JP3986887B2 - 半導体装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、能動層に窒化物半導体を用い且つ絶縁ゲートを有する半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は、従来の半導体装置、具体的には、能動層に III族窒化物半導体を用いたMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)の断面構成を示している。
【0003】
図10に示すように、サファイアからなる基板1上に、窒化アルミニウム(AlN)からなるバッファ層2、窒化ガリウム(GaN)からなるチャネル層3、及びn型の窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなるキャリア供給層4が順次形成されている。また、バッファ層2、チャネル層3及びキャリア供給層4が形成された基板1上には素子分離絶縁膜5が形成されており、それによってトランジスタ領域が区画されている。トランジスタ領域のキャリア供給層4の上には、窒化物半導体が酸化されてなる絶縁性酸化物層6が形成されていると共に、絶縁性酸化物層6の上に金属ゲート電極7が形成されている。また、キャリア供給層4上における金属ゲート電極7の両側には、キャリア供給層4とオーミック接触するソース・ドレイン電極8が形成されている。
【0004】
ここで、チャネル層3の上部におけるキャリア供給層4とのヘテロ界面の近傍には、ポテンシャル井戸からなり且つ電子移動度が極めて大きい2次元電子ガス層が形成される。これにより、図10に示すMOSFETは、高速トランジスタ特性を有する高電子移動度トランジスタ(HEMT)となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の従来のMOSFETにおいては、窒化物半導体自体を酸化することにより形成された絶縁性酸化物層6上に金属膜を直接堆積して金属ゲート電極7を形成しているため、次のような問題が生じる。すなわち、金属ゲート電極7と絶縁性酸化物層6との間で酸化還元反応が起きるため、金属ゲート電極7が酸化されると共に絶縁性酸化物層6つまりゲート絶縁膜が還元される。その結果、ゲート絶縁膜中に酸素空孔(酸素の脱離によって生じた空孔)が発生するので、電極・絶縁膜界面の電気的特性が不安定になると共にゲートリーク電流が増大するという問題が起きる。
【0006】
前記に鑑み、本発明は、窒化物半導体が酸化されてなるゲート絶縁膜を有する半導体装置において、電極・絶縁膜界面の電気的特性を安定化させると共にゲートリーク電流の発生を防止することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明に係る半導体装置は、窒化物半導体が酸化されてなる絶縁性酸化物層と、絶縁性酸化物層の上に形成されており、導電性金属酸化物よりなる電極とを備えている。
【0008】
本発明の半導体装置によると、窒化物半導体自体を酸化することにより形成された絶縁性酸化物層をゲート絶縁膜として用いた絶縁ゲート構造において、ゲート電極を導電性金属酸化物により構成する。すなわち、ゲート電極中の金属は既に酸化物となっているため、ゲート絶縁膜を構成する金属酸化物(Ga酸化物又はAl酸化物等)が電極材料によって還元されることを防止できる。その結果、ゲート絶縁膜となる絶縁性酸化物層、つまりゲート絶縁酸化膜上に金属膜を直接堆積する場合に生じるようなゲート絶縁膜内の欠陥、例えば酸素空孔等が生じることがない。従って、このような欠陥に起因するリーク電流の発生を防止できると共に、電極・絶縁膜界面の電気的特性を安定化させることができ、それによりゲート絶縁膜の信頼性を向上させることができる。
【0009】
本発明の半導体装置において、導電性金属酸化物は、インジウム酸化物、インジウムと錫との合金の酸化物、又はロジウム酸化物のいずれかであることが好ましい。すなわち、これらの各金属酸化物は導電性であるため、電極材料として使用可能であると共に、金属酸化物に含有されている金属は既に酸化されているため、ゲート電極の形成時にゲート絶縁酸化膜を還元することがない。さらに、これらの金属酸化物内の金属の酸化状態(酸化数)は、ゲート絶縁酸化膜内の金属(Al、Ga又はIn等)と同じであるため、これらの金属酸化物における結晶の単位セル構造もゲート絶縁酸化膜と同じである。従って、これらの金属酸化物よりなるゲート電極つまり金属酸化物電極とゲート絶縁酸化膜との化学的親和性及び構造的親和性が高くなるため、ゲート絶縁膜におけるゲート電極との界面近傍に酸素空孔又は格子間金属原子等が発生しないので、化学的に安定であり、信頼性が高く、且つ、リーク電流の低いゲート構造を実現できる。
【0010】
本発明の半導体装置において、導電性金属酸化物は、イリジウム酸化物、ルテニウム酸化物、又は錫酸化物のいずれかであることが好ましい。すなわち、これらの各金属酸化物は導電性であるため、電極材料として使用可能であると共に、金属酸化物に含有されている金属は既に酸化されているため、ゲート電極の形成時にゲート絶縁酸化膜を還元することがない。尚、これらの金属酸化物内の金属の酸化状態(酸化数)は、ゲート絶縁酸化膜内の金属(Al、Ga又はIn等)と異なっていると共に、これらの金属酸化物における結晶の単位セル構造もゲート絶縁酸化膜と異なる。しかしながら、これらの金属酸化物よりなるゲート電極は、耐酸化性に優れていると共に、ゲート絶縁膜におけるゲート電極との界面近傍に発生しうる格子間金属原子に対する拡散障壁として作用する。そのため、仮にゲート絶縁酸化膜内で還元反応により格子間金属原子が生じた場合にも、該金属原子は拡散することなくゲート絶縁酸化膜内にとどまり、最終的に再酸化されるので、化学的に安定であり、信頼性が高く、且つ、リーク電流の低いゲート構造を実現できる。
