JP2003243144A - 高周波誘導加熱方法及び高周波誘導子 - Google Patents
高周波誘導加熱方法及び高周波誘導子Info
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Abstract
の温度差小さく抑制しながら誘導加熱することを可能と
する高周波誘導加熱方法を提供する。 【解決手段】 スクリュー軸1に平行に配置した誘導作
用部17a,17bを備えた誘導子17に矢印C方向に
通電してスクリュー軸1を所定温度に昇温、保持するに
際し、通電周波数を、電流浸透深さが、誘導電流の流れ
方向における凸条の幅の1/2.5以下、0.3mm以
上の範囲内となるように設定する構成とし、これによ
り、凸条2の加熱不足及び角部のオーバーヒートを防止
し、温度むらを小さく抑制する。
Description
機などに用いるスクリュー軸のように、外周面に凸条を
備えた軸状部材の表層部分を誘導加熱する方法並びに誘
導子に関し、特に、前記軸状部材の表面に溶射等によっ
て形成した金属材料の一次被覆層を再溶融処理するため
に前記軸状部材の表層部分を加熱するのに好適な高周波
誘導加熱方法並びに高周波誘導子に関する。
に、耐摩耗性などの物性を向上させるために、溶射等に
よって金属被覆層を形成することが行われている。ま
た、溶射等によって金属被覆層を形成した後、その金属
被覆層(一次被覆層という)を再溶融処理して、一次被
覆層に存在していた気孔や酸化物を除去し、緻密な二次
被覆層とすることも行われており、その再溶融処理のた
めに管やローラ表面を誘導加熱することも知られてい
る。この誘導加熱には、管やローラの軸線方向の小区間
を取り囲む環状の誘導子を用いており、その誘導子を管
やローラに沿って軸線方向に相対的に移動させること
で、一次被覆層全長に再溶融処理を施していた。
状の凸条を有するスクリュー軸にも自溶合金等の被覆層
を形成する要求が生じてきた。そこで、スクリュー軸表
面に自溶合金を溶射して一次被覆層を形成し、次いで、
そのスクリュー軸の表層部分を誘導加熱して一次被覆層
を再溶融処理することを試みた。この際、従来用いられ
ている短い環状の誘導子では、再溶融処理に時間がかか
り、生産性が悪いため、誘導子として、図14に示すよ
うに、スクリュー軸1の加熱すべき領域全長に亘ってス
クリュー軸1に平行に配置しうる誘導作用部17a,1
7bを備えた鞍型誘導子17を用い、一次被覆層全長を
同時に再溶融処理した。ところが、この誘導子による加
熱では、スクリュー軸1の凸条2とその他の領域3(一
つの凸条2と隣接の凸条2とではさまれた領域、以下溝
底部という)とを均一に加熱することが困難であり、一
次被覆層の良好な再溶融処理ができないという問題のあ
ることが判明した。
出成形機用スクリュー軸1を参照して説明する。スクリ
ュー軸1は、図示のように、先端側から、大径平行部1
a、勾配部1b、小径平行部1cを備えており、これら
の各部にらせん状に凸条2が形成されている。この凸条
2の外径は各部においてほぼ一定であるので、凸条2の
高さは大径平行部1a、勾配部1b、小径平行部1cに
おいてそれぞれ異なっており、また凸条2の形状、傾き
等も図15(b)、(c)に示すように、異なってい
る。このようなスクリュー軸1に対して溶射により一次
被覆層を形成する際、凸条2の表面を含む全域で膜厚を
一定にするのが理想だが、自動で溶射を行っても、スク
リュー軸1のあらゆる面に対して溶射角を一定に制御す
ることや、粉末の跳ね返りを一定にすることは不可能あ
ることから、膜厚を一定に溶射することはきわめて困難
である。このため、現実には膜厚が場所によってかなり
変動してしまい、目標1mmの膜厚に対して、1〜2m
m程度の範囲にしか形成できない。一方、一次被覆層の
再溶融処理には、一次被覆層を適正温度に昇温させるこ
とが必要である。スクリュー軸1の表面を加熱、昇温さ
せて、その上の一次被覆層を溶融させる場合、スクリュ
ー軸1の表面が均一に昇温したとしても膜厚の厚いとこ
ろでは薄いところに比べて昇温に時間がかかってしま
う。このため、厚さむらのある一次被覆層全体を適正温
度に昇温させるには、スクリュー軸1の表面を適正温度
に昇温させた後、適当な時間だけその温度に保持して一
次被覆層を均熱することが必要である。
部17a,17bをスクリュー軸1に平行に配置してス
クリュー軸1の表層部分を誘導加熱した場合、凸条2と
溝底部3とにかなりの温度差が生じてしまうとか、凸条
2の高さの高いところでは低いところに比べてあまり昇
温しないといった現象があり、このため、昇温途中で一
次被覆層に割れが生じることがあり、また均熱中に、高
温部にだれ(溶融金属が流れる現象)が生じるといった
問題が生じた。これを防止するには、昇温時間をきわめ
て遅くするとか、スクリュー軸表面の到達温度を、再溶
融処理の最適温度よりも低めに(例えば、10〜15°
C低めに)設定し、その温度で均熱することが必要とな
るが、この方法では、予想以上に時間がかかり、生産性
がきわめて悪くなるという問題を生じる。
ので、スクリュー軸のように、外周面に凸条を備えた軸
状部材の表層部分を、凸条と溝底部との温度差や、凸条
の高さの異なる部分での温度差を小さく抑制しながら誘
導加熱することを可能とする高周波誘導加熱方法並びに
高周波誘導子を提供することを課題とする。
を用いてスクリュー軸を誘導加熱した際に、凸条と溝底
部とに生じる温度むらの原因を検討の結果、次の事項を
