JP3985949B2 - 高周波誘導加熱方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形機や押出機などに用いるスクリュー軸のように、外周面に凸条を備えた軸状部材の表層部分を誘導加熱する方法に関し、特に、前記軸状部材の表面に溶射等によって形成した金属材料の一次被覆層を再溶融処理するために前記軸状部材の表層部分を加熱するのに好適な高周波誘導加熱方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、鋼製の管やローラの外周面に、耐摩耗性などの物性を向上させるために、溶射等によって金属被覆層を形成することが行われている。また、溶射等によって金属被覆層を形成した後、その金属被覆層(一次被覆層という)を再溶融処理して、一次被覆層に存在していた気孔や酸化物を除去し、緻密な二次被覆層とすることも行われており、その再溶融処理のために管やローラ表面を誘導加熱することも知られている。この誘導加熱には、管やローラの軸線方向の小区間を取り囲む環状の誘導子を用いており、その誘導子を管やローラに沿って軸線方向に相対的に移動させることで、一次被覆層全長に再溶融処理を施していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
最近、外周面にらせん状の凸条を有するスクリュー軸にも自溶合金等の被覆層を形成する要求が生じてきた。そこで、スクリュー軸表面に自溶合金を溶射して一次被覆層を形成し、次いで、そのスクリュー軸の表層部分を誘導加熱して一次被覆層を再溶融処理することを試みた。この際、従来用いられている短い環状の誘導子では、再溶融処理に時間がかかり、生産性が悪いため、誘導子として、図14に示すように、スクリュー軸1の加熱すべき領域全長に亘ってスクリュー軸1に平行に配置しうる誘導作用部17a,17bを備えた鞍型誘導子17を用い、一次被覆層全長を同時に再溶融処理した。ところが、この誘導子による加熱では、スクリュー軸1の凸条2とその他の領域3(一つの凸条2と隣接の凸条2とではさまれた領域、以下溝底部という)とを均一に加熱することが困難であり、一次被覆層の良好な再溶融処理ができないという問題のあることが判明した。
【0004】
以下、この問題点を図15(a)に示す射出成形機用スクリュー軸1を参照して説明する。スクリュー軸1は、図示のように、先端側から、大径平行部1a、勾配部1b、小径平行部1cを備えており、これらの各部にらせん状に凸条2が形成されている。この凸条2の外径は各部においてほぼ一定であるので、凸条2の高さは大径平行部1a、勾配部1b、小径平行部1cにおいてそれぞれ異なっており、また凸条2の形状、傾き等も図15(b)、(c)に示すように、異なっている。このようなスクリュー軸1に対して溶射により一次被覆層を形成する際、凸条2の表面を含む全域で膜厚を一定にするのが理想だが、自動で溶射を行っても、スクリュー軸1のあらゆる面に対して溶射角を一定に制御することや、粉末の跳ね返りを一定にすることは不可能あることから、膜厚を一定に溶射することはきわめて困難である。このため、現実には膜厚が場所によってかなり変動してしまい、目標1mmの膜厚に対して、1〜2mm程度の範囲にしか形成できない。一方、一次被覆層の再溶融処理には、一次被覆層を適正温度に昇温させることが必要である。スクリュー軸1の表面を加熱、昇温させて、その上の一次被覆層を溶融させる場合、スクリュー軸1の表面が均一に昇温したとしても膜厚の厚いところでは薄いところに比べて昇温に時間がかかってしまう。このため、厚さむらのある一次被覆層全体を適正温度に昇温させるには、スクリュー軸1の表面を適正温度に昇温させた後、適当な時間だけその温度に保持して一次被覆層を均熱することが必要である。
【0005】
しかしながら、鞍型誘導子17の誘導作用部17a,17bをスクリュー軸1に平行に配置してスクリュー軸1の表層部分を誘導加熱した場合、凸条2と溝底部3とにかなりの温度差が生じてしまうとか、凸条2の高さの高いところでは低いところに比べてあまり昇温しないといった現象があり、このため、昇温途中で一次被覆層に割れが生じることがあり、また均熱中に、高温部にだれ(溶融金属が流れる現象)が生じるといった問題が生じた。これを防止するには、昇温時間をきわめて遅くするとか、スクリュー軸表面の到達温度を、再溶融処理の最適温度よりも低めに(例えば、10〜15°C低めに)設定し、その温度で均熱することが必要となるが、この方法では、予想以上に時間がかかり、生産性がきわめて悪くなるという問題を生じる。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、スクリュー軸のように、外周面に凸条を備えた軸状部材の表層部分を、凸条と溝底部との温度差や、凸条の高さの異なる部分での温度差を小さく抑制しながら誘導加熱することを可能とする高周波誘導加熱方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鞍型誘導子を用いてスクリュー軸を誘導加熱した際に、凸条と溝底部とに生じる温度むらの原因を検討の結果、次の事項を見出した。