JP3985587B2 - 超音波加工装置及びこれに用いられる工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具を超音波振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置及びこれに用いられる工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
被加工物を加工する場合において、工具を超音波振動させてその振動を工具周辺に供給された砥粒に伝達し、被加工物に対して工具に倣った形状の溝や孔等を形成するという技術を用いることがある。この技術においてはホーンと称される超音波振動体を用い、このホーンと工具とをネジ締めなどで圧着させてから装置を動作させ、超音波振動がホーンを介して工具へと伝達されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の超音波加工装置では、ホーンと工具とを圧着させても、その圧着面が加工精度による誤差で完全な平坦面ではないことなどにより、その工具の外周部上に僅かな隙間ができてしまうことが避けられない。そして、このホーンと工具との隙間に砥粒が侵入すると、砥粒が超音波振動により圧着面を摩損し、隙間はさらに拡大されてしまう。ホーンと工具との密着性が悪いと、超音波振動がホーンから工具へとうまく伝達されないことから作業効率の低下を招き、さらには超音波振動が発振されなかったり、所望の振幅がでなかったり、工具が横ブレしてしまったりという問題が生じる。このように、従来技術ではホーンと工具との間に隙間が存在することにより、精度のよい加工を行うことが困難である。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、超音波振動が効率よく工具に伝わって精度のよい加工を行うことができる超音波加工装置を提供することである。
【0005】
本発明のもう1つの目的は、上記のような超音波加工装置に用いられる工具を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の超音波加工装置は、超音波振動体に対して圧着させられて取り付けられた工具を超音波振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置において、前記工具及び前記超音波振動体は、少なくとも両者の圧着前において、前記工具に設けられた超音波振動体取付面の外周部がその全周にわたって前記超音波振動体に設けられた工具取付面と接触し、且つ、前記外周部の内側にある内側部が前記工具取付面から離隔するように形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、少なくとも工具及び超音波振動体の圧着前において、工具の超音波振動体取付面の外周部がその全周にわたって超音波振動体の工具取付面と接触し、且つ、工具の外周部内側にある内側部が超音波振動体の工具取付面から離隔するように形成されているので、工具の外周部がその全周にわたって超音波振動体の工具取付面と確実に密着する。これにより、超音波加工にあたって砥粒が工具周辺に供給されたときに工具と超音波振動体との隙間に砥粒が侵入するのを抑制することができるので、工具と超音波振動体との隙間が拡大するのが最小限に抑えられる。したがって、超音波振動が効率よく工具に伝わり、精度のよい加工を行うことが可能となる。
【0008】
請求項2の超音波加工装置は、少なくとも前記工具と前記超音波振動体との圧着前において、前記超音波振動体に設けられた前記工具取付面が平坦部を有していると共に、前記工具の前記超音波振動体取付面の前記内側部が前記外周部に対して凹んだ凹部となっていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、内側が凹んだ工具の超音波振動体取付面と平坦な超音波振動体の工具取付面とを密着させることで請求項1と同様の効果を得ることができると共に、超音波振動体の工具取付面が平坦面であるので工具取付面の研磨を繰り返して行うことが可能である。
【0010】
請求項3の超音波加工装置は、前記工具の前記超音波振動体取付面の前記内側部を前記超音波振動体の前記平坦部に密着させることができるように前記工具と前記超音波振動体とを圧着させるための機構を有していることを特徴とする。
【0011】
上記構成によると、工具と超音波振動体との圧着前において工具の超音波振動体取付面の内側部は超音波振動体の平坦部から離隔されているが、加工作業前にこの内側部を密着させることで工具への超音波振動の伝達が良好に行われる。また、工具への超音波振動の伝達が良好に行われることで、加工精度がさらに向上する。
