JP3991285B2 - 金属支持体被覆用ポリアミドベースの粉末組成物 - Google Patents

金属支持体被覆用ポリアミドベースの粉末組成物 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、金属支持体を被覆するためのポリアミドベースの粉末組成物に関するものである。
従来の技術
ポリアミドはその優れた機械的特性、例えば耐磨耗性、衝撃強度および多くの化合物、例えば炭化水素、塩基および無機酸に対して化学的に不活性であるので、金属支持体の被覆広く使用されている。
しかし、溶融状態のポリアミドは濡れ性が悪いため、メタルに対するポリアミドの接着力は不十分であるということは知られている。この問題点を解決するために、金属支持体には接着プライマーとよばれるアンダーコートが被覆され、それによってポリアミド粉末の機械的結合およびアンカー効果を保証してきた。一般に、接着プライマーは熱硬化性樹脂を主成分としたものが使用され、粉末状または溶液または有機溶媒または水性溶媒中の懸濁の形で供給される。従って、ポリアミド粉末を支持体に被覆する前に溶媒を除去し、プライマーを硬化する追加の設備が必要になる。しかも、プライマーの硬化および/または乾燥によって被覆時間が大幅に延び、従って、コストが高くなる。
欧州特許第0 412 888号には、接着プライマーのアンダーコートを使用せずに金属支持体の被覆に使用可能なポリアミドとエポキシ/スルホンアミド樹脂との混合物が記載されている。このポリアミドとエポキシ/スルホンアミド樹脂との粉末混合物は静電銃を用いて支持体に塗布できる。その後は、被覆された支持体をオーブンに通して粉末を溶融し、均一な被覆にするだけでよい。あるいは、支持体は粉末の溶融点以上に予備加熱し、粉末の流動床に浸漬することもできる。
発明の開示
本発明者は、接着プライマーを必要としない、優れた接着力(耐久時間)を有する別の金属支持体被覆用ポリアミドベースの粉末組成物を見出した。本発明組成物は下記の利点もさらに有している:
(1)粉末をガンを用いて塗布した場合、オーブン導入時および通過時に被覆がは落下しない。
(2)支持体に塗布した粉末を溶融して得られた塗膜で被覆された金属板は、ノッチを入れた後に塩霧に曝しても腐食の成長が制限される。
(3)熱湯に対する抵抗力に優れており、例えば家庭用の水加熱装置の被覆に利用できる。
本発明は(i)少なくとも1種のポリアミドと、少なくとも1種のエチレンと不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステルおよび飽和カルボン酸ビニルエステルの中から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマー(A)とで構成され且つ(ii)粉末であることを特徴とする組成物を提供する。
本発明組成物はポリアミドとコポリマー(A)の均質混合物である。換言すれば粉末の各粒子がポリアミドとコポリマー(A)とで構成されている。
本発明では、ポリアミドとはラクタム、アミノ酸またはジアッドとジアミンとの縮合生成物、より一般的にはアミド基で結合している単位で構成された任意のポリマーを意味する。このポリアミドは溶融点が130〜270℃の例えばPA-6、PA-66、PA-6,66、PA-11、PA-12、PA-11,12およびPA-6,12であるのが有利である。
11-アミノウンデカン酸またはラクタム11の縮合で得られるポリアミド11と、12-アミノドデカン酸またはラクタム12の縮合で得られるポリアミド12を使用するのが有利である。さらにポリアミド12-12を使用することもできる。
ポリアミドはポリアミドブロックを鎖に有するポリマー、例えばエステル基で結合しているポリアミドブロックとポリエーテルブロックとで構成されたポリエーテルエステルアミドでもよい。これらの製造方法は米国特許第4,230,838号に記載されている。ラクタムをジアシッドの存在下で重合してカルボキシル末端を有するポリアミドとし、次いでこれにヒドロキシ末端を有するポリエーテルを付加する。ポリエーテルは好ましくはポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールである。
ポリアミドブロックを鎖に有する他のポリマーは米国特許第4,207,410号で製造することができる。ラクタム、ジアシッドおよびヒドロキシ末端を有するポリエーテルを水の存在下で混合し、温度を維持する。ポリアミドブロックとジアシッドが混合されたポリエーテルブロックとを有するポリマーが得られ、これらの全成分はエステル基によって結合されている。
