JP3999980B2 - 封印用ナット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は調節ボルトをセットした後に、封印用ナットで締め付けて、この封印用ナットにキャップを被せてユーザーが調節ボルトの回転調節ができないようにする技術に関し、特に、内燃機関等のリミッタやアイドル調整に用いられる調節ボルトを締付固定する封印用ナットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から内燃機関等の最高回転数(ハイアイドル)を、調節ボルトを回動して調節し、該調節ボルトを締付ナットで締め付けることにより最高回転数を確定し、その後この最高回転数をいたずらにユーザーが変更できないように、調節ボルト及び締付ナット外周に封印用キャップを被せていた。
【0003】
そして、図5に示すように、取付部2に調節ボルト1を螺装して、該調節ボルト1に第一締付ナット(ロックナット)3を締め付けることにより調節ボルト1の位置を確定していたのであるが、該第一締付ナット3の他に第二締付ナット4を設け、更に両締付ナットの間にカラー部材5を嵌め込んで、封印用キャップ6に設けた爪状の係止部6aを第二締付ナット4と係合させて、封印用キャップ6を被せるという構成であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の構成であると、油密を要しない直噴式エンジンにおいても、封印用キャップの係止部を係止するためには、第一締付ナット、カラー部材、第二締付ナットが必要となり、部品点数が多くなるという不具合があった。また、これらの部品を一体化した締付ナットを用いることによる調節ボルトの封印装置の構造の簡略化及び組立て調整工数の低減を図ることが求められていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
油密を要さない調節ボルト(11)に封印用ナット(13)を螺装し、該調節ボルト(11)の取付位置を、該封印用ナット(13)により固定して、封印用キャップ(14)を被せて封印する構造において、前記封印用ナット(13)には、中部外周に封印用キャップ(14)に形成した係止部(14a)を係止する鍔部(13a)と、該鍔部(13a)の上部の工具嵌合部(13b)と、更に工具嵌合部(13b)の上部外周のテーパ部( 13d)と、更に工具嵌合部(13b)の下部の円筒形状のボス部(13f)を、一体化して設け、該封印用ナット(13)の軸心部には貫通孔(13e)を開口し、該貫通孔(13e)の下端から内部途中までの内周に、調節ボルト(11)と螺合するネジ部(13c)を形成し、該封印用ナット(13)の全長を、該封印用ナット(13)に締め付けられる調節ボルト(11)の一端が、該封印用ナット(13)上端から突出しない長さとしたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0008】
図1は本発明の封印用ナットを取り付けた封印装置の断面図、図2は封印用ナットの正面図、図3は封印用キャップ装着時の封印用ナットの正面図、図4は封印用ナットの正面断面図、図5は従来の封印装置を示す断面図である。
【0009】
まず、図1において、封印装置10をエンジンに設ける調節ボルトに取り付ける実施例について説明する。但し、調節ボルトの位置を固定して外側(頭部側、または工具による調節側)から回転調節できないようにキャップを被せる構成であればエンジンの燃料制限やアイドル調節に限定するものではない。
【0010】
ガバナケースまたはシリンダブロック、ケース側壁等が調節ボルトの封印装置10の取付部(本実施例ではガバナケース)12となり、該取付部12に調節ボルト11を螺装するための螺子孔12aが開口されて雌螺子が形成されている。該螺子孔12aに調節ボルト11が螺装されて、一端がガバナケース12に挿入されその先端にレギュレターレバー19の一端が当接可能に配設されている。
【0011】
該レギュレターレバー19はガバナと連結されて、使用者が要求するエンジンの回転数に応じて回動できるようにしており、該レギュレターレバー19の一端が調節ボルト11の先端に当接することにより、燃料噴射量が制限されて最高回転数が制限されるように構成している。
【0012】
前記調節ボルト11の他端面には直径方向に切込み11aが形成されて、該切込みに11aにマイナスドライバーの先端を差し込んで回転させることにより、ガバナケース12内への突出長さを調節して、最高回転数を設定することができる。実際には、図1における矢印(イ)方向へ突出させることにより減速(回転数を減少)させることができ、矢印(ロ)方向へ退避させることで増速(回転数を増加)させることができる。
【0013】