見出した。すなわち、図14に示すように、スクリュー
軸1の軸線に平行に配置した誘導作用部17a,17b
に通電すると、電流は矢印Cで示すようにスクリュー軸
1の軸線に平行方向に流れ、それに応じてスクリュー軸
1の表層部分には矢印Dで示すようにスクリュー軸1の
軸線方向の誘導電流が発生し、その誘導電流は凸条2を
横切って流れる。このため、図3に拡大して示すよう
に、凸条2を横切る誘導電流5は、凸条2の一方の側面
2bを昇り、他方の側面2cを下る方向、及びその逆方
向に交互に流れることとなる。この際、誘導電流5の電
流浸透深さが深いと、凸条2の一方の側面2bを昇る方
向に流れる誘導電流と他方の側面2cを下る方向に流れ
る誘導電流とが干渉し合い、結局凸条2を流れる誘導電
流が少なくなって、温度が上がらない。特にこの現象は
凸条2の高さが高いところで顕著である。一方、電流浸
透深さが浅すぎると、大部分の誘導電流が凸条2の表面
を流れ、熱容量の小さい角部2a,2aをオーバーヒー
トしてしまい、角部2aの温度が他の領域の温度よりも
かなり高くなってしまう。これらの現象によりスクリュ
ー軸の凸条と溝底部とに大きい温度差が生じていた。こ
のような温度むらの発生を抑制するには、凸条を横切っ
て流れる誘導電流の電流浸透深さを適正な値とするこ
と、及び、誘導電流の流れ方向をなるべく凸条の長手方
向に対して小さい角度で交叉する方向とし、凸条2の一
方の側面2bを昇る誘導電流と他方の側面2cを下る誘
導電流の干渉を少なくすることが有効である。本願発明
はかかる知見に基づいてなされたものである。
条を備えた軸状部材に誘導子を近接配置し、前記凸条に
交叉する方向の誘導電流を発生させて誘導加熱するに際
し、前記誘導子への通電周波数を、少なくとも、前記軸
状部材の表面が所定温度に昇温している時には、前記通
電周波数に基づく電流浸透深さが、前記誘導電流の流れ
方向における前記凸条の幅の1/2.5以下、0.3m
m以上の範囲内となるように設定したことを特徴とする
高周波誘導加熱方法である。このように電流浸透深さ
を、凸条の、誘導電流が流れる方向における幅の1/
2.5以下としたことで、凸条の両側の側面を昇り降り
する誘導電流が互いに干渉しあって減少するということ
が少なくなり、凸条を溝底部と同様に誘導加熱すること
ができ、且つ高さの異なる凸条も同様に加熱することが
でき、また、電流浸透深さを、0.3mm以上としたこ
とで、角部のオーバーヒートを抑制でき、結局、軸状部
材の表面を、温度むらを小さく抑制した状態で所望温度
に保持できる。以下、この条件を満たす周波数を適正周
波数と称する。
る方向に延びる凸条を備えた軸状部材の加熱すべき領域
の全長に亘って近接配置可能な誘導作用部を備え、該領
域を同時に誘導加熱可能な誘導子であって、前記誘導作
用部を、前記軸状部材に円周方向に迂回しながら軸線方
向に流れる誘導電流を発生させる構成としたことを特徴
とする高周波誘導子である。この誘導子では、軸状部材
に発生させる誘導電流を円周方向に迂回させることがで
きるので、その誘導電流の流れ方向と凸条の長手方向と
の交叉角度を、単に誘導電流を軸線方向に流す場合に比
べて小さくでき、このため、誘導電流が凸条を横切って
流れる距離(すなわち誘導電流の流れ方向における前記
凸条の幅)が凸条の幅に比べてかなり大きくなり、従っ
て、凸条の一方の側面を昇る誘導電流と他方の側面を下
る誘導電流との間隔が大きくなって互いに干渉しなくな
る。このため、誘導電流の電流浸透深さを大きくしても
凸条の溝底部との温度差を小さく抑えることができ、換
言すれば、誘導子への通電周波数を、誘導電流が軸状部
材の軸線方向に流れる場合の上記適正周波数よりも低く
設定しても凸条の溝底部との温度差を小さく抑えること
ができ、通電周波数の使用範囲を低周波数側に拡げるこ
とができる。
領域の全長に亘って近接配置可能な誘導作用部を備える
と共にその誘導作用部の所望領域の外部磁路に強磁性体
の切片を配設するという構成とした高周波誘導子であ
る。この構成の誘導子では、強磁性体の切片を配置した
領域では、磁束が該切片を通ろうとして引き寄せられ、
軸状部材の表面に集中して加熱熱量を多くできる。この
ため、軸状部材の昇温しにくい領域、例えば、凸条の高
さが高くで加熱不足を生じがちな領域に対応する位置に
前記切片を配置しておくことで、軸状部材の長手方向の
温度むらを小さく抑制しながら誘導加熱することができ
る。
状部材は、外周面に凸条を備え、且つ表層部分を誘導加
熱可能な材質で構成されたものであれば任意であり、代
表例として、射出成形機や押出成形機のスクリュー軸を
挙げることができる。また、その軸状部材の加熱目的も
任意であり、例えば、軸状部材表面に溶射等によって形
成した金属の一次被覆層を再溶融処理するための軸状部
材表面の加熱、或いは、軸状部材表面の熱処理のための
加熱等を挙げることができる。以下、スクリュー軸の表
面に形成した一次被覆層を再溶融処理する場合を例にと
って、本発明の実施形態を説明する。
高周波誘導加熱方法を実施するための装置の1例の主要
部品を示す概略斜視図、図2はその装置を、加熱動作中
の状態で示す概略斜視図である。1は誘導加熱の対象と
するスクリュー軸であり、外周面に凸条2と溝底部3を
備え、表面に溶射等によって自溶合金の一次被覆層を形
成している。11は固定ベース、12は固定ベース11
に回転自在に保持され、スクリュー軸1を保持するチャ
ック、13はチャック12に保持したスクリュー軸1を
その中心軸線を中心として回転させる駆動モータ、14
