JP3993673B2 - 壁構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、木造軸組構造からなる建築物、構築物に対して、鋼板を用いて耐震性を向上させると同時に断熱層を形成する壁構造に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築、構築物の躯体の耐震性を向上させる手段として、筋交いを使用する方法があった。しかし筋交いは、柱材と横架材に囲まれた壁内空間にグラスウール等の断熱材を充填しようとする際に邪魔になるばかりでなく、室内側に位置した場合は内装材の配設の障害になり易いものであった。さらに筋交いは、躯体に所定の耐震性を持たせるためには、精度の高い寸法が要求され、施工時の大きな手間となるものであった。
【0003】
これらの欠点を除去するには、所定の規格寸法を有し、耐力壁としての強度ないし機能を備えた構造用合板やパーティクルボード等からなる面材を、対となる柱、対となる横架材をそれぞれ繋ぐように配し、面材を柱、横架材、間柱等に釘、ビス等の固定具によって固定することによって壁構造を形成する方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したように面材を用いて形成した壁構造には、次のような欠点があった。すなわち、面材が構造用合板の場合、施工前の水分が乾燥することによる収縮から、反り等の変形が生じ易く、施工の困難化や強度の低下を招き易いものであった。また、面材が浸水や結露により濡れた場合に腐食し易く、耐震性の低下を招き、建物そのものの耐久性に悪影響を及ぼすものであった。さらに、嵩張る上に重量が大きいため、運搬が困難でコストアップを招くのみならず、施工性にも改善の余地があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述したような課題を解決するために本発明では、平板状の鋼板からなる基材と、基材の一方面の全域に配した断熱層とからパネルを形成し、パネルの基材を躯体の外面に当接して、対となる柱、対となる横架材をそれぞれ繋ぐように配した壁構造を提案するものである。なお、鋼板は防錆加工を施したものを使用のが好ましい。また、躯体へのパネルの固定は、釘、ビス等のように頭部を有する一般的な固定具を用いて行うが、固定具の頭部は断熱層を貫通し、基材の表面に位置するようにするものである。
【0006】
【作用】
鋼板は、収縮による反りが生じることがなく、重量も小さいので施工が常に容易に行える。また、鋼板の気密性が優れることから、壁全体の気密性も向上する。さらに、鋼板に防錆加工を施すことにより、浸水や壁内結露による腐食を防止し、耐久性に優れた壁構造となる。また、鋼板は厚さ、重さが前記面材と比して小さいことから運搬が容易で、ローコストにて壁構造を形成できる。
【0007】
また、断熱層を躯体の外側に形成するので、柱、横架材等が熱橋とならず、従って柱間に断熱材を配する場合と比べて断熱層の厚みが小さくて済み、経済性に優れる。さらに、断熱層の室内側に配した基材として合板やパーティクルボード、OSBなどに比べて防湿性が非常に高い鋼板を用いるので、室内側の湿気が基材を透過することがなく、従って屋外が低温で、屋内が高温かつ多湿という冬期に多く見受けられる環境下において、断熱層と基材との境界部近傍に結露を生じることがない。
【0008】
【実施例】
以下に、図面を用いて本発明に係る壁構造について詳細に説明する。図1(a)、は本発明に係る壁構造に用いるパネルの一例、図1(b)は壁構造の説明図であり、Aは躯体、1はパネル、2は基材、3は断熱層、4は被覆材、11は柱、14は内装材、21は自動釘打機、22は自動釘打機の先端、23は打撃棒である。
【0009】
パネル1は、平板状の鋼板からなる基材2と、基材2の表面の全域に配した断熱層3と、断熱層3の表面の全域を被覆するように配した被覆材4とから構成される。
【0010】
パネル1は、図2と図3に示すように、対となる柱11同士、及び土台、梁、胴差し等の横架材13を繋ぐように配し、柱11、間柱12、横架材13等に釘、ビス等の固定具αによって固定する。すなわち、パネル1は、従来の構造用合板やパーティクルボード等からなる面材と同様の位置に配するものである。
【0011】
基材2は、0.1〜3.0mm厚の鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、ガルバリウム鋼板等の一種以上を所定形状、例えば909mm×2727mm程度に切断したもので、構造材としての強度を有するものであり、防錆加工が施されたものを用いるのが好ましい。
