JP3985293B2 - ブロック共重合体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベール成形性に優れ、かつ、耐衝撃性樹脂の弾性高分子成分として使用した場合に、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を与えることができる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体及びその製造方法に関する。また、本発明は、該芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を有効成分とする樹脂用改質剤、それを含む樹脂組成物、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)やABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)などの耐衝撃性ポリ芳香族ビニル系樹脂は、一般に、ポリ芳香族ビニル系樹脂に、共役ジエン共重合体などの弾性高分子をブレンドまたはグラフトして、耐衝撃性を改善した高分子アロイである。この高分子アロイは、それ自体では硬質で脆いポリ芳香族ビニル系樹脂のマトリックス中に、弾性高分子が微細に分散した構造を有しており、硬質でかつ耐衝撃性に優れている。
【0003】
従来より、弾性高分子として、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を用いた耐衝撃性ポリ芳香族ビニル系樹脂が知られている。この耐衝撃性ポリ芳香族ビニル系樹脂は、一般に、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の存在下に、芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体とそれと共重合可能な他の単量体との混合物をラジカル重合することにより製造されている。重合方法としては、塊状重合、溶液重合、塊状懸濁重合などが採用されている。
近年、耐衝撃性ポリ芳香族ビニル系樹脂は、テレビジョンやエアコンディショナーなどの電気製品のハウジング材料としての用途が広がっている。これらのハウジング材料においては、大型化、軽量化の進展に伴って、薄肉成形性の要求が高まり、耐衝撃性ポリ芳香族ビニル系樹脂に対する耐衝撃性の一層の改善が望まれている。
【0004】
従来、耐衝撃性ポリ芳香族ビニル系樹脂の耐衝撃性を改善するために、幾つかの提案がなされている。例えば、特開平2−185509号公報には、共役ジエン結合単位のビニル結合割合の低い芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を弾性高分子成分として用いる方法が開示されている。しかしながら、この方法では、耐衝撃性の改善は未だ充分でない。また、この芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体は、生産時のベール成形性に劣るという問題点を有している。ベールとは、本来、生ゴムをシート状にして乾燥し、これを重ねてプレスして約50cm角の立方体にして、外側はお互いにくっつき合わないように粉付けがされているものをいい、天然ゴムでは古くから使用されている製品形態である。合成ゴムにおいても、重合工程の後、得られた合成ゴムを圧縮成形して加圧成形体とすることが多い。この加圧成形体は、堅固に成形されており、取り扱い時に容易に形状が崩れないことが必要である。ベール成形性に劣る合成ゴムの場合は、圧縮成形により加圧成形体を得ることができないか、あるいは加圧成形体の表面を手で触るとゴムがバラバラになってしまったり、手でほぐすと容易に形状が崩れてしまう。したがって、生産性、製品形態、取り扱い性などの観点から、合成ゴムには、ベール成形性に優れていることが要求されている。
また、耐衝撃性を改善するために、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の分子量を高める方法が知られている。しかし、この方法で得られた芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体は、生産時のベール成形性に劣るという問題点を有している。
【0005】
特開昭64−74209号公報には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合を25〜50モル%と高くした芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を、弾性高分子成分として使用する方法が開示されている。同公報には、ブロック芳香族ビニル部(A)のピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合を高めるために、テトラヒドロンフランなどの極性化合物の存在下に、n−BuLiを開始剤として、スチレン/ブタジエン=85/305(g/g)のモノマー混合物を重合した例が示されている。しかしながら、この方法で得られるスチレン−ブタジエンブロック共重合体は、極性化合物の存在下で重合しているため、ブタジエン結合単位のビニル結合割合が高くなり、耐衝撃性の改良効果が充分でないという問題点を有している。一方、同公報の製造方法においては、テトラヒドロフランなどの極性化合物を添加しないと、ブロックスチレン部のピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の割合が減少し、得られるブロック共重合体のベール成形性が劣悪となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ベール成形性に優れ、かつ、樹脂に対する耐衝撃性の改善効果にも充分に優れる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を提供することにある。
また、本発明の目的は、共役ジエン結合単位のビニル結合割合を高めることなく、GPCで測定したブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合を高めた、ベール成形性に優れ、かつ、樹脂に対する耐衝撃性の改善効果にも充分に優れる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ベール成形性に優れ、かつ、樹脂に対する耐衝撃性の改善効果にも充分に優れる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を有効成分とする樹脂改質剤、それを含む樹脂組成物、及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、(1)特定量の芳香族ビニル結合単位の含有量を有し、(2)GPCにより測定したブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)は特定の範囲にあり、かつ、(3)ピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の割合が55〜70モル%で、(4)共役ジエン結合単位のビニル結合割合が13%以下、そして、(5)ブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)が特定の範囲にある芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体により、前記目的を達成できることを見いだした。本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体は、ベール成形性に優れると共に、ポリビニル芳香族系樹脂等の熱可塑性樹脂に対する耐衝撃性付与効果にも充分に優れるものである。
