JP3963774B2 - 織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、経糸がセルロース系短繊維で構成された紡績糸使いの織物に関するものであり、より詳細には、特にいわゆる膝抜けや肘抜けが起こりにくい織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジーンズやコーデュロイに代表される、綿等のセルロース系短繊維紡績糸を経糸及び緯糸に用いた織物は、その独特の外観や膨らみ感等の風合いからパンツ、チノパン、スカート等のボトムやシャツとして多用されているが、いわゆる膝抜けや肘抜けと称される着用時の欠点が発生するため、芯糸にポリウレタン系等の弾性繊維を用いた鞘芯構造紡績糸いわゆるコアスパンヤーン(CSY)を緯糸に用いたストレッチ性の織物が提供されているが、着用を繰り返すに伴いその性能が大きく低下するという欠点を有する。又、ジーンズでは、その独特な風合い表現のため一般に製品洗いといわれる仕上げ工程を受けるが、その際にコア切れといわれる欠点が発生して着用初期においてもその性能が低下することもある。
本出願人は、先に特開2001−303378号公報において、ポリトリメチレンテレフタレート繊維の仮撚糸を芯糸に用いた鞘芯構造の複合糸を用いた織物が、ストレッチ性に優れることを提案したが、ジーンズやコーデュロイに代表されるセルロース系短繊維紡績糸を経糸に用いた織物に適用すること、さらにはこの織物の欠点についても何ら言及していない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、膝抜けや肘抜けが起こりにくい織物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、緯糸に特定の仮撚加工糸を用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は、経糸がセルロース系短繊維で構成された紡績糸であり、緯糸が仮撚加工糸である織物であって、この仮撚加工糸が、固有粘度差が0.05〜0.4dl/gの2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維からなる仮撚加工糸であり、該潜在捲縮発現性ポリエステル繊維が下記(a)〜(c)を満足することを特徴とする織物である。
(a)初期引張抵抗度が10〜30cN/dtex
(b)顕在捲縮の伸縮伸長率が10〜100%、伸縮弾性率が80〜100%
(c)100℃での熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtex
本発明における潜在捲縮発現性ポリエステル繊維とは、固有粘度の異なる二種のポリトリメチレンテレフタレートで構成(具体的にはサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に接合されたものが多い)されているものであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリトリメチレンテレフタレートの複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は特に限定されない。又、総繊度は20〜300dtex、単糸繊度は0.5〜20dtexが好ましく用いられるがこれに限定されるものではない。
【0005】
本発明は、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であって、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであることに特徴がある。
具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているようなポリトリメチレンテレフタレートを少なくとも一成分とするものが挙げられる。
即ち、二種のポリエステルポリマーをサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比が、1.00〜2.00が好ましく、偏芯鞘芯型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0006】
具体的なポリマーの組み合わせとしては、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよく、又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよいポリトリメチレンテレフタレートと、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよく、又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよいポリエチレンテレフタレート、並びにポリトリメチレンテレフタレートと、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよく、又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよいポリブチレンテレフタレートとが好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されることが好ましい。
【0007】
このように本発明は、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を構成するポリエステル成分の少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートであるものであり、上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが開示されている。特にポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0008】
