JP2007119886A - 凸条付軸状部材の誘導加熱方法および装置 - Google Patents

凸条付軸状部材の誘導加熱方法および装置 Download PDF

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康男 渡辺
Fumiaki Tada
文明 多田
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Abstract

【課題】生産性に優れる一発加熱方式を踏襲したうえで、コストアップ回避のため通電周波数を下げられるようにし、軸部異径の凸条付軸状部材10でも昇温均等化の調整が容易に行えるようにする。
【解決手段】軸状部材10の誘導加熱に際し、加熱領域17の全長に及ぶ軸線方向通電誘導子21と移動加熱方式の周方向通電誘導子22とを併せて配置し、軸状部材10を軸心回転させながら誘導子21,22に高周波通電する。このような加熱手段の2系統化により、基底周面11に対する軸線方向通電誘導子21の調整と凸条12に対する周方向通電誘導子22の調整を独立に行えるので、コストを掛けずに良品を能率良く生産できる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、外周面に凸条を有する軸状部材の表層部分を誘導加熱するための方法および装置に関し、詳しくは、自身の軸線を横切る方位に沿って延びた凸条を自身の外周面に有する軸状部材を誘導加熱の対象とし、その軸状部材に誘導子を近接配置して、その誘導子に高周波通電することにより、軸状部材の表層部に誘導電流を生じさせて軸状部材の凸条も基底周面も誘導加熱するという凸条付軸状部材の誘導加熱方法およびその方法の実施に好適な誘導加熱装置に関する。
従来より、凸条付軸状部材の表層部を誘導加熱する技術として、周方向通電によるものと軸線方向通電によるものとが知られているので(例えば特許文献1参照)、その従来技術について、図7〜図9を参照しながら本発明の説明に役立つ部分を掻い摘んで説明する。先ず図7(a)〜(e)を参照して誘導加熱対象の凸条付軸状部材を説明し、次に図7(f)及び図8を参照して周方向通電のみの誘導加熱を説明し、それから図7(g)及び図9を参照して軸線方向通電のみの誘導加熱を説明する。
図7は、誘導加熱の対象とされる凸条付軸状部材10について、(a)が軸径一定の凸条付軸状部材10の平面図、(b)が軸部異径の凸条付軸状部材10の平面図、(c)が大径軸部16の拡大図、(d)が小径軸部14の拡大図、(e)が凸条付軸状部材10の平面図である。
外周面に凸条を有する軸状部材のうちでも、射出成形機や押出機などに用いられるスクリュー部材は、自身の軸線を横切る方位に沿って延びた凸条を自身の外周面に有する。このように凸条が軸線方向よりも周方向に強く沿っている凸条付軸状部材10では、軸部の外周面である基底周面11をネジ山のような凸条12が螺旋状に取り巻いているが(図7参照)、軸径一定のものと軸部異径のものとがある。軸径一定の軸状部材10は、チャック等で保持するために凸条12の無い駆動端部13は別として、軸部直径すなわち基底周面11の直径(外径)が凸条12の形成範囲の全域に亘って同じになっている(図7(a)参照)。
これに対し軸部異径の軸状部材10では凸条12の形成範囲において基底周面11の直径が異なっている。スクリュー部材の典型例では(図7(b)参照)、駆動端部13寄りの小径軸部14が基底周面11の直径の小さい平行部になっており、その隣の中径軸部15が基底周面11の直径の変化する勾配部(テーパ部)になっており、その先の従動端部を含む大径軸部16が基底周面11の直径の大きい平行部になっている。
駆動端部13の直径と凸条12の外径との大小は軸径一定か軸部異径かには依らず区々であるが、凸条12の外径すなわち軸状部材外径Dは(図7,図8,図9参照)、軸径一定か軸部異径かには依らず、凸条12の形成範囲に亘ってほぼ一定である。
そのため、軸部異径の軸状部材10の場合(図7(b)参照)、大径軸部16では凸条12が低くて基底周面11が浅底になっているが(図7(c)参照)、小径軸部14では凸条12が高くて基底周面11が深底になっている(図7(d)参照)。
このような軸状部材10では、凸条12の形成範囲より少し広い範囲の表面に例えば自溶合金の溶射皮膜からなる多孔性の一次被覆層が形成され、それに溶融処理を施して緻密化するために、それを含む加熱領域17の誘導加熱が行われる(図7(e)参照)。
図7(f)は移動加熱用の周方向通電誘導子22と凸条付軸状部材10の平面図であり、図8は、周方向通電による従来の誘導加熱技術について、(a)が凸条付軸状部材10の中央部分の平面図、(b)がその一部の拡大図、(c)が凸条付軸状部材10の側面図(端面図)、(d)がその一部の拡大図である。なお、図8(b)における中心点付き丸印は紙面を貫く電流を示し、図8(d)における矢付き二点鎖線は紙面に沿う電流を示している。
周方向通電誘導子22は、軸状部材10の周方向に沿った方向に通電される誘導作用部を有する例えば短い(狭巾の)環状誘導子であり、その周方向通電(図7(f)の矢付き二点鎖線を参照)によって軸状部材10の軸線に沿った方向の磁束を軸状部材10内に生じさせることにより、軸状部材10の外周面に周方向の誘導電流を生じさせるようになっている。この周方向誘導電流は、凸条12及び基底周面11のうち周方向通電誘導子22と対向する環状区間において概ね凸条12に沿って流れ(図8(b)の中心点付き丸印,及び図8(d)の矢付き二点鎖線を参照)、その環状区間を加熱し昇温させる。そして、その伝熱によって該当箇所の一次被覆も加熱され溶融する。そのため、周方向通電誘導子22を軸状部材10の軸線方向へ移動させることで、加熱領域17の総てを誘導加熱することができる。
図7(g)は一発加熱用の軸線方向通電誘導子21と凸条付軸状部材10の平面図であり、図9は、軸線方向通電による従来の誘導加熱技術について、(a)が凸条付軸状部材10の中央部分の平面図、(b)がその一部の拡大図、(c)が凸条付軸状部材10の側面図(端面図)、(d)がその一部の拡大図である。なお、図9(b),(d)における矢付き二点鎖線は紙面に沿う電流を示し、図9(d)における中心点付き丸印は紙面を貫く電流を示している。
軸線方向通電誘導子21は、軸状部材10の軸線方向に沿った方向に通電される誘導作用部を有する例えば鞍形誘導子であり、その軸線方向通電(図7(g)の矢付き二点鎖線を参照)によって軸状部材10の軸線と直交する面内に径路を取る磁束を軸状部材10内に生じさせることにより、軸状部材10の外周面に軸線方向の誘導電流を生じさせるようになっている。この軸線方向誘導電流は、凸条12及び基底周面11のうち軸線方向通電誘導子21と対向する部分において凸条12を横切りながら軸線方向に流れ(図9(b)の矢付き二点鎖線,及び図9(d)の中心点付き丸印や矢付き二点鎖線を参照)、上記対向部分を加熱し昇温させる。そして、その伝熱によって該当箇所の一次被覆が昇温し溶融する。軸線方向通電誘導子21の誘導作用部が軸状部材10の加熱領域17の全長に亘り軸状部材10の軸線に沿って配置されているため、軸状部材10を軸心回転させながら軸線方向通電誘導子21に高周波通電することにより、加熱領域17の総てを一発で誘導加熱することができる。
このような従来の誘導加熱技術の場合、周方向通電による移動加熱では生産性が悪いので、軸線方向通電による一発加熱が試行されたが、凸条付軸状部材10の誘導加熱では、通常の通電周波数で軸線方向通電の誘導加熱を行うと基底周面11に比べて凸条12の加熱が不足するため、通電周波数に基づく電流浸透深さが誘導電流の方向における凸条12の幅の1/2.5以下になるよう、通電周波数が通常よりも高く設定される(特許文献1参照)。この場合、例えば凸条幅tが6mmとすると、軸状部材10の表面温度が磁気変態点を超えたときの通電周波数は、65kHz程度に設定される。
特開2003−243144号公報
しかしながら、通電周波数を25kHzより高くするのは、高周波電源のコストアップを招来する。何故なら、大電流の高速切換に適した入手容易なスイッチング素子としてIGBT(Innsulated Gate Bipolar Transistor,絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)が高周波電源の出力段回路等に多用されているが、現状で安価なIGBTを長時間に亘って安定動作させるには25kHz以下で使用することが推奨されているため、上述した65kHz程度の高い通電周波数を採用するには、上記の安価な高周波電源に寿命を無視して高負担を掛けるか、高い周波数が適う代わりに高価な高周波電源を導入するか、何れかが求められるので、コスト増が伴うからである。