は減圧容器、15は真空ポンプである。17はスクリュ
ー軸1の表層部分の誘導加熱を行うための誘導子、18
は高周波トランス、19は高周波電源装置である。ここ
で用いている誘導子17は、角パイプ等の中空導体をル
ープ状に且つ鞍型に形成した、いわゆる鞍型誘導子と称
されるもので、スクリュー軸1の加熱すべき領域の全長
に亘って平行に対向配置可能な誘導作用部17a,17
bと、その両端をそれぞれ横方向に退避した形態で連結
した連結部17c,17dを備えている。この構成の誘
導子17を用いることで、チャック12に保持されたス
クリュー軸1の側方から誘導子17を矢印Eで示すよう
に移動させ、誘導子17の誘導作用部17a,17bを
スクリュー軸1に対向する位置にセットすることができ
る。誘導子17には、それを構成する中空導体内に冷却
水を通すための通水配管(図示せず)も接続されてい
る。高周波電源装置19は高周波トランス18を介して
誘導子17に所定周波数を以て高周波通電するものであ
り、ここでは二つの周波数(詳細は後述する)を切り替
えて供給可能な2周波電源装置が使用されている。
軸1の表層部分を誘導加熱し、一次被覆層を再溶融処理
する際の動作を説明する。図2に示すように、処理すべ
きスクリュー軸1をチャック12に保持させ、誘導子1
7を、誘導作用部17a,17bがスクリュー軸1をは
さんだ位置でスクリュー軸1に平行となるようにセット
する。次いで、真空ポンプ15を作動させて減圧容器1
4内を所望の真空度になるよう減圧し、その状態で駆動
モータ13でスクリュー軸1を回転させながら、誘導子
17に高周波通電を行う。これにより、誘導子17の誘
導作用部17a,17bにはスクリュー軸1に平行方向
(矢印C方向)に電流が流れ、それに応じてスクリュー
軸1の表層部分には、図4に示すように、スクリュー軸
1を表面から見た状態ではスクリュー軸1の軸線に平行
方向(矢印D方向)の誘導電流が発生する。そして、そ
の誘導電流は、スクリュー軸1を断面で見た状態では、
図3に符号5で示すように、溝底部3の表層部分をスク
リュー軸1の軸線に平行に流れ凸条2を横切る位置で
は、凸条2の表面に沿って流れる。このため、スクリュ
ー軸1の加熱すべき領域全体の表層部分が同時に昇温し
てゆき、一次被覆層も昇温してゆく。そして、スクリュ
ー軸1の表面が、一次被覆層の再溶融処理に適切な所定
温度に到達した後は、一次被覆層の厚さの最も厚い部分
をも確実に再溶融処理するのに要する時間だけ、その温
度に保持し、一次被覆層を再溶融処理する。処理後は、
誘導子17への通電を停止して冷却する。以上のように
して、スクリュー軸1の一次被覆層全体を同時に再溶融
処理する。
通電周波数は次のように設定する。まず、少なくとも、
スクリュー軸1の表面を一次被覆層の再溶融処理に適切
な所定温度に保持する間は、誘導子17への通電周波数
f1 を、その通電周波数に基づく電流浸透深さδが、ス
クリュー軸1の凸条2の、誘導電流が流れる方向(図4
の矢印D方向)における幅wの1/2.5以下、0.3
mm以上の範囲内となるように、すなわち適正周波数に
設定する。ここで、電流浸透深さδ(cm)は、通電周
波数をf(Hz)、被加熱材(スクリュー軸)の比透磁
率をμ、抵抗率をρ(Ω・cm)とすると、 δ=5.03×103 √(ρ/μf) ・・・(1) であるので、この式(1)と、凸条2の幅wから誘導子
17への通電周波数f1を求めることができる。このよ
うに電流浸透深さδを、凸条2の、誘導電流が流れる方
向における幅wの1/2.5以下としたことで、凸条2
の一方の側面2bを昇る誘導電流と、他方の側面2cを
降りる誘導電流とがほとんど干渉しあうことがなく、凸
条2を溝底部3と同様に誘導加熱することができる。ま
た、電流浸透深さδを0.3mm(0.03cm)以上
としたことで、角部2a,2aのオーバーヒートを抑制
できる。かくして、通電周波数f1 を上記のように設定
することで、スクリュー軸1の表面を、凸条2と溝底部
3とに生じがちな温度差を小さく(例えば、15°C程
度に)抑制した状態で、一次被覆層の再溶融処理に適し
た温度(例えば、1050°C程度)に保持でき、一次
被覆層に厚さむらがあっても均一に再溶融処理すること
ができる。なお、凸条2の幅は、凸条の高さ方向に異な
るとか、凸条の長手方向に異なる場合があり、必ずしも
一定ではない。そこで、凸条2の幅が一定でない場合に
は、通電周波数f1 を求めるための凸条2の幅wとし
て、最小値を採用すればよく、これにより、ほとんどの
場合に対応できる。また、凸条の最小幅が平均幅に比べ
てきわめて小さい場合には、凸条の幅の平均値を通電周
波数f1 を求めるための凸条2の幅wとして用いれば良
い。
1 は、スクリュー軸1の加熱開始時から採用してもよい
が、スクリュー軸1の表面の到達温度(一次被覆層の再
溶融処理に適切な所定温度)がスクリュー軸の磁気変態
点を越えた温度である場合には、加熱開始時には、この
通電周波数f1 よりも低い通電周波数f2 を採用し、ス
クリュー軸1の昇温途中で、その表面温度が磁気変態点
±100°Cの範囲内にある時に、所定の通電周波数f
1 となるようにすることが好ましい(理由は後述す
る)。そこで、図1に示す高周波電源装置19は、加熱
初期には低い周波数f2を出力し、スクリュー軸1の昇
温途中で、その表面温度が磁気変態点±100°Cの範
囲内にある時に、高い周波数f1 に切り替えて出力する
構成としている。加熱初期に低い周波数f2 を用いるの
は次の理由による。
