JP2005029128A - 車両の定速走行装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 目標車速の更新時における応答性を向上させること。
【解決手段】 ECU30は、車両10を一定速度で走行させるための定速走行制御機能を有しており、スイッチユニット32の各スイッチ33〜36の押下状態に応じて目標車速の設定を行う。ECU30は、アップスイッチ33又はダウンスイッチ34の押下操作に基づき相異なる複数の制御則に従って目標車速を設定し、該設定した目標車速により定速走行制御を実施する。また、複数の制御則の少なくとも何れか1つの実行条件が成立した時、全ての制御則のうちで何れを適用すべきかが確定されなくとも実行条件成立の制御則に従って目標車速の更新を開始する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車両の定速走行装置に関するものである。
従来より、車両を所定の目標車速にて定速走行させる定速走行装置(いわゆるクルーズコントロール)が実用化されており、定速走行装置における目標車速の設定方法として、例えば特許文献1,特許文献2が知られている。また、目標車速を更新するための複数の手法を、ドライバの要求を反映したクルーズスイッチの操作入力に基づいて使い分けるようにしたものがある。目標車速を増加させる場合について例示すると、次の(a),(b)の手法が使い分けられる。(a)定速走行制御中に加速用スイッチが所定時間未満(例えば1秒未満)の短い時間で押下された場合、目標車速を1〜2km/hだけ増加させる。(b)定速走行制御中に加速用スイッチが所定時間以上(例えば1秒以上)の長い時間継続して押下された場合、スイッチ操作が解除された時の実車速にまで目標車速を増加させる。目標車速を減少させる場合も概ね同様である。
特公平3−21373号公報 特公平3−21374号公報
一般に、加速時と減速時とでは別々のスイッチ入力が採用されるが、コスト削減やドライバの操作性向上を図るべく、例えば加速時には前記(a),(b)の手法の使い分けは上述の通り同一スイッチの押下時間に基づいて行われる。従って、ドライバにより加速用スイッチが押下されてもその直後には前記(a),(b)の何れの手法を用いればよいのか、すなわちドライバの要求が何れであるかが確定できず、当該スイッチの押下が一旦解除されるか又は押下時間が所定時間(1秒程度)を超えるのを待って確定される。ドライバの要求が確定されるまでの間は目標車速が更新できない。故に従来技術では、例えばドライバが加速を要求しているにもかかわらず目標車速の増加処理ができず、ドライバによる要求に対する応答性が悪いという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、目標車速の更新時における応答性を向上させることができる車両の定速走行装置を提供することである。
請求項1に記載の発明では、車両を定速走行させるための目標車速が、ドライバの加速又は減速要求を示す入力に基づき相異なる複数の制御則に従って設定され、該設定された目標車速により定速走行制御が実施される。そして特に、前記入力により複数の制御則の少なくとも何れか1つの実行条件が成立した時、全ての制御則のうちで何れを適用すべきかが確定されなくとも実行条件成立の制御則に従って目標車速の更新が開始される。
要するに、複数の制御則のうち何れか1つの実行条件が成立しても他の制御則の実行条件が不成立であれば、何れの制御則を適用すればよいのかは確定されないが、本発明によれば、制御則の確定を待たずに目標車速の更新が開始される。例えば、加速要求を示す入力が確認できれば、適用される制御則が確定されなくとも、取りあえず目標車速の増加処理が開始される。その結果、目標車速の更新時における応答性を向上させることができるようになる。
なお、「加速又は減速要求を示す入力」は目標車速を増加させるか又は減少させるかで各々共通とされればよく、加速要求を示す入力により増速のための複数の制御則が使い分けられ、減速要求を示す入力により減速のための複数の制御則が使い分けられる。また、「複数の制御則」は、例えば目標車速を所定値だけ増加又は減少させる制御則、同目標車速を実車速に合わせて増加又は減少させる制御則等よりなる。
請求項2に記載の発明では、ドライバによる加速要求又は減速要求を反映した操作入力部の操作量が前記入力となっており、該操作入力部の操作量が所定の閾値を超えるか否かに応じて、前記複数の制御則が択一的に適用される。操作入力部の操作量は、例えば目標車速増加用のスイッチ又は目標車速減少用のスイッチの押下時間であり、当該スイッチの押下時間に応じて複数の制御則の使い分けがなされる。この場合、ドライバの加速要求又は減速要求に対する応答性が改善される。また、その都度実際に適用される制御則は1つであり、適合工数を削減することができる。
