JP3999117B2 - ゴム組成物、架橋性ゴム組成物および架橋物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用途、工業部材用途などに好適に用いることのできる新規なゴム組成物、架橋性ゴム組成物およびそれを架橋してなる架橋物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム材料の分野においては、その使用目的に応じ、引張強さ、耐摩耗性、引裂強さ等の力学物性の向上、耐熱性、耐油性、導電性等の各種物性を付与するため、(a)ゴムにカーボンブラック(CB)、シリカに代表される無機フィラーを混合し、かかるゴム組成物に必要に応じて架橋を施して架橋ゴム組成物として使用すること、(b)ゴムにレーヨン、ナイロン繊維に代表される有機繊維、ハイスチレン樹脂、ノボラック−フェノール樹脂に代表される樹脂などを混合し、かかるゴム組成物に必要に応じて架橋を施して架橋ゴム組成物として使用すること、が一般的に行われている(例えば非特許文献1参照)。
上記した方法で得られるゴム組成物または架橋ゴム組成物はタイヤ用途、工業部材用途に広く用いられているが、ゴム組成物全体としての軽量化や、ゴムと樹脂の混合時における分散特性、界面接着性の改良による力学特性のさらなる向上や、耐摩耗性の向上などにつき、依然改良の余地がある。
かかる問題点を改良し得る手段として、ゴムと混合して用いる樹脂の1つに、その比重が小さいポリプロピレン樹脂を採用することが挙げられる。例えば、タイヤに使用するゴムを改質するため、ポリプロピレン樹脂を混合したゴム組成物が知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
【非特許文献1】
「ポリマーABCハンドブック」,株式会社エヌ・ティー・エス,2001年1月発行,p.549−554
【特許文献1】
特開平9−40809号公報
【特許文献2】
特開平10−330547号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ジエン系ゴムをポリプロピレン樹脂と混合してその改質を図ろうとする場合、ポリプロピレン樹脂とジエン系ゴムとの混和性が必ずしも十分でなく、分散粒子の形状やその粒子径が不均一となりやすい上、分散粒子径も力学物性の向上を図るために適正な粒子径とはならず、さらに、ポリプロピレン樹脂とジエン系ゴムの界面接着性が十分でないという問題点がある。
しかして、本発明の目的は、軽量化や、ゴムと樹脂の混合時における混和性、すなわち分散特性、及び界面接着性を改良し、力学物性や耐摩耗性の向上を達成しうる新規なゴム組成物、架橋性ゴム組成物および架橋物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、ジエン系ゴムとポリプロピレン樹脂を混練してゴム組成物を製造するに際して、ジエン系重合体ブロックと水添ジエン系重合体ブロックから構成され、かつ特定の一次構造を有するブロック共重合体を添加することにより、ジエン系ゴムとポリプロピレン樹脂との混和性が改良されてポリプロピレン樹脂の分散特性およびジエン系ゴムとポリプロピレン樹脂の界面の接着性が改善され、引張特性などの力学物性、摩耗特性に優れたゴム組成物、架橋性ゴム組成物および架橋物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、ア)(1)主に共役ジエン化合物を構成成分とするジエン系ゴム、(2)ポリプロピレン樹脂、(3)ジエン系重合体ブロックA及び水添ジエン系重合体ブロックBから構成されてかつ(A−B)X、 (A−B)X−A、 B−(A−B)X(式中、xはいずれも1の整数を表す。)のいずれかの一次構造を有するブロック共重合体(以下、ブロック共重合体(3)と略称することがある)、を含んでなるゴム組成物であって、ジエン系ゴム(1)100質量部に対し、ポリプロピレン樹脂(2)を0.1〜70質量部含み、かつ、ジエン系ゴム(1)およびポリプロピレン樹脂(2)の合計質量100質量部に対し、ブロック共重合体(3)を0.1〜25質量部含むことを特徴とするゴム組成物;
イ)前記ア)記載のゴム組成物と架橋剤を含有することを特徴とする架橋性ゴム組成物;およびウ)前記イ)記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなる架橋物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本明細書において、“主に共役ジエン化合物を構成成分とするジエン系ゴム”とは、主にブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物を構成成分とする、ゴム状性質を有する重合体を意味する。主に共役ジエン化合物を構成成分とするジエン系ゴム(1)(以下、単にジエン系ゴム(1)という)としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)などが挙げられる。
