JP3986923B2 - 乳化組成物およびその調製方法 - Google Patents

乳化組成物およびその調製方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳化組成物およびその調製方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、水中油型乳化組成物、O/W/O型乳化組成物およびそれらの調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の水中油型乳化組成物は、界面活性剤やヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、プルラン、ペクチンなどの水溶性高分子を用いて調製されてきた。また、フレグランスジャーナル,26,8,79(1998)にはアクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体を使用する方法が、フレグランスジャーナル,26,8,42(1998)にはアニオン性高分子とカチオン性高分子とからなる高分子電解質錯体を使用する方法が開示されている。さらに、特開平7−100356号公報には、両イオン性高分子と高級脂肪酸とから形成される複合体が乳化剤として作用することを利用して乳化組成物を調製する方法が開示されている。しかし、これらの方法で調製された水中油型乳化組成物には、次のような問題点があった。
【0003】
界面活性剤を用いた場合には、界面活性剤のために、べたつきのある使用感となって好ましくなく、また、一般消費者の間で界面活性剤の安全性に不安を抱くものが多いという問題もあった。
【0004】
乳化剤として水溶性高分子を用いた場合には、界面活性剤と比較して、水溶性高分子の界面張力低下能が小さく、乳化力が相対的に小さいために、乳化安定性がわるいという問題があった。
【0005】
アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体を用いた場合には、生成した乳化組成物の分散粒子が大きく、経時安定性を保つのが難しいという問題があった。また、この方法で調製される水中油型乳化組成物は、高分子のゲルで安定化されたものであるため独特の使用感を有し、応用範囲が狭い。
【0006】
さらに、両イオン性高分子と高級脂肪酸とから形成される複合体を乳化剤とした場合には、界面活性剤を併用して水中油型乳化組成物を調製しており、界面活性剤を用いることにより生じる問題点を解決することにはならない。
【0007】
また、従来、O/W/O型乳化組成物は、親水性の高い界面活性剤を用いて調製した水中油型乳化組成物を、親油性の高い界面活性剤を含む油相に分散させることにより調製されてきた。しかし、この調製方法には、分散油粒子が微細な水中油型乳化組成物を調製するために多量の界面活性剤が必要となり、使用感および安全性の面で好ましくないという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、界面活性剤を含まない経時安定性の良好な水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、界面活性剤を配合しない、あるいは界面活性剤の配合量を低減させた経時安定性の良好なO/W/O型乳化組成物を提供することも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分、ならびに(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含み、かつ界面活性剤を含まないことを特徴とする水中油型乳化組成物、
前記油分に不溶なイオン性高分子が、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはビニルピロリドン/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体塩である前記の水中油型乳化組成物、
前記の水中油型乳化組成物を転相乳化法により調製する水中油型乳化組成物の調製方法、
(1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分を含む油相形成成分に、(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含む水相形成成分の一部を添加して油中水型乳化組成物を生成させたのち、さらに水相形成成分を添加して油中水型乳化組成物を水中油型乳化組成物へ転相させる水中油型乳化組成物の調製方法、
内油相、水相および外油相からなり、内油相または水相に、(1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分、ならびに(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含み、かつ内油相および水相に界面活性剤を含まないことを特徴とするO/W/O型乳化組成物、
前記油分に不溶なイオン性高分子が、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはビニルピロリドン/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体塩である前記のO/W/O型乳化組成物、
前記の水中油型乳化組成物を転相乳化法により調製し、得られた水中油型乳化組成物を油相に分散させるO/W/O型乳化組成物の調製方法、および
(1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分を含む油相形成成分に、(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含む水相形成成分の一部を添加して油中水型乳化組成物を生成させたのち、さらに水相形成成分を添加して油中水型乳化組成物を水中油型乳化組成物へ転相させ、得られた水中油型乳化組成物を油相に分散させるO/W/O型乳化組成物の調製方法に関する。
