JP3990523B2 - 反射鏡のための基礎曲面を評価する方法、反射鏡のための基礎曲面を評価する評価システム、および記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する方法、反射鏡のための基礎曲面を評価する評価システム、および車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面の評価をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用灯具は、光源と、この光源からの光から略平行な光を得るための反射鏡と、反射鏡の前方に配置されたレンズとを備えている。
【0003】
このような車両用灯具が組み込まれている車両には、近年、車両のデザイン性を高めるために様々な形状が適用されている。このため、車両用灯具にも、車両に内蔵されるために設けられた収容空間および車両の外形といった条件から生じる形状の制約、つまり所望にデザイン性を確保しながら所定の空間内に配置可能であるという要求が課される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
車両用灯具の開発においては、このような要求を考慮しながら反射鏡の形状を決定する必要がある。このために車両用灯具の反射鏡は、所望の反射機能を得るために回転放物面または多重放物面といった形状の反射面を有している。
【0005】
このような灯具には、近年、所望の占有容積に収まるという形状制約条件を達成すると共に、従来にも増して優れた光学的性能を達成するという性能制約条件も要求されるようになってきた。これらの要求を達成するために、以下のような構成を採用している。(1)反射鏡を複数の反射面から構成するようにした。(2)反射面を決定するに当たり、形状制約条件を満たすように基礎曲面を求め、この基礎曲面上に複数の反射面を配置して反射鏡を形成するようにした。
【0006】
発明者は、このような反射鏡の設計について検討した結果、車両用灯具において形状制約条件からの要求を満足しつつ、光学的性能からの要求の達成度が向上された反射鏡を提供しようとする際に生じる以下の問題点を発見した。反射鏡の光学的性能は、▲1▼基礎曲面の形状に起因する性能と、▲2▼複数の反射面の各々に関する形状および配置に係わる性能とに分離されることを見出した。これらの反射鏡の光学的性能は、反射鏡の設計が所定の段階まで進んでから評価される。
【0007】
分離された2つの性能に関してさらに検討を続けた結果、これらの性能には次のような特徴があることを見出した。性能▲2▼は、個々の反射面の形状および配置が決定されるまで光学的性能の評価を行うことはできない。しかしながら、性能▲1▼は、基礎曲面が決定された後であればその評価を行うことができる。
【0008】
つまり、性能▲1▼に係わる評価を行う適切な手法があれば、反射鏡の設計における無用な繰り返しがなくなる。また、灯具が占有できる空間がそれぞれ灯具毎に様々な形状を有しているので、基礎曲面も設計される灯具ごとに異なる。このため、このような手法を用いて設計の早期において基礎曲面の光学的性能を評価することができれば、より好ましい光学的特性を得るために適切なフィードバックをこの設計段階においてかけることができるであろう。
【0009】
上記の検討の結果、以下のことが明らかにされた。設計者の経験に依存する基礎曲面の設計を補助するツールが望まれている。また、光学的性能を所定の設計段階において評価することが望まれている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する方法、反射鏡のための基礎曲面を評価する評価システム、および車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面の評価をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
基礎曲面の光学的な性能の評価に適用可能な評価方法および評価システムについて検討を重ねた。本発明を以下のように構成することとした。本発明は、以下に記述されるように、基礎曲面を評価する方法、評価システム、およびプログラムを記録した記憶媒体といったそれぞれの側面から捉えることができる。
【0012】
本発明は、複数の反射面を有し車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する方法であって、下記のステップは、前記基礎曲面の形状に起因する光学的性能を評価するための評価情報を提供する評価システムによって行われるものである。この方法は、(a)光源に関する入力された光源情報および前記基礎曲面を示す入力された設計情報をメモリに格納するステップと、(b)前記反射鏡によって前記光源からの光が反射されるべき方向に沿って伸び前記光源情報に含まれる光源位置を通過する軸に交差する一または複数の平面と前記基礎曲面との両方に含まれる一または複数の閉曲線を表す閉曲線データを表示デバイスに送出し、前記表示デバイスが閉曲線データを表示するステップと、を備えている。前記ステップ ( b ) では、前記基礎曲面に対応するデータを前記表示デバイスに送出するステップを有し、前記表示デバイスは、前記設計情報によって規定され前記基礎曲面を示す表示データと前記閉曲線データとを重ねて表示する。
【0013】
このような方法を実現するコンピュータプログラムは、ステップ(a)を実現するように設けられた第1の入力処理と、ステップ(b)を実現するように設けられた表示処理とを含む。このプログラムは、車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面の評価をコンピュータに実行させることを可能にする。このプログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。
【0014】
本発明は、複数の反射面を有し車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する評価システムであって、当該評価システムは、基礎曲面の形状に起因する光学的性能を評価するための評価情報を提供するものである。この評価システムは、(1)メモリと、(2)表示デバイスと、(3)基礎曲面を示す入力された設計情報および光源に関する入力された光源情報を前記メモリに配置するための手段と、(4)反射鏡によって光源からの光が反射されるべき方向に沿って伸び光源情報に含まれる光源位置を通過する軸に交差する一または複数の平面と、基礎曲面との両方に含まれる一または複数の閉曲線を表す閉曲線データを表示デバイスへ送出するための第1の送出手段とを備えている。評価システムは、基礎曲面に対応するデータを表示デバイスに送出するための第2の送出手段を更に備える。基礎曲面を示す表示データと閉曲線データとは、表示デバイスにおいて重ねて表示される。
【0015】