すなわち、図14に示すように、スクリュー軸1の軸線に平行に配置した誘導作用部17a,17bに通電すると、電流は矢印Cで示すようにスクリュー軸1の軸線に平行方向に流れ、それに応じてスクリュー軸1の表層部分には矢印Dで示すようにスクリュー軸1の軸線方向の誘導電流が発生し、その誘導電流は凸条2を横切って流れる。このため、図3に拡大して示すように、凸条2を横切る誘導電流5は、凸条2の一方の側面2bを昇り、他方の側面2cを下る方向、及びその逆方向に交互に流れることとなる。この際、誘導電流5の電流浸透深さが深いと、凸条2の一方の側面2bを昇る方向に流れる誘導電流と他方の側面2cを下る方向に流れる誘導電流とが干渉し合い、結局凸条2を流れる誘導電流が少なくなって、温度が上がらない。特にこの現象は凸条2の高さが高いところで顕著である。一方、電流浸透深さが浅すぎると、大部分の誘導電流が凸条2の表面を流れ、熱容量の小さい角部2a,2aをオーバーヒートしてしまい、角部2aの温度が他の領域の温度よりもかなり高くなってしまう。これらの現象によりスクリュー軸の凸条と溝底部とに大きい温度差が生じていた。このような温度むらの発生を抑制するには、凸条を横切って流れる誘導電流の電流浸透深さを適正な値とすることが有効である。本願発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本願発明は、外周面に凸条を備えた軸状部材に誘導子を近接配置し、前記凸条に交叉する方向の誘導電流を発生させて誘導加熱するに際し、前記誘導子への通電周波数を、少なくとも、前記軸状部材の表面が磁気変態点を越えた所定温度に昇温している時には、前記通電周波数に基づく電流浸透深さが、前記誘導電流の流れ方向における前記凸条の幅の1/2.5以下、0.3mm以上の範囲内となる通電周波数f 1 に設定し、更に、通電開始時には、前記通電周波数f 1 よりも低い通電周波数f 2 に設定し、その低い通電周波数f 2 から高い通電周波数f 1 への切替を、前記軸状部材の昇温途中で、その表面温度が磁気変態点±100°Cの範囲内にある時に行う構成とした高周波誘導加熱方法である。このように、軸状部材の表面が所定温度に昇温している時の電流浸透深さを、凸条の、誘導電流が流れる方向における幅の1/2.5以下としたことで、凸条の両側の側面を昇り降りする誘導電流が互いに干渉しあって減少するということが少なくなり、凸条を溝底部と同様に誘導加熱することができ、且つ高さの異なる凸条も同様に加熱することができ、また、電流浸透深さを、0.3mm以上としたことで、角部のオーバーヒートを抑制でき、結局、軸状部材の表面を、温度むらを小さく抑制した状態で所望温度に保持できる。以下、この条件を満たす周波数を適正周波数と称する。また、通電開始時には、誘導子への通電周波数f 2 を、通電周波数f 1 よりも低く設定しておくことにより、加熱開始時の軸状部材の比透磁率がきわめて大きい時に電流浸透深さが過度に小さくなって凸条の角部のみが急激に昇温するということを防止でき、軸状部材の表面を温度むらを小さく抑制した状態で敏速に昇温させることができる
【0009】
【0010】
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で誘導加熱の対象とする軸状部材は、外周面に凸条を備え、且つ表層部分を誘導加熱可能な材質で構成されたものであれば任意であり、代表例として、射出成形機や押出成形機のスクリュー軸を挙げることができる。また、その軸状部材の加熱目的も任意であり、例えば、軸状部材表面に溶射等によって形成した金属の一次被覆層を再溶融処理するための軸状部材表面の加熱、或いは、軸状部材表面の熱処理のための加熱等を挙げることができる。以下、スクリュー軸の表面に形成した一次被覆層を再溶融処理する場合を例にとって、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本願発明の実施形態に係る高周波誘導加熱方法を実施するための装置の1例の主要部品を示す概略斜視図、図2はその装置を、加熱動作中の状態で示す概略斜視図である。1は誘導加熱の対象とするスクリュー軸であり、外周面に凸条2と溝底部3を備え、表面に溶射等によって自溶合金の一次被覆層を形成している。11は固定ベース、12は固定ベース11に回転自在に保持され、スクリュー軸1を保持するチャック、13はチャック12に保持したスクリュー軸1をその中心軸線を中心として回転させる駆動モータ、14は減圧容器、15は真空ポンプである。17はスクリュー軸1の表層部分の誘導加熱を行うための誘導子、18は高周波トランス、19は高周波電源装置である。ここで用いている誘導子17は、角パイプ等の中空導体をループ状に且つ鞍型に形成した、いわゆる鞍型誘導子と称されるもので、スクリュー軸1の加熱すべき領域の全長に亘って平行に対向配置可能な誘導作用部17a,17bと、その両端をそれぞれ横方向に退避した形態で連結した連結部17c,17dを備えている。この構成の誘導子17を用いることで、チャック12に保持されたスクリュー軸1の側方から誘導子17を矢印Eで示すように移動させ、誘導子17の誘導作用部17a,17bをスクリュー軸1に対向する位置にセットすることができる。誘導子17には、それを構成する中空導体内に冷却水を通すための通水配管(図示せず)も接続されている。高周波電源装置19は高周波トランス18を介して誘導子17に所定周波数を以て高周波通電するものであり、ここでは二つの周波数(詳細は後述する)を切り替えて供給可能な2周波電源装置が使用されている。