上記のポリアミドの混合物を使用しても本発明の範囲を逸脱するものではない。
コポリマー(A)の例としては、エチレンと(メタ)アクリル酸とのコポリマー、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとのコポリマーまたはエチレンと酢酸ビニル(EVA)とのコポリマーを挙げることができる。これらコポリマー(A)は必要に応じてさらにグラフトまたは共重合した不飽和無水カルボン酸単位を有することができる。
コポリマー(A)は、(i)少なくとも50重量%のエチレン単位と、(ii)(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステル単位と、6重量%以下の共重合したマレイン無水物とを有するのが有利である。
コポリマー(A)の例としては、60〜90重量%のエチレンと、5〜35重量%のエチルアクリレートと、0.1〜5重量%のマレイン無水物とを有し、NFT 51016、ASTM D1238、DIN 53735およびISO 1133規格による溶融指数が100g/10分以上であるコポリマーを挙げることができる。
コポリマー(A)はエチレンと、(メタ)アクリル酸と、モノアミン化合物をグラフトした不飽和カルボン酸無水物とのコポリマーにすることもできる。
このモノアミン化合物は、例えばラウリルアミン、11-アミノウンデカン酸またはビス(ヒドロキシエチレン)アミンである。グラフトは押出機またはミキサーで実施することができ、グラフトしたモノアミン化合物のモル数は不飽和カルボン酸無水物のモル数を超えない。
コポリマー(A)はさらに、エチレン単位と、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル単位と、不飽和エポキシド単位とを有するコポリマーにすることができる。
例としては、エチレンと、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルと、グリシジル(メタ)アクリレートとのコポリマーを挙げることができる。このコポリマーは少なくとも50重量%のエチレンと、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステル単位と、10重量%までのグリシジル(メタ)アクリレートとを有するのが有利である。
本発明の組成物はポリアミドとコポリマー(A)とに加えて、EVOHおよび/またはポリビニルアルコール(PVAL)を含むことができる。EVOHとはエチレン単位と、ビニルアルコール単位と、必要に応じてさらに酢酸ビニル単位とを有するコポリマーを意味する。ビニルアルコールの量、必要に応じて加えられる酢酸ビニルの量は酢酸ビニル/ビニルアルコール比が0〜0.7で、少なくとも40重量%のEVOHとなるようにEVOHを使用するのが有利である。
重量%で40〜60%のビニルアルコールと、2%以下の酢酸ビニルとを含み、210℃、2.16kgの荷重下で2.095mmダイを用いて測定した溶融指数が5〜20g/10分であるコポリマーを使用するのが好ましい。
EVOHは例えば反応性押出により不飽和カルボン酸無水物のグラフト化によってさらに改質することができ、約160℃で押出機で無水フタル酸でグラフトすることができる。
EVOHはリン酸、亜リン酸または次亜リン酸またはホウ酸を約160℃の押出機で混合して改質することもできる。
さらに、約250℃で、強力に脱気しながら反応性押出してパラ−ヒドロキシ安息香酸をEVOHにグラフトすることもできる。
EVOHはさらにポリアミドまたはポリアミドオリゴマーでグラフトすることができる。約250℃、酸触媒下の反応性押出を使用することができる。ポリアミドはMnが5000以下で、単一の酸基を末端に有するポリアミドオリゴマーであるのが好ましい。このオリゴマーは例えばラウリン酸等のモノアシドの存在下でアミノ酸を縮合して得られる。
PVALはアルデヒド、例えばブチルアルデヒドでアセタール化して改質することもできる。
本発明はさらに、(i)少なくとも1種のポリアミドと、少なくとも1種のEVOHおよび/または改質PVALとを含み、ポリマー(A)は含まない、(ii)粉末状の組成物に関するものである。
コポリマー(A)の量と、コポリマー(A)と必要に応じて添加されるEVOHおよび/または改質または未改質PVALとの量またはポリアミドに添加されるEVOHおよび/または改質PVALの量は広範囲で変えることができる。得られる被覆の質は加えた量に応じて良くなる。
