JP5634966B2 - スラグにおける六価クロムの抑制方法 - Google Patents
スラグにおける六価クロムの抑制方法 Download PDFInfo
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Description
例えば、電気炉などでクロム鋼(含クロム鋼)を精錬した後のスラグ中には、Cr2O3(三価クロム酸化物)が含有されている。この三価クロム酸化物は、さらに酸化すると、六価クロム酸化物となり有害な物質となるため、土工用や路盤材として利用するためには、六価クロムの溶出量が0.05mg/L以下にする必要がある。
特許文献1では、クロムを含有する溶融スラグを鉄板上若しくは鋳型内に排出し、その溶融状態から400℃までの温度領域を5℃/分以上の冷却速度で冷却することとしている。
特許文献3では、製鋼工程で発生した酸化クロムを含有するスラグであって、スラグ塩基度[質量比:%CaO/%SiO2]が1.5以上、Fe含有量が10質量%以上のスラグに還元材を添加し、スラグ温度が1000℃以上で撹拌混合した後、冷却している。
また、特許文献2に示すように、溶融ステンレススラグと全改質材とを混合して改質する方法では、例えば金属の硫酸塩添加はコストアップ要因であり、ダストにはPbなどの有害元素が含まれているため、六価クロム以外の有害元素が溶出する懸念がある。また、特許文献3に示すように、スラグ塩基度が1.5以上でFe含有量が10質量%以上のスラグに還元材を添加する方法は、初期のスラグ中酸化クロム濃度が2.0質量%以下を対象としており、酸化クロム濃度が2.0質量%を超えた場合には、六価クロムが溶出する懸念がある。
すなわち、本発明の技術的手段は、クロムを含有するスラグから六価クロムの溶出を抑制する方法において、前記スラグの組成を、CaO:30〜55質量%、SiO2:5〜17質量%、Al2O3:0.5〜12質量%、T.Fe:5〜30質量%となるようにすると共に、式(1)を満たすようにし、六価クロムの溶出を抑制することを特徴とする。
以下の説明において、溶銑や溶鋼のことを溶湯と表現し説明を行う。また、図面において、三価クロムをCr(III)とし、六価クロムをCr(VI)と表現することもある。
図1に示すように、電気炉1は、内部に投入した冷鉄源等を溶解すると共に、溶解した冷鉄源等や外部から直接装入された溶湯2を精錬するものであって、溶湯2を貯留する容器本体3と、この容器本体3を覆う蓋体4とを備えている。
排サイ口5には、容器本体3内の溶湯に対して、酸素を吹き込むためのランス7を装入することができる。なお、容器本体3に、排サイ口5や出鋼口6が形成されていてもよい。
したがって、電気炉1では、まず、冷鉄源(例えばクロムを含むスクラップ)などの主原料との前後を問わず副原料等を容器本体3に投入する。そして、電極8によるアーク放電によって、冷鉄源及び副原料を加熱溶解して溶融状態とし、その溶湯2に対してランス7により酸素を吹き込むことにより、精錬処理(脱りん処理)を行うことができる。
Al2O3は、スラグの融点を下げる効果があるため、造さい材としてAl2O3源を添加している。なお、電気炉1にて精錬を行った場合、Al2O3濃度は0.5〜12質量%以下である。
Cr2O3は、精錬上の機能は有しておらず、溶湯中のCrが酸化されることにより、スラグ中に含有されることになる。Cr2O3濃度は主に溶湯(溶鋼)とのCr分配やスクラップ中のCr成分に依存するが、0.3〜10%である。
また、スラグ中には、上述した組成の他に、TiO2、V2O5、S、P2O5、F、f−CaOなどが含まれるが、これらの合計は、10質量%以下である。
本発明では、再利用するスラグの組成は、上述した範囲内に入るようにしている。そのため、上述したスラグの組成は、精錬処理後に排サイしたスラグ自体の組成であっても、改質処理を行った後の組成であってもよい。即ち、精錬後のスラグS1をそのまま再利用する場合は、精錬処理後(電気炉から排サイ後)の成分(組成)が上述した成分になるように精錬時にスラグの成分調整を行う。また、精錬処理後のスラグS1を一旦、改質して再利用する場合は、電気炉1からスラグポット(スラグを受ける容器)に精錬処理後のスラグS1を排サイし、スラグポットに排サイしたスラグに成分調整のための材料を加えて、上述した成分になるように成分調整を行う、或いはスラグポットに予め改質材を投入したうえでスラグS1を排サイしてもよい。
