JP3986336B2 - 立て坑のシール装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル掘削に用いられるシールドに引き続いて構築されるライニングと、前記シールドの発進用又は到達用の立て坑との間に適用されるシール装置に関し、より詳細には、互いに連結された複数の単円シールドに引き続いてそれぞれ構築される複数のライニングと前記立て坑との間に適用されるシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の比較的小口径のトンネルを同時に構築するため、いわゆるH&Vシールド工法が提案されており、この工法を実施するため、互いに連結された複数の単円シールドが用いられる。
【0003】
前記H&Vシールド工法に用いられる複数の単円シールドは、単一の円形シールドや互いに連なる複数の円形シールドを用いる他のシールド工法におけると同様、地中に構築された立て坑(発進立て坑)から他の立て坑(到達立て坑)に向けて、地中を推進される。
【0004】
しかし、前記H&Vシールド工法では、ライニングが単一である他のシールド工法と異なり、複数のライニング(例えばセグメントリング)がそれぞれ複数の単円シールドに引き続いて構築され、しかもこれらのライニングが互いに分離・独立した状態にある。このため、前記単円シールドの通過のために立て坑に設けられた孔からの該立て坑内への地下水の流入を阻止(止水)するためのシール装置を全ライニングと立て坑との間のほか、さらにライニング相互間についても適用することが必要である。
【0005】
このことから、複数の単円シールドと立て坑との間の止水を維持する間に、前記立て坑内に複数のライニングを横切るように鉄板を配置し、該鉄板により、前記立て坑の内部側とその外部側とを遮断することが提案されている。
【0006】
しかし、前記鉄板の据付作業は、複数の単円シールドと立て坑との間からの該立て坑内への地下水流入の可能性のある危険な環境下で行う必要がある。また、ライニング相互間の間隔が比較的狭い場合にあってはこれらの間に作業員が入ることができず、前記鉄板の据付が実質的に不可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、安全な環境下で設置可能であるシール装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ライニング相互間の間隔の広狭に拘わらずに設置可能であるシール装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トンネルの掘削に用いられる互いに連結された複数の単円シールドに引き続いてそれぞれ構築される複数のライニングと、前記単円シールドの発進用又は到達用の立て坑との間に適用されるシール装置を提供する。
【0009】
このシール装置は、前記立て坑内にあって前記単円シールドと前記ライニングとの間で各ライニングに接続された、複数のエレメントからなるリングと、各リングに取り付けられ各リングの周囲を取り巻く、流体の供給により膨張可能である1または複数の袋体と、前記立て坑の坑壁に支持され全リングを取り巻く胴状部材とを備え、前記ライニングの1つに接続されたリングは、他のライニングに接続されたリングに隣接しており、前記袋体が膨張時に互いに他のリングの周囲の袋体と前記胴状部材とにそれぞれ密接可能である。
【0010】
前記シール装置は、好ましくは、さらに、前記胴状部材に取り付けられその周方向へ伸びる突条であって前記袋体の膨張時に該袋体に覆われる突条を備える。
【0011】
複数のエレメントのそれぞれに袋体が取り付けられたものとすることができる。また、前記エレメントは、セグメントからなるものとすることができる。
【0012】
前記シール装置は、さらに、前記胴状部材に支持された、弾性を有する止水部材であって前記単円シールドの通過を許す孔を有しかつ前記単円シールドの周面に密接可能である、例えば発泡プラスチックからなる止水部材を有するものとすることができる。
【0013】
【発明の作用および効果】
本発明によれば、各単円シールドに引き続くライニングに接続されたリングの周囲の袋体に流体を供給し、これを膨張させると、各袋体が全リングの周囲の胴状部材に密接し、また、各リングの周囲の袋体が相互に密接する。その結果、膨張した前記袋体によって、実質的に、各リングと前記胴状部材との間に存する隙間と、前記リング相互間に存する隙間とがそれぞれ塞がれ、これらの隙間を通しての立て坑内への地下水の流入が阻止される。
【0014】