【0011】
本発明の半導体装置において、電極上に形成された金属層をさらに備えていてもよい。このとき、該金属層が、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ルテニウム又はロジウム等の貴金属よりなると、次のような効果が得られる。すなわち、これらの貴金属は耐酸化性を有するため、金属層つまり金属電極の形成時に、金属電極と金属酸化物電極との間で酸化還元反応が起きることを防止できるので、両電極間に良好な界面が形成される。このため、金属酸化物電極が金属電極によって還元され、その結果、還元された金属酸化物電極がゲート絶縁酸化膜によって再び酸化されてしまう事態、つまり、ゲート絶縁酸化膜が金属酸化物電極によって還元されてしまう事態を回避できるので、リーク電流が小さく且つ信頼性の高い積層ゲート構造を実現できる。
【0012】
尚、本発明の半導体装置において、第1の窒化物半導体層上に形成されており且つ第1の窒化物半導体層と比べて酸化速度の大きい第2の窒化物半導体層を酸化することによって絶縁性酸化物層を形成することが好ましい。このようにすると、第1の窒化物半導体層上に、第2の窒化物半導体層自体の酸化によって絶縁性酸化物層が形成されるため、絶縁性酸化物層つまりゲート絶縁膜の膜質が良好になると共に、絶縁性酸化物層とその下側の第1の窒化物半導体層との接触界面も極めて清浄になる。また、ゲート絶縁酸化膜となる第2の窒化物半導体層の酸化速度が、第2の窒化物半導体層の下側に形成されている第1の窒化物半導体層の酸化速度よりも大きいため、言い換えると、第1の窒化物半導体層の酸化速度が第2の窒化物半導体層よりも小さいため、第2の窒化物半導体層の酸化時に第1の窒化物半導体層が酸化されにくくなるので、絶縁性酸化物層を形成する際に第2の窒化物半導体層のみを選択的に酸化することが容易になる。
【0013】
また、第1の窒化物半導体層はアルミニウム(Al)を含むことが好ましい。例えば、典型的な窒化物半導体材料である窒化ガリウム(GaN)にアルミニウムを添加した窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)は、その酸化速度が窒化ガリウムよりも小さい。そこで、第1の窒化物半導体層の材料としてAlGaNを用いると共に第2の窒化物半導体層の材料としてGaNを用いた場合、絶縁性酸化物層の形成時に第1の窒化物半導体層が酸化されにくくなる。また、AlGaNのエネルギーギャップがGaNよりも大きいため、第1の窒化物半導体層をポテンシャル障壁層として機能させることができる。
【0014】
また、第1の窒化物半導体層の下側、つまり基板と第1の窒化物半導体層との間に、エネルギーギャップが第1の窒化物半導体層よりも小さい第3の窒化物半導体層をさらに備えていることが好ましい。このようにすると、第1の窒化物半導体層がキャリア供給層となると共に第3の窒化物半導体層がチャネル層となるので、高電流駆動能力を持つ高耐圧の高電子移動度トランジスタ(HEMT)を確実に実現できる。
【0015】
また、第1の窒化物半導体層と絶縁性酸化物層(つまり第2の窒化物半導体層)との間に、酸化速度が第2の窒化物半導体層よりも小さい第4の窒化物半導体層をさらに備えていることことが好ましい。このようにすると、第2の窒化物半導体層を酸化して絶縁性酸化物層を形成する際に、第4の窒化物半導体層によって酸化が実質的に停止するため、言い換えると、第4の窒化物半導体層が酸化防止層として機能するため、ゲート絶縁膜となる絶縁性酸化物層の膜厚の制御が容易になる。この場合、第4の窒化物半導体層の材料として、例えば窒化アルミニウム等を用いてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置、具体的には、能動層に III族窒化物半導体を用いた絶縁ゲート型の高電子移動度トランジスタ(HEMT)の断面構成を示している。
【0018】
図1に示すように、例えば炭化ケイ素(SiC)からなる基板11上に、基板11と該基板11上に成長するエピタキシャル層との格子不整合を緩和するために、例えば窒化アルミニウム(AlN)からなるバッファ層12が形成されている。また、基板11上にバッファ層12を介して、例えば窒化ガリウム(GaN)からなるチャネル層13、及び例えばn型の窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなるキャリア供給層14が順次形成されている。ここで、チャネル層13の上部におけるキャリア供給層14とのヘテロ界面の近傍には2次元電子ガス層が形成される。また、キャリア供給層14はチャネル層13にキャリア(電子)を供給する。
【0019】
また、バッファ層12、チャネル層13及びキャリア供給層14が形成された基板11上に、バッファ層12にまで達する素子分離絶縁膜15が形成されており、それによってトランジスタ領域が区画されている。トランジスタ領域のキャリア供給層14の上に、窒化物半導体が酸化されてなる絶縁性酸化物層16が選択的に形成されている。具体的には、絶縁性酸化物層16は、キャリア供給層14上に成長した窒化物半導体層、例えば窒化ガリウム層を酸化することにより形成されている。すなわち、絶縁性酸化物層16はガリウム酸化物(Ga23)よりなる。
【0020】
