JP3986458B2 - 電気二重層キャパシタの製造方法およびその装置 - Google Patents

電気二重層キャパシタの製造方法およびその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、蓄電要素に好適な電気二重層キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種の蓄電装置(電動自動車の駆動電源など)として、急速充電が可能で充放電サイクル寿命が長い、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)の適用技術が注目される。
【0003】
図12は、電気二重層キャパシタの構成を例示する模式図であり、正極体20aと負極体20bとこれらの間に介在するセパレータ23とからキャパシタ本体が構成される。キャパシタ本体は電解液に浸され、容器24に収容して密封される。
【0004】
正極体20aおよび負極体20bは、集電極21を形成する金属箔(たとえば、アルミニウム箔)と、その表面(図示の場合、箔21の両面)に分極性電極22を形成する活性炭主体の混練物層(活性炭層)と、を備えてなり、活性炭と電解液との界面に電荷が貯まり、電気の出し入れは集電極21を介して行われるのである。
【0005】
電気二重層キャパシタの製造方法において、シート状のアルミニウム(集電極を形成する保持材)を挟み込みながら、ローラを用いて保持材の両面に活性炭主体の混練物を圧延することにより、所定の厚さと密度の分極性電極を形成するようにしたものが開示される(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−200737号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような従来技術を踏まえつつ、高性能の電気二重層キャパシタ(静電容量の向上および内部抵抗の低減)を実現しえる、製造方法およびその装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、正極体と負極体とこれらの間に介在するセパレータとから構成されるキャパシタ本体と、キャパシタ本体を電解液と共に密封する容器と、を備える電気二重層キャパシタの製造方法において、正極体および負極体として集電極用の金属箔と分極性電極用の活性炭主体の混練物とから電極シートを作成する過程は、電極シートに成形される素材として金属箔の表面に活性炭主体の混練物層に一体化する工程と、素材から所定形状の電極シートを型抜き加工するのに伴って型抜き用の刃部の内側に構成されるスタンピング用の刃部により素材の混練物層に金属箔へ達する深さの切れ目を入れる工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る電気二重層キャパシタの製造方法において、電極シートに成形される素材として金属箔の表面に活性炭主体の混練物層を一体化する工程は、予め形成の混練物層を金属箔の表面に接着することを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1の発明に係る電気二重層キャパシタの製造方法において、電極シートに成形される素材として金属箔の表面に活性炭主体の混練物層を一体化する工程は、金属箔の表面に混練物の塗布層を形成することを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、正極体と負極体とこれらの間に介在するセパレータとから構成されるキャパシタ本体と、キャパシタ本体を電解液と共に密封する容器と、を備える電気二重層キャパシタの製造装置において、正極体および負極体として集電極用の金属箔と分極性電極用の活性炭主体の混練物とから電極シートを作成する過程の処理手段は、電極シートに成形される素材として金属箔の表面に活性炭主体の混練物層に一体化する工程の処理手段と、素材から電極シートを型抜き加工するのに伴って型抜き用の刃部の内側に構成されるスタンピング用の刃部により素材の混練物層に金属箔へ達する深さの切れ目を入れる工程の処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
【発明の効果】