【0012】
請求項4の超音波加工装置は、前記工具及び前記超音波振動体の圧着前における前記工具の前記凹部の深さが前記工具の径の0.06%〜0.08%であることを特徴とする。
【0013】
上記構成によると、工具の凹部の深さが適切な値とされることで、工具と超音波振動体とをより確実に圧着させることができる。これにより工具と超音波振動体との隙間に砥粒が侵入するのをさらに抑制することができるため、超音波振動の工具への伝達がさらに効率よくなり、より高精度の加工を行うことができる。
【0014】
請求項5の超音波加工装置は、前記被加工物を設置する移動可能なテーブルに、前記超音波振動体の前記工具取付面を研磨するための研磨装置が設けられていることを特徴とする。
【0015】
上記構成によると、いわゆる機上研磨を行うことが可能になって工具取付面の平坦性を向上させることができるので工具と超音波振動体との密着性が増し、工具と超音波振動体との隙間に砥粒が侵入するのをさらに抑制できる。したがって、超音波振動の工具への伝達がさらに効率よくなり、より高精度の加工を行うことができる。
【0016】
請求項6の工具は、超音波振動体に対して圧着させられて取り付けられた工具を超音波振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置に用いられる工具において、全周にわたってほぼ同じ高さに形成された外周部と、前記外周部に対して凹んだ凹部となった中央部とを有する超音波振動体取付面が形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記構成の工具は、超音波振動体に設けられた工具取付面が平坦部を有している場合に用いて好適である。このような超音波振動体と共に用いることで、工具及び超音波振動体の圧着時において、当該工具の外周部がその全周にわたって超音波振動体に設けられた工具取付面と密着するため、工具と超音波振動体と隙間に砥粒が侵入するのを抑制できる。したがって、超音波振動が効率よく工具へ伝達され、精度のよい加工を行うことが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
〔装置全体の概略構成〕
本発明の一実施形態としての超音波加工装置の全体側面図が図1に、全体正面図が図2に、それぞれ示される。図1,図2に示すように、本実施形態に係る超音波加工装置1は、床上に設置される基台2の上にコラム3を立設し、このコラム3に穿孔ヘッド部4を支持する構成となっている。
【0020】
コラム3にはネジ軸5が上下方向に配置され、回転自在に支持されている。このネジ軸5に昇降体6が螺着されて、ネジ軸5と昇降体6とにより公知のボールネジ機構が構成されている。このネジ軸5には、コラム3上に設置されたモータ7のモータ軸が連結されている。この構成においてモータ7を正逆方向に回転駆動することで、昇降体6の上下位置を変更することができる。
【0021】
コラム3には更にリニアガイドが上下方向に配設されて(図略)、このリニアガイドに沿って上下変位可能に、連結体8が備えられている。この連結体8に昇降体6が連結されることで、連結体8(ひいては、この連結体8に備えられる穿孔ヘッド部4)を上下方向(Z方向)に移動させることができる。
【0022】
連結体8には穿孔ヘッド部4が上下摺動自在に支持される。穿孔ヘッド部4には穿孔を行うための工具9が取り付けられると共に、この工具9に超音波振動を与えるための機構が備えられている。
【0023】
基台2上には水平方向(XY方向)に移動可能な移動テーブル10が設置され、この移動テーブル10の上に、図2に示すように、昇降テーブル11、カメラ部41、研磨装置42の三者が並べて配置される。
【0024】
昇降テーブル11上面の工具9に対向し得る位置には、被加工物としてのワーク13が固定可能とされる。このワーク13としては種々のものが考えられるが、本実施形態は、インクジェットプリンタ等のインクジェットヘッドに圧電式アクチュエータとして使用される、圧電セラミック材料(PZT)を加工する場合を示している。
【0025】
装置全体を覆うように基台2上にはカバー43が設置されて、穿孔作業時に発生する切り粉や後述する砥粒液が周囲に飛散しないように配慮されている。装置の正面には開閉可能な両開き式の扉44(図1参照)が設けられ、ワーク13の交換作業などの必要に応じて扉44を開いてカバー43内部にアクセスできるようになっている。
【0026】
〔穿孔ヘッド部の構成〕
次いで、穿孔ヘッド部4の構成について、側面図である図3、正面図である図4、及び平面断面図である図5を主に参照しながら具体的に説明する。