【0010】
本発明の水中油型乳化組成物は、界面活性剤を含まず、かつ経時安定性が良好であるという特徴を有する。
【0011】
また、本発明のO/W/O型乳化組成物は、界面活性剤を配合しないか、あるいは界面活性剤の配合量が従来に比べて少なく、かつ経時安定性が良好であるという特徴を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の水中油型乳化組成物は、脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分、ならびに陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含有する。本発明においては、脂肪酸または高級アルコールと前記イオン性高分子とが複合体を形成し、この複合体が乳化作用を発現する。この複合体は、界面活性剤と同様の作用を有するものと考えられる。また、高分子化合物であることから、保護コロイド的な作用も有し、低分子の界面活性剤と高分子化合物とを併用したときと同様の効果を発現するものと考えられる。
【0013】
本発明の水中油型乳化組成物は、油相を形成する油分として、脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分を必ず含有し、必要に応じて、そのほかの油分を含有することができる。そのほかの油分としては、常温で固形、ペースト状、液状いずれの形状のものでも配合することができ、炭化水素系の極性油、非極性油、シリコーン系油などを使用することができる。
【0014】
脂肪酸は、炭素数6以上(通常は30以下)で常温(25℃)において固形あるいは液状のものであれば、とくに限定されるものではないが、常温で液状のものが好ましい。炭素数が6未満の脂肪酸では、親油性が不充分であり、イオン性高分子との複合体が油相に配向しにくい。常温において固形である脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などを使用することができる。常温において液状である脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸などの直鎖脂肪酸;イソパルミチン酸、イソステアリン酸などの分岐脂肪酸;オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸などの不飽和脂肪酸などを使用することができる。
【0015】
高級アルコールは、炭素数6以上(通常は30以下)で常温(25℃)において固形あるいは液状のものであれば、とくに限定されるものではないが、常温で液状のものが好ましい。炭素数が6未満のアルコールでは、親油性が不充分であり、イオン性高分子との複合体が油相に配向しにくい。常温において固形である高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどを使用することができる。常温において液状である高級アルコールとしては、オクタノール、デカノールなどの直鎖高級アルコール;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分岐高級アルコール;オレイルアルコールなどの不飽和高級アルコールなどを使用することができる。
【0016】
常温において固形である脂肪酸および高級アルコールを使用する場合は、油相を形成するそのほかの成分との相溶性を向上させるために、液状の脂肪酸、トリグリセリンエステルなどと併用することが好ましい。
【0017】
脂肪酸および高級アルコールの配合量は、合計で、好ましくは乳化組成物の0.1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。0.1重量%未満では良好な乳化組成物を得ることができない。脂肪酸および高級アルコールの配合量にとくに上限はなく、使用性などを考慮して配合することができる。
【0018】
前記イオン性高分子としては、陰イオン性高分子または陽イオン性高分子を使用することができる。陰イオン性高分子としては、アルギン酸ナトリウムなどの天然多糖類;カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの多糖誘導体;ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム共重合体などのアクリル酸系またはメタクリル酸系の単独重合体および共重合体を使用することができる。陽イオン性高分子としては、ビニルピロリドン/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体塩(たとえば、エチル硫酸塩など)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体、カチオン化セルロース、カチオン化グァーガムなどのカチオン化多糖類などを使用することができる。これらのイオン性高分子は、市販品をそのまま使用することができる。
【0019】
イオン性高分子の分子量は、好ましくは重量平均分子量1000〜1500000、より好ましくは5000〜500000である。重量平均分子量が1000未満のイオン性高分子は経皮吸収されるおそれがあり、1500000をこえるイオン性高分子を使用すると乳化組成物の粘度が上昇し、べたつき、ぬるつきなどの点で使用性がわるくなる。
【0020】
イオン性高分子は、好ましくは乳化組成物の0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜2重量%配合される。0.05重量%未満では乳化力が不充分であり、10重量%をこえるとべたつき、ぬるつき、塗布時ののびの重さなどの点で使用性がわるくなる。
【0021】
本発明の水中油型乳化組成物は、界面活性剤を含まない。
【0022】
