JP3998511B2 - 合成皮革 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソフトな風合いおよび繰り返し伸縮時の耐剥離性に優れた合成皮革を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成皮革と呼ばれるものは、牛、馬、羊等の天然皮革に似せたものとして利用されているが、それは織布あるいは編布等の繊維基布の上に溶剤を用いて溶解した合成樹脂を乾式法でコーティングあるいはラミネートして作られた乾式合成皮革や、織布や不織布等の繊維基布の上に溶剤を用いて溶解した合成樹脂を湿式法でコーティングして作られた湿式合成皮革が知られている。
【0003】
天然皮革は極細コラーゲン繊維が3次元的に交絡した構造を有し、密度は内側にいく程粗く、表面に近い程密になっており、表面の緻密な繊維層を染料で染色したものと、顔料で着色加工を行ったものとがある。
これに対し、例えば湿式合成皮革は、織布層か不織布層の上に、弾力性と透湿性を得るために合成樹脂を湿式法でコーティングしスポンジ化した層と、さらにその上に形成された着色表面層の3層から成り立っており、構造的な面から両者には根本的な相違がある。
【0004】
このように合成皮革と天然皮革とはその構造が異なることにより、各々の特性についても多くの相違点がある。その違いは強度、感触、風合、放湿性、吸湿性、着色性、耐候性、伸縮性、耐剥離性等々であり、特に耐剥離性は合成皮革の構造からくる特有の問題である。強度、感触、風合、耐剥離性については、合成樹脂の特性改良、樹脂被膜の厚みの調整あるいは樹脂のベース層への浸透度の調整等の検討の結果、かなり改善はされてきているが、未だ十分なレベルとはいえないのが現状である。
本出願人は、かかる現状に鑑み、先に特開平11−100779号公報において、繊維基布を構成する繊維として、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いることにより、大きく改善されることを提案したが、市場では、さらに高いレベルが要求されているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる要求に応えた合成皮革を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上のような問題点に鑑み、本発明では従来の検討手段とは異なり、特に繊維基布すなわち織布、編布あるいは不織布を構成する繊維につき鋭意検討の結果、本発明を完成したものである。
即ち本発明は、目付が50〜200g/m2 の繊維基布の少なくとも一面に、合成樹脂被膜層を形成してなる合成皮革であって、繊維基布を構成する繊維が、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であって、下記(a)〜(c)を満足することを特徴とする合成皮革である。
(a)初期引張抵抗度が10〜30cN/dtex
(b)顕在捲縮の伸縮伸長率が10〜100%、伸縮弾性率が80〜100%
(c)100℃での熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtex
【0007】
本発明における潜在捲縮発現性ポリエステル繊維とは、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的にはサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)されているものであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分の複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は特に限定されない。又、総繊度は20〜300dtex、単糸繊度は0.5〜20dtexが好ましく用いられるがこれに限定されるものではない。
【0008】
本発明においては、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexである必要があり、特に20〜30cN/dtex、さらに20〜27cN/dtexが好ましい。10cN/dtex未満のものは製造が困難であり、30cN/dtexを超えると本発明の目的が達成されない。
又、顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%である必要があり、特に10〜80%、より好ましくは10〜60%である。10%未満では本発明の目的が達成されない。100%超は製造困難である。更に、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%である必要があり、特に85〜100%、より好ましくは85〜97%である。80%未満では本発明の目的が達成されない。
【0009】
さらに、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexである必要があり、さらに0.1〜0.4cN/dtex、特に0.1〜0.3cN/dtexであることがより好ましい。100℃における熱収縮応力は、布帛の精練、染色工程において捲縮を発現させるための重要な要件である。すなわち、布帛の拘束力に打ち勝って捲縮が発現するためには、100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex以上である必要があり、0.1cN/dtex未満では本発明の目的が達成されない。0.5cN/dtex超は製造が困難である。
【0010】
熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%、特に180〜250%である。尚、250%超は製造困難である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維が挙げられる。
【0011】
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.4(dl/g)であることが好ましく、特に0.1〜0.35(dl/g)、さらに0.15〜0.35(dl/g)が好ましい。例えば高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。尚、低粘度側の固有粘度は0.8(dl/g)以上が好ましく、特に0.85〜1.0(dl/g)、さらに0.9〜1.0(dl/g)がよい。