【0027】
穿孔ヘッド部4は、連結体8に支持される基部フレーム14に、工具9を支持するための工具フレーム17を上下摺動自在に連結した構成となっている。基部フレーム14には支軸15が水平に架設され、この支軸15に、前後方向に細長いバランス体16の中央部が枢支されて揺動自在とされている。
【0028】
基部フレーム14上にはエアシリンダ18(図3,図4参照)が設置され、このシリンダロッド19が下方に延出して、バランス体16の一端に連結されている。そして、バランス体16のシリンダロッド19が連結された一端に、工具フレーム17が連結されている。基部フレーム14には変位センサ20が設けられ、工具フレーム17の基部フレーム14に対する相対変位を検出できるように構成されている。
【0029】
図3に示すように、工具フレーム17の下端には環状のホーン支持部21が軸受22を介して旋回可能に設けられ、このホーン支持部21にホーン23が固定される。ホーン23は上下方向に細長く形成され、その上部には超音波振動子24が固着されると共に、ホーン23の下端には平坦な工具取付面23aが形成され、この工具取付面23aに対して工具9が脱着可能に取り付けられる。
【0030】
また、基部フレーム14や工具フレーム17を覆うようにU字状又は箱状のカバー45が設けられて、内部の超音波振動子24等を保護できるようになっている。
【0031】
図5の平面図に示すように、ホーン支持部21には側方に向けて突起25が設けられて、この突起25の一側に、付勢体26が工具フレーム17に設けられている。付勢体26は付勢バネ28の弾発作用により、突起25を一側に向けて常時押動するように構成されている。一方、付勢体26に突起25を挟んで対向する位置に、ツマミを有する角度微調整ネジ27が工具フレーム17に取り付けられる。
【0032】
この構成において、角度微調整ネジ27のツマミを一方向に回転させると、その先端が突起25を付勢体26に抗して押すので、ホーン支持部21が図5の反時計回り方向に旋回される。一方、ツマミを逆方向に回転させた場合は、角度微調整ネジ27の先端が後退して、付勢体26が突起25を押すので、ホーン支持部21は図5の時計回り方向に旋回される。このように角度微調整ネジ27を適宜回転させることで、ホーン支持部21の角度(即ち、ホーン23に取り付けられた工具9の水平面内における向き)を微調整することができる。なお、ヘッド前面には固定ネジ36(図3,図4参照)が設けられており、前述の微調整作業が終了した後はこの固定ネジ36を回転させて締め付けることで、ホーン支持部21が不用意に旋回しないよう固定できるようになっている。
【0033】
〔ホーンへの工具取り付け〕
次いで、図6及び図7(a),(b)を参照し、工具9とホーン23との構成について説明する。
【0034】
図6に示すように、超音波振動体としてのホーン23は、工具9との接続部側が中央部よりも大径となった末広形状を有する長手部材であり、その上部は図3に示した超音波振動子24を固定するのに適した形状であると共に、その下端には工具9を取り付けるための平坦な工具取付面23aとネジ孔23bとが形成されている。また工具9の上部には、ネジ孔23bに嵌合するネジ部9dと、ホーン23の工具取付面23aに対向するホーン取付面9aとが形成されており、その下部にはワーク13(図1,図2参照)に対向する加工用の所定の形状を持つ硬い穿孔部材(例えばPCD)9eが取り付けられている。また、ホーン23のネジ孔23bを形成する内側面と工具9のネジ部9dとの両方は、互いに螺合可能な形状及びサイズに成形されている。
【0035】
図7(a)には、工具9のネジ部9dをホーン23下端のネジ孔23bに挿入し、ネジ締めにより両者を取り付けた状態で、且つ両者の圧着前の状態が示されている。この状態では、ホーン取付面9aの最外周部に同じ高さで環状に形成された外周部9bの内側に、外周部9bに対して距離dだけ下方に凹んだ凹部9cが形成されている。したがって、ネジ締めによる両者の圧着前においては、工具9のホーン取付面9aの外周部9bのみがその全周にわたってホーン23の工具取付面23aと接触し、外周部9bの内側にある凹部9cはホーン23の工具取付面23aと距離dだけ離隔された状態となる。
【0036】
なお、工具9及びホーン23の圧着前における凹部9cの外周部9bに対する深さdは工具9の径の0.06%〜0.08%が好ましく、例えば工具9の径が27mmであるとき深さdは15〜20μmの範囲とするのが好ましい。
【0037】
