JP4002263B2 - 使い捨ておむつ - Google Patents

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Description

本発明は、左右のウエストバンド部を連結した後、長手方向の一端部を、連結された状態のウエストバンド部に固定して着用することができるようになしてあるウエストバンドタイプの使い捨ておむつ又はおむつカバーに関する。
従来の使い捨ておむつとして、長手方向の一端部の両側にウエストバンド部が設けられ、左右のウエストバンド部の少なくとも何れか一方にバンド止着部が設けられていると共に、長手方向の前方部におむつ止着部が設けられており、バンド止着部により、左右のウエストバンド部を胴の周囲において連結した後、おむつ止着部を介して、長手方向の前方部を、連結された状態のウエストバンド部に固定して着用することができるようになしてある、ウエストバンドタイプのおむつが知られている。
このウエストバンドタイプのおむつは、装着時における操作性、特に立ったままで装着する際の操作性に優れている等の利点を有するものである。また、このような使い捨ておむつにおける、ウエストバンド部の一部を伸縮性としたおむつが提案されている(特許文献1,2等参照)。
また、特許文献3には、ウエストバンドタイプのおむつではないが、一対のサイドパネルを有する使い捨ておむつにおけるサイドパネルに、異なる延伸性の2つの領域を設けたものが記載されている。
特開平9−154884号公報 特開平9−285489号公報 特表2000−513636号公報
しかし、従来のウエストバンドタイプにおいては、ウエストバンド部に伸縮性を有しないものは、姿勢の変化や、食事による胴回りの拡大によって腹部や脚廻りが圧迫され易いという問題がある。他方、ウエストバンド部に伸縮性を有するものは、腹部の圧迫等は緩和されるが、着用中におむつがずり落ちて外観が低下したり、ずり落ちに起因して装着感が悪化する恐れがある。このようなずり落ちは、ウエストバンド部により、腹部を強く締め付けることにより改善する場合もあるが、それでは、腹部や脚廻りの圧迫により装着感が悪化してしまう。
特許文献3には、具体的な実施形態として、サイドパネル上の斜めの直線を境界として、その上側を高弾性のウエストゾーン、その下側を低弾性のレッグゾーンとしたおむつが記載されているが、特許文献3には、このような構成を、ウエストバンドタイプのおむつのウエストバンド部に適用することについて何らの記載も示唆もなく、また、このような構成では、着用時におけるサイドパネルの高さ方向の全体において横方向に強い応力が働くため、ウエストバンドタイプのおむつのウエストバンド部に適用しても、充分な位置ズレ防止効果は期待できないばかりか、ずり落ちが助長される恐れもある。
従って、本発明の目的は、位置ズレを生じにくく、装着感も良好な使い捨ておむつ又はおむつカバーを提供することにある。
本発明は、吸収コアを有し、おむつ長手方向の一端部の両側にウエストバンド部が設けられ、左右のウエストバンド部の少なくとも何れか一方にバンド止着部が設けられていると共に、おむつ長手方向の他端部におむつ止着部が設けられており、前記バンド止着部により、左右のウエストバンド部を連結した後、前記おむつ止着部により、前記他端部を、前記ウエストバンド部上に固定して着用することができるようになしてある使い捨ておむつにおいて、前記各ウエストバンド部に、高弾性領域と、弾性を示すが前記高弾性領域より低弾性の低弾性領域とが形成されており、前記高弾性領域は、おむつを着用したときに着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位に当接する部位に形成されている使い捨ておむつを提供することにより、前記目的を達成したものである。