なお、通電方向を軸線方向から周方向へ迂回させる迂回タイプ誘導子を用いれば、誘導電流が凸条12を横切るところの実効幅が拡がるので、軸状部材10の表面温度が磁気変態点を超えたときの通電周波数は20kHz程度に下げることができる(特許文献1参照)。もっとも、このような迂回タイプ誘導子は特殊な形状をしているので、その採用は、誘導子の製造に要する時間やコストを押し上げるうえ、設置作業が容易でなく、更にはその後の調整作業において試行錯誤的な誘導子の改造を要するケースもあるなどの手間も加わって工費を大巾に押し上げる。
また、これら従来の誘導加熱技術には、周方向通電によるものであれ、軸線方向通電によるものであれ、通電方向を軸線方向から周方向へ迂回させたものであれ、軸部異径の凸条付軸状部材10に適用したときには調整が難しいという不満がある。すなわち、後で詳述するが、加熱対象物の誘導加熱対象面の到達温度uについて、誘導加熱対象面と誘導子の誘導作用部との対向間隔gが狭いと到達温度uが高くなり、対向間隔gが広いと低くなるという傾向があるので、凸条12の到達温度uが適温になるよう調整すると基底周面11の昇温が不足する一方、基底周面11の到達温度uが適温になるよう調整すると凸条12が過熱してしまう。
そのため、例え軸径一定の軸状部材を対象とした場合であっても到達温度への昇温を均一化すべく対向間隔g等を調整するのに手間が掛かり、いわんや凸条12の外径は一定のまま基底周面11だけが部位によって変化する軸部異径の軸状部材10を対象とした場合、加熱領域17の全域に亘って対向間隔g等をほどよく調整するのは極めて難題である。
そこで、生産性に優れる一発加熱方式を踏襲したうえで、コストアップ回避のために通電周波数をIGBTの推奨レベルまで下げられるようにするとともに、やはりコストアップを抑制しながら軸部異径の凸条付軸状部材でも昇温均等化の調整が容易に行えるようにすることが、技術課題となる。
本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項1)は、このような課題を解決するために創案されたものであり、自身の軸線を横切る方位に沿って延びた凸条を自身の外周面に有する軸状部材に誘導子を近接配置し該誘導子に高周波通電することで前記軸状部材の表層部に誘導電流を生じさせて該軸状部材を誘導加熱する、凸条付軸状部材の誘導加熱方法において、前記誘導子として第1誘導子と第2誘導子とを併せて配置し、前記軸状部材を軸心回転させながら該第1誘導子と第2誘導子に高周波通電して前記誘導加熱を行う、ことを特徴とする。ここで、第1誘導子は、前記軸状部材の加熱すべき領域の全長に亘り前記軸線に沿って配置され該軸線に沿った方向に通電される誘導作用部を有し、該軸状部材内に軸線と直交する面内に径路を取る磁束を生じさせる誘導子である。さらに、第2誘導子は、前記軸状部材の周方向に沿った方向に通電される誘導作用部を有し、該軸状部材内に前記第1誘導子による磁束と直交する前記軸線に沿った方向の磁束を生じさせる誘導子である。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項2)は、上記の請求項1記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法であって更に、前記軸状部材の軸線方向の一部区間を誘導加熱できる誘導子を前記第2誘導子として配備し、該誘導子を前記軸線方向に走行させながら該誘導子に高周波通電することにより、前記軸状部材をその加熱すべき領域の全長に亘って誘導加熱する、ことを特徴とする。
さらに、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項3)は、上記の請求項1,2記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法であって更に、前記軸状部材にあって前記凸条の谷底を占める基底周面と前記第1誘導子の誘導作用部との対向間隔を、前記基底周面の昇温が前記軸線方向に関して均等となるように設定して、前記誘導加熱を行う、ことを特徴とする。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項4)は、上記の請求項1〜3記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法であって更に、前記軸状部材をその磁気変態点を超える温度に昇温させるに際して、前記第2誘導子による、前記軸状部材の周方向に前記誘導電流を生じさせる形式の誘導加熱に関する、通電周波数f1 の加熱能率本位の好適領域を公知知見に基づいて求める後述の数式1に該軸状部材の外径Dならびに磁気変態点を超える温度領域での体積固有抵抗ρ,比透磁率μの値を入れて、前記第2誘導子に係る磁気変態点超温度領域本位の好適通電周波数領域を求め、この周波数領域での高周波通電を前記第1誘導子にも前記第2誘導子にも適用する、ことを特徴とする。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項5)は、上記の請求項2〜4記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法であって更に、前記軸状部材にあって前記凸条の谷底を占める基底周面の昇温の調整を前記第1誘導子への投入電力を調整して行い、前記凸条の昇温の調整については、前記第2誘導子として前記軸状部材の軸線方向の短区間を誘導加熱できる誘導子を配備した上で、該誘導子への投入電力と該誘導子に係る前記軸線方向走行の速度との何れか一方または双方を調整して行う、ことを特徴とする。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項6)は、上記の請求項1〜5記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法であって更に、前記軸状部材の表面に形成した金属系の一次被覆層に溶融処理を施すために前記誘導加熱を行う、というものである。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱装置(請求項7)は、外周面に凸条を有する軸状部材を支持し且つ軸心回転させる軸状部材支持回転装置と、この装置に支持された前記軸状部材の加熱すべき領域の全長に亘り前記軸状部材の軸線に沿って配備され該軸線に沿った方向に通電される誘導作用部を有する第1誘導子と、前記軸状部材の軸線方向の一部区間の区間長さに相当する幅を以て該一部区間の周方向に沿って配置され該周方向に沿った方向に通電される誘導作用部を有する第2誘導子と、該第2誘導子を前記軸状部材の軸線方向に走行させるための誘導子走行機構と、前記第1誘導子と第2誘導子の夫々に高周波通電を行うための2系統の高周波電源とを備えたものである。
このような本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項1)にあっては、昇温に電力と時間を要する軸部に対しては加熱領域全長に及ぶ軸線方向通電の第1誘導子を適用するとともに軸状部材を軸心回転させながら誘導加熱を行うことで、一発加熱方式を踏襲する一方、軸部より熱容量は小さいが軸部と異なり軸線方向通電では通電周波数を高くしなければならない凸条に対しては、通電周波数を高めなくて済む周方向通電の第2誘導子を適用することで、通電周波数をIGBTの推奨レベルに維持することができる。なお、軸線方向通電の第1誘導子と周方向通電の第2誘導子は、磁束が概ね直交するので、同時に通電しても、各々が、ほぼ独立状態で、即ち相手方の影響をほとんど受けないで、凸条付軸状部材に作用する。