【0013】
次に、上記構成の装置を用いてスクリュー軸1の表層部分を誘導加熱し、一次被覆層を再溶融処理する際の動作を説明する。図2に示すように、処理すべきスクリュー軸1をチャック12に保持させ、誘導子17を、誘導作用部17a,17bがスクリュー軸1をはさんだ位置でスクリュー軸1に平行となるようにセットする。次いで、真空ポンプ15を作動させて減圧容器14内を所望の真空度になるよう減圧し、その状態で駆動モータ13でスクリュー軸1を回転させながら、誘導子17に高周波通電を行う。これにより、誘導子17の誘導作用部17a,17bにはスクリュー軸1に平行方向(矢印C方向)に電流が流れ、それに応じてスクリュー軸1の表層部分には、図4に示すように、スクリュー軸1を表面から見た状態ではスクリュー軸1の軸線に平行方向(矢印D方向)の誘導電流が発生する。そして、その誘導電流は、スクリュー軸1を断面で見た状態では、図3に符号5で示すように、溝底部3の表層部分をスクリュー軸1の軸線に平行に流れ凸条2を横切る位置では、凸条2の表面に沿って流れる。このため、スクリュー軸1の加熱すべき領域全体の表層部分が同時に昇温してゆき、一次被覆層も昇温してゆく。そして、スクリュー軸1の表面が、一次被覆層の再溶融処理に適切な所定温度に到達した後は、一次被覆層の厚さの最も厚い部分をも確実に再溶融処理するのに要する時間だけ、その温度に保持し、一次被覆層を再溶融処理する。処理後は、誘導子17への通電を停止して冷却する。以上のようにして、スクリュー軸1の一次被覆層全体を同時に再溶融処理する。
【0014】
以上の誘導加熱において、誘導子17への通電周波数は次のように設定する。まず、少なくとも、スクリュー軸1の表面を一次被覆層の再溶融処理に適切な所定温度に保持する間は、誘導子17への通電周波数f1 を、その通電周波数に基づく電流浸透深さδが、スクリュー軸1の凸条2の、誘導電流が流れる方向(図4の矢印D方向)における幅wの1/2.5以下、0.3mm以上の範囲内となるように、すなわち適正周波数に設定する。ここで、電流浸透深さδ(cm)は、通電周波数をf(Hz)、被加熱材(スクリュー軸)の比透磁率をμ、抵抗率をρ(Ω・cm)とすると、
δ=5.03×103 √(ρ/μf) ・・・(1)
であるので、この式(1)と、凸条2の幅wから誘導子17への通電周波数f1 を求めることができる。このように電流浸透深さδを、凸条2の、誘導電流が流れる方向における幅wの1/2.5以下としたことで、凸条2の一方の側面2bを昇る誘導電流と、他方の側面2cを降りる誘導電流とがほとんど干渉しあうことがなく、凸条2を溝底部3と同様に誘導加熱することができる。また、電流浸透深さδを0.3mm(0.03cm)以上としたことで、角部2a,2aのオーバーヒートを抑制できる。かくして、通電周波数f1 を上記のように設定することで、スクリュー軸1の表面を、凸条2と溝底部3とに生じがちな温度差を小さく(例えば、15°C程度に)抑制した状態で、一次被覆層の再溶融処理に適した温度(例えば、1050°C程度)に保持でき、一次被覆層に厚さむらがあっても均一に再溶融処理することができる。なお、凸条2の幅は、凸条の高さ方向に異なるとか、凸条の長手方向に異なる場合があり、必ずしも一定ではない。そこで、凸条2の幅が一定でない場合には、通電周波数f1 を求めるための凸条2の幅wとして、最小値を採用すればよく、これにより、ほとんどの場合に対応できる。また、凸条の最小幅が平均幅に比べてきわめて小さい場合には、凸条の幅の平均値を通電周波数f1 を求めるための凸条2の幅wとして用いれば良い。
【0015】
上記のようにして定めた通電周波数f1 は、スクリュー軸1の加熱開始時から採用してもよいが、スクリュー軸1の表面の到達温度(一次被覆層の再溶融処理に適切な所定温度)がスクリュー軸の磁気変態点を越えた温度である場合には、加熱開始時には、この通電周波数f1 よりも低い通電周波数f2 を採用し、スクリュー軸1の昇温途中で、その表面温度が磁気変態点±100°Cの範囲内にある時に、所定の通電周波数f1 となるようにすることが好ましい(理由は後述する)。そこで、図1に示す高周波電源装置19は、加熱初期には低い周波数f2 を出力し、スクリュー軸1の昇温途中で、その表面温度が磁気変態点±100°Cの範囲内にある時に、高い周波数f1 に切り替えて出力する構成としている。加熱初期に低い周波数f2 を用いるのは次の理由による。
【0016】
