JP3991562B2 - 無害化ステンレススラグとその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼の精錬時に発生するスラグ (以下、単にステンレススラグという) からの6価Cr、F、Bの溶出を抑制して無害化し、土木材、路盤材およびセメント材等の資源としての利用可能な無害化ステンレススラグおよびそのようなステンレススラグを得る方法に関する。
【0002】
本発明によれば、産業廃棄物として処分している耐火物廃材をスラグ組成調整用の造滓剤として活用することにより、産業廃棄物の発生量低減が図れる。
【0003】
【従来の技術】
地球環境保護の観点からおよび産業廃棄物投棄場所の枯渇問題から、産業廃棄物の発生量低減とともに無害化およびリサイクル化が重要課題となっている。ステンレススラグもまた産業廃棄物の一つに位置づけられ、同様な課題を有している。
【0004】
ステンレススラグ、つまりステンレス還元スラグは、原料溶解あるいは精錬工程において生成する酸化物を還元、あるいは脱硫する際、不可避的に発生する。この発生したステンレススラグはそれ自身の特徴から、無害化およびリサイクル化に対し以下の問題を有している。
▲1▼スラグの粉化:ステンレススラグは2CaO・SiO2 (以下、C2S)が含まれており、このC2S が冷却中にα' →γ型へと相変態し、この時の体積変化により粉化することはよく知られている。
【0005】
スラグを路盤材や土木用材として利用する際には強度を保つ必要があり、粉化したスラグはリサイクルしにくいという問題がある。さらに、周辺・作業環境の悪化、処理のしにくさの面でも問題を有している。
▲2▼6価Cr溶出:ステンレススラグはCr2O3 を含んでおり、その一部が排滓や冷却時の条件によっては微量の6価Crに変化することがあり、ステンレススラグの資源化における一つの懸念要因となっている。
▲3▼F溶出:ステンレススラグは精錬時に融点降下剤として蛍石(CaF2)を使用するためF を含有している。F は生態系に悪影響を及ぼすためスラグからの溶出を抑制する必要がある。
▲4▼B溶出:通常のステンレススラグにおいてB2O3は極微量しか含んでいないが、スラグ固化を目的としてホウ酸化合物を加えた場合、あるいはB含有ステンレス鋼を溶製する場合において高濃度のB2O3がスラグ中に存在する。Bもまた生態系に悪影響を及ぼすため、スラグからの溶出を抑制する必要がある。
【0006】
これらの問題に対し、例えばステンレススラグの固化について、特開昭62−87442 号公報ではホウ酸化合物とAl、Si等の発熱性物質を添加する方法を提案している。本方法によるとスラグの固化は可能となるが、スラグ中に多量のB2O3を含有するためB溶出の原因となる。また、B2O3とB溶出との関係については考慮されていない。
【0007】
特開平8−26791 号公報では溶融スラグ中あるいは受滓鍋中にAl灰およびシリカ系物質を添加するステンレススラグの改質方法を、特開平9−316523号公報では組成で規定した指数を満足することによりスラグ粉化を抑制すると共に水和膨張も抑制する方法を提案している。
【0008】
これらの方法は、スラグの強度を得ること、あるいは、土木材および路盤材としての品質を安定化することを目的としており、6価Cr、F、B溶出抑制については考慮しておらず、ステンレススラグの無害化技術としては不充分である。
【0009】
6価Crの溶出防止については、例えば特開平6−171993号公報では溶融状態にある酸化Cr含有スラグに対してAl灰およびMg系物質を添加することによりスラグの粉化を抑制するとともに6価Crの溶出を抑制する方法を提案している。
【0010】
しかし、この方法においてもB、F溶出の抑制については考慮しておらず、ステンレススラグを無害化しているとは言い難い。
以上のように、従来のスラグの固化技術は6価Cr、F およびBの溶出抑制とスラグ組成との関係について、十分な定量的な検討がなされた例はない。
【0011】