第1の実施形態の特徴として、絶縁性酸化物層16の上に、例えば錫をドープしたインジウム酸化物よりなる金属酸化物電極17が形成されている。これにより、絶縁性酸化物層16における金属酸化物電極17との界面近傍が還元されることを防止できるので、電極・絶縁膜界面の安定性を保つことができると共に、絶縁性酸化物層16の絶縁性を良好に保つことができる。また、金属酸化物電極17の上に、例えば下層の白金(Pt)層と上層の金(Au)層との積層体からなる金属電極18が形成されている。第1の実施形態においては、金属酸化物電極17と金属電極18とからゲート電極が構成されている。さらに、キャリア供給層14上におけるゲート電極のゲート長方向の両側に、キャリア供給層14とオーミック接触する一対のソース・ドレイン電極19が形成されている。ソース・ドレイン電極19は、例えば下層のチタン(Ti)層と上層のアルミニウム(Al)層との積層体からなる。
【0021】
このように、第1の実施形態に係る半導体装置(HEMT)によると、キャリア供給層14上に成長した窒化物半導体層が酸化されてなる絶縁性酸化物層16、つまりゲート絶縁膜の上に、錫をドープしたインジウム酸化物よりなる金属酸化物電極17が形成されている。ここで、錫をドープしたインジウム酸化物は導電性であるため、電極材料として使用可能である。また、ゲート電極となる金属酸化物電極17内の金属(In及びSn)は既に酸化されているので、絶縁性酸化物層16内の金属(Ga)を還元することはない。さらに、金属酸化物電極17の主成分であるインジウム酸化物(In23)におけるInの酸化状態は、絶縁性酸化物層16を構成するガリウム酸化物(Ga23)におけるGaの酸化状態と同じであると共に、インジウム酸化物の結晶の基本単位セル構造はガリウム酸化物の結晶の基本単位セル構造と同じである。従って、金属酸化物電極17と絶縁性酸化物層16との化学的親和性及び構造的親和性が高くなるため、金属酸化物電極17の形成時に、絶縁性酸化物層16における金属酸化物電極17との界面近傍に酸素空孔等の欠陥が発生しにくくなる。その結果、該欠陥に起因するリーク電流が減少すると共に、電極・絶縁膜界面が化学的に安定し、それにより信頼性が高いゲート構造を実現できる。
【0022】
図2は第1の実施形態に係るHEMTの電流電圧特性を示している。ここで、ゲート電圧値(ゲート・ソース間電圧値)VGSとして、順方向に(ゲート側が正電位になるように)0V、+2V、+4V、逆方向に(ゲート側が負電位になるように)ー2V、ー4V、ー6V、ー8V、ー10V、ー12Vを印加した。また、図2において、横軸にはドレイン電圧値(ソース・ドレイン間電圧値)VDSを示しており、縦軸には単位ゲート幅当たりのドレイン電流値(ソース・ドレイン間電流値)IDSを示している。前述のように、第1の実施形態に係るHEMTは、ゲート絶縁膜となる絶縁性酸化物層16の絶縁特性が優れていると共に、金属酸化物電極17と絶縁性酸化物層16との界面における電気的特性及び化学的安定性が優れているため、図2に示すように、ドレイン耐圧は200V以上にも達する。また、順方向に4V以上のゲート・ソース間電圧VGSを印加した場合にも、金属酸化物電極17つまりゲート電極からのリーク電流は発生しておらず、良好な電流電圧特性が得られていることが分かる。
【0023】
図3は、第1の実施形態に係るHEMT(本発明のHEMT)のゲートリーク電流と、図10に示す従来のMOSFET(ゲート絶縁膜上に直接金属電極が形成されているMOSFET)のゲートリーク電流とを、ゲートサイズ等を同一条件に揃えて比較した結果を示している。図3において、横軸にはゲート電圧値(ゲート・ソース間電圧値)VGSを示しており、縦軸にはゲートリーク電流(任意単位)を示している。また、図3において、本発明のHEMTのゲートリーク電流を実線で示していると共に、従来のMOSFETのゲートリーク電流を破線で示している。図3から明らかなように、第1の実施形態に係るHEMTにおいては、ゲートリーク電流が極めて低く抑制されている。
【0024】
以下、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図4(a)〜(c)及び図5(a)、(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法、具体的には、図1に示す、絶縁ゲート型のHEMTの製造方法の各工程を示す断面図である。
【0026】
まず、図4(a)に示すように、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition )法を用いて、例えば炭化ケイ素からなる基板11上に、例えば窒化アルミニウムからなる厚さ100nm程度のバッファ層12と、例えば窒化ガリウムからなる厚さ3μm(3000nm)程度のチャネル層13と、例えばシリコン(Si)をドーパントとするn型の窒化アルミニウムガリウムからなる厚さ15nm程度のキャリア供給層14と、例えば窒化ガリウムからなる厚さ50〜100nm程度の絶縁膜形成層16Aとを順次成長させる。すなわち、基板11上に、窒化物半導体よりなるエピタキシャル積層体を形成する。
【0027】
次に、リソグラフィ法を用いて、トランジスタ領域をマスクする、シリコンよりなる保護膜(図示省略)を形成した後、酸化雰囲気中で基板11に対して1〜2時間程度の熱酸化処理を行なうことにより、図4(b)に示すように、エピタキシャル積層体が形成された基板11上に素子分離絶縁膜15を選択的に形成する。
【0028】