さらに本発明の目的達成上、好適な潜在捲縮発現性ポリエステル繊維としては、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであると好ましく、特に20〜30cN/dtex、さらに20〜27cN/dtexが好ましい。30cN/dtex超では、ソフト風合いが得られにくく、10cN/dtex未満のものは製造が困難である。又、顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%であると好ましく、特に10〜80%、より好ましくは10〜60%である。10%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすく、100%超は製造が困難である。更に、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、特に85〜100%、より好ましくは85〜97%である。80%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすく、100%超は製造が困難である。
【0009】
さらに、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、特に0.1〜0.4cN/dtex、さらに0.1〜0.3cN/dtexであることが好ましい。0.1cN/dtex未満では本発明の目的達成が不十分となりやすく、0.5cN/dtex超は製造が困難である。
熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%、特に180〜250%である。100%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすく、250%超は製造が困難である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。90%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすい。
【0010】
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維があげられる。
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.4(dl/g)であることが好ましく、特に0.1〜0.35(dl/g)、さらに0.15〜0.35(dl/g)がよい。例えば高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。尚、低粘度側の固有粘度は0.8(dl/g)以上が好ましく、特に0.85〜1.0(dl/g)、さらに0.9〜1.0(dl/g)が好ましい。
【0011】
また、この複合繊維自体の固有粘度、即ち平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)がよく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましい。特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、さらに0.9〜1.1(dl/g)が好ましい。
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸した糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0012】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートとは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0013】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより製造される。この製造過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンと、ポリトリメチレンテレフタレートとを別個に製造した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で50%以上である。
【0014】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(p−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0015】
本発明において潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の紡糸については、上記の各種特許文献に開示されており、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法が好ましいが、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)を採用しても良い。又、繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0016】
本発明においては、かかる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の仮撚加工糸を緯糸に用いることに特徴がある。
この仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率は好ましくは70〜300%、特に100〜300%、更に120〜300%がよい。70%未満では、本発明の目的達成が不十分となりやすい。又、顕在捲縮弾性率は好ましくは80〜100%、特に82〜100%、さらに85〜100%がよく、80%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすい。また、この仮撚加工糸の捲縮伸長率は100〜400%であることが好ましく、より好ましくは120〜400%である。捲縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。捲縮伸長率や捲縮弾性率がこの値未満では本発明の目的達成が不十分となりやすい。
