JP3988654B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機を備える車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両走行モードとして、アクセルペダルの操作を通じて車両走行速度が調節される通常走行モードの他、定速走行モードを選択可能な車両が知られている。こうした定速走行モードが選択されると、実際の走行速度が運転者の設定した目標走行速度と一致するように機関出力が自動的に調節される。従って、運転者は、アクセルペダルの操作を行わなくても車両を一定の速度で走行させることができる。
【0003】
ここで、定速走行モードの選択中は、景色の変化や車両走行音が単調なものとなるため、外部からの刺激が極めて少なくなる。その結果、運転者はアクセルペダルの操作から解放されるのにもかかわらず、かえって疲労感や倦怠感を覚える、といった点が人間工学の立場から指摘されている。
【0004】
そこで従来では、こうした定速走行モードでの走行に際して、先行車両との車間距離を所定周期で変動させ、車両状態をその運転に支障がない程度に僅かに変化させるといった対策が講じられている(特許文献1等)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−200999号公報(第5−6頁、第4図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように先行車両との車間距離を所定周期で変動させ、運転者に対して適度な刺激を与えることにより、疲労感や倦怠感の緩和を図ることができる。
【0007】
但し、車間距離を変動させるためには、定速走行モード中であるにもかかわらず、車両の走行速度を変更せざるを得ない場合が多い。定速走行モードはそもそも車両の走行速度を一定に維持することを意図して選択されるモードであるため、このような車両走行速度の変動が生じると、これが運転者に違和感を与えることとなる。
【0008】
すなわち、上記従来の対策では、確かに運転者の疲労感や倦怠感についてそれらの緩和は見込めるが、車両の走行速度を一定に維持するといった定速走行モードの本来の目的からすると効果的な対処方法とは言い難い。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両走行速度の変動を極力抑えつつ、定速走行モード選択中における疲労感や倦怠感の緩和を図ることのできる車両の制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、内燃機関の出力が無段変速機を介して駆動輪に伝達される車両の制御装置にあって、車両走行モードとして車両走行速度を目標速度に維持する定速走行モードが選択されているときに前記内燃機関の回転速度が所定周期をもって変動するように機関出力を制御するものであって、その制御を開始する時の回転速度の値を同回転速度を変動する際の基準値とする制御手段と、前記制御手段により回転速度を変動させる際にその変動に伴う車両走行速度の変動が抑制されるように前記無段変速機の変速比を変更する変更手段とを備えるようにしている。
【0011】
同構成によれば、定速走行モードでの走行に際して、機関出力の制御を通じて内燃機関の回転速度を所定周期をもって変動させ、同内燃機関を音源とする車両走行音の音色や大きさを変化させるようにしている。またその一方で、こうした回転速度の変動に伴う車両走行速度の変動が抑制されるように、無段変速機の変速比を変更するようにしている。従って、請求項1記載の発明によれば、車両走行速度の変動を極力抑えつつ、運転者に対して適度の刺激を与えてその疲労感や倦怠感の緩和を図ることができるようになる。
【0013】
更に、回転速度を変動させる際の基準を、その時々の回転速度の値ではなく、前記機関出力の制御を開始した時の回転速度の値としているため、上記機関出力の制御によるものとは別に、例えば車両走行状態の変化に起因する回転速度の変動が生じた場合であっても、その影響を受けることなく安定した制御性を確保することができるようになる。
【0014】
請求項記載の発明は、請求項記載の車両の制御装置において、前記制御手段は前記機関出力の制御を開始する時の回転速度の値が同回転速度の変動中心となるように機関出力を制御するものであるとしている。