図7(a)の状態からさらに工具9のネジ部9dを上方に向けてネジ締めすることで、図7(b)の状態となる。このとき上述した工具9のホーン取付面9aにおける凹部9cとホーン23の平坦な工具取付面23aとは離隔されず、互いに密着している。このように、工具9におけるネジ部9dとホーン23におけるネジ孔23bとから構成されたネジ締め機構によって、工具9のホーン取付面9aとホーン23の平坦な工具取付面23aとが確実に密着させることが可能になっている。そしてこのように工具9とホーン23とを確実に密着させた状態において、ホーン23から工具9への超音波振動の伝達が保証されることとなる。
【0038】
なお図7(a),(b)において、工具9は加工部9eを省略して示されている。
【0039】
〔昇降テーブルの構成〕
次いで、図8の側面図を参照し、被加工物であるワーク13を固定するための昇降テーブル11の構成について説明する。
【0040】
この昇降テーブル11は、移動テーブル10の上に立設固定された基部フレーム29と、この基部フレーム29に図示せぬリニアガイドを介して昇降自在に設けられた昇降フレーム31とを有している。
【0041】
基部フレーム29にはリフトシリンダ30が取り付けられ、このシリンダロッド32が上方に延出して、その先端が昇降フレーム31に連結されている。
【0042】
リフトシリンダ30はエアシリンダ式に構成されており、圧縮空気を供給/ドレンすることで、昇降フレーム31の上下位置を変更することができる。基部フレーム29には変位センサ33が設置されて、昇降フレーム31の上下位置を測定できるようになっている。
【0043】
また、内部のリフトシリンダ30や変位センサ33を保護すべく、箱状のカバー46が昇降フレーム31に設けられている。
【0044】
昇降フレーム31の上部は水平に構成され、この上に、ワーク13を取り付けるためのワーク台12が設置される。また、ワーク台12の脇の位置において、昇降フレーム31上にクランプ機構34が設けられている。このクランプ機構34はエアシリンダで構成されており、ワーク台12上にワーク13を載置した状態でエアシリンダを作動させると、伸張するシリンダロッド35がワーク13を水平方向へ押圧し、ワーク台12に設けられたガイド部に突き当てた状態で固定するようになっている。
【0045】
また、この超音波加工装置1は図示せぬ砥粒液溜めを備えており、この砥粒液溜めには、砥粒(例えば、粒径4〜6μm程度のSiC)を分散させた液体が注入されている。砥粒液溜めに接続させて、パイプや可撓性のホースや管継手などからなる砥粒液循環経路が形成され、この経路が、昇降テーブル11近傍に設けた中継パイプ47(図2,図8参照)に接続されている。図8に示すように、この中継パイプ47には供給孔48が形成されると共に、更に該供給孔48の近傍位置において、案内棒49が下向きに突設されている。案内棒49は湾曲状に構成されて斜め方向に向きを変え、その先端が、昇降テーブル11上のワーク台12の直上方に位置している。
【0046】
この構成で、砥粒液溜めに設置された図略のポンプを駆動させると、砥粒液は中継パイプ47内に送られ、その一部が供給孔48を介して外部に漏出する。中継パイプ47の外面に漏れ出た砥粒液は案内棒49を伝ってワーク台12上に落下し、工具9による加工に用いられる。
【0047】
〔穿孔作業の様子の説明〕
以上に示した構成において、実際に工具9を超音波振動させてワーク13に穿孔する作業について説明する。
【0048】
まず、ワーク13をクランプ機構34によりワーク台12上に固定したのち、移動テーブル10をXY方向に移動させると共に、モータ7を駆動して穿孔ヘッド部4を下降させ、図8の鎖線で示すように、工具9がワーク13のすぐ上に僅かな隙間をおいて位置するようにする。
【0049】
そして、変位センサ33で昇降フレーム31の位置を常時測定しながら、リフトシリンダ30に圧縮空気を供給して、シリンダロッド32を徐々に伸張させて昇降フレーム31を上方向へ移動させ、ワーク13を上昇させる。そして、ワーク13の上面が工具9に接触した瞬間の昇降フレーム31の位置を、装置1を制御するコントローラの適宜の記憶手段にゼロ位置として記憶しておく。
【0050】
そして、穿孔ヘッド部4の超音波振動子24を駆動し、ホーン23を介して振幅数μm程度の上下方向の超音波振動を工具9に付与しながら、リフトシリンダ30に圧縮空気を供給してワーク13を上昇させ、工具9に対し押し付ける。また、砥粒液循環経路のポンプが駆動されることにより、中継パイプ47から案内棒49を経由して砥粒液が工具9の周辺に供給される。
【0051】
これにより、ワーク13は工具9との間にある砥粒によって削られてゆき、工具9に倣った形状の溝や孔等がワーク13の上面に形成される。
【0052】