に、電流浸透深さδは比透磁率μの関数であり、比透磁
率μが大きくなれば、電流浸透深さδは小さくなる。こ
の比透磁率μは、スクリュー軸1の温度に大きく依存し
ており、特に、磁気変態点(鋼では、約800°C)を
越え、磁気変態が調う時点を境に大きく変化する。例え
ば、鋼製のスクリュー軸1では磁気変態が調う前には比
透磁率μは、50〜100程度であるが、これが磁気変
態点を越え、磁気変態が調った後には、ほぼ1にまで著
減する。前記したように、通電周波数f1 は磁気変態点
を越え、磁気変態が調った後の状態における比透磁率μ
を用いて計算しているので、この通電周波数f1 で磁気
変態点以下のスクリュー軸1を誘導加熱すると、その時
の電流浸透深さδ2 は、磁気変態が調った後の状態にお
ける電流浸透深さδ1 に比べてはるかに小さくなる(例
えば10分の1)。このように小さい電流浸透深さδ2
でスクリュー軸1を誘導加熱すると、凸条2の角部2a
が他の領域に比べて昇温しやすく、スクリュー軸表面に
昇温途中でかなりの温度むらを生じ、一次被覆層に割れ
や剥離等のトラブルを発生しやすい。これを防止するに
は、昇温速度を遅くする必要があり、そのため昇温時間
がかかってしまう。そこで、スクリュー軸1の表面が磁
気変態点を越え、磁気変態が調う時点に至るまでは、誘
導子17への通電周波数f2 を、通電周波数f1 よりも
低く設定しておくことにより、加熱開始時から通電周波
数f1 とした場合に比べて電流浸透深さを大きくでき、
これによって凸条2の角部2aの昇温を抑制して温度む
らを小さくでき、一次被覆層に割れや剥離を生じること
なく昇温速度を大きくできる。すなわち、昇温時間を短
縮して生産性を上げることができる。このように、スク
リュー軸1の表層部分を誘導加熱して昇温させる際、加
熱初期には、低い通電周波数f2 とし、スクリュー軸1
の表層部分が磁気変態点を越え、磁気変態が調った時点
で、通電周波数f1に切り替えることで、昇温速度を大
きくし且つ所定温度に昇温させた時には温度むらをあま
り生じることなく所定温度に保持できる。
密にはスクリュー軸1の表層部分が磁気変態点を越え、
磁気変態が調った時点とすることが好ましいが、磁気変
態が調った時点の前後に多少ずれてもさほど支障はな
い。すなわち、磁気変態点をはさむ100°C程度の温
度範囲内であれば、その温度範囲を通過して昇温する時
間は短いので、この温度範囲内において通電周波数が多
少適正でなくてもさほど温度むらは発生しない。従っ
て、加熱初期に用いる低い通電周波数f2 から、高い通
電周波数f1 への切替は、実作業上的には、スクリュー
軸1の昇温途中で、その表面温度が磁気変態点±100
°Cの範囲内にある時に行えばよく、最も好適には、磁
気変態点を50〜100°C程度越えた時点に行えば良
い。
磁気変態が調った時点を越えた後で採用する通電周波数
f1 の場合と同様に、磁気変態点以下における電流浸透
深さδが0.3mm以上となるように設定することが凸
条2の角部2aのオーバーヒートを抑制する上からは好
ましい。しかしながら、このような電流浸透深さδを確
保するには、通電周波数f1 の選択によっては(例え
ば、磁気変態が調った時点以降における電流浸透深さが
0.3mmとなるように通電周波数f1 を選択した場合
には)、通電周波数f2 を、通電周波数f1 の10分の
1程度にせざるを得ないケースも出てくるが、単一の高
周波電源装置19で、周波数比が大きく異なる二つの周
波数f1 , f2 を切り替えて出力することは設備的に
あまり得策とはいえない。すなわち、多く使用されてい
るインバーター式の高周波電源装置で、二つの周波数f
1 , f2 を切り替えて出力する機能を付与しようとす
ると、適用周波数範囲及び経済性の点から、周波数比を
1:5程度に抑えるのが妥当であり、又実用的である。
従って、通電周波数f2 は通電周波数f1 の1/5程度
に設定するのが良い。
は、通電開始時からスクリュー軸表面が磁気変態点±1
00°Cの範囲内の適当な温度に達するまでは誘導子1
7に対して低い通電周波数f2 による通電を行い、その
後は、通電周波数f1 による通電を行うことができ、こ
れにより、スクリュー軸1の表面を温度むらをあまり生
じることなく敏速に昇温させて、一次被覆層の再溶融処
理に適した所定温度に昇温させることができ、且つ温度
むらをあまり生じることなく所定温度に保持して一次被
覆層を再溶融処理することができ、一次被覆層に割れや
だれ等の欠陥を生じることなく、且つ生産性良く一次被
覆層の再溶融処理を行うことができる。また、上記実施
形態ではスクリュー軸1を回転させながら鞍型誘導子1
7を用いて誘導加熱したことにより、スクリュー軸1の
長い加熱領域を同時に加熱、昇温させることができ、生
産性良く、再溶融処理を行うことができる。
表面の一次被覆層の再溶融処理を減圧下で行っている。
これにより、溶融層からの気泡の除去を敏速に行うこと
ができると共に被覆内の残存気孔を極小とでき、しかも
酸化も極小とできるといった利点が得られる。しかしな
がら、本発明はこれに限らず、単に無酸化雰囲気で再溶
融処理を行って酸化を極小化してもよいし、酸化しにく
い材料であれば大気中で再溶融処理を行っても良い。
用部17a,17bを備えた誘導子17を用い、その誘
導作用部17a,17bをスクリュー軸1に平行に近接
配置してスクリュー軸1の表層部分を誘導加熱している
が、本発明の高周波誘導加熱方法はこの誘導子を用いる
場合やスクリュー軸に対する誘導加熱に限定されるもの