前記リングは、各単円シールドのテール部内において、前記ライニングに対する接続作業を行うことができる。複数のエレメント又は袋体が取り付けられた複数のエレメントは、前記単円シールドのテール部において、前記ライニングの組立装置を利用して、環状に組み立てることができる。袋体が取り付けられていない複数のエレメントについてはこれらを環状に組み立てた後、その周囲に1の袋体を配置し、固定することができる。また、前記胴状部材の設置は、立て坑の内部からその外部への前記単円シールドの推進に先立ち、又は立て坑内への前記単円シールドの到達前に行うことができる。これらのことから、立て坑内への地下水流入の危険性が非常に少ない環境下において、前記シール装置の設置作業を行うことができる。さらに、前記袋体及びリングの設置は、前記ライニングの組立と同様にして行うことができることから、ライニング相互間の間隔の広狭に拘わらず、シール装置の設置を行うことができる。
【0015】
前記リングは、前記ライニングの一部とすることができる。また、前記エレメントは、好ましくは前記ライニングの構成部材の1つであるセグメントとする。
【0016】
前記胴状部材に取り付けられその周方向へ伸びる突条は、膨張状態の袋体に埋もれるように覆われるため、土水圧を受ける前記袋体の前記胴状部材の軸線方向への移動が前記突条によって制限され、これにより前記袋体と前記胴状部材との間の密接状態をより確実に維持することができる。また、前記突条は前記袋体と前記胴状部材との間における地下水の通り抜けの障害をなす。これにより、シール装置のシール機能すなわち止水機能をより高めることができる。
【0017】
前記胴状部材が、さらに、発泡プラスチック製、ゴム板製等の止水部材を支持するものとすることができ、該止水部材により前記単円シールドと前記立て坑との間に該立て坑内への地下水の流入を阻止するためのシール構造を形成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1及び図2を参照すると、トンネルの掘削に用いられる工法の1つである、いわゆるH&Vシールド工法において用いられる、本発明に係るシール装置が全体に符号10で示されている。
【0019】
前記H&Vシールド工法では、互いに連結された複数(図示の例では2つ)の単円シールド12を備えるシールド掘進機14が発進立て坑16から到達立て坑18(図6)に向けて地中を推進される。推進の間、単円シールド12に引き続いてライニング20が構築される。
【0020】
シールド掘進機14はライニング20に推進反力を担わせながら、発進立て坑16内を推進され(図3及び図4)、さらに、発進立て坑16外へと推進される(図5)。その後、シールド掘進機14は、到達立て坑18の坑壁に設けられた孔21を経て到達立て坑18の内部に到達し(図6)、さらにその内部を推進される(図7及び図8)。
【0021】
発進立て坑16の坑壁22は、図示の例のように、その一部がいわゆるノムスト部材で構成されることがある。前記ノムスト部材はシールド掘進機14のカッタにより切削可能の部分を有し、該部分の掘削により孔24(図5)が形成される。2つの単円シールド12はこれらの側部で連結部材25で互いに連結されていることから、孔24の輪郭は全体に2つの円が互いに連なった形状、いわゆる眼鏡形を呈する。到達立て坑18の孔21もまた同様に眼鏡形を呈する。
【0022】
シールド掘進機14の推進方向の後方に形成されるライニング20は、例えば互いに接続され筒状をなす複数のセグメントリングからなり、各セグメントリングは、単円シールド12のテール部内で環状に組み立てられた鋼製、コンクリート製等の複数のセグメント26からなる。
【0023】
シール装置10は、各ライニング20に接続されたリング28と、各リング28に取り付けられ該リングの周囲を取り巻く、流体の供給により膨張可能である袋体30と、全リング28をこれらの周りで取り巻く胴状部材32とを備える。
【0024】
リング28は、例えば鋼製、コンクリート製等の複数のエレメント29からなる。リング28は、ライニング20の一部として形成することができる。リング28をライニング20の一部とするためには、各エレメント29は、セグメント26と同じ内外径及び幅寸法(軸線方向長さ)を有し、さらにセグメント26と同じ機械的強度を有するものとする。
【0025】
リング28は、各単円シールド20のテール部内で、各単円シールド20内に備え付けられたセグメントエレクタ(図示せず)を利用して、ライニング20の前方に環状に組み立てることができる。エレメント29相互の連結、及びライニング20へのリング28の連結・接合は、例えばボルト及びナット(図示せず)を用いて行うことができる。したがって、リング28の設置は、ライニング20の構築と同様にして、比較的安全に行うことができる。