【0008】
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体は、炭化水素系溶媒中、有機活性金属化合物を開始剤として用いて、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とを共重合する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法において、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とのモノマー混合物を逐次添加重合する工程を設けることにより、製造することができる。
また、ゴム成分の存在下で、芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体とそれと共重合可能な他の単量体との混合物をラジカル重合する樹脂組成物の製造方法において、ゴム成分として、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有するゴム成分を使用することにより、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を好適に製造することができる。
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、以下の各発明が提供される。
1.芳香族ビニル結合単位と共役ジエン結合単位とからなり、少なくともブロック芳香族ビニル部を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体において、
(1)ブロック共重合体中の芳香族ビニル結合単位の含有割合が30〜50重量%であり、
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)が5,000以上80,000未満の範囲内であり、
(3)該ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合が、ブロック芳香族ビニル部(A)全量の55〜70モル%の範囲内であり、
(4)共役ジエン結合単位のビニル結合割合が13%以下であり、かつ、
(5)GPCによって測定したブロック共重合体の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(Mp)が100,000〜600,000の範囲内であることを特徴とする芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体。
【0010】
2.炭化水素系溶媒中、有機活性金属化合物を開始剤として用いて、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とを共重合する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法において、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とのモノマー混合物を逐次添加重合する工程を含むことを特徴とする前記の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法。
3.モノマー混合物の逐次添加速度が、逐次添加終了時の該モノマー混合物の転化率が20重量%以上となる速度である前記の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法
.前記の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を有効成分とする樹脂用改質剤。
.樹脂成分とゴム成分とを含有する樹脂組成物において、ゴム成分が、前記の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有するゴム成分であることを特徴とする樹脂組成物。
.ゴム成分の存在下で、芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体とそれと共重合可能な他の単量体との混合物をラジカル重合する樹脂組成物の製造方法において、ゴム成分として、前記の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有するゴム成分を使用することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体は、芳香族ビニル結合単位と共役ジエン結合単位とからなり、少なくともブロック芳香族ビニル部を有するものである。
芳香族ビニル単量体としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン等を挙げることができる。これらの中でも、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
共役ジエン単量体としては、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(すなわちイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも1,3−ブタジエンと2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の芳香族ビニル結合単位と共役ジエン結合単位との割合は、芳香族ビニル結合単位が、30〜50重量%の範囲であり、共役ジエン結合単位が、50〜70重量%の範囲である。芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の芳香族ビニル結合単位及び共役ジエン結合単位の割合がこの範囲にあるときに、耐衝撃性の改善効果やベール成形性が高度にバランスされ、さらに、樹脂に対して透明性や光沢性を殆ど低下させないので、これらの特性が特に要求される用途においても好適である。
【0014】
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体は、ブロック芳香族ビニル部(すなわち、芳香族ビニル重合体ブロック)(A)を有する。芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中のブロック芳香族ビニル部(A)の割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、全芳香族ビニル結合単位量の50〜85重量%の範囲である。芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中のブロック芳香族ビニル部(A)の割合がこの範囲内であるときに、ベール成形性に優れ、かつ、光沢性や透明性を要求される分野での応用にも好適である。
【0015】
