JP3985471B2 - 精錬処理後のスラグの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転炉で行う溶鉄の精錬処理、特に溶鉄の脱りん率が高く、しかもスロッピングが低減された溶鉄の精錬処理によって、路盤材として使用することが可能なスラグを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶鉄中の[C]濃度が低下した転炉吹錬末期には、溶鉄中に添加される酸素ガスにより溶鉄の酸化が急激に進行して、スラグ中の酸化鉄濃度(以下、便宜上Fe分で考え、T.Fe(合計Fe量)で表示する)が著しく増加する。その際、転炉吹錬前に添加された生石灰等の媒溶剤が、この酸化鉄と急速に反応して溶融スラグとなり、この塩基度(CaO/SiO2)の高い溶融スラグによって脱りん反応が進行する。
【0003】
ところが、吹錬末期の溶鉄中の[C]濃度が0.1質量%(以下、単に%で質量%を示す)以上と比較的高い、いわゆる中炭、高炭素鋼を溶製する場合、スラグ中の (T.Fe)濃度が高くなる前に吹錬が終了するため、媒溶剤として添加した生石灰には溶融しない部分が生じ、脱りん反応が阻害されるおそれがある。一方、この未溶融CaO、すなわち遊離CaO(以下、(f-CaO)ともいう)が高濃度で残留していると、(f-CaO)の水和反応(水とCaOとの反応)によるスラグ膨張の問題があるため、スラグを路盤材として使用できなくなる。
【0004】
そこで、蛍石等の溶融剤を加えて(f-CaO)分の溶融を促進することにより、良好な溶鉄の脱りん率が得られる技術が既に開示されている。
しかしながら、蛍石等の溶融剤を使用すると転炉用耐火物の侵食を助長しやすいという問題がある。また、最近懸念され始めたフッ素等のハロゲン物質による環境汚染の問題から、蛍石等を添加したスラグは路盤材として使用できなくなるおそれがある。
【0005】
特公平56−33442号公報には、この蛍石等を使用しない方法として、化学組成がCaO:60〜70%、Al23:12〜30%、Fe23:10〜25%である造滓剤を使用する方法が提案されている。この造滓剤は約1400℃で溶融するので、蛍石等を用いなくても吹錬末期までに十分にCaO分が溶融し、良好な溶鉄の脱りん率が得られ、スラグ中の(f-CaO)も著しく低減できるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特公平56−33442号公報に記載の方法には、以下の問題がある。
【0007】
(1)転炉精錬で使用するCaO分の全てを前記組成の造滓剤により供給するため、造滓剤添加量および生成スラグ量が多くなる。
(2)生成スラグ量を抑制するために、造滓剤中のCaO含有量を60〜70% としているが、CaO含有量がこの範囲まで高くなると、造滓剤自体の融点が1400℃以上と高くなり、(f-CaO)を溶融することは困難となる。
【0008】
(3)また、CaO含有量を多くすることにより、相対的に造滓剤中の構成成分であるFe23の含有量を低減させることが必要であり、造滓剤の融点がさらに高くなり、(f-CaO)を溶融することがさらに困難となる。
【0009】
(4)さらに、このような造滓剤を吹錬初期に一括添加すると、吹錬中にスロッピングが発生しやすくなり、操業安定性および鉄歩留が著しく悪化するという問題も起きやすくなる。
【0010】
(5)一方、造滓剤の反応効率向上のため、湿式造粒法により造粒後1000〜1300℃で造滓剤を焼成するため、焼成コストが高くなるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、溶鉄の脱りん率が高く、しかもスロッピングが低減された溶鉄の精錬処理によって、路盤材として使用することが可能なスラグを製造する方法、特に低コストな造滓剤を使用したスラグの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく種々検討を重ね、以下の知見を得た。