すなわち、上記した式(1)に示すように、電流浸透深さδは比透磁率μの関数であり、比透磁率μが大きくなれば、電流浸透深さδは小さくなる。この比透磁率μは、スクリュー軸1の温度に大きく依存しており、特に、磁気変態点(鋼では、約800°C)を越え、磁気変態が調う時点を境に大きく変化する。例えば、鋼製のスクリュー軸1では磁気変態が調う前には比透磁率μは、50〜100程度であるが、これが磁気変態点を越え、磁気変態が調った後には、ほぼ1にまで著減する。前記したように、通電周波数f1 は磁気変態点を越え、磁気変態が調った後の状態における比透磁率μを用いて計算しているので、この通電周波数f1 で磁気変態点以下のスクリュー軸1を誘導加熱すると、その時の電流浸透深さδ2 は、磁気変態が調った後の状態における電流浸透深さδ1 に比べてはるかに小さくなる(例えば10分の1)。このように小さい電流浸透深さδ2 でスクリュー軸1を誘導加熱すると、凸条2の角部2aが他の領域に比べて昇温しやすく、スクリュー軸表面に昇温途中でかなりの温度むらを生じ、一次被覆層に割れや剥離等のトラブルを発生しやすい。これを防止するには、昇温速度を遅くする必要があり、そのため昇温時間がかかってしまう。そこで、スクリュー軸1の表面が磁気変態点を越え、磁気変態が調う時点に至るまでは、誘導子17への通電周波数f2 を、通電周波数f1 よりも低く設定しておくことにより、加熱開始時から通電周波数f1 とした場合に比べて電流浸透深さを大きくでき、これによって凸条2の角部2aの昇温を抑制して温度むらを小さくでき、一次被覆層に割れや剥離を生じることなく昇温速度を大きくできる。すなわち、昇温時間を短縮して生産性を上げることができる。このように、スクリュー軸1の表層部分を誘導加熱して昇温させる際、加熱初期には、低い通電周波数f2 とし、スクリュー軸1の表層部分が磁気変態点を越え、磁気変態が調った時点で、通電周波数f1 に切り替えることで、昇温速度を大きくし且つ所定温度に昇温させた時には温度むらをあまり生じることなく所定温度に保持できる。
【0017】
上記したように、通電周波数の切替は、厳密にはスクリュー軸1の表層部分が磁気変態点を越え、磁気変態が調った時点とすることが好ましいが、磁気変態が調った時点の前後に多少ずれてもさほど支障はない。すなわち、磁気変態点をはさむ100°C程度の温度範囲内であれば、その温度範囲を通過して昇温する時間は短いので、この温度範囲内において通電周波数が多少適正でなくてもさほど温度むらは発生しない。従って、加熱初期に用いる低い通電周波数f2 から、高い通電周波数f1 への切替は、実作業上的には、スクリュー軸1の昇温途中で、その表面温度が磁気変態点±100°Cの範囲内にある時に行えばよく、最も好適には、磁気変態点を50〜100°C程度越えた時点に行えば良い。
【0018】
ここで、加熱開始時の通電周波数f2 は、磁気変態が調った時点を越えた後で採用する通電周波数f1 の場合と同様に、磁気変態点以下における電流浸透深さδが0.3mm以上となるように設定することが凸条2の角部2aのオーバーヒートを抑制する上からは好ましい。しかしながら、このような電流浸透深さδを確保するには、通電周波数f1 の選択によっては(例えば、磁気変態が調った時点以降における電流浸透深さが0.3mmとなるように通電周波数f1 を選択した場合には)、通電周波数f2 を、通電周波数f1 の10分の1程度にせざるを得ないケースも出てくるが、単一の高周波電源装置19で、周波数比が大きく異なる二つの周波数f1 , f2 を切り替えて出力することは設備的にあまり得策とはいえない。すなわち、多く使用されているインバーター式の高周波電源装置で、二つの周波数f1 , f2 を切り替えて出力する機能を付与しようとすると、適用周波数範囲及び経済性の点から、周波数比を1:5程度に抑えるのが妥当であり、又実用的である。従って、通電周波数f2 は通電周波数f1 の1/5程度に設定するのが良い。
【0019】
このように、図1、図2に示す実施形態では、通電開始時からスクリュー軸表面が磁気変態点±100°Cの範囲内の適当な温度に達するまでは誘導子17に対して低い通電周波数f2 による通電を行い、その後は、通電周波数f1 による通電を行うことができ、これにより、スクリュー軸1の表面を温度むらをあまり生じることなく敏速に昇温させて、一次被覆層の再溶融処理に適した所定温度に昇温させることができ、且つ温度むらをあまり生じることなく所定温度に保持して一次被覆層を再溶融処理することができ、一次被覆層に割れやだれ等の欠陥を生じることなく、且つ生産性良く一次被覆層の再溶融処理を行うことができる。また、上記実施形態ではスクリュー軸1を回転させながら鞍型誘導子17を用いて誘導加熱したことにより、スクリュー軸1の長い加熱領域を同時に加熱、昇温させることができ、生産性良く、再溶融処理を行うことができる。
【0020】
なお、上記実施形態では、スクリュー軸1表面の一次被覆層の再溶融処理を減圧下で行っている。これにより、溶融層からの気泡の除去を敏速に行うことができると共に被覆内の残存気孔を極小とでき、しかも酸化も極小とできるといった利点が得られる。しかしながら、本発明はこれに限らず、単に無酸化雰囲気で再溶融処理を行って酸化を極小化してもよいし、酸化しにくい材料であれば大気中で再溶融処理を行っても良い。
【0021】
更に、上記実施形態では、直線状の誘導作用部17a,17bを備えた誘導子17を用い、その誘導作用部17a,17bをスクリュー軸1に平行に近接配置してスクリュー軸1の表層部分を誘導加熱しているが、本発明の高周波誘導加熱方法はこの誘導子を用いる場合やスクリュー軸に対する誘導加熱に限定されるものでなく、凸条に対して交叉する方向の誘導電流を発生させて誘導加熱する任意の場合に適用可能である。例えば、軸線に平行方向に延びる多数の凸条を有する軸状部材を、それを取り囲むように配置した環状の誘導子で誘導加熱する場合、誘導電流は軸状部材の周方向に発生し、従って凸条の交叉する方向に生じる。この場合においても、誘導子への通電周波数を、少なくとも、軸状部材の表面が所定温度に昇温している時には、前記通電周波数に基づく電流浸透深さが、前記凸条の誘導電流の流れ方向における幅の1/2.5以下、0.3mm以上の範囲内となるように、すなわち適正周波数に設定することで、軸状部材表面を、凸条と溝底部とにおける温度むらを小さく抑制しながら、所定温度に保持することができる。