本発明において、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中のブロック芳香族ビニル部(A)量は、常法に従って測定することができる。具体的には、L.M.Kolthoff,et al., J.Polym.Sci.,1,429(1948)に記載されているオスミウム酸分解法に従って、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を、触媒量のオスミウム酸を用い、tert−ブチルハイドロパーオキサイドで酸化分解した後、平均孔径5.0μmのガラスフィルターで濾別されるものとして測定される。
【0016】
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体のブロック芳香族ビニル部(A)部分の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)は、上記で濾別されるブロック芳香族ビニル部(A)を、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の値として、5,000以上、80,000未満の範囲である。ブロック芳香族ビニル部(A)のピークトップ分子量(A−Mp)がこの範囲であるときに、ベール成形性や耐衝撃性の改善効果が高度にバランスされ、また、光沢性や透明性を要求される分野での応用にも好適である。
【0017】
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中のブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合は、ブロック芳香族ビニル部(A)全量の55〜70モル%の範囲である。ブロック芳香族ビニル部(A)のピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合が、過度に少ないとベール成形性に劣り、逆に、過度に多いものは製造が困難である。
【0018】
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の共役ジエン結合単位のビニル結合(1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合)割合は、共役ジエン結合単位全量の13%以下である。芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の共役ジエン結合単位のビニル結合割合が過度に大きいと、耐衝撃性の改善効果に劣り好ましくない。共役ジエン結合単位のビニル結合以外の残部は、1,4−結合であり、その中のシス−1,4−結合及びトランス−1,4−結合の割合は、使用目的に応じて適宜選択される。
【0019】
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体のGPC分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(Mp)は、GPCにより測定されるポリスチレン換算の値で100,000〜600,000の範囲である。芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)が過度に小さいと耐衝撃性の改善効果に劣り、逆に、過度に大きいとブロック共重合体の溶液粘度が上昇し、ブロック共重合体の製造プロセス上問題となる。
【0020】
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の分子量分布は、格別な制限はないが、GPCでポリスチレン換算値として測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下であるときに、耐衝撃性の改善効果が一層高く好適である。
【0021】
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法は、格別限定されるものではないが、例えば、炭化水素系溶媒中、有機活性金属化合物を開始剤として用いて、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とを共重合する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法において、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とのモノマー混合物を逐次添加重合する工程を設ける方法が好ましい。
炭化水素系溶媒としては、格別な制限はなく、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;などが用いられる。これらの炭化水素系溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
有機活性金属化合物としては、例えば、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物などのアニオン重合可能な有機活性金属化合物が挙げられる。これらの中でも、重合反応性、経済性などの観点から、有機アルカリ金属化合物が特に好ましい。
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどのモノ有機リチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレンなどが挙げられる。これらの中でも、有機リチウム化合物が好ましく、モノ有機リチウム化合物が特に好ましい。
【0023】
有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、n−ブチルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。
【0024】
有機ランタノイド系列希土類金属化合物としては、例えば、特公昭63−64444号公報に記載されているようなバーサチック酸ネオジウム/トリエチルアルミニウムハイドライド/エチルアルミニウムセスキクロライドからなる複合触媒などが挙げられる。
これらの有機活性金属化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。有機活性金属化合物の使用量は、要求される生成重合体の分子量によって適宜選択され、全単量体100g当たり、通常0.01〜20ミリモル、好ましくは0.05〜15ミリモル、より好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲である。
【0025】
芳香族ビニル単量体や共役ジエン単量体は、特に制限はなく、通常の重合反応で用いられるものが使用されるが、開始剤である有機活性金属化合物に対する阻害活性の少ないものを用いると、分子量分布(Mw/Mn)の狭い芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体が得られるので好適である。単量体(芳香族ビニル及び共役ジエン)の有機活性金属化合物に対する阻害活性は、通常5×10-3モル/kg以下、好ましくは1×10-3モル/kg以下、より好ましくは5×10-4モル/kg以下である。
【0026】