【0012】
基材2は、断熱層3を配する下地となると共に、パネル1を屋外側から躯体Aに固定する際に、躯体Aに当接し、かつ固定具αよって直接固定することにより、躯体Aの耐震性を強化することができ、従来の構造用合板やパーティクルボード等からなる面材を用いた場合と同等以上の壁倍率を得ることができる。
【0013】
断熱層3は、基材1の表面側に配し、例えばスチレンフォーム(スチレンボード)、ポリウレタンフォーム(ウレタンボード)、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム等の合成樹脂発泡体からなるもの、或いはボード状に形成されたものを接着剤等で貼着したもの、或いは各種軟質フォーム、グラスウール、ロックウール等の変形が容易なもの等のうち少なくとも1種以上からなる。断熱層3を基材2と一体に発泡、形成したものは、基材2との接着力が高く、基材1が施工時に曲がったり、反ったりするのを防止することができ、さらに製造が容易である。
【0014】
被覆材4は、断熱層3の表面に接着剤、もしくは断熱層3を合成樹脂の発泡によって成形する際の自己接着力によって貼着するもので、例えばアスベスト紙、クラフト紙、アスファルトフェルト、金属箔(Al、Fe、Pb、Cu)、合成樹脂シート、ゴムシート、布シート、石膏紙、水酸化アルミ紙、ガラス繊維不織布等の1種、または2種以上をラミネートしたもの、あるいは防水処理、難燃処理されたシート状物、もしくは通気性防水シート等からなるものである。被覆材4は、気密性、防湿性、防水性等のうち少なくとも1つ以上の機能を有し、断熱層3が外部の空気に含まれる湿気を吸収するのを防止すると共に、断熱層3を基材2上に合成樹脂を吐出発泡することで形成する場合、断熱層3の厚みを調整する役割を持つ。
【0015】
パネル1の躯体Aへの固定は、打撃棒23が先端22から断熱層3の厚さに等しい長さだけ飛び出すような機能を有する自動釘打機21を用いて行うが、図1(b)は打撃棒23が飛び出して、固定具αを所定の深さに打ち込んだ状態を示している。固定具αによるパネル1の固定を自動釘打機21によって行うことで、固定具αの頭部や打撃棒23が通過した範囲において削られた孔31が生じるが、断熱層3の材料の自己復元性により孔31は小さくなり、断熱の弱点にはならないものである。
【0016】
パネル1は、図2、および図3に示すように、基材1を躯体Aの外面に当接し、対となる柱11、対となる横架材13をそれぞれ繋ぐように固定する。なお、隣合うパネル1同士は、それぞれの側面を密着させて配するものである。
【0017】
パネル1は、断熱層3を躯体Aの外側に連続して形成するので、柱11、間柱12、横架材13等が熱橋とならないため断熱性の効率が良く、従って柱11間にグラスウール等の断熱材を配する場合と比べて断熱層3の厚みが小さくて済み、経済性に優れる。さらに、断熱層3の室内側に配した基材2として合板やパーティクルボード、OSBなどに比べて防湿性が非常に高い鋼板を用いるので、室内側の湿気が基材2を透過することがなく、従って屋外が低温で、屋内が高温かつ多湿という冬期の暖房使用時に多く見受けられる環境下において、断熱層3内で結露を生じることがない。また、屋外が高温多湿で、室内が低温という夏期の冷房使用時においても、被覆材4に防湿性を有する材質のものを使用することで、断熱層3内で結露を生じることがない。
【0018】
また、基材2の外側に断熱層3が位置するので、日射によって外壁が熱せられ、外壁内面が高温になっても、断熱層3がその熱を遮るので基材2は殆ど熱せられることがない。従って、基材2に鋼板を用いても膨張することがないため、一年を通して安定した耐震性を維持できる。
【0019】
さらに、基材2と内装材14の間の壁内空間15に別途に断熱材を配してさらに断熱性を向上させたり、図示しないが従来の筋交いとパネル1を併用して、耐震性の大幅な向上を図ることもできる。
【0020】
以上説明したのは本発明の一実施例に過ぎず、図4(a)、(b)〜図11(a)、(b)に示すような構成とすることができる。すなわち、図4(a)は、基材2の縁辺を断熱層3側に、図4(b)は断熱層3とは反対側に折り返して重ね合わせた重複部5を設け、施工時の安全性の向上を図ると共に、固定具αによるパネル1の躯体Aへの取付強度の向上、および施工時におけるパネル1の変形防止を図った例である。図5(a)、(b)は図4(a)、(b)に示した重複部5を基材2の2辺にのみ形成した例である。