しかも、このような第1,第2誘導子に軸部と凸条の誘導加熱を分担させたことにより、軸部と第1誘導子との対向間隔等の調整と、凸条と第2誘導子との対向間隔等の調整とを個別に行えば、微調整は別として大がかりな組合せ調整は要らない。個別調整では加熱対象物の誘導加熱対象面と誘導子の誘導作用部との対向間隔が一義的に定まるので、具体的には基底周面と第1誘導子とが実質的作用において一対一で対向し凸条と第2誘導子とが実質的作用において一対一で対向するので、一個の誘導子が基底周面および凸条の双方を共に主たる加熱対象とする連立タイプの従来手法に比べて遙かに、個別調整は容易であり迅速かつ的確に遂行しうる。そのため、昇温むらの少ない適切な誘導加熱が行われて、熱処理の品質が向上する。
したがって、この発明によれば、大してコストを掛けずに良品を能率良く生産できる凸条付軸状部材の誘導加熱方法を実現することができる。
なお、凸条付軸状部材の軸部の基底周面に対する第1誘導子の誘導加熱作用と、凸条付軸状部材の凸条に対する第2誘導子の誘導加熱作用とについて、独立性を高めるには、第1誘導子の高周波通電と軸状部材の回転だけで軸部の基底周面の温度が一様になるよう第1誘導子の誘導作用部と軸部の基底周面との対向間隔を適切に調整するとともに、第1誘導子の軸線方向通電にて軸状部材の表層面に誘起される誘導電流が凸条へ大量には流れ込まないよう、浸透深さを凸条の幅の半分よりは深くする程度に、第1誘導子の通電周波数を低く設定することが、望ましい。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項2)にあっては、第2誘導子に移動加熱方式を採用したことにより、第2誘導子とその高周波電源が小形化されるので、加熱手段を独立2系統にしても、コストアップは小さく抑えられる。なお、第2誘導子が適用される凸条は熱容量が小さいうえ外径がほぼ一定で揃っているので、移動加熱方式であっても、軸部にも適用する従来と異なり、本発明では凸条だけに適用するので、迅速に而も小電力で熱処理を完遂することができる。
さらに、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項3)にあっては、上述した個別調整のうち第1誘導子の誘導作用部と軸状部材の基底周面との対向間隔に係る調整が実行されて、軸部の基底周面の昇温が軸線方向に関しても均等になる。なお、その調整の具体的な手順は、後の第5実施形態での説明時に詳述する。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項4)にあっては、通電周波数の選定に際して、第2誘導子に係る磁気変態点超温度領域本位の好適通電周波数領域が求められ、この周波数領域での高周波通電が第2誘導子ばかりか第1誘導子にも適用されるようにしたことにより、誘導子が増えても、通電周波数の選定作業は一回で済む。なお、後の第5実施形態で詳述するが、第1誘導子に係る磁気変態点超温度領域本位の好適通電周波数領域の下限の方が、第2誘導子に係る磁気変態点超温度領域本位の好適通電周波数領域の下限より低いので、上述のような適用を行っても不都合はない。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項5)にあっては、上述したように加熱手段が独立の2系統になったことを利用して、上述した運転前の個別調整に加えて、運転中でも昇温の調整が個別に行われる。すなわち、軸状部材の基底周面の昇温の調整が第1誘導子への投入電力の調整にて遂行され、軸状部材の凸条の昇温の調整が第2誘導子への投入電力の調整および第2誘導子の軸線方向走行速度の調整のうち何れか一方または双方の調整にて遂行される。これにより、装置や設備の設置後も、誘導子をはじめとする装置等の改造なしで容易に、調整を行うことができる。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法(請求項6)にあっては、軸状部材の表面に形成した金属系の一次被覆層に溶融処理が施されるが、その溶融処理は上述の本発明加熱方式を適用して行われるため大してコストがかからず、しかも加熱温度の均等化等が果たされて良好な溶融処理が能率良く遂行される。
また、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱装置(請求項7)にあっては、大してコストを掛けずに良品を能率良く生産できるという上記請求項1記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法に使用することができ、加熱手段が独立2系統になってもコストアップは小さく抑えられるという上記請求項2記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法にも使用することができる。しかも、誘導子の他に高周波電源まで含めた完全な形で加熱手段が独立2系統になっているので、調整の自由度が更に高まっているのはもちろん、給電系の相互干渉が無い点でも優れており、設計や制御についても自由度が高く負荷や負担が軽減されている。
先ず本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法について図1を引用しながら概要を説明し、次に本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱装置の実施形態を幾つか(第1,第2形態)説明し、それから基底周面(軸状部材の軸部)と軸線方向通電誘導子(第1誘導子)との対向間隔の具体的な設定手法(第3形態)を説明する。
図1は、本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法の概要を示し、(a)が軸部異径の凸条付軸状部材10の平面図、(b)がその軸状部材10と鞍形の軸線方向通電誘導子21(第1誘導子)と周方向通電誘導子22(第2誘導子)との平面図、(c)が凸条付軸状部材10の中央部分の平面図、(d)がその一部の拡大図、(e)が凸条付軸状部材10の側面図(端面図)、(f)がその一部の拡大図である。なお、図1(d),(f)において、中心点付き丸印は紙面を貫く電流を示し、矢付き二点鎖線は紙面に沿う電流を示している。
本発明でも、加熱対象物は、従来同様、射出成形機や押出機などに用いられるスクリュー部材のような凸条付軸状部材10であり、この軸状部材10は(図1(a)参照)、自身の軸線を横切る方位に沿って延びた凸条を自身の外周面に有している。誘導加熱の可能な鋼材等を母材にしていれば、加熱領域17に被覆が施されていても良くそうでなくても良く、また、加熱領域17において軸部の直径が一定でも良く異なっていても良い。このような軸状部材10に通電方向の異なる二つの誘導子21,22を近接配置し(図1(b)参照)、それらの誘導子21,22に高周波通電することで、軸状部材10の表層部に誘導電流を生じさせて軸状部材10を誘導加熱する。
その誘導子の一つである軸線方向通電誘導子21(第1誘導子)は、従来と同様の例えば鞍形誘導子であり、軸状部材10の加熱領域17の全長に亘り軸線に沿って配置され該軸線に沿った方向に通電される誘導作用部を有している。そして、図示しない高周波電源から軸線方向通電誘導子21に高周波通電がなされると、軸状部材10内に軸線と直交する面内に径路を取る磁束が生じ、これによって軸状部材10の表層部に軸線方向の誘導電流が流れる。その際、通電周波数が適切な範囲内にあると、具体的には磁気変態点を超える温度領域での浸透深さδが凸条幅tの半分を上回るよう軸線方向通電誘導子21の通電周波数を低く設定すると、軸状部材10の軸部の基底周面11には高密度の誘導電流が流れるが(図1(d)の矢付き二点鎖線および図1(f)の中心点付き丸印を参照)、軸状部材10の凸条12にはさほど流れない。
また、上記誘導子のうち残りの周方向通電誘導子22(第2誘導子)は、軸状部材10の軸線方向に移動させながら稼働させる誘導子であって、既述した従来同様の短い(狭巾の)環状誘導子でも良いが、取合の都合やクリアランス設定の自由度などの観点からは短い(狭巾の)弧状誘導子の方が好ましい(後述する図3の誘導子52を参照)。何れの態様であっても、周方向通電誘導子22は、軸状部材10の周方向に沿った方向に通電される誘導作用部を有している。そして、図示しない高周波電源から周方向通電誘導子22に高周波通電がなされると、軸状部材10内に軸線方向通電誘導子21による磁束と直交する軸線に沿った方向の磁束が生じ、これによって軸状部材10の表層部のうち軸線方向の一部区間に周方向の誘導電流が流れる。その際、基底周面11との結合係数よりも凸条12との結合係数が大きくなるので周方向通電誘導子22と凸条12の頂部との対向間隔等を調整しておくと、軸状部材10の凸条12には高密度の誘導電流が流れるが(図1(d)の中心点付き丸印および図1(f)の矢付き二点鎖線を参照)、軸状部材10の軸部の基底周面11にはさほど流れない。