前記請求項2の発明では請求項3に記載したように、前記複数の制御則を択一的に適用するための前記閾値よりも小さい別の閾値を設定しておき、操作入力部の操作量が前記別の閾値未満となる場合、目標車速の更新を許可しないようにすると良い。この場合、ドライバの意に反して操作入力部が操作されたり、ノイズが生じたりしても、それらによる悪影響をキャンセルすることができる。
請求項4に記載の発明では、前記複数の制御則の少なくとも何れか1つの実行条件が成立した時、当該実行条件が成立した制御則とそれ以外の制御則とにより各々目標車速の演算が開始されると共に、各制御則の実行条件が成立する都度、各制御則による目標車速が順次切り替えて設定される。この場合、少なくとも実行条件が成立した制御則とその次に移行すると考えられる制御則とによって目標車速が演算されると良い。本請求項4によれば、制御則をいつ切り替えるにしても、切り替えるべき目標車速が共に取得できており、高応答で目標車速の切り替えが実施できる。
因みに、目標車速の切り替え時における応答性を向上させる技術として、切り替え前の目標車速にオフセットを加算するものが知られているが、これでは、通常の目標車速の更新とオフセットの管理とを共に実施しなくてはならず、仕様の複雑化や適合の煩雑化を招く。また、ドライバが加速感を感じる車速の変化が開始時の車速に依存するため、広い車速域で応答性を向上するには設定できるオフセットの数を多く取る必要があり、これは適合工数を増大させる原因にもなる。これに対し、請求項4によれば、オフセットを使用せずとも応答性の向上効果が得られ、更には広い車速域で応答性が向上するためドライバの加速感を満足できるようになる。
前記請求項4の発明では請求項5に記載したように、前記複数の制御則により演算した目標車速を切り替える際、新たな目標車速に対してなまし処理が施されると良い。この場合、目標車速が滑らかに切り替えられるため、目標車速を急激に切り替えることに起因してドライバビリティが悪化するといった不都合を回避することができる。
また、請求項6に記載の発明では、切り替え前の目標車速と切り替え後の目標車速との差分に基づき当該差分が大きいほどなまし度合を小さくするようにしてなまし処理が実施される。この場合、切り替え前後の目標車速の差分が大きいとなまし度合が小さくされ、目標車速の収束が早められる。故に、切り替え前後の目標車速の差分に関わらず、常に高応答で目標車速の切り替えを実施することができる。
また、請求項7に記載の発明では、車両を定速走行させるための目標車速が、ドライバによる加速要求又は減速要求を反映した操作入力部の操作量に基づいて少なくとも所定値だけ増加又は減少させる第1制御則と実車速に合わせて増加又は減少させる第2制御則との何れかにより設定され、該設定された目標車速により定速走行制御が実施される。そして特に、前記操作入力部の操作量が前記第1制御則の実行条件たる第1閾値を超えた時、第1制御則及び第2制御則の各々により目標車速の演算が開始されると共に、前記第2制御則の実行条件たる第2閾値(但し、第1閾値<第2閾値)を超える前であっても第1制御則に従って目標車速の更新が開始される。また、前記操作入力部の操作量が第2の閾値を超えた時、目標車速が第1制御則によるものから第2制御則によるものに切り替えて設定される。
要するに、操作入力部の操作量が第1閾値を超えただけでは、ドライバの加速要求又は減速要求が第1制御則、第2制御則の何れであるかが確定できないが、本発明によれば、制御則の確定を待たずに目標車速の更新が開始される。例えば、ドライバの要求が加速要求であることが確認できれば、適用される制御則が確定されなくとも、取りあえず目標車速の増加処理が開始される。その結果、目標車速の更新時における応答性を向上させることができるようになる。また、第1制御則から第2制御則にいつ切り替えるにしても、切り替えるべき目標車速が共に取得できており、高応答で目標車速の切り替えが実施できる。また、オフセットを使用せずとも応答性の向上効果が得られ、更には広い車速域で応答性が向上するためドライバの加速感を満足できるようになる。
前記請求項7の発明では請求項8に記載したように、目標車速を第1制御則によるものから第2制御則によるものに切り替える際、新たな目標車速に対してなまし処理が施されると良い。この場合、目標車速が滑らかに切り替えられるため、目標車速を急激に切り替えることに起因してドライバビリティが悪化するといった不都合を回避することができる。