【0026】
袋体30は、全体に環状の形態を有し、リング28の周面上に配置され、これに接着することにより取り付けられている。
【0027】
袋体30は、単一のもの、又は互いに協同して前記環状の形態をなす複数のものからなる。複数の袋体30は、それぞれを各エレメント29の周面に配置しかつ接着することができる。また、単一の袋体30は、複数のエレメント29を環状に組み立ててリング28を形成した後、該リングの周りにその周面に沿って掛け、リング28の周面に接着することができる。単一の袋体30は、これを折り畳んだ状態で前記単円シールドのテール部内に搬入することができる。
【0028】
袋体30は、1又は2本の導管(図示せず)を介して、これに空気、水、液状ベントナイト等からなる流体を供給することにより膨張する。袋体30に供給される前記流体として前記液状ベントナイトを選択するときは、袋体30内で前記液状ベントナイトを経時的に固化させることができる。袋体30は、リング28の設置の際の便宜のため、リング28又は各エレメント29の周面(外周面)に沿って扁平状態にされている。
【0029】
袋体30は、ゴム引き布、合成樹脂製のシート等で形成され、前記流体の供給に伴う膨張に耐えるに十分な引裂抵抗、引張抵抗等を有する。
【0030】
胴状部材32は、発進立て坑16外へのシールド掘進機14の推進前、及び到達立て坑18内へのシールド掘進機14の受け入れ前に予め据え付けられる(図3及び図6参照)。このため、立て坑16,18内への地下水の流入を考慮する必要のない安全な環境下での胴状部材32の据付が可能である。
【0031】
胴状部材32は立て坑16,18に形成される孔24(到達立て坑にあっては孔21)の周囲をこれに沿って伸び、全体にいわゆる眼鏡形の横断面形状を有する空洞を規定する。図示の胴状部材32は、コ字形の横断面形状を有するように組み立てられた複数の鋼板からなり、複数のアンカーボルト33を介して坑壁22に固定され、前記眼鏡形の横断面形状を有する周面34を規定する。
【0032】
好ましくは、胴状部材32は突条36を有する。突条36は、胴状部材の周面34に取り付けられ該周面に沿ってその周方向へ伸びる。突条36は、鋼製の棒材、管材、図示の例のような管状の横断面形状を有する袋体等からなる。袋体からなる突条36には、これに空気、水、液状ベントナイト等の流体を供給するための導管38(図5及び図8参照)が接続されている。突条36は、より好ましくは内周面34の中央位置、すなわち胴状部材32の軸線方向における中央位置に配置する。
【0033】
各リング28の周りの袋体30は、前記流体の供給によりこれが膨張されるとき、相互に密接しかつ胴状部材32の周面(内周面)に密接する(図1、図2、図5及び図8参照)。各リング28の周りの複数の袋体30が配置されるときは、さらに、これらの袋体30がリング28の周方向に関して互いに密接する。
【0034】
袋体30の膨張により、実質的に、リング28相互間に存する隙間が埋められ、かつリング28と胴状部材32との間に存する隙間が埋められ、これらの隙間を通しての立て坑16内への地下水の流入が阻止される。このとき、互いに密接する袋体30相互と胴状部材32の周面と間にわずかな隙間40が生じるが、これは非常に小さく、該隙間を通しての地下水の流入量は、地下水圧の大きさにもよるが、ほとんど無視し得る程度である。したがって、必ずしも塞ぐ必要はないが、所望により、隙間40に例えばぼろ布を詰め込むことにより、該隙間からの地下水の流入を容易に止めることができる。あるいは、また、隙間40が生じる位置に該隙間より大きい横断面形状を有する棒状の発泡プラスチック製の弾性体(図示せず)を配置しておく。例えば、前記棒状の弾性体を胴状部材の周面34に固定しておく。これによれば、膨張する各袋体30が前記棒状弾性体を密接してこれを圧縮する。その結果、隙間40の発生が防止される。
【0035】
胴状部材の周面34に配置された突条36は、袋体30の膨張時に該袋体に埋もれるように袋体30に覆われる(図1、図2、図5及び図8参照)。突条36は、リング28の軸線方向への土水圧を受ける袋体30に対し、胴状部材の周面34に対する移動抵抗を与え、胴状部材32と袋体30との間の密接関係を確実に維持することができる。また、突条36は、同部材の周面34上における軸線方向距離を実質的に増大させることから、周面34とこれに密接する袋体30との間の地下水が侵入した場合における該地下水の通り道であるいわゆる水道の距離を増大し、地下水の通り抜けをより困難にすることができる。