【0008】
また、本明細書において、“ポリプロピレン樹脂”は、プロピレン単独重合体、またはプロピレンを主として、エチレン;1−ブテン、1−オクテン、イソブチレン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンの少なくとも1種以上から選択される単量体と共重合して得られる共重合体である。これらの中でも、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を好ましく使用することができる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、また2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0009】
本発明に使用するブロック共重合体(3)は、ジエン系重合体ブロックA及び水添ジエン系重合体ブロックBから構成されて、かつ(A−B)X、 (A−B)X−A、 B−(A−B)X(式中、xはいずれも1の整数を表す。)のいずれかの一次構造を有するブロック共重合体である。
【0010】
ブロック共重合体(3)を構成する2種のブロックのうち、ジエン系重合体ブロックAはジエン系ゴム(1)との相溶性に優れるという性質を有するものであり、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物を主体として構成され、スチレンなどのビニル芳香族化合物など、他の重合可能な化合物が含まれていてもよい重合体ブロックである。ジエン系重合体ブロックAとしては、例えばポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体などを挙げることができる。
【0011】
一方、水添ジエン系重合体ブロックBはポリプロピレン樹脂(2)との相溶性に優れるという性質を有するものであり、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物を主体として構成され、スチレンなどのビニル芳香族化合物など、他の重合可能な化合物が含まれていてもよい重合体ブロックを水素添加して得られる重合体ブロックである。水添ジエン系重合体ブロックBとしては、例えば水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水添ブタジエン−イソプレンランダム共重合体などを挙げることができる。
【0012】
ブロック共重合体(3)を構成するジエン系重合体ブロックAおよび水添ジエン系重合体ブロックBの種類、各ブロックにスチレンなどの他の重合可能な化合物が含有される場合のかかる化合物の含有量、および共役ジエン単位の結合様式(1,4−結合単位、1,2−結合単位、3,4−結合単位)ならびにその存在割合などは、使用するジエン系ゴム(1)およびポリプロピレン樹脂(2)の種類に応じて、相溶性の観点から適宜好適なブロックを選択できる。
【0013】
例えばジエン系ゴム(1)として天然ゴム(NR)を使用する場合には、ブロック共重合体(3)のジエン系重合体ブロックAとしてポリイソプレン、好ましくは全イソプレン単位中の1,4−結合単位の量が50%以上99.5%以下の範囲であるポリイソプレンを、またジエン系ゴム(1)としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を使用する場合にはブロック共重合体(3)のジエン系重合体ブロックAとしてスチレン−ブタジエンランダム共重合体をそれぞれ好適に使用することできる。
【0014】
一方、ブロック共重合体(3)の水添ジエン系重合体ブロックBとしては水添ポリブタジエン、特に全ブタジエン単位中の1,2−結合単位の量が50%以上100%以下の範囲であるポリブタジエンを水添して得られる水添ポリブタジエンや、水添ポリイソプレン、特に全イソプレン単位中の1,2−結合単位の量と3,4−結合単位の量の和が50%以上100%以下の範囲である水添ポリイソプレンを好適に使用することできる。
【0015】
なお、ポリプロピレン樹脂(2)に対する相溶性を損なわない観点からは、ブロック共重合体(3)の水添ジエン系重合体ブロックB中の共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合(不飽和結合)を有する単位が、該水添ジエン系重合体ブロックBを構成する全共役ジエン単位に対して40%以下であることが好ましく、特に、20%以下であることがより好ましい。また、ジエン系ゴム(1)に対する相溶性を損なわない観点からは、ブロック共重合体(3)のジエン系重合体ブロックA中の共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合(不飽和結合)を有する単位が、該ジエン系重合体ブロックAを構成する全共役ジエン単位に対して50モル%以上であることが好ましく、特に、70モル%以上であることがより好ましい。