所定の軸に交差する平面と基礎曲面との両方に含まれる曲線は、その平面との交差位置における基礎曲面の形状を示している。この形状を表示すれば、所定の軸の方向に関する基礎曲面の形状に対する評価情報が提供される。
【0016】
本発明の車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する方法では、(c)所定の軸に交差する一または複数の平面を示す平面データを生成するステップと、(d)設計情報および平面データに基づいて、生成された平面と基礎曲面との交差線を求めこの交差線から閉曲線データを生成するステップと、を更に備えることができる。
【0017】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録されたプログラムは、ステップ(c)を実現するように設けられた平面生成処理と、ステップ(d)を実現するように設けられた交差線生成処理と、を更に備えることができる。
【0018】
本発明に係わる車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する評価システムでは、(5)所定の軸に交差する一または複数の平面を示す平面データを生成するための平面生成手段と、(6)設計情報および平面データに基づいて、一または複数の平面と基礎曲面との交差線を求めこの交差線から閉曲線データを生成するための交線生成手段と、を備えることができる。
【0019】
一または複数の平面データを生成し、この一または複数の平面データと基礎曲線との交差線を求めれば、閉曲線データを得ることができる。
【0020】
本発明に係る方法は、(e)一または複数の平面の間隔および面数の少なくともいずれかを規定する平面情報をメモリに格納するステップを更に備えることができる。この平面データは、平面情報によって規定される面間隔および面数で設けられ上記軸に垂直な平面を提供するように規定されている。
【0021】
記憶媒体に記録されたプログラムは、ステップ(e)を実現するように設けられた第2の入力処理を更に備えることができる。
【0022】
本発明に係るシステムは、一または複数の平面の面間隔および面数の少なくともいずれかを規定する平面情報をメモリに格納するための第2の入力手段、を更に備えることができる。
【0023】
生成されるべき平面の面間隔を規定すれば、基礎曲面の概形を把握するための交差線のピッチを指定することができ、また面数を規定すれば、基礎曲面の概形を把握するための交差線の数を指定することができる。これによって、基礎曲面の概形を把握するために必要なパラメータを指定することができる。例えば、複数の平面は互いに平行になるように生成されることができる。これによって生成される閉曲線データは、等高線に類似した手法で基礎曲面の概形を示すことができる。
【0024】
本発明の車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する方法では、(f)閉曲線データの表示を表示デバイスから消去するステップを備えることができる。また、本発明の車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する方法では、ステップ(b)、ステップ(c)、ステップ(d)、ステップ(e)、およびステップ(f)をループするステップ(g)を更に備えることができる。
【0025】
記憶媒体に記録されたプログラムは、ステップ(f)を実現するように設けられた消去処理を更に備えることができる。また、記憶媒体に記録されたプログラムは、ステップ(g)を実現するように設けられた繰り返し処理を更に備えることができる。
【0026】
本発明に係わる車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する評価システムでは、(8)閉曲線データの表示を表示デバイスから消去するための消去手段を更に備えることができる。
【0027】
閉曲線データを消去し、この後に、再び別個に求められた閉曲線データを表示することができる。これによって、基礎曲面の概形を繰り返して評価することができる。
【0028】
本発明の車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する方法では、ステップ(b)では、設計情報に基づいて表示された基礎曲面に重ねて閉曲線データを表示するステップを有することができる。
【0029】
記憶媒体に記録されたプログラムは、表示処理では、設計情報によって規定され基礎曲面を示す表示データに重ねて閉曲線データを表示する処理を有することができる。
【0030】
本発明に係わる車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する評価システムは、(h)設計情報に含まれ基礎曲面に対応するデータを表示デバイスに送出するための第2の送出手段、を更に備えることができる。
【0031】
基礎曲面を示す表示データに重ねて閉曲線データを表示すれば、閉曲線データを基礎曲面と関連づけながら把握することができる。
【0032】
本発明に係わる車両用灯具に利用される反射鏡のための基礎曲面を設計する方法は、(i)反射鏡が占有可能な空間を規定する形状制約条件および車両用灯具に含まれる光源の位置制約条件に基づいて、反射鏡を規定するための基礎曲面を求める第1のステップと、(ii)光源からの光が反射鏡によって反射されるべき方向に沿って伸び光源が配置されるべき位置を通過する軸に交差する一または複数の平面と基礎曲面との両方に含まれる一または複数の閉曲線を表す閉曲線データを表示デバイスに表示する第2のステップと、(iii)表示された閉曲線データに基づいて、基礎曲面の反射性能の評価を行う第3のステップと、を備えることができる。
【0033】
閉曲線を表示すれば、基礎曲面の概形を把握することができる。これよって、基礎曲面の反射性能を全体的にわたって評価することができる。この評価は、基礎曲面が当該車両用灯具への利用に適切であるか否かに関して行われる。
【0034】
本発明に係わる車両用灯具に利用される反射鏡のための基礎曲面を設計する方法は、(iv)基礎曲面が当該車両用灯具への利用に適切ではないという評価に基づいて、第1のステップから第3のステップを実行する第4のステップを更に備えることができる。この評価方法によって、基礎曲面の反射性能を所定のレベルに近づけるための手順が提供される。
【0035】
本発明に係わる車両用灯具に利用される反射鏡のための基礎曲面を設計する方法では、複数の平面は第1の間隔で配置されるように設けられていることができる。これによって、基礎曲面の形状が、等間隔で表示された閉曲線データによって全体的に把握されることができる。
【0036】
