JP3772208B2 - ニッケル−クロム合金表面処理層及び表面処理方法 - Google Patents

ニッケル−クロム合金表面処理層及び表面処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般構造材料またはコバルト基磁気記憶媒体の下地層として使用されるニッケル−クロム合金の表面平坦性と耐食性を向上させる技術に関する。
ニッケル−クロム合金母材表面が清浄であるほど、その上に形成される酸化皮膜が結晶化しやすくなるが、本発明は電気化学的表面処理により、原子レベルでの平坦(平滑)化された面を備え、これにより従来の粗い表面よりも耐食性を向上させることに関する。
また、原子レベルで平坦な表面を用いることによってその上に積層されるコバルト基の磁気記憶媒体の結晶性向上に関する。さらに水、ガス、細菌等の吸着サイトを減少させることのできるニッケル−クロム合金表面処理層及びそれらの表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニッケル−クロム合金の耐食性を高めるために、あるいはニッケルークロム合金の上に結晶性の良い薄膜を形成させるために、あるいはニッケル−クロム合金を高真空容器として使用する場合等において、水、ガス、細菌等の吸着を抑制するために、ニッケル−クロム合金表面に均質かつ平坦な結晶性酸化皮膜を形成することが要求される。
ニッケル−クロム合金の結晶構造は鉄鋼の場合の体心立方格子とは異なり、面心立方格子である。また、鉄鋼とは化学組成が違うため、ニッケル−クロム合金の不働態化電位も異なる。例えば、純鉄の不働態化電位は−800mV(飽和カロメル電極基準)であるが、ニッケル−クロム(10.09at%)合金の場合は−250mVである。
したがって、鉄鋼(ステンレス鋼を含む)の条件をそのまま適用することはできず、ニッケル−クロム合金に適した表面処理方法を確立する必要がある。
【0003】
従来、高耐食性を得るために、クロムとアルミニウムを含むニッケル基合金が使われているが、このときの表面仕上げの粗さはRaで1.6μmと規定されているだけで(特開2001−62595)、原子レベルの平坦さにはほど遠い。また、材料のリサイクル性を考えた場合、より少ない2つの組成で耐食性を上げることに意味がある。
Co−Ni−Crの磁気記録層の耐食性保護膜として、TaZr1−xが使われているが、ジルコニウムや高価なタンタルなど多くの組成が使われている(特開平5−54373)。
高耐食性と表面平滑性を求めて、Zn−Ni−Cr−Al系電気めっき鋼板とその製造方法が提案されているが、表面粗さの規定が無く、また、多くの組成を使う方法となっている(特開平6−65700)。
いずれの場合もNi−Cr以外の成分の使用が必須となっており、しかも表面仕上げの程度が原子レベルの平坦さにはほど遠い。
【0004】
また、耐水性を求めてNi−Crを含む硬金属層の物理蒸着や電着などの方法が提案されているが、この場合の表面粗さは1.0μm<Rz<90μmと規定されており(特開2000−144053)、原子レベルの平坦化にはほど遠いものである。
低融点のろう材の粒を製造する方法としてNi−Cr薄膜をめっきする方法が提案されている。しかし、この場合は表面粗さの数値が規定されておらず、原子レベルの平坦化にはほど遠い。また、磁気記録ディスクの基板としてNi−Cr−Oを所望の粗さにスパッター形成する方法が提案されている(特開平5−205243)が、数値の規定が無く、原子レベルの平坦さまでは言及していない。
【0005】
一方で、オングストロームレベルの粗さを規定している磁気記録媒体の製造方法がいくつか提案されている (特表2000−503448,特表2000−516009、特開平7−240024)。しかし、いずれもNi、Cr以外の金属を含む材料であり、 Ni−Crだけの合金の表面粗さを規定していない。また、オングストロームレベルの粗さであっても、原子1個レベルの平坦性を有する結晶性表面であるとの記載はなく、原子レベルの平坦さは実現されていない。
このようなことから、より高い耐食性、耐水性、保護性、結晶性を求めて、原子レベルの平坦性を備えた表面処理層を備えたニッケル−クロム合金およびニッケル−クロム合金による表面被覆層の表面処理法の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はニッケル−クロム合金母材表面またはニッケル−クロム合金の表面被覆層を備えた材料の平坦性を原子レベルまで向上させることにより、ニッケルとクロムという二つだけの合金組成で、表面に形成される酸化膜の性状を改善して耐食性を向上させ、平坦な表面結晶性を有し、かつ水、ガス、細菌、汚れ等の吸着が少なく、清浄性において格段に優れた表面を有するニッケル−クロム合金及びその表面処理方法を確立する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電気化学的表面処理法を改善し、ニッケル−クロム合金(Ni−0.5〜99.5at%Cr、好ましくはNi−0.5〜50at%Cr)又は同ニッケル−クロム合金の表面被覆層を備えた材料を、原子レベルで平坦化することにより、耐食性を一層向上させ、かつガスや細菌吸着の少ない表面処理層を有するニッケル−クロム合金等の材料を得ることができるとの知見を得た。
