVに15分間、−1100mVに15分間、それぞれ保持した。
そして、その直後に+750mVに15分間保持した。なお、不働態化処理する際の溶液温度は35°Cとし、また不働態化処理後は、純鉄表面の相対湿度を40%の低い湿度環境に保持した。
表面構造が徐々に変化し、走査型トンネル顕微鏡で原子像を観測できた。
このときの表面粗度は中心線平均粗さRaで0.03nm、最大高さRmaxで0.18nmであった。
【0025】
(実施例3)
ステンレス鋼(JIS規格SUS430)の板材を供試材として用いた。これを、#400,#600、#1000、#1500の耐水研磨紙および0.25μmのダイヤモンドペーストを用いて機械研磨し、その後エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びアセトン中で各3分間ずつ超音波洗浄した。
次に、硫酸溶液中において、飽和カロメル電極基準で−1000mVに5分間、−1500mVに3秒間、−1000mVに2分間、−800mVに1分間、それぞれ保持した(カソード還元処理)。その直後に+400mVに15分間保持した(不働態化処理)後水洗し、これを大気中に1時間以上保持した。なお、不働態化処理する際の溶液温度は25°Cとした。また、このときのステンレス鋼表面の相対湿度は50%であった。
再び、カソード還元処理と不働態化処理を行った。上記の2つの処理を繰り返すことにより得られたステンレス鋼を、走査型トンネル顕微鏡により表面構造と原子像を観測した結果、ステップ−ラテス構造および原子レベルの平坦性が観察された。
また、このときの中心線平均粗さRaは0.09nmであり、最大高さRmaxは0.55nmであった。
【0026】
(比較例1)
鉄鋼をターゲットとしてスパッタリングし、シリコン基板上に150nm積層した鉄鋼被覆シリコン基板を供試材として用いた。この場合、上記実施例2と同様に機械研磨はしていない。
次に、これをアセトン中で1分間超音波洗浄後、硼酸溶液中において、飽和カロメル電極基準で−1100mVに5分間、−1500mVに15分間、−1100mVに15分間保持した。その後電位を−600mVに15分間保持した。
この場合安定な不働態皮膜が形成される電位よりわずかに卑な電位に保持したため、供試材の表面に酸化物の成長があまり起こらず、原子像の観測は困難だった。
このように、本発明の条件を満たしていないものは、鉄鋼表面に均一な酸化膜が形成されず、平坦性に欠けるという問題が発生した。また、このとき実施例1と同程度の耐食性の向上は認められなかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、鉄鋼又は鉄鋼による表面被覆層の平坦性を向上させることにより、鉄鋼又は鉄鋼による表面被覆層の表面に形成される酸化膜の性状を改善して耐食性を向上させ、かつ汚れ等の吸着が少なく清浄性において格段に優れた表面を有する。
これによって、例えば真空容器に使用した場合には、真空容器内壁のガス吸着サイトが少なく、迅速に高真空に到達させることができ、より高い真空環境を得ることができる。
また、スパッターデポジット等による表面被覆層にも適用できるので、鉄鋼もしくはそれ以外の金属またはセラミックス等の材料を基板として鉄鋼による表面被覆層を形成し、上記と同様な効果を得ることができる著しい特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 鉄鋼表面の走査型トンネル顕微鏡の観察例であり、鉄鋼を基板上にスパッターデポジットし、不働態化処理により表面皮膜を形成した場合のステップ−ラテス構造を示す。
【図2】 鉄鋼表面の走査型トンネル顕微鏡の観察例であり、同鉄鋼を基板上にスパッターデポジットし、不働態化処理により表面皮膜を形成した場合のテラス上における原子像を示す。

Claims (11)

  1. 電気化学的処理として、純鉄若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)を不働態化させる溶液中で−800mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位で表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を−300〜1000mVに保持して不働態化処理する純鉄若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)又は純鉄若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)による表面被覆層の表面処理において、前記表面処理電位を15分間〜10時間保持し、不働態化処理後、前記純鉄若しくは鉄鋼表面を相対湿度50%未満のより低い湿度環境に保持することにより、中心線表面粗さRaが10nm以下及び最大高さRmaxが30nm以下の電気化学的処理表面を形成することを特徴とする原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄又若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)又は純鉄若しくは鉄鋼(ステンレス鋼を除く)による表面被覆層表面処理方法。
  2. 電気化学的処理として、ステンレス鋼を不働態化させる溶液中で−800mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位で表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を−300〜1000mVに保持して不働態化処理するステンレス鋼又はステンレス鋼による表面被覆層の表面処理において、前記表面処理電位を15分間〜10時間保持し、かつカソード還元工程と不働態化処理工程を繰り返し、不働態化処理後、ステンレス鋼表面を相対湿度50%未満のより低い湿度環境に保持することにより、中心線表面粗さRaが10nm以下及び最大高さRmaxが30nm以下の電気化学的処理表面を形成することを特徴とする原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張したステンレス鋼又はステンレス鋼による表面被覆層表面処理方法。
  3. 表面処理電位を700〜900mV(飽和カロメル電極基準)に保持して不働態化処理することを特徴とする請求項1又は2記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法。
  4. 不働態化処理する際の溶液温度を室温(20°C)〜100°Cの範囲の温度にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法。
  5. 溶液温度を30°Cから100°Cの範囲の温度にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法。
  6. 電気化学的処理として、純鉄若しくは鉄鋼を不働態化させる溶液中で−800mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位で表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を−300〜1000mVに保持して不働態化処理する純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層の表面処理において、不働態化処理後、純鉄若しくは鉄鋼表面を相対湿度50%未満のより低い湿度環境に保持し、中心線表面粗さRaが10nm以下及び最大高さRmaxが30nm以下の電気化学的処理表面を形成することを特徴とする原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法。
  7. 不働態化処理後、純鉄若しくは鉄鋼表面を相対湿度50%未満のより低い湿度環境に保持することを特徴とする請求項1、3〜5のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法。
  8. カソード還元工程と不働態化処理工程を繰り返すことを特徴とする請求項1、3〜7のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法。
  9. 純鉄若しくは鉄鋼を不働態化させる溶液として、硼酸、過塩素酸、酢酸、硝酸、硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、フッ化水素酸から選択した1種類の溶液又は2種類以上の混合溶液又はそれらを50%以上含む溶液を用いて不働態化処理を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法。
  10. 中心線表面粗さRaが1nm以下及び最大高さRmaxが3nm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は純鉄若しくは鉄鋼による表面被覆層表面処理方法。
  11. スパッターデポジットにより被覆した被覆層であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の原子レベルで平坦なテラスの広さを拡張した純鉄若しくは鉄鋼又は鉄鋼による表面被覆層表面処理方法。
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