JP4003375B2 - 熱現像感光材料とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料及びその製造方法に関し、詳しくは高い感度及び低いカブリを有し、生保存性が改良された熱現像感光材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀感光材料は高い感光性、記憶性、高いS/N特性という優れた特性を持つハロゲン化銀微粒子を利用して作られている。特に近年、産業用記録材料に於ては環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。
【0003】
こういった背景のもと、半導体レーザーを光源とし溶液系処理化学薬品を全く使用しない、熱現像処理による医療用画像記録システムが開発され、熱現像感光材料(以下、単に感光材料ともいう)が登場してきている。しかし溶液系処理と異なり熱現像処理では、フィルム中にハロゲン化銀が残留するため、画像保存性が劣化してしまう。そこで、ハロゲン化銀の微粒子が使用されているのが現状である。
【0004】
その為に感光材料の更なる高感度化が求められ、特に赤外域での分光増感技術開発の要望が高まっている。更なる高感度化が達成できると、感光材料への露光量を減少でき、装置の負荷を軽減するだけではなく省銀に繋がり、環境保全や高画質を達成することができる。高感度化は材料開発の基本である。今までも、ハロゲン化銀、分光増感色素、強色増感剤、化学増感剤の工夫がなされてきたが、いずれも高感度のレベルが不十分なばかりでなく、併せてカブリや画像保存性が劣化する欠点が顕著であり、未だ満足するものではなかった。特に赤外分光増感色素の場合には一般に、高感度化の技術負荷が高い。主な原因は赤外増感色素の安定性やハロゲン化銀への吸着性が低いことや、赤外領域に極大吸収を持ち色増感する色素は共役鎖が長く、周りの影響を受けて共役鎖部分が変化を受け易いことから、また最低空準位と最高被占準位の間隔が狭く、ハロゲン化銀粒子の伝導帯準位に対して最低空準位と最高被占準位が近づいていることから、カブリが生成し易くなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は高い感度及び低いカブリを有し、生保存性が改良された熱現像感光材料及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題は下記手段によって達成された。
【0007】
1)支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀及びバインダーを含有する少なくとも一層の感光層を塗設してなる、下記要件を満たすことを特徴とする熱現像感光材料の製造方法。
【0008】
(1)有機銀塩の調製から塗布液の調製までの間に、有機銀塩の一部がハロゲン変換されることによって、非感光性ハロゲン化銀が生成する工程を有すること
(2)感光性ハロゲン化銀は(1)に記載の工程とは独立に調製されること
(3)感光性ハロゲン化銀は(1)に記載の工程に先だって有機銀塩と混合されること
(4)(3)に記載の工程での混合物が分散されること
(5)(4)に記載の工程での分散物に、感光性ハロゲン化銀又は有機銀塩の少なくともいずれかへの吸着化合物を添加した後で、前記一般式(1)で表される強色増感剤が添加されること
【0013】
)前記1)に記載の製造方法により製造されることを特徴とする熱現像感光材料。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)の化合物は優れた強色増感剤である。一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
【0015】
31で表される脂肪族炭化水素基からなる2価の連結基としては、直鎖、分岐または環状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、更に好ましくは1〜12)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、更に好ましくは2〜12)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、更に好ましくは2〜12)であり、置換基を有していてもよく、例えば脂肪族炭化水素基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、更に好ましくは1〜12)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、更に好ましくは2〜12)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、更に好ましくは2〜12)であり、アリール基としては、炭素数6〜20の単環または縮環のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル)であり、複素環基としては、3〜10員の飽和、不飽和のヘテロ環基(例えば、2−チアゾリル、1−ピペラジニル、2−ピリジル、3−ピリジル、2−フリル、2−チエニル、2−ベンズイミダゾリル、カルバゾリル、等)であり、これらの基中のヘテロ環は単環であっても、他の環と縮合環を形成してもよい。これらの各基は任意の個所に置換基を有していてもよく、例えば、アルキル基(シクロアルキル基、アラルキル基を含み、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネチル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−トリル、O−アミノフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数、0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ、ジベンジルアミノ等が挙げられる。)、イミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜18、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、フェニルイミノ等が挙げられる。)アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル等が挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素1〜16、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニル、トシル等が挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、スルフィノ基、カルボキシル基、ホスホノ基、ホスフィノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノ等が挙げられる。)等が挙げられる。
【0016】
上記の基のうちヒドロキシル基、メルカプト基、スルホ基、スルフィノ基、カルボキシル基、ホスホノ基、ホスフィノ基等のような塩形成可能な基は塩であってもよい。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。置換基として好ましくは、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、アシル基、アシルアミノ基、イミノ基、スルファモイル基、スルホニル基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、スルホ基、カルバモイル基、カルボキシル基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、アシル基、アシルアミノ基、イミノ基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、スルホ基、カルバモイル基、カルボキシル基であり、更に好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、アシルアミノ基、イミノ基、ウレイド基、アミノ基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、スルホ基、カルバモイル基、カルボキシル基である。アミジノ基としては、置換基を有するものを含み、置換基としては、例えばアルキル基(メチル、エチル、ピリジルメチル、ベンジル、フェネチル、カルボキシベンジル、アミノフェニルメチル等の各基)、アリール基(フェニル、p−トリル、ナフチル、o−アミノフェニル、o−メトキシフェニル等の各基)、複素環基(2−チアゾリル、2−ピリジル、3−ピリジル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、2−イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル等の各基)等が挙げられる。
【0017】
31で表される酸素原子、硫黄原子または窒素原子を一つ以上含む2価の連結基としては、例えば以下のものが挙げられる。また、これらの組み合わせであってもよい。
【0018】
【化4】
Figure 0004003375
【0019】
ここで、Re及びRfは各々、前述したRa〜Rdに定義した内容に同義である。
【0020】
31Arで表される芳香族炭化水素基としては、好ましくは炭素数6〜30のものであり、より好ましくは炭素数6〜20の単環または縮環のアリール基であり、例えばフェニル、ナフチル等が挙げられ、特に好ましくはフェニルである。H31Arで表される芳香族複素環基としては、N、O及びSのうちの少なくとも一つの原子を含む5〜10員の不飽和のヘテロ環基であり、これらの基中のヘテロ環は単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。このようなヘテロ環基中のヘテロ環として、好ましくは5〜6員の芳香族ヘテロ環及びそのベンゾ縮合環であり、より好ましくは窒素原子を含む5〜6員の芳香族ヘテロ環及びそのベンゾ縮合環であり、更に好ましくは窒素原子を1〜2原子含む5〜6員の芳香族ヘテロ環及びそのベンゾ縮合環である。
【0021】
ヘテロ環基の具体例としては、例えばチオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾリン、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、カルバゾール、等から誘導される基が挙げられる。ヘテロ環基として、好ましくはイミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、インドール、インダゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾリン、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、カルバゾールからなる基であり、更に好ましくは、イミダゾール、ピリジン、ピラジン、キノリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾリン、ベンゾトリアゾール、カルバゾールから誘導される基が挙げられる。
【0022】
31Arで表される芳香族炭化水素基並びに芳香族複素環基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばT31の置換基として挙げた基と同様のものを挙げることができ、好ましい範囲も同様である。これらの置換基は更に置換されてもよく、また、置換基が二つ以上ある場合には各々、同じでも異なってもよい。H31Arで表される基は好ましくは芳香族複素環基である。
【0023】
Ra、Rb、Rc、Rdで表される脂肪族炭化水素基、アリール基及び複素環基は、前記T31に於て脂肪族炭化水素基、アリール基及び複素環基の例として挙げたと同様のものを挙げることができ、好ましい範囲も同様である。Ra、Rb、Rc、Rdで表されるアシル基としては炭素数1〜12の脂肪族或いは芳香族の基であり、具体的にはアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等の基が挙げられる。RaとRb、RcとRd、RaとRc或いはRbとRdの間で結合して形成する含窒素複素環基としては3〜10員の飽和、不飽和のヘテロ環基(例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、アクリジン環、ピロリジン環、ピロール環、モルフォリン環等の環基)が挙げられる。
【0024】
31で表される分子内の電荷を相殺するに必要なイオンとして酸アニオンの具体例としては例えば、ハロゲンイオン(例えば、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン等)、p−トルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、4フッ化ホウ素イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0025】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
【化5】
Figure 0004003375
【0027】
【化6】
Figure 0004003375
【0028】
【化7】
Figure 0004003375
【0029】
【化8】
Figure 0004003375
【0030】
【化9】
Figure 0004003375
【0031】
【化10】
Figure 0004003375
【0032】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、市販のものを用いてもよいし、あるいは既知の方法で合成してもよい。例えば、日本化学会編、新実験化学講座14巻(III)1739〜1741頁(1978)等に記載の方法で合成することができる。
【0033】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、感光層にでも非感光層にでも添加することができるが、好ましくは感光層添加である。
【0034】