また、請求項9に記載の発明では、第1制御則による目標車速と第2制御則による目標車速との差分に基づき当該差分が大きいほどなまし度合を小さくするようにしてなまし処理が実施される。この場合、切り替え前後の目標車速の差分が大きいとなまし度合が小さくされ、目標車速の収束が早められる。故に、切り替え前後の目標車速の差分に関わらず、常に高応答で目標車速の切り替えを実施することができる。
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、車両制御システムの概要を示す構成図である。図1の車両10において、エンジン11は例えば多気筒火花点火式ガソリンエンジンにて構成されており、周知の通り燃焼室内に導入された空気が燃料と共に燃焼に供されることにより所望の出力トルクを発生する。そして、エンジン11のクランクシャフトの回転がトルクコンバータ12やトランスミッション13を介して駆動軸たるドライブシャフト14に伝達され、更にディファレンシャルギア15等を介して駆動輪16に伝達される。この駆動輪16の回転により車両10が走行する。
前記車両10において、エンジン回転数、吸入空気量、吸気管圧力、スロットル開度等々のエンジン運転状態は各種センサ21により検出され、それら検出信号はECU(電子制御ユニット)30に入力される。また、トランスミッション13にはギア位置を検出するためのギア位置センサ22が設けられると共に、駆動輪16に連結された車軸17にはその回転により車速を検出するための車速センサ23が設けられており、これら各センサ22,23の検出信号もECU30に入力される。
ECU30は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、エンジン運転状態等に応じて最適な燃料噴射量、点火時期、スロットル開度等を演算し、その演算結果に基づいてエンジン10の運転を制御する。
また、ECU30は、車両10を一定速度で走行させるための定速走行制御機能を有しており、定速走行制御に使用する各種スイッチの操作入力を取り込んでその都度最適な定速走行制御を実施する。定速走行制御に際し、ECU30は、車両速度が目標車速に一致するよう、スロットル開度、燃料噴射量、点火時期等を適宜制御する。
各種スイッチについて詳しくは、マスタスイッチ31は定速走行制御の実施を許可又は禁止するためのものであり、ECU30は、マスタスイッチ31がONされていることを条件に定速走行制御の実施を許可する。スイッチユニット32は、アップスイッチ33、ダウンスイッチ34、キャンセルスイッチ35、レジュームスイッチ36が一体に設けられたスイッチアセンブリであり、ECU30は、当該スイッチユニット32の各スイッチ33〜36の押下状態に応じて目標車速の設定を行う。アップスイッチ33は、目標車速を増加させるための設定スイッチであり、当該アップスイッチ33が押下されることを条件に、後述するタップアップ制御則又はアクセル制御則の何れかに従いECU30により目標車速が加増される。また、ダウンスイッチ34は、目標車速を減少させるための設定スイッチであり、当該ダウンスイッチ34が押下されることを条件に、後述するタップダウン制御則又はコースト制御則の何れかに従いECU30により目標車速が減じられる。その他、キャンセルスイッチ35が押下されると、定速走行制御が一時的に停止(キャンセル)され、その後レジュームスイッチ36が押下されると、一時停止時の目標車速が読み出されて当該定速走行制御が再開されるようになっている。アップスイッチ33及びダウンスイッチ34が「操作入力部」に相当する。
ブレーキスイッチ37はブレーキペダルの踏み込み操作の有無を検出するものであり、運転者によるブレーキ操作時にはブレーキONの信号をECU30に出力する。ブレーキスイッチ37がONされることで、定速走行制御が一時的に停止されるようになっている。
ECU30は、アップスイッチ33及びダウンスイッチ34より各スイッチの押下信号を取り込み、目標車速の設定に際して当該押下信号のON時間に応じて複数の制御則を選択的に実施する。以下、アップスイッチ33の押下状態(押下信号のON時間)に応じて実施されるタップアップ制御則及びアクセル制御則と、ダウンスイッチ34の押下状態(押下信号のON時間)に応じて実施されるタップダウン制御則及びコースト制御則とを説明する。
(1)タップアップ制御則
これは、目標車速を所定の微少量だけ増加させる微加速の制御則であり、具体的には、定速走行制御中にアップスイッチ33が所定時間(例えば0.5秒)よりも短い時間で押下された場合に、2km/h程度だけ目標車速を増加させるものである。