でなく、凸条に対して交叉する方向の誘導電流を発生さ
せて誘導加熱する任意の場合に適用可能である。例え
ば、軸線に平行方向に延びる多数の凸条を有する軸状部
材を、それを取り囲むように配置した環状の誘導子で誘
導加熱する場合、誘導電流は軸状部材の周方向に発生
し、従って凸条の交叉する方向に生じる。この場合にお
いても、誘導子への通電周波数を、少なくとも、軸状部
材の表面が所定温度に昇温している時には、前記通電周
波数に基づく電流浸透深さが、前記凸条の誘導電流の流
れ方向における幅の1/2.5以下、0.3mm以上の
範囲内となるように、すなわち適正周波数に設定するこ
とで、軸状部材表面を、凸条と溝底部とにおける温度む
らを小さく抑制しながら、所定温度に保持することがで
きる。
導子を説明する。図5(a)は、図1に示すスクリュー
軸1の誘導加熱に好適な誘導子21を示す概略斜視図で
ある。この誘導子21も、図1に示す誘導子17と同様
に、角パイプ等の中空導体をループ状に且つ鞍型に形成
した、いわゆる鞍型誘導子と称されるもので、スクリュ
ー軸の加熱すべき領域の全長に亘って平行に対向配置可
能な誘導作用部21a,21bと、その両端をそれぞれ
横方向に退避した形態で連結した連結部21c,21d
を備えているが、誘導作用部21a,21bの形状が図
1に示す誘導子17とは異なっている。すなわち、図5
の誘導子21では、誘導作用部21a,21bが全体的
には細長い形状をしているが、その長手方向に間隔を開
けた複数個所に、誘導作用部21a,21bの幅を狭め
るための切欠き23を、その開口端が誘導作用部の両側
の側縁に交互に位置するように形成している。なお、図
5(a)では切欠き23を誘導作用部21a,21bの
一部領域のみに形成するように図示しているがこれは図
面を簡略化するためであり、実際には誘導作用部21
a,21bの全長に亘って均等に形成している。
において誘導子17に替えて使用される。すなわち、誘
導子21をその誘導作用部21a,21bがスクリュー
軸1をはさむ位置となるようにセットし、その誘導子2
1に通電することで、スクリュー軸1の表層部分を誘導
加熱し、スクリュー軸1の表面の一次被覆層を再溶融処
理することができる。ここで、誘導作用部21a,21
bには複数の切欠き23を形成しているので、誘導子2
1に通電すると、誘導作用部21a,21bを流れる電
流は図5(b)に太い線24で示すように、誘導作用部
の中心軸線O−Oの両側に交互に迂回しながら波状に流
れることとなる。このため、この誘導作用部21a,2
1bに対向しているスクリュー軸1の表層部分には、図
5(c)に太い線25で示すように円周方向に迂回しな
がら軸線方向に流れる誘導電流が発生する。すなわち、
スクリュー軸1の表層部分を流れる誘導電流はスクリュ
ー軸の軸線に平行ではなく波状に流れており、かなりの
領域でスクリュー軸軸線に対して右又は左に傾斜してい
る。このため、誘導電流は、平均的には図6に矢印Fで
示すようにスクリュー軸1の軸線に傾斜した方向に流
れ、凸条2の長手方向に対する交叉角度αが、誘導電流
が軸線に平行に流れる場合(図4参照)に比べて小さく
なる。このため、スクリュー軸1の凸条2の、誘導電流
が流れる方向(図6の矢印F方向)における幅Wが、図
4に示すように誘導電流を軸線方向に生じさせた場合の
幅wに比べてかなり大きくなる。このことは、図6で矢
印F方向に流れる誘導電流が凸条2を横切って流れる時
にその凸条2の両側面を昇り降りする誘導電流同志の干
渉が生じにくいことを示している。従って、電流浸透深
さδを大きくしても(従って通電周波数を小さくして
も)、凸条2と溝底部3との温度差を小さく抑制するこ
とができる。
も、誘導子17を使用する場合と同様に、少なくともス
クリュー軸1の表面を磁気変態点を越えた再溶融処理に
適切な所定温度に保持する間は、誘導子21への通電周
波数f3 を、その通電周波数に基づく電流浸透深さδ
が、スクリュー軸1の凸条2の、誘導電流が流れる方向
(図6の矢印F方向)における幅Wの1/2.5以下、
0.3mm以上の範囲内となるように設定し、加熱開始
からスクリュー軸1の表面が磁気変態点±100°Cの
範囲内の適当な温度に到達するまでは、前記した通電周
波数f3 よりも低い、例えば、1/5程度の通電周波数
f4 とすることが好ましい。このように設定すること
で、スクリュー軸1の表面を、温度むらをあまり生じる
ことなく敏速に昇温させて、一次被覆層の再溶融処理に
適した所定温度に昇温させることができ、且つ温度むら
をあまり生じることなく所定温度に保持して一次被覆層
を再溶融処理することができる。ここで、前記したよう
に、図6に示す幅Wが、図4に示す幅wよりもかなり大
きくなっているため、誘導子21への通電周波数f3 と
して採用可能な周波数範囲は、前記した誘導子17を用
いる場合の適正周波数に比べて低周波数側にかなり広が
っている。このため、周波数選択の自由度が増す。しか
も、誘導子21への通電周波数f3 として、誘導子17
を用いる場合の通電周波数f1 よりも低い周波数を採用
すると、通電開始時における通電周波数f4の周波数
も、誘導子17を用いる場合の通電周波数f2 よりも低
い周波数とすることができ、このため、電流浸透深さを
大きくして凸条2の角部2aのオーバーヒートを一層抑
制できる。このため、昇温時間を更に短縮できる利点が
得られる。
に、スクリュー軸1の表層部分に生じる誘導電流は波形
に流れるため、スクリュー軸1の軸線方向の一部領域で