この知見に基づき本発明は、
1.電気化学的処理として、ニッケル−クロム合金を不働態化させる溶液中で−500mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位に維持して表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を0〜950mVに保持して不働態化処理することを特徴とする原子レベルで平坦なテラス構造を有するニッケル−クロム合金表面処理層及び表面処理方法
2.ニッケルークロム合金中のクロム濃度が6.1at%未満の場合は表面処理電位を400〜950mV(飽和カロメル電極基準)に、6.1at%以上〜11.9at%未満では200〜950mVに、11.9at%以上では0〜950mVに保持して不働態化処理することを特徴とする上記1記載のニッケル−クロム合金表面処理層及び表面処理方法
3.電気化学的処理として、ニッケル−クロム合金を不働態化させる溶液中で−500mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位に維持して表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を0〜950mVに保持して不働態化処理する際に、溶液温度を室温よりも低い1°C〜室温(25°C)の範囲で不働態化処理し、原子レベルで平坦なテラスの幅を拡張させることを特徴とする原子レベルで平坦なテラス構造を有するニッケル−クロム合金表面処理層及び表面処理方法
4.中心線表面粗さRaが10nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする上記1〜3のそれぞれに記載のニッケル−クロム合金表面処理層及び表面処理方法
5.中心線表面粗さRaが1nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする上記1〜3のそれぞれに記載のニッケル−クロム合金表面処理層及び表面処理方法
6.最大高さRmaxが30nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする上記1〜5のそれぞれに記載のニッケル−クロム合金表面処理層及び表面処理方法
7.最大高さRmaxが3nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする上記1〜5のそれぞれに記載のニッケル−クロム合金表面処理層及び表面処理方法
を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、電気化学的処理方法について鋭意研究を重ねた結果、ニッケル−クロム合金表面を覆っている汚れや非晶質の酸化皮膜を除去した後、直ちに不働態化処理しその条件を特定することにより、その後の酸化表面が徐々に再構成されて、原子レベルで平坦な表面を得ることに成功した。
すなわち、ニッケル−クロム合金製造後に形成された非晶質の酸化物や水酸化物及び汚れを除去することが、不働態化電位に保持したときに形成される酸化皮膜の高純度化を可能にしている。
この不純物を含まない酸化皮膜が水分を排除して結晶化し、原子レベルで平坦な表面を形成させることができる。その表面状態は下記に説明する走査型プローブ顕微鏡で原子像を観測することにより確認できた。
【0009】
ニッケル−クロム合金表面の汚れや付着物により、そこに常時水分が保持されるようになり、そのようなところから錆が生成してゆく。
本発明の処理方法のように原子レベルで平坦な表面では、処理前に比べて汚れ、細菌、水分等の吸着サイトとなる表面の凸凹の量を著しく減少させることができる。汚れや細菌吸着を減少させることによって清浄なニッケル−クロム合金表面を保ち、耐食性及び抗菌性を向上させるという極めて有効な方法を含んでいる。
【0010】
本発明の平坦化処理方法の概略は、次の工程からなる。
(1)機械研磨工程
(2)表面清浄化処理工程
(3)上記工程直後の不働態化処理工程
(4)大気中に保持する工程
これによりニッケル−クロム合金に原子レベルで平坦な表面を得ることができる。
【0011】
次に、上記工程をそれぞれ詳しく説明する。
前記(1)の機械研磨工程においては、例えば#250〜#3000までの耐水研磨紙をいくつか組み合わせて用い研磨した後、1μm以下、好ましくは0.25μmのダイヤモンドぺーストを用いてバフ研磨する。
その後、エチルアルコール、プロピルアルコールまたはアセトン中で超音波洗浄機を用いて脱脂洗浄して十分な洗浄を行う。スパッタリングによって被膜を形成した材料は、すでに被覆層自体が研磨面と同等以上の平滑面を有するので、この機械研磨工程は不要であり、板材等のバルク材に用いることができる。
【0012】
次に、前記(2)の表面清浄化処理の工程において、希硫酸、好ましくは0.1M/Lの硫酸溶液中において−500mV〜−2000mV(飽和カロメル電極基準)の、いくつかの電位で、5分間以上カソード領域に保持することによって非晶質皮膜や表面の汚れを除去し、表面清浄化を図る。この工程は、本発明のニッケル−クロム合金上に原子レベルで平坦な表面を作成する重要な工程である。