仮撚加工糸を得るための仮撚方法としては、ピンタイプ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー加撚タイプ等、いかなる方法によるものでもよいが、好ましくはピンタイプ、ニップベルトタイプである。又、仮撚加工糸は、いわゆる2ヒーターの仮撚加工糸(セットタイプ)よりも、いわゆる1ヒーターの仮撚加工糸(ノンセットタイプ)を用いる方が本発明の目的達成上好ましい。
【0017】
仮撚加工時の熱固定温度は150℃〜200℃の範囲とすることが好ましく、仮撚数(T1)は次式で計算される仮撚数の係数K1の値が21000〜33000であることが好ましく、更に好ましくは25000〜32000の範囲である。
T1(T/m)=K1/(原糸の繊度:dtex)1/2
仮撚加工糸は、無撚でもよいが、必要に応じて仮撚方向と同方向もしくは異方向に追撚したり、仮撚加工糸を合糸したり、双糸又は三子で合撚して用いてもよく、追撚や合撚における撚数(T2)は、次式で計算される撚係数(K2)が例えば20000以下の範囲内で選定すればよい。尚、仮撚加工糸の合計繊度とは、追撚又は合撚する仮撚加工糸の合計の繊度をいう。
T2(T/m)=K2/(仮撚加工糸の合計繊度:dtex)1/2
【0018】
又、本発明において、仮撚加工糸は単独で用いても良いが、仮撚加工糸の含有率が、質量%で10%以上、好ましくは15%以上の範囲内で複合して用いてもよく、特に複合形態としては仮撚加工糸を芯糸とした鞘芯構造の紡績糸が好ましく(その際の鞘成分は経糸に用いるセルロース系短繊維素材と同じものが最適である。)、又、この仮撚加工糸以外の例えばポリエステル系繊維の仮撚加工糸と合糸,合撚することも好ましい。希望に応じてこれらの繊維以外の公知の長繊維、短繊維でもよく、繊維形態もマルチフィラメント原糸でも仮撚加工糸、流体噴射加工糸に代表される嵩高加工糸でもよく、従来公知の各種形態の糸条を用いることができる。
【0019】
例えば、羊毛、絹等の天然繊維、アセテート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維やポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプの繊維や、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を公知の複合手段により例えば長短混紡(サイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸や沸水収縮率15〜30%程度の高収縮糸との混繊や交撚等により複合してもよい。
【0020】
本発明において、経糸に用いるセルロース系短繊維で構成された紡績糸としては、綿、麻等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース等のリング紡績糸、オープンエンド紡績糸、サイロスパンやサイロフィル、ホロースピンドル等の複合紡績糸があり、特に綿又は精製セルロースが質量%で少なくとも40%以上、特に50%以上、さらに100%で構成された紡績糸使いにおいて最も顕著な効果を有する。
【0021】
本発明では、セルロース系短繊維100%で構成された紡績糸において顕著な効果を有するが、セルロース系短繊維の含有率が、質量%で好ましくは40%以上、好ましくは50%以上がよく、混用する繊維としては、前述の仮撚加工糸に複合する繊維として例示したものが挙げられるが、ポリトリメチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートの短繊維や長繊維との混紡が好ましい。又、紡績糸は、先染め糸を用いてもよく、その際は、緯糸に用いる仮撚加工糸は先染め糸でもよいが、染色しないままで最終製品としてもよい。
紡績糸の太さとしては、従来知られている太さのものが採用できるが、好ましい太さは綿番手で5〜50番手、特に5〜40番手、さらには5〜30番手使いにおいて効果が顕著である。
【0022】
本発明の織物は、経糸がセルロース系短繊維で構成された紡績糸、緯糸が上記の仮撚加工糸の交織織物であり、両者の混率は、質量%で好ましくは30:70〜70:30、より好ましくは35:65〜65:35、最も好ましくは40:60〜60:40である。尚、本発明の織物における仮撚加工糸の含有率は、質量%で好ましくは5〜50%、特に10〜50%、さらに15〜45%が好ましくい。
又、本発明の目的を損なわない範囲内で通常30質量%以下の範囲内で、セルロース系短繊維で構成された紡績糸や上記の仮撚加工糸以外の他の繊維を機上で、例えば経糸及び又は緯糸において1〜3本交互で交織してもよく、その混用相手は前述の仮撚加工糸に複合する繊維として例示したものが挙げられ、例えば、緯糸を上記の仮撚加工糸とポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維の仮撚加工糸と一本〜二本交互で構成したものが挙げられる。
【0023】
織物の種類は、特に限定されるものではなく、平組織、綾組織、朱子組織、経パイル織物さらにはこれらの組織を組み合わせた組織であってもよいが、平組織や綾組織、経パイル織物がより好ましい。
織物の経糸及び緯糸の密度としては、経糸の繊度が40〜920dtexの場合、経糸密度は40〜220本/2.54cm、緯糸の繊度が40〜920dtexの場合、緯糸密度は40〜220本/2.54cmの範囲で、織物組織、用途に応じて設定すればよい。
次に、織物製織用の織機は特に限定されるものではなく、エアージェットルーム、レピアルーム、グリッパールーム、有杼織機などを用いて生産することができる。
【0024】
本発明の織物の仕上げ加工方法としては、先ず最初に生機を熱水浴中(界面活性剤や精練剤などが含まれていてもよい)で精練・リラックスを行う。精練・リラックス加工を行うための設備としては、U型ソフサー、オープンソーパー、ボイルドオフ機、ジッガー染色機、ビーム染色機等の拡布タイプのものや液流染色機が使用できる。熱水浴の温度は例えば75℃〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは80℃〜100℃、最も好ましくは90℃〜100℃、更に好ましくは95℃〜100℃である。
この後、ピンテンターを用いて乾熱プレセットを行う。その際の温度は、加工反の風合い及びセット効果の点から、140℃〜170℃が好ましく、より好ましくは145℃〜170℃、最も好ましくは150℃〜170℃である。