また、本発明は、長手方向の一端部の両側にウエストバンド部が設けられ、左右のウエストバンド部の少なくとも何れか一方にバンド止着部が設けられていると共に、長手方向の他端部に本体止着部が設けられており、前記バンド止着部により、左右のウエストバンド部を連結した後、前記本体止着部により、前記他端部を、前記ウエストバンド部上に固定して着用することができるようになしてあるおむつカバーにおいて、前記各ウエストバンド部に、高弾性領域と、弾性を示すが前記高弾性領域より低弾性の低弾性領域とが形成されており、前記高弾性領域は、おむつカバーを着用したときに着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位に当接する部位に形成されているおむつカバーを提供することにより前記目的を達成したものである。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態としての使い捨ておむつ1(以下、おむつ1ともいう)は、図1及び図2に示されるように、液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在する液保持性の吸収コア4を有し、おむつ長手方向の一端部Aの両側にウエストバンド部10,10が設けられ、左右のウエストバンド部の一方にバンド止着部11が設けられていると共に、おむつ長手方向の他端部Bにおむつ止着部21が設けられている。
おむつ長手方向(後述するおむつカバーの長手方向も同様)とは、おむつ着用時に、着用者の前後方向と一致する方向であり、図2の上下方向である。おむつ幅方向とは、おむつを図2に示すように平面状に広げた状態において、おむつ長手方向と直交する方向であり、図2の左右方向である。
おむつ1における一端部A及び他端部Bは、概ね、おむつ長手方向の両端縁それぞれからおむつ全長の1/3位迄の領域である。おむつ1における一端部Aは、着用者の背中側に配される部位であり、他端部Bは、着用者の腹側に配される部位であるため、以下においては、一端部Aを後方部、他端部Bを前方部ともいう。本発明のおむつ及びおむつカバーは、一端部Aを、着用者の背中側及び腹側の何れにも配することができるものであっても良い。
吸収コア4は、表面シート2及び裏面シート3により挟持・固定されており、吸収体4の周縁部におけるウエスト部5とレッグ部6には、おむつ着用者に各部位をフィットさせるためのウエスト部弾性部材51及びレッグ弾性部材61が配設されている。レッグ弾性部材61は、股下部Cの左右両側部にレッグギャザーを形成している。また、使い捨ておむつ1の長手方向左右両側には、それぞれ立体ガード7が形成されている。立体ガード7の自由端には立体ガード弾性部材71が配されて、ギャザーが形成されている。
図1及び図2に示すように、各ウエストバンド部10には、高弾性領域12と、弾性を示すが該高弾性領域12より低弾性の低弾性領域13とが形成されており、高弾性領域12及び低弾性領域13は、図2に示すように、おむつ長手方向における異なる位置に形成されている。ここでいう、高弾性とは、低弾性領域に比較して弾性が高いという意味である。おむつ1における高弾性領域12は、おむつ幅方向と略平行に延びるように形成されている。即ち、おむつ幅方向と略平行な方向に長い形状を有している。
本発明における弾性の高低は、各領域を、おむつ幅方向に伸長させたときの引張荷重の比較により判断することができる。
例えば、各領域を、おむつ幅方向に、その長さが1.1倍になるまで伸長させた時点の引張荷重で比較する。
具体的には、ウエストバンド部の、弾性が異なると思われる2つの領域それぞれから、おむつ幅方向(以下、X方向という)の長さが50mmおむつ長手方向(以下、Y方向という)の長さが25mmの矩形状の測定片を切り出し、各測定片をX方向にチャック間距離30mm、引張り速度300mm/minで引っ張ったときの10%伸張時強度を読み取る。装置には、オリエンテック社製テンシロン引張り試験機、RTC−1150Aを用いた。ただし、サンプルが上記寸法で取れない場合は、サンプルおよびチャック間距離を調整する。測定値は、5点の平均値を採用する。
前記高弾性領域においては、標準装着状態におけるおむつ着用時の圧力が1.1〜2.5kPaとなることが望ましく、前記低弾性領域においては、標準装着状態におけるおむつ着用時の圧力が0.3〜1.0kPaとなされていることが望ましい。