【0013】
前記(3)の不働態化処理工程においては、清浄化処理後、他の電位を経由することなく、直ちに不働態化電位に5分間以上保持する。
このときの保持電位は図1に示すように、6.1at%未満のCrを含むニッケル−クロム合金の不働態領域、すなわち+400〜950mVの電位とするのが良い。また、6.1at%以上11.9at%未満のCrを含むニッケル−クロム合金の場合には+200〜950mVの電位とし、11.9at%を越えるCrを含むニッケル−クロム合金の場合には0〜950mVの電位とするのが良い。
【0014】
さらに、前記(4)の大気中保持工程においては、不働態化処理後、蒸留水やイオン交換水で表面を洗い流し、水を吹き飛ばした後、大気中、または10at%以上の酸素を含む気体中に保持する。この行程において、不働態化により形成された酸化皮膜が結晶化し、原子レベルで平坦な表面を得ることができる。
上記でも述べたように、原子レベルで平坦であることは走査型プローブ顕微鏡で原子像を観測することにより確認できる。
このとき、テラスにおける中心線平均粗さRaを10nm以下、最大高さRmaxを30nm以下にすることができる。なお、中心線平均粗さRaを10nm以下に、最大高さRmaxを30nm以下にする理由は、原子レベルの平坦化を期待できるからである。好ましくは、テラスにおける中心線平均粗さRaを1nm以下及び又は最大高さRmaxを3nm以下とするのが良い。
【0015】
下記の例では特定のニッケル−クロム合金を用いて説明しているが、これらの例以外のニッケル−クロム合金においても当然本発明が適用でき、同等の作用・効果を有する。すなわち、本発明のニッケル−クロム合金は、Ni−0.5〜99.5at%Crであり、好ましくはNi−0.5〜50at%Crである。
また、本発明において使用できるニッケル−クロム合金はニッケル−クロム合金板等のバルク材だけでなく、ニッケル−クロム合金と同成分の皮膜をめっき、スパッタリング等の物理的蒸着法、化学的蒸着法等の手段により、ニッケル−クロム合金(バルク材)や他の金属またはセラミックス等に被覆層を形成した材料にも適用できる。
例えば、機械研磨ができないような装置や器具の構造あるいは材料に対しては、スパッター等によりニッケル−クロム合金と同成分の被覆層を形成し、これに本発明の方法による表面処理を施し、酸化膜の性状を改善して耐食性を向上させ、かつガスや細菌等の吸着が少なく清浄性において格段に優れた表面をもつ材料とすることができる。
いずれの場合においても、ニッケル−クロム合金または同等の表面被覆層をもつ表面の問題であり、本発明の条件を達成できれば、同等の作用・効果を有する。
本発明は、これらの全てを含む。
【0016】
本発明で処理したニッケル−クロム合金表面の走査型プローブ顕微鏡観察例を、図2に示す。図2はニッケル−4.2at%クロム合金を基板上にスパッタリングして、ニッケル−5.57at%クロム合金表面皮膜を厚さ910nmだけ形成し、これに本発明の処理を施したものである。
この場合の表面における中心線平均粗さRaを走査型プローブ顕微鏡像から求めると、0.007nmであり、最大高さRmaxは0.067nmであった。原子の並びが観測されており、原子レベル平坦化が達成されている。
【0017】
【実施例および比較例】
次に実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲における他の例、態様あるいは3時間以内の表面処理時間、±3V以内の表面処理電位、100°C以下の溶液温度、酸性溶液の種類及び濃度、工程の繰り返し等の変形等を当然含むものである。
【0018】
(実施例1)
ニッケル−13at%クロム合金の板材を供試材として用いた。これを、#400,#600、#1000、#1500の耐水研磨紙および0.25μmのダイヤモンドペーストを用いて機械研磨し、その後エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びアセトン中で各3分間づつ超音波洗浄した。
次に、10°Cに冷却した0.1M/Lの硫酸溶液中において、飽和カロメル電極基準で−1000mVに5分間、−1500mVに3秒間、−1000mVに2分間、−800mVに1分間、それぞれ保持した。そして、その直後に+800mVに15分間保持した後水洗し、これを大気中に保持した。
処理溶液の温度を室温以下にするのは不働態処理の初期に形成される酸化物の結晶核生成密度を少なくし、それの粒成長速度を低下させることにより原子レベルで平坦なテラスの拡張を促進するためである。
これにより得られたニッケル−13at%クロム合金を、走査型プローブ顕微鏡により原子像を観測した結果、原子レベルの平坦性が観察された。また、このときの中心線平均粗さRaは0.11nmであり、最大高さRmaxは0.63nmであった。また、本実施例1の表面処理を施したものは、従来のものに比べ耐食性が20%以上向上した。
【0019】
(実施例2)