なお、前述した穿孔ヘッド部4のエアシリンダ18(図3参照)は、工具フレーム17の変位を変位センサ20で測定しながら必要に応じて圧縮空気の給排を行って、工具フレーム17を支持する力を調節している。これにより、穿孔作業中にワーク13に対し過大な力で工具9が押し付けられることが防止されるので、本実施形態の圧電セラミックのような脆性材料のワーク13を加工する場合でも、ワーク13の破損が十分に回避される構成となっている。
【0053】
工具9によりワーク13に穿孔を行っている間も、昇降フレーム31の位置が変位センサ33(図8参照)によって常時測定されている。そして昇降フレーム31が、上記ゼロ位置から所定の距離だけ上昇した時点で、リフトシリンダ30への圧縮空気の供給が停止され、ワーク13の上昇が停止される。この結果、ワーク13には、正確に当該距離だけの深さの孔あるいは溝を形成することができる。
【0054】
〔カメラ部の構成〕
次いで、工具9の向きを調整するために設置されるカメラ部41について説明する。このカメラ部41は図2に示すように、昇降テーブル11の側方位置に設けられている。
【0055】
図9に示すように、カメラ部41は箱状のカバー37を備えており、このカバー37の内部にCCD式のビデオカメラ38が、そのレンズ部39を上に向けた状態で収められている。カバー37の上面には透明な蓋40が、レンズ部39に対応する位置に開閉可能に設けられる。
【0056】
この構成における工具9の向きの調整作業について説明する。移動テーブル10をXY方向に移動させると共に、モータ7を駆動して穿孔ヘッド部4を下降させ、図9の鎖線で示すように、カメラ38のレンズ部39の直上方に工具9が位置するようにすることで、工具9の向きをビデオカメラ38で撮影することができる。撮影された映像は、装置1の適宜位置(例えば、コラム3の側方位置)に設置したモニタに、リアルタイムに表示される。オペレータはこの映像を見ながら、前述の角度微調整ネジ27を回してホーン23の旋回角度を微調整し、工具9の向きが適正となるよう調整することができる。
【0057】
〔研磨装置の説明〕
次いで、ホーン23の工具取付面23aを研磨するための研磨装置42について説明する。本実施形態の超音波加工装置1では、穿孔作業が所定回数行われる毎に研磨装置42による研磨を行い、ホーン23の工具取付面23aを削って水平とするようにされている。
【0058】
図2に示すように、研磨装置42は正面視において昇降テーブル11を挟んでカメラ部41の反対側に設置されている。
【0059】
図10には、この研磨装置42の具体的な構成が示されている。研磨装置42は移動テーブル10上(なお、移動テーブル10は図2に示されているが、図10では図略とされている)に立設された筒状のフレーム50を備え、このフレーム50内に回転軸51を回転自在に軸支した構成となっている。この回転軸51の上端にはカップ型の砥石52が固着されている。回転軸51の側方にはモータ53が設置されており、該モータ53のモータ軸54が、回転軸51と、プーリ55・56及びベルト57を介して連結されている。
【0060】
次いで、この構成における研磨作業の様子について説明する。
【0061】
ホーン23から工具9を取り外した状態で、移動テーブル10を移動させ、更に、前述のモータ7を駆動して穿孔ヘッド部4を下降させる。そしてモータ53を駆動して砥石52を回転させると共に、ホーン23下面の工具取付面23aに対し砥石52の上面を接触させながら、移動テーブル10を水平に移動させることで、該工具取付面23aを研磨する。
【0062】
なお、穿孔ヘッド部4には加圧シリンダ58(図3,図4参照)が設置されており、このシリンダ58が、ホーン23の工具取付面23aを砥石52に押し付けるために用いられる。
【0063】
この研磨装置42の目的を説明する。
即ち、この超音波加工装置1では、ホーン23に工具9を取り付けて超音波振動させワーク13に対する穿孔作業を行う場合に、工具9の周辺に供給される前記砥粒がホーン23下面の工具取付面23aと工具9との間に侵入し、工具取付面23aが砥粒によって徐々に摩損されることが避けられない。この工具取付面23aの摩滅が進行すると、工具9をホーン23に対して十分密着させながら取り付けることができなくなり、超音波振動を工具9に効率良く伝達できないために作業効率の低下を招いてしまう。
そこで本実施形態の加工装置1では、穿孔作業が所定回数行われる毎に前記研磨装置42による研磨を行い、ホーン23の工具取付面23aを削って水平とすることで、常に工具9がホーン23に適正に密着して取り付けられるようにしているのである。
【0064】