ここで、標準着用状態とは、ウエストバンド部の各先端部(図1のウエストバンド部10、10の各端部)を把持して、両ウエストバンド部を含めたおむつ幅方向の全幅T(図2参照)を、荷重50cNとなる迄引っ張った時の該全幅Tを製品幅T1とし、その使い捨ておむつを、所定の周長を有する円筒(乳幼児用Lサイズのおむつを想定した場合は、周長500mmの円筒を用いる。また、乳幼児用Sサイズのおむつを想定した場合は周長380mmの円筒を用いる。本発明を大人用おむつに適用する場合は測定周長を大人用の寸法に合わせて変更する。)に、一方のウエストバンド部の先端部から、背側部中央を通って他方のウエストバンド部の先端部に至るまでの長さ(ウエストバンド部の上縁部の高さ位置において円筒の周方向に沿って測定)が、前記製品幅T1となるように伸長させた状態で装着した状態である。この時、各ウエストバンド部の先端部同士は互いに重なりあい、ウエストバンドの基端部間(製品幅方向中央部分)も、ウエストバンド先端部にかかる荷重の影響を受けて幅が変化する。すなわち、上記ウエストバンド部先端部にかかる荷重の影響が、ウエストバンド部の伸縮領域で緩和・吸収されない場合において、製品中央部分に幅方向の伸縮性がない場合は、自然状態から構成部材の弾性変形領域内で変形するにとどまり、また、中央部分に幅方向の伸縮性を持たせた場合は(例えばウエストギャザーや胴回りのギャザーなど)、中央部分の伸縮物性によっては自然状態(伸縮した状態)から引き伸ばされた状態になる。
また、前方部は、ウエストバンド部に止着しない状態(重ねない状態)で前記圧力を測定する。
本発明者らの検討の結果、ウエストバンドタイプのおむつの着用中のずれ落ちを効果的に防止するためには、ウエストバンド全体の締め付け圧を高くするよりも、着用者の腸骨領域に対応するウエストバンドの部位の締め付け圧を高めることが有効であることが見出された。この理由は、着用者、特に幼児は、その身体的な特徴として腹まわりが張り出しているので、当該張り出している腹まわりに当接するウエストバンド部の締め付け圧を高くすると、その締め付け圧が高い故にウエストバンド部が次第に絞り込まれて、腹まわりが細くなる部位にまで該ウエストバンド部がずれ下がってくるからである。
図8は赤ちゃんの体を円錐に見立てた状態を示している。図中、θはウエスト部(点A)における接線に対する垂線と、体の中心に向かう水平線のなす角度を表し、Fは弾性体の締め付け力を示し、PはFに起因する摩擦力を示し、f1はFに起因するズレ落ち力を示し、f2は垂直抗力を示している。ここで、f1=Fsinθであり、またP=νN=νf2=νFcosθ(νは摩擦係数を表す)であるから、点Aにおける下方に向くずれ落ち力Zは次式で表される。
Z=f1−P=Fsinθ−νFcosθ=F(sinθ−νcosθ)
この式から、ウエストバンド部がずれ落ちの生じる状態にある場合、締め付け力(F)が大きい程ずれ落ち力が大きくなることが理解できる。
前述した通り、高弾性領域12におけるおむつ1の着用時の圧力は1.1〜2.5kPaであることが好ましい。高弾性領域12におけるおむつ1の着用時の圧力が1.1kPa未満であると、おむつ1の高弾性領域12を着用者の腸骨領域に固定することが困難となり、その結果おむつ1がずれ落ちてしまい、着用状態でのおむつ1の外観が非常に低下してしまう。特に、おむつ1の股下部Cでのだぶつきが顕著になってしまい、また尿および便のモレの原因となる。一方、高弾性領域12におけるおむつ1の着用時の圧力が2.5kPa超であると、着用者の身体を過度に締め付けてしまうほか、おむつ1の装着操作が困難になってしまう。おむつ1のずれ落ちを一層効果的に防止し、また着用状態でのおむつ1の外観やおむつ1の装着操作を一層向上させる観点から、高弾性領域12におけるおむつ1の着用時の圧力は1.1〜2.0kPaであることが好ましく、1.2〜1.8kPaであることが更に好ましい。
高弾性領域12におけるおむつ1の着用時の圧力は、例えば弾性部材の素材、太さや伸長率、或いは配設間隔を調整することでコントロールすることができる。
高弾性領域12におけるおむつ1の着用時の圧力は、周長が500mmの円筒におむつ1を装着し、装着圧測定装置((株)エイエムアイ・テクノ製の接触圧測定器(AMI3037−2))によって測定される。具体的な測定方法は以下の通りである。