さらに、環境庁より、人の健康の保護および生活環境保全の観点から埋め立て基準については6価クロム溶出量≦0.5mg/l 、F溶出量≦8.0mg/l 、B溶出量≦10.0mg/l、土壌環境基準については6価クロム溶出量≦0.05mg/l、F溶出量≦0.8mg/l 、B溶出量≦1.0mg/l となるようにすべきとの案が提示されており上記項目の溶出量とスラグ組成成分との関係についての知見を得ることは非常に重要である。
【0012】
一方、スラグ組成の制御方法としては特開平11−217246号公報では溶融スラグを回収した容器内に発熱剤とスラグ固化に必要な成分を添加することにより、還元スラグの組成制御による粉化防止を図る方法が提案されている。しかし、この方法ではスラグ処理のためのプロセスが増加するとともに設備費等のコストが増加するという問題を有している。
【0013】
特開平8−2681号公報の中で受鋼鍋の中にAl灰およびシリカ系物質を添加する方法が提案されているが、受鋼鍋への添加では十分な混合が得られないという問題がある。
【0014】
以上のようなスラグ組成制御方法は工数増を招く処理であり、定常操業におけるスラグ組成の制御方法としてはプロセスを増やさずして均一なスラグ組成が得られるスラグ処理方法が望まれる。
【0015】
また、ステンレススラグの改質方法として特開平9−165238号公報ではステンレススラグにコンクリート廃材を投入し固化する方法が提案されている。このような廃材をスラグ改質剤として利用する方法は有用であり、コンクリート廃材のみならず、その他の産業廃棄物として投棄しているのを有効活用することが産業廃棄物発生量低減のためにも重要である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ステンレススラグからの6価Cr、F、Bの溶出を抑制して無害化し、土木材、路盤材およびセメント材等の資源としての利用可能なステンレススラグおよびそれを得るための精錬方法を提供することである。
【0017】
さらに、産業廃棄物として処分している耐火物廃材を媒溶剤として活用することにより、産業廃棄物の発生量を低減する技術を開発することも本発明の一つの目的である。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明では、ステンレススラグからの6価Cr溶出量を≦0.5mg/l 、F溶出量を≦8mg/l、B溶出量を≦10mg/lに抑えるため、次のようなスラグ組成 (質量%) を提案する。
【0019】
(%CaO)/(%SiO2)≧1.5、かつ
8.87 %≦ Al 2 O 3 および15.83(%CaO)/(SiO2)−19.30≦(%Al2O3)≦30%、あるいは14%≦(%Al2O3)≦30%であって、さらに、
(%Cr2O3)≦20%、
(%B2O3)≦0.6%、
(%F)≦5%、
(%MgO)/(%CaO)=0.05〜0.40、
(%T.Fe)+(%Cr2O3)+(%MnO)≦5%。
【0020】
また、別の態様として、本発明にあっては、ステンレススラグからの6価Cr溶出量を≦0.05mg/l、F溶出量≦0.8mg/l 、B溶出量≦1.0mg/l と抑えるため、質量%でステンレススラグ組成を次のように規定する。
【0021】
(%CaO)/(%SiO2)≧1.5、かつ
8.87 %≦ Al 2 O 3 および15.83(%CaO)/(SiO2)−19.30≦(%Al2O3)≦30%、あるいは14%≦(%Al2O3)≦30%であって、さらに
(%Cr2O3)≦10%、
(%B2O3)≦0.1%、
(%F)≦2.0%、
(%MgO)/(%CaO)=0.05〜0.40、
(%T.Fe)+(%Cr2O3)+(%MnO)≦5%。
【0022】
本発明にかかるステンレススラグの調整方法は、還元精錬期のスラグに脱酸剤としてAl、Siのうち1種あるいは2種、造滓剤としてAl2O3 、CaO 、SiO2およびMgO 成分のうち2種以上投入する方法により、または精錬還元後、あるいは温度調整時期のスラグに前述のスラグ組成に比較して不足成分を含む物質を投入する方法により実施すればよい。
【0023】
また、スラグ組成の媒溶材として耐火物廃材を活用することにより、産業廃棄物の発生量を低減するようにしてもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態の詳細について説明する。なお、本明細書においてスラグ組成を規定する「%」は、とくにことわりがない限り、「質量%」である。