(a)溶鉄中には[Si]がある程度存在するため、転炉吹錬初期には溶鉄中の[Si]の酸化によってSiO2が優先的に生成される。このとき、吹錬前に添加していたCaOと生成SiO2とが選択的に反応して、塩基度(CaO/SiO2)が2以下の溶融スラグが生成される。
【0013】
(b)この低塩基度スラグを生成するのに必要なCaO分は、造滓剤中のCaO分のみにより供給する必要はなく、単に生石灰により供給することによっても、低塩基度スラグを十分に溶融生成させることができる。そして、引き続き自溶性の造滓剤でCaO分を溶鉄に補充することによって、十分なスラグ溶融性を確保でき、高い溶鉄の脱りん率が得られる。この結果、生成スラグ中の(f-CaO)濃度を極めて低くできるため、生成スラグを路盤材として有効利用できる。
【0014】
(c)しかし、低塩基度のスラグ生成時に溶けなかったCaO分は、吹錬中期以降まで未溶融の(f-CaO)としてスラグ中に残留するおそれがある。そこで、この未溶融の(f-CaO)を低レベルに保ち得る低融点の造滓剤について調査した結果、CaO:15〜50%、Al23:10〜50%、Fe23:10〜50%、TiO2:8%以下、SiO2:8%以下、MgO:15%以下の化学組成の造滓剤を精錬に使用することにより未溶融の(f-CaO)分を少なくできることを見出した。
【0015】
(d)この化学組成の造滓剤の原料として、所定範囲の平均粒径の原料を使用し、CaO原料として消石灰(Ca(OH)2)を適当量使用し、水を適当量添加して造粒後に所定日数養生することにより、大気中から水中に溶け込んだCO2がCa(OH)2と反応(Ca(OH)2+CO2=CaCO3+H2O)して塊成化し、造滓剤の圧壊強度を大きくすることができる。この造滓剤の圧壊強度は、焼成処理をしなくてもよいレベルであり、焼成処理を省略できるため、従来に比べて低コストの造滓剤を製造することができる。
【0016】
(e)前記組成の造滓剤を、溶鉄中の[C]濃度が1.0%以上であるときに分割添加することにより、吹錬初期に一括添加する場合に比べ、CaO分が溶融し易く、溶鉄の脱りん率が向上すること、および、吹錬中のスロッピングが緩和されて鉄歩留がさらに向上することを見出した。
【0017】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記のとおりである。
(1)転炉内に収容された溶鉄に生石灰および湿式造粒法または加圧成型法によって造粒された造滓剤を添加する溶鉄の精錬に際して、前記造滓剤が質量%でCaO:15〜50%、Al23:10〜50%、Fe23:10〜50%、TiO2:8%以下、SiO2:8%以下、MgO:15%以下を含有し、かつ前記溶鉄に添加する全CaO量に対する前記造滓剤中のCaOの割合が5〜50質量%とすることによって、精錬処理後のスラグ中の未溶融CaO濃度であるスラグ中(f-CaO)濃度を5質量%以下にすることを特徴とする精錬処理後のスラグの製造方法。
【0019】
( 2)前記造滓剤の添加は、前記生石灰を添加した後であって、かつ前記溶鉄中の[C]濃度が1.0%以上のときに分割して添加することを特徴とする上記(1)記載のスラグの製造方法
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、溶鉄2質量トン容量の試験転炉を使用した試験結果を基に決定された本発明の数値限定の理由について述べる。
【0021】
(1)溶鉄に添加する全CaO量に対する前記造滓剤中のCaOの割合が5〜50%であることについて:
試験方法:
成分濃度が[C]:約4.2%、[Si]:約0.4%、[P]:約0.080%であり、温度が約1350℃である溶鉄2質量トンを試験転炉に装入し、所定量の生石灰、造滓剤(CaO:35%、Al23:25%、Fe23:20%、TiO2:2%、SiO2:2%、MgO:7%)およびスケール20kg、スクラップ200kgを上置添加し、その後、上吹ランスから酸素を5.8m3(標準状態)/minで約19分間吹き付け、同時に底吹き羽口からArガスを0.6m3(標準状態)/min吹き込んで、全CaO量中の造滓剤中のCaO割合を変えた試験を行った。
【0022】
なお、上記造滓剤中のCaO含有量とは、造滓剤の原料として用いた石灰石および/または消石灰のCaO分で換算したものを意味する。以下に記載の造滓剤中のCaO含有量は、同じ意味である。
【0023】
▲2▼試験結果:
表1に試験結果を示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003985471
【0025】
なお、表中の路盤材としての適否を示す○はスラグ中の(f-CaO)濃度が5%以下であることを、×は同濃度が5%超であることを示す。また、スロッピングの程度を示す○は操業に支障が無いレベルであることを、×は操業に支障が有るレベルであることを示す。さらに、路盤材としての適否が○でありスロッピングの程度も○であるものは評価欄に良好(○)であると記載し、いずれかが×のものは不良(×)であると記載した。
【0026】
同表に示すように、造滓剤の添加割合が5%未満だと、転炉吹錬終了時のスラグ中の(f-CaO)濃度が5%超と高くなり、スラグを路盤材として使用できなくなる。一方、造滓剤の添加割合が50%を超えると、スラグ量が増加し、そのスラグ量の増加およびスラグ中のAl23濃度の上昇によって、操業に支障をきたすスロッピングが発生する。すなわち、スラグ中の(f-CaO)濃度およびスロッピングと造滓剤の添加割合とは相関が認められ、スロッピングを低減しスラグを路盤材として利用できるようにするためには、造滓剤の添加割合(全CaO量中の造滓剤中のCaO割合)を5〜50質量%とすることが必要である。
【0027】
(2)造滓剤中のCaO含有量が15〜50%であることについて:
▲1▼試験方法:
成分濃度が[C]:約4.2%、[Si]:約0.4%、[P]:約0.080%であり、温度が約1350℃である溶鉄2質量トンを試験転炉に装入し、必要なCaO分の内20%分を、造滓剤で添加し、上記試験(1)と同様の試験を行った。なお、この試験に使用した造滓剤の化学組成は、CaO:10〜55%、Al23:10〜45%、Fe23:10〜45%、TiO2:1〜2%、SiO2:1〜2%、MgO:5%であった。
【0028】
▲2▼試験結果:
表2に試験結果を示す。
【0029】
【表2】
Figure 0003985471
【0030】
なお、表中の評価の○は造滓剤量が60kg/溶鉄質量トン(t)以下で、かつスラグ中の (f-CaO)濃度指数が1.0以下のものであることを示し、×は造滓剤量が60kg/溶鉄質量トン(t)超および/またはスラグ中の (f-CaO)濃度指数が1.0超であることを示す。
【0031】
また、スラグ中の(f-CaO)濃度指数とは、路盤材として使用することが可能な限界濃度である同表中の試験番号5のスラグ中の(f-CaO)濃度を基準に指数化したものである。
【0032】
同表に示すように、CaO含有量が15%未満になると、CaOを溶融するための造滓剤量が著しく多くなり、その結果、スラグ生成量が過大になるため問題である。一方、CaO含有量が50%を超えると造滓剤の融点が急上昇し、CaOの溶融が困難となり、スラグ中の (f-CaO)濃度指数が急激に増加し、その結果、路盤材として使用することが困難となる。これらの知見から、造滓剤中のCaO含有量は15〜50%とする。好ましくは、25〜45%である。
【0033】
(3)造滓剤中のAl23含有量が10〜50%であることについて:
▲1▼試験方法:
成分濃度が[C]:約4.2%、[Si]:約0.4%、[P]:約0.080%であり、温度が約1350℃である溶鉄2質量トンを試験転炉に装入し、必要なCaO分の内20%分を、造滓剤で添加し、上記試験(1)と同様の試験を行った。なお、この試験に使用した造滓剤の化学組成は、Al23:5〜55%、CaO:20〜45%、Fe23:10〜45%、TiO2:1〜2%、SiO2:1〜2%、MgO:5%であった。
【0034】
▲2▼試験結果:
表3に試験結果を示す。
【0035】
【表3】
Figure 0003985471
【0036】
なお、スラグ中の(f-CaO)濃度指数とは、路盤材として使用することが可能な限界濃度である同表中の試験番号2のスラグ中の(f-CaO)濃度を基準に指数化したものである。
【0037】
また、スロッピングの程度を示す○は操業に支障が無いレベルであることを、×は操業に支障が有るレベルであることを示す。また、表中の評価の○はスラグ中の (f-CaO)濃度指数が1.0以下で、かつスロッピングの程度が○であることを示し、×はスラグ中の (f-CaO)濃度指数が1.0超および/またはスロッピングの程度が×であることを示す。
【0038】
同表に示すように、Al23含有量が10%未満になると造滓剤の融点が急上昇し、CaOの溶融が困難となり、スラグ中の (f-CaO)の濃度指数が急激に増加し、その結果、路盤材として使用することが困難となる。一方、Al23含有量が50%を超えると、スロッピングの問題が発生する。これらの知見から、造滓剤中のAl23含有量は10〜50%とする。好ましくは、20〜40%である。
【0039】
(4)造滓剤中のFe23含有量が10〜50%であることについて:
▲1▼試験方法:
成分濃度が[C]:約4.2%、[Si]:約0.4%、[P]:約0.080%であり、温度が約1350℃である溶鉄2質量トンを試験転炉に装入し、必要なCaO分の内20%分を、造滓剤で添加し、上記試験(1)と同様の試験を行った。なお、この試験に使用した造滓剤の化学組成は、Fe23:5〜55%、CaO:20〜45%、Al23:10〜45%、TiO2:1〜2%、SiO2:1〜2%、MgO:5%であった。
【0040】
▲2▼試験結果:
表4に試験結果を示す。
【0041】
【表4】
Figure 0003985471
【0042】
なお、スラグ中の(f-CaO)濃度指数とは、路盤材として使用することが可能な限界濃度である同表中の試験番号2のスラグ中の(f-CaO)濃度を基準に指数化したものである。
【0043】
また、スクラップ使用量の程度を示す○は転炉の生産性に支障が無いレベルであることを、×は転炉の生産性に支障が有るレベルであることを示す。
また、表中の評価の○はスラグ中の (f-CaO)濃度指数が1.0以下で、かつスクラップ使用量の程度が○であることを示し、×はスラグ中の (f-CaO)濃度指数が1.0超および/またはスクラップ使用量の程度が×であることを示す。
【0044】
同表に示すように、Fe23含有量が10%未満になると、造滓剤の融点が急上昇し、CaOの溶融が困難となり、スラグ中の(f-CaO)の濃度指数が急激に増加し路盤材として使用することが困難となる。一方、Fe23含有量が50%を超えると、造滓剤の冷却能が過大となるため転炉におけるスクラップ使用量が著しく低下するという問題が発生する。これらの知見から、造滓剤中のFe23含有量は10〜50%とする。好ましくは、15〜35%である。
【0045】
(5)造滓剤中のTiO2およびSiO2含有量がそれぞれ8%以下であることについて:
▲1▼試験方法:
成分濃度が[C]:約4.2%、[Si]:約0.4%、[P]:約0.080%であり、温度が約1350℃である溶鉄2質量トンを試験転炉に装入し、必要なCaO分の内20%分を、造滓剤で添加し、上記試験(1)と同様の試験を行った。なお、この試験に使用した造滓剤の化学組成は、TiO2:2〜10%、SiO2:2〜10%、CaO:20〜45%、Al23:10〜45%、Fe23:10〜45%、MgO:5%であった。