〔高弾性領域の圧力の測定方法〕
φ=15mmのエアパックを用い、ウエスト先端部に前記エアパックの中心が位置するようにセットし、装着圧(P1)を測定する。その際、おむつ幅方向の位置は図3に図示する通り、おむつの左右両側縁と前記吸収体の左右両側縁とのほぼ中心とする。続いておむつ長さ方向に5mmエアパックの中心を移動させ装着圧(P2)を測定する。同様に5mm間隔で測定を行い、P3、P4、P5…Pnを得る。P1ないしPnの測定は外包材におけるウエスト開口部からレッグ開口部までの左右両側部どうしが互いに接合されている範囲にわたって行う。P1ないしPnは腹側部において、左右2点ずつ計4点測定を行い、平均値より腹側部の装着圧とする。同様に背側部においても、計4点測定を行い、平均値より背側部の装着圧とする。P1からPnの値において1.2〜2.5kPaに連続的に該当する部位間の距離を領域の幅とする。例えば、P3からP6までが該当する場合、領域の幅=(6−3)×5=15mmとする。またその時の領域の中心は測定点3と測定点6の中点とする。
円筒の周長を500mmとした理由は、本実施形態のおむつ1を着用する主たる対象者であるLサイズの幼児の腹まわりの長さの平均がおおよそ500mmであることによる。
尚、ここで言うお腹まわりの長さは、姿勢変化時のお腹まわりの周長の変化を考慮し、立位および座位で測定したお腹まわりの平均値である。また、図6に示す後述する他の実施形態のおむつ1Aは寝た状態のSサイズの幼児のお腹周りを想定しているので、円筒の周長を380mm(臥位)として同様に測定をおこなう。また、本発明を大人用おむつに適用する場合は測定周長を大人用の寸法に合わせて変更する。
高弾性領域12の長手方向に延びる中央線12Lと、おむつ幅方向と平行な直線との交差角度(交差部に生じる2つの角度の内の角度の小さい方の角度)が20度以下であることが好ましく、10度以下であることが好ましい。高弾性領域の長手方向に伸びる中央線12Lは、高弾性領域の製品端縁上および高弾性領域と低弾性領域の境界線上で、ウエストバンド先端より1cm間隔で点を取り、各点の中点を結んだ直線を指す。高弾性領域と低弾性領域の境界線が曲線の場合は、ウエストバンド先端より1cm間隔で点を取り、各点データを下に最小二乗法を用いて仮想直線を引く。
本おむつ1においては、高弾性領域12と低弾性領域13との境界線は、おむつ幅方向と平行であり、低弾性領域13は、おむつ幅方向と概ね平行に延在している。概ね平行に延在とは、図2に示すように、低弾性領域13の長手方向に延びる中央線13Lと、おむつ幅方向と平行な直線との交差角度(交差部に生じる2つの角度の内の角度の小さい方の角度)が40度以下であることを意味し、該交差角度は、30度以下であることがより好ましく、20度以下であることが更に好ましい。
高弾性領域と低弾性領域の境界線が曲線の場合は、ウエストバンド先端より1cm間隔で点を取り、各点データを下に最小二乗法を用いて仮想直線を引く。
本おむつ1においては、高弾性領域12が、ウエストバンド部10の上縁10a側に、おむつ幅方向に延びる略短冊状の領域(所定幅の領域)として形成されており、低弾性領域13は、ウエストバンド部10の下縁10b側に、略三角形状の領域として形成されている。
おむつ1は、従来のウエストバンドタイプのおむつと同様にして、着用者に装着することができる。
例えば、図3に示すように、着用者の背側に、後方部Aのおむつ幅方向中央部分を位置させ、両ウエストバンド部10を着用者の腹側に持ってくる。そして、バンド止着部11を有するウエストバンド部10を、他方のウエストバンド部10に重ね、バンド止着部11を介して両ウエストバンド部を、着用者の腹側において互いに連結する。
次いで、着用者の股間を通して着用者の前方に引き出した前方部Bを、ウエストバンド部10の高さまで引き上げ、各おむつ止着部21を、連結された状態のウエストバンド部10に係合止着させる。