本発明の一般式(1)で表される化合物の添加量は所望の目的により異なるが、Ag1モル当たり10-4〜1モル、好ましくは10-3〜0.3モル、更に好ましくは10-3〜0.1モル添加することが好ましい。また一般式(1)の化合物は、一種のみを用いても二種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明の一般式(1)の化合物は水或いは適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等に溶解して用いることができる。また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレート等のオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノン等の補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し用いることができる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0064】
又、前記一般式(1)の添加温度としては、10〜40℃である。好ましくは10〜30℃、更に好ましくは12〜25℃である。温度が高すぎると、増感に関わる化学反応の副反応が大きく、カブリの増大や感光材料の安定性が損なわれる。安定性に欠けるとは主に減感が認められることを指し、この原因は強色増感剤のハロゲン化銀や有機銀塩への吸着量が多すぎて、熱現像抑制が働いたためと推察している。
【0065】
本発明の強色増感剤は、ハロゲン化銀又は有機銀塩の少なくともいずれかへの吸着化合物を添加した後に添加する。本発明における、ハロゲン化銀又は有機銀塩の少なくともいずれかへの吸着化合物を添加した後とは、ハロゲン化銀又は有機銀塩の少なくともいずれかへの吸着化合物を添加した1分後から2時間の範囲を指す。
【0066】
本発明の吸着化合物とは、コンベンショナル処理用ハロゲン化銀感光材料で周知の化合物を利用することができる。例えば、増感色素やメルカプト基含有構造又はヘテロ原子を含有する複素環構造が含まれる。特に増感色素であることが望ましく、本発明の下記一般式(2)〜(5)であることが更に好ましい。また、例えば含カルコゲン化合物、金化合物、白金化合物、パラジウム化合物、銀化合物、錫化合物、クロム化合物またはこれらを組み合わせた化合物を、本発明の効果を損なわない範囲において添加することによって、化学増感を施しても構わない。なお化学増感の方法及び手順については、本発明の効果を損なわない範囲において、例えば米国特許第4,036,650号、英国特許第1,518,850号、特開昭51−78319号、同51−22430号、同51−78319号、同51−81124号に記載されている方法を併用しても構わない。またハロゲン化銀形成成分により有機銀塩の一部をハロゲン化銀に変換する際に、米国特許第3,980,482号に記載されているように、増感を達成するために低分子量のアミド化合物を共存させてもよい。
【化B】
Figure 0004003375
(一般式(2)及び(3)において、Y 1 、Y 2 及びY 11 は各々、酸素原子、硫黄原子、セレン原子または−CH=CH−基を表し、L 1 〜L 9 、L 11 〜L 15 は各々、メチン基を表す。R 1 、R 2 、R 11 及びR 12 は各々、脂肪族基を表し、R 3 、R 4 、R 13 及びR 14 は各々、アルケニル基、環状アルキル基または複素環基を表す。W 1 、W 2 、W 3 、W 4 、W 11 、W 12 、W 13 及びW 14 は各々、水素原子、置換基、或いはW 1 とW 2 、W 3 とW 4 、W 11 とW 12 、W 13 とW 14 の間で結合して縮合環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。X 1 及びX 11 は各々、分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、k1及びk11は各々、分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。m1は0または1を表し、n1、n11及びn12は各々、0、1または2を表す。但し、n11とn12は同時に0とはならない。)
【化C】
Figure 0004003375
(一般式(4)及び(5)において、Y 21 、Y 22 及びY 31 は、各々、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−C(Ra)(Rb)−基、または−CH=CH−基を表し、R 21 、R 22 、R 31 及びR 32 は各々脂肪族基であり、Rc及びRdは各々、低級アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基を表す。Ra及びRbは各々、低級アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、低級アルコキシ基、アリール基を表す。W 21 、W 22 、W 23 、W 24 、W 31 、W 32 、W 33 及びW 34 は各々、水素原子、置換基、或いはW 21 はW 22 と、W 23 はW 24 と、W 31 はW 32 と、W 33 はW 34 との間で結合して縮合環を形成するに必要な非金属原子群を表す。V 21 〜V 29 、V 31 〜V 33 は各々、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基を表し、或いはV 21 はV 23 と、V 22 はV 24 と、V 23 はV 25 と、V 24 はV 26 と、V 25 はV 27 と、V 26 はV 28 と、V 27 はV 29 と、V 31 はV 33 との間で結合して5員〜7員の環を形成するに必要な非金属原子群を表し、X 21 及びX 31 は各々、分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、l21及びl31は各々、分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。k21及びk22は各々、0または1を表す。n21、n22、n31及びn32は各々、0〜2の整数を表し、n21とn22及びn31とn32が同時に0になることはない。)
【0067】
本発明の吸着化合物としては、600nm以上に感光極大波長を有する分光増感色素が好ましい。感光極大波長とは、ハロゲン化銀が存在する系に添加し、吸着した増感色素により分光増感が施され、製造された熱現像感光材料が有する感度分布の最大感度の波長をいう。本発明においては、下記記載のヘテロ原子を有する大環状化合物と、600nm以上に感光極大波長を有する分光増感色素とが組み合わせが好ましく用いられる。更に、本発明においては、600nm以上に感光極大波長を有する分光増感色素として、上記一般式(2)、(3)、(4)または(5)で表される少なくとも一種の分光増感色素が特に好ましい。
【0068】
一般式(2)、(3)で表される分光増感色素において、R1、R2、R11、R12で各々、示される脂肪族基としては、例えば炭素原子数1〜10の分岐或は直鎖のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、i−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)、炭素原子数3〜10のアルケニル基(例えば、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基等)、炭素原子数7〜10のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)が挙げられる。上述した基は、更に、低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ビニル基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、p−ブロモフェニル基等)、トリフルオロメチル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等)、シアノ基、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、ビスカルボキシメチルアミノ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、カルボキシフェニル基等)、複素環基(例えば、テトラヒドロフルフリル、2−ピロリジノン−1−イル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基等)、ウレイド基(例えば、ウレイド基、3−メチルウレイド基、3−フェニルウレイド基等)、チオウレイド基(例えば、チオウレイド基、3−メチルチオウレイド基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、複素環チオ基(例えば、2−チエニルチオ基、3−チエニルチオ、2−イミダゾリルチオ基等)、カルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ基等)、チオアミド基(例えば、チオアセトアミド基、チオベンゾイルアミノ基等)等の基、あるいは、例えばスルホ基、カルボキシ基、ホスフォノ基、スルファート基、ヒドロキシ基、メルカプト基、スルフィノ基、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−テトラメチレンカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−3−オキサペンタメチレンアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド基等)、スルホニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル基等)、アシルアミノスルホニル基(例えば、アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル基等)、アシルアミノカルボニル基(例えば、アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル基等)、スルフィニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルフィニルアミノカルボニル、エタンスルフィニルアミノカルボニル基等)、等の親水性の基で置換されていてもよい。これら親水性の基を置換した脂肪族基の具体的例としては、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシブチル、カルボキシペンチル、3−スルファートブチル、3−スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基、4−スルホブチル、5−スルホペンチル、3−スルホペンチル、3−スルフィノブチル、3−ホスフォノプロピル、ヒドロキシエチル、N−メタンスルホニルカルバモイルメチル、2−カルボキシ−2−プロペニル、o−スルホベンジル、p−スルホフェネチル、p−カルボキシベンジル等の各基が挙げられる。
【0069】
3、R4、R13及びR14で各々表されるアルケニル基としては、例えば2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基等が挙げられ、環状アルキル基としては例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、複素環基としては、例えば2−チエニル基、3−チエニル基、1−メチル−2−イミダゾリル基等の基が挙げられ、これらの各基には低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、クロロフェニル基等)、メルカプト基、低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)等の基が置換できる。
【0070】
1〜W4、W11〜W14で各々示される置換基は、具体的にはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、i−ブチル基等)、アリール基(単環並びに多環のものを含み、例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えば、チエニル、フリル、ピリジル、カルバゾリル、ピロリル、インドリル等の各基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ビニル基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、p−ブロモフェニル基等)、トリフルオロメチル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、ビスカルボキシメチルアミノ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、カルボキシフェニル基等)、複素環基(例えば、テトラヒドロフルフリル、2−ピロリジノン−1−イル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基等)、ウレイド基(例えば、ウレイド基、3−メチルウレイド基、3−フェニルウレイド基等)、チオウレイド基(例えば、チオウレイド基、3−メチルチオウレイド基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、ヒドロキシ基、スチリル基等が挙げられる。
【0071】
これらの基にはR1等で示される脂肪族基の説明で挙げた基が置換でき、置換されたアルキル基の具体例としては、例えば2−メトキシエチル、2−ヒドロキシエチル、3−エトキシカルボニルプロピル、2−カルバモイルエチル、2−メタンスルホニルエチル、3−メタンスルホニルアミノプロピル、ベンジル、フェネチル、カルボキメチル、カルボキシエチル、アリル、2−フリルエチル等の各基が挙げられ、置換されたアリール基の具体例としては、例えばp−カルボキシフェニル、p−N,N−ジメチルアミノフェニル、p−モルフォリノフェニル、p−メトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、3−クロロフェニル、p−ニトロフェニル等の各基が挙げられ、置換された複素環基の具体例としては、例えば5−クロロ−2−ピリジル、5−エトキシカルボニル−2−ピリジル、5−カルバモイル−2−ピリジル等の各基が挙げられる。W1とW2、W3とW4、W11とW12、W13とW14が各々、互いに連結して形成することができる縮合環としては、例えば5員、6員の飽和または不飽和の縮合炭素環が挙げられる。これらの縮合環上には任意の位置に置換することができ、これら置換される基としては前述の脂肪族基に置換できる基で説明した基が挙げられる。
【0072】