図2(a)に示すように、上述したように、スラグ中の六価クロム[(Cr(VI)]は、スラグ中に存在する三価クロム[Cr(III)]が酸化することによって生成される。そのため、スラグの酸化度が六価クロムの生成に影響を及ぼしている可能性が考えられる。発明者らは、まず、スラグの酸化度と六価クロムの溶出量とに着目して両者の関係を調査した。なお、スラグ中の酸化クロムを考慮していないスラグの酸化度は、Fe2O3/T.Feであり、スラグ中の酸化クロムを考慮したスラグの酸化度は、Cr2O3×Fe2O3/T.Feである。
ここで、スラグの酸化度をFe2O3/T.Feと、Fe2O3に着眼した理由は、酸化物の標準生成自由エネルギーを考慮したためである。Fe2O3はFeOよりも標準生成自由エネルギーが大きいので、Fe2O3の生成量が多いほど、スラグの酸化が進んでいると想定されるため、Fe2O3/T.Feを酸化度との指標とした。加えて、後述の通り、Fe2O3には六価クロムの還元能が無いと想定されたためである。
図4に示すように、スラグ中の酸化クロムを考慮した場合であっても、スラグの酸化度が増加するにつれて六価クロムの溶出が増加することが確認された。即ち、スラグ中の酸化クロムの濃度如何に関わらず、スラグの酸化度を抑えることによって六価クロムの溶出量を少なくすることができる。
図5及び図6に示すように、スラグ中のM.FeやFeOが増加するにつれて、六価クロムの溶出量が減少している。なお、図7に示すように、Fe2O3と六価クロムの溶出量との相関関係はなかった。
そこで、図8に示すように、スラグの酸化度と、還元剤として働くFeの量比とについてまとめると、ラインLよりもA領域にあるときは、六価クロムの溶出量を0.05mg/L以下にすることができる。この関係を定式化すると、式(1)となる。
なお、本スラグの組成は分析により求めてもよいし、下記に示すような方法で求めることも可能である。排サイ直前のCaO、Al2O3、SiO2濃度は精錬中に添加した造サイ剤やフラックスの量から大きく変化しないため、添加量からの算出が可能である。Cr2O3量は、溶鋼中のCr濃度から算出できる。T.Fe量、M.Fe、FeO、Fe2O3濃度に関しては、酸素量、[C]濃度、温度などの精錬条件からの推定が可能である。なお、本実施例においては、分析により組成を確認した。
また、実施例では、電気炉等からスラグをスラグポットに排サイして冷却を完了するまでの工程を工夫することによって、最終的なスラグ(冷却完了後のスラグ)が式(1)を満たすようにした。
なお、最終的にスラグの成分が本発明に規定した範囲にするための方法は、上述した方法に限定されない。
実施例に示すように、再利用するスラグの組成(冷却完了後のスラグ)が、CaO:30〜55%、SiO2:5〜17%、Al2O3:0.5〜12%、T.Fe:5〜30%であり、式(1)を満たす組成であれば、六価クロムの溶出量を0.5mg/Lにすることができた。
一方、比較例に示すように、CaO、SiO2、Al2O3、T.Fe:5〜30%のいずれかの成分が規定より外れ、又は、式(1)を満たさない場合は、六価クロムの溶出量が0.5mg/Lを超えてしまうことになった。
2 溶湯
3 容器本体
4 蓋体
5 排サイ口
6 出鋼口
7 ランス
8 電極
S1 スラグ
Claims (1)
- クロムを含有するスラグから六価クロムの溶出を抑制する方法において、
前記スラグの組成を、CaO:30〜55質量%、SiO2:5〜17質量%、Al2O3:0.5〜12質量%、T.Fe:5〜30質量%となるようにすると共に、式(1)を満たすようにし、六価クロムの溶出を抑制することを特徴とするスラグにおける六価クロムの抑制方法。
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