(2)アクセル制御則
これは、目標車速を連続的に増加させる連続加速の制御則であり、具体的には、定速走行制御中にアップスイッチ33が所定時間(例えば0.5秒)以上押下され続けた場合に、実車速に合わせて目標車速を増加させるものである。
(3)タップダウン制御則
これは、目標車速を所定の微少量だけ減少させる微減速の制御則であり、具体的には、定速走行制御中にダウンスイッチ34が所定時間(例えば0.5秒)よりも短い時間で押下された場合に、2km/h程度だけ目標車速を減少させるものである。
(4)コースト制御則
これは、目標車速を連続的に減少させる連続減速の制御則であり、具体的には、定速走行制御中にダウンスイッチ34が所定時間(例えば0.5秒)以上押下され続けた場合に、実車速に合わせて目標車速を減少させるものである。
なお、アップスイッチ33又はダウンスイッチ34からの押下信号のON時間が規定時間(例えば0.2秒程度)よりも短い場合には、当該押下信号がドライバの意に反したもの、又はノイズ信号である可能性が高い。故に、アップスイッチ33又はダウンスイッチ34からの押下信号のON時間が規定時間よりも短い場合には、前記(1)〜(4)の各制御則の実施が許可されないようになっている。前記(1),(3)のタップアップ制御則、タップダウン制御則が「第1制御則」に相当し、前記(2),(4)のアクセル制御則、コースト制御則が「第2制御則」に相当する。
次に、ECU30による定速走行制御手順を詳しく説明する。図2は、加速時における定速走行制御処理を示すフローチャートであり、本処理はECU30により所定時間毎(例えば8msec毎)に実行される。
図2において、先ずステップS101では、アップスイッチ33が押下されたか否か、すなわち当該アップスイッチ33の押下信号がONであるか否かを判別する。そして、当該アップスイッチ33が押下されていることを条件に、ステップS102で押下時間カウンタをインクリメントする。なお、アップスイッチ33が開放されていれば、ステップS114に進んで押下時間カウンタをクリアする。
押下時間カウンタのインクリメント後、ステップS103では、当該押下時間カウンタの値がタップアップ判定閾値である第1判定値K1(例えば0.2秒相当の値)以上であるか否かを判別する。カウンタ値<K1であればそのまま本処理を終了する。すなわち、アップスイッチ33が押下されたと判定されても、その押下時間が規定時間以内であれば当該スイッチ33がドライバの意に反して操作されたか、或いはノイズによる誤判定であった可能性が高い。故にかかる場合には、目標車速の更新が許可されない。
また、カウンタ値≧K1であればタップアップ制御則の実行条件が成立し、ステップS104に進む。ステップS104では、タップアップ制御則による目標車速の計算を実施すると共に、続くステップS105では、アクセル制御則による目標車速の計算を実施する。すなわち、ステップS104では、その時の車速に対して予め定めた増速幅を加算して目標車速を算出する。また、ステップS105では、押下時間カウンタの値に応じて目標車速を増加させる。このとき、例えば図3の関係を用い、アップスイッチ33の押下時における車速に応じて目標車速の増加率を可変設定するのが望ましく、図3によれば、車速が大きいほど増加率として大きい値が設定されるようになっている。
その後、ステップS106では、押下時間カウンタの値がアクセル判定閾値である第2判定値K2(例えば0.5秒相当の値)以上であるか否かを判別する。カウンタ値<K2であればステップS107に進み、タップアップ制御則に従って目標車速を設定する。つまりこのとき、前記ステップS104により算出した目標車速が採用され、この目標車速により定速走行制御が実施される。
また、カウンタ値≧K2であればアクセル制御則の実行条件が成立し、ステップS108に進む。ステップS108では、1回前の押下時間カウンタの値が第2判定値K2よりも小さいか否かを判別する。押下時間カウンタの値が第2判定値K2以上となったタイミングであれば、ステップS108が成立してステップS109に進み、その次のタイミングであれば、ステップS108が不成立となりステップS109を読み飛ばす。故に、カウンタ値≧K2が成立した初回のタイミングでのみ、ECU30は、ステップS109でなまし係数を算出する。具体的には、例えば図4の関係を用い、タップアップ制御則による目標車速とアクセル制御則による目標車速との差分(オフセット)に応じてなまし係数を設定する。図4によれば、オフセットが大きいほど、小さいなまし係数が設定されるようになっている。なお、なまし係数が大きいことはなまし度合が大きいことを意味する。その後、ステップS110では、前記設定したなまし係数を用いて目標車速のなまし処理を実施する。
