JP3990574B2 - ハイドロフォ−ム加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は主に自動車用部品等の製造に用いられる部品を製造するためのハイドロフォ−ム加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年,ハイドロフォ−ム技術は,部品数削減やコスト低減,軽量化の手段のひとつとして自動車分野で注目されており,一部の部品については数年前より量産車への採用がはじまっている。自動車用部品では主にエンジンクレ−ドルやサスペンションメンバ−,ピラ−といった部品の加工にハイドロフォ−ム技術が既に適用されている。ハイドロフォ−ムは鋼管やアルミニウム管等の管を金型に収容し,管内に内圧をかけると同時に管端部を管軸方向に押し込みつつ所定の形状に加工する方法である。
【0003】
図5に従来のハイドロフォ−ム加工工程の上面断面図を示す。図5(イ)は管1を成形金型2にセットした状態であり,左右には軸押し用シリンダヘッド3,4が設置され,軸押し用シリンダヘッド3、4には管内に液を導入できるように作動流体注入用流路5が設けられている。また,成形金型2には加工により管1が変形していくための膨張部6が設けられている。
【0004】
図5(ロ)は管1が加工されている状態を示しているが,両側から軸押し用シリンダヘッド3、4を管軸方向に押し込むとともに,管に作動流体注入用流路5を通じて高圧流体を注入し圧力を発生させる。管1はこれらの作用により膨らみ,成形金型2内の膨張部6に充満し,所定の形状に加工され成形品7を得る。ハイドロフォ−ム加工では管軸方向の押し込みは軸押し用シリンダヘッド3、4に直結した軸押し用シリンダによってなされ,軸押し用シリンダの制御により管軸方向の押し込み量を自由に設定可能である。高圧流体は増圧機から高圧ホ−スを通して軸押し用シリンダヘッドに供給され,圧力センサによる検知信号を用いて増圧機を制御することで管内に発生する圧力を制御できる機構になっている。
【0005】
ハイドロフォ−ム用金型において,金型の1部を可動にした金型構造を適用した例としては,例えば特開平11−19729号公報に開示されているような膨張空間に座屈防止ブロックを設けて加工する方法や特開2001−9528号公報に開示されているような金型の一部を管に押し込んで変形させた後に元の位置に戻す方法がある。
特開平11−19729号公報に記載されている可動金型は座屈を防止するためのみに用いられるものであり,また,特開2001−9528号公報に記載されている金型可動部は鋼管を押し込んで変形するためのみに用いられるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したようにハイドロフォ−ム加工の基本的加工原理は,管に内圧を加えて膨出し,型内に充満させて成形することにあり,材料はこの膨出によって延伸するが,この延伸量は管の変形特性に依存し,材料によって定められる一定値を超えることはできない。
このため,(1)式に示す拡管率Rの最大値が2.0以上の鋼管を用いた部品へのハイドロフォ−ム技術の適用は難しく,実車への適用もなされていない。
拡管率R=L/L・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
L…成形後の断面の周長(mm)
…素管の周長(mm)
鋼管を用いた最大の拡管率が2.0以上の形状を有する部品については,素管に中間の径の管を用い,管材の両端を絞って径を細めるとともに中央部を液圧で膨出することで拡管率2.0以上の部品の加工に成功した例もある(チュ−ブフォ−ミング,コロナ社,p.222)。
しかし,この方法は管材の両端を絞る工程が余分にいるだけでなく,液圧成形を2工程に分け,工程間での中間焼きなまし処理が必要となり,コスト的にかなり不利であり,量産加工として見た場合に現実的ではないと考えられる。
【0007】
以上のように,鋼管で大きな拡管率を有する部品を成形しようとすると従来技術によるハイドロフォ−ム加工では多大な費用と時間を要することになり,拡管率が2.0以上の量産部品にハイドロフォ−ム技術が適用された例はなく,ハイドロフォ−ム技術の量産部品への適用拡大を制限する1つの原因となっている。これらは従来技術における大きな問題点といえる。
本発明は管端の絞り工程や中間焼きなまし処理を必要とせずに,大きな拡管率を有する部品を1工程で得られるハイドロフォ−ム加工方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
係る課題を解決するため、本発明の主旨とするところは以下のとおりである。
管を金型内に収容し,管内に内圧をかけて管端部を管軸方向に押し込みつつ所定の形状に加工するハイドロフォ−ム加工方法において,成形中に管との接触が可能で、成形終了時には成形金型の内壁面と同一面になるような可動金型を用いて、(1)式に示す拡管率Rが2.0以上の部位を成形中から成形終了まで、同一断面内で両側から可動金型で支持することを特徴とするハイドロフォ−ム加工方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1〜4は本発明の加工装置を適用した場合の加工方法を示す上面断面図であるが,この例を用いて本発明の詳細を説明する。