そして、前記ガバナケース12外側方向に突出した調節ボルト11の部分上に封印用ナット13が螺装され、該封印用ナット13を締め付けることにより、調節ボルト11の位置を決めて確定することができる。そして、調節ボルト11の突出部は後述するように封印用ナット13に覆われており、前記封印用ナット13の外側に封印用キャップ14が被せられ、調節ボルト11、封印用ナット13を回動できないようにしているのである。
【0014】
次に、本発明の封印用ナット13の構成について、図1乃至図4より説明する。なお、軸心方向を上下方向とする。封印用ナット13は外周下側よりボス部13f、鍔部13a、工具嵌合部13b、テーパ部13dより一体的に構成しており、上下中部付近のボス部13fの上部外周には鍔部13aが設けられており、該鍔部13aはその外径をボス部13fや工具嵌合部13bの外径より大きくした薄い円筒状をしており、該封印用ナット13側面から突出している。前記鍔部13aより上部は二面巾部を有する(本実施例では平面断面視で六角形状としているが、四角形とすることもできる)工具嵌合部13bとなっており、スパナ等の工具を嵌合して締め付け、または弛めることを可能としている。従来では、先に述べた如く、封印用キャップ14を被せる際には、締付ナットとは別にロックナットやカラー部材等が必要であったが、これらの部品を一体化して封印用ナット13として前記のような構成をとしたため、部品点数の削減につながり、組立て調整工数も低減されることになる。
【0015】
前記封印用ナット13の二面巾部を有する工具嵌合部13bの上部には、軸心側に円錐状に傾斜するテーパ部13dが形成され、後述する封印用キャップ14を被せる際には、前記テーパ部13dがガイドとなって組み付け性を向上させている。
【0016】
封印用ナットの鍔部13a下部のボス部13fはロックナットのような形状とせず円筒形状としており、その高さを後述する封印用キャップ14の係止部14aの上端位置の長さに合わせている。こうすることで、封印用キャップ14を被せた後において、封印用キャップ14に外力を加えて回転させようとしても、封印用キャップの爪状の係止部14aはボス部13fが円筒形状となっているため係止できずに空転することになる。
【0017】
また、封印用ナット13の軸心部には貫通孔13eが上下方向に貫通開口され、該貫通孔13eの下部(本実施例では鍔部13aより下方)内周、言い換えれば下端から上方途中部までに調節ボルト11と螺合するネジ部13cが形成されている。このように内周を全ネジ構造としないことでボルトの倒れによる弛みを防止する。また、貫通孔13eの上部は開放されており、袋ナットのような構成とはせず、長ボルトにも螺装できるようにしている。但し、前記封印用ナット13上部を開放しない有底部を備える形状とすることも可能である。すなわち、キャップ付きのナット、袋ナットのような構成にしても差し支えない。
【0018】
前記封印用ナット13の全長は、調節ボルト11を位置決めした際に、該封印用ナット13の上端から該調節ボルト11が突出しない長さとして、調節ボルト11が封印用ナット13に埋没するようにしている。封印用ナット13の上端を開放しているため、調節ボルト11が突出してしまうこともありうるが、このような長さとすることにより、ユーザーが一般工具で前記調節ボルト11を回転させることを困難にしている。
【0019】
封印用キャップ14は、段付き円筒形状に構成されており、 外周に複数箇所(本実施例では二箇所)の絞り部14b・14cを有している。前記絞り部14b・14cの内径は、封印用ナット13の工具嵌合部13bの長手側直径より若干小さくなっており、封印用キャップ14を封印用ナット13の外周に摩擦押圧するようにして被せる。前記絞り部14b・14cは、それぞれ前記工具嵌合部13bと複数箇所の嵌合接点を有し、位置がずれたり、がたつきが発生しないようにしている。なお、下部の絞り部14bは前記封印用キャップ14を被せるときのスムースなガイドとして役立ち、上部の絞り部14cは被せた後の封印用キャップ14のずれや倒れ、振れを防止する。また、封印用キャップ14上部には、貫通孔14dが開口されており、 封印用ナットをその上部を開放しない有底部を備える形状とした袋ナットのような構成とした場合には、該貫通孔14dの周縁部が袋ナット先端の球面部の部分に密着当接するようにしている。
【0020】
そして、封印用キャップ14の下部外周に複数箇所(本実施例では3箇所)爪状の係止部14aが内側へ斜め方向に折り曲げられて形成している。該係止部14aが封印用ナット13に封印用キャップ14を上方より被せたときに、前記鍔部13aに引っ掛かることにより、該封印用キャップ14が係止される。このとき、前記鍔部13aはガイドとなって封印用キャップ14を係止する位置を決めている。つまり、前記係止部14a先端から封印用キャップ14の基部端までの長さと、封印用ナットの鍔部13aより下部の長さとを略一致させてている。
【0021】