本発明に係わる車両用灯具に利用される反射鏡のための基礎曲面を設計する方法は、(v)閉曲線データの表示を表示デバイスから消去する第5のステップと、(vi)第1の間隔より小さい第2の間隔で配置され所定の軸に交差する複数の平面を示す第2の平面データを生成する第6のステップと、(vii)設計情報および第2の平面データに基づいて、複数の平面と基礎曲面との交差線を示す別の閉曲線データを生成する第7のステップと、(viii)別の閉曲線データを表示デバイスに表示する第8のステップと、を更に備えることができる。
【0037】
表示されている閉曲線データを消去した後に、別の閉曲線データを表示することができるので、基礎曲面を段階的に評価することができる。これによって、部分的にきめ細かな形状の評価を行うことができると共に、全体的に概略的な形状の評価を行うこともできる。
【0038】
本発明に係わる車両用灯具に利用される反射鏡のための基礎曲面を設計する方法は、第2のステップにおいて、設計情報に基づく基礎曲面の画像に重ねて閉曲線データを表示することができる。
【0039】
基礎曲面の表示データに重ねて閉曲線データを表示すれば、閉曲線データを基礎曲面と関連づけながら視覚化されるので、反射鏡の形状条件と対比しながら評価を行うことができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明の知見は、添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解することができる。以下、図面と共に本発明による車両用灯具及びその反射鏡の反射面を決定する方法を詳細に説明する。図面の説明において、可能な場合には同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、実物のものと必ずしも一致していない。
【0041】
以下に記述される本実施形態に係わる車両用灯具は、例えば自動車のテールランプといった標識灯に適用されることができる。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0042】
図1は、本発明による車両用灯具を示す斜視図である。図2は、図1に示した車両用灯具の反射鏡を示す平面図である。図1において、反射鏡及びレンズの固定及び位置決め部材を図示していないけれども、当業者はこれらを必要に応じて追加することができる。また、図1及び図2には、XYZ座標系が設けられている。この座標系は、灯具の軸Axの方向にZ軸を有する直交座標系である。
【0043】
図1を参照すると、灯具1は、反射鏡2と、レンズ3とを有している。反射鏡2は、反射面10aを有する反射鏡部10と、外枠部12とを備える。
【0044】
反射鏡10は、反射面10aがレンズ3と対向するように配置されている。反射面10aは、軸Axに垂直に交差する平面に沿って広がり、これによって、軸Axに沿って光を反射することができる。外枠部12は、軸Axに沿って伸びる筒状部を有する。この筒状部の一端を塞ぐように、反射面10aが配置されている。外枠部12は、反射面10aに対してレンズ3を位置決めしている。レンズ3は軸Axに所定の角度、例えば略垂直に固定されている。軸Axは、灯具の光軸に一致するように設定されることができる。
【0045】
反射鏡部10は、反射面10aの所定の位置に孔11を有している。孔11からは、光源バルブBが挿入される。光源バルブBは、その光源点Fが軸Ax上の所定の位置(光源位置)となるように反射鏡2に対して固定される。
【0046】
図1においては、簡単のために、反射面10aを構成する複数の反射面素子(図2の14)を図示することなく、自由曲面20といった基礎曲面を示している。自由曲面20上には、自由曲面20の作成に利用される11本の曲面基準線(図1では破線で描かれている)22a〜22kが示されている。
【0047】
自由曲面20は、反射面素子を配置する下地曲面(基礎形状)を規定しているので、灯具1の占有空間の概形を決定することになる。自由曲面20は、単一回転放物面を採用することなく、灯具1に課される形状制約条件を満たすと共に、所定の条件、例えば曲面上の各部位からの光束発散度(後述される)を所定の範囲内にするという条件を満たすように決定される。故に、自由曲面20は、車体面からの形状制約条件、例えば薄型形状となる条件を満たすと共に、光均一性といった光学的な性能を可能な限り達成するように形成される。
【0048】
図1および図2は、反射鏡1の外形(例えば、外枠部12の形状)、光軸Axに対するレンズ3の設置角度、光源バルブBの配置位置を例示的に示している。個々の具体的な事例では、車両用灯具の形態は、車体の設計条件から要求される条件、すなわち形状制約条件を考慮して適宜決定されることができる。形状制約条件は、例えば、各車体の灯具収納部の容積及び形状、並びに車体外形の一部を成す形状灯具の外面(多くの場合、レンズ外面)を規定している。反射鏡1の反射面10aに関する具体的な作製方法は、特に本実施の形態に限定されるものではなく、様々の作製方法が適用されることができる。反射鏡を有する灯具に対して、例示的に示される引き続く記述が適用可能である。
【0049】
図2を参照しながら、反射面10aの形態を説明する。反射面10aは、下地面となる自由曲面20上に配置された複数のセグメントを備えている。それぞれのセグメントには、反射面素子14が割り付けられている。図2には、その範囲を明示するために、反射面素子14のうちの1つに斜線を付している。反射面素子14の各々は同じ形状を有することができる。
【0050】
反射面素子14を形成するために自由曲面20をセグメントに区分化した後に、それぞれのセグメント毎に反射基本面を決定する。反射基本面は、中心軸Ax(図1参照)と、焦点F(図1の光源位置を参照)とを有する回転放物面を含むことができる。それぞれの反射面素子14において、回転放物面の焦点距離は、光源点Fと、自由曲面20上における反射面素子14に係わる位置とから決定されるので、光源点Fから入射された光が反射面素子14によって軸Axの方向に確実に反射される。
【0051】
次に、反射鏡の反射面を決定する方法を説明する。この決定方法には、以下に説明にされる手法に限定されるものではなく、様々の方法が適用される。特に、自由曲面を決定する手順は以下の記述に限定されるものではない。
【0052】
図3は、車両用灯具に用いられる反射鏡2の反射面10aの形状を決定するための手順を記述したフローチャート100を示す。この手順100は、条件設定ステップ101、初期基準線設定ステップ102、曲面基準線作成ステップ103、自由曲面作成ステップ104、検証ステップ105、及び反射面決定ステップ107の各ステップを有する。
【0053】