本ハイドロフォ−ム加工方法に用いる金型構成は図1に示すように,管1を収容する成形金型2と管1に対し内部に高圧流体を供給するとともに,両端部を軸方向から押し込む左右一対の軸押し用シリンダヘッド3、4とを備える点は,前記図5に示した従来例と同様であるが,従来構成に対し,成形金型2の拡管部近傍に成形時に管のバ−ストを防止するための可動金型8、9を同一断面内の両側に設けている。
【0010】
この可動金型8,9は,管1がバ−ストすると想定される位置に配置されており,管1が膨張空間にて膨張して成形されていく初期または途中の段階から膨張中の管に接触しながら,管1の膨張に応じて同一断面内の両側に移動できるように構成されており,スライドが終了した状態では成形金型の内壁面と可動金型の内壁面が同一面になるように位置決めされている。可動金型8、9が設置される側の成形金型2には可動金型8、9をスライドさせる可動金型用シリンダ10、11が設けられており,成形過程に負荷される内圧により受ける荷重以上の支持が可能になっている。可動金型用シリンダ10、11は制御装置により任意に制御が可能となっており,任意のパタ−ンで可動金型8、9を制御することが可能である。
【0011】
次に,上記したハイドロフォ−ム加工方法の工程を図1〜4に従って説明する。
図1は成形金型2に管1をセットした状態である。この時点では可動金型8、9は管1と接触しない初期位置に待避している。
図2は作動流体注入用流路を介して作動流体を管1に流し込み、管1に内側から圧力を負荷することによって管1が膨張しはじめた状態である。このときは,可動金型8、9が同一断面内で両側から管1に接触する位置に配置されている。
図3は更に管が変形している状態である。図4は拡管成形の最終状態である。最終状態では可動金型8、9のスライドが終了し初期位置に戻るが,その状態では成形金型2の内壁面と可動金型8、9の内壁面が同一面になる可動金型が接触している領域では、材料が摩擦力で保持されているのでバーストする事はなく,ハイドロフォ−ム加工が完了する。
【0012】
このように,管が拡管されていく過程でバ−ストが発生する位置に,成形途中で素材と接触する可動金型を設けることで,成形途中でのバ−ストを防止でき,拡管率の大きい部品のハイドロフォ−ム加工も容易に成形することが可能になると共に,可動金型を任意に制御する事により,種種形状の部品にも適用が可能である。
【0013】
(実施例)
図1に本発明の実施例を示す。外径85mm×板厚4.2mmの機械構造用鋼管を用いて最大の拡管率2.4を有する部品をハイドロフォ−ム加工した。
本発明例として,可動金型8、9を張り出し鋼管1に接触させ(図2),鋼管1の変形量が大きくなっても可動金型8、9が同一断面内で両側から接触するように可動金型8、9をシリンダにより制御し(図3),拡管の最終状態では成形金型2の内壁面と可動金型8、9の内壁面が同一面になるようにし(図4),この状態で必要最大内圧を付加した。
比較例として、図6に示すように,通常金型に鋼管1をセットし(図6(イ))、管に内圧を加えながら軸押しを負荷し(図6(ロ)),鋼管1の変形量が大きくなるまで内圧と軸押しを加えた(図6(ハ))。
図6に示す従来法では内圧が必要最大内圧の約2/5程度で図7に示す最大拡管位置でバ−ストを起こすが,図1の本発明例では内圧を必要最大まで負荷でき,最終形状まで加工することができた。
【0014】
【発明の効果】
本発明により、管端の絞り工程や中間焼きなまし処理を必要とせずに,拡管率2.0以上の部品のハイドロフォ−ム加工も容易に行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のハイドロフォ−ム加工方法において成形金型に管をセットした状態上面断面図である。
【図2】本発明のハイドロフォ−ム加工方法において作動流体を管に流し込み、管に内側から圧力を負荷することによって管が膨張しはじめた状態の上面断面図である。
【図3】本発明のハイドロフォ−ム加工方法において更に管が変形した状態を示す上面断面図である。
【図4】本発明のハイドロフォ−ム加工方法において拡管成形の最終状態を示す上面断面図である。
【図5】従来のハイドロフォ−ム加工方法の一例を示す上面断面図である。
【図6】従来のハイドロフォ−ム加工方法において最大拡管率2.4を有する部品の加工工程を説明するための上面断面図である。
【図7】図6のハイドロフォ−ム加工方法において,成形途中で加工不良が発生している状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 素管
2 成形金型
3,4 軸押し用シリンダヘッド
5 作動流体注入用流路
6 膨張部
7 成形品
8,9 可動金型
10,11 可動金型用シリンダ
12 バ−スト部

Claims (1)

  1. 管を金型内に収容し,管内に内圧をかけて管端部を管軸方向に押し込みつつ所定の形状に加工するハイドロフォ−ム加工方法において,成形中に管との接触が可能で、成形終了時には成形金型の内壁面と同一面になるような可動金型を用いて、(1)式に示す拡管率Rが2.0以上の部位を成形中から成形終了まで、同一断面内で両側から可動金型で支持することを特徴とするハイドロフォ−ム加工方法。
    拡管率R=L/L0・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
    L・・・成形後の断面の周長(mm)
    L0・・・素管の周長(mm)
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