その際、軸線方向通電誘導子21も周方向通電誘導子22も共に通電周波数がIGBTの推奨レベルに設定されて、高周波電源は安価なもので足りることとなる。また、軸線方向通電誘導子21に係る調整は軸状部材10の軸部の基底周面11に関して行われ、周方向通電誘導子22に係る調整は軸状部材10の凸条12に関して行われ、これらの調整を個別に行うだけで、基底周面11も凸条12も迅速かつ的確に昇温して誘導加熱される。
なお、軸線方向通電誘導子21に適切な通電周波数で高周波通電して軸線方向の全長加熱を行うと、軸状部材10の表層面のうち凸条12以外の基底周面11(溝底部)の温度は磁気変態点を超えても順調に上昇して所望の処理温度に到達する。その際、凸条12の温度は基底周面11からの熱伝導で多少は上昇するが磁気変態点近辺で飽和してそれ以上の昇温が停止するので軸線方向通電誘導子21による誘導加熱だけで処理温度に到達することはない。この状態で、周方向通電誘導子22に高周波通電して周方向の誘導加熱を行うと、凸条12の温度を所望温度にすることが、磁気変態点近傍における昇温停止の解消を含めて、僅かな電力で迅速に出来る。このように軸線方向の全長加熱を先行させ、引き続き凸条の加熱を行うのが、誘導子22通過時の基底周面11の昇温状態が長手方向均等となる点において合理的であるが、同時に加熱しても条件さえ整えておけば問題はない。
本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱装置の一実施形態(第1形態)について、その構成を、図面を引用して説明する。図2は、(a)が誘導加熱装置30の斜視図、(b)が軸線方向通電誘導子21と周方向通電誘導子32と凸条付軸状部材10の斜視図、(c)がそのA−A断面矢視図である。
この誘導加熱装置30は(図2(a)参照)、凸条付軸状部材10を誘導加熱するに際して基底周面11の昇温制御と凸条12の昇温制御を独立に制御できるよう、軸部の基底周面11を軸線方向の全長への入熱と軸状部材10の回転とによって一発加熱するための軸線方向通電誘導子21(第1誘導子)と、凸条12を軸線方向の全長への入熱と軸状部材10の回転とによって一発加熱するための周方向通電誘導子32(第2誘導子)と、軸状部材10を水平に支持して軸心回転させる軸状部材支持回転装置33〜35と、誘導子21,32の夫々に高周波通電を行うための2系統の高周波電源36,37とを具えている。
高周波電源36,37は、何れも、誘導加熱用の一般的な電源装置であり(例えば特開2005−120415参照)、仕様として要求される通電周波数が25kHzを超えないので、周波数出力段回路にIGBT等を用いた比較的安価なもので足りる。この例では、高周波電源36,37が共に固定設置されている。そのうち、高周波電源36は、軸線方向通電誘導子21に高周波通電するものであり、大出力なので例えば水冷式になっている。他方、高周波電源37は、周方向通電誘導子32に高周波通電するものであり、小出力なので例えば空冷式になっている。
軸状部材支持回転装置33〜35は、軸状部材10を水平にして保持するために、軸状部材10の従動端部を軸回転可能に支持する軸受などの従動端支持機構33と、軸状部材10の駆動端部13を回転伝動可能に保持するチャック等の駆動端支持機構34とを具えている。軸状部材10を軸心回転させる回転駆動用の電動モータ35も具えており、その回転出力軸が直に又は適宜な伝動機構や調心機構を介して駆動端支持機構34に連結されている。その他、図示しない位置調整機構や,電気絶縁用部材,放熱用部材,安全確保用部材なども適宜設けられている。
軸線方向通電誘導子21は(図2(b),(c)参照)、上述したように鞍形の誘導子であり、軸状部材支持回転装置33〜35に水平支持された軸状部材10の加熱領域17の全長に亘る誘導作用部を有しており、この誘導作用部が銅等の電気良導体からなり軸状部材10の軸線に沿って配備されている。そして、軸線方向通電用高周波電源36から高周波通電されると、その高周波電流が、軸状部材10の軸線に沿った方向へ(この例では平行に)流れるようになっている。図示は割愛したが、適宜な通水等による強制冷却も行えるようになっている。
周方向通電誘導子32は(図2(b),(c)参照)、軸状部材支持回転装置33〜35に水平支持された軸状部材10の加熱領域17の全長に亘る誘導作用部を有するものであり、この誘導作用部が銅等の電気良導体からなり軸状部材10の軸線に沿って配備されている。誘導作用部が円筒を縦に略二分割した半筒に近い形状をしており、それが軸状部材10寄りの内側に配置されている。また、半筒を更に縦に二分割した四半筒を並べた言わば分割半筒に近い形状の良導体が誘導作用部の外側に配置され、これら内外二重配置の半筒同士が周方向の両端で短絡され、外側の分割半筒の分割端がそれぞれ周方向通電用高周波電源37の電流出力部材に連結されている。そして、周方向通電用高周波電源37から高周波通電されると、その高周波電流が、軸状部材10の周方向に沿った方向へ(この例では軸心と直交する面内で弧状に)流れるようになっている。図示は割愛したが、適宜な通水等による強制冷却も行えるようになっている。
これらの誘導子21,32は、機械的に干渉しないよう、軸状部材10を間にして反対側に分かれて配置されている(図では上下に離隔した対向配置)。また、誘導作用部については上述したように磁束が軸線方向と周方向とで直交しているので磁気的干渉が無いが、それ以外のところでも鎖交等による磁気的干渉を無くすために、干渉回避手段を付加する必要があるときには、例えば十分な迂回径路の確保や図示しない強磁性体の適宜配置なども行われる。
この誘導加熱装置30を用いて凸条付軸状部材10を誘導加熱する場合、誘導子21及び誘導子32の誘導作用部を軸状部材10の加熱領域17に対向させた状態で、電動モータ35にて軸状部材10を軸心回転させながら、高周波電源36から軸線方向通電誘導子21に高周波通電するとともに高周波電源37から周方向通電誘導子32に高周波通電することにより、上述した本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法の概要とほぼ同様にして、軸状部材10の加熱領域17の表層面が誘導加熱される。ただし、周方向通電誘導子32が、周方向通電誘導子22と異なり、一発加熱方式のものなので、周方向通電誘導子32の走行は行われない。
ここで、誘導子21,32の通電周波数の選定について、図面(図2(c),図1(c)〜(f),図9(b))や以下の数式1〜数式3を参照しながら詳述する。図2(c)は、軸線方向通電誘導子21と周方向通電誘導子32と凸条付軸状部材10のA−A断面矢視図である。また、図1は、(c)が軸状部材10の中央部分の平面図、(d)がその一部の拡大図、(e)が軸状部材10の側面図(端面図)、(f)がその一部の拡大図である。さらに、図9(b)は、図1(d)と対比されるものであり、軸状部材10の凸条12周辺の拡大図である。なお、図1(d),(f),図9(b)において、中心点付き丸印は紙面を貫く電流を示し、矢付き二点鎖線は紙面に沿う電流を示している。
Figure 2007119886
この数式1は、外径D(cm)の円柱状被加熱物を最も能率良く誘導加熱する通電周波数f1 の下限を求めるための公知計算式である。
因に、この式は、誘導電流の浸透深さδ(=5.03√{ρ/(μf)})の円柱材外径Dに対する比率が、この被加熱物形状にあって誘導電流が効率良く発熱に寄与するための公知要件である[(δ/D)≦(1/2.5)]を満す周波数領域を示している。
Figure 2007119886
この数式2は、厚さD(cm)の平板状被加熱物を最も能率良く誘導加熱する通電周波数f2 の下限を求めるための公知計算式である。
因に、この式は、誘導電流の浸透深さδ(=5.03√{ρ/(μf)})の平板の厚さDに対する比率が、この被加熱物形状にあって誘導電流が効率良く発熱に寄与するための公知要件である[(δ/D)≦(1/3.5)]を満す周波数領域を示している。
Figure 2007119886