ニッケル−9.9at%クロム合金をターゲットとしてスパッタ−し、シリコン基板上に960nm積層したニッケル−10.09at%クロム合金被覆シリコン基板を供試材とし使用した。この場合、機械研磨はしていない。
エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びアセトン中で各3分間づつ超音波洗浄した。次に、0.1M/Lの硫酸溶液中において、飽和カロメル電極基準で−1000mVに5分間、−1500mVに3秒間、−1000mVに2分間、−800mVに1分間、それぞれ保持した。そして、その直後に+400mVに15分間保持した後水洗し、大気中に保持した。
これにより得られたニッケル−10.09at%クロム合金を同様に、走査型プローブ顕微鏡により表面構造と原子像を観測した結果、図3に示したように原子レベルの平坦性が観察された。
また、このときの中心線平均粗さRaは0.005nmであり、最大高さRmaxは0.058nmであった。また、本実施例2の表面処理を施したものは、従来のものに比べ耐食性が20%以上向上した。
【0020】
(実施例3)
ニッケル−24.3at%クロム合金をターゲットにしてスパッターし、シリコン基板上に1050nm積層したニッケル−21.24at%クロム合金皮膜を供試材とし使用した。この場合、機械研磨はしていない。
次に、これをアセトン中で5分間超音波洗浄後、0.1M/Lの硫酸溶液中において、飽和カロメル電極基準で−1000mVに5分間、−1500mVに3秒間、−1000mVに2分間、−800mVに1分間、それぞれ保持した。そして、その直後に+200mVに15分間保持した後水洗し、大気中に保持した。
このときのステップ−テラス構造と原子像を図4(a)、(b)に示したが、その表面粗度は中心線平均粗さRaでそれぞれ0.039nm、0.004nm、最大高さRmaxは0.325nm、0.044nmであった。
また、本実施例3の表面処理を施したものは、従来のものに比べ耐食性が20%以上向上した。
【0021】
(比較例1)
ニッケル−9.9at%クロム合金をターゲットとしてスパッターし、シリコン基板上に960nm積層したニッケル−10.09at%クロム合金被覆シリコン基板を供試材として用いた。この場合、上記実施例3と同様に機械研磨はしていない。
次に、これをアセトン中で5分間超音波洗浄後、0.1M/Lの硫酸溶液中において、飽和カロメル電極基準で−1000mVに5分間、−1500mVに3秒間、−1000mVに2分間、−800mVに1分間保持した。
そして、その後電位を0mVに15分間保持した後水洗し、大気中に保持した。
0mVの場合は酸化物濃度の低い不働態皮膜しかできないため、酸化物のテラスがあまり成長できず、テラスや原子像が観測されなかった。
そして、このときの供試材の表面粗度は中心線平均粗さRaが1.24nm、最大高さRmaxが7.03nmであった。
このように、本発明の条件を満たしていないものは、ニッケル−クロム合金表面に均一な酸化膜が形成されず、平坦性に欠けるという問題が発生した。また、このとき実施例3と同程度の耐食性の向上は認められなかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、ニッケル−クロム合金母材表面又はニッケル−クロム合金による表面被覆層の平坦性を向上させることにより、ニッケル−クロム合金又はニッケル−クロム合金による表面被覆層の表面に形成される酸化膜の性状を改善して耐食性を向上させ、かつ水、ガス、細菌等の吸着が少なく清浄性において格段に優れた表面を有する。
これによって、例えば真空容器に使用した場合には、真空容器内壁の水やガス吸着サイトが少なく、迅速に超高真空に到達させることができ、より高い真空環境を得ることができるという優れた効果を有する。また、原子レベルで平坦な表面には細菌が着きにくいため、エアコンや洗濯機の洗濯水槽など、細菌発生を嫌う機器用の材料としても適する材料表面である。
本方法は、スパッタ−膜等の表面被覆層にも適用できるので、ニッケル−クロム合金板もしくはそれ以外の金属またはセラミックス等の材料を基板としてニッケル−クロム合金による表面被覆層を形成し、上記と同様な効果を得ることができる著しい特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】クロム濃度が5.57at%、10.09at%、21.24at%のニッケル−クロム合金の分極曲線であり、この図からクロム濃度に応じて電気化学的処理を行う不働態領域を見出すことができる。
【図2】電気化学処理されたニッケル−5.57at%クロム合金表面皮膜の原子像を走査型プローブ顕微鏡で観察した例である。
【図3】電気化学処理されたニッケル−10.09at%クロム合金表面皮膜の原子像を走査型プローブ顕微鏡で観察した例である。
【図4】電気化学処理されたニッケル−21.24at%クロム合金表面皮膜のステップ−テラス構造(a)と原子像(b)を走査型プローブ顕微鏡で観察した例である。

Claims (14)