このような構成において、組み立てた後に最高回転数を調整するときに、調節ボルト11を取付部(ガバナケース)12に螺装して、調節ボルト11上端に形成した溝11aにマイナスドライバー等を差し込んで回転して、設定回転となる位置で、調節ボルト11をマイナスドライバーで保持しながら封印用ナット13を締め付けて位置固定し、その上から封印用キャップ14を押し込んで被せるのである。このとき、調節ボルト11の外側の突出部分は封印用ナット13内に十分収納されており、封印用キャップの絞り部14b・14cは封印用ナット13の側面を押圧しながら摩擦摺動し、がたなく被せることができ、終端まで押し込むと、爪状の係止部14aの先端が封印用ナットの鍔部13aの取付部12側の面に引っ掛かり、抜けないようになる。こうして、封印用キャップ14が被せられた状態では封印用ナット13は外からは見えなくなり、工具等で弛めることができなくなり、ユーザーがいたずらに調整ボルト11を回転して最高回転数を変更できないようにしている。そして、サービスマン等がメンテナンスや修理等において、再調整する場合には、封印用キャップ14を切り裂く等して取り外し、封印用ナット13を弛めて、調節ボルト11を回転して再調整する。その後、封印用ナット13を締付固定し、新たな封印用キャップ14を外側から被せるのである。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0023】
油密を要さない調節ボルト(11)に封印用ナット(13)を螺装し、該調節ボルト(11)の取付位置を、該封印用ナット(13)により固定して、封印用キャップ(14)を被せて封印する構造において、前記封印用ナット(13)には、中部外周に封印用キャップ(14)に形成した係止部(14a)を係止する鍔部(13a)と、該鍔部(13a)の上部の工具嵌合部(13b)と、更に工具嵌合部(13b)の上部外周のテーパ部(13d)と、更に工具嵌合部(13b)の下部の円筒形状のボス部(13f)を、一体化して設け、該封印用ナット(13)の軸心部には貫通孔(13e)を開口し、該貫通孔(13e)の下端から内部途中までの内周に、調節ボルト(11)と螺合するネジ部(13c)を形成し、該封印用ナット(13)の全長を、該封印用ナット(13)に締め付けられる調節ボルト(11)の一端が、該封印用ナット(13)上端から突出しない長さとしたので、従来のロックナットやカラー部材等を、一体的に構成した封印用ナットとすることができ、封印装置の構造簡略化及び組立て調整工数の低減を図ることができる。
また、部品点数を減らすとともに、コスト削減も図られる。更に、封印用ナットを全ネジ構造としていないことにより、ボルトの倒れによる弛みを防止できる。
【0024】
また、前記封印用ナットの上部外周にテーパ部を形成したので、封印用キャップを被せる際に、テーパ部をガイドとすることにより封印用キャップの組み付け性を向上させることができる。
【0025】
また、前記封印用ナットの鍔部より下部を円筒形状としたので、封印用キャップを被せた後においての封印装置の耐封印解除性を向上させることができる。
【0026】
また、前記封印用ナットの全長を、該封印用ナットに締め付けられる調節ボルトの一端が該封印用ナット上端から突出しない長さとしたので、調節ボルトに一般工具が直接取り付くのを防ぎ、ユーザーによる調節ボルトの調整を困難にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の封印用ナットを取り付けた封印装置の断面図。
【図2】 封印用ナットの正面図。
【図3】 封印用キャップ装着時の封印用ナットの正面図。
【図4】 封印用ナットの正面断面図。
【図5】 従来の封印装置を示す断面図。
【符号の説明】
11 調節ボルト
12 取付部
13 封印用ナット
13a 鍔部
13c ネジ部
13d テーパ部
13e 貫通孔
14 封印用キャップ
14a 係止部
14b・14c 絞り部

Claims (1)

  1. 油密を要さない調節ボルト(11)に封印用ナット(13)を螺装し、該調節ボルト(11)の取付位置を、該封印用ナット(13)により固定して、封印用キャップ(14)を被せて封印する構造において、前記封印用ナット(13)には、中部外周に封印用キャップ(14)に形成した係止部(14a)を係止する鍔部(13a)と、該鍔部(13a)の上部の工具嵌合部(13b)と、更に工具嵌合部(13b)の上部外周のテーパ部(13d)と、更に工具嵌合部(13b)の下部の円筒形状のボス部(13f)を、一体化して設け、該封印用ナット(13)の軸心部には貫通孔(13e)を開口し、該貫通孔(13e)の下端から内部途中までの内周に、調節ボルト(11)と螺合するネジ部(13c)を形成し、該封印用ナット(13)の全長を、該封印用ナット(13)に締め付けられる調節ボルト(11)の一端が、該封印用ナット(13)上端から突出しない長さとしたことを特徴とする封印用ナット。
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