【0025】
次に、先染め糸を用いる場合を除いて、液流染色機を用いて染色を行う。染色温度は90〜120℃、好ましくは90〜100℃程度が好ましい。染料は堅牢度等を考慮して適当な分散染料及び直接染料(又は反応染料)を選択することが望ましい。
尚、ファイナルセットは、ピンテンターを用いて乾熱セットを行うが、その際の温度は加工反の風合い及びセット効果(残留収縮)の点から、好ましくは150℃〜170℃、より好ましくは150℃〜165℃、最も好ましくは150℃〜160℃で行う。
更に、必要に応じて撥水加工や熱カレンダー加工などを付与してもよい。
又、ジーンズ用途では、いわゆる製品洗いの工程が採用される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
本発明の用いる評価法は以下通りである。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒に溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cは、g/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とする。
【0027】
(2)初期引張抵抗度
JIS−L−1013:化学繊維フィラメント糸試験方法、初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.0882cN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出し、10回の平均値を求めた。
(3)伸縮伸長率、伸縮弾性率
JIS−L−1090:合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法、伸縮性試験方法、A法に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)、伸縮弾性率(%)を算出し、10回の平均値を求めた。顕在捲縮の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、巻取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行った。熱水処理後の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥乾燥した試料を用いた。
【0028】
(4)熱収縮応力
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名;KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作り測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定し、得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取る。
(5)仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率及び顕在捲縮弾性率
島津製作所(株)製の引張試験機を用いて、つかみ間隔10cmにて仮撚加工糸を初荷重0.9×10-3cN/dtexで取り付けたのち、引張速度10cm/minで伸長し、0.0882cN/dtexの応力に達したときの伸び(%)を顕在捲縮伸長率とした。その後再び同じ速度でつかみ間隔10cmまで収縮させたのち、再度応力−歪み曲線を描き、初荷重の応力が発現するまでの伸度を残留伸度(B)とする。顕在捲縮弾性率は以下の式によって求めた。
顕在捲縮弾性率=〔(10−B)/10〕×100(%)
【0029】
(6)仮撚加工糸の捲縮伸長率、捲縮弾性率
巻き取りパッケージから解じょした仮撚加工糸を無荷重下で98℃の熱水中に20分浸漬した後、無荷重下で24時間乾燥した試料を用いた以外は、顕在捲縮伸度及び顕在捲縮弾性率の測定と同様の方法にて測定し、それぞれを捲縮伸長率、捲縮弾性率とした。
(7)肘抜け性
幅方向23cm、長さ方向28cmの大きさに試料をカットし、幅方向の中心を基準として、右側に1cm×1cmのマス目印を生地表に作る。この時、長さ方向の上下とも2cm空け、また幅方向右端1cmは縫い代とする。マス目個数は幅方向10個、長さ方向24個の合計240個作成する。マス目印を内側にして、両端を縫い合わせて筒状生地を作製し、その後裏返す。
【0030】
この筒状生地に肘辺りの腕模型として作成した治具を入れ、長さ方向両端をストレッチテープで固定した後、これをデマッチャーにとりつけ、180°⇔60°の屈曲を1万回実施する。尚、この治具は直径7cm、長さ22.5cmの円柱状のもので、腕と同じようなソフト感や弾力感を持つものである。治具は長さ方向中央部で180°⇔60°の屈曲ができるようになっている。尚、筒状生地は、屈曲時にマス目側が伸ばされる側になるようにセットされている。
1万回の屈曲終了後、縫い目を解き、マス目側で生地歪度合いを、テスト終了直後、1時間後、8時間後と経時的に調べた。肘抜け性は、下記式の生地歪度合いで表す。この値が大きいほど膝抜けし易いこととなる。
生地歪度合い=歪んでいるマス目個数/マス目個数(240個)×100%
【0031】
<潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の製造>
固有粘度の異なるサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを以下の製造例1〜4により製造した。
{製造例1}
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が165dtexとなるように設定して延撚し、165dtex/35fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.90、低粘度側が[η]=0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
{製造例2}