第1の発明〜第3の発明においては、混練物層の切れ目により、分極性電極に電解液が効率よく含浸する。そのため、電気二重層キャパシタの生産能率を高められる一方、製品としての電気二重層キャパシタについても、電解液が切れ目に保持され、電解液を含む切れ目により、電荷も移動しやすくなり、活性炭の細孔の利用率が上がり、静電容量の増大および内部抵抗の低減が大いに促進されるのである。つまり、正極体および負極体として電極シートを作成する過程において、混練物層に切れ目を入れる工程を加えることにより、高性能の電気二重層キャパシタを廉価に実現しえるようになる。
【0017】
また、混練物層の切れ目は、電極シートを型抜き加工するのに伴うスタンピングにより、工数を増やすことなく、合理的に入れられる
【0018】
第4の発明においては、正極体および負極体として電極シートを作成する過程の処理手段は、電極シートを型抜き加工するのに伴ってスタンピング用の刃部により切れ目を混練物層に入れる工程の処理手段を備えるので、高性能の電気二重層キャパシタを廉価に実現しえるようになる。
【0019】
また、スタンピング用の刃部は、型抜き用の刃部の内側に備えるので、型抜き加工と別途にスタンピング専用の装置(処理手段)を設ける必要がなく、電気二重層キャパシタの製造装置を廉価に実現しえるようになる
【0020】
【発明の実施の形態】
図1において、1は電気二重層キャパシタの正極体および負極体を構成する電極シートであり、電極シート1は集電極2とその両面に分極性電極3を形成する活性炭層(活性炭主体の混練物層)とから組成される。集電極2は、矩形状の金属箔(たとえば、アルミニウム箔)からなり、その矩形平面の一辺に片側へ寄せて帯状のリード部2aが一体に形成される。
【0021】
4は電極シート1を挟み込むセパレータであり、生地(紙製などの多孔質膜に作られる)を2つ折りに形成したものであり、電極シート1はその内側に差し込まれる。2つ折りのセパレータ4は、集電極2のリード部2aの一部(先端側)を露出させる一方、電極シート1の両面(分極性電極3)を覆うと共にその周囲の三辺(折れ線4aに直交する二辺と折れ線4aに平行な一辺と)に所定幅の余白を生じる、大きさ(展開面積)に設定される。
【0022】
複数の電極シート1は、1個ずつ2つ折りのセパレータ4に挟み込まれ、所定数の積層体(キャパシタ本体)に構成される。電極シート1は、集電極2の一辺の片側へ寄るリード部2aとの関係から、交互に表裏を反転させることにより、正極体1aのリード部2aが集電極2の一辺の片側、負極体1bのリード部2aが集電極2のその反対側、に並ぶ積層状態に組み立てられる。集電極2のリード部2aは,同極どうしが結束され、容器の内部において、1対の端子板(たとえば、アルミニウム板)にそれぞれ対応する極性の結束部(リード部2aの重合部分)が接合される。
【0023】
図示しないが、容器は金属層を含む積層構造の柔軟な材質の樹脂フィルム(たとえば、アルミラミネートフィルム)から同一形状に成形される2つの構成部分(底側部分と蓋側部分と)からなり、これらを組み合わせると、互いに向き合う平面矩形状の凹部によって積層体の収容部が形成される。
【0024】
底側部分の内側にキャパシタ本体は納められ、その上から蓋側部分が被せられる。容器の周縁において、1対の端子板(その一部)は引き出される一辺を除いて三辺が熱溶着(熱シール)される。容器は、1対の端子板が突出する一辺が開口可能となり、その開口部から内部に電解液が注入され、電解液の含浸および電解精製が終わると、余分な電解液が抜き取られ、残りの一辺が熱溶着により密封されるのである。
【0025】
集電極2を挟む両側の分極性電極3は、電極シート1を製作する過程において、図2のように多数の切れ目10が活性炭層3の矩形平面を縦横に筋10a,10bの交差する網目状に入れられる。各切れ目10は、分極性電極3に微小幅の溝を形成するものであり、活性炭層の表面から集電極2へ達する深さに形成される。縦横に交差する筋10a,10bの間隔(ピッチ)は、密に過ぎると活性炭層(分極性電極3)の断片的な剥離を生じる可能性が考えられるので、これを避けるため、分極性電極3の厚さの0.1〜100倍以内に設定される。
【0026】
電解液は、電解精製の前にキャパシタ本体を収容する容器の内部に注入されるが、分極性電極3が微小幅の溝(切れ目10)を備えるので、活性炭層に効率よく染み込みようになり、電解液の含浸に要する時間が短縮される(図2の矢印、参照)。電解液は、微小幅の溝10に保持され、電解液に満たされる溝10により、電荷の移動も促進され、電解精製に要する時間の短縮も得られる(図4、参照)。