使用する単量体中の芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体の割合は、前記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の各結合単位の割合になるように適宜選択される。より具体的には、[芳香族ビニル]:[共役ジエン](重量比)で、通常5:95〜60:40、好ましくは15:85〜55:45、より好ましくは30:70〜50:50の範囲である。芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体の割合がこの範囲内にあるときに、ベール成形性や耐衝撃性付与効果に優れた芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体が得やすいので好適である。
【0027】
本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法としては、例えば、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とのモノマー混合物を重合する工程を含ませる重合方法がある。この場合、モノマー混合物中の芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との割合は、芳香族ビニル単量体が40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、より好ましくは60〜80重量%の範囲であり、共役ジエン単量体が10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%の範囲である。
【0028】
しかしながら、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中のブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合を確実に高めるには、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とのモノマー混合物を逐次添加重合する工程を含ませる重合方法が好ましい。モノマー混合物の逐次添加重合工程を採用する場合には、モノマー混合物中の芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との割合は、芳香族ビニル単量体が25〜90重量%、好ましくは30〜85重量%、より好ましくは35〜80重量%の範囲であり、共役ジエン単量体が10〜75重量%、好ましくは25〜70重量%、より好ましくは20〜65重量%の範囲である。モノマー混合物中の芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との割合が、この範囲内にあるときに、得られる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中のブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の割合を充分に高くすることができるので好ましい。
【0029】
モノマー混合物を重合、好ましくは逐次添加重合する工程の前後には、共役ジエン単量体または芳香族ビニル単量体の重合工程など、他の重合工程を設けることができる。モノマー混合物の重合工程で使用するモノマー混合物の割合は、全単量体を基準にして、通常10〜100重量%、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは30〜90重量%の範囲である。全単量体中のモノマー混合物の割合がこの範囲であるときに、得られる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中のブロック芳香族ビニル部(A)量が前記の好適な割合となるため好ましい。
【0030】
モノマー混合物の逐次添加速度は、重合条件等により適宜選択されるが、逐次添加終了時のモノマー混合物の転化率が、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上となるように調節される。多くの場合、逐次添加終了時のモノマー混合物の転化率を60重量%以上とすることができる。モノマー混合物の逐次添加速度がこの範囲であるときに、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合を容易に高めることができる。
【0031】
本発明の製造方法において、上記のモノマー混合物を重合する工程以外の工程は、特に制限はされず、常法に従って行えばよく、例えば、芳香族ビニル単量体を重合する工程や共役ジエン単量体を重合する工程などの種々の工程を含むことができる。特に、芳香族ビニル単量体を重合する工程や共役ジエン単量体を重合する工程と組み合わせることにより、すなわち、芳香族ビニル単量体を重合する工程と共役ジエン単量体を重合する工程とモノマー混合物を重合する工程とを含む製造方法が、前記特定割合のモノマー混合物を使いこなすことが容易となり、好適である。また、共役ジエン単量体を重合する工程の後にモノマー混合物を重合する工程を設けると、得られる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中のブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合がさらに増加するので好適である。これらの芳香族ビニル単量体を重合する工程及び/または共役ジエン単量体を重合する工程は、上記モノマー混合物の使用割合の残部量の中で適宜選択される。
【0032】
本発明の製造方法の具体例としては、芳香族ビニル単量体の重合工程を(a)とし、共役ジエン単量体の重合工程を(b)とし、モノマー混合物の重合工程を(a/b)と略記した場合、例えば、
(a/b)、
(a/b)1 →(a/b)2
(a/b)1 →(a/b)2 →(a/b)3
(a)→(a/b)、
(a/b)→(a)、
(b)→(a/b)、
(a/b)→(b)、
(a)→(a/b)→(b)、
(b)→(a/b)→(a)、
(b)→(a/b)1 →(a/b)2 →(a)
などが挙げられる。
これらの中でも、
(b)→(a/b)、
(b)→(a/b)→(a)、
(b)→(a/b)1 →(a/b)2 →(a)
が好ましく、
(b)→(a/b)→(a)
が特に好ましい。
【0033】
なお、上記の各工程において、(a/b)1、(a/b)2及び(a/b)3は、それぞれ芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体の混合割合が異なるか、モノマー混合物の使用割合が異なるものであってもよい。また、各工程では、使用したモノマーまたはモノマー混合物の転化率が100%に近くなるまで重合を行うことが好ましい。したがって、モノマー混合物の逐次添加速度は、逐次添加終了時の該モノマー混合物の転化率が20重量%以上となるように選択することが好ましいが、その場合でも、当該工程では、逐次添加終了後に重合を継続して、モノマー混合物の転化率を100%に近づけてから、次工程に移ることが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法においては、前記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の共役ジエン結合単位のビニル結合割合を超えない範囲で、ルイス塩基等の極性化合物を添加することができる。ルイス塩基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの第三級アミン類;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;等の化合物を挙げることができる。