以上に述べたように、本実施形態に係る超音波加工装置1では、工具9及びホーン23の圧着前において、工具9のホーン取付面9aの外周部9bがその全周にわたってホーン23の工具取付面23aと接触し、且つ、工具9の外周部9b内側にある凹部9cがホーン23の工具取付面23aから離隔するように形成されている。このように、工具9がその外周部9b全周にわたってホーン23の工具取付面23aと確実に密着することにより、外部から工具9とホーン23との間に侵入する隙間がなくなり、超音波加工にあたって砥粒が工具周辺に供給されたときに、砥粒の侵入を抑制することができる。つまり、工具9とホーン23との隙間に砥粒が侵入してその摩損により工具9とホーン23との隙間が拡大することを防止できるので、ホーン23からの超音波振動が効率よく工具9に伝わり、精度のよい加工を行うことが可能となる。
【0065】
また、ホーン23の工具取付面23aが平坦部を有していることから、当該工具取付面23aの研磨を繰り返して行うことが可能である。
【0066】
また、圧着前には図7(a)のように工具9の凹部9cとホーン23の工具取付面23aの平坦部とが離隔されており、工具9及びホーン23の両者は完全に密着していないが、ネジ締めによって、図7(b)に示すように工具9のホーン取付面9aの凹部9cをホーン23の工具取付面23aの平坦部に密着させ、両者を圧着させることができる。このように完全に両者の対向面を密着させることで、工具9への超音波振動の伝達を良好にしてより精度の高い加工が実現される。
【0067】
さらに、工具9及びホーン23の圧着前における凹部9cの外周部9bに対する深さdは工具9の径の0.06%〜0.08%が好ましいと上述している。このように工具9の凹部9cの深さを適切な値とすることで、工具9とホーン23との密着性がさらに向上する。
【0068】
また、本実施形態の超音波加工装置1には、被加工物であるワーク13を設置する移動可能な移動テーブル10にホーン23の工具取付面23aを研磨するための研磨装置42が設けられている。この研磨装置42により機上研磨を行うことが可能であるので、ホーン23の工具取付面23aの平坦性を向上させることができる。そしてこのようにホーン23の工具取付面23aの平坦性を向上させることでホーン23と工具9との密着性が増し、両者の隙間に砥粒が侵入するのをさらに抑制できる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、本実施形態ではホーン23の工具取付面23aが平坦部を有し且つ工具9のホーン取付面9aが凹部9cを有する構成となっているが、逆に、ホーン23の工具取付面23aが凹部を有し且つ工具9のホーン取付面9aが平坦部を有する構成としてよい。他にも、工具9のホーン取付面9aの外周部9bがその全周にわたってホーン23の工具取付面23aと接触し、且つ、工具9のホーン取付面9aの内側がホーン23の工具取付面23aから離隔するよう形成されていれば、様々な構成をとってよい。
【0070】
また、ホーン23の工具取付面23aは平坦部を持たず、凸部や歪んだ部分を有してもよく、この場合工具9のホーン取付面9aをそれに適した形状とする必要がある。従って、ホーン23の工具取付面23aに平坦部を形成し、工具9のホーン取付面9aを上述したように形成することが最も好ましい。
【0071】
また、本実施形態では工具9のネジ部9dとホーン23のネジ孔23bとによるネジ締めによって工具9の凹部9cをホーン23の工具取付面23aの平坦部に密着させ、工具9とホーン23とを圧着させることができるようになっているが、他の手段により両者を圧着させてよい。またさらに、上記ネジ締めのような両者を圧着させる機構を持たなくてもよい。しかし超音波振動の伝達効率を向上させる観点からは、工具9のホーン取付面9aの外周部9bのみではなく凹部9cもホーン23の工具取付面23aに密着させるようにして、両者を圧着させるのが好ましい。
【0072】
また、工具9及びホーン23の圧着前における凹部9cの深さdは工具9の径の0.06%〜0.08%が好ましいとしているが、これに限定されるものではない。
【0073】
また、本実施形態の超音波加工装置1には研磨装置42が設けられているが、研磨装置42を省略してもよい。
【0074】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように構成されるので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0075】
請求項1によると、超音波振動が効率よく工具に伝わり、精度のよい加工を行うことが可能となる。
【0076】
請求項2によると、請求項1と同様の効果を得ることができると共に、工具取付面の研磨を繰り返して行うことが可能である。
【0077】