上記製造例1と同様の方法で165dtex/23fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.88、低粘度側が[η]=0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0032】
{製造例3}
上記製造例1とは固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、上記製造例1と同様の方法で165dtex/35fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.86、低粘度側が[η]=0.69であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
{製造例4}
固有粘度の異なる二種類のポリエチレンテレフタレートを用いて165dtex/35fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.66、低粘度側が[η]=0.50であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【実施例1〜3、比較例1】
各製造例で得られた複合フィラメントを用いて、石川製作所製;IVF−338にて第1ヒーター温度170℃(比較例1のみ220℃)、撚方向はZ撚とS撚、仮撚数3200T/mで仮撚加工を行った。実施例1〜3の仮撚加工糸は、顕在捲縮伸長率180〜200%、顕在捲縮弾性率85〜90%、捲縮伸長率200〜250%、捲縮弾性率85〜93%であったが、比較例1の仮撚加工糸は、顕在捲縮伸長率10%、顕在捲縮弾性率88%、捲縮伸長率130%、捲縮弾性率64%の仮撚加工糸を得た。
尚、製造例1が実施例1、製造例2が実施例2、製造例3が実施例3、製造例4が比較例1である。
【0035】
次いで綿番手で10/−の綿紡績糸を経糸に用い、ここで得られた仮撚加工糸を3本合糸して合撚し(Z撚仮撚加工糸はS方向に300T/m合撚し、S撚仮撚加工糸はZ方向に300T/m合撚して2種の合撚糸を作製した。)、この合撚糸を一本交互で緯糸に用いてエアージェットルームにて製織を行い、経糸密度70本/2.54cm、緯糸密度42本/2.54cmの3/1綾組織の生機を得た。本生機を95℃で液流リラクサーにて精練リラックス後、テンターを用い170℃で中間セットした後、液流染色機にて100℃の直接染料による染色を行い、170℃でファイナルセットを行った。次いで、製品に縫製して、常法に従い製品洗い(60℃での湯洗い)を行い、経糸密度100本/2.54cm、緯糸密度49本/2.54cmの織物を得た。
実施例1〜3の織物及び比較例1の織物の肘抜け性を評価した結果は、実施例1〜3は、表2に示すように肘抜けしにくく、又、肘抜けの回復性も優れたものであつたが、比較例1は、表2に示すように、実施例1〜3対比肘抜けし易く、又、肘抜けの回復性も劣ったものであった。
【0036】
【比較例2】
[η]=0.92の一成分のポリトリメチレンテレフタレート繊維84dtex/24fを用い、実施例1と同様の仮撚条件で仮撚を行い、顕在捲縮伸長率65%、顕在捲縮弾性率55%、捲縮伸長率180%、捲縮弾性率80%の仮撚加工糸を得た。
この仮撚加工糸を6本合糸して合撚したこと並びにファイナルセット温度を160℃とする以外は実施例1同様に製織、仕上げ、製品洗いを行って経糸密度80本/2.54cm、緯糸密度50本/2.54cmの織物を得た。得られた織物の肘抜け性の評価結果は、表2に示すように、実施例1〜3対比肘抜けし易く、又、肘抜けの回復性も劣ったものであった。
【0037】
【比較例3】
製造例2の複合フィラメントを仮撚加工せずに原糸のままで用いた以外は、実施例1同様に製織、仕上げ、製品洗いを行って経糸密度84本/2.54cm、緯糸密度49本/2.54cmの織物を得た。得られた織物の肘抜け性の評価結果は、表2に示すように、実施例1〜3対比肘抜けし易く、又、肘抜けの回復性も劣ったものであった。
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】
本発明により、膝抜けや肘抜けが起こりにくい交織織物を提供することができ、この織物は、ジーンズやコーデュロイに代表される織物に好適であり、チノパン、パンツ、スカート等のボトムやシャツとしての用途に好適である。
Claims (4)
- 経糸がセルロース系短繊維で構成された紡績糸であり、緯糸が仮撚加工糸である織物であって、この仮撚加工糸が、固有粘度差が0.05〜0.4dl/gの2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維からなる仮撚加工糸であり、該潜在捲縮発現性ポリエステル繊維が下記(a)〜(c)を満足することを特徴とする織物。
(a)初期引張抵抗度が10〜30cN/dtex
(b)顕在捲縮の伸縮伸長率が10〜100%、伸縮弾性率が80〜100%
(c)100℃での熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtex - 経糸がセルロース系短繊維で構成された紡績糸であり、緯糸が仮撚加工糸である織物であって、この仮撚加工糸が、固有粘度差が0.05〜0.4dl/gの2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を芯糸とした鞘芯構造の紡績糸であり、該潜在捲縮発現性ポリエステル繊維が下記(a)〜(c)を満足することを特徴とする織物。
(a)初期引張抵抗度が10〜30cN/dtex
(b)顕在捲縮の伸縮伸長率が10〜100%、伸縮弾性率が80〜100%
(c)100℃での熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtex - 紡績糸が、先染め糸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の織物。
- 仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の織物。
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