【0035】
重合反応は、等温反応、断熱反応のいずれでもよく、通常は0〜150℃、好ましくは20〜120℃の重合温度範囲で行われる。重合反応終了後は、常法により、例えば、停止剤としてメタノール、イソプロパノールなどのアルコール類を添加して重合反応を停止し、酸化防止剤(安定剤)やクラム化剤を加えた後、直接乾燥や、スチームストリッピングなどの方法で溶媒を除去し乾燥して生成重合体を得ることができる。乾燥した生成重合体は、通常、圧縮成形してベールとして扱われる。
【0036】
樹脂用改質剤
本発明の樹脂用改質剤は、上記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を有効成分とし、特に、耐衝撃性の改質剤(強靭化剤)として有用である。
本発明の樹脂用改質剤は、ゴム成分として、上記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体以外に、樹脂の強靭化剤として通常使用されるその他のゴムを添加することができる。
添加できるその他のゴムとしては、例えば、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体以外の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、低シス−ポリブタジエンゴム、高シス−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンランダム共重合体ゴム、ポリイソプレンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。これらのその他のゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
ゴム成分中の本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の割合は、使用目的に応じて適宜選択することができるが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。もちろん、ゴム成分として、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を単独で使用することができる。
本発明の樹脂用改質剤は、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体以外に、必要に応じて、樹脂工業で通常使用される配合剤を添加することができる。使用できる配合剤の具体例としては、例えば、ミネラルオイル、流動パラフィン、有機ポリシロキサン、有機または無機の充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤などが挙げられる。これらの配合剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0038】
有機または無機の充填剤としては、繊維状または粉粒状の充填剤があり、例えば、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などを挙げることができる。
【0039】
安定剤としては、例えば、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2′−オキザミドビス[エチル−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系酸化防止剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系安定剤などを挙げることができる。
【0040】
難燃剤としては、特に制約はなく、通常ハロゲン系難燃剤が用いられる。ハロゲン系難燃剤としては、塩素系及び臭素系の種々の難燃剤が使用可能であるが、難燃化効果、成形時の耐熱性、樹脂への分散性、樹脂の物性への影響等の面から臭素系難燃剤が好ましい。臭素系難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモエチルベンゼン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモジフェニル、ヘキサブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、デカブロモジフェニルオキサイド、ペンタブロモシクロヘキサン、テトラブロモビスフェノールA及びその誘導体[例えば、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)等]、テトラブロモビスフェノールS及びその誘導体[例えば、テトラブロモビスフェノールS−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等]、テトラブロモ無水フタル酸及びその誘導体[例えば、テトラブロモフタルイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド等]、エチレンビス(5,6−ジブロモノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)、トリス−(2,3−ジブロモプロピル−1)−イソシアヌレート、ヘキサクロロシクロペンタジエンのディールス・アルダー反応の付加物、トリブロモフェニルグリシジルエーテル、トリブロモフェニルアクリレート、エチレンビストリブロモフェニルエーテル、エチレンビスペンタブロモフェニルエーテル、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキサイド、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリカーボネート、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、オクタブロモナフタレン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N−メチルヘキサブロモジフェニルアミン等が挙げられる。
難燃剤の添加量は、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体100重量部に対して、通常3〜150重量部、好ましくは10〜140重量部、より好ましくは15〜120重量部である。
【0041】
難燃剤の難燃化効果をより有効に発揮させるための難燃助剤として、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、三塩化アンチモン等のアンチモン系難燃助剤を用いることができる。これらの難燃助剤は、難燃剤100重量部に対して、通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部の割合で使用する。