【0046】
▲2▼試験結果:
表5に試験結果を示す。
【0047】
【表5】
Figure 0003985471
【0048】
なお、脱りん指数とは、試験番号3の溶鉄の脱りん率を基準に指数化したものである。また、表中の評価の○は脱りん指数が1.0以上であることを示し、×は脱りん指数が1.0未満であることを示す。
【0049】
同表に示すように、TiO2およびSiO2含有量が8%を超えると、脱りん指数が急激に低下する。この知見から、造滓剤中のTiO2およびSiO2含有量は8%以下とする。好ましくは、5%以下である。
【0050】
(6)造滓剤中のMgO含有量が15%以下であることについて:
▲1▼試験方法:
成分濃度が[C]:約4.2%、[Si]:約0.4%、[P]:約0.080%であり、温度が約1350℃である溶鉄2質量トンを試験転炉に装入し、必要なCaO分の内20%分を、造滓剤で添加し、上記試験(1)と同様の試験を行った。なお、この試験に使用した造滓剤の化学組成は、MgO:2〜17%、CaO:20〜45%、Al23:10〜45%、Fe23:10〜45%、TiO2:1〜2%、SiO2:1〜2%であった。
【0051】
▲2▼試験結果:
表6に試験結果を示す。
【0052】
【表6】
Figure 0003985471
【0053】
なお、脱りん指数とは、試験番号3の溶鉄の脱りん率を基準に指数化したものである。また、表中の評価の○は脱りん指数が1.0以上であることを示し、×は脱りん指数が1.0未満であることを示す。
【0054】
同表に示すように、MgO含有量が15%を超えると、脱りん指数が急激に低下する。この知見から、造滓剤中のMgO含有量は15%以下とする。好ましくは、12%以下である。
【0055】
(7)造滓剤のCaO成分の原料として消石灰を3%以上使用することについて:
▲1▼試験方法:造滓剤原料の粒径は、全て平均粒径が0.150mmであり、造滓剤の化学組成をCaO:20〜45%、Al23:10〜45%、Fe23:10〜45%、TiO2:1〜2%、SiO2:1〜2%およびMgO:1〜2%にそれぞれ調整し、この組成を維持しながら、CaO成分として消石灰を0〜10%に調整した。このような組成に調整された造滓剤原料へ水5%を加えて湿式造粒法(ペレタイジング)によって造粒(約20mm径)し、造粒した造滓剤を7日間養生した。この養生された造滓剤の強度指標として圧壊強度(kg/個)を測定した。圧壊強度は、圧壊強度測定装置によって求めた。
【0056】
▲2▼試験結果:
表7に試験方法およびその試験結果を示す。
【0057】
【表7】
Figure 0003985471
【0058】
なお、表中に示す圧壊強度指数とは、試験転炉での造滓剤の使用試験の際に、歩留低下が生じなかった試験番号3の方法で得られた造滓剤の圧壊強度との比であり、圧壊強度指数が1.0以上のときに、良好な強度が得られたとして評価欄を○とし、1.0未満では強度が不十分であるとして評価欄を×とした。
【0059】
同表に示すように、消石灰を3%未満使用した造滓剤の圧壊強度は不十分であり、圧壊強度を大きくするには消石灰を3%以上使用する必要がある。好ましくは、5%以上である。
【0060】
(8)造滓剤原料中に水を3〜15%添加することについて:
▲1▼試験方法:造滓剤原料の粒径は、全て平均粒径が0.150mmであり、造滓剤の化学組成をCaO:20〜45%、Al23:10〜45%、Fe23:10〜45%、TiO2:1〜2%、SiO2:1〜2%およびMgO:5%にそれぞれ調整し、この組成を維持しながら、CaO成分として消石灰を5%に調整した。このような組成に調整された造滓剤原料に水を0〜20%添加して湿式造粒法(ペレタイジング)によって造粒(約20mm径)し、造粒した造滓剤を7日間養生した。この養生された造滓剤の強度指標として圧壊強度(kg/個)を測定した。
【0061】
▲2▼試験結果:
表8に試験方法およびその試験結果を示す。
【0062】
【表8】
Figure 0003985471
【0063】
なお、表中に示す圧壊強度指数とは、試験転炉での造滓剤の使用試験の際に、歩留低下が生じなかった前記表7の試験番号3の方法で得られた造滓剤の圧壊強度との比であり、圧壊強度指数が1.0以上のときに、良好な強度が得られたとして評価欄を○とし、1.0未満では強度が不十分であるとして評価欄を×とした。
【0064】
同表に示すように、造滓剤原料に水を3〜15%添加すると、圧壊強度は良好となる。好ましくは、5〜10%である。
(9)造滓剤原料の造粒後の養生日数について:
▲1▼試験方法:造滓剤原料の粒径は、全て平均粒径が0.150mmであり、造滓剤の化学組成をCaO:20〜45%、Al23:10〜45%、Fe23:10〜45%、TiO2:1〜2%、SiO2:1〜2%およびMgO:5%にそれぞれ調整し、この組成を維持しながら、CaO成分として消石灰を5%に調整した。このような組成に調整された造滓剤原料へ水を5%加えて湿式造粒法(ペレタイジング)によって造粒(約20mm径)し、造粒した造滓剤を0〜25日間養生した。この養生された造滓剤の強度指標として圧壊強度(kg/個)を測定した。
【0065】
▲2▼試験結果:
表9に試験方法およびその試験結果を示す。
【0066】
【表9】
Figure 0003985471
【0067】
なお、表中に示す圧壊強度指数とは、試験転炉での造滓剤の使用試験の際に、歩留低下が生じなかった前記表7の試験番号3の方法で得られた造滓剤の圧壊強度との比であり、圧壊強度指数が1.0以上のときに、良好な強度が得られたとして評価欄を○とし、1.0未満では強度が不十分であるとして評価欄を×とした。
【0068】
同表に示すように、造滓剤造粒後の養生日数が2日以上であると、造滓剤の圧壊強度は良好となる。好ましくは、3日以上である。
(10)造滓剤原料として、平均粒径0.005〜0.5mmの原料を使用することについて:
▲1▼試験方法:造滓剤原料の粒径は、平均粒径が0.004〜1.000mmであり、造滓剤の化学組成をCaO:20〜45%、Al23:10〜45%、Fe23:10〜45%、TiO2:1〜2%、SiO2:1〜2%およびMgO:5%にそれぞれ調整し、この組成を維持しながら、CaO成分として消石灰を5%に調整した。このような組成に調整された造滓剤原料へ水を5%加えて湿式造粒法(ペレタイジング)によって造粒(約20mm径)し、造粒した造滓剤を7日間養生した。この養生された造滓剤の強度指標として圧壊強度(kg/個)を測定した。
【0069】
▲2▼試験結果:
表10に試験方法およびその試験結果を示す。
【0070】
【表10】
Figure 0003985471
【0071】
なお、表中に示す圧壊強度指数とは、試験転炉での造滓剤の使用試験の際に、歩留低下が生じなかった前記表7の試験番号3の方法で得られた造滓剤の圧壊強度との比であり、圧壊強度指数が1.0以上のときに、良好な強度が得られたとして評価欄を○とし、1.0未満では強度が不十分であるとして評価欄を×とした。
【0072】
同表に示すように、平均粒径が0.005〜0.5mmであると、造滓剤の圧壊強度は良好となる。好ましくは、0.01〜0.1mmである。
なお、原料粉の平均粒径が0.005mm未満になると、大気の流れで簡単に粉が飛散してしまい、造粒作業の効率が著しく悪化したため、評価欄を×とした。
【0073】
(11)造滓剤の造粒法は、湿式造粒法または加圧成型法が好ましい。湿式造粒法としては、ペレタイジングが好ましい。加圧成型法としては、ブリケッティングが好ましい。
【0074】
また、造滓剤の原料には、CaO源として消石灰の他に生石灰および/または石灰石を使用でき、Al23源としてボーキサイト、ダイアスポア、赤泥、バン土頁岩、精製アルミナ、造塊滓のうち一種以上を用いるのが望ましい。
【0075】