更に、ステップS111では、なまし処理後の目標車速がアクセル制御則による目標車速よりも小さいか否かを判別する。目標車速の増加時においては、目標車速をタップアップ制御則によるものからアクセル制御則によるものへと切り替える移行期においてステップS111が成立する。故に、ステップS111が成立する場合にはステップS112に進み、なまし処理結果により目標車速を設定する。つまりこのとき、前記ステップS110のなまし処理により算出した目標車速が採用され、この目標車速により定速走行制御が実施される。また、ステップS111が不成立の場合、ステップS113に進み、アクセル制御則に従って目標車速を設定する。つまりこのとき、前記ステップS105により算出した目標車速が採用され、この目標車速により定速走行制御が実施される。
なお、前記図2のフローチャートは、アップスイッチ33が押下された場合の処理、すなわち目標車速を増加させる場合の処理であったが、ダウンスイッチ34が押下された場合にも同様の処理が行われる。この減速時の場合の処理を簡単に説明すると、以下の通りである。ECU30は、ダウンスイッチ34の押下時間がタップダウン判定閾値(例えば0.2秒相当の値)以上であることを条件に、タップダウン制御則による目標車速の計算を実施すると共に、コースト制御則による目標車速の計算を実施する。コースト制御則による目標車速の計算に際し、スイッチ押下時の車速に応じて目標車速の減少率を可変設定するのが望ましいことは、目標車速の増加時と同様である。そして、前記押下時間がコースト判定閾値(例えば0.5秒相当の値)未満であれば、タップダウン制御則に従って目標車速を設定する。また、同押下時間がコースト判定閾値以上になると、目標車速をタップダウン制御則によるものからコースト制御則によるものへと切り替える。なお、タップダウン制御則からコースト制御則への移行期には、前記目標車速の増加時と同様、なまし処理を実行して目標車速の設定を行うの望ましい。
図5は、目標車速の増加時を例に定速走行制御の具体的動作を示すタイムチャートである。図5において、(a)はアップスイッチ33の押下状態を、(b)はアップスイッチ33の押下時間の推移を、(c)〜(e)は目標車速の推移を、(f)は従来技術における目標車速の推移を、それぞれ示している。なお、(c)〜(e)において実線と二点鎖線とが重複する期間は2通りの目標車速が計算される期間を示しており、特に二点鎖線はアクセル制御則による目標車速の推移を示している。(c)〜(e)は何れも本実施の形態を示すものであるが、目標車速の増加率が異なるものをそれぞれ示している。但し、(c)の開始車速>(d)の開始車速となっている。
図5において、タイミングt1ではアップスイッチ33が押下され、その後タイミングt2では、アップスイッチ33の押下時間が第1判定値K1以上となる。これにより、タイミングt2以降、タップアップ制御則による目標車速とアクセル制御則による目標車速とが共に算出される。この時点では、適用すべき制御則が確定されていないが、先ずはタップアップ制御則が適用されて当該タップアップ制御則よる目標車速に従って実車速が推移する。このとき、タップアップ制御則による目標車速に関して言えば、(c)〜(e)に実線で示すように、所定幅(例えば2km/h程度)だけ目標車速が増加され、現実にはこの所定幅分の増加が小刻みに行われてタイミングt2以降実車速が次第に上昇する。また、アクセル制御則による目標車速に関して(c)〜(e)を比較すると、各々二点鎖線で示すように、(c)では、t2時点での実車速が比較的大きいことから比較的大きい増加率にて目標車速が推移し、(d)では、t2時点での実車速が比較的小さいことから比較的小さい増加率にて目標車速が推移している。また、(e)では、単にt2時点での実車速だけでなく、時間の経過と伴って目標車速の増加率が変更されており、故に、緩やかな弓なり状をなすようにして目標車速が推移している。
その後、タイミングt3ではアップスイッチ33が開放される。この時点ではアップスイッチ33の押下時間が第2判定値K2に達していないため、アクセル制御則による目標車速に切り替えられることはない。
(f)に示す従来技術と比較すると、この従来技術の場合はその時適用される制御則が確定するタイミング、すなわち図のタイミングt3で目標車速が決定されて実車速が上昇し始めるのに対し、(c)〜(e)に示す本実施の形態の場合はアップスイッチ33の押下時間が第1判定値K1以上となったタイミングt2以降で目標車速が決定されて実車速が上昇し始める。このことから、目標車速を変更する際の応答性が向上しているのが分かる。