【0025】
本発明者は、多くの実験結果から、ステンレススラグを固化するとともに、6価Cr、F、Bの溶出を抑制することにより無害化し、リサイクル可能となるスラグ組成を、見いだした。
【0026】
まず、スラグ組成の限定理由およびそれによる作用効果を以下に示す。
以下のデータはステンレス鋼の還元精錬時のスラグに各種添加剤を加えることでスラグ組成を調整したときのデータである。
【0027】
図1、図2および図3に、それぞれスラグ粉化率の6価Cr、FおよびB溶出量との関係を示す。
各図に示す通り、スラグ粉化率の低下に伴い6価Cr、FおよびB溶出量は低下傾向を示しており、特に粉化率が10%以下となると6価Cr、FおよびB溶出量が急激に抑制される。この溶出量の抑制はスラグ粉化率の低下に伴うスラグ表面積の減少によるものと推定される。
【0028】
なお、各成分の溶出量は、環境庁告示第13号に従い調査した。粉化率はスラグが発生してから1週間後にスラグを粉砕せず4メッシュのふるいにかけて、ふるい通過重量の全重量に対する割合とした。
【0029】
ところで、ステンレス鋼の還元精錬は、溶鋼の全酸素濃度低減、溶鋼の清浄性確保の理由から、一般的にスラグ中CaO/SiO2が≧1.5 となるように塩基度を制御する。しかし、CaO/SiO2が≧1.5 の領域では2CaO ・SiO2が生成しスラグは粉化する。
【0030】
図4にCaO-SiO2-Al2O3の3元系状態図を示す。図4の3元系状態図より、粉化する2CaO・SiO2が生成する領域は容易に予想可能である。しかし、実操業におけるスラグは3元系以上の他成分を含み、必ずしも図中の領域とは一致しない。
【0031】
そこで発明者はCaO/SiO2が≧1.5 の領域かつ実操業で適用されるスラグの粉化しないスラグ組成を種々調査した。
図5にスラグCaO/SiO2、スラグ中(%Al2O3)とスラグ粉化率との関係を示す。
【0032】
図中で、粉化率≦10%のチャージを固化、粉化率≧10%のチャージを粉化として分類した。図中に示すようにスラグ中(%Al2O3)が≧15.38(CaO/SiO2) −19.30 あるいは≧14%を満たす場合、スラグの粉化を抑制できる。
【0033】
図6にはスラグ中Al2O3 濃度と耐火物の溶損率との関係を示す。これからも分かるように、スラグ中Al2O3 濃度が30%を越えると耐火物の溶損率が急激に増大する。これはスラグ中(%Al2O3)増加にスラグ融点の降下が原因と推定される。
【0034】
なお、溶損率は各操業条件における精錬耐火物の溶損量より算出した。
従って、スラグ中(%Al2O3)濃度は、(%Al2O3)≧15.38(CaO/SiO2) −19.3〜30%あるいは14〜30%に規定した。
【0035】
スラグ中のCr2O3 濃度を20%以下、好ましくは10%以下とするのは、CaO/SiO2比およびAl2O3 濃度を上記範囲内でスラグを安定化させた場合、図7に示すように、20%以下では6価Cr溶出量を0.5mg/l 以下、10%以下では0.05mg/l以下に抑制できるためである。スラグ中のCr2O3 濃度は低いほど6価Cr溶出は抑制される。
【0036】
スラグ中B2O3濃度を0.6 %以下、好ましくは0.1 %以下とするのはCaO/SiO2比およびAl2O3 濃度を上記範囲内でスラグを安定化させた場合、図8に示すように、≦0.6 %でB溶出量を10mg/l以下に、≦0.1 %で1mg/l以下に抑制できるためである。スラグ中B2O3濃度は低いほどB溶出量は抑制される。
【0037】
スラグ中F濃度を5%以下、好ましくは、2%以下とするのはCaO/SiO2比およびAl2O3 濃度を上記範囲内でスラグを安定化させた場合、図9に示すようにF溶出量を≦5%で8mg/l以下に、≦2%で0.8mg/l 以下に抑制できるためである。スラグ中F濃度は低いほどF溶出量は抑制される。
【0038】
図10にMgO/CaO 比と溶損率との関係を示す。MgO/CaO 比が0.05未満ではスラグの耐火物中への浸潤および溶損により耐火物寿命は低下する。