また、この複合繊維自体の固有粘度、即ち平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)がよく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましく、特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、さらに特に0.9〜1.1(dl/g)が好ましい。
【0012】
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーの粘度ではなく、紡糸した糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0013】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより製造される。この製造過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に製造した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で50%以上が好ましい。
【0014】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(p−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0015】
本発明において潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の紡糸については、例えば、特開2000−239927号公報に開示されており、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法が好ましいが、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)を採用しても良い。
又、繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状においても、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸、単糸デニールが0.1〜5デニール程度のマルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等がある。
【0016】
尚、本発明の目的を損なわない範囲内で通常50重量%以下の範囲内で天然繊維、合成繊維等他の繊維、例えば、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン、アクリル等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を混紡(コアヤーン、サイロスパンやサイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、例えば沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸又は、例えば沸水収縮率15〜30%程度高収縮糸との混繊や交撚、仮撚(伸度差仮撚、POYの延伸仮撚における複合等)、2フィード空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
【0017】
本発明は、かかる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維で繊維基布を構成することに特徴がある。
本発明の繊維基布は織布、編布、不織布の一種以上で構成されたものであり、目付が50〜200g/m2 好ましくは50〜150g/m2 である必要があり、これ未満では、強度が不足し、これを超えると風合いが硬くなる。
繊維基布における潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の含有率は、質量%で、100%が最適であるが、好ましくは10%以上、特に20%以上、さらに30%以上がよく、編布では好ましくは10%以上、特に15%以上、さらに20%以上がよく、織布、不織布では好ましくは20%以上、特に30%以上、さらに40%以上がよい。
【0018】
潜在捲縮発現性ポリエステル繊維に混用する繊維としては、天然繊維、合成繊維等他の繊維、例えば、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン(ナイロン6や66等の脂肪族ナイロン)、アクリル、ポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン等)、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ビニル重合体等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)が挙げられ、これらを交撚、混繊等の糸複合や交編織、ニードルパンチ等の手段により混用すればよい。
【0019】
特に、分散染料汚染型繊維、好ましくはキュプラ等のセルロース繊維やナイロン繊維等と潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を混用し、分散染料汚染型繊維のみを片染めし、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を染色しない例えばキュプラとの混用では、反応染料や直接染料で片染め、ナイロン繊維との混用では、酸性染料で片染めしたものは、分散染料の合成樹脂被膜層への移行昇華の問題が回避されるため好ましいものである。
【0020】
本発明においては、かかる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用いて繊維基布を構成するのであるが、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、下記式で示される撚係数Kが3000〜32000、好ましくは7000〜25000、さらに好ましくは7000〜23000で加撚して用いた方が繰り返し伸縮時の剥離耐久性の付与に効果的である。
撚係数K=T×D1/2
T:撚数(T/m) D:繊維の繊度(dtex)
【0021】