1000部のポリアミドに対して、1〜300部、好ましくは1〜175部、好ましくは3〜150部の(i)コポリマー(A)、(ii)コポリマー(A)とEVOHおよび/または改質または未改質PVALまたは(iii)EVOHおよび/または改質PVALにすれば一般に十分である。EVOHおよび/または改質または未改質PVALの量は一般にコポリマー(A)の量より少ない。
本発明組成物はポリアミドがマトリックスとなる形をしているのが好ましい。このマトリックス中に(i)コポリマー(A)の節(ノジュル)、コポリマー(A)とEVOHおよび/または改質または未改質PVALの節または(ii)EVOHおよび/または改質PVALの節が分散している。コポリマー(A)の節の直径は0.1〜0.5μmであるのが有利である。EVOHおよび/または改質または未改質PVALの節は60μm以下である。ポリアミドマトリックス中に分散した節の性質は化合物の混合物の性質および節中に存在する反応性官能基の数に応じて良くなる。
一般に、本発明粉末の粒径は5μm〜1mmにすることができる。
本発明粉末組成物を製造する第1の方法は、(i)コポリマー(A)または(ii)コポリマー(A)とEVOHおよび/または改質または未改質PVALまたは(iii)EVOHとポリアミドで改質したPVALを適当な形式の混練機で溶融状態で混練する方法である。混練温度は150〜300℃、好ましくは180〜230℃にすることができる。
マスター混合物または最終生成物を製造することができる。最終生成物は一般的な方法で被覆用に望ましい粒径に粉砕される。この操作は噴霧法または析出法で行うことができる。
ポリアミドマトリックス中にコポリマー(A)、必要に応じてそれにさらにEVOHおよび/または改質または未改質PVALを加えたものまたはEVOHおよび/または改質PVALを良く予備分散させるマスター混合物は、上記の方法で新しいポリアミドに配合することができる。
本発明粉末組成物を製造する第2の方法は、(i)コポリマー(A)または(ii)コポリマー(A)とEVOHおよび/または改質または未改質PVALまたは(iii)EVOHおよび/または改質PVALの存在下で、ポリアミドモノマーを(共)重縮合する方法である。そのためには、コポリマー(A)、必要に応じてさらにEVOHおよび/またはPVALまたはEVOHおよび/または改質PVALをポリアミドモノマーと一諸にオートクレーブに導入する。重合は一般的な方法で実施する。一般には150〜300℃、好ましくは190〜250℃で行う。
ポリアミド重縮合用の任意種類の装置を使用することができる。例としては、約50回転/分の攪拌器を備え、2MPaの圧力に耐えることができる反応器が挙げられる。重縮合時間は5〜15時間、好ましくは、4〜8時間にすることができる。重縮合操作の終了後、混合物を所望粒径に粉砕して顆粒の形にする。この操作は析出法またはアトマイゼーション法で行うことができる。
本発明の第1変形例は(i)少なくとも1種のポリアミド粉末と、少なくとも1種のエチレンと不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステルまたは飽和カルボキシルのビニルエステルから選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマー(A)の粉末とからなる組成物である。
EVOHおよび/または改質または未改質PVALをさらに添加すること、またはポリアミド粉末と、粉末状EVOHおよび/または改質PVALとを含み、粉末状コポリマー(A)を含まない混合物を使用することができる。すなわち、本発明のこの第1変形例の組成物は本発明組成物と同じものであるが、粉末の各粒子がポリアミドまたはコポリマー(A)またはEVOHおよび/またはPVALである。
粒径は本発明の第1実施例と同じである。
ポリアミド以外の成分は粒径が60μm以下であるという利点を有している。
1,000部のポリアミドに対して、(i)コポリマー(A)または(ii)コポリマー(A)とEVOHおよび/または改質または未改質PVALまたは(iii)EVOHおよび/または改質PVALの量は1〜300、好ましくは3〜150部である。
この粉末混合物は、各成分または既に述べた微細な粉末状にしたマスター混合物とポリアミド粉末とを乾燥混合して製造することができる。この乾燥混合すなわちドライブレンドは一般に特別な手段を必要とせず、周囲温度で実施できる。