(12)造滓剤の必要量を溶鉄中の[C]濃度が1.0%以上のときに分割して添加することについて:
造滓剤を転炉吹錬の初期に一括添加すると、吹錬後のスラグ中の(f-CaO)濃度が増加するおそれがある。その理由は、吹錬初期に溶鉄中の[Si]が酸化されて生成するSiO2とCaOとが反応して、低塩基度(CaO/SiO2≦約2)スラグを生成するのであるが、造滓剤を吹錬初期に一括添加すると溶融性の良好な造滓剤と生成SiO2が反応する割合が高くなり、別添加した生石灰が未溶融のまま残留するおそれがあるからである。
【0076】
また、造滓剤を吹錬初期に一括添加すると、造滓剤の融点付近(1300〜1400℃)で造滓剤が一斉に溶融スラグ化するため、スロッピングが発生するおそれがある。そこで、造滓剤を吹錬中に2回以上に分割添加することが望ましい。具体的には、特に制限されないが等量ずつ2〜3回に分けて添加する。添加の間隔は先に添加したものが十分スラグ化してから次の添加を行うことが望ましい。造滓剤を吹錬中に2回以上に分割添加することにより、たとえスロッピングが発生してもその程度を軽減でき、吹錬初期に添加した生石灰の溶融性を向上でき、吹錬後のスラグ中の(f-CaO)濃度が低減される。
【0077】
一方、造滓剤の添加は、溶鉄中の[C]濃度が1.0%以上であるときに終了することが望ましい。溶鉄中の[C]濃度が1.0%未満になってから添加すると、造滓剤を溶融するための時間が短くなり、前記生石灰を溶融するのが困難となるおそれがあるからである。
【0078】
また、スクラップは注銑前に炉内へ装入し、スケールは吹錬末期の溶鉄温度が所定の値になるように、吹錬前もしくは吹錬中に「冷材として」上置き添加することが望ましい。
【0079】
【実施例】
(実施例1)
成分濃度が[C]:約4.2%、[Si]:約0.4%、[P]:約0.080%であり、温度が約1350℃である溶鉄2質量トンを試験転炉に装入し、所定量の生石灰、造滓剤(CaO:35%、Al23:25%、Fe23:20%、TiO2:2%、SiO2:2%、MgO:7%)、スケールを上置き添加した。また、クラップ200kgは注銑前に炉内へ装入した。その後、上吹ランスから酸素を5.8m3(標準状態)/minで約19分間吹き付け、同時に底吹き羽口からArガスを0.6m3(標準状態)/min吹き込んだ。
【0080】
また、吹錬後の溶鉄の成分目標濃度は、[C]約0.3%、[P]約0.020%スラグ中の(f-CaO)の目標濃度は、5%以下とした。
表11に試験結果を示す。
【0081】
【表11】
Figure 0003985471
【0082】
なお、表中の路盤材としての適否を示す◎はスラグ中の(f-CaO)濃度が3%以下であることを、○は3%超5%以下であることを、×は同濃度が5%超であることを示す。また、スロッピングの程度を示す○はスロッピングが殆ど認められず操業に支障が無いレベルであることを、△は若干スロッピングが認められるが操業に支障が無いレベルであることを、×は操業に支障が有るレベルであることを示す。
【0083】
(比較例1)
CaOの溶融スラグ化が不十分であったため、溶鉄中の[P]濃度は0.040%と目標値に到達しなかった。また、生成スラグ中の (f-CaO)濃度が10%と目標値より大幅に高くなり、スラグを路盤材として利用することができなかった。
【0084】
(比較例2)
添加した造滓剤中のCaO分の割合が全CaO添加量の8%と低かったため、CaOの溶融スラグ化が不十分となり、溶鉄中の[P]濃度は0.030%と高く目標値に到達しなかった。 また、生成したスラグ中の(f-CaO)濃度は7%と目標値よりやや高くなり、スラグを路盤材として利用することができなかった。一方、若干スロッピングが認められた。
【0085】
(本発明例1)
造滓剤を分割添加した時期が遅かった(溶鉄中の[C]濃度:0.8%)ためCaO分の溶融スラグ化がやや遅れ、溶鉄中の[P]濃度は0.020%と目標値ギリギリであった。