  1. 電気化学的処理として、ニッケル−0.5〜50at%クロム合金を不働態化させる酸性溶液中で−500mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位に維持して表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を0〜950mVに保持して不働態化処理し、大気中に保持されている間に徐々に再構成させて得られた原子レベルで平坦なテラス構造の酸化皮膜を有するニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理層。
  2. ニッケル−0.5〜50at%クロム合金中のクロム濃度が6.1at%未満の場合は酸性溶液中における表面処理電位を400〜950mV(飽和カロメル電極基準)に、6.1at%以上〜11.9at%未満では200〜950mVに、11.9at%以上では0〜950mVに保持して不働態化処理し、大気中に保持されている間に徐々に再構成させて得られた請求項1記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理層。
  3. 電気化学的処理として、ニッケル−0.5〜50at%クロム合金を不働態化させる酸性溶液中で−500mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位に維持して表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を0〜950mVに保持して不働態化処理する際に、溶液温度を1°C〜25°Cの範囲で不働態化処理し、原子レベルで平坦なテラスの幅を拡張させることにより得られた原子レベルで平坦なテラス構造の酸化皮膜を有するニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理層。
  4. 中心線表面粗さRaが10nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理層。
  5. 中心線表面粗さRaが1nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理層。
  6. 最大高さRmaxが30nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理層。
  7. 最大高さRmaxが3nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理層。
  8. 電気化学的処理として、ニッケル−0.5〜50at%クロム合金を不働態化させる酸性溶液中で−500mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位に維持して表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を0〜950mVに保持して不働態化処理し、大気中に保持されている間に徐々に再構成させることを特徴とする原子レベルで平坦なテラス構造の酸化皮膜を有するニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理方法。
  9. ニッケル−0.5〜50at%クロム合金中のクロム濃度が6.1at%未満の場合は酸性溶液中における表面処理電位を400〜950mV(飽和カロメル電極基準)に、6.1at%以上〜11.9at%未満では200〜950mVに、11.9at%以上では0〜950mVに保持して不働態化処理し、大気中に保持されている間に徐々に再構成させることを特徴とする請求項8記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理方法。
  10. 電気化学的処理として、ニッケル−0.5〜50at%クロム合金を不働態化させる酸性溶液中で−500mV(飽和カロメル電極基準)より卑な電位に維持して表面皮膜や汚れを除去した直後に、表面処理電位を0〜950mVに保持して不働態化処理する際に、溶液温度を1°C〜25°Cの範囲で不働態化処理し、原子レベルで平坦なテラスの幅を拡張させることを特徴とする原子レベルで平坦なテラス構造の酸化皮膜を有するニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理方法。
  11. 中心線表面粗さRaが10nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理方法。
  12. 中心線表面粗さRaが1nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理方法。
  13. 最大高さRmaxが30nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理方法。
  14. 最大高さRmaxが3nm以下の電気化学的処理表面を有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のニッケル−0.5〜50at%クロム合金表面処理方法。
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