次に、前述の保護膜を除去した後、酸化雰囲気中で基板11に対して数分間程度の熱酸化処理を行なうことにより、図4(c)に示すように、エピタキシャル積層体の上部にある絶縁膜形成層16Aから絶縁性酸化物層16を形成する。
【0029】
次に、例えばスパッタ法を用いて、絶縁性酸化物層16の上に、錫をドープしたインジウム酸化物よりなる厚さ20nm程度の導電性金属酸化物膜を堆積し、引き続いて、該導電性金属酸化物膜の上に、厚さ50nm程度の白金層と厚さ200nm程度の金層とから構成される積層金属膜を堆積する。その後、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、堆積された積層金属膜及び導電性金属酸化物膜、つまりゲート電極形成用導電膜をパターニングすることにより、図5(a)に示すように、絶縁性酸化物層16の上に金属酸化物電極17を形成すると共に金属酸化物電極17の上に金属電極18を形成する。ここで、金属酸化物電極17と金属電極18との積層構造からゲート電極が構成される。その後、絶縁性酸化物層16におけるゲート電極のゲート長方向の両側に対して選択的にエッチングを行なうことにより、絶縁性酸化物層16に一対の開口部を設けて該一対の開口部からキャリア供給層14を露出させた後、キャリア供給層14における該一対の開口部からの露出部分の上に、例えばスパッタ法を用いて、厚さ20nm程度のチタン層と厚さ200nm程度のアルミニウム層とからなる積層金属膜を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、堆積された積層金属膜をパターニングすることにより、図5(b)に示すように、キャリア供給層14と接続する一対のソース・ドレイン電極19を形成する。
【0030】
このように、第1の実施形態に係るHEMTの製造方法においては、窒化ガリウムからなる絶縁膜形成層16Aを熱酸化することにより、基板11上のエピタキシャル積層体の上面に絶縁性酸化物層16を形成した後、絶縁性酸化物層16つまりゲート絶縁膜の直上に、インジウムと錫との合金の酸化物よりなる金属酸化物電極17を形成し、その後、金属酸化物電極17の上に金属電極18を形成する。
【0031】
すなわち、第1の実施形態によると、窒化物半導体自体を酸化することにより形成された絶縁性酸化物層16をゲート絶縁膜として用いていると共に、金属酸化物電極17をゲート電極(正確にはその下層部分)として用いている。すなわち、金属酸化物電極17中の金属は既に酸化物となっているため、ゲート絶縁膜となる絶縁性酸化物層16を構成する金属酸化物(Ga酸化物)が電極材料によって還元されることを防止できる。その結果、絶縁性酸化物層16つまりゲート絶縁膜上に金属膜を直接堆積する場合に生じるようなゲート絶縁膜内の欠陥、例えば酸素空孔等が生じることがない。従って、このような欠陥に起因するリーク電流の発生を防止できると共に、電極・絶縁膜界面の電気的特性を安定化させることができ、それによりゲート絶縁膜の信頼性を向上させることができる。
【0032】
尚、第1の実施形態において、金属酸化物電極17におけるインジウムと錫との組成比を調整することによって、金属酸化物電極17つまりゲート電極の導電率を所望値に設定することができる。
【0033】
また、第1の実施形態において、金属酸化物電極17の構成材料として、錫をドープしたインジウム酸化物を用いたが、これに代えて、インジウム酸化物、インジウムと錫との合金の酸化物、又はロジウム酸化物等を用いても同様の効果が得られる。例えばロジウム酸化物の主成分である三酸化二ロジウム(Rh23)におけるRhの酸化状態は、ガリウム酸化物(Ga23)におけるGaの酸化状態と同じであると共に、三酸化二ロジウム結晶の基本単位セル構造はガリウム酸化物の結晶の基本単位セル構造と同じである。従って、金属酸化物電極17の構成材料としてロジウム酸化物を用いた場合も、インジウム酸化物を用いた本実施形態と同様に、金属酸化物電極17と絶縁性酸化物層16との間の化学的親和性及び構造的親和性が高くなるため、電気的及び化学的に安定な電極・絶縁膜界面を実現できる。
【0034】
また、第1の実施形態において、図4(c)に示す工程で、基板11に対して熱酸化処理を行なう時間、つまり絶縁膜形成層16Aを加熱する時間の調節によって、絶縁性酸化物層16の厚さを調節することができる。例えば厚さ50〜100nm程度の絶縁膜形成層16Aを全て酸化して、同程度の厚さを有する絶縁性酸化物層16を形成してもよい。或いは、絶縁膜形成層16Aの上部のみを酸化して絶縁性酸化物層16を形成すると共に絶縁性酸化物層16の下側に未酸化の絶縁膜形成層16A(つまり窒化ガリウム層)を残存させてもよい。或いは、絶縁膜形成層16Aの厚さを例えば5〜10nm程度まで薄くし、該薄膜の絶縁膜形成層16Aを全て酸化して、同程度の厚さを有する絶縁性酸化物層16を形成してもよい。いずれの場合であっても、キャリア供給層14上に、絶縁膜形成層16Aの酸化によって絶縁性酸化物層16が形成されるため、絶縁性酸化物層16つまりゲート絶縁膜の膜質が良好になると共に、絶縁性酸化物層16とその下側のキャリア供給層14(又は未酸化の絶縁膜形成層16A)との接触界面も極めて清浄になる。
【0035】
ところで、前述の熱酸化処理において、窒化ガリウム(GaN)からなる絶縁膜形成層16Aの酸化速度と、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなるキャリア供給層14の酸化速度とを比較すると、窒化アルミニウムガリウムにおけるAlの組成が0.3である場合、窒化ガリウムの酸化速度は窒化アルミニウムガリウムの酸化速度と比べて2倍程度大きくなる。これにより、絶縁性酸化物層16の下側に位置するキャリア供給層14の酸化を抑制しながら、絶縁膜形成層16Aを選択的に酸化して絶縁性酸化物層16を形成することができる。また、窒化アルミニウムガリウムのエネルギーギャップが窒化ガリウムよりも大きいため、キャリア供給層14をポテンシャル障壁層として機能させることができる。