本発明の水中油型乳化組成物には、脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分、それ以外の油分、ならびに陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子以外に、保湿剤、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化チタンや酸化亜鉛のような粉体、酸化鉄のような着色料などを配合させることもできる。
【0023】
本発明の水中油型乳化組成物における油相と水相の比率はとくに限定されないが、好ましくは油相:水相(重量比)=70〜0.1:30〜99.9、より好ましくは20〜5:80〜95である。油相が0.1重量%未満では乳化物が生成せず、70重量%をこえると生成する水中油型乳化組成物の安定化が難しい。
【0024】
本発明の水中油型乳化組成物は、たとえば、脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分を含む油相形成成分を、前記イオン性高分子を含む水相に添加し、ホモミキサーで処理することによって調製することができる。また、脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分を含む油相に、前記イオン性高分子を含む水相形成成分の一部を添加して油中水型乳化組成物を生成させたのち、さらに水相形成成分を添加して油中水型乳化組成物を水中油型乳化組成物へ転相させることにより、より微細で安定な水中油型乳化組成物を調製することができる(転相乳化法)。前記イオン性高分子は、油中水型乳化組成物を調製する際に全量添加してもよいし、油中水型乳化組成物を調製する際に一部を添加し、水中油型乳化組成物に転相させる際に残りを添加してもよい。
【0025】
転相乳化法を用いて水中油型乳化組成物を調製する際には、水相中に多価アルコールを配合することができる。多価アルコールを配合することにより、水相と油相との界面または油相にゲル状物が形成され、転相乳化の初期に生成する油中水型乳化組成物の安定性が向上する。多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、ジグリセリン、ポリグリセリンなどの3価以上のアルコールを用いることができる。多価アルコールは、好ましくは乳化組成物の1〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%配合される。1重量%未満ではゲル状物が形成されず、20重量%をこえると、べたついた使用感となる。
【0026】
転相乳化法においては、油中水型乳化組成物を調製する際の油相と水相の比率を考慮して、水相の添加速度で油中水型乳化組成物の生成および転相を調整することができる。
【0027】
また、脂肪酸および高級アルコールと前記イオン性高分子との比率、脂肪酸および高級アルコールと前記イオン性高分子とから形成される複合体の量などを調節することにより、安定に転相を起こさせることができる。たとえば、水相に対する油相の比率が高い場合には、前記イオン性高分子に対する脂肪酸および高級アルコールの比率を下げて生成する複合体の量を減らすことにより、安定な水中油型乳化組成物を得ることができる。
【0028】
本発明の水中油型乳化組成物は、O/W/O型乳化組成物の内油相および水相の形成に応用することができる。
【0029】
本発明のO/W/O型乳化組成物は、内油相または水相に,脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分、ならびに陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含有する。本発明のO/W/O型乳化組成物は、外油相に界面活性剤を含有すること、または、水相に無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸またはアミノ酸塩を含有し、外油相に脂肪酸または高級アルコールを含有することができる。
【0030】
界面活性剤としては、ソルビタンイソステアレート、ソルビタンオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル;グリセリルステアレートなどのグリセリン脂肪酸エステル;ジグリセリンジイソステアレート、ポリグリセリンペンタオレエートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖ポリラウリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステルなどの親油性の高いものが用いられる。
【0031】
界面活性剤は、O/W/O型乳化組成物に対して、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.5〜2重量%配合される。0.01重量%未満では、O/W/O型乳化組成物の内油相および水相を形成する水中油型乳化組成物を外油相中に分散させることができず、10重量%をこえると、べたついた使用感となり好ましくない。
【0032】
水相に、無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸またはアミノ酸塩、外油相に、脂肪酸または高級アルコールを含有するO/W/O型乳化組成物においては、無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸またはアミノ酸塩の作用により、外油相に含有される脂肪酸または高級アルコールと、内油相または水相に含有される前記イオン性高分子とによって形成される複合体の疎水性が高まるために、界面活性剤を使用することなく、外油相中に水中油型乳化組成物を分散させてO/W/O型乳化組成物を調製することができる。
【0033】
無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸およびその塩としては、水溶性で塩析効果を示すものであればとくに限定されずに用いられることができる。