は誘導電流が軸線に平行に流れており(前述のように、
スクリュー軸は回転させているが、凸条2が左右の誘導
作用部21a,21bそれぞれのジグザグのどの位相部
分と出会うかの関係は、回転と関係なく一定である)、
誘導子21への通電周波数f3 を、誘導子17に対する
適正周波数よりも低い周波数とした時には、誘導電流が
軸線に平行に流れる領域では凸条2の加熱が不足する場
合がある。それを改善するため、スクリュー軸1をはさ
んで配置する二つの誘導作用部の切欠き23のスクリュ
ー軸1の軸線方向の位置を、誘導作用部21aと21b
とで、たとえば上記波形電流のπ/2位相分ずらすこと
で、上記平行電流の出現部位を倍増、出現頻度を半減さ
せて加熱の均一化を図ることが推奨される。また、誘導
子21をスクリュー軸1の軸線方向に往復動させながら
誘導加熱する構成は更に有用である。
する切欠き23のピッチ、幅、深さ等は、誘導子への通
電周波数、許容温度むら等を考慮して計算により或いは
実験により適宜定めれば良い。この切欠き23のピッ
チ、幅、深さ等は、誘導作用部21a,21bの全長に
亘って均一とする必要はなく、スクリュー軸1の長手方
向の温度むらを抑制するように変化させてもよい。例え
ば、スクリュー軸1の昇温しにくい領域では、切欠き2
3のピッチを小さくするとか切欠き23を深くする等に
よって円周方向に流れる誘導電流を多くし、発熱量を多
くすることが推奨される。
よって求める場合、切欠き23の幅や深さを容易に変更
可能な構造としておくことが好ましい。図7、図8はそ
の場合に対応した実施形態による誘導子を示すものであ
る。図7に示す誘導子21Aは、それに形成している切
欠き23Aに、導電体からなるスペーサ31をC状断面
とすることで着脱可能としたものであり、この切欠き2
3Aにスペーサ31を脱着させることで切欠き深さを調
整することができる。図8に示す誘導子21Bは、切欠
きを形成すべき位置にあらかじめ導電体からなるスペー
サ33を埋設しておき、そのスペーサ33をのこ等で切
り欠いて、スペーサ33に所望深さ、幅の切欠き23B
を形成する構成としたものである。図7,図8のような
構成とすると、誘導子を中空構造とし中空部を冷却水路
としている場合でも、切欠き深さの調整を上記中空構造
にまで及んで行う必要がなく、調整を容易に行うことが
可能となる。
1、或いは図7,図8に示す誘導子21A、21B等
は、例えば、図9に示すように、角パイプ又は丸パイプ
35を曲げ加工し或いは寄せ木的にろう接するなどして
製造できる。また、誘導子21の誘導作用部21a,2
1bに形成する切欠き23は、誘導作用部の長手方向に
対して直角方向に形成する場合に限らず、図10に示す
ように、傾斜させてもよい。更に、誘導子21は必ずし
も、パイプで形成する場合に限らず、単に導電性の板材
で作っても良い。その場合、冷却が必要であれば、誘導
子を構成する板材の表面に冷却パイプを取り付ける等の
対策を採れば良い。
用部を細長い平板状としているが、誘導作用部は必ずし
も平板状とする必要はなく、スクリュー軸1の外周面に
沿うように円弧状に湾曲させた形状としてもよい。図1
1はその場合の実施形態に係る誘導子21Cを示すもの
であり、この誘導子21Cは、円弧状に湾曲した細長い
誘導作用部21Ca,21Cbを、その両端で連結して
一体化した構造となっており、各誘導作用部21Ca,
21Cbに切欠き23を形成している。この構成の誘導
子21Cでは、誘導作用部21Ca,21Cbがスクリ
ュー軸の周面の広い範囲に近接配置されることとなり、
誘導電流量を多くすることができる利点が得られる。
1Dを示すものである。この誘導子21Dは、誘導加熱
すべきスクリュー軸を取り囲むように配置可能ならせん
形態の誘導作用部21Da,21Dbと、その両端を連
結する連結部21Dc,21Ddを備えている。この誘
導子21Dは、スクリュー軸を取り囲むように同心配置
して通電することで、スクリュー軸1にらせん状に誘導
電流を発生させることができ、その誘導電流と凸条2の
長手方向との交叉角度がきわめて小さくなり、凸条2を
溝底部3と同等に加熱することが可能となる。
誘導子41を示すものである。この誘導子41は、図1
に示す実施形態に用いた誘導子17と同様に、スクリュ
ー軸1の加熱すべき領域の全長に亘って平行に対向配置
可能な誘導作用部17a,17bと、その両端をそれぞ
れ横方向に退避した形態で連結した連結部17c,17
dを備えており、更に、その誘導作用部17a,17b
の所望領域の外部磁路に、フェライト、鉄などの強磁性
体で形成された切片(インダクター)42を配設してい
る。このように強磁性体の切片42を配設すると、図1
3(c)に示すように、誘導作用部17aで発生した磁
束44が切片42を通ろうとして引き寄せられ、切片を
取り付けていない誘導作用部17bで発生した磁束45
に比べてスクリュー軸1の表層に集中する。このため、
切片42を取り付けている領域ではスクリュー軸1の表
層へ誘導電流が集中し、凸条2が良く加熱されるように
なる。従って、凸条2の加熱が不足する領域に切片42
を配置することで、凸条2を均一加熱することができ
る。
電流が流れる誘導作用部17a,17bを用いてスクリ
ュー軸1を誘導加熱する場合、凸条2と溝底部3との温
度差を小さく抑制して誘導加熱するには、通電周波数f
1 を、適正周波数(その通電周波数に基づく電流浸透深
さδが、スクリュー軸1の凸条2の、誘導電流が流れる