本おむつ1における高弾性領域12は、このようにして、おむつ1を着用したときに、着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位(以下、腸骨領域ともいう)に当接する部位に形成されている。腸骨稜及び上前腸骨棘は解剖学の用語である。腸骨稜とは図4において9aで示される部位であり、上前腸骨棘とは同図において9bで示される部位である。
ウエストバンドタイプのおむつにおける着用中のずれ落ちを防止するためには、ウエストバンド部全体を高弾性にすることや、ウエストバンド部同士の重なり部分が大きくしてウエストバンド部による締め付け圧を高くすることが考えられるが、それらの方法では、腹部や脚廻りの圧迫により装着感が悪化し、また、場合によっては、ズレ落ちを助長する結果になる場合もある。ズレ落ちが助長される理由は、着用者、特に幼児は、その身体的な特徴として腹まわりが張り出しているので、当該張り出している腹まわりに当接する部分の締め付け圧を高くすると、その締め付け圧が高い故に当該部分が次第に絞り込まれて、腹まわりが細くなる部位にまで当該部分がずれ下がってくることによる。
本発明者らは、装着感の悪化を防止しつつ、ずれ落ちを効果的に防止するためには、着用者の腸骨領域に対応する部位の弾性を高めると共に、それ以外の部位に弾性を低く抑えることが有効であることを見出した。
本おむつ1によれば、腸骨領域に当接する部位に高弾性領域12を形成して当該部位の締め付け圧を高めると共に、腸骨領域から離れた部位、特に腸骨領域よりも股下部C側の部位に低弾性領域13を形成して当該部位の締め付け圧を低くしズレ落ちを助長する力の発生を防止することにより、ズレ落ちを効果的に防止することができ、しかも、脚周りや腹部廻りの圧迫感が低減されるので、装着感も向上することができる。
高弾性領域12の幅(おむつ長手方向の長さ)W1は、ズレ落ち防止及び脚周りや腹部廻りの圧迫感の低減の観点から20〜60mmであることが好ましく、30〜50mmであることがより好ましい。
また、高弾性領域12の幅(おむつ長手方向の長さ)W1は、ウエストバンド部の基端部の幅Wに対する比(W1/W)が、ズレ落ち防止及び脚周りや腹部廻りの圧迫感の低減の観点並びに臀部の露出を防止する観点から1.5〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。
本おむつ1は、幼児用のおむつとする場合、高弾性領域12を有する部位を着用者の腸骨領域に首尾良く当接させる観点から、展開状態のおむつ1において、おむつ長手方向全長を2等分するおむつ幅方向に延びる中央線CLから高弾性領域12の中心位置までの距離K1が180〜220mmであることが好ましい。ここで、高弾性領域12の中心位置は、高弾性領域と低弾性領域の境界が直線の場合はその直線において、また、高弾性領域と低弾性領域の境界が曲線の場合は前述の最小二乗法によって求めた仮想直線における、ウイングの先端と基点の中点を基準にする。この値は、幼児約350人の身体計測を実施し、着用者の腹側における、上前腸骨棘の高さ位置と同じ高さを上前腸骨棘前とし、着用者の背中側における、上前腸骨棘の高さ位置と同じ高さを上前腸骨棘後として、上前腸骨棘前から股下を経由し上前腸骨棘後までの長さを測定して、これを股上前後長とし、この股上前後長におむつの材料による厚み等を考慮した必要長を加えて得られた数値を2分して得たものである。当該距離K1を、高弾性領域12を有する部分を着用者の腸骨領域に一層首尾良く当接させる観点から、前記距離K1は185〜215mmであることがより好ましく、185〜210mmであることが更に好ましい(図2参照)。
本おむつ1を、成人用のおむつとする場合には、同様の観点から、おむつ幅方向に延びる中央線CLから高弾性領域12の中心位置までの距離K1が315〜380mmであることが好ましく、335〜360mmであることがより好ましい。
本おむつ1における、各ウエストバンド部10は、図5に示すような、バンド部形成部材10Aを、後方部Aの本体部分の両側縁部それぞれに、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合方法により接合して形成されている。