【0036】
また、第1の実施形態において、絶縁性酸化物層16を形成するための絶縁膜形成層16Aつまり被酸化層の材料として、窒化ガリウム(GaN)を用いたが、これに限られず、良質な絶縁性酸化物層を形成できる他の窒化ガリウム系半導体、例えば窒化アルミニウムガリウム、窒化インジウムガリウム(InGaN)又は窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)等を用いてもよい。
【0037】
また、第1の実施形態において、絶縁膜形成層16Aに対して熱酸化を行なうことにより絶縁性酸化物層16を形成したが、これに代えて、絶縁性に優れた良質な酸化膜を形成できる他の方法、例えばイオン注入法又はプラズマドーピング法等を絶縁膜形成層16Aに対して用いることにより絶縁性酸化物層16を形成してもよい。
【0038】
また、第1の実施形態において、絶縁ゲートを有する半導体装置として、窒化ガリウムよりなるチャネル層13と、n型の窒化アルミニウムガリウムよりなるキャリア供給層14とを備えたHEMTを形成したが、これに限られず、能動層に、例えば窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化インジウムガリウム又は窒化インジウムアルミニウムガリウム等を用いたHEMT又はFETを形成してもよい。但し、HEMTを形成する場合、通常、キャリア供給層14のエネルギーギャップがチャネル層13のエネルギーギャップよりも大きくなるように、チャネル層13及びキャリア供給層14のそれぞれを構成する材料を選択する必要がある。
【0039】
また、第1の実施形態において、基板11を構成する材料として炭化ケイ素を用いたが、これに代えて、チャネル層13等の III族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることができる他の基板材料、例えば窒化ガリウム又はサファイア(Al23)等を用いてもよい。
【0040】
また、第1の実施形態において、金属電極18を構成する金属材料、及びソース・ドレイン電極19を構成する金属材料はそれぞれ特に限定されるものではない。但し、金属酸化物電極17上に形成される金属電極18が、本実施形態の様に、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ルテニウム又はロジウム等の貴金属よりなると、次のような効果が得られる(本実施形態では、白金層と金層との積層体からなる金属電極18を用いている)。すなわち、これらの貴金属は耐酸化性を有するため、金属電極18の形成時に、金属電極18と金属酸化物電極17との間で酸化還元反応が起きることを防止できるので、両電極間に良好な界面が形成される。このため、金属酸化物電極17が金属電極18によって還元され、その結果、還元された金属酸化物電極17が絶縁性酸化物層16によって再び酸化されてしまう事態、つまり、ゲート絶縁膜となる絶縁性酸化物層16が金属酸化物電極17によって還元されてしまう事態を回避できるので、リーク電流が小さく且つ信頼性の高い積層ゲート構造を実現できる。
【0041】
また、第1の実施形態において、絶縁性酸化物層16上に金属酸化物電極17及び金属電極18を積層して形成した後、絶縁性酸化物層16に開口部を設けてキャリア供給層14上にソース・ドレイン電極19を設けたが、これに代えて、ソース・ドレイン電極19を金属酸化物電極17及び金属電極18よりも先に形成してもよい。
【0042】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0043】
図6は、第2の実施形態に係る半導体装置、具体的には、能動層に III族窒化物半導体を用いた絶縁ゲート型のHEMTの断面構成を示している。尚、図6において、図1に示す、第1の実施形態に係る半導体装置と同一の構成部材には同一の符号を付している。
【0044】
図6に示すように、例えば炭化ケイ素からなる基板11上に、例えば窒化アルミニウムからなるバッファ層12、例えば窒化ガリウムからなるチャネル層13、例えばn型の窒化アルミニウムガリウムからなり且つチャネル層13にキャリア(電子)を供給するキャリア供給層14、及び、窒化アルミニウムからなる酸化防止層20が順次形成されている。
【0045】
また、バッファ層12、チャネル層13、キャリア供給層14及び酸化防止層20が形成された基板11上に、バッファ層12にまで達する素子分離絶縁膜15が形成されており、それによってトランジスタ領域が区画されている。トランジスタ領域の酸化防止層20の上に、窒化物半導体が酸化されてなる絶縁性酸化物層16が選択的に形成されている。具体的には、絶縁性酸化物層16は、酸化防止層20上に成長した窒化物半導体層、例えば窒化ガリウム層を酸化することにより形成されている。すなわち、絶縁性酸化物層16はガリウム酸化物(Ga23)よりなる。
【0046】