前記一般式(2)、(3)に於て、L1〜L9、L11〜L15で示されるメチン基は各々、独立に置換もしくは未置換メチン基を表す。置換される基の具体例としては、置換もしくは無置換の、低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ベンジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、o−カルボキシフェニル基等)、−N(V1)(V2)、−SRまたは複素環基(例えば、2−チエニル基、2−フリル基、N,N′−ビス(メトキシエチル)バルビツール酸基等)を表す。ここでRは前述したような低級アルキル基、アリール基または複素環基を表し、V1とV2は各々、置換もしくは無置換の、低級アルキル基またはアリール基を表し、V1とV2とは互いに連結して5員または6員の含窒素複素環を形成することもできる。また、メチン基はお互いに隣接するメチン基同士、或いは一つ隔たったメチン基と互いに連結して5員または6員環を形成することができる。
【0073】
前記一般式(2)、(3)で示される分光増感色素に於て、カチオン或いはアニオンの電荷を有する基が置換されている場合には各々、分子内の電荷が相殺するように当量のアニオン或いはカチオンで対イオンが形成される。例えば、X1、X11で各々、示される分子内の電荷を相殺するに必要なイオンに於いてカチオンの具体例としては、プロトン、有機アンモニウムイオン(例えば、トリエチルアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等の各イオン)、無機カチオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の各カチオン)が挙げられ、酸アニオンの具体例としては、例えばハロゲンイオン(例えば塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン等)、p−トルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、4フッ化ホウ素イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0074】
以下に、上記一般式(2)、(3)で表される分光増感色素の代表的なものを示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0075】
【化25】
Figure 0004003375
【0076】
【化26】
Figure 0004003375
【0077】
【化27】
Figure 0004003375
【0078】
【化28】
Figure 0004003375
【0079】
【化29】
Figure 0004003375
【0080】
【化30】
Figure 0004003375
【0081】
本発明のもう一つの好ましい色素である一般式(4)、(5)で表される化合物について、以下に置換基を説明する。
【0082】
21、R22、R31、R32で示される脂肪族基としては、例えば炭素原子数1〜10の分岐或は直鎖のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)、炭素原子数3〜10のアルケニル基(例えば、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基等)、炭素原子数7〜10のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)が挙げられる。
【0083】
上述した基は、更に低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ビニル基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、p−ブロモフェニル基等)、トリフルオロメチル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等)、シアノ基、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、ビスカルボキシメチルアミノ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、カルボキシフェニル基等)、複素環基(例えば、テトラヒドロフルフリル基、2−ピロリジノン−1−イル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基等)、ウレイド基(例えば、ウレイド基、3−メチルウレイド基、3−フェニルウレイド基等)、チオウレイド基(例えば、チオウレイド基、3−メチルチオウレイド基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、複素環チオ基(例えば、2−チエニルチオ基、3−チエニルチオ、2−イミダゾリルチオ基等)、カルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ基等)、チオアミド基(例えば、チオアセトアミド基、チオベンゾイルアミノ基等)等の基、あるいは、例えば、スルホ基、カルボキシ基、ホスフォノ基、スルファート基、ヒドロキシ基、メルカプト基、スルフィノ基、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−テトラメチレンカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−3−オキサペンタメチレンアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド基等)、スルホニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル基等)、アシルアミノスルホニル基(例えば、アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル基等)、アシルアミノカルボニル基(例えば、アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル基等)、スルフィニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルフィニルアミノカルボニル基、エタンスルフィニルアミノカルボニル基等)等の親水性の基で置換されていても良い。
【0084】
これら親水性の基を置換した脂肪族基の具体的例としては、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基、3−スルファートブチル基、3−スルホプロピル基、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、5−スルホペンチル基、3−スルホペンチル基、3−スルフィノブチル基、3−ホスフォノプロピル基、ヒドロキシエチル基、N−メタンスルホニルカルバモイルメチル基、2−カルボキシ−2−プロペニル基、o−スルホベンジル基、p−スルホフェネチル基、p−カルボキシベンジル基等の各基が挙げられる。
【0085】
Ra、Rbで表される低級アルキル基としては、炭素数5以下の直鎖、分岐の基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基等が挙げられる。シクロアルキル基としてはシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、p−メトキシフェニルメチル基、o−アセチルアミノフェニルエチル基等が挙げられ、低級アルコキシ基としては炭素原子数4以下の基であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基等の基が挙げられ、アリール基としては置換、非置換のものを含み、例えばフェニル基、2−ナフチル基、1−ナフチル基、o−トリル基、o−メトキシフェニル基、m−クロロフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−トリル基、p−エトキシフェニル基等の基が挙げられ、これらの基にはフェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の基が置換できる。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられる。
【0086】
Rc、Rdで表される低級アルキル基としては炭素数5以下の、直鎖、分岐の基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基等が挙げられる。シクロアルキル基としてはシクロアルキル基としては,例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、p−メトキシフェニルメチル基、o−アセチルアミノフェニルエチル基等が挙げられ、アリール基としては置換、非置換のものを含み、例えば、フェニル基、2−ナフチル基、1−ナフチル基、o−トリル基、o−メトキシフェニル基、m−クロロフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−トリル基、p−エトキシフェニル基等の基が挙げられ、複素環基としては置換、非置換のものを含み、例えば、2−フリル基、5−メチル−2−フリル基、2−チエニル基、2−イミダゾリル基、2−メチル−1−イミダゾリル基、4−フェニル−2−チアゾリル基、5−ヒドロキシ−2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基、1−ピロリル基等の基が挙げられる。
【0087】
これらの基には更に前述の説明であげたフェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の基が置換できる。
【0088】
21〜W24、W31〜W34で表される置換基は具体的には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、iso−ブチル基等)、アリール基(単環並びに多環のものを含み、例えばフェニル基、カルボキシフェニル基、p−トリル基、p−ブチルフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えば、テトラヒドロフリル基、2−ピロリジノン−1−イル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、カルバゾリル基、ピロリル基、インドリル基等の各基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ビニル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、ビスカルボキシメチルアミノ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基等)、ウレイド基(例えば、ウレイド基、3−メチルウレイド基、3−フェニルウレイド基等)、チオウレイド基(例えば、チオウレイド基、3−メチルチオウレイド基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、ヒドロキシ基、スチリル基等が挙げられる。
【0089】
これらの基にはR21等で示される脂肪族基の説明で挙げた基が置換でき、置換されたアルキル基の具体例としては、例えば2−メトキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−エトキシカルボニルプロピル基、2−カルバモイルエチル基、2−メタンスルホニルエチル基、3−メタンスルホニルアミノプロピル基、ベンジル基、フェネチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、アリル基、2−フリルエチル基等の各基が挙げられ、置換されたアリール基の具体例としては、例えばp−カルボキシフェニル基、p−N,N−ジメチルアミノフェニル基、p−モルフォリノフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基、3−クロロフェニル基、p−ニトロフェニル基等の各基が挙げられ、置換された複素環基の具体例としては、例えば5−クロロ−2−ピリジル基、5−エトキシカルボニル−2−ピリジル基、5−カルバモイル−2−ピリジル等の各基が挙げられる。
【0090】
21とW22、W23とW24、W31とW32、W33とW34が各々、互いに連結して形成することができる縮合環としては、例えば5員、6員の飽和または不飽和の縮合炭素環が挙げられる。これらの縮合環上には任意の位置に置換基を有することができ、これらの置換基としては、前述の脂肪族基に置換できる基で説明した基が挙げられる。
【0091】
21〜V29、V31〜V33で各々示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられ、アミノ基としては置換、非置換のものを含み、例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチル−フェニルアミノ基等が挙げられ、アルキルチオ基としては、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ベンジルチオ基等が挙げられ、アリールチオ基としては置換、非置換のものを含み、例えばフェニルチオ基、m−フルオロフェニルチオ基等の基が挙げられ、低級アルキル基としては炭素数5以下の直鎖、分岐の基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基等が挙げられる。低級アルコキシ基としては、炭素原子数4以下の基であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基等の基が挙げられ、アリール基としては置換、非置換のものを含み、例えばフェニル基、2−ナフチル基、1−ナフチル基、o−トリル基、o−メトキシフェニル基、m−クロロフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−トリル基、p−エトキシフェニル基等の基が挙げられ、アリールオキシ基としては、置換、非置換のものを含み、具体的にはフェノキシ基、p−トリルオキシ基、m−カルボキシフェニルオキシ基等の基があげられ、複素環基としては置換、非置換のものを含み、例えば2−フリル基、5−メチル−2−フリル基、2−チエニル基、2−イミダゾリル基、2−メチル−1−イミダゾリル基、4−フェニル−2−チアゾリル基、5−ヒドロキシ−2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基、1−ピロリル基等の基が挙げられる。
【0092】
これらの基にはフェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基等の基が置換できる。