編織物を製造するに際し、例えば織物では経糸及び緯糸共に用いると、経緯共に優れた繰り返し伸縮時の剥離耐久性が得られるので好ましいが、必要に応じて経糸又は緯糸の一方に用いてもよく、その際は、用いた方向のみに優れた繰り返し伸縮時の剥離耐久性が得られる。
又、織物組織としては、タフタ、ツイル、サテン並びにそれらの変化組織が利用できる。
【0022】
編物組織としては、編機はトリコット編機、ラッセル編機、丸編機が使用でき、使用する糸の太さや商品の狙いにより適宜使用dtex、編機種、ゲージを選択すればよく、編組織としてはトリコット編機では2枚筬組織のハーフ組織、サテン組織、またこれらの組織の組み合わせによる変化組織、ラッセル編機ではパワーネット組織、サテンネット組織、丸編機では天竺、スムース、フライス組織等が挙げられるがこれに限定されない。
【0023】
特に、経編み地において、フロントに分散染料汚染型繊維を用い、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維をバックに用いる(開き目よりも閉じ目が好ましい。又、フロントとバックの振りの方向は同方向でも異方向でもよい。)と、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維が編み地の中間層に位置するため、分散染料汚染型繊維のみの片染めで十分となり、分散染料の移行昇華の問題が回避される。
密度としては、ウェール数40〜80、コース数60〜90が好ましく、ゲージとしては、22〜36ゲージが好ましい。
又、必要に応じて、繊維基布は、合成樹脂被膜層の投錨効果を得るために、合成樹脂被膜層を形成する面を起毛してもよく、起毛は、染色前後のいずれでもよい。
【0024】
本発明の合成皮革は湿式法あるいは乾式法のいずれの製造法で製造されても良い。ここでいう湿式法とは、織編布又は不織布上に溶剤に所定の濃度に溶解させた合成樹脂をコーティングし、貧溶媒を含む凝固浴中で固化させるとともに該樹脂層中にスポンジ状に多くの微細な連通孔を生ぜしめ、その後水洗及び乾燥工程を経て製品とする方法であり、また乾式法とは織編布あるいは不織布の上に溶剤に所定の濃度に溶解した合成樹脂を公知のコーティング方法、例えばナイフオンロールコーティング、ロールオンロールコーティング等により塗布し、乾燥機にて溶剤を揮散させて固化させるダイレクトコーティング法、または離型紙上に樹脂を同じく公知のコーティング法によって塗布、乾燥し表皮層を形成させる。ここでいう離型紙としては、シリコーンタイプ、ポリプロピレンタイプ等があり、表面処理形状もフラットタイプ、エナメルタイプ、マットタイプ、エンボスタイプ等があるが、限定されるものではない。
【0025】
次いでこの表皮層上に二液型ポリウレタン樹脂系接着剤を前記の公知のコーティング方法によって塗布し、織編布あるいは不織布と熱圧着で貼り合わせ乾燥して製品とするラミネート法がある。
本発明に用いられる合成樹脂としては、織編布又は不織布と密着性を有し、柔軟な被膜を形成するものであれば良く、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル/塩化ビニル共重合樹脂、アクリル/酢酸ビニル共重合樹脂等が用いられる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
なお、物性評価は以下の方法で行った。
(1)剛軟度:
JIS−Lー1096(45°カンチレバー法)に準じて測定した。数値が大きい方が風合いが硬い。
(2)繰り返し伸縮時の剥離耐久性:
200mm×50mmサイズの合成皮革試料の両端を把持長20mmで繰り返し伸縮試験機(デ・マッチャー)に把持し、60回/分の割合で15%の伸縮を繰り返し、繊維基布と合成樹脂層に剥離が発生するまでの回数を評価した。
【0027】
(3)固有粘度:
固有粘度[η](dl/g)は、次式に基づいて求められる値である。
定義式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cは、g/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
【0028】
(4)初期引張抵抗度:
JIS−L−1013;化学繊維フィラメント糸試験方法、初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.0882cN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出し、10回の平均値を求めた。
(5)伸縮伸長率、伸縮弾性率:
JIS−L−1090;合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法、伸縮性試験方法、A法に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)、伸縮弾性率(%)を算出し、10回の平均値を求めた。顕在捲縮の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、巻取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行った。熱水処理後の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥乾燥した試料を用いた。
【0029】
(6)熱収縮応力:
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名:KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作り測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定し、得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取る。
【0030】
<潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の製造>
固有粘度の異なるサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを以下の製造例1〜4により製造した。得られた繊維の物性値を、表1に示す。
{製造例1}