【0036】
シール装置10は、さらに、止水部材42を備えるものとすることができる。
【0037】
止水部材42は弾性を有する、ゴム板、図示の例のような発泡プラスチック等からなる。前記発泡プラスチックは、天然ゴム、ウレタン、ネオプレン等のゴム系材料、又はポリエチレンのような樹脂系材料からなる。前記発泡プラスチックの気泡構造は、独立発泡構造及び連続気泡構造のいずれでもよいが、好ましくは、止水性を有する独立発泡構造である。連続気泡構造のものは、その気泡内に、地下水中の土砂が充填されることにより実質的な止水性を獲得する。なお、前記発泡プラスチックの硬度は、地下水圧の大きさ、単円シールド12の偏心量の度合い、前記発泡プラスチックがその弾性を維持しうる最大限の圧縮量の大きさ等を考慮して定める。
【0038】
止水部材42は、リング28から間隔をおいてその前方位置、すなわちシールド掘進機14の推進方向における前方位置に配置されかつ胴状部材の周面34に固定され、胴状部材の周面34に沿ってその周方向に伸びている。
【0039】
止水部材42は、発進立て坑16内からその外部へ推進され、又は到達立て坑18内に受け入れられるシールド掘進機14の2つの単円シールド12の通過を許す眼鏡形の孔44を有する。止水部材42は、シールド掘進機14が孔44を通過する間、弾性的に圧縮される。この間、両単円シールド12の周面と、これらの連結部材25の表面とに液密に接し、シールド掘進機14と立て坑16,18との間からの該立て坑内への地下水及び土砂の侵入を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシール装置の横断面図である。
【図2】シール装置をその後方から見た立面図である。
【図3】発進立て坑内に配置された胴状部材及び止水部材と、シールド掘進機とを概略的に示す部分縦断面図である。
【図4】発進立て坑内を推進され、止水部材に嵌合した状態にあるシールド掘進機と、その後方に配置されたリングの一部とを概略的に示す部分縦断面図である。
【図5】シールド掘進機がさらに推進され、リングの周囲の袋が膨張された状態を概略的に示す部分縦断面図である。
【図6】胴状部材及び止水部材が予め配置された到達立て坑と、該到達立て坑内に部分的に侵入したシールド掘進機とを概略的に示す部分縦断面図である。
【図7】到達立て坑内にさらに推進され、止水部材に嵌合した状態にあるシールド掘進機と、その後方に配置されたリングの一部とを概略的に示す部分縦断面図である。
【図8】シールド掘進機がさらに推進され、リングの周囲の袋が膨張された状態を概略的に示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
10 シール装置
12 単円シールド
16,18 発進立て坑及び到達立て坑
20 ライニング
28 リング
30 袋体
32 胴状部材
36 突条
42 止水部材
Claims (6)
- トンネルの掘削に用いられる互いに連結された複数の単円シールドに引き続いてそれぞれ構築される複数のライニングと、前記単円シールドの発進用又は到達用の立て坑との間に適用されるシール装置であって、前記立て坑内にあって前記単円シールドと前記ライニングとの間で各ライニングに接続された、複数のエレメントからなるリングと、各リングに取り付けられ各リングの周囲を取り巻く、流体の供給により膨張可能である1または複数の袋体と、前記立て坑の坑壁に支持され全てのリングを取り巻く胴状部材とを備え、前記ライニングの1つに接続されたリングは、他のライニングに接続されたリングに隣接しており、前記袋体は膨張時に互いに他のリングの周囲の袋体と前記胴状部材とにそれぞれ密接可能である、シール装置。
- さらに、前記胴状部材に取り付けられその周方向へ伸びる突条を含み、前記突条は前記袋体の膨張時に該袋体に埋もれるように前記袋体に覆われる、請求項1に記載のシール装置。
- 複数の袋体はそれぞれ複数のエレメントに取り付けられている、請求項1に記載のシール装置。
- 前記エレメントはセグメントからなる、請求項3に記載のシール装置。
- さらに、前記胴状部材に支持された、弾性を有する止水部材を含み、前記止水部材は全ての単円シールドの通過を許す孔を有しかつ前記単円シールドの周面に密接可能である、請求項1に記載のシール装置。
- 前記止水部材は発泡プラスチックからなる、請求項5に記載のシール装置。
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