この数式3は、厚さt(cm)の平板状被加熱物を最も能率良く誘導加熱する通電周波数f3 の下限を求めるための公知計算式である。
因に、この式は、誘導電流の浸透深さδ(=5.03√{ρ/(μf)})の平板の厚さtに対する比率が、この被加熱物形状にあって誘導電流が効率良く発熱に寄与するための公知要件である[(δ/t)≦(1/3.5)]を満す周波数領域を示している。
なお、上記数式1〜数式3における体積固有抵抗ρと比透磁率μは、凸条付軸状部材10の母材に係る物性値であって、その磁気変態点を超える温度領域のものである。
これらの式を凸条付軸状部材10の誘導加熱に適用するため各誘導子の高周波通電に当てはめると(図2(c),図1(c)〜(f)を参照)、上記数式1は、誘導子32による本発明の周方向通電に適用され、基底周面11にも凸条12にも適用できる。上記数式2は、誘導子21による本発明の軸線方向通電に適用され、基底周面11には適用できるが、凸条12には適用できない。上記数式3は、誘導子21のみによる従来の軸線方向通電に適用され、基底周面11にも凸条12にも適用できる。
軸線方向通電誘導子21で凸条12までも能率良く加熱するための数式3に対して、誘導子21で基底周面11だけを能率良く加熱するための数式2と、周方向通電誘導子32で凸条12を能率良く加熱するための数式1を比較すると、スクリュー部材などの凸条付軸状部材10では軸状部材外径Dが数cmであるのに対し凸条幅tが数mmなので、数式3を満たす領域における軸線方向通電誘導子21向け通電周波数f3 は、数式2を満たす領域における軸線方向通電誘導子21向け通電周波数f2 や,数式1を満たす領域における周方向通電誘導子32向け通電周波数f1 より、下限周波数が桁違いに大きい。
そのことから分かるように、数式2に基づく通電周波数f2 の領域のうち、数式3に基づく通電周波数f3 の領域に満たない周波数領域(帯域)については、その周波数による軸線方向通電では、基底周面11の加熱は行えても、凸条12の加熱は行えない。何故なら、誘導電流がネジ山状の凸条12を横切って流れるときに、凸条12の山を上下する誘導電流の浸透深さδが上りと下りとで重なると、誘導電流が相殺されるため、その分有効に加熱できないからである。特に、浸透深さδが凸条幅tの半分より深くなると、相殺の影響がハッキリする。数式3を満たす軸線方向通電誘導子21向け通電周波数f3 では誘導電流の相殺が少ないため凸条12にも誘導電流が流れるが(図9(b)の二点鎖線を参照)、数式2は満たすが数式3は満たさない軸線方向通電誘導子21向け通電周波数f2 では誘導電流が相殺されるため誘導電流が基底周面11には流れても凸条12にはあまり流れない(図1(d)の二点鎖線を参照)。
また、誘導子21で基底周面11を能率良く加熱するための数式2と、周方向通電誘導子32で凸条12を能率良く加熱するための数式1とを比較すると、数式2より数式1の方が厳しい条件なので、数式1が満たされると数式2も同時に満たされる。言い換えれば、数式1を満たす領域における周方向通電誘導子32向け通電周波数f1 は、数式2を満たす領域における軸線方向通電誘導子21向け通電周波数f2 を兼ねうるものであり、誘導子32による周方向誘導電流に有利な周波数は、誘導子21による軸線方向誘導電流にも有利な周波数となっている。そのため、上記数式1を用いて適切な通電周波数f1 を選定し、それを軸線方向通電用高周波電源36にも周方向通電用高周波電源37にも設定することにより、通電周波数の選定作業を一回で済ませることができる。
このように、誘導加熱装置30における通電周波数は、上記数式1に則った通電周波数f1 だけを用いればよい。因に、この通電周波数f1 の領域の下限(≒2kHz)から25kHz程度までの周波数範囲の高周波交流は、IGBT等の量産素子を用いた安価な電源装置によって有利に供給することができる。
そして、誘導加熱装置30を用いた誘導加熱では、軸状部材10の軸部の基底周面11の加熱が、誘導子21による軸線方向誘導電流によって十分に賄われる一方、軸状部材10の凸条12の加熱は、凸条12における誘導電流の相殺の生じにくい誘導子32による周方向誘導電流によって十分に賄われ、それらが概ね独立に制御できることとなる。
本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱装置の他の実施形態(第2形態)について、その構成を、図面を引用して説明する。図3は、(a)が誘導加熱装置50の斜視図、(b)が軸線方向通電誘導子51と周方向通電誘導子52と凸条付軸状部材10の斜視図、(c)がそのA−A断面矢視図である。
誘導加熱装置50が上述した誘導加熱装置30と相違するのは、一発加熱方式の周方向通電誘導子32に代えて移動加熱方式の周方向通電誘導子52(第2誘導子)が配置された点と、それに伴って周方向通電用高周波電源37をひいては誘導子52を移動させる誘導子走行機構53が導入された点である。
誘導子走行機構53は、例えばボールネジ機構などからなり、高周波電源37を軸状部材10と平行な方向へ定速送りや可変速送りで走行させるようになっている。
誘導子52は、誘導作用部を軸状部材10の外周面に対向させる状態で高周波電源37にて支持され、高周波電源37の走行に随伴して、軸状部材10の軸線方向に移動するようになっている。その移動範囲は加熱領域17の全長を含んでいる。
また、誘導子52は、上述した周方向通電誘導子32を短く(狭巾に)した弧状の形をしており、その誘導作用部は、軸状部材10の一部区間の区間長さに相当する幅を以てその一部区間の周方向に沿って配置され該周方向に沿った方向に通電されるものとなっている。
軸線方向通電用の鞍型誘導子51は(図3(b),(c)参照)、その形態,作用共に誘導加熱装置30の第1誘導子21と同じである。
この誘導加熱装置50を用いて凸条付軸状部材10を誘導加熱する場合、周方向通電誘導子52の走行も含めて、上述した本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法の概要と、同様にして行われる。その際、高周波電源36,37に設定される通電周波数f1 は、誘導加熱装置30のときと同様にして、IGBTの推奨レベルに選定される。さらに、軸状部材10の軸部の基底周面11の温度は、高周波電源36から軸線方向通電誘導子51への投入電力を手動で又はフィードバック制御による自動で調整することにより、目標温度に昇温され維持される。また、軸状部材10の凸条12の温度は、高周波電源37から周方向通電誘導子52への投入電力を手動で又はフィードバック制御による自動で調整することにより、目標温度に昇温され維持される。
この場合、誘導子51,52での誘導加熱が相互に影響することなく独立に制御されるので、基底周面11も凸条12も所望温度に迅速加熱され安定維持される。
また、移動する周方向通電誘導子52の加熱範囲が狭いので、周方向通電用高周波電源37が空冷で間に合う程度の小電力のもので足りることもある。
さらに、周方向通電誘導子52が移動加熱方式であっても、軸線方向通電誘導子51の一発加熱方式が併用されており、誘導子51で加熱された軸部からの伝熱等にて磁気変態点まで昇温された凸条12に対し、その磁気変態点から所望温度まで昇温させるのに誘導子52での加熱が用いられるので、所用時間は従来の移動加熱方式より短い。
本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法および装置の他の実施形態(第3形態)について、図面を引用して説明する。図4は、軸線方向通電誘導子21,51の誘導作用部と凸条付軸状部材10の基底周面11との対向間隔g1,g2,g3,g4の設定手法を示し、(a)が凸条付軸状部材10の軸部の平面図、(b)が軸線方向通電誘導子21,51と凸条付軸状部材10の軸部との平面図である。凸条12は図示を省いている。
誘導加熱装置は上述した装置30,50の何れでも良いが、ここでは、外径D1の駆動端部13と基底周面径D2の小径軸部14と基底周面径D3の中径軸部15と基底周面径D4の大径軸部16を持った軸部異径の軸状部材10を加熱対象として(図4(a)参照)、その基底周面11と第1誘導子たとえば誘導子51との対向間隔g1,g2,g3,g4の具体的な設定手法を説明する(図4(b)参照)。対向間隔g1,g2,g3,g4は、それぞれ、軸部の軸線方向区間13,14,15,16と、誘導子51の誘導作用部との間隔である。