これらのその他のゴムや配合剤の混合は、前記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の単離後に、1軸または2軸などの押出機、バンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどの各種混練装置を用いて行ってもよいし、また、前記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の重合後の重合体含有溶液中に添加して混合してもよい。
【0042】
樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分と、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有するゴム成分(樹脂用改質剤)とを含有するものである。
本発明の樹脂用改質剤は、幅広い樹脂に対して適用が可能である。改質される樹脂成分の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などの熱硬化性樹脂;アクリロニトリル−アクリレート−スチレン樹脂、アクリロニトリル−エチレン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、メチルメタクリレート−スチレン樹脂などの芳香族ビニル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル等のエンジニアリングプラスチック等を挙げることができる。これらの中でも、芳香族ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテルなどが好ましく、芳香族ビニル系樹脂が特に好ましい。これらの樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
樹脂成分に対する上記ゴム成分の配合割合は、使用目的や芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の種類とゴム成分中の含有量などに応じて適宜選択されるが、樹脂成分100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは3〜15重量部の範囲である。ゴム成分の配合割合がこの範囲であるときに、耐衝撃性の改善効果が高く、しかも光沢や透明等の外観特性や引張強度・剛性などの樹脂本来の物性の低下も少なく好適である。
【0044】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、例えば、樹脂成分と前記ゴム成分とを機械的に混合することによって行うことができるが、樹脂成分が芳香族ビニル系樹脂の場合には、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含むゴム成分の存在下で、芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体とそれと共重合可能な他の単量体との混合物を重合することによって容易に行うことができる。
【0045】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−1−4−ジクロルスチレン、2−4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル単量体;メタクリル酸メチルエステル、アクリル酸メチルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸単量体;フェニルマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ニトリル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、不飽和脂肪酸単量体が好ましく、不飽和ニトリル単量体が特に好ましい。これらの芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族ビニル単量体とそれと共重合可能な他の単量体との使用割合は、用途に応じて適宜選択されるが、[芳香族ビニル]:[他の単量体]の重量比で、通常20:80〜100:0、好ましくは40:60〜100:0、より好ましくは60:40〜100:0の範囲である。
【0047】
ゴム成分の使用量は、上記単量体100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは3〜15重量部となるように調節される。芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有するゴム成分の配合割合がこの範囲であるときに、耐衝撃性の改善効果が高く、しかも光沢や透明等の外観特性や引張強度・剛性などの樹脂本来の物性の低下も少なく好適である。これらの改質効果は、ゴム成分として、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を単独で使用するか、あるいは本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で含有するゴム成分を使用したときに、特に顕著である。
重合方法は、格別に制限はないが、通常ラジカル重合で行うことができる。重合様式は、格別の限定はなく、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状−懸濁二段重合法などの多段重合法などが挙げられ、これらの中でも、塊状重合法及び塊状−懸濁二段重合法が好ましい。特に、塊状重合法は、塊状連続重合法が好ましい。
【0048】
塊状連続重合法により本発明の樹脂組成物を製造する場合には、例えば、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有するゴム成分を、芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体とそれと共重合可能な他の単量体との混合物に溶解させ、必要に応じて、希釈溶剤、流動パラフィン、ミネラルオイルなどの内部潤滑剤、酸化防止剤、連鎖移動剤などを加えた後、無重合触媒重合の場合には、通常80〜200℃において加熱重合し、触媒重合の場合は、重合触媒の存在下に、通常20〜200℃において重合し、単量体(芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体とそれと共重合可能な他の単量体との混合物)の重合転化率が60%以上、好ましくは60〜90%になるまで重合する。この場合、重合触媒を用いることがより好ましい。
【0049】