【0021】
図6(a)は基材2の4辺、図6(b)は基材2の2辺を上方に屈曲して立ち上がり片6を形成した例である。立ち上がり片6は、施工時の安全性の向上、施工時におけるパネル1の変形防止を図ると共に、断熱層3を合成樹脂の吐出発泡によって形成する際に、合成樹脂が基材2から溢れないようにするガイドとして機能したり、合成樹脂と基材2との一体化を促したりするものである。
【0022】
図7(a)、(b)は、基材2の2辺に重複部5と立ち上がり片6を設けた例である。なお、図示しないが、図7(a)、(b)に示した重複部5、立ち上がり片6は、基材2の4辺に設けても良い。
【0023】
図8(a)は基材2の断熱層3側面、図8(b)は断熱層3とは反対側の面に対角線に反った筋交い7を配した例である。筋交い7は、長尺帯状の鋼板、木材等からなり、パネル1を躯体Aに固定した際の耐震性の向上を図った例である。
【0024】
図9(a)、(b)は、パネル1に胴縁8を配し、施工性の向上と施工時におけるパネル1の変形の防止を図った例である。
【0025】
図10(a)、(b)は、固定具αとして二頭釘24を用いた例を示すものである。すなわち、二頭釘24は、軸体27の上端には上頭25、中途には下頭26を有し、上頭25と下頭26の間隔は、断熱層3の厚みとほぼ等しいもので、上頭25は工具によって打撃を受ける部分で、下頭26は基材2と当接し、パネル1を躯体Aに固定する部分である。なお、下頭26は上頭25よりも大きく形成されていることが好ましい。
【0026】
図11(a)、(b)は、固定具αとして、通常の形状の釘と、釘頭よりも小さな径の孔を有するパイプ29を組み合わせた固定具28を用いた例である。パイプ29は断熱層3とほぼ等しい長さを有し、パイプ29の先端を基材2の表面に当接させて、パネル1を躯体Aに固定するものである。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る壁構造によれば、▲1▼鋼板は、収縮による反りが生じることがなく、重量も小さいので施工が常に容易に行える。▲2▼鋼板の気密性が優れるため、壁全体の気密性も向上する。▲3▼鋼板に防錆加工を施して、浸水や壁内結露による腐食を防止することで、耐久性に優れた壁構造を形成することができる。▲4▼鋼板の厚さが小さいことから運搬が容易で、ローコストにて壁構造を形成できる。▲5▼、断熱層を躯体の外側に形成するので、柱、横架材等が熱橋とならず、従って柱間に断熱材を配する場合と比べて断熱層の厚みが小さくて済み、経済性に優れる。▲6▼断熱層の室内側に配した基材として合板やパーティクルボード、OSBなどに比べて防湿性が非常に高い鋼板を用いるので、室内側の湿気が基材を透過することがなく、従って屋外が低温で、屋内が高温かつ多湿という冬期に多く見受けられる環境下において、断熱層と基材との境界部近傍に結露を生じることがない。等の特徴、効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る壁構造に用いるパネルと、壁構造の説明図である。
【図2】本発明に係る壁構造の説明図である。
【図3】本発明に係る壁構造の説明図である。
【図4】本発明に係る壁構造に用いるパネルのその他の例である。
【図5】本発明に係る壁構造に用いるパネルのその他の例である。
【図6】本発明に係る壁構造に用いるパネルのその他の例である。
【図7】本発明に係る壁構造に用いるパネルのその他の例である。
【図8】本発明に係る壁構造に用いるパネルのその他の例である。
【図9】本発明に係る壁構造に用いるパネルのその他の例である。
【図10】固定具のその他の例である。
【図11】固定具のその他の例である。
【符号の説明】
α 固定具
A 躯体
1 パネル
2 基材
3 断熱層
4 被覆材
5 重複部
6 立ち上がり片
7 筋交い
8 胴縁
11 柱
12 間柱
13 横架材
14 内装材
15 壁内空間
21 自動釘打機
22 先端
23 打撃棒
24 二頭釘
25 上頭
26 下頭
27 軸体
28 固定具
29 パイプ
31 孔
Claims (1)
- 平板状の鋼板からなる基材と、該基材の一方面の全域に配した断熱層とからパネルを形成し、該パネルの基材を躯体の外面に当接して、対となる柱、対となる横架材をそれぞれ繋ぐように固定具により該固定具の頭部が断熱層を貫通して基材の表面に位置するように固定し、隣合うパネルはその側面同士を密着させて配したことを特徴とする壁構造。
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