一方、0.40を越える場合には図11に示すように、溶解のための熱量増大、スラグ流動性低下により歩留低下し、操業負荷を増大することを見いだした。そこでMgO/CaO 比は0.05〜0.40に規定した。
【0039】
(%T.Fe) +(%Cr2O3)+(%MnO)を≦5%とするのは歩留の低下を抑制できるためである。
本発明のステンレススラグの無害化処理は、AOD 、VOD 、上底吹き転炉、LF、バブリング処理において発生するスラグに適用するものである。なお、AOD 、LFでの精錬は減圧下での処理も含まれる。
【0040】
スラグ組成への調整方法として、従来はスラグ処理用設備の設置、攪拌不十分なスラグ改質剤の入置等が採用されていたが、本発明では▲1▼還元精錬期の脱酸剤としてAl、Siの1種あるいは2種、造滓剤としてAl2O3 、CaO 、SiO2およびMgO のうち2種以上投入する方法、▲2▼還元精錬後、あるいは温度調整時期に不足成分を含む物質を投入する2方法を見い出した。
【0041】
いずれの方法も、スラグ組成制御のためのプロセスの増加なしにスラグの無害化が可能であり、設備費用、能率および操業コスト低減に対し有効である。
▲1▼の方法で、脱酸材としてAlあるいはAlおよびSiを用いる精錬方法は溶鋼の低酸素化および介在物量低減が必要な鋼種に対し有効であり、鋼の高清浄性を保つと共にスラグの無害化が可能な方法である。
【0042】
また、▲1▼の方法で脱酸材としてSiを用いる精錬方法は用途上Al2O3 系介在物による製品トラブルが懸念されるプレス用材等の溶製に有効であり、Alがトレース量の溶鋼を供給可能である。
【0043】
▲1▼および▲2▼の方法によりスラグの組成を制御する方法として酸素効率から予測する方法、精錬中の溶鋼成分推移から予測する方法、精錬中の排ガス流量と濃度から予測する方法、従来の操業条件とスラグ組成から予測する方法等が挙げられる。
【0044】
また▲2▼の方法では、より正確なスラグ組成および温度制御が可能であるという利点を有する。投入する物質としてSiO2源としては硅砂、川砂等、CaO 源としては生石灰、ドロマイト等、MgO 源としてはクリンカー、天然マグネシア等、Al2O3 源としては金属Al、Al灰等を投入する方法が挙げられる。
【0045】
一方、耐火物廃材は、MgO 、Al2O3 、SiO2およびCaO 等の成分を含有しておりスラグ組成調整用の媒溶材、つまり造滓剤として適正である。媒溶材として適用可能な耐火物としてAl2O3 系耐火物、Al2O3-MgO 系耐火物、CaO-MgO 系耐火物、SiO2系耐火物、MgO-C 系耐火物、MgO 系耐火物等が挙げられる。これらの耐火物を分別回収後破砕し、造滓剤として適用する。
【0046】
図12に破砕後の粒度と滓化率との関係を示す。
粒度の増加に伴い滓化率は低下する傾向が認められ、滓化および耐火物廃材の有効利用の観点からは滓化率が80%を超える≦50mmが望ましい。なお、滓化率は、投入前のスラグ成分、投入成分に対する投入後成分の比として算出した。
【0047】
また、レンガ廃材は産業廃棄物として処理しているため、スラグ組成調整用の造滓剤として活用することによりスラグおよびレンガ廃材トータルでの産業廃棄物の発生量低減にも有効である。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0049】
【実施例1】
AOD を用い、各チャージ80tのオーステナイト系ステンレス鋼を溶解した。
スラグ組成は精錬中の溶鋼成分推移から還元剤であるAl、Siおよび造滓剤であるMgO 、CaO の投入量を調整しコントロールした。
【0050】
AOD 処理後のスラグを採取し、各スラグ組成、6価Cr、FおよびB溶出量、粉化率を調査した。
また、炉体の溶損量測定は同一条件で10チャージ操業し、羽口の溶損量より溶損率を計算した。
【0051】
発明例および比較例のAOD スラグ組成を表1に、各溶出量、粉化率および溶損率の調査結果を表2に示す。