また、タイミングt4ではアップスイッチ33が再び押下され、その後タイミングt5では、アップスイッチ33の押下時間が第1判定値K1以上となる。これにより、タイミングt5以降、前記タイミングt2以降と同様に、タップアップ制御則による目標車速とアクセル制御則による目標車速とが共に算出され、先ずはタップアップ制御則による目標車速に従って実車速が次第に上昇する。アクセル制御則による目標車速も、二点鎖線で示す通り前記タイミングt2以降と同様に推移する。
その後、タイミングt6では、アップスイッチ33の押下時間が第2判定値K2に達し、適用される目標車速がタップアップ制御則によるものからアクセル制御則によるものに切り替えられる。このとき、なまし処理した目標車速を適用する移行期間(例えば(c)の期間TA)を経て、目標車速の切り替えが行われる。この切り替えに際し、例えば(c)と(d)とを比較すると、タイミングt6においてタップアップ制御則による目標車速とアクセル制御則による目標車速とのオフセットが相違し、(c)の方がオフセットが大きくなっている。この場合、前記図4の関係によれば、オフセットが大きいほど小さいなまし係数が用いられることになり、新たな目標車速に対する応答性が向上する。故に、オフセットが相違するとしても、殆ど同じ移行期間を経て目標車速の切り替えが行われる。
その後、タイミングt7ではアップスイッチ33が開放され、それ以降、その時の目標車速、すなわちアクセル制御則による目標車速で車両が定速走行される。
(f)に示す従来技術と比較すると、この従来技術の場合はその時適用される制御則が確定するタイミング、すなわち図のタイミングt6で目標車速が決定されて実車速が上昇し始めるのに対し、(c)〜(e)に示す本実施の形態の場合はアップスイッチ33の押下時間が第1判定値K1以上となったタイミングt5以降で目標車速が決定されて実車速が上昇し始める。このことから、目標車速を変更する際の応答性が向上しているのが分かる。また、(f)に示す従来技術の場合、タイミングt6において、その都度必要なオフセットが別途設定され、そのオフセットが切り替え前の目標車速に加算されるようになっているが、本実施の形態では、こうしたオフセットの処理が不要となる。
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
アップスイッチ33又はダウンスイッチ34の押下操作に伴い何れかの制御則の実行条件が成立した時、どの制御則を適用すべきかが確定されなくとも実行条件成立の制御則に従って目標車速の更新が開始されるため、制御則の確定を待たずに目標車速の更新を実行することができる。その結果、目標車速の更新時における応答性を向上させることができるようになる。特に、ドライバの加速要求又は減速要求に対する応答性が改善される。
また、例えば加速時においてアップスイッチ33の押下操作に伴いタップアップ制御則の実行条件が成立した時、タップアップ制御則及びアクセル制御則の両方により各々目標車速の演算が開始されるため、制御則をいつ切り替えるにしても、高応答で目標車速の切り替えが実施できる(減速時も同様)。この場合、応答性向上を目的として切り替え前の目標車速にオフセットを加算するといった処理を必要とせずとも応答性の向上効果が得られる。更には、広い車速域で応答性が向上するためドライバの加速感を満足できるようになる。
複数の制御則による目標車速を切り替える際、新たな目標車速に対してなまし処理が施されるため、目標車速を急激に切り替えることに起因してドライバビリティが悪化するといった不都合を避けることができる。このとき、切り替え前後の目標車速のオフセットが大きいとなまし度合が小さくされ、目標車速の収束が早められる。故に、切り替え前後の目標車速のオフセットに関わらず、常に高応答で目標車速の切り替えを実施することができる。
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
定速走行制御の制御則として、ステアリングの操作角度をパラメータとして追加した制御則を用いる。この制御則では、図6に示すように、アップスイッチ33の押下時における車速とその都度のステアリング操作角度とに応じて目標車速の増加率が設定される。図6によれば、車速が大きいほど又はステアリング操作角度が小さいほど、目標車速の増加率として大きい値が設定されるようになっている。