【0015】
同構成によれば、内燃機関の回転速度が変動するように機関出力を制御するに際し、同制御の開始時における回転速度の値を同回転速度の変動中心としているため、同制御が実行されることに伴う機関燃焼状態の変化を抑えつつ、回転速度の変動幅を確保することができる。
【0016】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置において、前記制御手段は回転速度についてその目標値を設定し、回転速度の実際値がこの目標値と一致するように機関出力をフィードバック制御するものであり、前記変更手段は前記目標速度と前記目標値との関係に基づき前記変速比についてその目標値を設定するものであるとしている。
【0017】
機関回転速度の変動に伴う車両走行速度の変動が抑制されるように無段変速機の変速比を変更するに際しては、変速比、機関回転速度、並びに車両走行速度をパラメータとする関数値(変速比・車両走行速度/機関回転速度)が一定値となるように上記変速比を設定すればよい。ここで、実際の車両にあっては、上記変速比、車両走行速度、機関回転速度のうちの一つのパラメータを変更することに伴う他のパラメータの変化が通常、所定の応答遅れをもって生じる。このため、変速比、車両走行速度、機関回転速度としてそれらの実際値を用いるようにすると、こうした遅れ要素の存在する制御系に特有の不安定振動、いわゆるハンチング現象が発生するおそれがある。
【0018】
この点、請求項記載の発明では、これら変速比、車両走行速度、機関回転速度として実際値ではなくいずれもその目標値を用いるようにしているため、こうしたハンチング現象の発生を抑制することができるようになる。
【0019】
請求項記載の発明は、請求項1乃至の何れかに記載の車両の制御装置において、車両走行速度の実際値と前記目標速度との偏差が所定値を超えたときに前記制御手段による機関出力の制御を禁止する禁止手段を更に備えるようにしている。
【0020】
同構成によれば、車両走行速度の実際値と上記目標速度との乖離が大きくなった場合に、その走行速度を同目標速度に復帰させるべく、機関制御や変速機制御を実行することが可能になる。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項1乃至の何れかに記載の車両の制御装置において、前記制御手段は前記所定周期を回転速度の逆数に比例する周期に設定するものであるとしている。
また、請求項6記載の発明は、内燃機関の出力が無段変速機を介して駆動輪に伝達される車両の制御装置であって、車両走行モードとして車両走行速度を目標速度に維持する定速走行モードが選択されているときに前記内燃機関の回転速度が同回転速度の逆数に比例する周期をもって変動するように機関出力を制御する制御手段と、前記制御手段により回転速度を変動させる際にその変動に伴う車両走行速度の変動が抑制されるように前記無段変速機の変速比を変更する変更手段とを備えるようにしている。
【0022】
請求項5、請求項6に記載の構成によれば、内燃機関を音源とする車両走行音についてこれを回転速度の逆数に比例する周期、すなわち「1/fゆらぎ」に対応した周期で変動させることができ、運転者の疲労感や倦怠感についてそれらをより効果的に緩和することができるようになる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について説明する。
ここでは先ず、図1を参照して、本実施の形態が適用される車両の概略構成について説明する。
【0024】
この車両はその走行モードとして通常走行モードの他、定速走行モードが選択可能である。図1に示されるように、この車両にあっては、内燃機関1のクランクシャフト2に無段変速機3が連結されている。そして、内燃機関1の出力、すなわちクランクシャフト2の回転力は無段変速機3を介して駆動輪4に伝達される。この無段変速機3は、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機等、入力回転速度(内燃機関1側の回転速度)と出力回転速度(駆動輪4側の回転速度)との比(変速比)を無段階に調節可能な変速機である。
【0025】
この車両には、その運転状態を検出するための各種のセンサ類が設けられている。