バンド部形成部材10Aは、シート材に複数本の弾性部材を伸長状態で固定して形成されており、より具体的には、内層シート14と外層シート15との間に複数本の細幅の弾性部材(糸ゴム、平ゴム等)を、それぞれおむつ幅方向と平行に延びるように伸長状態で固定して形成されている。バンド部形成部材10Aにおける、前記高弾性領域12を形成する部分12aには、相対的に太さの太い弾性部材16の一群(3〜15本程度)が配されており、バンド部形成部材10Aにおける、前記低弾性領域13を形成する部分13aには、相対的に太さの細い弾性部材17の一群(2〜10本程度)が配されている。尚、本おむつ1においては、弾性部材の配置間隔が、高弾性領域12と低弾性領域13とで同じか、又は高弾性領域12よりも低弾性領域13において広くなっている。
高弾性領域12と低弾性領域13とで弾性を異ならせる方法は、特に制限されるものではなく、例えば、両領域に配設する弾性部材の太さを異ならせる一方、配置間隔を同じにする方法、弾性部材の太さを同じにする一方、配置間隔を異ならせる方法、弾性部材の太さ及び配置間隔を異ならせる方法、これらの各方法において、弾性部材の太さを変えるのに代えて弾性部材の素材等を異ならせる方法等が挙げられる。
更に他の方法としては、バンド部形成部材10Aとして、高弾性の伸縮性シート及び低弾性の伸縮性シートが連結された構成の複合シートを用いる方法が挙げられる。
高弾性又は低弾性の伸縮性シートとしては、各種公知の伸縮性シートを用いることができ、例えば、エラストマー材料からなるシートの片面又は両面に、おむつ幅方向に伸張可能な繊維集合体を積層して一体化してなる積層シートを用いることができる。
エラストマー材料としては、天然ゴム、ブタジエン、イソプレン等の合成ゴム等が好ましく用いられる。エラストマー材料からなるシートとしては、エラストマー材料をフィルム化して得られる弾性フィルム、エラストマー材料からなる弾性繊維を、ネット状に成形したり不織布化したシート等が好ましく用いられる。
おむつ幅方向に伸張可能な繊維集合体としては、スリットの形成等の2次的な加工を施さなくてもそれ自体伸張性を有する不織布、例えばスパンデックスからなる不織布等や、それ自体は伸張性を有しないものにスリットの形成等の2次的な加工により伸張性を付与したもの等を用いることができる。高弾性領域12と低弾性領域13を形成する伸縮性シートとしては、特許文献1,2、特開平9−290002号公報、特開平9−299404号の各公報記載のもの等を用いることもできる。
ウエストバンド部10の裏面シート3側の面は、機械的ファスナーの凸部材が直接係合可能な材料からなることが好ましい。そのようなシート材としては、各種の不織布、例えばサーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布等が挙げられる。
バンド止着部11及びおむつ止着部21,21は、その表面に多数の錨形や鉤形のオス型係合部材が配された、機械的ファスナーの凸部材等を用いることができる。機械的ファスナーの凸部材としては、例えば「マジックテープ(登録商標)」(クラレ社製)、「クイックロン(登録商標)」(YKK社製)、「マジクロス(登録商標)」(カネボウベルタッチ社製)等の市販品等を用いることができる。
尚、表面シート2、裏面シート3、吸収コア4及び立体ガード7等の構成材料としては、使い捨ておむつに従来用いられている各種公知のものを特に制限なく用いることができる。
次に、本発明の他の実施形態としての使い捨ておむつ1Aについて、図6を参照して説明する。おむつ1Aについては、主として、上述したおむつ1と異なる点について説明し、同様の点については、同一の符号を付して説明を省略する。特に言及しない点については、上述したおむつ1に関する説明が適宜適用される。
本おむつ1Aにおいては、図6に示すように、各ウエストバンド部10における高弾性領域12が、各ウエストバンド部10の下縁10b側に形成されており、低弾性領域13が、各ウエストバンド部10の上縁10a側に形成されている。本おむつ1Aにおける高弾性領域12も、上述したおむつ1と同様に、おむつを着用したときに着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位に当接する部位に形成されている。