重合触媒としては、重合方法に応じて適宜選択されるが、ラジカル重合の場合は、通常、有機過酸化物やアゾ系触媒が用いられ、好ましくは有機過酸化物である。有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−8,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ベンゾイルペルオキシド、m−トルオイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;ジメチルスチルペルオキシジカーボネートなどのペルオキシカーボネート類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシエステル類;シクロヘキサノンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類;p−メンタハイドロペルオキシドなどのハイドロパーオキシド類などが挙げられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合触媒の使用量は、単量体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜3重量部、より好ましくは0.01〜1重量部である。
【0050】
希釈溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素類;n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;メチルイソプロピルケトンなどのケトン類;などが挙げられ、芳香族炭化水素類が好ましい。これらの希釈溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、その使用量は、全単量体の通常0〜25重量%である。
【0051】
連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;1−フェニルブテン−2−フルオレン、ジペンテンなどのテルペン類;クロロホルムなどのハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
重合操作終了後、生成した樹脂組成物は、常法に従って、例えば、加熱減圧による溶媒除去、あるいは揮発物除去設計された押出装置を用いて押し出すことにより、未反応モノマーや希釈溶剤などを除去し回収することができる。得られた樹脂組成物は、必要により、ペレット化または粉末化して実用に供される。
【0052】
塊状−懸濁重合法においては、通常、前記の塊状重合法と同様にして単量体の重合転化率が30〜50%に達するまで部分的に重合を行い、次いで、この部分的に重合した重合溶液をポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの懸濁安定剤、及び/またはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤の存在下で、水中に懸濁して反応を完結させる。生成した耐衝撃性樹脂組成物は、濾過分離、遠心分離などの方法により単離し、水洗、乾燥を行い、必要に応じてペレット化または粉末化する。
本発明の樹脂組成物において、樹脂マトリックス中の本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含むゴム成分の平均粒子径は、格別制限されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmの範囲内にあるときに、耐衝撃性の向上が著しく好適である。
【0053】
【実施例】
以下に、製造例、実施例、参考例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。以下の例中の部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。各種の物性の測定法は下記の通りである。
(1)ブロック共重合体中の芳香族ビニル結合単位の含有割合は、波数約700cm−1におけるフェニル基による赤外線吸収ピークの強度を測定し、予め求めておいた検量線からその量を求めた。
(2)ブロック共重合体中の共役ジエン結合単位のビニル結合割合は、赤外分光光度計を使用して、モレロ法に従って1,2−ビニル結合量を算出した。
(3)ブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒にしたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値で示した。
【0054】
(4)ブロック共重合体の分子量分布は、GPCで測定されるポリスチレン換算の重量平均(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で示した。
(5)ブロック芳香族ビニル部(A)量は、L.M.Kolthoff,etal., J.Polym.Sci.,1,429(1948)に記載されるオスミウム酸分解法に従って測定した。すなわち、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体0.05gを四塩化炭素10mlに溶解し、tert−ブチルハイドロパーオキサイドの70%水溶液16mlと四塩化オスミウムの0.05%クロロホルム溶液4mlを加え、90℃バス中にて15分間還流を行い酸化分解反応を行った。反応終了後、反応溶液を冷却し、該反応溶液中にメタノール200mlを攪拌下に加えてブロック芳香族ビニル成分を沈殿させ、これを5μmのガラスフィルターにて濾別し、この重量を芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の全芳香族ビニル含有量に対する割合で示した。
【0055】
(6)ブロック芳香族ビニル部(A)のピークトップ分子量(A−Mp)は、上記(5)で分離されたブロック芳香族ビニル成分をTHFに溶解し、GPCで測定されるポリスチレン換算の値で示した。
(7)ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合は、特開昭64−74209号公報に記載されている保持容量(以下、VRと略記。)単位の面積割合を求める方法に従って算出し、モル%で表示した。すなわち、本発明の場合、VR5.835μl毎の重量割合(W1)を計算し、相関曲線(検量線)より各VRの分子量(M1)を求め、これらから各VRのモル数比(W1/M1)を求め、さらに(W1/M1)/Σ(W1/M1)より各VRのモル数割合を求め、このデータよりピークトップ分子量の1/3以下の割合を計算した。
【0056】
(8)ブロック共重合体のベール成形性は、圧縮成形用の金型形状20(cm)×10(cm)×5(cm)を用いて、圧縮圧力130kg/cm2、圧縮時間60秒間、圧縮温度80℃、使用サンプル量1200gの条件で成形し、得られた加圧成形体の表面状態を下記基準で評価した。
◎;極めて堅固に成形され、表面を手で触ってもゴムがバラバラにならない。
○;堅固に成形されるが、表面を手で触るとゴムが粉末状に僅かに削れる。
×;成形されるが、手でほぐすと容易に形状が壊れるか、成形されない。
(9)デュポン衝撃強度は、ASTM D3029に従って測定(測定条件:Method F、Geometry FB、試験片40×70×2mm)し、比較例を100とする指数(数値が大きい程好ましい。)で表示した。
【0057】
調製例1](モノマーの調製)
使用するモノマー(スチレン及びブタジエン)は、単蒸留を行った後、モレキュラーシーブ3Aを充填した長さ3m、内径5cmのSUS製パイプに0.1kg/miの速度で通して脱水を行い、n−ブチルリチウムに対して5×10-4モル/kg以下の阻害活性のものを用いた。
【0058】
参考例1](ブロック共重合体の製造例)
