JP4000951B2 - 自動車の車体前部構造 - Google Patents

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    • B62D25/145—Dashboards as superstructure sub-units having a crossbeam incorporated therein

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の車体前部構造に関する。
【０００２】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
乗用車等における最近の要求として、客室空間の拡大を目的としたデッキフォワード化が成されて車両のデザインイメージが変更される結果、車両のフロントサイドメンバの長さが短くなる傾向にある。このため、車両衝突時等の衝撃吸収方法としてクラッシャブルボディを採用している車両にとっては、衝撃吸収性能の確保が困難な状況になっている。
【０００３】
例えば、図３に示すように、車体前部の左，右両側部に設けられて車両の前後方向に延びるフロントサイドメンバ100 においては、左，右両フロントピラー101 間に架設されるフロントデッキクロスメンバ102 の直下より比較的前方から斜め下方へ屈曲されその後再び水平に屈曲されて車体床面と同一レベルになるようになっている。
【０００４】
フロントサイドメンバ100 をこのように構成することにより、トーボード（ダッシュパネル）面Ｄ（図４参照）を車体前方に設定可能となり、客室空間の拡大が図られるのである。一方、フロントサイドメンバ100 は、車両衝突時（前突やオフセット衝突）には、その入力荷重を主に担持すると共に前部側がアコーディオン状に潰れて衝突エネルギーを吸収し得るようにもなっている。
【０００５】
ところが、上述したような構成のフロントサイドメンバ100 にあっては、図４に示すように、車両衝突時の入力（図４（ａ）中の矢印参照）により、略Ｚ字形状の折れ曲がり（Ｚ折れ）を生じやすく（図４（ｂ）中のフロントサイドメンバ100 の破線状態から実線状態に変形）、トーボード面Ｄの後退寸法が大きくなるという虞があった。更に、車両衝突時の入力が過大であると、図４（ｃ）に示すように、フロントサイドメンバ100 のフロアパネルの下面に配設される部分102 にも座屈する虞があった。また、フロントサイドメンバ100 にＺ折れが生じる結果、フロントサイドメンバ100 のクラッシャブルレングス（アコーディオン状に潰れて衝撃吸収を行う部分の長さ）が短くなってしまい、衝撃吸収量が少なくなってしまい、客室（キャビン）の変形量が増大するという虞もあった。
【０００６】
そこで、特開平４−２６２９７５号公報では、フロントサイドメンバのダッシュロアパネル結合部分での衝突荷重反発力を高め、該フロントサイドメンバの塑性変形によるエネルギー吸収量を拡大するために、フロントバンパーに入力した衝突荷重をラジエータコアサポートの第１の補強部材からフードレッジパネルの補強部を経由してカウルボックスに伝達させると共に、第２の補強部材に伝達させ、該第２の補強部材に支持部を支点とするモーメントを発生させるようにした車体前部構造が開示されている。
【０００７】
しかしながら、前記公報に開示された車体前部構造にあっては、衝突入力の伝達経路が大掛かり（遠回り）でそれに伴う補強部材の部品点数増大も相俟って、構造の煩雑化によりコストアップを招来するという欠点がある。
【０００８】
本発明の目的は、客室空間の拡大とデッキフォワード化によるデザインイメージアップを図る一方で、簡単な構造変更により車両衝突時におけるフロントサイドメンバのＺ折れ等を抑制してエネルギー吸収量を増大させることができる自動車の車体前部構造を提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための、請求項１に係る発明は、車体前側部に設けられ車両前後方向に延びる左右のフロントサイドメンバと、車体前側壁間に架設されパイプ材からなるフロントデッキクロスメンバと、前記左右のフロントサイドメンバに設けられる斜め後方への屈曲部と前記フロントデッキクロスメンバの前記車体側壁との結合部近傍とを連結するダッシュクロスメンバとを備え、前記ダッシュクロスメンバは、一本のパイプ材からなりその中間部が一直線状に形成されて左右のフロントサイドメンバ間に水平に架設されると共に左右両端部側が上方へ屈曲されてフロントデッキクロスメンバのみに溶接され前記フロントデッキクロスメンバと協働して台形枠状のフレーム構造を構成し、車両衝突時のフロントサイドメンバへの入力をダッシュクロスメンバを介して車体側壁側へ分散させるようにした。
【００１２】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る自動車の車体前部構造を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【００１３】
［実施例］
図１は本発明の一実施例を示す車体前部構造の概略斜視図、図２は同じく作用説明図である。
【００１４】
図１に示すように、車体前部には、その左，右両側部に位置して、車両の前後方向に延びる閉断面構造のフロントサイドメンバ１が配設されると共に、車体側壁としての左，右両フロントピラー２間にはパイプ材からなるフロントデッキクロスメンバ３が架設される。
【００１５】
