JP3988578B2 - 脱硫スラグの再利用方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱硫スラグの再利用方法に係わり、詳しくは、転炉装入前の溶銑から予め珪素、硫黄、燐等を除去する所謂「溶銑予備処理」で、脱硫処理時に発生したスラグ(以下、脱硫スラグという)を、脱燐処理時の脱燐用フラックスの一部として再利用する技術である。
【0002】
【従来の技術】
近年、製鋼では、転炉吹錬の負荷軽減、製鋼トータルコストのミニマム化を図るため、溶銑が含有する珪素、硫黄、燐を、該溶銑を転炉へ装入する前に除去することが普及している(これを「溶銑予備処理」と称する)。この「溶銑予備処理」の脱燐工程の一つに、図1に示すような溶銑の収納容器であるトピード・カー1等に保持した溶銑2へ、該溶銑1に浸漬したランス3を介して脱燐用フラックス、酸化剤(酸化鉄等の固体酸素含有物質)を吹き込むものがある(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、この脱燐工程を利用して溶銑2の脱燐を行った場合、溶銑2や形成されたスラグ(ノロともいう)4を払い出す前のわずかな時間の間に、トピード・カー1内に未反応で残存した前記酸化剤が溶銑2中Cと反応し、生成したCOガスに起因して、所謂「ノロ沸き」(スラグ・フォーミングともいう)の起きることがある。この「ノロ沸き」は、溶銑2の払い出し時間を遅延し、生産性を低下させるので、できるだけ回避するのが好ましい。そのため、従来は、脱燐処理時に形成されるスラグ4の塩基度を2.0以上に保つべく、生石灰(CaO)を溶銑に吹込む、又は上置きするという対策をとっていた。塩基度が2.0以上であると、スラグ4の粘性が小さく、前記COガスが通過し易くなり、「ノロ沸き」が抑制できるからである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002-69519号公報(2頁、左欄の37行〜50行)
しかしながら、このような対策では、スラグ4の塩基度を上昇させるため、石灰原単位そのものが増加するばかりでなく、その後の脱硫工程及び転炉での脱炭工程も含めた全製鋼工程で発生するスラグ量の原単位が増し、所謂「廃棄物」の量が増加するという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情を鑑み、溶銑予備処理の脱燐で使用する生石灰の量を低減するばかりでなく、転炉での脱炭処理も含めての全製鋼工程で発生するスラグ量も低減可能な脱硫スラグの再利用方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0007】
すなわち、本発明は、収納容器に保持した溶銑へ、浸漬ランスを介して生石灰系の脱燐用フラックス及び固体酸化剤を吹き込み、該溶銑の予備処理脱燐を行うに際して、前記収納容器に保持した溶銑へ、該溶銑上に形成されるスラグの塩基度(CaO/SiO2)が1.0〜2.5になるように、別途行った溶銑の予備処理脱硫で発生したスラグを投入することを特徴とする脱硫スラグの再利用方法である。この場合、前記溶銑の予備処理脱硫で発生したスラグの投入時期を、予備処理脱燐の開始前又は終了直後とするのが好ましい。
【0008】
本発明によれば、脱燐処理時に形成されるスラグの塩基度を上昇させる手段である石灰源として、その後工程の脱硫処理で発生するスラグ(以下、脱硫スラグという)を再利用するようにしたので、別途投入する生石灰CaO量の低減が可能となり、これにより製鋼工程で発生する全スラグの量も低減できるようになる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
まず、発明者は、脱燐処理時のスラグ塩基度を適切な値とし、脱燐終了後の溶銑払い出しに際してのノロ沸きを防止することについて検討した。その結果、脱燐処理の前に行う脱珪処理で形成されたスラグ(残留スラグという)を徹底して除去するか、脱燐処理で生石灰の投入量を増やす必要があると結論した。ところが、前記残留スラグの完全除去は難しいので、生石灰の投入量増加を主体にせざるを得ない。しかしながら、生石灰の投入量増加は脱燐処理のコストを高める。そこで、発明者は従来より使用している脱燐用フラックスの生石灰に代え、もっと安価な物質の利用を考え、脱燐処理の後で行う脱硫処理で発生する前記脱硫スラグに着目した。この脱硫スラグは、表1に示すように塩基度が10以上と非常に大きいからである。
また、硫黄含有量が1.2質量%と高く、一般的な精錬スラグの用途(例えば、路盤材等の土木・建築用材料)に適さず、処置に困って現在製鉄所内に放置されているからでもある。
【0011】
【表1】
Figure 0003988578
【0012】
そして、ノロ沸き防止の実験を実施したところ、脱燐処理前/終了直後にトピード・カー及び/又は溶銑鍋等の溶銑の収納容器への投入で良好な結果を得、その知見を基に本発明を完成させたのである。つまり、これにより別途投入する生石灰(CaO)量の低減が可能となり、且つ製鋼で発生する全スラグの量も低減できるようになった。
【0013】