図4(a)、(b)は、これらのプログラムを実行可能な評価システム200を示す。図4(a)を参照すると、評価システム200は、入力デバイス手段210と、メモリユニット220と、プロセッサ230と、表示デバイス240と、出力デバイス手段250と、を備えることができる。また、評価システム200は、ネットワーク260を介して他のコンピュータといった評価システムに接続されることができる。入力デバイス手段210は、キーボード、記録媒体からのデータ読み取り装置、およびポインティングデバイスといった入力デバイスの一または複数を含むことができる。メモリユニット220は、主記憶装置221を有し、この装置221には、プログラムファイル222、設計情報ファイル223、光源情報ファイル224、および等高線情報ファイル225を配置することができる。プロセッサ230は、メモリユニット220に記憶されたプログラムを実行することができる。この実行によって、以下に説明される一または複数のステップが、評価システム200上で実現される。評価結果は、受けたデータを表示可能な表示デバイス240に表示されることができ、出力デバイス手段250を介して出力されることができる。出力デバイス手段250は、プリンタ、記録媒体への書き込み装置といった出力デバイスの一または複数を含むことができる。
【0054】
このようなシステム200は、所定のソフトウエアが記録媒体からインストールされると、そのソフトウエアに応じて、図4(b)に示されるような条件設定手段281、初期基準線設定手段282、曲面基準線作成手段283、自由曲面作成手段284、検証手段285、及び反射面決定手段287のうちの少なくとも1つの手段を実現することが可能になる。
【0055】
このようなシステム200においては、設計上の便宜のため、またこのほかの理由のために、上記のステップの一部を適用して得られた設計情報は、任意のステップの後に、システムに保存することができる。保存された設計情報はコンピュータに再び入力されると、引き続く処理をプログラムによって行うことができる。
【0056】
また、これらの処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み出し可能な所定の記録媒体に記録して頒布することが可能である。これらの記録媒体には、これらに限定されるものではないが、ハードディスク、フロッピィディスク、および磁気テープといった磁気媒体、CD−ROMおよびDVD−ROMといった光学媒体、フロプティカルディスクといった磁気光学媒体、この他にプログラム命令を実行または格納するように特別に配置された、例えばRAM、ROM、および半導体不揮発性メモリといったハードウエアデバイスが含まれる。
【0057】
本実施の形態では、図3に示された処理100をソフトウエアによって実現する場合に例示しながら説明するけれども、処理100は専用のハードウエアによっても実現されることができることは言うまでもない。
【0058】
図4(b)を参照すると、評価システム200の機能ブロック図が示されている。これらの機能ブロック図は、各ステップと一緒に説明される。
・条件設定ステップ101、条件設定手段281
最初に、条件設定手段281によって、形状の決定に必要ないくつかの条件を設定する。図1を参照しながら、設定されるべき条件を例示的に列挙する。この条件は、光源バルブBが設置される位置、その光源点Fの位置(光源位置)、およびその光源位置を通る軸Axを含むことができる。軸Axは、その光源位置を通る軸であって、反射面によって光源からの光が反射されて灯具から出射される方向を指定する。この条件には、その他の条件、例えば、光源からの光出射分布の条件を含むことができる。また、これらの条件とは別に、車体における灯具の占有可能容積といった形状制約条件を設定することができる。
・初期基準線設定ステップ102、初期基準線設定手段282
次に、初期基準線設定手段282によって複数の初期基準線を設定する。複数の初期基準線は、基礎曲面の決定のための初期条件となる。複数の初期基準線から出発して、自由曲面20といった基礎曲面を作成するための複数の曲面基準線22a〜22k(図1参照)を決定する。
【0059】
図1によれば、灯具1に対して、軸Ax上の点から伸びる曲面基準線22a〜22kが示されている。設定された初期基準線から、これらに対応する曲面基準線22a〜22kが生成される。これらの曲面基準線22a〜22kを利用して自由曲面20を作成する。
【0060】
図5は、複数の初期基準線21を含む曲面を有する仮想的な灯具を軸Axおよび一初期基準線を含む断面を図示している。それぞれの初期基準線21には、軸Axを含む平面に含まれ複数の方向に放射状に伸びる曲線が適用される。初期基準線の一端は、軸Ax上に位置する。初期基準線の他端は、設計されるべき灯具の外周上および外形よりも外側に位置することができる。
【0061】
このような初期基準線21の各々は、各部分における光束発散度Mを一定するように決定される。つまり、初期基準線21は、軸Ax上の始点とこの始点に対応する終点との間を複数の区間に分割され、各区間は、同じ光束発散度Mの値を有している。さらに、初期基準線21は、以下に記述される光束発散度を含む他の条件から決定されることができる。
【0062】
光束発散度Mとは、点灯された灯具を光軸方向から観察したときに各部位から光軸に沿う方向に向けられる光量に類似している。この光束発散度Mを光学的指標、特に光均一性に対する指標として用いることができる。これによって、光均一性の達成度だけでなく、トレードオフの関係にある光均一性の条件と形状制約条件とを関連づけながら、その達成度を向上させることができる。
【0063】
引き続いて、光束発散度Mを定量的に決定する手順を例示的に説明する。軸Axに垂直な基準平面5を規定する。すべての初期基準線21を基準曲面5上に投影する。投影された線分に沿って単位面積を有する複数の領域を配列する。これら複数の領域をそれぞれの初期基準線21上に逆投影して、初期基準線21上のそれぞれの点と関連付けられた単位領域を生成する。これらの単位領域の各々に光源バルブBから入射される予測光量を求め、各部位での光束発散度Mを定義する。この入射光が各単位領域から反射されるとすれば、各単位領域から反射される光量が計算される。この入射光量を光束発散度Mとして採用することができる。反射面10aの形状を決定するために光束発散度Mを利用すれば、光束発散度Mを光均一性の条件を向上させるための判定指標として利用することができる。
【0064】
図5を参照すると、基準平面5に投影したときにそれぞれ等しい長さになるように初期基準線21が、複数の部分、例えば幅ΔLを有する5つの領域Ra、Rb、Rc、Rd、Reに分割される。初期基準線21の形状は、それぞれの領域からの光束発散度Ma、Mb、Mc、Md、Meが一定の値となるように決定される。このようにして得られた初期基準線21は、光が反射される方向と反対側に向いた凸形状を有している。
【0065】
既に行われた説明および図5は、光束発散度Mの求め方、および光束発散度Mを用いて決定された初期基準線の形状についての一例を示した。これらには、光源バルブの形態および計算処理の容易さといった要因に応じて、様々な方法が適用されることができる。例えば、この光束発散度Mを求める際には、光源バルブB及びその光源点Fの位置のみでなく、灯具に使用される光源バルブBの光出射分布といった他の要因も考慮することもできる。