本発明の第2変形例は、本発明組成物と第1変形例との間の中間体である。すなわち下記にすることができる:
(1)ポリアミドと、各粒子がポリアミドを含むコポリマー(A)と、EVOHおよび/または改質または未改質PVAL粉末と混合したコポリマー(A)との粉末、または、
(2)ポリアミドと、各粒子がポリアミドとEVOHおよび/またはPVALを含み、粉末状コポリマー(A)と混合したEVOHおよび/または改質または未改質PVALとの粉末または、
(3)他の任意の組合せ。
本発明のこの第2変形例の組成物は既に述べた方法の組合せで製造できる。
本発明組成物は他の添加剤、例えば充填剤、増量剤、アンチクレータ剤または減量剤、酸化防止剤等をさらに含むことができる。特に、
(1)ヨウ化カリウムと合わせたヨウ化銅、フェノール誘導体およびヒンダードアミン等の酸化防止剤
(2)流動化剤、
(3)強化用および核形成用の充填剤、例えばカルシウムおよび/またはマグネシウムの炭酸塩、ドロマイト(カルシウムマグネシウムの複炭酸塩)、石英、窒化ホウ素、カオリン(商品名“Frantex▲R▼”で市販)、珪灰石、二酸化チタン、バロチーニ、タルク、雲母、商品名“Plastorite”(石英、雲母および緑泥石の混合物)、“Minex(登録商標)”(カルシウム炭酸塩)で市販およびカーボンブラック、
(4)UV安定化剤、例えばレソルシノール誘導体、ベンゾトリアゾールまたはサリチレート、
(5)アンチクレータ剤または展着剤、
(6)増量剤、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化コバルト、チタン酸ニッケル、二硫化モリブデン、アルミニウムフレーク、酸化鉄、酸化亜鉛および有機増量剤、例えばフタロシアニンおよびアントラキノン誘導体。
本発明組成物には上記中から選択される添加剤を混和することができる。この添加剤の各比率は金属支持体被覆用ポリアミドベース粉末組成物の分野で一般的に用いられている範囲に維持する。一般には上記構成成分の100重量%まで混和することができる。すなわち、充填剤はポリアミドとコポリマー(A)、必要に応じてさらにEVOHおよび/またはPVALとの量、またはポリアミドとEVOHおよび/または改質PVALとの量と同じにすることがきる。
これら添加剤は任意の手段で本発明組成物に混和することができる。
これらは本発明の第1実施例の第1法または第2方法によってポリアミドに添加することができる。あるいは、本発明の第1変形例の製造時に粉末混合物に添加することができる。しかし、本発明のこの第1変形例では大量の添加剤(例えば100部のポリアミドに対して50〜100部)を添加するのは避ける。従って、これらの添加剤は本発明の第1実施例でポリアミドに混和するのが好ましい。
本発明の第2変形例から類推して、下記(1)〜(4)からなる組成物を製造することができる:
(1)(i)各粒子がポリアミドとコポリマー(A)、必要に応じてさらにEVOHおよび/またはPVALまたはポリアミドとEVOHおよび/または改質PVALとで構成される粉末と、(ii)粉末状の添加剤、
(2)(i)ポリアミドと添加剤の一部からな各粒子と、(ii)コポリマー(A)の粒子と、(iii)添加剤の粒子とを有する粉末または
(3)ポリアミド、コポリマー(A)および添加剤で構成される粉末、または
(4)他の任意の組合せ。
本発明はさらに、上記粉末組成物の金属支持体被覆での使用と、こうして被覆された支持体に関するものである。金属支持体は広範囲の製品から選択することができる。一般の鋼または亜鉛めっき鋼の製品またはアルミニウム製またはアルミニウム合金製の製品を含むことができる。金属支持体は任意の厚さにすることができる(例えば、数10mm、数十cmの厚さ)。
本発明の対象ではないが、金属支持体、特に一般の鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の金属支持体に一回または数回の表面処理を行うことができる。表面処理としては荒い脱脂、アルカリ脱脂、ブラッシング、ショットブラスチングまたはサンドブラスチング、精密脱脂、高温洗浄、リン酸塩脱脂、鉄/亜鉛/トリケーションリン酸塩処理、低温洗浄、クロム洗浄を挙げることができる。なお、これらに限定されるものではない。
本発明組成物を被覆するのに適した金属支持体の例としては脱脂鋼、平滑またはサンドブラストした鋼、リン酸塩脱脂鋼、鉄または亜鉛リン酸塩処理鋼、Sendzimir亜鉛めっき鋼、亜鉛−電気めっき鋼、浴亜鉛めっき鋼、電気泳動鋼、クロム酸塩処理鋼、陽極酸化鋼、カーボランダムサーダー仕上げ鋼、脱脂アルミニウム、平滑またはショットブラストしたアルミニウムおよびクロム酸塩処理アルミニウムが挙げられる。