こうしたセンサ類としては、例えば、車両の走行速度(車速SPD)を検出するための車速センサや、運転者により踏み込み操作されるアクセルペダルの踏み込み量を検出するためのアクセルセンサが設けられている。また、内燃機関1には、吸入空気量を調節するスロットルバルブ10の開度(スロットル開度TA)を検出するためのスロットルセンサや、クランクシャフト2の回転速度(回転速度NE)を検出するための回転速度センサが設けられている。更に、車室内には、ブレーキペダルの踏み込みの有無を検出するためのブレーキスイッチや、「オン位置」に操作されることで定速走行モードが選択される定速走行スイッチ、定速走行モードにおける車両走行速度の目標速度Vsを設定するための速度設定スイッチ等が設けられている。なお、本実施の形態では、上記車速SPDが車両の走行速度の実際値に、また上記回転速度NEが内燃機関1の回転速度の実際値に相当する。
【0026】
一方、この車両には、内燃機関1及び無段変速機3を統括して制御するための電子制御装置5が搭載されている。この電子制御装置5は、上記各種センサ類の検出信号を取り込むとともに、それら信号に基づく各種の演算結果に応じて、内燃機関1及び無段変速機3の統括制御(協調制御)を実行する。
【0027】
この車両において、その走行モード、すなわち通常走行モード及び定速走行モードの選択は、定速走行スイッチや速度記憶スイッチの操作状況に基づいて、電子制御装置5によって判断される。具体的には、定速走行スイッチが「オン位置」に操作された状態で、速度設定スイッチの操作を通じて目標速度Vsが設定されたときに、定速走行モードが選択された旨の判断がなされる。
【0028】
電子制御装置5は、上記協調制御に際して、まず内燃機関1の目標出力を求め、その目標出力が得られ且つ燃費が最良となるよう、内燃機関1の出力、及び無段変速機3の入力回転速度(回転速度NE)をそれぞれ制御する。尚、通常走行モードでは、アクセルペダル等を介して行われる運転者の出力要求等に応じて内燃機関1の目標出力が求められる。一方、定速走行モードでは、上記目標速度Vsと車速SPDとの偏差等に基づいて目標出力が求められる。
【0029】
内燃機関1の出力制御は、上記スロットルバルブ10に付随して設けられるアクチュエータ10aの駆動を通じてスロットル開度TAを調節することにより行われる。また、回転速度NEの制御は、無段変速機3の変速比を制御することにより行われる。
【0030】
さて、本実施の形態の装置では、定速走行モードでの走行に際して、回転速度NEを所定周期で変動させるようにしている。これにより、内燃機関1をその音源とする車両走行音の音色や大きさが上記所定周期で変動し、この変動が運転者に適度な刺激を与え、その疲労感や倦怠感の緩和が図られる。
【0031】
以下、こうした回転速度NEを変動させる処理の概要を説明する。
この処理では先ず、定速走行モードが選択され、車速SPDと上記目標速度Vsとの偏差が所定値α以下になると、そのときの回転速度NEが開始時回転速度NEsとして記憶される。
【0032】
そして、その後において、上記開始時回転速度NEsを変動中心として、回転速度NEを所定周期及び所定振幅で変動させることの可能な目標回転速度NEyが随時算出・設定される。具体的には、先ず、上記所定周期として、開始時回転速度NEsの逆数に比例する周期、いわゆる前記「1/fゆらぎ」に対応した周期が算出される。そして、この所定周期で回転速度NEを変動させることの可能な目標回転速度NEyが、上記開始時回転速度NEsと、同開始時回転速度NEsが記憶された後の経過時間とに基づき算出される。
【0033】
更には、回転速度NEを上記目標回転速度NEyとすることの可能なスロットル開度TAの目標値(目標スロットル開度TAy)が算出されるとともに、この目標スロットル開度TAyに基づき上記アクチュエータ10aの駆動が制御されて、スロットル開度TAがフィードバック制御される。これにより、回転速度NEが、上記「1/fゆらぎ」に対応した所定周期をもって変動するようになる。
【0034】
また、こうした回転速度NEを変動させる制御に併せて、車速SPDが上記目標速度Vsに一致した状態を維持すべく、上記無段変速機3の変速比Rについてその変更が行われる。
【0035】