・曲面基準線作成ステップ103、曲面基準線作成手段283
次に、曲面基準線作成手段283は、複数の初期基準線21から曲面基準線22を作成する。
【0066】
既に説明したように、初期基準線21は、各部分に対する光束発散度Mを一定とする条件によって設定されている。初期基準線21の各々に対して、形状制約条件を満たすように変形を加えて、図1に示した曲面基準線22a〜22kを作成する。例えば、図5に示されたような初期基準線21では、反射鏡2が凹面状であり後方に突出する形状を有するので、灯具の薄型化といった条件を満たさない場合がある。したがって、初期基準線21に対して形状制約条件を満たすような変形を適用する。この変形は、この変形によって生じる光束発散度Mの各部での変化量を考慮しながら行なわれる。
【0067】
また、この形状制約条件を達成するための変形に加えて、例えば、入射光線と初期基準線21とのなす角度に応じて、初期基準線21の変形を行うことができる。この角度は、角度を規定するべき点における初期基準線に対する接線と、入射光線に対応する線分との成す角度である。
【0068】
初期基準線設定ステップ102においては、個々の初期基準線21における各部分に対する光束発散度Mを一定にすることのみに着目していた。このため、異なる初期基準線21間での光束発散度Mの値の差異については考慮されていない。
【0069】
例えば、上述の実施例では11本の初期基準線21を形成したが、それぞれの初期基準線21毎の光束発散度M1〜M11の値を、これらの光束発散度M1〜M11のうちの最小値Mminによって規格化する。この規格化値は小さいほど、車両用灯具での光均一性が優れていることを示している。
【0070】
最大値Mmaxを最小値Mminによって規格化したパラメータMmax/Mminが所定の範囲を越えると、充分な光均一性を実現することができないと考えられる。
【0071】
このような場合には、例えば初期基準線設定ステップ101に戻り、再度条件を変えて初期基準線21の再設定を行うことができる。あるいは、光束発散度Mが最大または最小となる基準線を変形し、Mmax/Mmin値を低減することができる。初期基準線の変形または再設定によって、Mmax/Mminが好適な数値範囲内に変更された曲面基準線22を作成する。
【0072】
本ステップにおいて行われる変形の順序は、特に上述したものに限られない。
【0073】
以上述べたような変形を経て、図5に示した初期基準線21から、図6において破線で示された曲面基準線22が得られる。
・自由曲面作成ステップ104、自由曲面作成手段284
自由曲面作成手段284により、反射面10aのための基礎曲面となる自由曲面20を複数の曲面基準線22から作成する。
【0074】
図7は、自由曲面20の作成方法を説明するための図面である。この図面を参照しながら以下の手順で自由曲面を生成することができる。図1に示した自由曲面20の外形(光軸Ax方向から見て矩形)は、図7では参照番号20aを付した一点鎖線によって示されている。反射面10aのための基礎曲面(自由曲面20)には、図7に示された一点鎖線内の領域が適用されることができる。図7では、反射面10a内に含まれる曲面基準線22a〜22kは、図1においては点線で示されている曲線である。曲面基準線22a〜22k、中心P、光原点F、自由曲面20の外形は、表示デバイスに表示されることができる。
【0075】
図7においては、曲面基準線22a〜22kの他端は、反射面10aを完全に覆う自由曲面を求めるために、切り出される自由曲面の範囲外に配置されている。
【0076】
自由曲面20の作成するために、全ての曲面基準線22a〜22kを利用して自由曲面を生成することが好ましい。図7に示すように、本実施形態の自由曲面の作成方法では、それぞれの曲面基準線22a〜22kを複数の部分に分割する。
【0077】
例示的に説明すれば、n本(nは3以上の整数)の曲面基準線22をそれぞれm等分(mは2以上の整数)してm個の分割点(外端点を含む)を作成する。対応するn個の分割点を組にする。それぞれの組内の点を曲線で接続してm本の自由曲線23を生成する。このm本の自由曲線23から自由曲面20を作成することができる。各曲面基準線22の分割数は、個々の例においてなめらかな形状の自由曲面20を得るために必要な分割数mを適宜選択すれことができる。図7には、一つのグループに含まれる点を明確にするために例示的に自由曲線23が破線で描かれている。これらの自由曲線23を含む全自由曲線で張られる曲面によって自由曲面20を作成する。
【0078】
分割点を結んで自由曲線を作成する方法、及び自由曲線を含む曲面を作成する方法については、例えば以下の方法を適用することもできる。
【0079】
まず、分割点p1〜pi(i≧3)の組に対してそれらの分割点の少なくとも一部をそれぞれ微小距離だけずらした点q1〜qj(j≧3)を生成する。これらの点pi、qjを順次に接続した曲線を作る。この曲線から1周分に相当する曲線を自由曲線として採用することができる。この自由曲線は閉じた曲線であることができる。しかしながら、十分に滑らかな接続が得られているか否かは明らかでない。
【0080】
これまでの手順によって、反射鏡が占有可能な空間を規定する形状制約条件および車両用灯具に含まれる光源の位置条件に基づいて、反射鏡を規定するための基礎曲面を求めることができた。
【0081】
これまでの手順によって、光束発散度Mが所定の範囲の値であり、形状制約条件を満足する自由曲面を得ることができる。曲面基準線は、反射鏡の中心から動径方向に向けて滑らかに生成されている。しかしながら、複数の曲面基準線間を張る曲面が、そのつなぎ目といった部分で許容できる程度の滑らか度を達成できるか否かを保証の限りではない。
【0082】
また、自由曲面は、本実施の形態で説明された他の手法によっても生成される。これらの手法を適用して生成された自由曲面については、動径方向に関して実用的な範囲の滑らか度を有しているかは保証の限りではない。
【0083】
これまでのステップでは、生成された自由曲面20が、反射鏡のための基礎曲面として適切な曲面であるかは検証されていない。また、単に自由曲面を表示デバイスに表示しただけでは、全体的な形状は把握できるけれども、実用的な範囲の滑らか度を有しているかの判断は難しい。
・検証ステップ105、検証手段285
基礎曲面の検証を行う検証ステップ105について説明する。検証ステップ105は、入力ステップ105a、平面生成ステップ105b、平面表示ステップ105c、交線生成ステップ105d、および曲線表示ステップ105eを備えることができる。さらに、検証ステップ105は、基礎曲面表示ステップ105fおよび消去ステップ105gを備えることができる。曲線検証ステップ106では、表示された画像に基づいて、滑らか度が充分であるかが検証される。検証手段285は、条件入力手段285a、平面生成手段285b、交線生成手段285d、消去手段285g、および送出手段285c、285e、285fを備えることができる。