軸径一定の凸条付軸状部材の如く軸部の基底周面11の外径が一段しかないような単純な場合は軸状部材10と誘導子51との対向間隔も一様でよいので真っ直ぐな誘導子51を平行配置することで足りるが、ここで対象とする軸状部材10のように軸部が複数段の外径や勾配を有する場合(図4(a)参照)、それに適用する軸線方向通電誘導子51は、軸部の基底周面11の外径や勾配に応じて基底周面11と誘導子51の誘導作用部との対向間隔を適正に設定することにより、基底周面11の表層面の到達温度が加熱領域17において略同一になるよう、真っ直ぐから折線状や曲線状に予め変形させておかなければならない。
要は、軸線方向通電誘導子51での一発加熱方式では、軸状部材10の加熱領域17の全長に亘って誘導子51の誘導作用部と軸状部材10の軸部の基底周面11とが対向していることと、基底周面11の到達温度が周方向通電に束縛されないことに基づき、基底周面11と誘導子51との対向間隔g1,g2,g3,g4を予め調整・設定しておくことにより、加熱領域17全長に亘る均等昇温を得ようとするものである。誘導加熱での到達温度uが誘導電流Iiと熱容量Cpとに支配され、そのうち熱容量Cpが外径Dに支配され、誘導電流Iiが誘導子電流Icと結合係数Kとに支配され、この結合係数Kが誘導作用部幅Fと対向間隔gとに支配される、という物理特性を利用して対向間隔g1,g2,g3,g4が選定される。
その物理特性を表す式を用いて詳述すると、誘導子と誘導加熱対象物との結合係数Kは、誘導子の誘導作用部と加熱対象物の誘導加熱対象面との対向間隔gと誘導作用部の幅Fとの比(g/F)を仮にhとおいて、h>0.5なら近似式[K=(1/π)tan−1{h/(h−0.25)}]で求められ、h=0.5なら近似式[K=0.5]で求められ、h<0.5なら近似式[K=(1/π)tan−1{h/(h−0.25)}+1]で求められる。この結合係数Kを用いて、誘導子電流Icと誘導電流Iiとの関係が、式[Ii=KIc]で表される。
さらに、誘導加熱対象面の到達温度uが誘導電流密度の自乗に比例するとともに誘導電流浸透部の熱容量Cpに反比例するとすれば、加熱部位の熱容量Cpが周長πDと浸透深さδ(ρ,μ,f)との積に比例するので(ここでρは体積固有抵抗,μは比透磁率,fは通電周波数)、到達温度uについて理論式[u∝K/D]が成り立つ筈であるが、実際には、他の要因の絡みもあって、到達温度uは近似式[u≒αK/D]に従う(αは比例定数)。
この近似式[u≒αK/D]は、要するに、結合係数Kと軸部外径Dとの比βを同じにすれば軸部の各位置の到達温度が略一定になる、ということを示している。
以下、上述した近似式に則って、すなわち結合係数Kの近似式と到達温度uの近似式とに則って、加熱対象物の典型例である軸部異径の軸状部材10について(図4(a)参照)、本発明による均等な誘導加熱のための要件の探索と検証を行ってみる。
数値例を用いて分り易く説明するため、駆動端部13の外径D1は50φ、小径軸部14の基底周面径D2は35φ、中径軸部15の基底周面径D3は勾配部なので平均を採って40φ、大径軸部16の基底周面径D4は45φとする。軸線方向通電誘導子51の誘導作用部幅Fは15mmとする。
通常、スクリュー部材のような軸状部材10に強化皮膜を形成するとき、皮膜形成範囲が凸条12形成範囲から凸条12の無い駆動端部13の一部まで及び、これが概ね加熱領域17とされるが、駆動端部13の皮膜形成部は範囲が狭いうえ別途に円周加熱用誘導子(周方向通電誘導子)で加熱昇温することも可能なので、凸条12の形成されている従動端部である大径軸部16のところを基準位置にして、そこを所望温度(目標温度,処理温度)に昇温させることを目指す。この所望温度・目標温度は1050℃とする。
先ず、対比のため、軸線方向通電誘導子51が真っ直ぐで軸状部材10の軸心に平行配置されている場合について、各部13〜16の結合係数Kを計算し、さらに各部13〜16の到達温度u(℃)を計算してみる。
最小空隙を駆動端部13の対向間隔g1=5mmとすると、この場合、誘導子51が真っ直ぐ水平なので、小径軸部14の対向間隔g2=12.5mm、中径軸部15の対向間隔g3=10mm、大径軸部16の対向間隔g4=7.5mmとなる。
そこで、上述した結合係数Kの近似式を用いて各部13〜16の結合係数Kを算出すると、D1=50φ、g1=5mmの駆動端部13では、 K=0.626となる。
D2=35φ、g2=12.5mmの小径軸部14では、K=0.344となる。
D3=40φ、g3=10mmの中径軸部15では、 K=0.410となる。
D4=45φ、g4=7.5mmの大径軸部16では、 K=0.5となる。
また、各部の到達温度uが上述の近似式[u≒αK/D](αは比例定数,Kは結合係数,Dは外径)に従うとして、基底周面径D4=45φで対向間隔g4=7.5mmで結合係数K=0.5である基準位置の大径軸部16の基底周面11の到達温度u4 が1050℃になるときの比例定数αは、上述した到達温度uの近似式にD=45φ,K=0.5を代入して、α=(uD/K)=(1050×45/0.344)=94500となる。他の各部14〜16も結合係数Kと外径Dこそ異なれ比例定数αは同じであるから、この値の比例定数αと上述した到達温度uの近似式とを用いて、残りの各部温度を計算する。
すると、D3=40φ、g3=10mm、K=0.410の中径軸部15では、到達温度u2 =(αK/D)=(94500×0.41/40)=969(℃)となる。
また、D2=35φ、g2=12.5mm、K=0.344の小径軸部14では、到達温度u3 =929(℃)となる。
ちなみに、駆動端部13の到達温度u1 を計算で求めると、D1=50φ、g1=5mm、K=0.626なので、到達温度u1 =1183(℃)となる。もっとも、駆動端部13の熱容量は軸方向に大きく、誘導子51と対向しない部分へ逃げる熱量が多いので、実際には、上記の計算値ほど昇温することはない。
上記の計算を整理すると、u2 =929℃、u3 =969℃、u4 =1050℃であり、均等に昇温していないので、基準位置を到達温度の低い小径軸部14にとりなおして、均等に昇温させたい小径軸部14,中径軸部15,大径軸部16について均等昇温可能な対向間隔g2,g3,g4を再計算する。上述した到達温度uの近似式から、結合係数Kと外径Dとの比βを各部14〜16で同じにすれば、それらの到達温度u2 〜u4が略一定になることが分かっているので、ここでは、結合係数Kに基づき外径Dから均等昇温可能な対向間隔gを計算にて求める。その準備のため、結合係数Kの近似式を変形して、対向間隔gについて解き、整理すると、次のような対向間隔gの近似式が得られる。
K>0.5 ならば
g=F{1−√(1+tan(π(K−1)))}/{2tan(π(K−1))}
K=0.5 ならば
g=0.5F
K<0.5 ならば
g=F{1+√(1+tan(πK))}/{2tan(πK))}
上述したように誘導子51が真っ直ぐという対比条件下では基準位置の対向間隔gを仮決めしてから順に各部の結合係数Kと共通の比例定数αと各部の到達温度uを計算したが、ここでは、均等昇温可能な対向間隔gの調整が目的なので、誘導子51を三分割で折り曲げて(図4(b)参照)小径軸部14との対向部分m1の対向間隔g2と中径軸部15との対向部分m2の対向間隔g3と大径軸部16との対向部分m3の対向間隔g4をそれぞれ好適値に選定するべく、基準位置の対向間隔gを仮決めしてから、共通の比βを計算し、これを用いて各部の望ましい結合係数Kと対向間隔gを計算する。さらに、机上確認のため共通の比例定数αの計算と各部の到達温度uの計算も行うこととする。
そうすると、ここでの基準位置である小径軸部14では、D2=35φ、g2=12.5mm、K=0.344であるから、比β=K/D=0.344/35=0.00983となる。そこで、この共通の比βを用いて、他の各部15,16における均等昇温に好適な結合係数Kと対向間隔gを計算する。なお、誘導作用部幅Fは15mmのままである。
中径軸部15では、D3=40φなので結合係数K=βD=0.393が望ましく、対向間隔g3=15{1+√(1+tan(π・0.393))}/{2tan(π・0.393))}=10.6mmが望ましい。もっとも、10.6mmのように半端な寸法は管理しにくいので中径軸部15の対向間隔g3は10.5mmとする。このg3=10.5mmで結合係数Kを再計算すると、K=0.395となる。