方向における幅wの1/2.5以下で且つ0.3mm以
上となる周波数)とすることが必要である。ところで、
この周波数よりも低い周波数で誘導加熱した場合、凸条
2の温度が溝底部3に比べて上がりにくいが、その場合
でも、図15(b)に示すように凸条2が低い場所では
凸条2は良好に加熱され、図15(c)示すように凸条
2が高い場所では凸条2の加熱量が不足する。このた
め、加熱の不足する領域に切片42を配置して加熱を補
うことで、適正周波数よりも低い周波数で、均一加熱を
行うことが可能となる。
の切片42を取り付けるのみであるので、簡単な構造で
凸条2の加熱不足を補うことができる利点が得られる。
ここで、切片42を取り付ける場所、個数等は、適正周
波数に対する使用周波数の外れ具合、或いはそれに基づ
く温度むら等から決定すればよく、加熱テストで確認す
ればよい。誘導作用部17a,17bに対する切片42
の取付構造は、着脱可能とすることが好ましく、これに
より、所望の位置に容易に着脱することができる。切片
42の厚み、幅、長さ等の形状と材質を変えることで、
効果の調整を行うこともできる。
5〜図12に示した誘導子21,21A,21B,21
C等に対しても有効であり、必要に応じ、所望の位置に
取り付ければ良い。
浸透深さδを凸条2の幅の1/3(=6/3=2mm)
に設定すると、この電流浸透深さ(δ=2mm)を得る
ための周波数は、上記した式(1)から計算して、63
300Hzとなる。そこで、磁気変態点以上での通電周
波数f1 を65kHzに設定する。加熱開始から磁気変
態点までの通電周波数f2 は上記した通電周波数f
1 (=65kHz)の約1/5程度に設定することが好
ましいので、13kHzに設定する。なお、通電周波数
f2 =13kHzで磁気変態点以下のスクリュー軸を誘
導加熱する際の電流浸透深さδは約0.48mmであ
る。 (4)再溶融処理 スクリュー軸1を60rpmで回転させながら誘導子1
7に通電して誘導加熱し、一次被覆層の再溶融処理を行
った。昇温速度及び保持時間は次の通りである。 a.850°C(磁気変態が完了する頃合)まで、通電
周波数f2 =13kHz 昇温時間: 8分 b.850°Cから1050°Cまで、通電周波数f1
=65kHz 昇温時間: 5分 c.1050°Cで均熱、通電周波数f1 =65kHz 保持時間: 3分 (5)結果 以上の処理により、昇温の際に一次被覆層に割れや剥離
が生じることがなく、また1050°Cに保持して均熱
している間にだれが生じるといったトラブルもなく、一
次被覆層を良好に再溶融処理することができた。均熱時
の温度むらを測定したところ、±10°Cに保持されて
いた。 (6)2周波数加熱の優位性を確認するため、加熱開始
時から通電周波数f1 =65kHzで加熱したところ、
一次被覆層に割れが生じやすい現象が見られた。そこ
で、割れが生じないように加熱速度を遅くして昇温させ
たところ、850°Cまで昇温させるのに約20分かか
った。ちなみに、この時の電流浸透深さは約0.22m
mである。この結果から明らかなように、磁気変態点以
下での通電周波数を低く設定しておくことで、昇温速度
を大きくすることができる。
を用意した。 (2)使用誘導子 図5に示す誘導子21 誘導作用部21a,21bの寸法:幅=40mm,長さ
=1000mm 切欠き23の寸法:幅=5mm,長さ=15mm,ピッ
チ=41mm (3)通電周波数f3 ,f4 の決定 スクリュー軸を磁気変態点以上に昇温させた時の通電周
波数f3 を20kHzに設定する。この時の電流浸透深
さは約3.6mmである。スクリュー軸が磁気変態点に
昇温するまでの通電周波数f4 は4kHzに設定する。
この時の電流浸透深さは約0.9mmである。 (4)再溶融処理 スクリュー軸1を60rpmで回転させながら誘導子1
7に通電して誘導加熱し、一次被覆層の再溶融処理を行
った。昇温速度及び保持時間は次の通りである。 a.850°Cまで、通電周波数f4 =4kHz 昇温時間: 8分 b.850°Cから1050°Cまで、通電周波数f3
=20kHz 昇温時間: 5分 c.1050°Cで均熱、通電周波数f3 =3kHz 保持時間: 3分 (5)結果 以上の処理により、昇温の際に一次被覆層に割れが生じ
ることがなく、また1050°Cに保持して均熱してい
る間にだれが生じるといったトラブルもなく、一次被覆
層を良好に再溶融処理することができた。均熱時の温度
むらを測定したところ、この場合にも±10°Cに保持
されていた。
は、外周面に凸条を備えた軸状部材に誘導子を近接配置
し、凸条に交叉する方向の誘導電流を発生させて誘導加
熱するに際し、前記誘導子への通電周波数を、少なくと
も、前記軸状部材の表面が所定温度に昇温している時に
は、前記通電周波数に基づく電流浸透深さが、前記誘導
電流の流れ方向における前記凸条の幅の1/2.5以
下、0.3mm以上の範囲内となるように設定するとい
う構成としたことにより、凸条に加熱不足を生じるとか
凸条の角部がオーバーヒートするといったことを防止で
き、軸状部材の表面を、温度むらを小さく抑制した状態
で所望温度に保持できるという効果を有している。そし
て、この発明を、軸状部材表面に形成した一次被覆層の
再溶融処理のための軸状部材表面の誘導加熱に利用する
ことで、一次被覆層を良好に再溶融処理できるという効
果が得られる。
に対向配置して誘導加熱する誘導子の誘導作用部を、前
記軸状部材に円周方向に迂回しながら軸線方向に流れる
誘導電流を発生させる構成としたことにより、誘導電流