【0016】
本発明で使用するブロック共重合体(3)の数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、通常、1万〜100万の範囲であることが好ましく、2万〜50万の範囲がより好ましい。また、本発明で使用するブロック共重合体(3)は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布が1.0〜1.5の範囲内であることが好ましい。なお、ここでいう数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量である。
【0017】
また、本発明で使用するブロック共重合体(3)は、本発明の効果を損なわない範囲でその主鎖末端または側鎖に水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を有していてもよい。さらに、本発明で使用するブロック共重合体(3)は、1,2−ジブロモエタン、四塩化ケイ素、四塩化スズなどのカップリング剤に由来する部分構造を分子主鎖中に有していてもよい。
【0018】
ブロック共重合体(3)の合成法は特に限られるものではないが、例えば、ジエン系重合体ブロックAおよび水添ジエン系重合体ブロックBの前駆体となるジエン系重合体ブロックを逐次アニオン重合し、その後水素添加(水添)反応することにより製造することができる。また、末端に官能基を有するジエン系重合体ブロックAおよび水添ジエン系重合体ブロックBを別途合成した後に、かかる官能基同士をカップリング反応させることによって製造できる。例えば、末端に水酸基を有するジエン系重合体ブロックAを、共役ジエン化合物(および必要に応じてスチレンなどのビニル芳香族化合物)を従来既知の方法でアニオン重合させて、アニオン重合停止時にエチレンオキサイドを添加することにより合成し、一方、末端水酸基を有する水添ジエン系重合体ブロックBを、共役ジエン化合物(および必要に応じてスチレンなどのビニル芳香族化合物)を従来既知の方法でアニオン重合させて、アニオン重合停止時にエチレンオキサイドを添加し、次いで得られた重合体を水添することにより合成し、その後両者をジイソシアネートでカップリング反応することにより製造することもできる。
【0019】
ブロック共重合体(3)を得るためにアニオン重合法を採用する場合においては、乾燥アルゴン、窒素などの不活性ガス下で、重合温度として−100℃〜+100℃の範囲内、重合時間として0.01〜200時間の範囲内、重合開始剤として、金属ナトリウム、金属リチウムなどのアルカリ金属;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウムなどの有機アルカリ金属化合物などを開始剤として用いて、ジエン系重合体ブロックA、及び水添ジエン系重合体ブロックBの前駆体となるジエン系重合体ブロックをそれぞれ形成させるための共役ジエン化合物(および必要に応じてスチレンなどのビニル芳香族化合物)を逐次添加してアニオン重合させる方法で行うことができる。かかる方法では、通常のアニオン重合で使用可能な溶媒、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどから1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0020】
また、ジエン系重合体ブロックA、及び水添ジエン系重合体ブロックBの前駆体となるジエン系重合体ブロックをそれぞれ形成させるための一連のアニオン重合の際には、ブタジエン単位、イソプレン単位の結合様式(1,2−結合単位、1,4−結合単位、3,4−結合単位など)の割合を制御するために、重合前もしくは重合途中で適宜、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類などの添加剤を加えてもよい。
【0021】
次いで、上記したアニオン重合をすることによって得られたジエン系重合体を水素添加反応することによって、水添ジエン系重合体ブロックBを形成し、ブロック共重合体(3)を得る。水素添加反応は、公知の方法に準じ、Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、ケイソウ土などの担体に担持させてなる担持触媒;ラネーニッケル;遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物または有機リチウム化合物などとの組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジルコニウム、ハフニウムなどの遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛またはマグネシウムなどの有機金属化合物などを組み合わせてなるメタロセン系触媒などの水素添加触媒の存在下、ヘキサン、シクロヘキサンなどの水素添加反応に対して不活性な溶媒中において該ジエン系重合体を接触水素添加することによって行うことができる。