本おむつ1Aは、寝た状態で使用することの多い着用者に適したおむつである。本おむつ1Aは、おむつ止着部21を、高弾性領域12部分の外面に止着して用いられる。
本おむつ1Aにおいては、吸収コア4の後端(吸収コア4の、おむつ長手方向一端部A側の端部)41が、高弾性領域12の上端12bより下方に位置している(図6参照)。
本おむつ1Aによれば、高弾性領域12を有する部分が、着用者の腸骨領域において着用者の肌に良好にフィットして、その位置において、排泄物が着用者の背中側にそれ以上拡散されることを防止することができる。また、その位置より排泄物が背中側に移動した場合であっても、低弾性領域13により、後方部Aの端縁の近傍に位置する部分が、比較的広い幅で着用者に良好にフィットしているため、その液が漏れ出しが生じにくい。また、後方部Aの端縁の近傍に位置する部分が、着用者を締め付けることがないので、装着感も良好である。このように、第2実施形態も、位置ズレが生じにくく、装着感も良好である。
本発明のおむつカバーの好ましい実施形態としては、上述した各実施形態のおむつ1,1Aから吸収性コアを除去したもの等を挙げることができる。そのようなおむつカバーにおいては、上述したおむつ止着部21が本体止着部に相当する。本発明のおむつカバーは、通常、その内表面側(表面シート側)に、液保持性の吸収性コアを具備する補助吸収具を配置して用いられる。補助吸収具としては、各種公知のものを用いることができる。
本発明の使い捨ておむつ及びおむつカバーは、上述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
例えば、図7に示すように、上述したおむつ1における低弾性領域13の下端部に、第2の高弾性領域18を設けて該低弾性領域13のめくれ等を防止することもできる。また、おむつ1における、ウエスト部弾性伸縮部材51、レッグ弾性伸縮部材61及び立体ガード7は、それぞれ一部又は全部を省略することができる。また、フラップ部20にも弾性伸縮部を設けても良い。
また、高弾性領域及び低弾性領域の配置は、図9に示すような配置であっても良い。図9(a)に示す例においては、ウエストバンド部の、延出方向の一部にのみ高弾性領域12が形成されている。また、高弾性領域12をおむつ幅方向に複数に分割して形成し、個々のおむつ幅方向の寸法を合計した値が、高弾性領域12の、おむつ長手方向の寸法より大となるようにしても良い。図9(b)に示す例においては、高弾性領域12の、おむつ長手方向の寸法W1が、バンド部止着部11の同方向の寸法と略同じである。図9に示す例における高弾性領域12及び低弾性領域13は、おむつ長手方向の異なる位置に配された部分を有している。
ただし、好ましくは高弾性領域12は、本体部との接合線10cの近傍から始まり、延出方向外側に向かって連続で伸びる方が望ましい。ここにおいて近傍とは、接合線10cと高弾性領域12の距離tが、50mm以下、より好ましくは30mm以下、更に好ましくは15mm以下であることが好ましい。高弾性領域12がウエストバンド部の先端部側に極端に偏って配される場合は、着用者にウエストバンドを互いに重ねて着用させた時に、非伸縮性の結合材11の影響によって、あるいはまた、前身ごろ(B領域)の影響によって、高弾性領域の伸縮が阻害されてしまい、ズレ落ちやフィット性が十分得られない場合があるためである。
本発明のウエストバンド部を着用者の胴回りに装着させる場合、ウエストバンド同士を互いの上縁部を重ね合わせるように止着する方が、弾性領域が着用者の腹囲の変化を効果的に緩和し、優れた追従性による装着感とズレ落ち防止性を両立させることができるので好ましい。起立姿勢でこの装着させた状態においては、ウエストバンド部は胴回りにおいて地面と略水平に身体に固定装着される。前記高弾性領域は、ウエストバンド部の上縁側と略平行な方向に延びるように形成されているため、高弾性領域12は胴回りにおいて地面と略水平に身体に固定される。ウエストバンド部の先端を上方又は下方へ向けて交差するように装着させる場合は、腹囲の追従性が若干劣るが、ズレ落ち防止性は問題無く装着することは可能である。