【0027】
その結果、電気二重層キャパシタの生産能率を高められる一方、製品としての電気二重層キャパシタについても、電解液の含浸性が良くなり、活性炭の細孔の利用率が上がり、電荷も移動しやすくなるので、静電容量の増大および内部抵抗の低減が大いに促進されるのである。つまり、電極シート1の活性炭層3に微小幅の溝10を刻み付けるだけの簡単な手法により、高性能の電気二重層キャパシタを廉価に提供しえる。
【0028】
この例においては、集電極2へ達する深さの切れ目10が分極性電極3の矩形平面を縦横に筋10a,10bの交差する網目状に入れられるので、電解液の含浸性および電荷の移動性を高効率に改善できる。図5および図6は、電極シート1の活性炭層3に切れ目10(微小幅の溝)が有るか無いかの違いを除く他の条件は、同一の設定に係る2種のサンプル(電気二重層キャパシタ)を対象に実施した試験の結果を比較するものであり、両者の静電容量比および内部抵抗について、顕著な差異が認められる。
【0029】
活性炭層3の切れ目10は、図示の網目状に限定されるものでなく、諸種の態様が考えられる。分極性電極3の矩形平面において、微小幅の溝10は、複数の筋または単数の筋を縦方向または横方向へ引くように形成するものでもよい。また、溝10は、曲線的または断続的に形成するものよい。また、集電極2を挟む両側の分極性電極3において、電極シート1の加工性や強度の面から、表側の切れ目10と裏側の切れ目10との間にズレを設定するのもよい。
【0030】
図示の実施形態は、積層型の電気二重層キャパシタへの適用例を説明するが、微小幅の溝10は、ロール型の電気二重層キャパシタ(帯状の正極体と帯状の負極体とこれらの間に介在するセパレータとからロール巻きに構成されるキャパシタ本体と、キャパシタ本体を電解液と共に密封する容器と、を備える)への適用も可能である。その場合、図示しないが、帯状の電極シート(正極体および負極体を構成する)において、集電極の表面に分極性電極を形成する活性炭層に微小幅の溝を刻み付けることになる。
【0031】
図7は、電極シート1を製作する過程を説明するものであり、分極性電極用の活性炭を主成分とする原料は、攪拌機30に投入され、その内部において、剪断力を加えながら均一な混練物mに生成される。混練物mは、攪拌機30から帯状に押し出され、ローラ31,32により圧延される。圧延は、数次に亘って行われ、帯状の混練物mを所定の厚さと密度に成形する。帯状の混練物mは、移送しやすく、ロール33に巻き取られるのである。
【0032】
集電極の原料(所定厚の帯状に一次加工の金属箔nをロール巻にしたもの)は、ロール34から繰り出され、帯状の表面に接着処理(金属箔nの両面に接着剤を均一に塗布する)が施される。その後、金属箔nを挟む両側のロール33から帯状の混練物mが繰り出され、ローラ35,36により金属箔nの両面に圧延される。圧延は、数次に亘って行われ、金属箔nの両面に混練物mが一体化される。
【0033】
続くローラ37の軽度な圧延に伴うカッティングにより、金属箔nを挟む両側の混練物層mに微小幅の溝10が刻み付けられる。ローラ37の外周に複数の刃先が突設され、ローラ37の圧延面を介して送り出される帯状シートpの混練物層(活性炭層)に長手方向(ローラ37の送り出し方向)へ筋を引くように複数の切れ目10(微小幅の溝)が入れられる。
【0034】
その後、帯状シートpは、ロール38に巻き取られ、次の工程において、プレス機の型抜き加工により、電極シート1に成形される。この場合、分極性電極4の切れ目10(微小幅の溝)は、混練物層の平面に網目状でなく、縦方向または横方向へ複数の平行な筋を引く形態に形成されるのである。
【0035】
図8は、帯状シート(電極シートの素材)に係る、図7の場合と異なる製作過程を説明するものであり、集電極の原料(所定厚の帯状に一次加工の金属箔nをロール巻にしたもの)は、ロール34から繰り出され、その両面に分極性電極用の活性炭を主成分とする混練物のスラリが塗布される。金属箔nの塗布層は、続く軽度な乾燥処理後、ローラ39の圧延により一体化され、所定の厚さと密度に調整される。帯状シートp’は、ロール40に巻き取られ、次の工程において、電極シート1に成形される。
【0036】