第2の実施形態の特徴として、絶縁性酸化物層16の上に、例えばイリジウム酸化物よりなる金属酸化物電極17が形成されている。これにより、絶縁性酸化物層16における金属酸化物電極17との界面近傍が還元されることを防止できるので、電極・絶縁膜界面の安定性を保つことができると共に、絶縁性酸化物層16の絶縁性を良好に保つことができる。また、金属酸化物電極17の上に、例えば下層の白金層と上層の金層との積層体からなる金属電極18が形成されている。第2の実施形態においては、金属酸化物電極17と金属電極18とからゲート電極が構成されている。さらに、酸化防止層20上におけるゲート電極のゲート長方向の両側に、酸化防止層20とオーミック接触する一対のソース・ドレイン電極19が形成されている。ソース・ドレイン電極19は、例えば下層のチタン層と上層のアルミニウム層との積層体からなる。
【0047】
このように、第2の実施形態に係るHEMTによると、窒化アルミニウムよりなる酸化防止層20上に成長した窒化物半導体層が酸化されてなる絶縁性酸化物層16、つまりゲート絶縁膜の上に、イリジウム酸化物よりなる金属酸化物電極17が形成されている。ここで、イリジウム酸化物は導電性であるため、電極材料として使用可能である。また、ゲート電極となる金属酸化物電極17内の金属(Ir)は既に酸化されているので、絶縁性酸化物層16内の金属(Ga)を還元することはない。
【0048】
ところで、金属酸化物電極17内の金属Irの酸化状態(酸化数)は、絶縁性酸化物層16内の金属Gaの酸化状態と異なっていると共に、イリジウム酸化物の結晶の基本単位セル構造はガリウム酸化物の結晶の基本単位セル構造と異なる。このため、金属酸化物電極17と絶縁性酸化物層16との構造的親和性は、第1の実施形態の様に金属酸化物電極17の主成分としてインジウム酸化物又はロジウム酸化物等を用いた場合と比べて劣るので、絶縁性酸化物層16内に、例えば酸素空孔に起因する格子間ガリウム原子等の欠陥が発生する可能性がある。
【0049】
しかしながら、本実施形態で金属酸化物電極17の材料として用いるイリジウム酸化物は、耐酸化性に優れていると共に、格子間ガリウム原子に対する拡散障壁として作用する。そのため、仮にゲート絶縁膜となる絶縁性酸化物層16内で還元反応により格子間ガリウム原子が生じた場合にも、該ガリウム原子は拡散することなく絶縁性酸化物層16内にとどまり、最終的に再酸化される。従って、第1の実施形態と同様に第2の実施形態においても、電気的及び化学的に安定な電極・絶縁膜界面(金属酸化物電極17と絶縁性酸化物層16との界面)を実現できると共に、ゲートリーク電流が小さく且つ信頼性が高いゲート構造を実現できる。
【0050】
図7は第2の実施形態に係るHEMTの電流電圧特性を示している。ここで、ゲート電圧値(ゲート・ソース間電圧値)VGSとして、順方向に(ゲート側が正電位になるように)0V、+2V、+4V、逆方向に(ゲート側が負電位になるように)ー2V、ー4V、ー6V、ー8V、ー10V、ー12Vを印加した。また、図7において、横軸にはドレイン電圧値(ソース・ドレイン間電圧値)VDSを示しており、縦軸には単位ゲート幅当たりのドレイン電流値(ソース・ドレイン間電流値)IDSを示している。前述のように、第2の実施形態に係るHEMTは、ゲート絶縁膜となる絶縁性酸化物層16の絶縁特性が優れていると共に、金属酸化物電極17と絶縁性酸化物層16との界面における電気的特性及び化学的安定性が優れているため、図7に示すように、ドレイン耐圧は200V以上にも達する。また、順方向に4V以上のゲート・ソース間電圧VGSを印加した場合にも、金属酸化物電極17つまりゲート電極からのリーク電流は発生しておらず、良好な電流電圧特性が得られていることが分かる。
【0051】
以下、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0052】
図8(a)〜(c)及び図9(a)、(b)は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法、具体的には、図6に示す、絶縁ゲート型のHEMTの製造方法の各工程を示す断面図である。
【0053】
まず、図8(a)に示すように、MOCVD法を用いて、例えば炭化ケイ素からなる基板11上に、例えば窒化アルミニウムからなる厚さ100nm程度のバッファ層12と、例えば窒化ガリウムからなる厚さ3μm(3000nm)程度のチャネル層13と、例えばシリコンをドーパントとするn型の窒化アルミニウムガリウムからなる厚さ15nm程度のキャリア供給層14と、例えば窒化アルミニウムからなる厚さ20〜50nm程度の酸化防止層20と、例えば窒化ガリウムからなる厚さ50〜100nm程度の絶縁膜形成層16Aとを順次成長させる。すなわち、基板11上に、窒化物半導体よりなるエピタキシャル積層体を形成する。
【0054】
次に、リソグラフィ法を用いて、トランジスタ領域をマスクする、シリコンよりなる保護膜(図示省略)を形成した後、酸化雰囲気中で基板11に対して1〜2時間程度の熱酸化処理を行なうことにより、図8(b)に示すように、エピタキシャル積層体が形成された基板11上に素子分離絶縁膜15を選択的に形成する。
【0055】
次に、前述の保護膜を除去した後、酸化雰囲気中で基板11に対して数分間程度の熱酸化処理を行なうことにより、図8(c)に示すように、エピタキシャル積層体の上部にある絶縁膜形成層16Aから絶縁性酸化物層16を形成する。
【0056】
ところで、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、絶縁膜形成層16Aを加熱する時間の調節によって、絶縁性酸化物層16の厚さを調節することができる。ここで、酸化防止層20を構成する窒化アルミニウムの酸化速度は、絶縁膜形成層16Aを構成する窒化ガリウムの酸化速度と比べて50分の1程度と極めて小さい。このため、絶縁膜形成層16Aに対する熱酸化処理は、酸化防止層20で実質的に停止したものとみなすことができる。従って、絶縁膜形成層16Aを全て酸化させた場合にも、キャリア供給層14まで酸化されることがないので、絶縁性酸化物層16の厚さを絶縁膜形成層16Aの厚さによって実質的に調節できるようになる。その結果、絶縁ゲートを有する素子の動作特性に大きな影響を与える、ゲート絶縁膜の膜厚つまり絶縁性酸化物層16の厚さに対する制御性を大幅に向上することができる。