【0022】
次に、本願発明の実施に用いる誘導子の他の例を説明する。図5(a)は、図1に示すスクリュー軸1の誘導加熱に好適な誘導子21を示す概略斜視図である。この誘導子21も、図1に示す誘導子17と同様に、角パイプ等の中空導体をループ状に且つ鞍型に形成した、いわゆる鞍型誘導子と称されるもので、スクリュー軸の加熱すべき領域の全長に亘って平行に対向配置可能な誘導作用部21a,21bと、その両端をそれぞれ横方向に退避した形態で連結した連結部21c,21dを備えているが、誘導作用部21a,21bの形状が図1に示す誘導子17とは異なっている。すなわち、図5の誘導子21では、誘導作用部21a,21bが全体的には細長い形状をしているが、その長手方向に間隔を開けた複数個所に、誘導作用部21a,21bの幅を狭めるための切欠き23を、その開口端が誘導作用部の両側の側縁に交互に位置するように形成している。なお、図5(a)では切欠き23を誘導作用部21a,21bの一部領域のみに形成するように図示しているがこれは図面を簡略化するためであり、実際には誘導作用部21a,21bの全長に亘って均等に形成している。
【0023】
この誘導子21も、図1、図2に示す装置において誘導子17に替えて使用される。すなわち、誘導子21をその誘導作用部21a,21bがスクリュー軸1をはさむ位置となるようにセットし、その誘導子21に通電することで、スクリュー軸1の表層部分を誘導加熱し、スクリュー軸1の表面の一次被覆層を再溶融処理することができる。ここで、誘導作用部21a,21bには複数の切欠き23を形成しているので、誘導子21に通電すると、誘導作用部21a,21bを流れる電流は図5(b)に太い線24で示すように、誘導作用部の中心軸線O−Oの両側に交互に迂回しながら波状に流れることとなる。このため、この誘導作用部21a,21bに対向しているスクリュー軸1の表層部分には、図5(c)に太い線25で示すように円周方向に迂回しながら軸線方向に流れる誘導電流が発生する。すなわち、スクリュー軸1の表層部分を流れる誘導電流はスクリュー軸の軸線に平行ではなく波状に流れており、かなりの領域でスクリュー軸軸線に対して右又は左に傾斜している。このため、誘導電流は、平均的には図6に矢印Fで示すようにスクリュー軸1の軸線に傾斜した方向に流れ、凸条2の長手方向に対する交叉角度αが、誘導電流が軸線に平行に流れる場合(図4参照)に比べて小さくなる。このため、スクリュー軸1の凸条2の、誘導電流が流れる方向(図6の矢印F方向)における幅Wが、図4に示すように誘導電流を軸線方向に生じさせた場合の幅wに比べてかなり大きくなる。このことは、図6で矢印F方向に流れる誘導電流が凸条2を横切って流れる時にその凸条2の両側面を昇り降りする誘導電流同志の干渉が生じにくいことを示している。従って、電流浸透深さδを大きくしても(従って通電周波数を小さくしても)、凸条2と溝底部3との温度差を小さく抑制することができる。
【0024】
この誘導子21を使用する場合においても、誘導子17を使用する場合と同様に、少なくとも、スクリュー軸1の表面を磁気変態点を越えた再溶融処理に適切な所定温度に保持する間は、誘導子21への通電周波数f3 を、その通電周波数に基づく電流浸透深さδが、スクリュー軸1の凸条2の、誘導電流が流れる方向(図6の矢印F方向)における幅Wの1/2.5以下、0.3mm以上の範囲内となるように設定し、加熱開始からスクリュー軸1の表面が磁気変態点±100°Cの範囲内の適当な温度に到達するまでは、前記した通電周波数f3 よりも低い、例えば、1/5程度の通電周波数f4 とすることが好ましい。このように設定することで、スクリュー軸1の表面を、温度むらをあまり生じることなく敏速に昇温させて、一次被覆層の再溶融処理に適した所定温度に昇温させることができ、且つ温度むらをあまり生じることなく所定温度に保持して一次被覆層を再溶融処理することができる。ここで、前記したように、図6に示す幅Wが、図4に示す幅wよりもかなり大きくなっているため、誘導子21への通電周波数f3 として採用可能な周波数範囲は、前記した誘導子17を用いる場合の適正周波数に比べて低周波数側にかなり広がっている。このため、周波数選択の自由度が増す。しかも、誘導子21への通電周波数f3 として、誘導子17を用いる場合の通電周波数f1 よりも低い周波数を採用すると、通電開始時における通電周波数f4 の周波数も、誘導子17を用いる場合の通電周波数f2 よりも低い周波数とすることができ、このため、電流浸透深さを大きくして凸条2の角部2aのオーバーヒートを一層抑制できる。このため、昇温時間を更に短縮できる利点が得られる。
【0025】