【0086】
また、生成したスラグの(f-CaO)濃度は5%と目標値ギリギリであったが、生成スラグを路盤材として利用することができた。一方、造滓剤を分割添加したため、スロッピングは操業に支障が無いレベルであった。
【0087】
(本発明例2)
造滓剤を吹錬初期に一括添加したためCaOの溶融スラグ化が十分に進行し、吹錬後、溶鉄中の [P]濃度は0.018%と目標値に到達した。また、生成したスラグの(f-CaO)濃度は4%であり、生成スラグを路盤材として利用することができた。一方、造滓剤を一括添加したため吹錬前半に若干スロッピング傾向ではあったが、操業は可能であった。
【0088】
(本発明例3)
造滓剤を分割添加(3回)し終わった時の溶鉄中[C]濃度が1.5%と高かったため、CaOの溶融スラグ化が十分に進行し、溶鉄中の [P]濃度は0.017%と目標値に達した。また、生成したスラグ中(f-CaO)濃度は2%と目標値に達し、生成スラグを路盤材として利用することができた。一方、吹錬中に造滓剤を分割添加(3回)したことでCaOの溶融スラグ化が徐々に進行したため、吹錬中にスロッピングはほとんど生じなかった。
【0089】
(本発明例4)
造滓剤を分割添加した時の溶鉄中[C]濃度が1.0%と比較的高かったため、CaOの溶融スラグ化が進行し、溶鉄中の [P]濃度は0.018%と目標値に達した。また、生成したスラグの(f-CaO)濃度は3%と目標値に到達し、生成スラグを路盤材として利用することができた。一方、造滓剤を分割添加したため、吹錬中スロッピングは生じなかった。
【0090】
(実施例2)
表12に試験方法およびその試験結果を示す。
【0091】
【表12】
Figure 0003985471
【0092】
表中に示す、造粒方法である湿式造粒法としてはペレタイジングを、加圧成型法としては、ブリケッティングを使用した。圧壊強度は専用の測定装置によって求めた。
【0093】
また、同表に示す従来例は、造粒後に1200℃で焼成した例である。
表12に示すように、造滓剤の組成がCaO:15〜50%、Al23:10〜50%、Fe23:10〜50%、TiO2:8%以下、SiO2:8%以下、MgO:15%以下であり、かつ原料粒径が0.005〜0.5mm、造滓剤原料中の消石灰含有量が3%以上、造滓剤原料中の水分含有量が3〜15%である造滓剤原料を造粒し、養生日数が2日以上である本発明例1、2は得られた造滓剤の圧壊強度が転炉使用に際し実用上問題とならない30kg/個以上の値が得られた。一方、上記条件を満足しない比較例1〜4は圧壊強度が30kg/個未満と小さかった。
【0094】
【発明の効果】
本発明のスラグの製造方法により、溶鉄の脱りん率が高く、しかもスロッピングが低減された精錬処理によって、路盤材として使用することが可能なスラグを得ることができる
【0095】
また、本発明により、圧壊強度が大きな造滓剤を製造することができる。

Claims (2)

  1. 転炉内に収容された溶鉄に生石灰および湿式造粒法または加圧成型法によって造粒された造滓剤を添加する溶鉄の精錬に際して
    前記造滓剤が質量%でCaO:15〜50%、Al23:10〜50%、Fe23:10〜50%、TiO2:8%以下、SiO2:8%以下、MgO:15%以下を含有し、
    かつ前記溶鉄に添加する全CaO量に対する前記造滓剤中のCaOの割合が5〜50質量%とすることによって、
    精錬処理後のスラグ中の未溶融CaO濃度であるスラグ中(f-CaO)濃度を5質量%以下にすることを特徴とする、
    精錬処理後のスラグの製造方法。
  2. 前記造滓剤の添加は、前記生石灰を添加した後であって、かつ前記溶鉄中の[C]濃度が1.0%以上のときに分割して添加することを特徴とする請求項1記載のスラグの製造方法。
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