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で紡糸して未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し、56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.90、低粘度側が[η]=0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0031】
{製造例2}
上記製造例1と同様の方法で84dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.88、低粘度側が[η]=0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0032】
{製造例3}
上記製造例1とは固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、上記製造例1と同様の方法で56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.86、低粘度側が[η]=0.69であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0033】
{製造例4}
固有粘度の異なる二種類のポリエチレンテレフタレートを用いて56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.66、低粘度側が[η]=0.50であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【実施例1〜3、比較例1】
各製造例で得られた複合フィラメントを撚糸(800T/m)したものを経糸及び緯糸に用いて、経密度136本/2.54cm、緯密度104本/2.54cm(実施例2のみ経密度111本/2.54cm、緯密度85本/2.54cm)のタフタに製織し、これを繊維基布(目付80g/m2 )とし、以後(1)〜(8)の工程で合成皮革を製造した。
尚、製造例1の複合フィラメントが実施例1、製造例2の複合フィラメントが実施例2、製造例3の複合フィラメントが実施例3、製造例4の複合フィラメントが比較例1である。
【0036】
(1)繊維基布の撥水処理
繊維基布を下記水溶液に浸漬後ゴムロールで絞り率40%に絞り、150℃で2分間熱処理した。
・アサヒガードLSー317 1.8部
(明成化学(株)製フッソ系撥水剤)
・水 99.2部
(2)合成樹脂の塗布
下記の組成物を(1)で撥水処理を施した繊維基布の片面にナイフコーターでコーティングした。合成樹脂被膜の厚みは500μmmとした。
・クリスボン 166 40部
(大日本インキ(株)製1液型ポリウレタン)
・ジメチルホルムアミド 60部
【0037】
(3)湿式凝固
30℃の水中に5分間浸漬した後、70℃で15分間脱溶媒処理を行った。
(4)熱処理
ピンテンターを使用し、150℃で2分間熱処理した。
(5)表皮層の製造
所望のパターンを有する離型紙にバーコーターを用いて、乾燥後の厚みが20μmとなるように適度に着色したポリウレタン樹脂を塗布して表皮層を形成した。
・1液型ポリウレタン樹脂 100部
・メチルエチルケトン 15部
・顔料 15部
【0038】
(6)接着層
上記表皮層にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが10μmとなるように適度に着色したポリウレタン樹脂を塗布して接着層を形成し、次いで100℃で1分間乾燥した。
・2液型ポリウレタン樹脂 100部
・ジメチルホルムアミド 15部
・3官能芳香族イソシアネート 15部
(7)ベース層と表皮層の積層
上記表皮層、接着層とベース層を重ね合わせ、100℃の熱ロール(392kPa)で圧着して貼りあわせた。
【0039】
(8)離型紙の剥離
上記表皮層と繊維基布を貼合したものを40℃で24時間熟成した後、離型紙を剥離させ、本発明の合成皮革を得た。
得られた合成皮革の物性を評価した結果は次の通りであった。
即ち、実施例1〜3の全てが、38〜41mmの剛軟度と繰り返し伸縮時の剥離耐久性が400回以上であったが、比較例1は45mmの剛軟度、伸縮時の剥離耐久性が280回と、実施例1〜3対比、柔軟度並びに繰り返し伸縮時の剥離耐久性共に劣っていた。
【0040】
【比較例2】
実施例1において、複合フィラメントの代わりに、固有粘度が[η]=0.76の一成分のポリトリメチレンテレフタレートフィラメントを用いた以外は、実施例1同様にして、合成皮革を作製した。
得られた合成皮革の性能は、41mmの剛軟度、繰り返し伸縮時の剥離耐久性が210回と、実施例1対比、繰り返し伸縮時の剥離耐久性が劣っていた。
【0041】
【実施例4】
28GGのトリコット編機を利用して、56dtex/30fのキュプラマルチフィラメント糸をフロント(組織;1−0/2−3)に、バック(組織;1−2/1−0;閉じ目)に製造例1で得られた複合フィラメントを用いて、機上コース83コースでハーフトリコットを編み立てた。
次いで、常法により精練し、キュプラのみを反応染料で片染めし、起毛後、仕上げセットした。
これを基布として用い、引き続き、実施例1と同様にして、合成皮革を作製した。
得られた合成皮革の性能は、39mmの剛軟度、繰り返し伸縮時の剥離耐久性が400回以上と、実施例1同様、剛軟度並びに繰り返し伸縮時の剥離耐久性共に優れたものであった。
【0042】
【発明の効果】
本発明による合成皮革は、非常にソフトでかつ繰り返し伸縮作用を受けるような使用条件で使用された場合でも、優れた剥離耐久性を有するものであり、ゴルフ、スキー用の手袋、ウインドブレーカー等のスポーツ衣料用途に好適なものである。
Claims (1)
- 目付が50〜200g/m2 の繊維基布の少なくとも一面に、合成樹脂被膜層を形成してなる合成皮革であって、繊維基布を構成する繊維が潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であって、下記(a)〜(c)を満足することを特徴とする合成皮革。
(a)初期引張抵抗度が10〜30cN/dtex
(b)顕在捲縮の伸縮伸長率が10〜100%、伸縮弾性率が80〜100%
(c)100℃での熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtex
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