【0093】
又、V21とV23、V22とV24、V23とV25、V24とV26、V25とV27、V26とV28、V27とV29及びV31とV33の間で結合して形成される5員〜7員の環としては、例えばシクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、デカリン環等が挙げられ、これらの環にはRで挙げた低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基が置換できる。
【0094】
前記一般式(4)、(5)で示される分光増感色素に於て、カチオン或いはアニオンの電荷を有する基が置換されている場合には、各々分子内の電荷が相殺するように当量のアニオン或いはカチオンで対イオンが形成される。例えば、X21、X31で各々示される分子内の電荷を相殺するに必要なイオンに於いて、カチオンの具体例としては、プロトン、有機アンモニウムイオン(例えば、トリエチルアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、ピリジニウム等の各イオン)、無機カチオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の各カチオン)が挙げられ、酸アニオンの具体例としては、例えばハロゲンイオン(例えば、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン等)、p−トルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、4フッ化ホウ素イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロりん酸イオン等が挙げられる。
【0095】
本発明のこれら赤外分光増感色素、ベンゾアゾール環のベンゼン環上にスルフィニル基が置換されていることを特徴とした長鎖のポリメチン色素が、何故高感度、低カブリであり、又経時保存性に関しても優れた性質を有しているのか理由は不明であるが、ベンゾアゾール環上にスルフィニル基が置換されているものは、チオエーテルより親水性で銀とのインタラクションが少ない硫黄原子を有していること、また電子吸引的に作用する結果、色素の基底状態が低くなっているので、かぶらす等の直接的な影響が出にくいことが有利に働いてカブリ生成や安定性に効果があると推定される。又、酸素原子と硫黄原子間の分極構造が色素分子間の相互作用に有利に働いて色素凝集体を安定化する効果があるのかもしれない。
【0096】
以下に、上記一般式(4)、(5)で表される分光増感色素の代表的な化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0097】
【化31】
Figure 0004003375
【0098】
【化32】
Figure 0004003375
【0099】
【化33】
Figure 0004003375
【0100】
【化34】
Figure 0004003375
【0101】
【化35】
Figure 0004003375
【0102】
【化36】
Figure 0004003375
【0103】
上記の赤外増感色素は、例えばエフ・エム・ハーマー著、The Chemistry of Heterocylic Compounds第18巻、The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissherger ed.Interscience社刊、NewYork 1964年)、特開平3−138638号、同10−73900号、特表平9−510022号、米国特許第2,734,900号、英国特許第774,779号に記載の方法によって容易に合成することができる。
【0104】
本発明の分光増感色素は単独で用いてもよいが、2種以上の増感色素を組み合わせて用いることもできる。本発明の増感色素は単独で用いた場合及び組み合わせた場合には合計でハロゲン化銀1モル当たり、1×10-6〜5×10-3モル、好ましくは1×10-5〜2.5×10-3モル、更に好ましくは4×10-5〜1×10-3モルの割合でハロゲン化銀乳剤中に含有される。増感色素を2種以上組み合わせて用いるとき、任意の割合でハロゲン化銀乳剤中に含有できる。
【0105】
本発明の分光増感色素は、直接乳剤中へ分散することができる。また、これらはまず適当な溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロパノール、メチルセロソルブ、アセトン、水、ピリジンあるいはこれらの混合溶媒等の中に溶解され、溶液の形で乳剤へ添加することもできる。溶解に超音波を使用することもできる。また、この増感色素の添加方法としては、米国特許第3,469,987号等に記載のごとき、増感色素を揮発性の有機溶媒に溶解し、該溶液を親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭46−24185等に記載のごとき、水不溶性増感色素を溶解することなしに水溶性溶剤中に分散させ、この分散物を乳剤へ添加する方法;米国特許第3,822,135号に記載のごとき、界面活性剤に増感色素を溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法;特開昭51−74624号に記載のごとき、長波長側にシフトさせる化合物を用いて溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法;特開昭50−80826号に記載のごとき、増感色素を実質的に水を含まない酸に溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法等が好ましく用いられる。その他、乳剤への添加には米国特許第2,912,343号、同第3,342,605号、同第2,996,287号、同第3,429,835号等に記載の方法を用いられる。また上記増感色素は適当な支持体上に塗布される前にハロゲン化銀乳剤中に一様に分散してよいが、勿論ハロゲン化銀乳剤の調製のどの過程においても分散することができる。
【0106】
本発明の増感色素を2種以上組み合わせる場合、増感色素はそれぞれ独立して、またはあらかじめ混合して上記のごとき方法によりハロゲン化銀乳剤中に分散できる。
【0107】
本発明に係わるハロゲン化銀乳剤に於ては、一般式(2)、(3)、(4)、(5)で表される以外の分光増感色素や、それ自身分光増感作用を持たない色素或いは可視光を実質的に吸収しない物質であって、一般式(1)以外の強色増感を示す物質を、本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよい。
【0108】
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組み合わせ及び強色増感を示す物質は、リサーチ・ディスクロージャ(Research Disclosure、以後RDという)176巻17643(1978年12月発行)第23頁5のJ項、或いは特公昭49−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平3−15049号、特開昭62−123454号に記載されている。
【0109】
本発明におけるハロゲン化銀又は有機銀塩の少なくともいずれかへの吸着化合物とは、本発明のヘテロ原子を含有する大環状化合物、分光増感色素の他に、複素ヘテロ環化合物、メルカプト基やスルフィド基やジスルフィド基を含有する化合物を指す。本発明に用いられるヘテロ原子を含む大環状化合物は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の少なくとも1種を含む9員環以上の大環状化合物である。更に、12〜24員環が好ましく、更に好ましいのは15〜21員環である。
【0110】
代表的な化合物としては、下記に示すようなクラウンエーテルとして知られている化合物で、Pedersonが1967年に合成し、その特異な報告以来、数多く合成されているものである。これらの化合物は、C.J.Pederson,Journal of American Chemical Society vol,86(2495),7017〜7036(1967)、G.W.Gokel,S.H,Korzeniowski,“Macrocyclic polyethr synthesis”,Springer−Vergal,(1982)、小田、庄野、田伏編“クラウンエーテルの化学”化学同人(1978)、田伏編“ホスト−ゲスト”共立出版(1979)、佐々木、古賀“有機合成化学”Vol45(6),571〜582(1987)等に詳細に書かれている。
【0111】
以下、本発明に用いられるヘテロ原子を有する大環状化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0112】
【化37】
Figure 0004003375
【0113】
【化38】
Figure 0004003375
【0114】
【化39】
Figure 0004003375
【0115】
【化40】
Figure 0004003375
【0116】
【化41】
Figure 0004003375
【0117】
【化42】
Figure 0004003375
【0118】
【化43】
Figure 0004003375
【0119】
【化44】
Figure 0004003375
【0120】
ヘテロ原子を有する大環状化合物の併用効果の機構は明確ではないが、大環状化合物により増感色素の吸着量が多くなり所望の波長の光吸収が増大し、一般式(1)で表される化合物の強色増感効果が更に促進されることにより増感効果が得られると考えられる。
【0121】
通常のゼラチンマトリクスを用いたコンベンショナルハロゲン化銀写真感光材料に対するこれらの化合物の効果は、前述の特許文献に記載されているが、コンベンショナルハロゲン化銀感光材料と添加剤の構成や塗布調製液の化学的雰囲気が大きく異なる熱現像感光材料においても、同様に効果が認められるということは驚くべきことであった。
【0122】
これらの化合物が、熱現像感光材料において特に効果が大きい理由は明らかではないが、熱現像感光層においてはコンベンショナル感光材料における感光層と異なり、ハロゲン化銀以外の銀ソース(例えば、有機銀塩や色調剤銀錯体等)が層中に存在していることから、ハロゲン化銀に対する増感色素の吸着がコンベンショナルハロゲン化銀写真感光材料よりも劣化しやすく、ヘテロ環を有する大環状化合物はこれらに作用し、増感色素のハロゲン化銀への吸着を促進するのではないかと推定している。
【0123】
これらヘテロ環を有する大環状化合物は、ハロゲン化銀調製以後、塗布液作製までのどの段階において添加してもよく所期の効果を発揮する。しかしながら、増感色素の添加に先立って添加する方法が好ましい。
【0124】
熱現像感光材料において、更にその効果を高からしめるためには後述のように、熱現像感光材料に用いる感光性ハロゲン化銀の表面に沃素を導入するのが好ましい。通常のゼラチンを用いた系よりもより吸着を強める様な工夫が必要である。
【0125】
これらのヘテロ環を有する大環状化合物を熱現像感光材料の感光層に添加するには、メタノール、エタノール、フッ素化アルコールのような有機溶剤や水に溶解して添加するのが一般的である。溶解性が悪い場合には酢酸カリウム、沃化カリウム、フッ化カリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、KBF4、KPF6、NH4BF4、NH4PF6等の溶解剤を添加し溶解し添加する。これら溶解剤は上記ヘテロ原子を有する大環状化合物と包摂化合物を形成するイオン等が用いられる。それにより溶解性を改良でき、添加後に効果が見られるものであればいかなるものを使用してもよい。添加量は、銀1モル当たり10-4〜1.0モル、好ましくは10-3〜0.2モルである。
【0126】
本発明においてハロゲン化銀乳剤は、RDNo.308119に記載されている技術を用いることができる。以下の表に記載箇所を示す。
【0127】
【表1】
Figure 0004003375
【0128】
熱現像感光材料に使用されるハロゲン化銀は、シングルジェットもしくはダブルジェット法等の写真技術の分野で公知の任意の方法により、例えばアンモニア法乳剤、中性法、酸性法等のいずれかの方法でも調製できる。この様に予め調製し、次いで本発明に用いられる他の成分と混合して本発明に用いる組成物中に導入することができる。この場合にハロゲン化銀と有機銀塩の接触を充分に行わせるため、例えばハロゲン化銀を調製するときの保護ポリマーとして米国特許第3,706,564号、同第3,706,565号、同第3,713,833号、同第3,748,143号、英国特許第1,362,970号に記載されたポリビニルアセタール類等のゼラチン以外のポリマーを用いる方法や、英国特許第1,354,186号に記載されているようなハロゲン化銀乳剤のゼラチンを酵素分解する方法、または米国特許第4,076,539号に記載されているようにハロゲン化銀粒子を界面活性剤の存在下で調製することによって保護ポリマーの使用を省略する方法等を適用することができる。
【0129】
ハロゲン化銀は、光センサーとして機能するものであり、画像形成後の白濁を低く抑えるため又、良好な画質を得るために粒子サイズが小さいものが好ましい。平均粒子サイズで0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。又、ハロゲン化銀の形状としては特に制限はなく、立方体、八面体の所謂正常晶や正常晶でない球状、棒状、平板状等の粒子がある。又ハロゲン化銀組成としても特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよいが、好ましくは沃臭化銀であり、沃化銀含有率は0.01〜10モル%が好ましく、更に好ましくは、0.1〜5モル%である。粒子内のハロゲン組成の分布は均一でもステップ状に変化したものでも、或いは連続的に変化したものでも良い。コア/シエル構造も好ましく用いられる。本発明に用いられるハロゲン化銀表面近傍の平均沃素含量は0.1〜10モル%が好ましく、更に好ましくは1〜7モル%である。
【0130】
本発明は英国特許第1,447,454号に記載されている様に、有機銀塩を調製する際にハライドイオン等のハロゲン成分を有機銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで有機銀塩の生成とほぼ同時に生成させることができる。更に他の方法としては、予め調製された有機銀塩の溶液もしくは分散液、または有機銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、有機銀塩の一部をハロゲン化銀に変換することもできる。このようにして形成されたハロゲン化銀は有機銀塩と有効に接触しており好ましい作用を呈する。