本発明の重要なポイントは、前記収納容器に保持した溶銑へ、該溶銑上に形成されるスラグの塩基度(CaO/SiO2)が1.0〜2.5になるように、前記脱硫スラグの量を調整して投入することである。具体的には、脱燐処理前に前記脱珪後の残留スラグとして存在するスラグの重量は、通常1〜15kg/溶銑tであるので、前記塩基度と脱硫スラグの組成を配慮すると、脱硫スラグの投入量は1〜10kg/溶銑t程度になる。
【0014】
また、本発明で脱燐処理で形成されるスラグの塩基度を1.0〜2.5としたのは、1.0未満では、ノロ沸きが防止できず、2.5超えでは、スラグの融点が高くなり、トピード・カーの天井に付着、固化して、そこの開口より浸漬ランスを内部へ挿入できず、操業ができなくなるからである。
【0015】
さらに、脱硫スラグの投入時期についても検討し、本発明では、予備処理脱燐の開始前及び/又は終了直後とするのが好ましいと結論した。脱燐の終了直後にも投入するようにしたのは、スラグの塩基性を高めに調整し、その粘性を下げるためである。
【0016】
加えて、本発明では、投入時の脱硫スラグの温度は特に限定しない。つまり、放置され常温になったものでも、脱硫処理が終了し、排出された直後の高温状態(例えば、600℃以上)にあるものでもかまわない。ただし、高温状態のものを利用すると、投入時の溶銑の突沸や水蒸気爆発が防止でき、溶銑温度の低下も抑止できて一層好ましい。
【0017】
さらに加えて、具体的な脱硫スラグをトピード・カーへ投入する方法としては、図2に示すように、脱燐場の近傍に配置してあるショベル系掘削機械(例えば、バックホー5)を利用すれば、余分なコストが不要で好ましい。このバックホー5のショベルで脱硫スラグ6を所定量だけ掻き揚げ、トピード・カー1の開口7より内部へ投入するのである。
【0018】
なお、脱硫スラグ6は、前記表1に示したように、CaOを多く含み、転炉スラグのCaO分30〜40mass%と比べると、脱硫スラグ側の含有量が高いため、使用量も少なくてすみ、予備処理時の溶銑温度への影響も少ない。一方、S含有量が高いので、その脱燐処理への再使用で溶銑2へ復硫すると考えられる。発明者の調査によれば、その45%は復硫することが確認されている。しかしながら、脱燐処理の後工程で、この脱硫スラグを発生する脱硫処理が行われ、それによって十分に脱硫されるので、何ら問題は生じない。なお、本発明では、溶銑を収納する収納容器としては、トピード・カーを例にして説明しているが、溶銑鍋でも同様であり、収納容器の形状は問わず実施可能である。
【0019】
【実施例】
図3に示すように、高炉から出銑した溶銑に予備処理を施してから、上底吹き転炉で脱炭精錬し、低燐、低硫の炭素鋼を溶製した。その予備処理は、高炉鋳床の傾注樋での脱珪処理、溶銑の収容能力が250トンのトピード・カーを用いての脱燐処理、取鍋(溶銑鍋)に機械的攪拌装置を配置しての脱硫処理を順次行うものである。
【0020】
脱珪後の溶銑をトピード・カーに受け入れた際の溶銑量、前記残留スラグ量及び溶銑の組成は表2の通りである。この溶銑の脱燐処理に、本発明に係る溶銑の脱燐処理を施したが、その条件を表3に、脱燐後の溶銑の組成を表4に示す。なお、使用した脱硫スラグは、製鉄所のヤードに放置してあった常温のものである。表4より、本発明の実施で溶銑は従来並みの燐含有量まで脱燐できることが明らかである。また、その後に前記脱硫処理及び転炉での脱炭精錬を行い、目標通りの低燐、低硫の炭素鋼が溶製できた。ちなみに、この溶製で形成された全スラグの量は、21トンであり、そのうち脱硫スラグとして再利用される量は5%に相当する。つまり、本発明によれば、かなりの量の脱硫スラグが溶銑予備処理で再利用でき、脱燐処理で別途投入していた生石灰(CaO)量の低減が可能となり、これにより製鋼工程で発生する全スラグの量も低減できるのである。
【0021】
【表2】
Figure 0003988578
【0022】
【表3】
Figure 0003988578
【0023】
【表4】
Figure 0003988578
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、溶銑予備処理の脱燐処理で別途投入していた生石灰(CaO)量の低減が可能となる。また、これにより製鋼工程で発生する全スラグの量も低減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶銑の脱燐処理工程を説明する図である。
【図2】脱硫スラグのトピード・カーへの投入方法を説明する図である。
【図3】溶銑の溶製工程を示すフロー図である。
【符号の説明】
1 収納容器(トピード・カー、溶銑鍋等)
2 溶銑
3 ランス
4 スラグ(ノロ)
5 バックホー
6 脱硫スラグ
7 開口

Claims (2)

  1. 収納容器に保持した溶銑へ、浸漬ランスを介して生石灰系の脱燐用フラックス及び固体酸化剤を吹き込み、該溶銑の予備処理脱燐を行うに際して、
    前記収納容器に保持した溶銑へ、該溶銑上に形成されるスラグの塩基度(CaO/SiO2)が1.0〜2.5になるように、別途行う溶銑の予備処理脱硫で発生したスラグを投入することを特徴とする脱硫スラグの再利用方法。
  2. 前記溶銑の予備処理脱硫で発生したスラグの投入時期を、予備処理脱燐の開始前及び/又は終了直後とすることを特徴とする請求項1記載の脱硫スラグの再利用方法。
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