JP3908291B2 - 耐ハロゲン系ガス腐食性及び耐ハロゲン系プラズマ腐食性に優れたコーティング膜並びに該コーティング膜を施した積層構造体 - Google Patents
耐ハロゲン系ガス腐食性及び耐ハロゲン系プラズマ腐食性に優れたコーティング膜並びに該コーティング膜を施した積層構造体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は腐食性の強いガスまたはプラズマに対して強い抵抗性を示すコーティング膜及び積層構造体に関し、詳細には、塩素,臭素,弗素等のハロゲンまたは該ハロゲン含有化合物ガス(以下ハロゲン系ガスと言う)、更には該ハロゲン系ガス雰囲気で形成されたハロゲン系プラズマに対して優れた耐食性を示すコーティング膜及びこのコーティング膜を施した積層構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造装置においては素子の高集積化が進み、配線間隔はサブミクロン単位の高精度化が要求される様になってきた。一方この様な素子では微粒子や細菌が付着することによる短絡は製品不良の直接的原因となる為、半導体製造プロセスで使用されるガスや洗浄水は夫々超高純度であることが要求されている。そのため真空チャンバー内壁、電極などの反応室構成材料、或はガス導入配管等についても、不純物ガスや微粒子を極力発生させることがない様な工夫を払うことが必要になっている。
【0003】
そこでガス放出性が少ない点及び一般的耐食性が優れている点などから、ステンレス鋼やアルミニウム合金が賞用されているが、この様な素材であっても、反応ガスやエッチングガスとして汎用されるハロゲン系ガス或はこれに由来するハロゲン系プラズマによる腐食は避け難く、例えばこれらの腐食環境に対して優れた耐食性を示すTiN,AlN,Al2 O3 等の皮膜を形成することが提案されている(実公昭61−13555、特開平1−312088、特公平5−53871)。またステンレス鋼について見ると、例えばオーステナイト系ステンレス鋼を電解研磨した後、酸化性ガス雰囲気中で加熱することによって非晶質酸化皮膜を形成し、表面からのガス放出量を抑制すること(特開昭64−87760)や、微粒子の発生源になったり不純物の吸着・放出サイトともなる非金属介在物の量を可及的に少なくすること(特開昭63−161145)などが知られている。
【0004】
しかしながら上記TiN,AlN,Al2 O3 等の皮膜は膜質によって耐ハロゲン系ガス腐食性に大きな差が現われ、特に、より腐食性の強い塩化水素ガスや弗化水素ガス、更にはハロゲン系プラズマに対して常に良好な耐食性を発揮させるということはできない様である。またステンレス鋼についての上記改質技術も上記の様な強い腐食環境の中では耐食効果が安定しない様である。そして腐食が始まると腐食生成物がガスの吸着・放出サイトとなってガス純度の維持が困難になるだけでなく、腐食生成物自身が微粒子となって、例えば装置の内面或は試料表面に付着して汚染する等、種々の不都合を招く。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、常に安定して優れた耐ハロゲン系ガス腐食性及び耐ハロゲン系プラズマ腐食性を発揮することのできるコーティング膜並びに該コーティング膜を施した積層構造体の提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のコーティング膜とは、Alの酸化物薄膜で構成され、該薄膜層中に不純物として含有されるSi系物質の含有量がSiに換算して5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である様な緻密性を示すものであることを要旨とする。またより好ましいのは該Si系物質の大きさを0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下としたものである。またこのコーティング膜における緻密さは、Al酸化物のエッチング能力を有するエッチング液でこれを処理した場合における非エッチング部について、30×50(μm)の領域内で観察される不均一部分の面積率が10%以下、好ましくは5%以下となる様な緻密さであることが推奨される。これは耐ハロゲン系ガス腐食性及び耐ハロゲン系プラズマ腐食性に優れたAl2 O3 膜は緻密な非晶質膜であることに由来し、この様な非晶質の均一性が上記耐食性にとって重要な鍵を握っているのである。
【0007】
更に本発明のコーティング膜は厚さ0.1〜20μmであることが望ましく、またその製造方法の一例としては、任意の基材上に、スパッタリング法で形成することが最適方法として説明される。
【0008】
【発明の実施の形態】
アルミニウム酸化物を金属材料等の保護皮膜として利用することは、既述の如く公知である(実公昭61−13555等)が、先に述べた様に膜質によって耐食性が左右されるという問題があったため、膜質と耐食性の関係について種々検討した。その結果耐ハロゲン系ガス腐食性及び耐ハロゲン系プラズマ腐食性を安定して有効に発揮させるためには、アルミニウム酸化物薄膜の膜質としては、前述の如く不純物であるSi系物質の含有量、更に好ましくはその大きさを制御し、且つ必要であれば前述の如くAl2 O3 のエッチング能力を有するエッチング液によってはエッチングされない部分(以下単に非エッチング部分ということがある)の面積を少なくするといった制御をなすべきであるとの知見を得たのである。
【0009】
本発明者らの検討によると、耐ハロゲン系ガス腐食性及び耐ハロゲン系プラズマ腐食性を発揮する為には、Al酸化物膜は可及的に緻密であることが必要であり、且つこの緻密さが種々の観点から規定され得ることを見出して別途特許出願を行なっているが、ここではSi系物質(SiあるいはSi化合物)の含有量、及び好ましくはその大きさに注目した。即ちSi系物質がAl酸化物膜中に存在すると、その部分はハロゲン系ガス或はハロゲン系プラズマ中において反応活性が高まり、種々の反応生成物、例えば四弗化シリコンを形成する。この化合物はプラズマ反応を促進する働きを有し[図1の(a)参照]、Al酸化物膜自体にピットや局部剥離を生じて保護効果を失わせ、その結果Al酸化物膜で被覆された基板の腐食が進行するという問題がある。
【0010】