発明例1に対し、比較例6のように(%Al2O3)≧15.38 (CaO/SiO2 ) −19.30 となる発明例1の場合は粉化率0%であるのに対し、(%Al2O3)≧15.38 (CaO/ SiO2) −19.30 となる比較例6では100 %の粉化率となる。
【0052】
また、発明例2に対し、比較例7のように (%Al2O3) ≧14%を満たす発明例2は粉化率0%であるのに対し、(%Al2O3)≧15.38 (CaO/SiO2 ) −19.30 および(%Al2O3)≧14%の両条件を満たさない比較例7においては粉化率60%の結果となった。
【0053】
また発明例3に対し比較例8のように(%Al2O3)≧30%を超える比較例8で羽口の溶損率が大幅に悪化することが判明した。
また、発明例4に対し比較例9に示すように (%Cr2O3) ≧20%である比較例9は6価Cr溶出量が≧0.5mg/l となるのに対し、(%Cr2O3)≦20%である発明例4では6価Cr溶出量を≦0.5mg/l に抑制できた。
【0054】
さらに発明例5においては(%Cr2O3)を≦10%にすることにより、6価Cr溶出量を≦0.05mg/lに抑制できた。また、本実施例により還元剤であるAl、Siおよび造滓剤であるMgO 、CaO の投入量の調整によるスラグ組成コントロールが可能であることが明らかとなった。
【0055】
【実施例2】
VODを用い、各チャージ75t のフェライト系ステンレス鋼を溶解した。
スラグ組成は酸素効率より還元剤であるSiおよび造滓剤であるAl2O3 、MgO 、CaO の投入量を調整しコントロールした。なお、Al2O3 源としては≦25mmに破砕したAl2O3 −MgO レンガ廃材を適用した。AOD 処理後のスラグを採取し、各スラグ組成、6価Cr、FおよびB溶出量、粉化率を調査した。
【0056】
また、取鍋の溶損量測定は同一条件で10チャージ操業し、スラグライン部の残厚から溶損率を計算した。
表3に本例のVOD スラグ組成を、表4には各溶出量、粉化率および溶損率の調査結果を示す。
【0057】
例No.1および2に対し、No.7および8に示すようにB溶出量は(%B2O3) ≦0.6 %で≦10.0mg/l、(%B2O3) ≦0.1 %で≦1.0mg/l に抑制できた。
No.3および4に対し、No.9および10に示すようにF溶出量は (%F) ≦5.0 %で≦8.0mg/l 、 (%F) ≦2.0 %で0.8mg/l に抑制できた。
【0058】
No.5および6に対しNo.11 および12に示すように耐火物の溶損率は(%MgO)/(%CaO) ≦0.05では溶損率が220 に増加した。一方、(%MgO)/(%CaO) ≧0.40では、低級酸化物濃度の上昇、熱補償等の操業負荷の増大を招いた。
【0059】
また、本実施例により還元剤であるSiおよび造滓剤であるAl2O3 、MgO 、CaO の投入量の調整によるスラグ組成コントロールが可能であること、さらにはスラグ組成調整用の媒溶材としてレンガ廃材の活用が可能であることが明らかとなった。
【0060】
【実施例3】
バブリングステーションにおいて、各チャージ80t のステンレス鋼の温度および成分微調整を実施した。スラグ組成は精錬後の物質バランスより不足分の成分を投入した。
【0061】
表5にバブリング処理前後のスラグ組成分析結果を示す。
Al2O3 成分およびMgO 成分が不足していたため、廃Al2O3 −MgO レンガおよびマグネシアクリンカーを投入した。バブリング処理後のスラグ組成は、ほぼ狙い通りのスラグ組成となっており、表6に示すように各溶出量および粉化率を低減可能となり、スラグの無害化が図れた。
【0062】
本実施例により、精錬後の物質バランスからのスラグ組成のコントロール、さらにはスラグ組成調整用の造滓剤としてレンガ廃材の活用が可能であることが明らかとなった。
【0063】
図13にレンガ廃材を造滓剤として適用した場合の産業廃棄物発生量を通常操業時と比較して示す。
これからも分かるように、造滓剤としてレンガ廃材を適用することによって産業廃棄物の全発生量を30%削減できた。
【0064】
【表1】
Figure 0003991562
【0065】
【表2】
Figure 0003991562
【0066】
【表3】