・条件入力ステップ105a、条件入力手段285a
基礎曲面の検証は、図3に示されたフローチャート100に従った一連の処理として行うことができる。しかしながら、検証ステップ105は、設計された中間データが所定の性能を有しているか否かの評価であるので、設計用ソフトウエアと別個のソフトウエアで実現することが好適である。
【0084】
検証ステップ105を別個のソフトウエアによって実件する場合は、条件入力手段285により、基礎曲面を示す設計情報および光源に関する光源情報を入力する。また、一連のソフトウエアモジュール内に埋め込まれた検証ステップ105を実現するために、当該モジュールの検証ブロックに所定の情報を受け渡す条件入力手段285により、入力ステップを実現する。入力された結果は、図4に示されたメモリユニット220に格納される。
・平面生成ステップ105b、平面生成手段285b
平面生成手段285bは、1または複数の平面を軸Axを基準にして生成する。図8(a)および図8(b)では、生成される平面は、軸Axに関して所定の角度、例えば垂直に交差する。複数の平面を生成するために、生成される平面の面間隔dおよび面数sの少なくともいずれかを規定する平面情報を入力する。このような平面情報は、一時的にメモリユニット220に格納される。検証用ソフトウエアにおいて平面の面間隔dが固定され、平面の面数sのみが変更可能であるようにでき、また平面の面数sが固定され、平面の面間隔dのみが変更可能であるようにでき、さらに面間隔dおよび面数sの両方が固定されているようにすることができる。面数sおよび面間隔dに基づいて軸に交差する平面のための平面データが生成される。
・平面表示ステップ105c、平面データの送出手段285c
生成された平面データを表示デバイスに送出手段285cを介して送出し画像として表示することができる。表示を行うと、当該ステップ105cの実行が確認され、またこの画像を参照しながら引き続く処理を行うことができる。しかしながら、この表示を行うことなく以下のステップを行うこともできる。図8(b)は、表示デバイスに表示された小型の平面27の画像を示している。
・交線生成ステップ105d、交線生成手段285d
交線生成手段285dは、一または複数の平面27の各々と自由曲面20(基礎曲面)との交差線を設計情報および平面データに基づいて求め、この交差線から閉曲線データを生成する。生成された閉曲線データは、メモリユニット220に格納される。
【0085】
複数の平面データが一定の間隔で平行になるように生成されている場合には、閉曲線データは、自由曲面の等高線を表していると考えることができる。つまり、交差線の間隔が狭いことは自由曲面20の勾配が大きいことを示し、交差線の間隔が広いことは自由曲面20の勾配が小さいことを示している。また、自由曲面が、部分的に凹部および凸部を備える場合には、同一の平面との交差によって生成された閉曲線の数が2以上になる。さらに、等高線を求めると、軸Axに沿った灯具の長さ、つまり反射鏡の奥行きが反射面のどの部分によって決定されているかを知ることもできる。
・閉曲線表示ステップ105e、閉曲線データの送出手段285e
評価システムの含まれる送出手段285eを介して、基礎曲面に含まれる一または複数の閉曲線を表す閉曲線データを表示デバイスへ送出する。また、平面表示ステップ105bにおいて表示を行わなかった場合には、このステップ軸Axに交差する一または複数の平面(図8(a)および(b)の27)を、閉曲線データと一緒に、または別個に、表示デバイスに送出することができる。閉曲線データを含む一連のデータを受けた表示デバイスは、複数の閉曲線を表示し、追加されているデータ応じて、例えば軸Axおよび光源位置Fを表示する。図9および図10は、それぞれ、表示デバイスに表示された閉曲線29a、29bの画像を示している。
・基礎曲面表示ステップ105f、基礎曲面の送出手段285f
設計情報に含まれ基礎曲面に対応するデータを送出手段285fを介して表示デバイスに送出し基礎曲面を表示することもできる。これによって、基礎曲面の画像と、交差線(閉曲線)の画像を重ねることができる。基礎曲面表示ステップ105fは、検証ステップ105内のいずれのステップの前および後に置くことができ、また検証ステップ106において行わないことも可能である。
【0086】
閉曲線および自由曲面の画像を重ねることによって、所定の滑らか度を有していない部分の位置を基礎曲面上と対応付けながら観察できる。基礎曲面の画像には、反射鏡の外形データが含まれることができる。
・表示消去ステップ105g、消去手段285g
自由曲面の評価においては、別の面数および別の面間隔で生成された閉曲線を表示することが求められる場合もある。このときには、閉曲線データの表示を消去手段285gにより表示デバイスから消去した後に、新たな評価情報を表示デバイスに表示することが便利である。このために、適切な送出手段を介して、別の面間隔および別の面数で生成された平面データと自由曲面との交差線を表示デバイスに送出する。この表示および消去は、繰り返して行うことができる。これによって、様々な面数および面間隔で自由曲面の評価および検証をすることができる。
【0087】
軸Axに沿って単一平面の位置を順に移動させながら、この平面と自由曲面との交差線を表示することもできる。この際にも、新しい交差線を表示する前に、古い交差線の画像を消去することが好ましい。また、消去することなく、順次に求められた交差線を表示デバイスに重ねて表示することもできる。
・滑らか度検証ステップ106
表示された画像に基づく判断は、滑らか度検証ステップ106において行われる。
【0088】
図9に表示された画像には、複数の閉曲線が軸Axを囲むように表示されている。しかしながら、自由曲面20の継ぎ目28aにおける動径方向に伸びる曲面基準線と閉曲線との交点では、曲面基準線の左からの微分係数と右からの微分係数との違いが大きい。この結果、実用的な範囲の滑らか度を有しているとは判断できない。
【0089】
このような基礎曲面に反射面素子を適用して反射鏡を形成しても、滑らか度が悪い領域では光均一性が満たされない。滑らか度が悪い領域では、場合によって、軸Ax方向に沿って反射される光が少なく、軸Axの方向から観察したときに黒っぽく見える。故に、灯具としての十分な性能を備えていない。
【0090】
図10に表示された画像には、複数の閉曲線が軸Axを囲むように表示されている。この画像では、自由曲面20の継ぎ目28bになっている自由曲面20上における曲面基準線と閉曲線との交点では、曲面基準線の左からの微分係数と右からの微分係数との違いが充分に小さいので、実用的な範囲の滑らか度を有しているとは判断できる。
【0091】
基礎曲面が当該車両用灯具への利用に適切ではないという評価になった場合には、基礎曲面の生成から所定のステップを再度実行することができる。このような繰り返しによって、所定の性能を有する自由曲面が得られる。