なお、図5(c)に太い線25で示すように、スクリュー軸1の表層部分に生じる誘導電流は波形に流れるため、スクリュー軸1の軸線方向の一部領域では誘導電流が軸線に平行に流れており(前述のように、スクリュー軸は回転させているが、凸条2が左右の誘導作用部21a,21bそれぞれのジグザグのどの位相部分と出会うかの関係は、回転と関係なく一定である)、誘導子21への通電周波数f3 を、誘導子17に対する適正周波数よりも低い周波数とした時には、誘導電流が軸線に平行に流れる領域では凸条2の加熱が不足する場合がある。それを改善するため、スクリュー軸1をはさんで配置する二つの誘導作用部の切欠き23のスクリュー軸1の軸線方向の位置を、誘導作用部21aと21bとで、たとえば上記波形電流のπ/2位相分ずらすことで、上記平行電流の出現部位を倍増、出現頻度を半減させて加熱の均一化を図ることが推奨される。また、誘導子21をスクリュー軸1の軸線方向に往復動させながら誘導加熱する構成は更に有用である。
【0026】
ここで、誘導作用部21a,21bに形成する切欠き23のピッチ、幅、深さ等は、誘導子への通電周波数、許容温度むら等を考慮して計算により或いは実験により適宜定めれば良い。この切欠き23のピッチ、幅、深さ等は、誘導作用部21a,21bの全長に亘って均一とする必要はなく、スクリュー軸1の長手方向の温度むらを抑制するように変化させてもよい。例えば、スクリュー軸1の昇温しにくい領域では、切欠き23のピッチを小さくするとか切欠き23を深くする等によって円周方向に流れる誘導電流を多くし、発熱量を多くすることが推奨される。
【0027】
切欠き23の幅や深さの最適値をテストによって求める場合、切欠き23の幅や深さを容易に変更可能な構造としておくことが好ましい。図7、図8はその場合に対応した実施形態による誘導子を示すものである。図7に示す誘導子21Aは、それに形成している切欠き23Aに、導電体からなるスペーサ31をC状断面とすることで着脱可能としたものであり、この切欠き23Aにスペーサ31を脱着させることで切欠き深さを調整することができる。図8に示す誘導子21Bは、切欠きを形成すべき位置にあらかじめ導電体からなるスペーサ33を埋設しておき、そのスペーサ33をのこ等で切り欠いて、スペーサ33に所望深さ、幅の切欠き23Bを形成する構成としたものである。図7,図8のような構成とすると、誘導子を中空構造とし中空部を冷却水路としている場合でも、切欠き深さの調整を上記中空構造にまで及んで行う必要がなく、調整を容易に行うことが可能となる。
【0028】
図5に示す切欠き23を備えた誘導子21、或いは図7,図8に示す誘導子21A、21B等は、例えば、図9に示すように、角パイプ又は丸パイプ35を曲げ加工し或いは寄せ木的にろう接するなどして製造できる。また、誘導子21の誘導作用部21a,21bに形成する切欠き23は、誘導作用部の長手方向に対して直角方向に形成する場合に限らず、図10に示すように、傾斜させてもよい。更に、誘導子21は必ずしも、パイプで形成する場合に限らず、単に導電性の板材で作っても良い。その場合、冷却が必要であれば、誘導子を構成する板材の表面に冷却パイプを取り付ける等の対策を採れば良い。
【0029】
以上に説明した誘導子はいずれも、誘導作用部を細長い平板状としているが、誘導作用部は必ずしも平板状とする必要はなく、スクリュー軸1の外周面に沿うように円弧状に湾曲させた形状としてもよい。図11はその形態の誘導子21Cを示すものであり、この誘導子21Cは、円弧状に湾曲した細長い誘導作用部21Ca,21Cbを、その両端で連結して一体化した構造となっており、各誘導作用部21Ca,21Cbに切欠き23を形成している。この構成の誘導子21Cでは、誘導作用部21Ca,21Cbがスクリュー軸の周面の広い範囲に近接配置されることとなり、誘導電流量を多くすることができる利点が得られる。
【0030】
図12は更に他の形態の誘導子21Dを示すものである。この誘導子21Dは、誘導加熱すべきスクリュー軸を取り囲むように配置可能ならせん形態の誘導作用部21Da,21Dbと、その両端を連結する連結部21Dc,21Ddを備えている。この誘導子21Dは、スクリュー軸を取り囲むように同心配置して通電することで、スクリュー軸1にらせん状に誘導電流を発生させることができ、その誘導電流と凸条2の長手方向との交叉角度がきわめて小さくなり、凸条2を溝底部3と同等に加熱することが可能となる。
【0031】
図13は更に他の形態の誘導子41を示すものである。この誘導子41は、図1に示す実施形態に用いた誘導子17と同様に、スクリュー軸1の加熱すべき領域の全長に亘って平行に対向配置可能な誘導作用部17a,17bと、その両端をそれぞれ横方向に退避した形態で連結した連結部17c,17dを備えており、更に、その誘導作用部17a,17bの所望領域の外部磁路に、フェライト、鉄などの強磁性体で形成された切片(インダクター)42を配設している。このように強磁性体の切片42を配設すると、図13(c)に示すように、誘導作用部17aで発生した磁束44が切片42を通ろうとして引き寄せられ、切片を取り付けていない誘導作用部17bで発生した磁束45に比べてスクリュー軸1の表層に集中する。このため、切片42を取り付けている領域ではスクリュー軸1の表層へ誘導電流が集中し、凸条2が良く加熱されるようになる。従って、凸条2の加熱が不足する領域に切片42を配置することで、凸条2を均一加熱することができる。
【0032】