制御則を3つ以上用意しておき、それら制御則を順次切り替えて使い分けるようにしても良い。この場合、少なくとも1つの制御則の実行条件が成立した後、常に全ての制御則により目標車速を演算しても良いが、必ずしも全ての制御則により目標車速を演算しなくとも、少なくとも実行条件が成立した制御則とその次に移行すると考えられる制御則とにより目標車速を演算する構成としても良い。
上記実施の形態では、目標車速の切り替え時になまし処理を実施する際、なまし係数を可変設定したが、これを固定値としても良い。
発明の実施の形態における車両制御システムの概要を示す構成図である。 加速時における目標車速の設定処理を示すフローチャートである。 目標車速の増加率を設定するための図である。 なまし係数を設定するための図である。 定速走行制御の具体的動作を示すタイムチャートである。 目標車速の増加率を設定するための図である。
符号の説明
10…車両、
11…エンジン、
30…ECU、
32…スイッチユニット、
33…アップスイッチ、
34…ダウンスイッチ。

Claims (9)

  1. 車両を定速走行させるための目標車速を、ドライバの加速又は減速要求を示す入力に基づき相異なる複数の制御則に従って設定し、該設定した目標車速により定速走行制御を実施する車両の定速走行装置において、
    前記入力により前記複数の制御則の少なくとも何れか1つの実行条件が成立した時、全ての制御則のうちで何れを適用すべきかが確定されなくとも実行条件成立の制御則に従って目標車速の更新を開始することを特徴とする車両の定速走行装置。
  2. ドライバによる加速要求又は減速要求を反映した操作入力部の操作量を前記入力とし、該操作入力部の操作量が所定の閾値を超えるか否かに応じて、前記複数の制御則を択一的に適用することを特徴とする請求項1記載の車両の定速走行装置。
  3. 請求項2記載の定速走行装置において、前記複数の制御則を択一的に適用するための前記閾値よりも小さい別の閾値を設定しておき、操作入力部の操作量が前記別の閾値未満となる場合、目標車速の更新を許可しないことを特徴とする車両の定速走行装置。
  4. 前記複数の制御則の少なくとも何れか1つの実行条件が成立した時、当該実行条件が成立した制御則とそれ以外の制御則とにより各々目標車速の演算を開始すると共に、各制御則の実行条件が成立する都度、各制御則による目標車速を順次切り替えて設定することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車両の定速走行装置。
  5. 請求項4記載の定速走行装置において、前記複数の制御則により演算した目標車速を切り替える際、新たな目標車速に対してなまし処理を施すことを特徴とする車両の定速走行装置。
  6. 請求項5記載の定速走行装置において、前記なまし処理は、切り替え前の目標車速と切り替え後の目標車速との差分に基づき当該差分が大きいほどなまし度合を小さくするものであることを特徴とする車両の定速走行装置。
  7. 車両を定速走行させるための目標車速を、ドライバによる加速要求又は減速要求を反映した操作入力部の操作量に基づいて少なくとも所定値だけ増加又は減少させる第1制御則と実車速に合わせて増加又は減少させる第2制御則との何れかにより設定し、該設定した目標車速により定速走行制御を実施する車両の定速走行装置において、
    前記操作入力部の操作量が前記第1制御則の実行条件たる第1閾値を超えた時、第1制御則及び第2制御則の各々により目標車速の演算を開始すると共に、前記第2制御則の実行条件たる第2閾値(但し、第1閾値<第2閾値)を超える前であっても第1制御則に従って目標車速の更新を開始し、前記操作入力部の操作量が第2の閾値を超えた時、目標車速を第1制御則によるものから第2制御則によるものに切り替えて設定することを特徴とする車両の定速走行装置。
  8. 請求項7記載の定速走行装置において、目標車速を第1制御則によるものから第2制御則によるものに切り替える際、新たな目標車速に対してなまし処理を施すことを特徴とする車両の定速走行装置。
  9. 請求項8記載の定速走行装置において、前記なまし処理は、第1制御則による目標車速と第2制御則による目標車速との差分に基づき当該差分が大きいほどなまし度合を小さくするものであることを特徴とする車両の定速走行装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009001276A (ja) * 2008-08-18 2009-01-08 Toyota Motor Corp クルーズコントロール制御の設定車速変更装置
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