本発明の使い捨ておむつは、幼児用及び成人用の何れのおむつであっても良い。
図1は、本発明の一実施形態である使い捨ておむつを示す斜視図である。 図2は、図1の使い捨ておむつを平面状に拡げた状態を示す平面図である。 図3は、図1の使い捨ておむつの着用状態の一例を示す斜視図である。 図4は、腸骨を示す説明図である。 図5は、バンド部形成部材を示す平面図である。 図6は、本発明の他の実施形態としての使い捨ておむつを示す斜視図である。 図7は、本発明の更に他の実施形態としての使い捨ておむつの一部を示す平面図である。 図8は、着用者のウエスト部におけるずれ落ち力の算出方法を示す説明図である。 図9は、本発明の更に他の実施形態における、高弾性領域及び低弾性領域の配置態様を示す図である。
符号の説明
1,1A 使い捨ておむつ
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収コア
10 ウエストバンド部
11 バンド止着部
12 高弾性領域
13 低弾性領域
A 後方部(一端部)
B 前方部(他端部)
C 股下部

Claims (7)

  1. 吸収コアを有し、おむつ長手方向の一端部の両側にウエストバンド部が設けられ、左右のウエストバンド部の少なくとも何れか一方にバンド止着部が設けられていると共に、おむつ長手方向の他端部におむつ止着部が設けられており、前記バンド止着部により、左右のウエストバンド部を連結した後、前記おむつ止着部により、前記他端部を、前記ウエストバンド部上に固定して着用することができるようになしてある使い捨ておむつにおいて、
    前記各ウエストバンド部に、高弾性領域と、弾性を示すが前記高弾性領域より低弾性の低弾性領域とが形成されており、
    前記高弾性領域は、おむつを着用したときに着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位に当接する部位に形成されている使い捨ておむつ。
  2. 前記高弾性領域及び前記低弾性領域は、おむつ長手方向における異なる位置に形成されている請求項1記載の使い捨ておむつ。
  3. 前記高弾性領域は、ウエストバンド部の上縁と略平行な方向に延びるように形成されている請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
  4. 液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及びこれら両シート間に介在する前記吸収コアを備えた本体部分と、前記ウエストバンド部とを有しており、
    前記ウエストバンド部は、前記一端部における前記本体部分の両側縁部それぞれにバンド部形成部材を接合して形成されており、該バンド部形成部材は、シート材に複数本の弾性部材を伸長状態で固定して形成されている請求項1〜3の何れか記載の使い捨ておむつ
  5. 前記高弾性領域が、前記ウエストバンド部の上縁側に形成されている請求項1〜4の何れか記載の使い捨ておむつ。
  6. 前記高弾性領域が、前記ウエストバンド部の下縁側に形成されており、前記吸収コアの、前記一端部側の端部が、該高弾性領域の上端より下方に位置している請求項1〜5の何れか記載の使い捨ておむつ。
  7. 長手方向の一端部の両側にウエストバンド部が設けられ、左右のウエストバンド部の少なくとも何れか一方にバンド止着部が設けられていると共に、長手方向の他端部に本体止着部が設けられており、前記バンド止着部により、左右のウエストバンド部を連結した後、前記本体止着部により、前記他端部を、前記ウエストバンド部上に固定して着用することができるようになしてあるおむつカバーにおいて、
    前記各ウエストバンド部に、高弾性領域と、弾性を示すが前記高弾性領域より低弾性の低弾性領域とが形成されており、
    前記高弾性領域は、おむつカバーを着用したときに着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位に当接する部位に形成されているおむつカバー。
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