同様にして、D4=45φの大径軸部16については、結合係数K=0.442、対向間隔g4=9.0mmとなる。
そして、確認のため、これら新しく選定した対向間隔g2,g3,g4とそれぞれの結合係数Kとを用いて、各部14〜16の到達温度uを再計算してみる。
D2=35φ、g2=12.5mmの小径軸部14の到達温度u2 を1050℃にする比例定数αは、α=uD/K=1050×35/0.344=106831となる。
このαを用いて、D3=40φ、g3=10.5mmの中径軸部15の位置では、到達温度u3 =αK/D=106831×0.395/40=1055.0℃となる。
また、D4=45φ、g4=0.0mmの大径軸部16では、到達温度u4 =αK/D=106831×0.442/45=1049.3℃となる。
以上の計算結果を整理すると、各部14〜16の到達温度はそれぞれu2 =1050℃、u3 =1055.0℃、u4 =1049.3℃であり、概ね均等に昇温したといえる。
この計算は、あくまでも凸条12のない場合のものであり、凸条12の熱容量や放熱板としての働きを無視しているので、厳密に正確なものとは言えないが、目安としては可成りのものであり、基本設計の指針としては十分に使えるものである。実用に際しては、試作品の加熱テストの結果等も加味して、最終的な対向間隔g1,g2,g3,g4が決められる。
本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法および装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図7は軸部異径の凸条付軸状部材10の平面図である。図3の誘導加熱装置50を用い、鞍形の軸線方向通電誘導子51の誘導作用部を図4(b)のように折線状に形成して、対向間隔g2,g3,g4の調整も行った。
凸条付軸状部材10の構造と物理特性は次の通りである(図5参照)。
材質 : SCM410
体積固有抵抗ρ=80(μΩ−cm)
比透磁率μ=1 (ρ,μは、磁気変態点を超える温度領域で)
一次皮膜層材質 : Ni自溶合金(JIS SNFi2)
一次皮膜厚さ : 0.4〜0.6mm
溶融処理温度 : 1050±25℃
寸法 : 全長 L0=1380mm 凸条幅t=6.5mm
駆動端部 L1=380mm D1=50φ
(最小径部)小径軸部 L2=500mm D2=35φ
(勾配部)中径軸部 L3=310mm D3=40φ(平均)
(従動端)大径軸部 L4=190mm D4=45φ
誘導子51,52の通電周波数f1 は、最小軸径のD2=35φから上記数式1にて求め、高周波電源36,37に設定した。
すなわち、f1 ≧310ρ/μD≧310×80/(1×3.5)=2024となるので、切りのよい通電周波数f1 =2400Hzを選定した。これは、IGBTの推奨レベルに入っている。
ちなみに、凸条幅tまで能率良く加熱するための通電周波数f3 を上記数式3にて求めてみると、f3 ≧158ρ/μt≧158×80/(1×0.65)=29920Hzである。これは、本発明の通電周波数f1 の下限値より桁違いに高く、IGBTの推奨レベルを超えている。
凸条12を移動加熱する弧状の周方向通電誘導子52の誘導作用部の寸法は、
全円弧長θ=80゜、 幅F=10mm、 対向間隔g0=5mm にした。
一方、基底周面11を一発加熱する鞍形の軸線方向通電誘導子51の誘導作用部の寸法は(図4(b)参照)、全長m0=1130mm、駆動端被せ量=80mm、従動端被せ量=50mm、誘導作用部幅F=15mmとし、上述の第3形態と同様の計算を行って、
D1=50φ g1=5mm
m1=580mm D2=35φ g2=12.5mm u2 =1050℃
m2=310mm D3=40φ(平均) g3=10.5mm u3 =1055℃
m3=240mm D4=45φ g4=9.0mm u4 =1049.6℃にした。
このようにして均等昇温のための選定や設定をした誘導加熱装置50を用いて凸条付軸状部材10の誘導加熱を実行した。
鞍形の軸線方向通電誘導子51による加熱条件を、通電周波数f1 =2400Hz、加熱電力P1=130kW、加熱時間=3分にした。
また、軸状部材10の軸部のうち対向間隔選定の基準位置である小径軸部14の基底周面11の温度を例えば放射温度計で測定しながら、その到達温度u2 が所望温度1050℃になるよう、高周波電源36から誘導子51への投入電力P1を増減調整した。
その結果、軸状部材10の軸部の基底周面11の到達温度は、加熱領域17の全長に亘って1050±10℃に収まり、均等に昇温した。
それから、弧状の周方向通電誘導子52による加熱条件を、通電周波数f1 =2400Hz、加熱電力P2=15〜45kW、移動速度=10mm/sにした。
また、軸状部材10の凸条12の温度を測定しながら、その到達温度が所望温度1050℃になるよう、高周波電源37から誘導子52への投入電力P2を増減調整した。
さらに、所望温度1050℃に到達した凸条12の環状領域の軸線方向幅を計測して、その幅と処理温度保持時間とから、移動速度を加減調整した。
その結果、軸状部材10の凸条12の到達温度も、加熱領域17の全長に亘って1050±10℃に収まり、均等に昇温した。
ちなみに、対比のため、軸線方向通電誘導子51が真っ直ぐの場合を示すと、その誘導作用部の寸法は、全長m0=1130mm、駆動端被せ量=80mm、従動端被せ量=50mm、誘導作用部幅F=15mmとし、更にD1=50φ、g1=5mmとすると、
m1=580mm D2=35φ g2=12.5mm u2 =929℃
m2=310mm D3=40φ(平均) g3=10mm u3 =969℃
m3=240mm D4=45φ g4=7.5mm u4 =1050℃であり、この場合は均等に昇温していない。
本発明の凸条付軸状部材の誘導加熱方法および装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図6は軸部異径の凸条付軸状部材10の平面図である。ここでも、図3の誘導加熱装置50を用い、鞍形の軸線方向通電誘導子51の誘導作用部を図4(b)のように折線状に形成して、対向間隔g2,g3,g4の調整も行った。
凸条付軸状部材10の物理特性は次の通りである(図6参照)。
材質 : SCM410
体積固有抵抗ρ=80(μΩ−cm)
比透磁率μ=1 (ρ,μは、磁気変態点を超える温度領域で)
一次皮膜層材質 : Ni自溶合金(JIS SNFi2)
一次皮膜厚さ : 0.4〜0.6mm
溶融処理温度 : 1050±25℃
寸法 : 全長 L0=1120mm 凸条幅t=5.0mm
駆動端部 L1=300mm D1=40φ
(最小径部)小径軸部 L2=420mm D2=27φ
(勾配部)中径軸部 L3=250mm D3=31.5φ(平均)
(従動端)大径軸部 L4=150mm D4=36φ
誘導子51,52の通電周波数f1 は、最小軸径のD2=27φから上記数式1にて求め、高周波電源36,37に設定した。
すなわち、f1 ≧310ρ/μD≧310×80/(1×2.7)=3401となるので、切りのよい通電周波数f1 =3600Hzを選定した。これは、IGBTの推奨レベルに入っている。
ちなみに、軸線方向通電のみで凸条幅tまで能率良く加熱するための通電周波数f3 を上記数式3にて求めてみると、f3 ≧158ρ/μt≧158×80/(1×0.5)=50560Hzであり、これはIGBTの推奨レベルを超えている。
凸条12を移動加熱する弧状の周方向通電誘導子52の誘導作用部の寸法は、
全円弧長θ=80゜、 幅F=10mm、 対向間隔g0=4mm にした。
一方、基底周面11を一発加熱する鞍形の軸線方向通電誘導子51の誘導作用部の寸法は(図4(b)参照)、全長m0=940mm、駆動端被せ量=70mm、従動端被せ量=50mm、誘導作用部幅F=15mmとし、上述の第3形態と同様の計算を行って、
D1=40φ g1=4mm
m1=490mm D2=27φ g2=10.5mm u2 =1050℃
m2=250mm D3=31.5φ(平均) g3=8.5mm u3 =1048℃
m3=200mm D4=36φ g4=7.0mm u4 =1040.7℃にした。
このようにして均等昇温のための選定や設定をした誘導加熱装置50を用いて凸条付軸状部材10の誘導加熱を実行した。