図9は、帯状シートp’から電極シート1を成形する工程を説明するものであり、プレス機の型抜き加工において、型抜き用の刃部の内側に微小幅の溝を混練物層に刻み付けるスタンピング用の刃部が備えられる。ロール40から繰り出される帯状シートp’は、下型41aと上型41bとの間において、スタンピング用の刃部により、金属箔nを挟む両側の混練物層(活性炭層)に切れ目が入れられ、型抜き用の刃部により、帯状シートp’から所定形状の電極シート1が打ち抜かれるのである。スタンピング用の刃部は、刃先が網目状に構成され、混練物層に微小幅の溝(切れ目10)を網目状に形成する。
【0037】
電極シート1を型抜き加工する処理手段については、図のようなローラ42を用いてもよい。ローラ42の外周に型抜き用の刃部42aおよびその内側にスタンピング用の刃部42bが備えられ、ローラの回転に伴う軽度な圧延により、溝10のスタンピングと共に電極シート1が型抜き加工される。
【0038】
図9の場合または図10の場合においては、電極シート1の型抜きに伴って溝10がスタンピングされるため、混練物層への溝入れに専用の装置を用いることなく、電気二重層キャパシタの性能アップ(静電容量の向上および内部抵抗の低減)を廉価に実現できるのである。図10において、43は帯状シートp’を移動可能に支持するガイドである。
【図面の簡単な説明】
【図1】電気二重層キャパシタの構成に係る説明図である。
【図2】電極シートの正面図である。
【図3】同じく断面図である。
【図4】同じく作用の説明図である。
【図5】同じく試験の結果を表すグラフである。
【図6】同じく試験の結果を表すグラフである。
【図7】同じく電極シートの素材を製作する過程の説明図である。
【図8】別の製作過程に係る説明図である。
【図9】プレス機の型抜き加工に係る説明図である。
【図10】ロールの回転に伴う型抜き加工の説明図である。
【図11】同じく型抜き加工の説明図である。
【図12】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
1 電極性シート
1a 正極体
1b 負極体
2 集電極
2a リード部
3 分極性電極
4 セパレータ
10 切れ目(微小幅の溝)
31,32、35,36、39 圧延用のローラ
37 カッティング兼用のローラ
41a プレス機の型抜き加工用の下型
41b プレス機の型抜き加工用の上型
42 スタンピング&型抜き用のローラ

Claims (4)

  1. 正極体と負極体とこれらの間に介在するセパレータとから構成されるキャパシタ本体と、キャパシタ本体を電解液と共に密封する容器と、を備える電気二重層キャパシタの製造方法において、正極体および負極体として集電極用の金属箔と分極性電極用の活性炭主体の混練物とから電極シートを作成する過程は、電極シートに成形される素材として金属箔の表面に活性炭主体の混練物層に一体化する工程と、素材から所定形状の電極シートを型抜き加工するのに伴って型抜き用の刃部の内側に構成されるスタンピング用の刃部により素材の混練物層に金属箔へ達する深さの切れ目を入れる工程と、を含むことを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。
  2. 電極シートに成形される素材として金属箔の表面に活性炭主体の混練物層を一体化する工程は、予め形成の混練物層を金属箔の表面に接着することを特徴とする請求項1に係る電気二重層キャパシタの製造方法。
  3. 電極シートに成形される素材として金属箔の表面に活性炭主体の混練物層を一体化する工程は、金属箔の表面に混練物の塗布層を形成することを特徴とする請求項1に係る電気二重層キャパシタの製造方法。
  4. 正極体と負極体とこれらの間に介在するセパレータとから構成されるキャパシタ本体と、キャパシタ本体を電解液と共に密封する容器と、を備える電気二重層キャパシタの製造装置において、正極体および負極体として集電極用の金属箔と分極性電極用の活性炭主体の混練物とから電極シートを作成する過程の処理手段は、電極シートに成形される素材として金属箔の表面に活性炭主体の混練物層に一体化する工程の処理手段と、素材から電極シートを型抜き加工するのに伴って型抜き用の刃部の内側に構成されるスタンピング用の刃部により素材の混練物層に金属箔へ達する深さの切れ目を入れる工程の処理手段と、を備えることを特徴とする電気二重層キャパシタの製造装置
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