【0131】
ハロゲン化銀形成成分とは有機銀塩と反応してハロゲン化銀を生成しうる化合物であり、どのような化合物がこれに該当し有効であるかは次のごとき簡単な試験で判別することができる。即ち、有機銀塩と試験されるべき化合物を混入し必要ならば加熱した後にX線回折法によりハロゲン化銀に特有のピークがあるかを調べるものである。本発明の有機銀塩の一部をハロゲン変換する前とは、これらの化合物によって有機銀塩の一部をハロゲン変換する前のことを指す。かかる試験によって有効であることが確かめられたハロゲン化銀形成成分としては、無機ハロゲン化物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例については米国特許第4,009,039号、同第3,457,075号、同第4,003,749号、英国特許第1,498,956号及び特開昭53−27027、同53−25420号に詳説されるが、以下にその一例を示す。
【0132】
(1)無機ハロゲン化物:例えば、MXnで表されるハロゲン化物(ここでMは、H、NH4、及び金属原子を表し、nはMがH及びNH4の時は1を、Mが金属原子の時はその原子価を表す。金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、水銀、錫、アンチモン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、セリウム等がある。)。又、臭素水等のハロゲン分子も有効である。
【0133】
(2)オニウムハライド類:例えば、トリメチルフェニルアンモニウムブロマイド、セチルエチルジメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドの様な第4級アンモニウムハライド、テトラエチルフォスフォニウムブロマイドの様な第4級フォスフォニウムハライド、トリメチルスルフォニウムアイオダイドの様な第3級スルフォニウムハライドがある。
【0134】
(3)ハロゲン化炭化水素類:例えば、ヨードフォルム、ブロモフォルム、四塩化炭素、2−ブロム−2−メチルプロパン等。
【0135】
(4)N−ハロゲン化合物:例えば、N−クロロ琥珀酸イミド、N−ブロム琥珀酸イミド、N−ブロムフタルイミド、N−ブロムアセトアミド、N−ヨード琥珀酸イミド、N−ブロムフタラゾン、N−ブロムオキサゾリノン、N−クロロフタラゾン、N−ブロモアセトアニリド、N,N−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N−ブロモ−N−メチルベンゼンスルホンアミド、1,3−ジブロモ−4,4−ジメチルヒダントイン、N−ブロモウラゾール等。
【0136】
(5)その他のハロゲン含有化合物:例えば、塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、2−ブロム酢酸、2−ブロムエタノール、ジクロロベンゾフェノン等がある。
【0137】
これらのハロゲン化銀形成成分は、有機銀塩に対して化学量論的には少量用いられる。通常、その範囲は有機銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モルである。ハロゲン化銀形成成分は上記の範囲で2種以上併用されてもよい。上記のハロゲン化銀形成成分を用いて有機銀塩の一部をハロゲン化銀に変換させる工程の反応温度、反応時間、反応圧力等の諸条件は作製の目的にあわせ適宜設定することができるが、通常、反応温度は−20〜70℃、その反応時間は0.1秒〜72時間であり、その反応圧力は大気圧に設定されるのが好ましい。この反応は又、後述する結合剤として使用されるポリマーの存在下に行われることが好ましい。この際のポリマーの使用量は有機銀塩1部当たり0.01〜100部、好ましくは0.1〜10部である。
【0138】
一方、本発明の熱現像感光材料に使用される感光性ハロゲン化銀はこのようなハロゲン変換工程を経て生成したハロゲン化銀とは異なり、有機銀塩と独立に調製され、ハロゲン変換される工程の前に有機銀塩と混合且つ同一系にて分散される。
【0139】
本発明の熱現像感光材料の製造方法においては、有機銀塩の調製から塗布液の調製までの間の工程で、有機銀塩の一部がハロゲン変換されることによって、非感光性ハロゲン化銀が生成し、一方感光性ハロゲン化銀の工程とは独立に調製される、そしてこの感光性ハロゲン化銀は非感光性ハロゲン化銀が生成する工程に先だって有機銀塩と混合、分散され、この分散物に感光性ハロゲン化銀又は有機銀塩の少なくともいずれかへの吸着化合物を添加した後で、強色増感剤又は化学増感剤の少なくともいずれかが添加される。
【0140】
又、本発明の感光性ハロゲン化銀には、照度不軌や、階調調整のために元素周期律表の6族から10族に属する金属、例えばRh、Ru、Re、Ir、Os、Fe等のイオン、その錯体または錯イオンを含有させることができる。特に錯イオンとして添加するのが好ましく、例えば照度不軌のために〔IrCl62-等のIr錯イオンを添加してもよい。
【0141】
本発明の熱現像感光材料に好適なバインダーは、透明または半透明で一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。親水性でも疎水性でもよいが、本発明においては、熱現像後のカブリを低減させるために、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等があげられる。その中でもポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステルは特に好ましく用いられる。
【0142】
また感光材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、感光性層の外側に非感光性層を有することができる。これらの非感光性層に用いられるバインダーは感光性層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。
【0143】
本発明においては、熱現像の速度を速めるために感光性層のバインダー量が1.5〜10g/m2であることが好ましい。さらに好ましくは1.7〜8g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0144】
本発明の熱現像感光材料の感光性層のような主バインダーは、以下に述べるポリマーラテックスであることも好ましい。ただしここで言う「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したもの等いずれでもよい。
【0145】
なお本発明のポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」等に記載されている。
【0146】
分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限はなく、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0147】
本発明のポリマーラテックスとしては通常の均一構造のポリマーラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
【0148】
本発明のポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は、30〜90℃、より好ましくは0〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0149】
本発明のポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体等がある。
【0150】
ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでも良い。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでも、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでも良い。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでも良い。ポリマーの分子量は数平均分子量で、5000〜1000000、好ましくは10000〜100000程度が好ましい。分子量が小さ過ぎるものは感光層等の画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。
【0151】
本発明に用いられるポリマーラテックスのポリマーは、25℃、60%RHでの平衡含水率が2%以下、より好ましくは1%以下のものであることが好ましい。平衡含水率の下限には特に制限はないが、0.01%、さらには0.03%であることが好ましい。平衡含水率の定義と測定法については、例えば「高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)」等を参考にすることができる。
【0152】
本発明のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては、以下のようなものがある。メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックス等。
【0153】
またこのようなポリマーは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。例えば、アクリル樹脂の例として、セビアンA−4635,46583、4601(以上、ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上、日本ゼオン(株)製)等、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上、大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上、イーストマンケミカル(株)製)等、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上、大日本インキ化学(株)製)等、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上、大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507、(以上、日本ゼオン(株)製)等、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上、日本ゼオン(株)製)等、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上、旭化成工業(株)製)等、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上、三井石油化学(株)製)等を挙げることができる。
【0154】
これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いても良い。
【0155】
本発明に用いられる感光層における主バインダーとは、感光層における全バインダーの50%以上、より好ましくは70%以上が本発明に用いられるポリマーであることを示す。
【0156】
これらのバインダーは本発明のポリマーを単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。本発明の感材の感光性層(乳剤層)には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は感光性層の全バインダーの30%以下、より好ましくは20%以下が好ましい。
【0157】
本発明に用いられる感光層のバインダーの量は(全バインダー)/(ハロゲン化銀)の質量比が400〜5、より好ましくは200〜10の範囲が好ましい。
【0158】
本発明において有機銀塩は還元可能な銀源であり、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特にこの中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値をもつような有機または無機の錯体も好ましい。これら好適な銀塩の例としては、前述のRD17029及び29963に記載されており、以下のものが挙げられる。
【0159】
有機酸の銀塩、例えば没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩、例えば1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩、アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩乃至錯体、例えばアルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸)の反応生成物の銀塩乃至錯体、チオン類の銀塩または錯体、例えば3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩乃至錯体、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩、サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩、及びメルカプチド類の銀塩。これらの中、好ましい銀塩としてはベヘン酸銀、アラキジン酸銀またはステアリン酸銀が挙げられる。
【0160】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を作製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀等を混合して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0161】
本発明においては有機銀塩は平均粒径が2μm以下であり、かつ単分散であることが好ましい。有機銀塩の平均粒径とは、有機銀塩の粒子が、例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、有機銀塩粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。平均粒径は0.05〜1.5μm、特に好ましくは、0.05〜1.0μmである。また単分散とは、ハロゲン化銀の場合と同義であり、好ましくは単分散度が1〜30である。
【0162】
また、本発明においては、有機銀塩は平板状粒子が全有機銀の60%以上有することが好ましい。本発明において平板状粒子とは平均粒径と厚さの比、いわゆる下記式で表されるアスペクト比(ARと略す)が3以上のものをいう。
【0163】