前記したように、スクリュー軸1に平行に電流が流れる誘導作用部17a,17bを用いてスクリュー軸1を誘導加熱する場合、凸条2と溝底部3との温度差を小さく抑制して誘導加熱するには、通電周波数f1 を、適正周波数(その通電周波数に基づく電流浸透深さδが、スクリュー軸1の凸条2の、誘導電流が流れる方向における幅wの1/2.5以下で且つ0.3mm以上となる周波数)とすることが必要である。ところで、この周波数よりも低い周波数で誘導加熱した場合、凸条2の温度が溝底部3に比べて上がりにくいが、その場合でも、図15(b)に示すように凸条2が低い場所では凸条2は良好に加熱され、図15(c)示すように凸条2が高い場所では凸条2の加熱量が不足する。このため、加熱の不足する領域に切片42を配置して加熱を補うことで、適正周波数よりも低い周波数で、均一加熱を行うことが可能となる。
【0033】
図13に示す実施形態では、単に強磁性体の切片42を取り付けるのみであるので、簡単な構造で凸条2の加熱不足を補うことができる利点が得られる。ここで、切片42を取り付ける場所、個数等は、適正周波数に対する使用周波数の外れ具合、或いはそれに基づく温度むら等から決定すればよく、加熱テストで確認すればよい。誘導作用部17a,17bに対する切片42の取付構造は、着脱可能とすることが好ましく、これにより、所望の位置に容易に着脱することができる。切片42の厚み、幅、長さ等の形状と材質を変えることで、効果の調整を行うこともできる。
【0034】
なお、上記した強磁性体の切片42は、図5〜図12に示した誘導子21,21A,21B,21C等に対しても有効であり、必要に応じ、所望の位置に取り付ければ良い。
【0035】
【実施例】
[実施例1]
(1)試料として下記仕様のスクリュー軸1を用意した。
凸条2のピッチ:41mm
凸条2の幅w :6mm
凸条2の外径 :41mm
溝底部3の外径:27mm
材質 :SCM410
一次被覆層材質:Ni自溶合金(JIS,SFNi2)(溶射で形成)
一次被覆層厚さ:1〜2mm
一次被覆層の形成長さ:1000mm
(2)使用誘導子
図1に示す誘導子17
誘導作用部17a,17bの寸法:幅=40mm,長さ=1080mm
(3)通電周波数f1 ,f2 の決定
スクリュー軸の磁気変態点を越えた状態での物性:ρ≒1.0×10-4
μ≒1
スクリュー軸の磁気変態点以下の状態での物性 :ρ≒0.6×10-4
μ≒50
スクリュー軸1を磁気変態点以上に昇温させた時の電流浸透深さδを凸条2の幅の1/3(=6/3=2mm)に設定すると、この電流浸透深さ(δ=2mm)を得るための周波数は、上記した式(1)から計算して、63300Hzとなる。そこで、磁気変態点以上での通電周波数f1 を65kHzに設定する。
加熱開始から磁気変態点までの通電周波数f2 は上記した通電周波数f1 (=65kHz)の約1/5程度に設定することが好ましいので、13kHzに設定する。なお、通電周波数f2 =13kHzで磁気変態点以下のスクリュー軸を誘導加熱する際の電流浸透深さδは約0.48mmである。
(4)再溶融処理
スクリュー軸1を60rpmで回転させながら誘導子17に通電して誘導加熱し、一次被覆層の再溶融処理を行った。昇温速度及び保持時間は次の通りである。
a.850°C(磁気変態が完了する頃合)まで、通電周波数f2 =13kHz
昇温時間: 8分
b.850°Cから1050°Cまで、通電周波数f1 =65kHz
昇温時間: 5分
c.1050°Cで均熱、通電周波数f1 =65kHz
保持時間: 3分
(5)結果
以上の処理により、昇温の際に一次被覆層に割れや剥離が生じることがなく、また1050°Cに保持して均熱している間にだれが生じるといったトラブルもなく、一次被覆層を良好に再溶融処理することができた。均熱時の温度むらを測定したところ、±10°Cに保持されていた。
(6)2周波数加熱の優位性を確認するため、加熱開始時から通電周波数f1 =65kHzで加熱したところ、一次被覆層に割れが生じやすい現象が見られた。そこで、割れが生じないように加熱速度を遅くして昇温させたところ、850°Cまで昇温させるのに約20分かかった。ちなみに、この時の電流浸透深さは約0.22mmである。この結果から明らかなように、磁気変態点以下での通電周波数を低く設定しておくことで、昇温速度を大きくすることができる。
【0036】
[実施例2]
(1)試料として実施例1と同一仕様のスクリュー軸1を用意した。
(2)使用誘導子
図5に示す誘導子21
誘導作用部21a,21bの寸法:幅=40mm,長さ=1000mm
切欠き23の寸法:幅=5mm,長さ=15mm,ピッチ=41mm
(3)通電周波数f3 ,f4 の決定
スクリュー軸を磁気変態点以上に昇温させた時の通電周波数f3 を20kHzに設定する。この時の電流浸透深さは約3.6mmである。
スクリュー軸が磁気変態点に昇温するまでの通電周波数f4 は4kHzに設定する。この時の電流浸透深さは約0.9mmである。
(4)再溶融処理
スクリュー軸1を60rpmで回転させながら誘導子17に通電して誘導加熱し、一次被覆層の再溶融処理を行った。昇温速度及び保持時間は次の通りである。
a.850°Cまで、通電周波数f4 =4kHz
昇温時間: 8分
b.850°Cから1050°Cまで、通電周波数f3 =20kHz
昇温時間: 5分
c.1050°Cで均熱、通電周波数f3 =3kHz