【0022】
なお、上記のように、ジエン系重合体ブロックA、水添ジエン系重合体ブロックBの前駆体となるジエン系重合体ブロックを逐次合成の後、水添する場合には、ジエン系重合体ブロックAが水添されるのを抑制しつつ、水添ジエン系重合体ブロックBの前駆体となるジエン系重合体ブロックの水添反応を進行させるために、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を添加して水添を行うことが可能である。
【0023】
本発明で使用するブロック共重合体(3)中における各ブロックの含有量は特に限定されないが、ポリプロピレン樹脂(2)の分散特性の改善効果およびゴム相との界面の接着性の改善効果の観点からは、ジエン系重合体ブロックAの含有量(ブロック共重合体(3)中に複数個のジエン系重合体ブロックAが存在する場合には、それらの和)は水素添加前の状態において20〜80質量%の範囲であるのが好ましく、一方水添ジエン系重合体ブロックBの含有量(ブロック共重合体(3)中に複数個の水添ジエン系重合体ブロックBが存在する場合にはそれらの和)は水素添加前の状態において80〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0024】
水素添加反応の反応圧力、反応温度および反応時間については特に限定はないが、通常、水素圧力としては0.1〜20MPaの範囲、反応温度としては20〜250℃の範囲、反応時間としては0.1〜200時間の範囲が採用される。上記の水素添加反応後、得られた反応混合物からのブロック共重合体(3)の取得方法としては、必ずしも限られるものではないが、例えば、ブロック共重合体を含む反応混合物をメタノールなどの貧溶媒と接触させることにより凝固させ、凝固物を取り出し、それを予備乾燥した後、加熱あるいは減圧下に乾燥することによって、ブロック共重合体(3)を得ることができる。
【0025】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム(1)100質量部に対し、ポリプロピレン樹脂(2)を0.1〜70質量部含み、かつ、ジエン系ゴム(1)およびポリプロピレン樹脂(2)の合計質量100質量部に対し、ブロック共重合体(3)を0.1〜25質量部含むことを特徴とする。好ましくは、ブロック共重合体(3)の含有量はジエン系ゴム(1)およびポリプロピレン樹脂(2)の合計質量100質量部に対して0.5〜20質量部の範囲であり、より好ましくは1〜15質量部の範囲である。ブロック共重合体(3)がジエン系ゴム(1)およびポリプロピレン樹脂(2)の合計質量100質量部に対して0.1質量部より少ない場合、また25質量部より多い場合には、いずれも分散特性の改良効果、界面の接着改善効果が乏しくなる。
【0026】
なお、ジエン系ゴム(1)100質量部に対するポリプロピレン樹脂(2)の配合量は0.1〜70質量部の範囲であることが必要であり、1〜65質量部の範囲であるのが好ましく、5〜45質量部の範囲であるのがより好ましい。ポリプロピレン樹脂(2)の配合量が0.1質量部より少なくなると、ポリプロピレン樹脂(2)によるジエン系ゴム(1)の補強効果に乏しくなり、また、ポリプロピレン樹脂(2)の配合量が70質量部より多くなると、得られるゴム組成物は本発明の目的を達成することが困難となる。
【0027】
本発明のゴム組成物は、混練方法として一般的に用いられる方法を適用することにより製造でき、ジエン系ゴム(1)、ポリプロピレン樹脂(2)、ブロック共重合体(3)の所定量を例えばブラベンダー、バンバリーミキサー、ロール混練機などを用いて混練することで得られる。
【0028】
また、本発明のゴム組成物には、本配合の特性を損なわない範囲で、通常ゴム組成物を補強する目的で添加する補強剤、例えばカーボンブラックやシリカなどをさらに添加することができる。
【0029】
次に、本発明の架橋性ゴム組成物について説明する。かかる架橋性ゴム組成物に含有させることのできる架橋剤は、通常ゴムの架橋に用いられているものを特に制限なく使用することができ、例えば硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィドなどの硫黄架橋剤;シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどの有機過酸化物架橋剤などを挙げることができる。架橋剤の使用量は、ジエン系ゴム(1)、ポリプロピレン樹脂(2)およびブロック共重合体(3)の合計量100質量部に対して通常0.05〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量部の範囲であることがより好ましい。