の流れ方向と凸条の長手方向との交叉角度を小さくし
て、誘導電流が凸条を横切って流れる距離を長くするこ
とができ、このため電流浸透深さを小さくしなくても凸
条の両側面を昇り降りする誘導電流が干渉して加熱不足
を生じるといったことを回避でき、誘導子への通電周波
数の使用範囲を拡げることができるという効果を有して
いる。
に対向配置して誘導加熱する誘導子の誘導作用部の所望
領域の外部磁路に磁極片を配設するという構成としたこ
とにより、磁極片を配置した領域では磁束を軸状部材の
表面に集中させてその位置の凸条の加熱熱量を多くで
き、凸条の高さが他の領域に比べて高いため加熱が不足
するような領域に磁極片を配置することで、加熱温度の
均一化を図ることができるといった効果を有している。
熱方法を実施するための装置の1例の主要部品を示す概
略斜視図
略斜視図
熱した際にスクリュー軸内に生じる誘導電流を説明する
概略断面図
熱した際にスクリュー軸を流れる誘導電流を説明するス
クリュー軸の一部の概略正面図
の概略斜視図 (b)その誘導子の誘導作用部を流れる電流を説明する
概略正面図 (c)スクリュー軸に生じる誘導電流を説明する概略正
面図
た際にスクリュー軸を流れる誘導電流を説明するスクリ
ュー軸の一部の概略正面図
導子の一部の概略正面図 (b)その一部の概略側面図
子の一部の概略正面図
斜視図
導子の一部の概略斜視図
導子の概略斜視図
導子の概略斜視図
子を、スクリュー軸を加熱している状態で示す概略斜視
図 (b)その一部の概略側面図 (c)この誘導子でスクリュー軸を誘導加熱する際の磁
束を説明する概略断面図
態を示す概略斜視図
Claims (11)
- 【請求項1】 外周面に凸条を備えた軸状部材に誘導子
を近接配置し、該誘導子に通電して前記軸状部材の表層
部分に誘導電流を生じさせて誘導加熱する方法におい
て、前記軸状部材の表層部分に生じる誘導電流が前記凸
条と交叉する方向に流れる場合における前記誘導子への
通電周波数を、少なくとも、前記軸状部材の表面が所定
温度に昇温している時には、前記通電周波数に基づく電
流浸透深さが、前記誘導電流の流れ方向における前記凸
条の幅の1/2.5以下、0.3mm以上の範囲内とな
るように設定したことを特徴とする高周波誘導加熱方
法。 - 【請求項2】 前記誘導子が、前記軸状部材の加熱すべ
き領域の全長に亘って前記軸状部材と平行に配置された
誘導作用部を備えており、前記軸状部材の誘導加熱中、
該軸状部材をその中心軸線を中心として回転させている
ことを特徴とする請求項1記載の高周波誘導加熱方法。 - 【請求項3】 前記所定温度が前記軸状部材の磁気変態
点を越えた温度である場合において、前記誘導子への通
電周波数を、少なくとも、前記軸状部材の表面が所定温
度に昇温している時には、前記通電周波数に基づく電流
浸透深さが、前記誘導電流の流れ方向における前記凸条
の幅の1/2.5以下、0.3mm以上の範囲内となる
通電周波数f1 に設定し、更に、通電開始時には、前記
通電周波数f1 よりも低い通電周波数f2 に設定し、そ
の低い通電周波数f2 から高い通電周波数f1 への切替
を、前記軸状部材の昇温途中で、その表面温度が磁気変
態点±100°Cの範囲内にある時に行うことを特徴と
する請求項1又は2記載の高周波誘導加熱方法。 - 【請求項4】 前記軸状部材を誘導加熱することによ
り、該軸状部材の表面に形成した金属材料の一次被覆層
を再溶融処理することを特徴とする請求項1から3のい
ずれか1項記載の高周波誘導加熱方法。 - 【請求項5】 外周面に軸線と交叉する方向に延びる凸
条を備えた軸状部材を誘導加熱するための誘導子であっ
て、前記軸状部材の加熱すべき領域の全長に亘って前記
軸状部材に近接配置可能な誘導作用部を備えており、該
誘導作用部が、前記軸状部材に円周方向に迂回しながら
軸線方向に流れる誘導電流を発生させる構成であること
を特徴とする高周波誘導子。 - 【請求項6】 前記誘導作用部は、前記軸状部材の円周
方向の一部に対向して前記軸状部材と平行に配置可能な
よう、全体的に細長い形状をなしており、その誘導作用
部の長手方向に間隔をあけた複数個所に、誘導作用部の
幅を狭めるための切欠きを、その開口端が誘導作用部の
両側の側縁に交互に位置するように配置したことを特徴
とする請求項5記載の高周波誘導子。 - 【請求項7】 前記切欠きに導電体からなるスペーサを
脱着させることで切欠き深さを調整する構成としたこと
を特徴とする請求項6記載の高周波誘導子。 - 【請求項8】 切欠きを形成すべき位置に導電体からな
るスペーサを埋設しておき、そのスペーサに所望深さの
切欠きを形成する構成としたことを特徴とする請求項6
記載の高周波誘導子。 - 【請求項9】 前記誘導作用部が、前記軸状部材を取り
囲むように配置可能ならせん形態であることを特徴とす
る請求項5記載の高周波誘導子。 - 【請求項10】 前記誘導作用部の所望領域の外部磁路
に強磁性体の切片を配設したことを特徴とする請求項6
から9のいずれか1項記載の高周波誘導子。 - 【請求項11】 外周面に軸線と交叉する方向に延びる
凸条を備えた軸状部材を誘導加熱するための誘導子であ
って、前記軸状部材の加熱すべき領域の全長に亘って前
記軸状部材に近接配置可能な誘導作用部を備えており、
該誘導作用部の所望領域の外部磁路に強磁性体の切片を
配設したことを特徴とする高周波誘導子。
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