Figure 0003991562
【0067】
【表4】
Figure 0003991562
【0068】
【表5】
Figure 0003991562
【0069】
【表6】
Figure 0003991562
【0070】
【発明の効果】
本発明により、ステンレススラグからの6価Cr、FおよびBの溶出防止および固化が可能になり、ステンレススラグの無害化、さらには土木材、路盤材およびセメント材への資源化が出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】粉化率と6価Cr溶出量との関係を示すグラフである。
【図2】粉化率とF溶出量との関係を示すグラフである。
【図3】粉化率とB溶出量との関係を示すグラフである。
【図4】 CaO −SiO2 −Al2O3 3元系状態図における2CaO 、SiO2 生成領域を示すグラフである。
【図5】 (%CaO)/(%SiO2)、(%Al2O3)と粉化率との関係を示すグラフである。
【図6】 (%Al2O3)と溶損率との関係を示すグラフである。
【図7】 (%Cr2O3)と6価Cr溶出量との関係を示すグラフである。
【図8】 (%B2O3) とB溶出量との関係を示すグラフである。
【図9】 (%F) とF溶出量との関係を示すグラフである。
【図10】 (%MgO)/(%CaO) と溶損率との関係を示すグラフである。
【図11】 (%MgO)/(%CaO) と歩留との関係を示すグラフである。
【図12】耐火物廃材の破砕粒度と滓化率との関係を示すグラフである。
【図13】産業廃棄物発生量比較を示すグラフである。

Claims (5)

  1. ステンレス鋼の還元精錬時に発生するスラグ組成が、精錬終了の時点において、質量%で、(%CaO)/(%SiO2)≧1.5、かつ
    8.87 %≦ Al 2 O 3 および15.83(%CaO)/(SiO2)−19.30≦(%Al2O3)≦30%、あるいは14%≦(%Al2O3)≦30%であって、さらに、
    (%Cr2O3)≦20%、
    (%B2O3)≦0.60%、
    (%F)≦5.0%、
    (%MgO)/(%CaO)=0.05〜0.40、
    (%T.Fe)+(%Cr2O3)+(%MnO)≦5%
    であり、該スラグからの6価Cr溶出量が0.5mg/l以下、F溶出量が8.0mg/l以下、B溶出量が10mg/l以下であることを特徴とする無害化ステンレススラグ。
  2. ステンレス鋼の還元精錬時に発生するスラグ組成が、精錬終了の時点において、質量%で、(%CaO)/(%SiO2)≧1.5、かつ
    8.87 %≦ Al 2 O 3 および15.83(%CaO)/(SiO2)−19.30≦(%Al2O3)≦30%、あるいは14%≦(%Al2O3)≦30%であって、さらに
    (%Cr2O3)≦10%、
    (%B2O3)≦0.10%、
    (%F)≦2.0%、
    (%MgO)/(%CaO)=0.05〜0.40、
    (%T.Fe)+(%Cr2O3)+(%MnO)≦5%
    であり、該スラグからの6価Cr溶出量が0.05mg/l以下、F溶出量が0.8mg/l以下、B溶出量が1.0mg/l以下であることを特徴とする無害化ステンレススラグ。
  3. ステンレス鋼の還元精錬時にスラグに、脱酸剤としてAlおよびSiの内1種あるいは2種、造滓剤としてAl2O3、CaO、SiO2およびMgO成分の内2種以上を投入することにより、請求項1あるいは請求項2に規定するスラグ組成とすることを特徴とする無害化ステンレススラグの製造方法。
  4. ステンレス鋼の還元精錬時にスラグに、あるいは温度調整時期のスラグに不足成分を含む物質を投入することにより、請求項1あるいは請求項2に規定するスラグ組成とすることを特徴とする無害化ステンレススラグの製造方法。
  5. ステンレス鋼の還元精錬時にスラグに、造滓剤として耐火物廃材を活用して請求項1あるいは請求項2に規定するスラグ組成とすることを特徴とするステンレススラグの無害化方法。
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