【0030】
本発明においては、必要に応じて、架橋促進剤や架橋助剤を配合してもよい。かかる架橋促進剤や架橋助剤は特に限定されず、用いる架橋剤に応じて適宜選択して使用することができる。架橋促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール系促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系促進剤などが挙げられる。これらの架橋促進剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
また、架橋助剤としては酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などの金属炭酸塩;ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸の金属塩;エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、N,N−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。これらの架橋助剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
なお、本発明の架橋性ゴム組成物には、その性能を損なわない範囲で、老化防止剤、充填剤、可塑剤、軟化剤などの各種配合剤をさらに配合することもできる。
【0033】
本発明の架橋性ゴム組成物は、混練方法として一般的に用いられる方法を適用することにより製造でき、ジエン系ゴム(1)、ポリプロピレン樹脂(2)、ブロック共重合体(3)の所定量に対して架橋剤、また必要に応じて架橋促進剤、架橋助剤などを添加することで得られる。また、かかる架橋性ゴム組成物を例えばプレス成形機による架橋、または型架橋することによって架橋物を得ることができる。
【0034】
本発明のゴム組成物は、混和性、すなわちポリプロピレン樹脂の分散特性に優れ、かつ、ジエン系ゴムとポリプロピレン樹脂の界面の接着性が改善される。また、本発明のゴム組成物に架橋剤を加えて架橋性ゴム組成物とし、さらにかかる組成物を架橋させることで、引張特性などの力学的性能や耐摩耗性が向上した架橋物を得ることができるので、タイヤ用途、工業用ベルト、工業用ゴムホースなどの工業用部材用途などに好適に使用することができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0036】
参考例1
窒素置換を行った容量5リットルのオートクレーブ中に、脱気、脱水処理したシクロヘキサン4800gおよびs−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液8mlを仕込んだ後、50℃まで昇温しイソプレン410gを添加し、3時間重合を行った。反応液の一部をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で生成物を分析したところ、ポリスチレン(PSt)換算のMn=93900、Mw/Mn=1.15のポリイソプレンが生成したことが分かった。
引き続き、上記の反応液に脱気、脱水処理したN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン3gを添加し、次いでブタジエン600gを加えて50℃で3時間重合を行った。重合溶液にメタノール10gを添加し重合停止反応を行った後に、反応液の一部をサンプリングし、GPCで分析を行ったところ、PSt換算のMn=178000、Mw/Mn=1.16のポリイソプレン−ポリブタジエンブロック共重合体が得られたことが分かった。
【0037】
上記で得られた反応液にオクチル酸ニッケルおよびトリイソブチルアルミニウムからなる水素添加触媒を加えて70℃に昇温した後、1MPaになるまで水素を系内に供給し、その条件下でヨウ素価170となるまで水添反応を行った。反応後、反応液をメタノール23700g中に注いで重合体を凝固させた。凝固した生成物を濾過により回収し、さらに減圧下、80℃で12時間乾燥することによって生成物1050gを得た。
得られた生成物をGPCおよび1H−NMRで分析したところ、ポリブタジエンブロックに含まれる炭素−炭素二重結合(不飽和結合)の96%が水素添加され飽和結合に変換され、ポリイソプレンブロックに含まれる炭素−炭素二重結合(不飽和結合)の80%が水素添加されずに残存していることが確認できた。また、GPCで分析を行ったところ、PSt換算のMn=177300、Mw/Mn=1.15のポリイソプレン−水添ポリブタジエンのジブロック重合体(以下、このジブロック共重合体をIR−EBと略記する)であることが確認できた。
【0038】
実施例1