本発明のポリアミドベースの組成物は粉末状で金属支持体に塗布される。粉末組成物の塗布は一般に使用される塗布方法で実施することができる。粉末の粉砕は極低温または空気強力吸入設備(羽根車、ハンマーまたはディスクミル等)で実施することができる。得られた粉末粒子は適当な設備内で分級して望ましくない粒径の画分、例えば粗粒子および/または微細粒子等を除去する。
粉末塗装法の中では静電噴霧、流動床浸漬、静電流動床(例えば特許DD 277 395およびDD 251 510に記載のもの)が挙げられ、これらは本発明の支持体の被覆に好ましい方法である。
静電噴霧ではガンに導入された粉末を圧縮空気で輸送し、高圧、一般には約10〜約100キロボルトのノズルを通す。印加する電圧の極性は陽性または陰性にすることができる。ガン内の粉末流量は一般に10〜200g/分、好ましくは50〜120g/分である。ノズルの通過時に、粉末は静電気で電荷される。圧縮空気で運搬された粉末粒子は被覆すべき金属表面上に塗布される。表面自体は接地すなわちゼロ電位に接続される。粉末粒子はこの表面に静電気によって保持される。この力は、被覆すべき対象を粉末処理し、移動させ、次いでオーブン内で粉末が溶融する温度に加熱するのに十分な大きさである。
本発明のポリアミドベースの組成物の静電噴霧は任意の印加極性で塗装できるという利点がある。これは特に一方の極性のみを使用する既存の粉末の静電噴霧被覆用標準的工業設備を使用することができるという点で有利である。この場合、金属支持体は表面調製する。
静電噴霧では、1000部のポリアミドに対するポリマー(A)の比率、必要に応じてさらに用いられるEVOHおよび/またはPVALの比率または1000部のポリアミドに対するEVOHおよび/または改質PVALの比率は3〜150であるのが有利である。
一般に、平均粒径5〜100μm、好ましくは、20〜80μmの粉末を使用することができる。被覆厚さは80〜140μmにするのが好ましい。
流動床浸漬法の場合は、被覆すべき金属支持体に例えば一回または数回の表面処理を行ない、オーブン内で所定温度に加熱する。この温度は支持体の種類、形、厚さおよび所望の被覆厚さに従って決定する。こうして加熱された支持体を本発明粉末組成物中に浸漬し、底に孔を有する槽内で気体の循環で懸濁状態に維持する。溶融金属表面に接触した粉末は溶融し、塗膜が形成される。この厚さは支持体の温度および粉末の浸漬時間によって決まる。
この流動床浸漬では、1000部のポリアミドに対するコポリマー(A)、必要に応じてさらに添加されるEVOHおよび/またはPVALの好ましい比率、または1000部のポリアミドに対するEVOHおよび/または改質PVALの好ましい比率は3〜150であるのが有利である。流動床に用いる粉末の粒径は10〜1000μm、好ましくは40〜160μmにすることができる。一般に、被覆の厚さは150〜1000μm、好ましくは350〜450μmにする。
本発明粉末の塗布前に、脱脂した金属支持体に接着プライマーを塗布しても本発明範囲から逸脱するものではない。
本発明はさらに、金属支持体と本発明の粉末組成物からなる被覆を有する複合材料に関するものである。本発明はさらに、上記材料および被覆形成用に溶融される粉末層に関するものである。
実施例
(1)実施例で使用したは化合物:
PA-11:塗布前の分子量Mnが9000〜15000のポリアミド11(実施例6のPA-11を除く)。
ターポリマー1/:エチレン単位と、6重量%のエチルアクリレート単位と、3重量%の無水マレイン酸単位とを有するコポリマー。溶融指数はNFT 51016で200g/10分である。商品名Lotader(登録商標)8200で市販。
ターポリマー5/:44モル%のエチレン単位、ビニルアルコール単位を有し、210℃、2.16kgの荷重下で2.095mmダイを用いて測定した溶融指数が12g/10分であるコポリマー。商品名Soarnol(登録商標)Aで市販。
ターポリマー6/:5%の無水フタル酸でグラフトしたターポリマー5/(ターポリマー6/の重量%で表記)。
ターポリマー8/:10%のパラ−ヒドロキシ安息香酸でグラフトしたターポリマー5/(ターポリマー8/の重量%で表記)。
ターポリマー7/:下記操作で次亜リン酸を用いて改質したターポリマー5/:ターポリマー5/を粗砕し、次いで50重量%濃度の次亜リン酸水溶液に浸漬する。次いで、全体を50℃のオーブン内に3日間置き、洗浄・排水後、50℃の真空下で顆粒を乾燥し、次いで粉砕。