しかしSi系物質の含有量がSiに換算して5重量%以下(好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下)に抑え、より好ましくはこれを微細分散(大きさとして0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下)させたものでは、アルミニウム酸化物膜が全体として非常に緻密なものとなり、上記耐食性を十分に保持し得ることが分かった。これは上記の如き含有・分散状態ではプラズマとの反応性が低下する為である。
【0011】
この様な緻密さは、前記非晶質の均一性として認識することができ、前記エッチング液を用いたときの非エッチング部分の表面積率[2000倍のSEM撮像で観察したときの30×50(μm)の視野内で観察され得る不均一部分面積率]が10%以下、好ましくは5%以下であることによって検証できる。即ちアルミニウムの酸化物に対してエッチング能力を有するエッチング液を用いてエッチングした場合において、AlやO以外の不純物元素が存在する試料、或は結晶質部分が混在する試料では、その部分がエッチングされずに残るが、この非エッチング部の前記面積率が多いものは全体として緻密性を欠くと言わなければならない。そしてこの様な非エッチング部にはハロゲン系ガスやハロゲン系プラズマが集中し、図1の(b)に示す如く選択的・局所的な腐食を惹起するのである。その結果非エッチング部(全体の非晶質Al2 O3 膜という視野から見たときの不均整部分)では膜のピットや剥離が進行し、Al2 O3 膜としての保護機能を喪失し、基板の早期腐食を招く。本発明者らはこの様な非エッチング部面積と前記した耐ハロゲン系ガス腐食性や耐ハロゲン系プラズマ腐食性の間には再現性の高い対応があることを確認した。
【0012】
アルミニウム酸化物膜の厚さは本発明を制限しないが、0.1μm未満であると、基板表面を完全に被覆することが困難で、被覆欠陥を内在して基板に部分的な腐食を招くので、0.1μm以上が好ましい。より好ましくは0.5μm以上である。一方上限については、膜厚の増大に伴って耐食効果が向上する反面、膜にかかる絶対的な応力が増加してコーティング層の剥離や割れを招き易くなるので、安全性という観点からは20μm以下とすることが望まれる。
【0013】
アルミニウム酸化物膜の形成方法としては、特に制限される訳ではないが、スパッタリング法または真空蒸着法が特に好ましく、この方法であれば、成膜条件を制御することにより、非晶質アルミニウム酸化物膜を均一に形成して良好な耐弗素プラズマ性を享受することができる。尚スパッタリング法としても特に制限されないが、代表的にはRF(高周波)マグネトロンスパッタリング法が、また真空蒸着法としては特にイオンアシスト真空蒸着法を採用することが望まれる。これらに対しイオンプレーティング法や化学蒸着法等を採用すると結晶性アルミニウム酸化物膜が生成し易く、また組成ズレ等の問題を生じる恐れがあって好ましくない場合がある。
【0014】
本発明の非晶質アルミニウム酸化物膜によって被覆することが望まれる基材については一切制限しないが、代表的なものを示すと、Al,Mg,鋼などの各種金属材料の他、Si,Al,Ti等の酸化物,炭化物,窒化物,ほう化物などのセラミックス類、更にはプラスチックス類などが挙げられる。またその形状も板,棒,線,管など、目的・用途に応じて広範な適用が可能である。
【0015】
【実施例】
実施例1
種々の基板材料上に気相成膜法によってアルミニウムの酸化物被覆層を形成した。また、比較のため無処理材も供試した。被覆材については化学分析による組成分析と、アルミニウム酸化物用エッチング液によるエッチング状態観察によってその特性を調査した。これら材料の耐ハロゲン系ガス腐食性を評価するため、5%塩素−アルゴン混合ガス中、400℃、240分のガス腐食試験を行ない、試験後の外観により耐食性を評価した。また、485℃、RF出力300WでのNF3 プラズマ照射試験を延べ500分行ない、試験後の外観により耐プラズマ腐食性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1より明らかな様に本発明の規定条件をすべて満たすNo.1〜8の実施例では、いずれの腐食試験でも優れた耐食性を示している。
これに対して比較例No.9〜15は夫々耐食性が不十分であり、特にNo.11〜15はプラズマ中での耐食性が極めて劣っている。
実施例2
実施例1と同様の実験を行ない、表2に示す結果を得た。
【0018】
【表2】
【0019】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されたものであり、ハロゲン系ガス、ハロゲン系プラズマに対して優れた耐食性を示すコーティング膜構成及び当該膜の施された積層構造体が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム酸化物膜に欠陥がある場合の腐食進行状況を説明する図。
Claims (5)
- Alの酸化物で構成された薄膜であり、不純物として含有されるSiおよびSi化合物の含有量がSiに換算して5重量%以下であり、前記薄膜をAlの酸化物に対してエッチング能力を有するエッチング液を用いてエッチングした後に表面に現れる非エッチング部分の面積率が、SEMを用いて2000倍で観察したときの30×50(μm)の視野内において4%以下であることを特徴とする耐ハロゲン系ガス腐食性及び耐ハロゲン系プラズマ腐食性に優れた非晶質コーティング膜。
- 前記SiおよびSi化合物の大きさが0.5μm以下である請求項1に記載のコーティング膜。
- 厚さが0.1〜20μmである請求項1または2に記載のコーティング膜。
- スパッタリング法によって形成されたものである請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング膜。
- 請求項1〜4のいずれかに記載された非晶質コーティング膜を基材上に形成したものであることを特徴とする積層構造体。
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- 1995-10-03 JP JP25658195A patent/JP3908291B2/ja not_active Expired - Lifetime
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