保持時間: 3分
(5)結果
以上の処理により、昇温の際に一次被覆層に割れが生じることがなく、また1050°Cに保持して均熱している間にだれが生じるといったトラブルもなく、一次被覆層を良好に再溶融処理することができた。均熱時の温度むらを測定したところ、この場合にも±10°Cに保持されていた。
【0037】
【発明の効果】
以上に説明したように、本願発明は、外周面に凸条を備えた軸状部材に誘導子を近接配置し、凸条に交叉する方向の誘導電流を発生させて誘導加熱するに際し、前記誘導子への通電周波数を、少なくとも、前記軸状部材の表面が磁気変態点を越えた所定温度に昇温している時には、前記通電周波数に基づく電流浸透深さが、前記誘導電流の流れ方向における前記凸条の幅の1/2.5以下、0.3mm以上の範囲内となる通電周波数f 1 に設定するという構成としたことにより、凸条に加熱不足を生じるとか凸条の角部がオーバーヒートするといったことを防止でき、軸状部材の表面を、温度むらを小さく抑制した状態で所望温度に保持でき、更に、通電開始時には、前記誘導子への通電周波数を、前記通電周波数f 1 よりも低い通電周波数f 2 に設定し、その低い通電周波数f 2 から高い通電周波数f 1 への切替を、前記軸状部材の昇温途中で、その表面温度が磁気変態点±100°Cの範囲内にある時に行う構成としたことにより、加熱開始時の軸状部材の比透磁率がきわめて大きい時に電流浸透深さが過度に小さくなって凸条の角部のみが急激に昇温するということを防止でき、軸状部材の表面を温度むらを小さく抑制した状態で敏速に昇温させることができるという効果を有している。そして、この発明を、軸状部材表面に形成した一次被覆層の再溶融処理のための軸状部材表面の誘導加熱に利用することで、一次被覆層を良好に再溶融処理できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の実施形態に係る高周波誘導加熱方法を実施するための装置の1例の主要部品を示す概略斜視図
【図2】 図1に示す装置を、加熱動作中の状態で示す概略斜視図
【図3】 図1,図2に示す装置でスクリュー軸を誘導加熱した際にスクリュー軸内に生じる誘導電流を説明する概略断面図
【図4】 図1,図2に示す装置でスクリュー軸を誘導加熱した際にスクリュー軸を流れる誘導電流を説明するスクリュー軸の一部の概略正面図
【図5】 (a)誘導子の他の例を示す概略斜視図
(b)その誘導子の誘導作用部を流れる電流を説明する概略正面図
(c)スクリュー軸に生じる誘導電流を説明する概略正面図
【図6】 図5に示す誘導子でスクリュー軸を誘導加熱した際にスクリュー軸を流れる誘導電流を説明するスクリュー軸の一部の概略正面図
【図7】 (a)誘導子の更に他の例を示す、一部の概略正面図
(b)その一部の概略側面図
【図8】 誘導子の更に他の例を示す、一部の概略正面図
【図9】 図5に示す誘導子の製造途中の状態を示す概略斜視図
【図10】 誘導子の更に他の例を示す、一部の概略斜視図
【図11】 誘導子の更に他の例を示す概略斜視図
【図12】 誘導子の更に他の例を示す概略斜視図
【図13】 (a)誘導子の更に他の例を、スクリュー軸を加熱している状態で示す概略斜視図
(b)その一部の概略側面図
(c)この誘導子でスクリュー軸を誘導加熱する際の磁束を説明する概略断面図
【図14】 スクリュー軸を鞍型誘導子で誘導加熱する状態を示す概略斜視図
【図15】 (a)スクリュー軸の概略平面図
(b)(a)におけるA部の拡大図
(c)(a)におけるB部の拡大図
【符号の説明】
1 スクリュー軸
2 凸条
3 溝底部
11 固定ベース
12 チャック
13 駆動モータ
14 減圧容器
15 真空ポンプ
17 誘導子
17a,17b 誘導作用部
18 高周波トランス
19 高周波電源装置

Claims (3)

  1. 外周面に凸条を備えた軸状部材に誘導子を近接配置し、該誘導子に通電して前記軸状部材の表層部分に誘導電流を生じさせて誘導加熱する方法において、前記軸状部材の表層部分に生じる誘導電流が前記凸条と交叉する方向に流れる場合における前記誘導子への通電周波数を、少なくとも、前記軸状部材の表面が磁気変態点を越えた所定温度に昇温している時には、前記通電周波数に基づく電流浸透深さが、前記誘導電流の流れ方向における前記凸条の幅の1/2.5以下、0.3mm以上の範囲内となる通電周波数f 1 に設定し、更に、通電開始時には、前記通電周波数f 1 よりも低い通電周波数f 2 に設定し、その低い通電周波数f 2 から高い通電周波数f 1 への切替を、前記軸状部材の昇温途中で、その表面温度が磁気変態点±100°Cの範囲内にある時に行うことを特徴とする高周波誘導加熱方法。
  2. 前記誘導子が、前記軸状部材の加熱すべき領域の全長に亘って前記軸状部材と平行に配置された誘導作用部を備えており、前記軸状部材の誘導加熱中、該軸状部材をその中心軸線を中心として回転させていることを特徴とする請求項1記載の高周波誘導加熱方法。
  3. 前記軸状部材を誘導加熱することにより、該軸状部材の表面に形成した金属材料の一次被覆層を再溶融処理することを特徴とする請求項1又は2記載の高周波誘導加熱方法。
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