車速SPDを上記目標速度Vsで維持するために必要な無段変速機3の変速比(目標変速比Ry)は、同目標速度Vsと、そのときどきの回転速度NEとに基づき算出することが可能である。この点をふまえ、本実施の形態の装置では、目標変速比Ryが、目標速度Vsと上記目標回転速度NEyとに基づき以下の関係式(1)から算出される。そして、この目標変速比Ryに基づき上記無段変速機3の変速比Rが制御される。
Ry=k・Vs/NEs …(1)
k:定数
更には、こうして回転速度NEや変速比Rを変動させているときに、車速SPDと上記目標速度Vsとの差が所定値βを超えると、上記目標回転速度NEyを変動させる制御が禁止される。その結果、目標変速比Ryの設定及びそれに基づく制御についても停止される。そして、その後は車速SPDを目標速度Vsに近づけるべく、上記協調制御が実行される。
【0036】
以下、図2を参照して、回転速度NE及び変速比Rを変動させる処理の処理態様の一例を説明する。
なお、同図[a]は回転速度NEの推移を、同図[b]は無段変速機3の変速比Rの推移を、同図[c]は車速SPDの推移をそれぞれ示している。
【0037】
さて、同図[a]に示されるように、時刻t1において上記変動処理の実行が開始されると、その後において回転速度NEが上記所定周期をもって変動するように機関出力が制御される。また、これに併せて、同図[b]に示されるように、無段変速機3の変速比Rが変更される。これにより、同図[c]に示されるように、回転速度NEの変動と変速比Rの変動とが相殺され、同回転速度NEが変動することに伴う車速SPDの変動が抑制される。その結果、車速SPDは目標速度Vsと略一致した状態に維持される。
【0038】
以下、図3に示すフローチャートを参照して、こうした変動処理の具体的な処理手順について説明する。
なお、同図のフローチャートに示される一連の処理は、上記変動処理の処理態様を概念的に示したものであり、実際には所定周期毎に実行される処理として、前記電子制御装置5により実行される。
【0039】
この処理では先ず、以下の各条件が満たされているか否かが判断される。
・定速走行モードが選択された状態で、上記目標速度Vsが設定されていること(ステップS102)。
・車両が定速走行中であること(ステップS104)。具体的には、車速SPDと目標速度Vsとの差(=|SPD−Vs|)が所定値α以下であること。
【0040】
これら条件では、車両が定速走行モードで走行中であって、且つ車速SPDと目標速度Vsとの乖離が小さい状態であることが判断される。
そして、上記各条件の一方でも満たされない場合には(ステップS102或いはステップS104:NO)、それら条件が共に満たされるようになるまで、ステップS102及びS104の処理が繰り返し実行される。
【0041】
一方、上記各条件が共に満たされる場合には(ステップS102及びS104:YES)、このときの回転速度NEが開始時回転速度NEsとして記憶される。これと共に、開始時回転速度NEsを変動中心として前記「1/fゆらぎ」に対応した所定周期で変動させるべく、目標回転速度NEyが設定される(ステップS106)。そして、この目標回転速度NEyに基づき、上記アクチュエータ10aの駆動が制御されて、スロットル開度TAが制御される。なお、本実施の形態では、このステップS106の処理が、回転速度NEが所定周期をもって変動するように機関出力を制御する制御手段として機能する。
【0042】
また、これに併せて、無段変速機3の目標変速比Ryが、目標回転速度NEy及び目標速度Vsに基づき上式(1)から算出される(ステップS108)。そして、この目標変速比Ryに基づき無段変速機3の変速比Rが制御される。なお、本実施の形態では、このステップS108の処理が、回転速度NEの変動に伴う車速SPDの変動が抑制されるように無段変速機3の変速比Rを変更する変更手段として機能する。
【0043】
このように目標回転速度NEy及び目標変速比Ryが設定された後、以下の(条件イ)及び(条件ロ)が満たされているか否かが判断される。
(条件イ)アクセルペダルやブレーキペダルが踏み込まれた等、定速走行モードの選択を解除する解除条件が成立したこと(ステップS110)。
(条件ロ)目標速度Vsと車速SPDとの偏差が所定値βよりも大きくなっていること(ステップS112)。
【0044】
そして、それら(条件イ)及び(条件ロ)が共に満たされていないときには(ステップS110及びS112:NO)、目標回転速度NEy及び目標変速比Ryを算出する処理が繰り返し実行される(ステップS106及びS108)。