【0057】
次に、例えばスパッタ法を用いて、絶縁性酸化物層16の上に、イリジウム酸化物よりなる厚さ20nm程度の導電性金属酸化物膜を堆積し、引き続いて、該導電性金属酸化物膜の上に、厚さ50nm程度の白金層と厚さ200nm程度の金層とから構成される積層金属膜を堆積する。その後、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、堆積された積層金属膜及び導電性金属酸化物膜、つまりゲート電極形成用導電膜をパターニングすることにより、図9(a)に示すように、絶縁性酸化物層16の上に金属酸化物電極17を形成すると共に金属酸化物電極17の上に金属電極18を形成する。ここで、金属酸化物電極17と金属電極18との積層構造からゲート電極が構成される。その後、絶縁性酸化物層16におけるゲート電極のゲート長方向の両側に対して選択的にエッチングを行なうことにより、絶縁性酸化物層16に一対の開口部を設けて該一対の開口部から酸化防止層20を露出させた後、酸化防止層20における該一対の開口部からの露出部分の上に、例えばスパッタ法を用いて、厚さ20nm程度のチタン層と厚さ200nm程度のアルミニウム層とからなる積層金属膜を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、堆積された積層金属膜をパターニングすることにより、図9(b)に示すように、酸化防止層20と接続する一対のソース・ドレイン電極19を形成する。
【0058】
このように、第2の実施形態に係るHEMTの製造方法においては、窒化ガリウムからなる絶縁膜形成層16Aを熱酸化することにより、基板11上のエピタキシャル積層体の上面に絶縁性酸化物層16を形成した後、絶縁性酸化物層16つまりゲート絶縁膜の直上に、イリジウム酸化物よりなる金属酸化物電極17を形成し、その後、金属酸化物電極17の上に金属電極18を形成する。
【0059】
すなわち、第2の実施形態によると、窒化物半導体自体を酸化することにより形成された絶縁性酸化物層16をゲート絶縁膜として用いていると共に、金属酸化物電極17をゲート電極(正確にはその下層部分)として用いている。すなわち、金属酸化物電極17中の金属は既に酸化物となっているため、ゲート絶縁膜となる絶縁性酸化物層16を構成する金属酸化物(Ga酸化物)が電極材料によって還元されることを防止できる。その結果、絶縁性酸化物層16つまりゲート絶縁膜上に金属膜を直接堆積する場合に生じるようなゲート絶縁膜内の欠陥、例えば酸素空孔等が生じることがない。従って、このような欠陥に起因するリーク電流の発生を防止できると共に、電極・絶縁膜界面の電気的特性を安定化させることができ、それによりゲート絶縁膜の信頼性を向上させることができる。
【0060】
尚、第2の実施形態において、金属酸化物電極17の構成材料としてイリジウム酸化物を用いたが、これに代えて、ルテニウム(Ru)酸化物又は錫酸化物等を用いても同様の効果が得られる。
【0061】
また、第2の実施形態において、図8(c)に示す工程で、絶縁膜形成層16Aを全て酸化して、同程度の厚さを有する絶縁性酸化物層16を形成したが、これに代えて、絶縁膜形成層16Aの上部のみを酸化して絶縁性酸化物層16を形成すると共に絶縁性酸化物層16の下側に未酸化の絶縁膜形成層16A(つまり窒化ガリウム層)を残存させてもよい。また、絶縁膜形成層16Aの厚さを50〜100nm程度としたが、絶縁膜形成層16Aの厚さは特に限定されるものではなく、例えば5〜10nm程度まで薄くしてもよい。いずれの場合であっても、酸化防止層20上に、絶縁膜形成層16Aの酸化によって絶縁性酸化物層16が形成されるため、絶縁性酸化物層16つまりゲート絶縁膜の膜質が良好になると共に、絶縁性酸化物層16とその下側の酸化防止層20(又は未酸化の絶縁膜形成層16A)との接触界面も極めて清浄になる。
【0062】
また、第2の実施形態において、酸化防止層20の構成材料として窒化アルミニウムを用いたが、これに限られず、例えばガリウム又はインジウム等を含む窒化アルミニウムを用いてもよい。但し、酸化防止層20の酸化速度をより小さくするためには、酸化防止層20におけるアルミニウムの組成を相対的に大きくすることが好ましい。
【0063】
また、第2の実施形態において、絶縁性酸化物層16を形成するための絶縁膜形成層16Aつまり被酸化層の材料として、窒化ガリウムを用いたが、これに限られず、良質な絶縁性酸化物層を形成できる他の窒化ガリウム系半導体、例えば窒化アルミニウムガリウム、窒化インジウムガリウム又は窒化インジウムアルミニウムガリウム等を用いてもよい。
【0064】
また、第2の実施形態において、絶縁膜形成層16Aに対して熱酸化を行なうことにより絶縁性酸化物層16を形成したが、これに代えて、絶縁性に優れた良質な酸化膜を形成できる他の方法、例えばイオン注入法又はプラズマドーピング法等を絶縁膜形成層16Aに対して用いることにより絶縁性酸化物層16を形成してもよい。
【0065】