AR=平均粒径(μm)/厚さ(μm)
有機銀塩をこれらの形状にするためには、前記有機銀塩の結晶をバインダーや界面活性剤等をボールミル等で分散粉砕することで得られる。この範囲にすることで濃度が高く、かつ画像保存性に優れた感光材料が得られる。
【0164】
本発明に用いられる有機銀塩は、熱処理や溶媒による処理を施して有機銀塩粉末またはウェットケーキとして用いて良い。
【0165】
本発明においては感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。また、銀総量に対するハロゲン化銀の量は質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0.1〜15%の間である。
【0166】
本発明の熱現像感光材料に用いられる還元剤としては、一般に知られているものが挙げられ、例えばフェノール類、2個以上のフェノール基を有するポリフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシベンゼン類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシナフタレン類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン−5−オン類、ピラゾリン類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、ハイドロキノンモノエーテル類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等があり、さらに詳しくは、例えば米国特許第3,615,533号、同第3,679,426号、同第3,672,904号、同第3,751,252号、同第3,782,949号、同第3,801,321号、同第3,794,488号、同第3,893,863号、同第3,887,376号、同第3,770,448号、同第3,819,382号、同第3,773,512号、同第3,839,048号、同第3,887,378号、同第4,009,039号、同第4,021,240号、英国特許第1,486,148号若しくはベルギー特許第786,086号及び特開昭50−36143号、同50−36110号、同50−116023号、同50−99719号、同50−140113号、同51−51933号、同51−23721号、同52−84727号若しくは特公昭51−35851号に具体的に例示された還元剤があり、本発明はこのような公知の還元剤の中から適宜選択して使用することができる。選択方法としては、実際に熱現像感光材料をつくってみてその写真性能を評価することにより使用した還元剤の優劣を調べる方法が最も簡便である。
【0167】
上記の還元剤の中で、有機銀塩として脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合に好ましい還元剤としては、2個以上のフェノール基がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)またはアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール類(例えば、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジメチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1,5,5−テトラキス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−エチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロパン等の米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号若しくは英国特許第1,486,148号及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号若しくは特公昭51−35727号に記載されたポリフェノール化合物)、米国特許第3,672,904号に記載されたビスナフトール類(例えば、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジニトロ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、4,4′−ジメトキシ−1,1′−ジヒドロキシ−2,2′−ビナフチル等)、更に米国特許第3,801,321号に記載されているようなスルホンアミドフェノールまたはスルホンアミドナフトール類、例えば4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等を挙げることができる。
【0168】
本発明の熱現像感光材料に使用される還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルが適当である。又この量の範囲内において、上述した還元剤は2種以上併用されてもよい。本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光溶液に添加混合して塗布した方が、感光溶液の停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
【0169】
本発明の熱現像ハロゲン化銀写真感光材料は、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(有機銀塩)、感光性ハロゲン化銀、還元剤及び必要に応じて銀の色調を抑制する色調剤を通常(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している熱現像ハロゲン化銀写真感光材料であることが好ましい。本発明の熱現像ハロゲン化銀写真感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80〜140℃)に加熱することで現像される。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光でハロゲン化銀に発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対象をなし、画像の形成がなされる。この反応過程は、外部から水等の処理液を供給することなしで進行する。
【0170】
本発明に用いられる好適な色調剤の例は、RD第17029号に開示されており、次のものがある。
【0171】
イミド類(例えば、フタルイミド);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、及びキナゾリノン(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン);ナフタールイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサアンミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド);ブロックされたピラゾール類(例えば、N,N′−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール));イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体及びある種の光漂白剤の組み合わせ、(例えば、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ);フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノンとベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノンとp−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジンとフタル酸の組み合わせ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナフトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジン類及び不斉トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、及びテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)。好ましい色調剤としてはフタラジノンまたはフタラジンである。
【0172】
本発明の効果を損なわない範囲で、製造中に或いは感光材料の経時保存中に生成するカブリの元となる、微小銀クラスターを漂白するためのハロゲン化カブリ防止化合物を含有することが好ましい。写真業界で一般に微小銀クラスターを漂白することが知られている化合物を本発明では適用できるが、特に少なくとも1個のハロゲン化基をその上に有するアリール化合物が好ましく、以下の一般式で示され得る。
【0173】
Ar−(SO2y−CH3−n(X)n
式中、yは0または1であり、Xはハロゲン原子であり、nは1、2または3であり、そしてArは芳香族もしくは複素芳香族基である。
【0174】
一般式〔a〕に含まれる化合物の詳細な列挙は、米国特許第4,546,075号、同第4,756,999号、同第4,452,885号、同第3,874,946号及び同第3,955,982号に記載されている。本発明に有用であると考えられる他のハロゲン化カブリ防止化合物には、特開昭59−57234号に記載されているようなジハロゲン化化合物が含まれる。
【0175】
本発明に用いるハロゲン化カブリ防止化合物は、銀もしくはトップコート層中に合計銀1モルに対して5×10-4〜0.5モル、好ましくは5×10-3〜5×10-2モル含有される。
【0176】
本発明においては、還元剤を不活性化し還元剤が有機銀塩を銀に還元できないようにする化合物として、反応活性種がハロゲン原子でないものが好ましいが、ハロゲン原子を活性種として放出する化合物も、本発明に用いられるハロゲン原子でない活性種を放出する化合物と併用することにより、使用することができる。ハロゲン原子を活性種として放出できる化合物も多くのものが知られており、併用により欠点が軽減される。これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、以下にあげる一般式(6)の化合物がある。
【0177】
【化45】
Figure 0004003375
【0178】
式中、Qはアリール基またはヘテロ環基を表す。X1、X2及びX3は水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルフォニル基、アリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。Yは−C(=O)−、−SO−または−SO2−を表す。
【0179】
Qで表されるアリール基は、単環または縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル等)であり、より好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0180】
Qで表されるヘテロ環基は、N、OまたはSの少なくとも一つの原子を含む3ないし10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、これらは単環であっても良いし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0181】
ヘテロ環基として好ましくは、縮合環を有していてもよい5〜6員の不飽和ヘテロ環基であり、より好ましくは縮合環を有していてもよい5〜6員の芳香族ヘテロ環基である。更に好ましくは窒素原子を含む縮合環を有していてもよい5〜6員の芳香族ヘテロ環基であり、特に好ましくは窒素原子を1〜4原子含む縮合環を有していてもよい5〜6員の芳香族ヘテロ環基である。このようなヘテロ環基におけるヘテロ環として好ましくは、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、より好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンであり、更に好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾールであり、特に好ましくはピリジン、チアジアゾール、キノリン、ベンズチアゾールである。
【0182】
Qで表されるアリール基及びヘテロ環基は−Y−C(X1)(X2)(X3)の他に置換基を有していても良く、置換基として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子である。
【0183】
1、X2及びX3は、好ましくはハロゲン原子、ハロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ヘテロ環基であり、より好ましくはハロゲン原子、ハロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基であり、更に好ましくはハロゲン原子、トリハロメチル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子の中でも好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。Yは−C(=O)−、−SO−、−SO2−を表し、好ましくは−SO2−である。
【0184】
熱現像感光材料は少なくとも、a)非感光性有機銀塩、b)感光性ハロゲン化銀、c)熱により活性化されたときに該有機銀塩の銀イオンを銀に還元しうる還元剤、d)バインダー、e)該バインダーの架橋剤を含有している。従って、感光体であるハロゲン化銀、銀ソースである有機銀塩と還元剤が共存しており、感光材料の保存性が悪い。また、現像後、定着を行わないために、現像後の保存性、特に光にあたったときのプリントアウトが大きいという欠点を有する。
【0185】
感光材料中に還元剤が存在するために有機銀塩との反応によって熱カブリが生成しやすくなっていることと、現像後において画像記録のための光とは異なる波長領域の光が照射されたときにも還元剤が銀イオンを還元するという本来の機能の他にホールトラップとして機能する等のために、ハロゲン化銀乃至有機銀塩からのプリントアウト銀がどうしても大きくなってしまうというのがその原因と考えられる。
【0186】