鞍形の軸線方向通電誘導子51による加熱条件を、通電周波数f1 =3600Hz、加熱電力P1=95kW、加熱時間=2分にしたところ、軸状部材10の軸部の基底周面11の到達温度は加熱領域17の全長に亘り1050±10℃に収まり均等に昇温した。
それから、弧状の周方向通電誘導子52による加熱条件を、通電周波数f1 =3600Hz、加熱電力P2=6〜20kW、移動速度=10mm/sにしたところ、軸状部材10の凸条12の到達温度も加熱領域17の全長に亘って1050±10℃に収まり均等に昇温した。
ここでも、対比のため、軸線方向通電誘導子51が真っ直ぐの場合を示すと、その誘導作用部の寸法は、全長m0=940mm、駆動端被せ量=70mm、従動端被せ量=50mm、誘導作用部幅F=15mmとし、更にD1=40φ、g1=4mmとすると、
m1=490mm D2=27φ g2=10.5mm u2 =970℃
m2=250mm D3=31.5φ(平均) g3=8.25mm u3 =989℃
m3=200mm D4=36φ g4=6.0mm u4 =1050℃であり、均等昇温は望めない。
ちなみに、駆動端部13の到達温度u1 も計算してみると、D1=40φ、g1=4mmの位置では、u1=αK/D=63158×0.688/40=1140℃となる。しかし、駆動端部13は、大部分が誘導子51から外れているので、それほど昇温しない。
[その他]
なお、上記実施形態では、軸状部材10を水平に支持していたが、軸状部材10の支持は、垂直でも、斜めでも、良い。
また、上記実施例では、周方向通電誘導子52の移動速度が一定であったが、可変でも良い。
本発明の概要について、(a)が軸部異径の凸条付軸状部材の平面図、(b)が周方向通電誘導子と軸線方向通電誘導子と凸条付軸状部材の平面図、(c)が凸条付軸状部材の中央部分の平面図、(d)がその一部の拡大図、(e)が凸条付軸状部材の側面図(端面図)、(f)がその一部の拡大図である。 本発明の一実施形態(第1形態)について、(a)が誘導加熱装置の斜視図、(b)が周方向通電誘導子と軸線方向通電誘導子と凸条付軸状部材の斜視図、(c)がそのA−A断面矢視図である。 本発明の他の実施形態(第2形態)について、(a)が誘導加熱装置の斜視図、(b)が周方向通電誘導子と軸線方向通電誘導子と凸条付軸状部材の斜視図、(c)がそのA−A断面矢視図である。 本発明の他の実施形態(第3形態)について、誘導子の誘導作用部と凸条付軸状部材の基底周面との対向間隔の設定手法を示し、(a)が凸条付軸状部材の軸部の平面図、(b)が軸線方向通電誘導子と凸条付軸状部材の軸部との平面図である。 本発明の実施例1について、凸条付軸状部材の平面図である。 本発明の実施例2について、凸条付軸状部材の平面図である。 誘導加熱対象の凸条付軸状部材について、(a)が軸径一定の凸条付軸状部材の平面図、(b)が軸部異径の凸条付軸状部材の平面図、(c)が大径軸部の拡大図、(d)が小径軸部の拡大図、(e)が凸条付軸状部材の平面図、(f)が移動加熱用の周方向通電誘導子と凸条付軸状部材の平面図、(g)が一発加熱用の軸線方向通電誘導子と凸条付軸状部材の平面図である。 周方向通電による従来技術について、(a)が凸条付軸状部材の中央部分の平面図、(b)がその一部の拡大図、(c)が凸条付軸状部材の側面図(端面図)、(d)がその一部の拡大図である。 軸線方向通電による従来技術について、(a)が凸条付軸状部材の中央部分の平面図、(b)がその一部の拡大図、(c)が凸条付軸状部材の側面図(端面図)、(d)がその一部の拡大図である。
符号の説明
10…軸状部材(凸条付軸状部材、スクリュー部材)、
11…基底周面(軸部表面)、12…凸条(ネジ山部)、13…駆動端部、
14…小径軸部(平行部)、15…中径軸部(勾配部、テーパ部)、
16…大径軸部(平行部)、17…加熱領域、
21…軸線方向通電誘導子(周方向磁束発生誘導子,第1誘導子)、
22…周方向通電誘導子、
30…誘導加熱装置、
32…周方向通電誘導子(軸線方向磁束発生誘導子,第2誘導子)、
33…従動端支持機構、34…駆動端支持機構、35…電動モータ(回転機構)、
36…軸線方向通電用高周波電源、37…周方向通電用高周波電源、
50…誘導加熱装置、
51…軸線方向通電誘導子(第1誘導子)、52…周方向通電誘導子(第2誘導子)、

Claims (7)

  1. 自身の軸線を横切る方位に沿って延びた凸条を自身の外周面に有する軸状部材に誘導子を近接配置し該誘導子に高周波通電することで前記軸状部材の表層部に誘導電流を生じさせて該軸状部材を誘導加熱する、凸条付軸状部材の誘導加熱方法において、前記誘導子として、前記軸状部材の加熱すべき領域の全長に亘り前記軸線に沿って配置され該軸線に沿った方向に通電される誘導作用部を有し、該軸状部材内に軸線と直交する面内に径路を取る磁束を生じさせる第1誘導子と、前記軸状部材の周方向に沿った方向に通電される誘導作用部を有し、該軸状部材内に前記第1誘導子による磁束と直交する前記軸線に沿った方向の磁束を生じさせる第2誘導子とを併せて配置し、前記軸状部材を軸心回転させながら該第1誘導子と第2誘導子に高周波通電して前記誘導加熱を行う、ことを特徴とする凸条付軸状部材の誘導加熱方法。
  2. 前記第2誘導子として、前記軸状部材の軸線方向の一部区間を誘導加熱できる誘導子を配備し、該誘導子を前記軸線方向に走行させながら該誘導子に高周波通電して、前記軸状部材をその加熱すべき領域の全長に亘って誘導加熱する、ことを特徴とする請求項1記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法。
  3. 前記第1誘導子の誘導作用部と、前記軸状部材にあって前記凸条の谷底を占める基底周面の対向間隔を、該基底周面の昇温が前記軸線方向に関して均等となるように設定して前記誘導加熱を行う、ことを特徴とする請求項1又は2記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法。
  4. 前記軸状部材をその磁気変態点を超える温度に昇温させるに際して、前記第2誘導子による、前記軸線に沿った方向の磁束によって前記軸状部材の周方向に前記誘導電流を生じさせる形式の誘導加熱に関する、通電周波数f1 の加熱能率本位の好適領域を公知知見に基づいて求める下記(1)式に該軸状部材の外径Dならびに磁気変態点を超える温度領域での体積固有抵抗ρ,比透磁率μの値を入れて、前記第2誘導子に係る磁気変態点超温度領域本位の好適通電周波数領域を求め、この周波数領域での高周波通電を前記第1誘導子にも前記第2誘導子にも適用する、ことを特徴とする請求項1乃至3記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法。
    Figure 2007119886
  5. 前記軸状部材にあって前記凸条の谷底を占める基底周面の昇温の調整を前記第1誘導子への投入電力を調整して行い、前記凸条の昇温の調整については、前記第2誘導子として前記軸状部材の軸線方向の短区間を誘導加熱できる誘導子を配備した上で、該誘導子への投入電力と該誘導子に係る前記軸線方向走行の速度との少なくとも一方を調整して行う、ことを特徴とする請求項2乃至4記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法。
  6. 前記誘導加熱を、前記軸状部材の表面に形成した金属系の一次被覆層に溶融処理を施すために行う、ことを特徴とする請求項1乃至5記載の凸条付軸状部材の誘導加熱方法。
  7. 外周面に凸条を有する軸状部材を支持し且つ軸心回転させる軸状部材支持回転装置と、この装置に支持された前記軸状部材の加熱すべき領域の全長に亘り前記軸状部材の軸線に沿って配備され該軸線に沿った方向に通電される誘導作用部を有する第1誘導子と、前記軸状部材の軸線方向の一部区間の区間長さに相当する幅を以て該一部区間の周方向に沿って配置され該周方向に沿った方向に通電される誘導作用部を有する第2誘導子と、該第2誘導子を前記軸状部材の軸線方向に走行させるための誘導子走行機構と、前記第1誘導子と第2誘導子の夫々に高周波通電を行うための2系統の高周波電源と、を備えて成る凸条付軸状部材の誘導加熱装置。
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