【0092】
単一の平面と自由曲面との交差線を視覚化した場合にも、交差線が求められた位置での滑らか度を知ることができる。
【0093】
したがって、図9および図10は、設計者が、基礎曲面の適格性を全体的に観察できることを示している。この観察に基づいて、再度設計が必要か、または次の設計工程へ進むことができるか、を決定することができる。
【0094】
再度設計が必要という決定の場合、所定の設計情報、例えば基礎曲面となる自由曲面の決定から行う。
【0095】
次の設計工程へ進む場合は、以下の反射面決定ステップ107へ進むことができる。
・反射面決定ステップ(ステップ107)、反射面決定手段287
次に、反射面決定手段287は、自由曲面20をセグメントに区分しこれに複数の反射面素子14を付加する。これによって、反射面10aが形成される。
【0096】
図11は、自由曲面20のセグメントを示す図面である。このような図面を表示デバイスに表示することができる。この画像を参照しながら以下の手順で自由曲面を生成できる。このセグメントのアレイ状構造は、図2に示した反射面10aの構造と対応している。
【0097】
セグメント化は、自由曲面20上を直接分割することによって達成されるけれども、本実施の形態では、図11に示すようにZ軸に交差する基準平面5を利用する方法を適用する。軸Ax上の点Pは、基準平面5上の点Qに射影される。反射面外形50内において、基準面5が、互いに直交するX軸方向及びY軸方向に沿って一定のピッチで分割され、これによって、アレイ状に配列された基準セグメント54が生成される。次いで、基準セグメント54を自由曲面20に投影して、アレイ状のセグメント24を得る。図11においては、セグメント24を自由曲面20上に斜線で示している。自由曲面2上にセグメントを生成するために、これ以外に様々な方法を適用できる。
【0098】
自由曲面20上の各セグメント24に対して、図2に示したような反射面素子14を付与する。これによって、図6に示したような反射面10を形成する。図11において斜線を付して示した基準セグメント54、及びセグメント24は、図2において斜線を付して示した反射面素子14に対応している。
【0099】
各反射面素子14の反射面は、図1及び図2に関して上述したように、光軸Axを中心軸とし、光源点Fを焦点としてそれぞれ異なる焦点距離を有する回転放物面からなる。この回転放物面に、所定の光拡散能力を付加するように変形を加えることができ、各反射面素子14の反射面を形成することもできる。
【0100】
図12に示された反射基本面15を参照しながら反射面素子14の決定について説明する。反射基本面15に対して、反射面素子14をそれぞれのセグメント24に割り付けて、複数の反射面素子14を含む反射面10aを決定する。
【0101】
このように反射面10aが自由曲面20上に配置された複数の反射面素子14を備えれば、現在のところ車両用灯具1に対して要求されている条件、例えば、反射性能の面では光均一性及び光拡散性、形状の面では薄型化、及び外観の面では透明感、を満たす灯具が実現し易くなる。
【0102】
これを実現するために、反射面素子14は、回転放物面の全部または一部に光拡散能力を備えた拡散反射領域を設けることができる。拡散反射領域は、受けた光を拡散させるように反射可能な曲面を有する。光拡散能力とは、灯具から照射される光を光軸に平行な光だけでなく、光軸に沿ってある角度範囲の光に分配する機能をいう。
【0103】
各反射面素子14が光拡散能力を有するようになれば、光拡散能力が少なく素通し感のあるレンズ3を適用することが可能となる。これによって、各反射面素子14は、機能面からの条件のうち光拡散性と、外観制約条件である透明感および奥行き感と、を満たすことができる。
【0104】
図12に示された反射面素子14の反射基本面は、それぞれ、放物面部15aおよび拡散反射部16を備える。本実施形態においては、反射基本面15のために回転放物面を採用し、個々の回転放物面、またはその一部の回転放物面に、所定の光拡散機能を有するように変形を加えるための拡散型領域16を付加している。このため、反射面素子14は、放物面部15aと、拡散反射部16とから構成される。放物面部15aは、焦点距離fxの回転放物面形状で表される。拡散反射部16は、所定の光拡散機能を有するように、焦点距離fxの回転放物面形状に対して盛り上がっている。
【0105】
放物面部15aは、特に、隣接する反射面素子14の影となる部分に与えられ、実際に光源バルブB(光源位置)からの光が入射される部分には拡散反射部16に与えられる。このため、入射光30は、拡散反射部16における反射を介して反射光32になる。
【0106】
反射面素子14は、拡散反射部16はX軸方向にのみ光拡散機能を有するようにY軸方向に伸びる円柱の側面によって表される形状を有している。このため、Y軸方向については略平行な光が反射される。この場合、レンズとしては、Y軸方向についての光拡散機能を持つレンズステップ3aを有するレンズ3(図1参照)が用いられる。
【0107】
このような拡散反射部には、X軸及びY軸方向の両方向について光拡散機能を有する面形状を適用することもでき、また、拡散反射部を有しない面形状を適用することもできる。この場合には、光の拡散をレンズのみで行う。拡散反射領域の形状は、上記の例に限られることなく、シリンドリカルな凸状形状の他にも、シリンドリカルな凹状の形状、回転放物面に代えて単なる平面を適用した形状、並びに凸状または凹状のトーラス面形状を用いることができる。また、この拡散反射面には、ベジェ曲面、NURBS曲面を適用することもできる。
【0108】
反射面10aを区分するセグメント形状は、実施形態で示した矩形に限られない。基準平面5と光軸Axとの交点を中心とした動径方向について放射状に、また交点を中心とした同心円状に、反射面外形50内を区分し基準セグメント54を作成できる。それを投影すれば、セグメント24及び反射面素子14の形状がZ軸方向から見て扇形状となる。これ以外の様々なセグメント形状を反射面10aに適用できる。また、灯具の種類についても、標識灯に限らず様々な種類の車両用灯具に用いられる反射鏡に対して上記方法を用いることができる。
【0109】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係わる基礎曲面の光学的な性能の評価に適用可能な評価方法および評価システムによれば、所定の軸に交差する平面と基礎曲面との両方に含まれる曲線を表示する。この曲面は、その平面によって規定される基礎曲面の断面を示している。この断面を表示すれば、光源から光が反射されるべき方向に関する基礎曲面の形状が視覚的に把握可能になる。これら手順を実現するための処理を、プログラムとしてコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。
【0110】