【0045】
その後、上記(条件イ)及び(条件ロ)の一方でも満たされると(ステップS110或いはS112:YES)、上記目標回転速度NEy及び目標変速比Ryの設定が共に解除され(ステップS114)、上記回転速度NE及び変速比Rを変動させる処理が停止される。その後、本処理は一旦終了される。
【0046】
本実施の形態では、上記ステップS110、S112、S114の処理が、前記制御手段による機関出力の制御を禁止する禁止手段として機能する。
なお、上記(条件イ)が満たされると(ステップS110:YES)、定速走行モードの選択が解除され、走行モードは通常走行モードに設定される。一方、上記(条件ロ)が満たされる場合には(ステップS112:YES)、上記回転速度NE及び無段変速機3の変速比Rにかかる処理が停止されるが、定速走行モードでの車両の走行は継続される。すなわちこの場合には、その後において車速SPDを目標速度Vsとするべく、その速度差(=SPD−Vs)に基づく前記協調制御が実行される。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)定速走行モードが選択されているときに、回転速度NEが所定周期をもって変動するように機関出力を制御して、内燃機関1をその音源とする車両走行音の音色や大きさを所定周期をもって変動させるようにした。またその一方で、こうした回転速度NEの変動に伴う車速SPDの変動が抑制されるように、無段変速機3の変速比Rを変更するようにした。このため、車速SPDの変動を極力抑えつつ、運転者に対して適度の刺激を与えてその疲労感や倦怠感の緩和を図ることができる。
【0048】
(2)また、回転速度NEを変動させる際の基準を、その時々の回転速度NEではなく、上記機関出力の制御を開始した時の回転速度(開始時回転速度NEs)とした。このため、上記機関出力の制御によるものとは別に、例えば車両走行状態の変化に起因する回転速度NEの変動が生じた場合であっても、その影響を受けることなく安定した制御性を確保することができるようになる。
【0049】
(3)また、開始時回転速度NEsが回転速度NEの変動中心となるように機関出力を制御するようにした。このため、上記機関出力の制御が実行されることに伴う機関燃焼状態の変化を抑えつつ、回転速度NEの変動幅を確保することができる。
【0050】
(4)目標速度Vsと目標回転速度NEyとに基づいて目標変速比Ryを算出するようにした。回転速度NEの変動に伴う車速SPDの変動が抑制されるように無段変速機3の変速比Rを変更するには、変速比R、回転速度NE、並びに車速SPDをパラメータとする関数値(R×SPD/NE)が一定値となるように変速比Rを設定すればよい。ここで、実際の車両にあっては、変速比R、車速SPD、回転速度NEのうちの一つのパラメータを変更することに伴う他のパラメータの変化が通常、所定の応答遅れをもって生じる。このため、目標変速比Ryの算出に際して、車速SPD、回転速度NEを用いるようにすると、こうした遅れ要素の存在する制御系に特有の不安定振動、いわゆるハンチング現象が発生するおそれがある。この点、本実施の形態のように、目標変速比Ryの算出に際して、目標速度Vsと目標回転速度NEyとを用いることで、そうしたハンチング現象の発生を抑制することができる。
【0051】
(5)また、車速SPDと目標速度Vsとの偏差が所定値βを超えたときに上記機関出力の制御を禁止するようにした。これにより、車速SPDと目標速度Vsとの乖離が大きくなった場合に、車速SPDを目標速度Vsに復帰させるべく、機関制御や変速機制御を実行することが可能になる。
【0052】
(6)また、所定周期として、開始時回転速度NEsの逆数に比例する周期を設定するようにした。これにより、内燃機関1をその音源とする車両走行音についてこれを回転速度NEの逆数に比例する周期、すなわち「1/fゆらぎ」に対応した周期で変動させることができ、運転者の疲労感や倦怠感についてそれらをより効果的に緩和することができる。
【0053】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では、所定周期として、「1/fゆらぎ」に対応する周期を用いるようにしたが、これに限られない。「1/fゆらぎ」に対応する周期とは若干異なる周期や、同周期とは全く異なる周期を用いることも可能である。要は、運転者の疲労感や倦怠感を好適に緩和させる効果が見込めるのであれば、上記所定周期は任意に変更可能である。
