JP3998525B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロックパターンを有する空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、ブロックを区画する溝への雪詰まりを防止し、雪上性能及び氷上性能を改善するようにした空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
冬用タイヤにおいて、特に踏み固められていない雪道を走行するとき、トレッド部の溝に雪が詰まってしまう所謂「雪詰まり」の現象が発生することは周知の事実である。この雪詰まりが発生すると、タイヤは雪が詰まった部分が次に路面と接した際に新たな雪を掴むことができないため、雪上での制駆動性能を十分に発揮できない可能性がある。また、この場合、雪上での制駆動性能を損なうだけではなく、雪を噛み込んだまま凍結路に出たときに、エッジ効果による氷上性能を十分に発揮できない恐れがある。
【0003】
溝に雪が詰まる主な原因は、雪氷とブロック壁面との間に発生する水膜による接着力が、雪の質量や遠心力に基づく剥離力を上回ることによるものと考えられる。そのため、雪詰まりを防ぎ、雪抜けを良くする方法として、ブロック壁面の傾斜角度を大きく設定したり、溝幅を広く設定して、溝に詰まる雪の質量を増やすことが有効である。しかしながら、ブロック壁面の傾斜角度を大きくし過ぎたり、溝幅を広くし過ぎると、摩耗中期の雪上性能が低下したり、本来必要な接地面積を確保することができないという欠点がある。特に、近年のスタッレスタイヤでは、ブロックを区画する溝が複雑に交差するため、雪抜けを良くするためにブロック壁面の傾斜角度を大きくすることは極めて困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ブロックを区画する溝への雪詰まりを防止し、雪上性能及び氷上性能を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するための本発明の空気入りタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、これら主溝及び横溝によって複数のブロックを区画した空気入りタイヤにおいて、前記ブロックの主溝及び横溝に面する壁面にタイヤ径方向に延びると共に矩形の断面形状を有する複数本の細溝を設け、かつ該細溝をブロック壁面の溝底湾曲部よりも踏面側の領域だけに配置し、該細溝の深さDを0.3mm≦D≦2.0mm、幅Wを0.3mm≦W≦2.0mmの範囲にしたことを特徴とするものである。
特に、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、これら主溝及び横溝によって複数のブロックを区画し、中央側の主溝と外側の主溝との間に一端が中央側の主溝に連通して他端が行き止まりとなる横溝と一端が外側の主溝に連通して他端が行き止まりとなる横溝とをタイヤ周方向に交互に配置した空気入りタイヤにおいて、上記細溝を設けると良い。
【0006】
ブロックパターンを有する空気入りタイヤにおいて、ブロックを区画する溝への雪詰まりを少なくするには、雪氷とブロック壁面との接着層となる水膜を可能な限り除去することが必要である。本発明では、雪氷とブロック壁面との間に発生する水膜を効率良く除去すべく、ブロックの壁面にタイヤ径方向に延びる細溝を設けるのである。これにより、雪氷とブロック壁面との接着層となる水膜が減少するため、雪氷の自重と遠心力によって雪抜けが発生し易くなり、雪詰まりが減少する。その結果、本発明のタイヤは、回転毎にブロック間の溝に新たな雪を掴むことができるので、雪上での制駆動性能を十分に発揮することができる。また、雪を噛み込んだまま凍結路に出ることが格段に少なくなるため、エッジ効果による氷上性能を十分に発揮することができる。
【0007】
本発明では、ブロックの壁面に設けた細溝の水膜除去作用によって雪詰まりを防止するので、従来の雪詰まり防止策のように、ブロック壁面の傾斜角度を大きく設定したり、溝幅を広く設定する必要はない。そのため、摩耗の進行に伴ってトレッドパターンが変化してタイヤ性能が低下したり、或いは、本来必要な接地面積を確保することができないという不都合を生じることもない。
【0008】
上記細溝はブロック壁面の溝底湾曲部よりも踏面側の領域だけに配置することが好ましい。これにより、細溝に起因するクラックの発生をより確実に回避することができる。
【0009】
本発明は、各種空気入りタイヤに適用することが可能であるが、特にスタッドレスタイヤに代表される冬用タイヤに適用することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッドパターンを示し、図2はそのブロックを拡大して示すものである。図1に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝2と、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝3とが設けられている。これら主溝2及び横溝3によって複数のブロック4が区画されている。ブロック4にはサイプ5が適宜形成されている。
【0012】
図2に示すように、ブロック4の壁面には、タイヤ径方向に延びる複数本の細溝6が設けられている。細溝6はタイヤ径方向に対して実質的に0°であることが望ましいが、タイヤ径方向に対して±10°の範囲にあれば良い。これら細溝6は、その深さDが0.3mm≦D≦2.0mmの範囲にあり、その幅Wが0.3mm≦W≦2.0mm、より好ましくは0.5mm≦W≦2.0mmの範囲にある。
【0013】