また、第2の実施形態において、絶縁ゲートを有する半導体装置として、窒化ガリウムよりなるチャネル層13と、n型の窒化アルミニウムガリウムよりなるキャリア供給層14とを備えたHEMTを形成したが、これに限られず、能動層に、例えば窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化インジウムガリウム又は窒化インジウムアルミニウムガリウム等を用いたHEMT又はFETを形成してもよい。但し、HEMTを形成する場合、通常、キャリア供給層14のエネルギーギャップがチャネル層13のエネルギーギャップよりも大きくなるように、チャネル層13及びキャリア供給層14のそれぞれを構成する材料を選択する必要がある。
【0066】
また、第2の実施形態において、基板11を構成する材料として炭化ケイ素を用いたが、これに代えて、チャネル層13等の III族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることができる他の基板材料、例えば窒化ガリウム又はサファイア等を用いてもよい。
【0067】
また、第2の実施形態において、金属電極18を構成する金属材料、及びソース・ドレイン電極19を構成する金属材料はそれぞれ特に限定されるものではない。但し、金属酸化物電極17上に形成される金属電極18が、本実施形態の様に、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ルテニウム又はロジウム等の貴金属よりなると、次のような効果が得られる(本実施形態では、白金層と金層との積層体からなる金属電極18を用いている)。すなわち、これらの貴金属は耐酸化性を有するため、金属電極18の形成時に、金属電極18と金属酸化物電極17との間で酸化還元反応が起きることを防止できるので、両電極間に良好な界面が形成される。このため、金属酸化物電極17が金属電極18によって還元され、その結果、還元された金属酸化物電極17が絶縁性酸化物層16によって再び酸化されてしまう事態、つまり、ゲート絶縁膜となる絶縁性酸化物層16が金属酸化物電極17によって還元されてしまう事態を回避できるので、リーク電流が小さく且つ信頼性の高い積層ゲート構造を実現できる。
【0068】
また、第2の実施形態において、絶縁性酸化物層16上に金属酸化物電極17及び金属電極18を積層して形成した後、絶縁性酸化物層16に開口部を設けて酸化防止層20上にソース・ドレイン電極19を設けたが、これに代えて、ソース・ドレイン電極19を金属酸化物電極17及び金属電極18よりも先に形成してもよい。
【0069】
【発明の効果】
本発明によると、窒化物半導体自体を酸化することにより形成されたゲート絶縁酸化膜の上に、導電性金属酸化物よりなるゲート電極が形成されているため、ゲート絶縁酸化膜が電極材料によって還元されることを防止できる。その結果、ゲート絶縁酸化膜上に金属膜を直接堆積する場合と比べて、酸素空孔等のゲート絶縁膜内欠陥の発生を抑制できる。従って、このような欠陥に起因するリーク電流の発生を防止できると共に、電極・絶縁膜界面を電気的及び化学的に安定化させることができ、それにより信頼性に優れたゲート構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の電流電圧特性を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置のゲートリーク電流と、従来のMOSFETのゲートリーク電流とを比較した結果を示す図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の電流電圧特性を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図9】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図10】従来の半導体装置の断面図である。
【符号の説明】
11 基板
12 バッファ層
13 チャネル層
14 キャリア供給層
15 素子分離絶縁膜
16 絶縁性酸化物層
16A 絶縁膜形成層
17 金属酸化物電極
18 金属電極
19 ソース・ドレイン電極
20 酸化防止層

Claims (7)

  1. 窒化物半導体が酸化されてなる絶縁性酸化物層と、
    前記絶縁性酸化物層の上に形成されており、導電性金属酸化物よりなる電極とを備えていることを特徴とする半導体装置。
  2. 前記導電性金属酸化物は、インジウム酸化物、又はインジウムと錫との合金の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  3. 前記導電性金属酸化物は、ロジウム酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  4. 前記導電性金属酸化物は、イリジウム酸化物、ルテニウム酸化物、又は錫酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  5. 前記電極上に形成された金属層をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
  6. 前記金属層は貴金属よりなることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
  7. 前記貴金属は、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ルテニウム又はロジウムを含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
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