【0034】
無機酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどがあげられる。
【0035】
有機酸塩としては、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸一カリウムなどのクエン酸塩;コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウムなどのコハク酸塩;酒石酸二ナトリウムなどの酒石酸塩などがあげられる。有機酸塩は、有機酸塩および有機酸塩の水和物として添加することもできるが、有機酸として添加し、アルカリで中和することによって発生させることもできる。
【0036】
アミノ酸およびその塩としては、グリシン、プロリン、アラニン、アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムなどがあげられる。
【0037】
無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸およびその塩としては、これらの中でも硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、クエン酸塩などを使用することが好ましく、とくに硫酸ナトリウムなどの硫酸塩が好ましい。また、とくに限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などを使用することが好ましい。
【0038】
無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸およびその塩は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜3重量%配合される。0.1重量%未満では塩析効果が不充分であり、10重量%をこえると塩の析出などが起こり、系が不安定となる。
【0039】
本発明のO/W/O型乳化組成物には、油相を形成させる成分として、前記油分以外の油分を含有させることができる。前記油分以外の油分としては、常温で固形、ペースト状、液状いずれの形状のものでも配合することができ、炭化水素系の極性油、非極性油、シリコーン油などを使用することができる。
【0040】
本発明のO/W/O型乳化組成物において、内油相および水相を形成する水中油型乳化組成物と外油相の比率はとくに限定されないが、好ましくは水中油型乳化組成物:外油相(重量比)=90〜0.1:10〜99.9、より好ましくは80〜10:20〜90である。水中油型乳化組成物が0.1重量%未満では実質的に有用なO/W/O型乳化組成物を得ることができず、90重量%をこえると安定なO/W/O型乳化組成物を得ることができない。
【0041】
本発明の外油相に界面活性剤を含有するO/W/O型乳化組成物は、たとえば、本発明の水中油型乳化組成物を、界面活性剤を含む油相に手攪拌しながら添加することにより調製される。
【0042】
本発明の水相に無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸塩またはその塩を含有するO/W/O型乳化組成物は、たとえば、水相に無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸およびその塩からなる群から選択された1種以上の化合物を含有させた本発明の水中油型乳化組成物を、脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分を含む油相に手攪拌しながら添加することにより調製される。
【0043】
本発明の水中油型乳化組成物は、界面活性剤を含有しない経時安定性の良好な水中油型乳化組成物として有効に利用される。また、本発明の外油相に界面活性剤を含有するO/W/O型乳化組成物は、界面活性剤の配合量の少ない経時安定性の良好なO/W/O型乳化組成物として、有効に利用される。さらに、本発明の水相に無機酸塩、有機酸塩、アミノ酸またはその塩を含有するO/W/O型乳化組成物は、界面活性剤を含有しない経時安定性の良好なO/W/O型乳化組成物として、有効に利用される。
【0044】
本発明の水中油型乳化組成物およびO/W/O型乳化組成物は、たとえば、乳液、保湿クリームなどの基礎化粧品;ファンデーション、口紅などのメイクアップ化粧品;毛髪化粧品;ボディ用化粧品;芳香化粧品;徐放性製剤などの医薬品;食品;農薬;マイクロカプセルの調製などに応用することができる。
【0045】
【実施例】
実施例1〜4および比較例1〜2 (水中油型乳化)
表1において、A相中、イソステアリン酸は脂肪酸、トリオクタン酸グリセリル、流動パラフィンおよびジメチルポリシロキサンは油相を形成するそのほかの成分に相当する。B相中、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ビニルピロリドン/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体ジエチル硫酸塩およびポリアクリル酸ナトリウムはイオン性高分子、グリセリンは多価アルコールに相当する。C相中、カルボキシビニルポリマーは水溶性高分子、トリエタノールアミンは中和剤(pH調整剤)に相当する。
【0046】
表1に示す配合組成(重量比)のA相を、室温下で攪拌しながら、均一化したB相を徐々に添加することにより油中水型乳化組成物を調製した。さらに室温下でホモミキサーで攪拌しながらC相を添加し、水中油型乳化組成物を調製した。実施例1で調製した乳化組成物を光学顕微鏡(オムロン(株)製 VC−1000)で撮影した写真を、図1に示した。
【0047】
調製した乳化組成物の安定性は、以下の評価方法および評価基準によって評価した。
【0048】
<安定性評価方法>
調製した乳化組成物をサンプル瓶に充填し、50℃で1カ月放置したのち、状態を目視にて観察する。