請求項3によると、超音波振動の伝達が良好に行われることで、加工精度がさらに向上する。
【0078】
請求項4によると、工具と超音波振動体とをより確実に圧着させることで超音波振動の工具への伝達がさらに効率よくなり、より高精度の加工を行うことができる。
【0079】
請求項5によると、超音波振動体の工具取付面の平坦性を向上させることができるので工具と超音波振動体との密着性が増し、超音波振動の伝達効率がさらによくなって、より高精度の加工を行うことができる。
【0080】
請求項6による工具は超音波振動体に設けられた工具取付面が平坦部を有している場合に用いて好適であり、このような超音波振動体と共に用いることで精度のよい加工を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波加工装置の全体側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る超音波加工装置の全体正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る超音波加工装置の穿孔ヘッド部の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る超音波加工装置の穿孔ヘッド部の正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る超音波加工装置の穿孔ヘッド部の平面断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る超音波加工装置の工具及びホーンの取り付け前の状態を示す斜視部分断面図である。
【図7】(a)は工具及びホーンの圧着前の状態を示す概略横断面図である。(b)はネジ締めによる工具及びホーンの圧着時の状態を示す概略横断面図である。
【図8】被加工物であるワークを固定するための昇降テーブルの構成を示す側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る超音波加工装置のカメラ部を示す側面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る超音波加工装置の研磨装置を示す正面図である。
【符号の説明】
1 超音波加工装置
4 穿孔ヘッド部
9 工具
9a ホーン取付面(超音波振動体取付面)
9b 外周部
9c 凹部(内側部)
9d ネジ部
10 移動テーブル
13 ワーク(被加工物)
23 ホーン(超音波振動体)
23a 工具取付面
23b ネジ孔
24 超音波振動子
42 研磨装置
Claims (6)
- 超音波振動体に対して圧着させられて取り付けられた工具を超音波振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置において、
前記工具及び前記超音波振動体は、少なくとも両者の圧着前において、前記工具に設けられた超音波振動体取付面の外周部がその全周にわたって前記超音波振動体に設けられた工具取付面と接触し、且つ、前記外周部の内側にある内側部が前記工具取付面から離隔するように形成されていることを特徴とする超音波加工装置。 - 少なくとも前記工具と前記超音波振動体との圧着前において、前記超音波振動体に設けられた前記工具取付面が平坦部を有していると共に、前記工具の前記超音波振動体取付面の前記内側部が前記外周部に対して凹んだ凹部となっていることを特徴とする請求項1に記載の超音波加工装置。
- 前記工具の前記超音波振動体取付面の前記内側部を前記超音波振動体の前記平坦部に密着させることができるように前記工具と前記超音波振動体とを圧着させるための機構を有していることを特徴とする請求項2に記載の超音波加工装置。
- 前記工具及び前記超音波振動体の圧着前における前記工具の前記凹部の深さが前記工具の径の0.06%〜0.08%であることを特徴とする請求項2又は3に記載の超音波加工装置。
- 前記被加工物を設置する移動可能なテーブルに、前記超音波振動体の前記工具取付面を研磨するための研磨装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超音波加工装置。
- 超音波振動体に対して圧着させられて取り付けられた工具を超音波振動させ、この振動を砥粒に伝達することにより工具形状に倣った形状を被加工物に形成する超音波加工装置に用いられる工具において、
全周にわたってほぼ同じ高さに形成された外周部と、前記外周部に対して凹んだ凹部となった内側部とを有する超音波振動体取付面が形成されていることを特徴とする工具。
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