【0054】
・上記実施の形態では、目標回転速度NEyを設定するとともに、この目標回転速度NEyに基づきスロットル開度TAを制御することで、回転速度NEを所定周期で変動させるようにした。これに代えて、目標回転速度NEyに基づき燃料噴射量を制御することで、回転速度NEを所定周期で変動させるようにしてもよい。
【0055】
・上記実施の形態では、変動制御開始時の回転速度(開始時回転速度NEs)を中心値として、回転速度NEを所定周期で変動させることの可能な目標回転速度NEyを算出するようにしたが、これに限られない。例えば、上記開始時回転速度NEsを必ずしも中心値として用いる必要もなく、その基準となる値として用いればよい。
【0056】
・上記実施の形態では、目標変速比Ryを目標回転速度NEyと目標速度Vsとに基づき前記関係式(1)から算出するようにした。目標変速比Ryの算出手法は、回転速度NEの変動と同期して、無段変速機3の変速比Rを変動させることの可能な手法であれば、任意に変更可能である。
【0057】
・上記実施の形態において、更に回転速度NEを変動させる際の変動幅を周期的に変動させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態が適用される車両の概略構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態にかかる変動処理の処理態様の一例を示すタイミングチャート。
【図3】同変動処理の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…内燃機関、2…クランクシャフト、3…無段変速機、4…駆動輪、5…電子制御装置、10…スロットルバルブ、10a…アクチュエータ。

Claims (6)

  1. 内燃機関の出力が無段変速機を介して駆動輪に伝達される車両の制御装置であって、
    車両走行モードとして車両走行速度を目標速度に維持する定速走行モードが選択されているときに前記内燃機関の回転速度が所定周期をもって変動するように機関出力を制御するものであって、その制御を開始する時の回転速度の値を同回転速度を変動する際の基準値とする制御手段と、
    前記制御手段により回転速度を変動させる際にその変動に伴う車両走行速度の変動が抑制されるように前記無段変速機の変速比を変更する変更手段と
    を備えることを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記制御手段は前記機関出力の制御を開始する時の回転速度の値が同回転速度の変動中心となるように機関出力を制御する
    請求項1記載の車両の制御装置。
  3. 前記制御手段は回転速度についてその目標値を設定し、回転速度の実際値がこの目標値と一致するように機関出力をフィードバック制御するものであり、
    前記変更手段は前記目標速度と前記目標値との関係に基づき前記変速比についてその目標値を設定する
    請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置。
  4. 車両走行速度についてその実際値と前記目標速度との偏差が所定値を超えたときに前記制御手段による機関出力の制御を禁止する禁止手段を更に備える
    請求項1乃至3の何れかに記載の車両の制御装置。
  5. 前記制御手段は前記所定周期を回転速度の逆数に比例する周期に設定する
    請求項1乃至4の何れかに記載の車両の制御装置。
  6. 内燃機関の出力が無段変速機を介して駆動輪に伝達される車両の制御装置であって、
    車両走行モードとして車両走行速度を目標速度に維持する定速走行モードが選択されているときに前記内燃機関の回転速度が同回転速度の逆数に比例する周期をもって変動するように機関出力を制御する制御手段と、
    前記制御手段により回転速度を変動させる際にその変動に伴う車両走行速度の変動が抑制されるように前記無段変速機の変速比を変更する変更手段と
    を備えることを特徴とする車両の制御装置。
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