熱現像感光材料に用いられる還元剤としては、後述するように、ビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンをもった還元剤が用いられているので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が好ましい。好適には、無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物が好ましい。
【0187】
従ってこれらの機能を有する化合物であればいかなる化合物でもよいが、ハロゲンラジカルはハロゲン化銀の生成につながるので好ましくなく、複数の原子からなる有機フリーラジカルが好ましい。かかる機能を有しかつ熱現像ハロゲン化銀写真感光材料に格別の弊害を生じることのない化合物であればいかなる構造をもった化合物でもよい。
【0188】
又、これらのフリーラジカルを発生する化合物としては発生するフリーラジカルに、これが還元剤と反応し不活性化するに充分な時間接触できる位の安定性をもたせるために炭素環式、または複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。
【0189】
これらの化合物の代表的なものとして以下にあげるビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物をあげることができる。
【0190】
ビイミダゾリル化合物は紫外光、可視光で光照射されたときに発生するフリーラジカルである2個のイミダゾリルラジカルが熱による像形成後に残存する還元剤を酸化する能力を有しており、それによりそれらを銀塩のそれ以上の還元に関して不活性化する。そのようなビイミダゾリル化合物が光による活性化で、実質的に非感光性の有機銀塩の熱により活性化される還元において有効な還元剤を酸化しうるということは驚くべきことである。
【0191】
これらのビイミダゾリル化合物としては以下の一般式(7)により表されるものが挙げられる。
【0192】
【化46】
Figure 0004003375
【0193】
式中、R1、R2及びR3(同一または相異なる)の各々は、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ヘキシル)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、オクチルオキシ)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、トリル)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル)、スルフォニル基(例えば、メチルスルフォニル、フェニルスルフォニル)、アシルアミノ基、スルフォニルアミノ基、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、ベンゾキシ)、カルボキシル基、シアノ基、スルフォ基及びアミノ基を示す。これらのうちより好適な置換基はアリール基、アルケニル基及びシアノ基である。
【0194】
上記のビイミダゾリル化合物は米国特許第3,734,733号及び英国特許第1,271,177号に記載されている製造方法及びそれに準じた方法により製造することができる。好ましい具体例を以下に挙げる。
【0195】
【化47】
Figure 0004003375
【0196】
【化48】
Figure 0004003375
【0197】
本発明においては前記ハロゲン化カブリ防止化合物を特開平6−208193号に記載されたようなイソシアネート化合物、米国特許第3,017,280号、特開平9−5916号に記載されたようなアジリジン化合物、特開平10−186561号、同9−5916号に記載されたエポキシ化合物等と併用することによりいっそうのカブリ防止効果を実現できる。又、米国特許第3,100,704号に記載されたカルボジイミド化合物も併用したときこれらに次いで効果のあるカブリ防止化合物である。
【0198】
一般にイソシアネートやエポキシ化合物等本発明に係るこれらのカブリ防止化合物は、銀1モルに対して0.002モル以上の量で用いられる。通常は銀1モルに対して0.002〜2モルの上記化合物、好ましくは銀1モルに対して0.003〜0.3モルの上記化合物の範囲で用いられる。
【0199】
本発明に用いられる熱現像感光材料が特に600〜800nmに発振波長を有するイメージセッターの出力用の熱現像感光材料である場合、ヒドラジン化合物が感光材料中に含有されることが好ましい。本発明に用いられる好ましいヒドラジン化合物としては、RD23515(1983年11月号、P.346)及びそこに引用された文献の他、米国特許第4,080,207号、同第4,269,929号、同第4,276,364号、同第4,278,748号、同第4,385,108号、同第4,459,347号、同第4,478,928号、同第4,560,638号、同第4,686,167号、同第4,912,016号、同第4,988,604号、同第4,994,365号、同第5,041,355号、同第5,104,769号、英国特許第2,011,391B号、欧州特許第217,310号、同第301,799号、同第356,898号、特開昭60−179734号、同61−170733号、同61−270744号、同62−178246号、同62−270948号、同63−29751号、同63−32538号、同63−104047号、同63−121838号、同63−129337号、同63−223744号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号、同63−294552号、同63−306438号、同64−10233号、特開平1−90439号、同1−100530号、同1−105941号、同1−105943号、同1−276128号、同1−280747号、同1−283548号、同1−283549号、同1−285940号、同2−2541号、同2−77057号、同2−139538号、同2−196234号、同2−196235号、同2−198440号、同2−198441号、同2−198442号、同2−220042号、同2−221953号、同2−221954号、同2−285342号、同2−285343号、同2−289843号、同2−302750号、同2−304550号、同3−37642号、同3−54549号、同3−125134号、同3−184039号、同3−240036号、同3−240037号、同3−259240号、同3−280038号、同3−282536号、同4−51143号、同4−56842号、同4−84134号、同2−230233号、同4−96053号、同4−216544号、同5−45761号、同5−45762号、同5−45763号、同5−45764号、同5−45765号、同6−289524号、同9−160164号等に記載されたものを挙げることができる。この他にも、特公平6−77138号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁、4頁に記載された化合物、特公平6−93082号公報に記載された一般式(1)で表される化合物で具体的には同公報8頁〜18頁に記載の1〜38の化合物、特開平6−23049号に記載の一般式(4)、(5)及び(6)で表される化合物で、具体的には同公報25頁、26頁に記載の化合物4−1〜4−10、28頁〜36頁に記載の化合物5−1〜5−42、及び39頁、40頁に記載の化合物6−1〜6−7、特開平6−289520号に記載の一般式(1)及び(2)で表される化合物で、具体的には同公報5頁から7頁に記載の化合物1−1)〜1−17)及び2−1)、特開平6−313936号に記載の(化2)及び(化3)で表される化合物で具体的には同公報6頁から19頁に記載の化合物、特開平6−313951号公報に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁から5頁に記載された化合物、特開平7−5610号公報に記載の一般式(2)で表される化合物で、具体的には同公報の5頁から10頁に記載の化合物I−1〜I−38、特開平7−77783号公報に記載の一般式(3)で表される化合物で、具体的には同公報10頁〜27頁に記載の化合物II−1〜102、特開平7−104426号公報に記載の一般式(H)及び一般式(Ha)で表される化合物で、具体的には同公報8頁から15頁に記載の化合物H−1からH−44に記載されたもの等を用いることができる。
【0200】
本発明においては、感光性層側にマット剤を含有することが好ましく、熱現像後の画像の傷つき防止のために、感光材料の表面にマット剤を配することが好ましく、そのマット剤を感光層側の全バインダーに対し、質量比で0.5〜30%含有することが好ましい。
【0201】
また、支持体をはさみ感光層の反対側に非感光層を設ける場合は、非感光層側の少なくとも1層中にマット剤を含有することが好ましく、感光材料のすべり性や指紋付着防止のためにも感光材料の表面にマット剤を配することが好ましく、そのマット剤を感光層側の反対側の層の全バインダーに対し、質量比で0.5〜40%含有することが好ましい。
【0202】
本発明において用いられるマット剤の材質は、有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩、等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、同第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0203】
マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。マット剤の大きさはマット剤の体積を球形に換算したときの直径で表される。本発明においてマット剤の粒径とはこの球形換算した直径のことを示すものとする。
【0204】
本発明に用いられるマット剤は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。又、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に、好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。
【0205】
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明に用いられるマット剤は任意の構成層中に含むことができるが、本発明の目的を達成するためには好ましくは感光性層以外の構成層であり、更に好ましくは支持体から見て最も外側の層である。本発明に係るマット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0206】
本発明の熱現像感光材料は支持体上に少なくとも1層の感光性層を有している。支持体の上に感光性層のみを形成してもよいが、感光性層の上に少なくとも一層の非感光性層を形成するのが好ましい。感光性層に透過する光の量または波長分布を制御するために感光性層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成してもよいし、感光性層に染料または顔料を含有させてもよい。
【0207】
用いられる染料としては所望の波長範囲で目的の吸収を有するものであればいかなる化合物でもよいが、例えば特開昭59−6481号、同59−182436号、米国特許第4,271,263号、同第4,594,312号、欧州特許公開第533,008号、同第652,473号、特開平2−216140号、同4−348339号、同7−191432号、同7−301890号、特開平8−201959号等に記載の化合物が好ましく用いられる。感光性層は複数層にしてもよく、又階調の調節のために高感度層、低感度層を設け、これを組み合わせてもよい。各種の添加剤は感光性層、非感光性層またはその他の形成層のいずれに添加してもよい。本発明の熱現像ハロゲン化銀写真感光材料にはたとえば界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いてもよい。
【0208】
本発明においては帯電性を改良するために金属酸化物及び/または導電性ポリマー等の導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光性層と下引の間の層等に含まれる。本発明においては米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された導電性化合物が好ましく用いられる。
【0209】
本発明で用いられる支持体は現像処理後の画像の変形を防ぐために、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。又、熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前記のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とはこれらの支持体を製膜後、感光性層が塗布されるまでの間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度で、好ましくは35℃以上高い温度で、更に好ましくは40℃以上高い温度で加熱することがよい。但し、支持体の融点を超えた温度で加熱しては本発明の効果は得られない。
【0210】
本発明に係る支持体の製膜方法及び下引製造方法は公知の方法を用いることができるが、好ましくは、特開平9−50094号の段落〔0030〕〜〔0070〕に記載された方法を用いることである。
【0211】
本発明の熱現像感光材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。
【0212】
各構成層を塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法等の公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはエクストリュージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストリュージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。
【0213】
本発明の熱現像感光材料の露光は、如何なる光源にも適用可能である。近年はレーザー光源の需要が高く、本発明の感光材料は好ましく適用される。例えば赤光域以上の波長ならば、Krレーザ、またハイパワーであることや感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)も好ましく用いられる。
【0214】
本発明において、露光はレーザー走査露光により行うことが好ましいが、感光材料の露光面と走査レーザー光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザー走査露光機を用いることが好ましい。
【0215】
ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザー走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることをいう。
【0216】
レーザー光が、感光材料に走査されるときの感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下であり、これは、スポット径が小さい方がレーザー入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。
【0217】
このようなレーザー走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることができる。
【0218】
また、本発明に用いられる露光は縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザー光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。
【0219】
縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、等の方法がよい。なお、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0220】
本発明の熱現像ハロゲン化銀写真感光材料は常温で安定であるが、露光後高温に加熱することで現像される。加熱温度としては80〜200℃が好ましく、さらに好ましいのは100〜150℃である。加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、又200℃を越えるとバインダーが溶融し、ローラーへの転写等、画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。
【0221】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0222】
実施例1
〔バッキング層の塗設〕
濃度0.170(コニカ(株)製デンシトメータPDA−65で測定)に青色着色した厚み175μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、その片面に下記のようにして調製したバッキング層塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布し、乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥しバッキング層を塗設した。
【0223】
(バッキング層塗布液の調製)
メチルエチルケトン830gに攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB381−20)84.2g、ポリエステル樹脂(Bostic社、VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。溶解した液に、赤外染料1を3.5gを添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系界面活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)4.5gとフッ素系界面活性剤(大日本インク社、メガファックF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1質量%の濃度でディゾルバー型ホモジナイザーにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌しバッキング層塗布液を調製した。
【0224】
〔感光層の塗設〕
(感光性ハロゲン化銀乳剤1の調製)
A1
フェニルカルバモイルゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
B1
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
C1
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
D1
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
E1
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
F1
56%酢酸水溶液 16.0ml
G1
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n〔CH(CH3)CH2O〕17(CH2CH2O)m
m+n=5〜7
特公昭58−58288号、同58−58289号に記載の混合撹拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。7分間経過後、溶液(B1)の残り及び溶液(D1)の全量を、温度45℃、pAg8.09に(E1)にて制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。混合中、反応溶液のpHは5.6であった。
【0225】
5分間撹拌した後、40℃に降温し、溶液(F1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残し上澄み液を取り除き、水を10L加え、撹拌後、再度ハロゲン化銀を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、撹拌後、ハロゲン化銀を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(G1)を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤1を調製した。この乳剤は平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、(100)面比率92%の立方体沃臭化銀粒子であった。
【0226】
(粉末有機銀塩の調製)
4720mlの純水にベヘン酸111.4g、アラキジン酸83.8g、ステアリン酸54.9gを80℃で溶解した。次に高速で撹拌しながら1.5Mの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。
【0227】
上記の有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、上記感光性ハロゲン化銀乳剤1と純水450mlにKBrを添加し5分間撹拌した。
【0228】
次に、1Mの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、さらに20分撹拌し、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の伝導度が20μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、遠心脱水を実施した後、37℃にて質量減がなくなるまで温風乾燥を行い、粉末有機銀塩を得た。
【0229】
(予備分散液の調製)
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製、Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバーDISPERMAT CA−40M型にて撹拌しながら、得られた前記粉末有機銀塩500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液を調製した。
【0230】
(感光性乳剤分散液の調製)
GM−2型圧力式ホモジナイザー(エスエムテー社製)を用いて、各予備分散液を2パス分散することにより感光性乳剤分散液を調製した。なお、この際、1パス時の処理圧は27.46MPaであり、2パス時の処理圧は54.92MPaとした。
【0231】
次に感光層塗布液の調製に必要な下記の添加液を調製した。
(安定剤液)
安定剤1 1.00g
酢酸カリウム 0.31g
メタノール 10g
(赤外増感色素液)
赤外増感色素1 41.0mg
2−クロロ−安息香酸 2.0g
化合物A 10.0g
MEK 100g
(添加液A)
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)
−3,5,5−トリメチルヘキサン 51.0g
4−メチルフタル酸 3.40g
赤外染料1 0.22g
MEK 170g
(感光層塗布液の調製)
前記感光性乳剤分散液100gおよびMEK45gを撹拌しながら20℃に保温し、下記カブリ防止剤1の溶液(10質量%メタノール溶液)0.65gを加え、1時間撹拌した。さらに臭化カルシウム溶液(10質量%メタノール溶液)0.84gを添加して10分撹拌し、一般式(1)の具体例1−21で表される化合物を200mg添加して10分撹拌した。続いて、安定剤液0.70gを添加して10分間撹拌した後、7.90gの赤外増感色素液を添加して1時間撹拌した。その後、温度を13℃まで降温してさらに30分撹拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社 Butvar B−79)26gを添加して15分間後、テトラクロロフタル酸の13質量%MEK溶液2.3gを添加した。さらに撹拌を続けながら、下記イソシアネート化合物IC−10の22質量%MEK溶液を4.5g、添加液Aを27.0g、2−トリブロモメチルスルホニルピリジンの6.5質量%MEK溶液を6.0g、フタラジンの7質量%MEK溶液を9.0g、順次添加し撹拌することにより感光層塗布液を得た。
【0232】
〔表面保護層の塗設〕
(マット剤分散液の調製)
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、7.5gのCAB171−15)をMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて8000rpmで30分間分散しマット剤分散液を調製した。
【0233】
(表面保護層塗布液の調製)
MEK865gを撹拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemica社、CAB171−15):96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社、パラロイドA−21):4.5g、下記ビニルスルホン化合物:1.5g、ベンゾトリアゾール:1.0g、F系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40):1.0g、を添加し溶解した。次にマット剤分散液30gを添加して撹拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0234】
【化49】
Figure 0004003375
【0235】
【化50】
Figure 0004003375
【0236】
〔熱現像感光材料の作製〕
前記各感光層塗布液と表面保護層塗布液を押し出しコーターを用いて同時に重層塗布を行った。塗布は、感光層は塗布銀量1.5g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.0μmになるようにしておこなった。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用い、10分間乾燥を行い熱現像感光材料の試料No.1を作製した。
【0237】
同様にして、試料No.2〜No.を表2に記す条件にて作製した。
【0238】
(カブリ)
現像済み試料の未露光部分の光学濃度を測定した。値の小さいもの程良い。
【0239】
(相対感度)
相対感度はカブリ+1.0の濃度を与える露光量の逆数の相対値であり、試料12の感度を100とする値で示した。
【0240】
(強制経時の写真性能)
内部が25℃、湿度55%に保たれた密閉容器中に3枚塗布試料を入れた後50℃で7日間経時させた(強制経時:保存条件)。この中の2枚目の試料と比較用経時(25℃、湿度55%にて遮光容器中に保存:保存条件)の試料とを830nmのレーザーダイオードを垂直面より13°傾いたビームで露光した。その後ヒートドラムを用いて120℃×15秒間熱現像処理を行い、カブリ部分の濃度を測定した。評価した結果を表2に示す。
【0241】
【表2】
Figure 0004003375
【0242】
表2から明らかなように、本発明により得られた熱現像感光材料は、カブリ、相対感度、最高濃度共に優れ、更に強制経時のカブリ感度の改良が認められた。
【0243】
【発明の効果】
本発明によって高感度、低カブリで、生保存性が改良された熱現像感光材料及びその製造方法を提供することができた。

Claims (2)

  1. 支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀及びバインダーを含有する少なくとも一層の感光層を塗設してなる、下記要件を満たすことを特徴とする熱現像感光材料の製造方法。
    (1)有機銀塩の調製から塗布液の調製までの間に、有機銀塩の一部がハロゲン変換されることによって、非感光性ハロゲン化銀が生成する工程を有すること
    (2)感光性ハロゲン化銀は(1)に記載の工程とは独立に調製されること
    (3)感光性ハロゲン化銀は(1)に記載の工程に先だって有機銀塩と混合されること
    (4)(3)に記載の工程での混合物が分散されること
    (5)(4)に記載の工程での分散物に、感光性ハロゲン化銀又は有機銀塩の少なくともいずれかへの吸着化合物を添加した後で、下記一般式(1)で表される強色増感剤が添加されること
    Figure 0004003375
    (式中、H 31 Arは芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、T 31 は脂肪族炭化水素基からなる2価の連結基または連結基を表し、J 31 は酸素原子、硫黄原子または窒素原子を一つ以上含む2価の連結基または連結基を表す。Ra、Rb、Rc及びRdは各々、水素原子、アシル基、脂肪族炭化水素基、アリール基または複素環基を表し、またRaとRb、RcとRd、RaとRc或いはRbとRdの間で結合して含窒素複素環基を形成することができる。M 31 は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、k31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。)
  2. 請求項1に記載の製造方法により製造されることを特徴とする熱現像感光材料。
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