上述した空気入りタイヤでは、雪上走行時に主溝2や横溝3の中に雪氷が入り込むと、ブロック4の壁面と雪氷との間に水膜を生じるが、その水膜が細溝6を介して除去される。そのため、ブロック4の壁面と雪氷との結合力が低下し、雪氷の自重と遠心力により雪抜けが生じ易くなり、雪詰まりが減少する。従って、雪上での制駆動性能を十分に発揮することが可能になる。また、主溝2や横溝3の中に雪を噛み込んだまま凍結路に出ることが格段に少なくなるため、エッジ効果による氷上性能を十分に発揮することが可能になる。
【0014】
ここで、細溝6の深さDが0.3mm未満であると水膜を十分に除去することができず、逆に2.0mmを超えるとブロック剛性の変化により雪上性能や氷上性能が低下する。また、細溝6の幅Wが0.3mm未満であると水膜を十分に除去することができず、逆に2.0mmを超えると細溝6の中に雪が入り込み易くなり、雪詰まりの原因となる。
【0015】
細溝6の配置密度は1〜20本/cmにすると良い。この配置密度が1本/cm未満であると水膜除去効果が不十分になり、また20本/cmを超えることは上記幅Wの規定により困難である。細溝6の断面形状は図示のような矩形であることが好ましく、この形状に基づいて細溝6への雪の侵入を効果的に抑制しながら水膜を除去することが可能になる。
【0016】
細溝6はブロック4の壁面の溝底湾曲部よりも踏面側の領域だけに配置することが好ましい。つまり、細溝6をブロック4を区画する溝の溝底41や該溝底41とブロック4の壁面とを繋ぐ溝底湾曲部42にも配置した場合、細溝6に起因するクラックの発生が懸念される。そのため、細溝6の配置領域を上記のように規定することで、細溝6に起因するクラックの発生をより確実に回避することができる。
【0017】
上述した空気入りタイヤでは、ブロック4の壁面の傾斜角度やブロック4を区画する溝2,3の溝幅を特に広く設定する必要はないので、摩耗中期の雪上性能が低下することはなく、本来必要な接地面積の確保が困難になることもない。
【0018】
【実施例】
タイヤサイズ155R13 8PRのブロックパターンを有する空気入りタイヤにおいて、ブロック壁面への細溝加工を表1のように異ならせた従来例、実施例1〜3及び比較例1〜3をそれぞれ製作した。
【0019】
これら試験タイヤについて、下記の試験方法により、氷上にて加速後の氷上制動性能、圧雪路にて加速後の氷上制動性能を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0020】
氷上にて加速後の氷上制動性能:
試験タイヤを空気圧230kPaとしてアンチロックブレーキシステム(ABS)を備えた4輪駆動のバンに取り付け、氷上にて40km/hまで加速した後、氷上でABS制動を実施し、その制動距離を測定した。この測定値を基準(100)とした。
【0021】
圧雪路にて加速後の氷上制動性能:
試験タイヤを空気圧230kPaとしてABSを備えた4輪駆動のバンに取り付け、圧雪路にて40km/hまで加速した後、氷上でABS制動を実施し、その制動距離を測定した。評価結果は、各タイヤについて、氷上にて加速後の氷上での制動距離を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、圧雪路にて加速後の氷上制動性能が優れており、即ち雪詰まりの影響による氷上制動性能の低下が少ないことを意味する。
【0022】
【表1】
Figure 0003998525
【0023】
表1から判るように、実施例1〜3はいずれも従来例に比べて雪詰まりの影響による氷上制動性能の低下が少ないものであった。一方、比較例1〜3はいずれも細溝の寸法が不適当であるため、圧雪路にて加速後の氷上制動性能が氷上にて加速後の氷上制動性能に比べて大きく低下していた。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、これら主溝及び横溝によって複数のブロックを区画した空気入りタイヤにおいて、ブロックの主溝及び横溝に面する壁面にタイヤ径方向に延びると共に矩形の断面形状を有する複数本の細溝を設け、かつ該細溝をブロック壁面の溝底湾曲部よりも踏面側の領域だけに配置し、該細溝の深さDを0.3mm≦D≦2.0mm、幅Wを0.3mm≦W≦2.0mmの範囲にしたから、ブロックを区画する溝への雪詰まりを防止し、雪上性能及び氷上性能を改善することができる。しかも、ブロックの壁面に設けた細溝の水膜除去作用によって雪詰まりを防止するので、従来の雪詰まり防止策によって生じていた不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッドパターンを示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのブロックを拡大して示す斜視図である。
【図3】図2のX部の拡大図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 主溝
3 横溝
4 ブロック
5 サイプ
6 細溝
D 細溝の深さ
W 細溝の幅

Claims (2)

  1. トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、これら主溝及び横溝によって複数のブロックを区画した空気入りタイヤにおいて、前記ブロックの主溝及び横溝に面する壁面にタイヤ径方向に延びると共に矩形の断面形状を有する複数本の細溝を設け、かつ該細溝をブロック壁面の溝底湾曲部よりも踏面側の領域だけに配置し、該細溝の深さDを0.3mm≦D≦2.0mm、幅Wを0.3mm≦W≦2.0mmの範囲にした空気入りタイヤ。
  2. トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、これら主溝及び横溝によって複数のブロックを区画し、中央側の主溝と外側の主溝との間に一端が中央側の主溝に連通して他端が行き止まりとなる横溝と一端が外側の主溝に連通して他端が行き止まりとなる横溝とをタイヤ周方向に交互に配置した請求項1に記載の空気入りタイヤ。
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