前記フロントサイドメンバ１は、フロントデッキクロスメンバ３直下より所定距離離れた前方位置から斜め下方へ屈曲され略フロントデッキクロスメンバ３直下の位置から再び水平に屈曲されて車体床面と略同一レベルになるようになっており、これにより、トーボード面Ｄ（図４参照）を車体前方に設定し、客室空間の拡大が図られている。
【００１６】
一方、フロントサイドメンバ１は、車両衝突時（前突，ＯＤＢ衝突等）には、その入力荷重を主に担持すると共に前記斜め下方への屈曲部Ａから前方部分がアコーディオン状に潰れて衝突エネルギーを吸収し得るようにもなっている。
【００１７】
そして、本実施例では、前記フロントサイドメンバ１の前記斜め下方への屈曲部Ａと、前記フロントデッキクロスメンバ３とフロントピラー２との結合部Ｂ近傍とを剛に連結するメンバ部材としてダッシュクロスメンバ４が配設される。
【００１８】
前記ダッシュクロスメンバ４は一本のパイプ材（単一部材）からなり、その中間部４ａが左右のフロントサイドメンバ１間に溶接用のブラケット５ａ，５ｂを介して水平に架設されると共に、左，右両端部４ｂ，４ｃ側が上方へ屈曲されてそれぞれ前記フロントデッキクロスメンバ３の左，右両部に溶接され、当該ダッシュクロスメンバ４とフロントデッキクロスメンバ３とが協働して台形（四角）枠状のフレーム構造を構成している。
【００１９】
このように構成されるため、フロントサイドメンバ１への車両衝突時（前突，ＯＤＢ衝突等）の入力は、図２に示すように、ダッシュクロスメンバ４を介して左右のフロントピラー２へも分散される（図２の（ａ）参照）。この際のフロントサイドメンバ１後部とフロントピラー２の分担荷重は約５０：５０に設計すると好適である。
【００２０】
また、各種入力に対して、パイプ材からなるフロントデッキクロスメンバ３及びダッシュクロスメンバ４はその軸力及び張力で効果的に作用する。つまり、衝突時の大きい後向きの力はダッシュクロスメンバ４の左，右両端部４ｂ，４ｃの軸力で受け、フロントサイドメンバ１の内折れ等の横力はダッシュクロスメンバ４の中間部４ａとフロントデッキクロスメンバ３の張力（又は圧縮力）で有効に受けられるのである（図２の（ｂ）参照）。また、ダッシュクロスメンバ４とフロントデッキクロスメンバ３とが協働して台形（四角）枠状のフレーム構造を構成しているので、より一層強固な車体構造となる。
【００２１】
これらの結果、客室空間の拡大とデッキフォワード化によるデザインイメージアップを図る一方で、ダッシュクロスメンバ４を新設するという簡単な構造変更により車両衝突時におけるフロントサイドメンバ１のＺ折れ等を抑制してエネルギー吸収量を増大させることができる。因みに、本ダッシュクロスメンバ４無しで同等の性能を他の補強構造で確保した場合に比べ、車体重量を約１０キログラム軽量化できることは確認されている。
【００２２】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各種変更が可能であることは言うまでもない。例えば、ダッシュクロスメンバ４はパイプ材に限定されず、他の鋼材を用いても良く、また、左右のフロントサイドメンバ１間に架設される部分（中間部４ａ）は無くても良い。更に、ダッシュクロスメンバ４は溶接に代えてボルト等で結合するようにしても良い。
【００２３】
【発明の効果】
以上説明したように請求項１の発明によれば、車体前側部に設けられ車両前後方向に延びる左右のフロントサイドメンバと、車体前側壁間に架設されパイプ材からなるフロントデッキクロスメンバと、前記左右のフロントサイドメンバに設けられる斜め後方への屈曲部と前記フロントデッキクロスメンバの前記車体側壁との結合部近傍とを連結するダッシュクロスメンバとを備え、前記ダッシュクロスメンバは、一本のパイプ材からなりその中間部が一直線状に形成されて左右のフロントサイドメンバ間に水平に架設されると共に左右両端部側が上方へ屈曲されてフロントデッキクロスメンバのみに溶接され前記フロントデッキクロスメンバと協働して台形枠状のフレーム構造を構成し、車両衝突時のフロントサイドメンバへの入力をダッシュクロスメンバを介して車体側壁側へ分散させるようにしたので、客室空間の拡大とデッキフォワード化によるデザインイメージアップを図る一方で、簡単な構造変更により車両衝突時におけるフロントサイドメンバのＺ折れ等を抑制してエネルギー吸収量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施例を示す車体前部構造の概略斜視図である。
【図２】同じく作用説明図である。
【図３】従来の車体前部構造の概略斜視図である。
【図４】同じく従来構造の不具合を示す説明図である。
【符号の説明】
１ フロントサイドメンバ
２ フロントピラー
３ フロントデッキクロスメンバ
４ ダッシュクロスメンバ

Claims (1)

  1. 車体前側部に設けられ車両前後方向に延びる左右のフロントサイドメンバと、
    車体前側壁間に架設されパイプ材からなるフロントデッキクロスメンバと、
    前記左右のフロントサイドメンバに設けられる斜め後方への屈曲部と前記フロントデッキクロスメンバの前記車体側壁との結合部近傍とを連結するダッシュクロスメンバと
    を備え、
    前記ダッシュクロスメンバは、一本のパイプ材からなりその中間部が一直線状に形成されて左右のフロントサイドメンバ間に水平に架設されると共に左右両端部側が上方へ屈曲されてフロントデッキクロスメンバのみに溶接され前記フロントデッキクロスメンバと協働して台形枠状のフレーム構造を構成している
    ことを特徴とする自動車の車体前部構造。
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