天然ゴム(NR;RSS#1、リブドスモークドシート)、ポリプロピレン樹脂(PP;グランドポリマー社製、商品名:グランドポリプロJ104W)および参考例1の方法で得られたIR−EBを、表1の組成でブラベンダーを用いて180℃、100rpmで7分間混練することによりゴム組成物を得た。得られたゴム組成物の一部を凍結ミクロトームで切削し、四酸化オスミウムで染色した後(天然ゴム部分のみが染色される)、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行ってPPの分散状態を観察し、写真撮影を行った。その写真の分析から、分散粒子の最小粒子径、最大粒子径を求め、分散粒子径の分布状態を調べるとともに、平均分散粒子径を求めた。結果を表1に示す。
【0039】
比較例1
IR−EBを加えず、NRおよびPPのみからなるゴム組成物を実施例1と同様にして調製し、実施例1と同様にしてSEM観察を行った。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
SEM観察の結果、ポリプロピレン樹脂の平均分散粒子径が、比較例1では分散粒子径分布が3〜8μmで平均分散粒子径5μmであるのに対し、実施例1では分散粒子径分布が1〜3μmで平均分散粒子径2μmであり、IR−EBを添加することによって、分散粒子径の大きさが均一化するとともに、平均分散粒子径を小粒径化することができた。
【0042】
実施例2
NR(RSS#1、リブドスモークドシート)、PP(グランドポリマー社製、商品名:グランドポリプロJ104W)、参考例1の方法で得られたIR−EB、カーボンブラック、亜鉛華およびステアリン酸を、表2に示す配合量比でバンバリーミキサーにて180℃、10分混練した。次いで、得られた混練物に、硫黄および架橋促進剤[商品名「ノクセラー MSA−G」(N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、大内新興化学工業(株)製]、老化防止剤[商品名「ノクラック 810NA」(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)、大内新興化学工業(株)製]を表2に示す配合量比でオープンロールで混合し、145℃、20分プレスすることで架橋し、厚さ2mmの架橋ゴムシートを得た。
【0043】
得られた架橋ゴムシートの硬度をJIS K 6250に準拠してタイプAのデュロメータで測定した。一方、得られた加硫ゴムシートから打ち抜きによりダンベル状5号形試験片を作製し、JIS K 6251に準拠して引張試験を行って、引張強度および破断伸びを測定した。また、得られた加硫ゴムシートから、JIS K 6252に準拠して打ち抜きにより切込み無しアングル形試験片を作製し、JIS K 6252に準拠して引裂試験を行って、引裂き強度を測定した。さらに、JIS K 6264に準拠して、未架橋ゴムを145℃、40分の条件で型架橋して試験片を作成し、得られた該試験片を用いて荷重27.0N下、アクロン摩耗試験を行い、摩耗輪1000回あたりの摩耗容積を求めた。結果を表2に示す。
【0044】
比較例2
IR−EBを添加しなかった以外は実施例2と同様の操作を行い、架橋ゴムを得た。得られた架橋ゴムの硬度、引張試験、引裂き強度およびアクロン摩耗試験の結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2より、実施例2で得られた架橋ゴムと比較例2で得られた架橋ゴムの物性を比較すると、耐摩耗性において、同硬度で摩耗量が14%減少しており、比較例2で得られた架橋ゴムに比べて優れることが分かる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、ジエン系ゴムとポリプロピレン樹脂の混和性、すなわち分散特性及び界面の接着性が改善され、力学物性および耐摩耗性に優れるゴム組成物、架橋性ゴム組成物および架橋物が得られる。
Claims (3)
- (1)主に共役ジエン化合物を構成成分とするジエン系ゴム、(2)ポリプロピレン樹脂、(3)ジエン系重合体ブロックA及び水添ジエン系重合体ブロックBから構成されてかつ(A−B)X、 (A−B)X−A、 B−(A−B)X(式中、xはいずれも1の整数を表す。)のいずれかの一次構造を有するブロック共重合体、を含んでなるゴム組成物であって、ジエン系ゴム(1)100質量部に対し、ポリプロピレン樹脂(2)を0.1〜70質量部含み、かつ、ジエン系ゴム(1)およびポリプロピレン樹脂(2)の合計質量100質量部に対し、ブロック共重合体(3)を0.1〜25質量部含むことを特徴とするゴム組成物。
- 請求項1記載のゴム組成物と架橋剤を含有することを特徴とする架橋性ゴム組成物。
- 請求項2記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなる架橋物。
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