したがって、反射鏡のための基礎曲面を評価する方法、反射鏡のための基礎曲面を評価する評価システム、および車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面の評価をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による一実施形態の車両用灯具を示す斜視図を示す。
【図2】図2は、図1に示した車両用灯具の反射鏡の構成を示す平面図を示す。
【図3】図3は、反射鏡の反射面を決定する方法を示すフローチャートを示す。
【図4】図4(a)、(b)は、それぞれ、評価システムを示す概略ブロック図および機能ブロック図を示す。
【図5】図5は、反射鏡の初期基準線の設定方法を説明するための仮想灯具の断面図を示す。
【図6】図6は、灯具の断面図を示す。
【図7】図7は、自由曲面の生成方法を示す図面を示す。
【図8】図8(a)は、曲面基準線および平面の画像を示す図面を示し、図8(b)は、表示された平面の画像を示す図面を示す。
【図9】図9は、表示された閉曲線の画像を示す図面を示す。
【図10】図10は、表示された閉曲線の画像を示す図面を示す。
【図11】図11は、自由曲面をアレイ状のセグメントに区分する方法を示す斜視図を示す。
【図12】図12は、反射面素子の一例を示す斜視図を示す。
【符号の説明】
1…反射鏡、20…反射鏡部、10a…反射面、11…光源挿入孔、
12…外枠部、14…反射面素子、15…放物面部、16…拡散反射部、
20…自由曲面、21…初期基準線、22、22a〜22k…曲面基準線、
23…自由曲線、24…セグメント、29a、29b…閉曲線、
3…レンズ、3a…レンズステップ、
5…基準平面、50…反射面外形、54…基準セグメント、
B…光源バルブ、F…光源点、Ax…光軸
Claims (10)
- 複数の反射面を有し車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する方法であって、下記のステップは、前記基礎曲面の形状に起因する光学的性能を評価するための評価情報を提供する評価システムによって行われるものであり、
a)光源に関する入力された光源情報および前記基礎曲面を示す入力された設計情報をメモリに格納するステップと、
b)前記反射鏡によって前記光源からの光が反射されるべき方向に沿って伸び前記光源情報に含まれる光源位置を通過する軸に交差する一または複数の平面と前記基礎曲面との両方に含まれる一または複数の閉曲線を表す閉曲線データを表示デバイスに送出し、前記表示デバイスが閉曲線データを表示するステップと、
を備え、
前記ステップ ( b ) では、前記基礎曲面に対応するデータを前記表示デバイスに送出するステップを有し、前記表示デバイスは、前記設計情報によって規定され前記基礎曲面を示す表示データと前記閉曲線データとを重ねて表示する、方法。 - c)前記軸に交差する一または複数の平面を示す平面データを生成するステップと、
d)前記設計情報および前記平面データに基づいて、前記一または複数の平面と前記基礎曲面との交差線を求め前記閉曲線データを生成するステップと、を備える請求項1に記載の方法。 - e) 前記一または複数の平面の間隔および面数の少なくともいずれかを規定する入力された平面情報をメモリに格納するステップを更に備え、
前記平面データは、前記平面情報によって規定される面間隔および面数で設けられ前記軸に垂直な平面を表している、請求項2に記載の方法。 - 複数の反射面を有し車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面を評価する評価システムであって、当該評価システムは、前記基礎曲面の形状に起因する光学的性能を評価するための評価情報を提供するものであり、
メモリと、
表示デバイスと、
前記基礎曲面を示す入力された設計情報および光源に関する入力された光源情報を前記メモリに配置するための第1の入力手段と、
前記反射鏡によって前記光源からの光が反射されるべき方向に沿って伸び前記光源情報に含まれる光源位置を通過する軸に交差する一または複数の平面と、前記基礎曲面との両方に含まれる一または複数の閉曲線を表す閉曲線データを前記表示デバイスへ送出するための第1の送出手段と、
前記基礎曲面に対応するデータを前記表示デバイスに送出するための第2の送出手段と
を備え、
前記基礎曲面を示す表示データと前記閉曲線データとは、前記表示デバイスにおいて重ねて表示される評価システム。 - 前記軸に交差する一または複数の平面を示す平面データを生成するための平面生成手段と、
前記設計情報および前記平面データに基づいて、前記一または複数の平面と前記基礎曲面との交差線から前記閉曲線データを生成するための交線生成手段と、
を備える請求項4に記載の評価システム。 - 前記一または複数の平面の面間隔および面数の少なくともいずれかを規定する平面情報を前記メモリに配置するための第2の入力手段を更に備え、
前記平面データは、前記平面情報によって規定される面間隔および面数で設けられ前記軸に垂直な平面を表している、請求項5に記載の評価システム。 - 前記閉曲線データの表示を前記表示デバイスから消去するための消去手段を更に備える請求項4〜請求項6のいずれかに記載の評価システム。
- 複数の反射面を有し車両用灯具に適用される反射鏡のための基礎曲面の評価をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、当該プログラムは、前記基礎曲面の形状に起因する光学的性能を評価するための評価情報を提供するものであり、
光源に関する入力された光源情報および前記基礎曲面を示す入力された設計情報をメモリに格納する第1の入力処理と、
前記反射鏡によって前記光源からの光が反射されるべき方向に沿って伸び前記光源情報に含まれる光源位置を通過する軸に交差する一または複数の平面と、前記基礎曲面との両方に含まれる一または複数の閉曲線を表す閉曲線データと前記設計情報によって規定され前記基礎曲面に対応するデータとを表示デバイスに、前記基礎曲面を示すデータと前記閉曲線データとが重ねて表示されるように送出する表示処理と、
を有する、プログラムを記録した記憶媒体。 - 前記プログラムは、前記軸に交差する一または複数の平面を示す平面データを生成する平面生成処理と、
前記設計情報および前記平面データに基づいて、前記一または複数の平面と前記基礎曲面との交差線を求めこの交差線から前記閉曲線データを生成する交線生成処理と、
を更に有する請求項8に記載の記憶媒体。 - 前記一または複数の平面の面間隔および面数の少なくともいずれかを規定する平面情報を前記メモリに格納するための第2の入力処理を更に備え、
前記平面生成処理において、前記平面データは、前記平面情報によって規定される面間隔および面数で設けられ前記軸に垂直な平面を表わすように生成されている、請求項9に記載の記憶媒体。
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