【0049】
<安定性評価基準>
〇:分離がまったく見られない
△:わずかに分離が見られる
×:明確な分離が見られる。
【0050】
【表1】
Figure 0003986923
【0051】
実施例5および6 (O/W/O型乳化)
表2において、A相中、イソステアリン酸は脂肪酸、トリオクタン酸グリセリル、流動パラフィンおよびジメチルポリシロキサンは油相を形成するそのほかの成分に相当する。B相中、カルボキシメチルセルロースナトリウムは前記油分に不溶なイオン性高分子、グリセリンは多価アルコールに相当する。C相中、カルボキシメチルセルロースナトリウムは前記油分に不溶なイオン性高分子、キサンタンガムは水溶性高分子、グルタミン酸ナトリウムはアミノ酸の塩に相当する。D相中、イソステアリン酸は脂肪酸、ショ糖脂肪酸エステルは界面活性剤、トリオクタン酸グリセリル、流動パラフィンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンは油相を形成するそのほかの成分に相当する。
【0052】
表2に示す配合組成(重量比)のA相を,室温下ホモミキサーで攪拌しながら、均一化したB相を徐々に添加することによって油中水型乳化組成物を調製した。さらに室温下ホモミキサーで攪拌しながらC相を添加して水中油型乳化組成物を得た。得られた水中油型乳化組成物を、均一化したD相に手攪拌しながら徐々に添加することによりO/W/O型乳化組成物を調製した。実施例6で調製した乳化組成物を電子顕微鏡で撮影した写真を、図2に示した。
【0053】
調製した乳化組成物の安定性は、前記の評価方法および評価基準によって評価した。
【0054】
【表2】
Figure 0003986923
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分および前記油分に不溶なイオン性高分子を配合させることにより、界面活性剤を用いることなく、安全性、経時安定性に優れた水中油型乳化組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、安全性および経時安定性に優れたO/W/O型乳化組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得られた乳化組成物の光学顕微鏡写真である。
【図2】本発明の実施例6で得られた乳化組成物の光学顕微鏡写真である。

Claims (8)

  1. (1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分、ならびに(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含み、かつ界面活性剤を含まないことを特徴とする水中油型乳化組成物。
  2. 前記油分に不溶なイオン性高分子が、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはビニルピロリドン/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体塩である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
  3. (1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分、ならびに(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含み、かつ界面活性剤を含まない水中油型乳化組成物を転相乳化法により調製する水中油型乳化組成物の調製方法。
  4. (1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分を含む油相形成成分に、(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含む水相形成成分の一部を添加して油中水型乳化組成物を生成させたのち、さらに水相形成成分を添加して油中水型乳化組成物を水中油型乳化組成物へ転相させる水中油型乳化組成物の調製方法。
  5. 内油相、水相および外油相からなり、内油相または水相に、
    (1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分、ならびに(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含み、かつ内油相および水相に界面活性剤を含まないことを特徴とするO/W/O型乳化組成物。
  6. 前記油分に不溶なイオン性高分子が、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはビニルピロリドン/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体塩である請求項5記載のO/W/O型乳化組成物。
  7. (1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分、ならびに(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含み、かつ界面活性剤を含まない水中油型乳化組成物を転相乳化法により調製し、得られた水中油型乳化組成物を油相に分散させるO/W/O型乳化組成物の調製方法。
  8. (1)脂肪酸および高級アルコールからなる群から選択された1種以上の油分を含む油相形成成分に、(2)陰イオン性高分子および陽イオン性高分子からなる群から選択された1種以上の前記油分に不溶なイオン性高分子を含む水相形成成分の一部を添加して油中水型乳化組成物を生成させたのち、さらに水相形成成分を添加して油中水型乳化組成物を水中油型乳化組成物へ転相させ、得られた水中油型乳化組成物を油相に分散させるO/W/O型乳化組成物の調製方法。
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