ターポリマー9/:約160℃、「ブラベンダー」ミキサーで、ラウリン酸を用いて制限したMn1500の40重量%のポリアミド11オリゴマーでグラフトした80重量%のターポリマー5/と20重量%のターポリマー5/の混合物。
ターポリマー10/:アルデヒドでアセタール化して反応させたPVAL型のターポリマー。動的粘度は20℃、6%濃度のメタノール溶液でDIN規格53015で測定して4〜6mPa sで、軟化範囲はDIN ISO規格426で測定して150〜170℃である。商品名Mowital(登録商標)B30Tで市販。
ターポリマー11/:アルデヒドでアセタール化させたPVAL型のターポリマー。動的粘度は20℃、6%濃度のメタノール溶液でDIN規格53015で測定して15〜20mPa sで、軟化範囲はDIN ISO規格426で測定して、185〜210℃である。商品名Mowital(登録商標)B 60 Tで市販。
(2)耐食作用
プライマーを用いない直接塗布
2.1 純粋なPA-11およびターポリマー1/の実施例と、混合物の実施例
塗布前の粉末の配合および特性
表2.1は、純粋な化合物(2.1および2.2)の組成と、ブレンダーで190〜210℃、滞留時間約30秒で混合した混合物2.3の組成を示している。比率は重量部を表す(すなわち、5重量部は1000gのPA-11中に5gの意味)。化合物2.2は極低温で粉砕し、次いで200μmで分級した。
化合物2.1および2.3は粉砕後、一方は静電塗装、他方は浸漬塗装用の一般的粒径の粉末にした。
粉末2.3は塗布前の状態でターポリマー1/の節を含むポリアミドマトリックスで構成され、節の径は基本的に0.1〜0.5μmである。
Figure 0003991285
塗布
全ての支持体を塗布前に脱脂した。
塗布条件は表2.2に示してある。
Figure 0003991285
得られた塗膜は周囲温度で放冷した。静電塗装で得られた塗膜の厚さは110±20μmであり、浸漬塗装では400±50μmであった。
評価
塗膜と鋼板との集合体をNF規格X41 002で塩水の霧で評価した。塗膜を金属まで対角線(crois de Saint Andre)に沿って切り込みを入れ、腐食を成長させ、断面を肉眼て観察した。完全な腐食は35mmの成長に相当する。
表2.3は塩霧に250時間曝した後に得られた結果を示す。
Figure 0003991285
2.2 PA-11とターポリマー1/とを配合した実施例
塗布前の粉末の配合および特性
表2.4はブレンダーで190〜210℃、滞留時間約30秒で混合した混合物の組成を示している。これらは純粋(そのまま)のPA-11または白色PA-11を主成分としている。PA-11は100重量部の白色増量剤で着色した。
Figure 0003991285
化合物を粉砕し、静電塗装用と浸漬塗装用の一般的な粒径の粉末にした。
塗布前の粉末はターポリマー1/の節を含むポリアミドマトリックスで構成されている。節の径は基本的に0.1〜0.5μmである。
塗布
全ての支持体を塗布前に脱脂およびショットブラストした。静電塗装および浸漬塗装の条件は化合物2.3の場合の表2.2に示したものにした。
評価
塗膜と鋼板とを合わせた集合体をNF規格X41 002で塩水の霧を用いて評価した。塗膜には金属に達する切目を対角線状に入れ、腐食の成長を断面で肉眼で監査した。完全な腐食は35mmの成長に相当する。表2.5は塩霧に2000時間曝した後に得られた結果(腐食厚さ:単位mm)を示している。
Figure 0003991285
(3)ターポリマー5/をグラフトすると、未改質ターポリマー5/で得られる接着性より接着性が高くなる
プライマーを用いない直接塗布
塗布前の粉末の配合および特性
表3.1はブレンダーで190〜210℃、滞留時間約30秒で製造した混合物の組成物を示している。これらは純粋な(もとのままの)PA-11を主成分としている。
比率は重量部で表してある(すなわち、5重量部は1000gのPA-11中に5gの意味)。
得られた化合物は粉砕して浸漬塗装用の一般的粒径の粉末にした。それによって得られた化合物は、塗布前の状態で、ターポリマー5/〜8/が60μm以下の寸法の節の形でポリアミドマトリックス中に存在している。
Figure 0003991285
塗布
支持体を脱脂してショットブラスト鋼にした。浸漬塗装の他の条件は化合物2.3の場合の表2.2と同じにした。
評価
塗布後、1日後、接着性をNF規格T 58-112で評価した。得られた接着性を下記0〜4の点数で評価した:
4級:塗膜を金属から分離できない
3級:塗膜は不規則に離れ、少なくとも50%の表面で結合は完全である
2級:塗膜は不規則に離れ、引裂きに必要な力は大きく、材料の強度限度にある
1級:塗膜は表面から容易に分離し、結合は弱い
0級:材料は表面に全く結合していない。
特性が上記の級の中間の場合には0.5、1.5等の点数で表した。
結果
結果は表3.2に示した:
Figure 0003991285
(4)EVOHの接着性促進剤および維持剤としての効果:相乗効果
プライマーを用いない直接塗布
塗布前の粉末の配合および特性
表4.1はブレンダーで190〜210℃、滞留時間約30秒で混合した混合物の組成を示している。これらは純粋な(未加工)のPA-11を主成分としている。
この実施例ではターポリマー1/とターポリマー5(または誘導体)とを組み合わせて改質したものである。
比率は重量部で表わした(すなわち、5重量部は1000gのPA-11中に5gの意味)。
化合物は粉砕して浸漬塗装用の一般的粒径の粉末にした。得られた粉末は、塗布前の状態で、ターポリマー1/の節を含むポリアミドマトリックスで構成されている。この節の径は基本的に0.1〜0.5μmである。
粉末がターポリマー5/〜10/の1つをさらに含む場合は、これらは基本的に60μm以下の節の形でポリアミドマトリックス中に存在する。
Figure 0003991285
塗布
支持体を脱脂しショットブラスト鋼にした。浸漬塗装の他の条件は化合物2.3の場合の表2.2に示したものにした。
評価
塩霧試験前に支持体に対する塗膜の初期接着性を測定し、この試験(第2/部参照)の1000時間後に再度接着性を測定した。接着性の評価は鋼板の両側を被覆した塗膜で切目を入れてていない部分に対して3/と同様に行った。
結果
結果は表4.2に示してある:
Figure 0003991285
下記実施例は純粋化合物を配合して得らる改良である。
塗布前の粉末の配合および特性
表4.3はブレンダーで190〜210℃、滞留時間約30秒で混合した混合物の組成を示している。
Figure 0003991285
塗布および評価
塗布条件は実施例2.2と同じにした。評価は実施例4.1に記載の方法と同じ方法を用いた。
結果
結果は表4.4に示した。この表は特性の配合の重要性を示している。
Figure 0003991285
下記実施例は純粋な化合物とターポリマー5/、ターポリマー6/のグラフト誘導体とを配合して得られる改良を示す。
塗布前の粉末の配合および特性
表4.5はブレンダーで190〜210℃、滞留時間約30秒で混合した混合物の組成を示している。
Figure 0003991285
塗布および評価
塗布条件は実施例2.2と同じにした。評価は実施例4.3に記載の方法と同じ方法を用いた。
結果
結果は表4.6に示してある。この結果は配合の重要性および塩霧での被覆の耐老化性におけるEVOHのグラフトの重要性を示している。
Figure 0003991285
(5)コポリマー(A)をドライブレンドまたはバルクで添加した場合のES自己塗布特性(EVOHの添加有り無し)
プライマーを用いない直接塗布
実施例 5.1: ターポリマー1/をドライブレンドで添加した場合の自己塗布特性
塗布前の粉末の配合および特性
1.5kgの固有粘度が0.9のPA-11粉末と、7,5gの粒径が60μm以下のターポリマー1/粉末(すなわち5重量部)をヘンシェル型の高速混練機に入れた。
PA-11は増量剤を含まない(純粋配合物)か、23重量%の白色増量剤(白色配合物)を含む。各配合物は約2重量%の展着剤および酸化防止添加剤を含む。
各混合物を1800回転/分の速度で100秒間混練した。得られた粉末をそのまま使用した。この場合、ポリマー添加粉末は塗布前に粉末と混合されるため、粉末の多相組織についていうことはできないが、最終塗膜ムはドライブレンドとして添加した同じ化合物の粉末の粒径に近い寸法のターポリマー1/の節を含む組織を有している。
塗布
得られた粉末を周囲温度で静電塗装で鋼板に塗布した。鋼板は予め脱脂した後、機械的または化学的表面処理(ショットブラスト、リン酸処理、下表5.1参照)した。塗布時の金属表面はゼロ電位にした。
粉末が付着した鋼板を220℃に維持された換気オーブンに直ちに入れ、そこに5分間維持した後、オーブンから取り出して空冷した。
評価
得られた塗膜はベーキング中に粉末の脱離が生じていないかを検査した。これはポリアミドで被覆されていない金属の広い領域が存在することで示され、下記基準で0〜4の等級を付けた:
0級:板には全く被覆がなく、全ての被覆がオーブン内で落ちた。
1級:少なくとも半分の被覆が溶融中に落ち、裸の金属板が出た。
2級:被覆の脱離が数点存在(一般には板の端縁部およびコーナーに存在)する。
3級:脱離が全くない。湿り欠陥:泡、、クレータ等は存在。
4級:被覆は伸び、湿り欠陥または展着欠陥は全く見られない。
結果
表5.1〜5.4はPA-11ベースの各種粉末および塗布条件に対する結果を示している。
Figure 0003991285
Figure 0003991285
Figure 0003991285
Figure 0003991285
実施例5.2
ターポリマー1/をバルクで添加した場合の自己塗布特性
この実施例のターポリマー1/はバルクでポリアミドと混合した。
塗布前の粉末の配合および特性
表5.5はブレンダーで190〜210℃、滞留時間約30秒で混合した組成を示している。得られた化合物を粉砕して、静電塗装用の一般的粒径の粉末を得た。
1つの純粋粉末、1つの白色粉末および1つの灰色粉末を例として示した。
白色粉末は10重量部の白色増量剤を含み、灰色粉末は約19重量部の増量剤と9重量部の展着剤と酸化防止剤とを含む。
比率は重量部で表してある(すなわち、5重量部は1000gのPA-11中に5gの意味)。
得られた粉末の組織は実施例の3/の部に記載した粉末の組織と同じであった。
Figure 0003991285
塗布および評価
これは実施例5.1と同じにした。
静電噴霧塗装は予めショットブラストおよび脱脂した100×100×1mmの鋼板で行った。
結果
結果は表5.6に示してある。
Figure 0003991285
(6)耐熱水性、試験2733
プライマーを用いた塗布
塗布前の粉末の配合および特性
表6.1はブレンダーで190〜210℃、滞留時間約30秒で混合した調製物の組成を示している。得られた化合物は粉砕し、浸漬塗装用の一般的粒径の粉末にした。
比率は重量部で表してある(すなわち、5重量部は1000gのPA-11中に5gの意味)。GPCで測定したPA-11の数平均分子量Mnは20000g/mol。
Figure 0003991285
塗布
金属支持体(寸法100×100×3mm)をショットブラスト、脱脂してエルフアトケム(Elf Atochem)から商品名“Rilprim P23V40”で市販のフェノール系エポキシプライマーを予備被覆した。このプライマーは厚さ約20μmである。次いで、300℃で10分間予備加熱した後、粉末を浸漬塗装した。浸漬は全体で4〜8秒続け、流動床から出た物品は5分間、220℃でベーキングした後、空冷した。得られた被覆の厚さは約400±50μmであった。
評価
こうして被覆された鋼板をISO規格2733で試験した。
鋼板を試験の500時間後および1000時間後に検査した。結果は表6.2に示してある。
Figure 0003991285

Claims (4)

  1. 溶融点が130〜270℃である少なくとも1種のポリアミドと、少なくとも1種のエチレンと不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステルおよび飽和カルボン酸ビニルエステルの中から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマー(A)とから成る粉末の組成物であって、
    上記コポリマー(A)が(i)エチレンと(ii)(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルと(iii)不飽和カルボン酸無水物とのコポリマーであり且つこのコポリマー(A)にはモノアミン化合物がグラフトされており、組成物の粒径が5μm〜1mmである粉末の組成物を使用することを特徴とする、粉末組成物を基材上で溶融して基材を被覆する方法。
  2. 上記組成物がEVOHおよび/またはポリビニルアルコール(PVAL)をさらに含む請求項に記載の方法。
  3. 上記組成物がEVOHおよび/または改質されたポリビニルアルコール(PVAL)をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
  4. 上記組成物が充填剤、増量剤、酸化防止剤、その他の添加剤をさらに含む請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
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