攪拌器、リフラックスコンデンサー及びジャケット付きの2キロリットルの反応器を、洗浄乾燥し、窒素置換後、予め精製、乾燥したシクロヘキサン700kg、及びブタジエン44kgを入れて、50℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)を400ml添加して重合を開始した(重合1段目)。反応転化率が約100%になったところで、引き続きブタジエン16kgとスチレン19kgの混合溶液を60分間かけて逐次添加した(重合2段目)。モノマー混合物の添加終了時のモノマー混合物の反応転化率は38%であった。モノマー混合物の反応転化率が約100%となるまで後反応を行い、引き続きスチレン21kgを添加し、さらに重合した(重合3段目)。3段目の反応転化率が約100%になったところでイソプロピルアルコール1molを添加して重合を停止し、次いで、フェノール系老化防止剤(チバガイギー社製、イルガノックス1076)200gを添加してから、反応混合物10kgを取り出して、スチームストリッピング法により脱溶媒した後、真空乾燥してブロック共重合体Aを得た。
得られたブロック共重合体Aの芳香族ビニル結合単位の含有量、共役ジエン結合単位のビニル結合量、ブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)、ブロック芳香族ビニル部(A)量、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)、ブロック芳香族ビニル部(A)のピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量部の含有割合、ブロック共重合体のベール成形性について検討し、その結果を表1に示した。
【0059】
参考例2、実施例1〜3
表1に記載の条件に変更したこと以外は、参考例1の方法に準じてブロック共重合体B〜Eを製造し、参考例1と同様な評価を行った。その結果を表1に示した。
【0060】
[比較例1]
攪拌器、リフラックスコンデンサー及びジャケット付きの2キロリットルの反応器を、洗浄乾燥し、窒素置換後、予め精製、乾燥したシクロヘキサン700kg、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)20mmol、及びブタジエン61kg、スチレン19kgを入れて、50℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)410mlを添加して重合を開始した(重合1段目)。反応転化率が約100%になったところで、引き続きスチレン20kgを添加して反応転化率が約100%になるまで重合を行った。その後、イソプロピルアルコールを1mol添加して重合を停止し、フェノール系老化防止剤(チバガイギー社製、イルガノックス1076)200gを添加してから反応混合物を10kg取り出してスチームストリッピング法により脱溶媒した後、真空乾燥してブロック共重合体Fを得た。
得られたブロック共重合体Fの芳香族ビニル結合単位の含有量、共役ジエン結合単位のビニル結合量、ブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)、ブロック芳香族ビニル部(A)量、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)、ブロック芳香族ビニル部(A)のピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量部の含有割合、ブロック共重合体のベール成形性について検討し、その結果を表1に示した。
【0061】
[比較例2〜3]
表1に記載の条件に変更したこと以外は、比較例1の方法に準じてブロック共重合体G〜Hを製造し、比較例1と同様な評価を行った。その結果を表1に示した。
【0062】
【表1】
Figure 0003985293
(*1)TMEDA
(*2)2段目モノマー混合物量に対する転化率(なお、重合2段目のモノマー混合物の逐次添加重合は、参考例1、2、実施例1〜3について行った。)
【0063】
表1の結果より、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体A〜Eは、いずれもベール成形性に優れることが分かる(参考例1、2、実施例1〜3)。それらの中でも、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合が55重量%以上のものがベール成形性に特に優れることがわかる(実施例1〜3)。それに対して、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合が少ない芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体G及びHは、ベール成形性に劣っていることが分かる(比較例2、3)。
【0064】
また、表1の結果より、芳香族ビニル含有量の高いモノマー混合物を重合することにより(特に、逐次添加重合することにより)、極性化合物を添加しなくとも、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合の多い芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体が得られること(参考例1、2、実施例1〜3)、それに対して、芳香族ビニル含有量の少ない混合モノマーの重合ではブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線のピークトップ分子量の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合を多くできず(比較例2)、そして、極性化合物を添加するとブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合を多くすることができるが、共役ジエン結合単位のビニル結合量が上昇してしまうことが分かる。さらに、混合モノマーの逐次添加速度が、添加終了時の混合モノマーの転化率が40重量%以上、好ましくは60重量%以上であるときに、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合をより高くできることが分かる(実施例1〜3)。
【0065】
参考例3
攪拌装置つきステンレス製反応機で、参考例1で得られたブロック共重合体A180gをスチレンモノマー1820gに溶解させた後、連鎖移動剤(n−ドデシルメルカプタン)をスチレンモノマーに対し250ppmの割合で添加し、130℃で1時間20分攪拌し塊状重合を行った。次いで、内容物を取り出し、この内容物1250gとポリビニルアルコール2%水溶液3750gを8リットルの攪拌装置付きステンレス製反応機に入れ、70℃に昇温した。次に、ベンゾイルパーオキサイド2.5gとジクミルパーオキサイド1.26gを添加し、70℃で1時間、90℃で1時間、110℃で1時間、130℃で4時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、得られたポリスチレン樹脂組成物を濾過、回収し、水洗い洗浄後、60℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリスチレン樹脂組成物を、180℃のロールで練りシート状に成形し、シートペレタイザーでペレット状にした。試験サンプルは、得られたペレットを射出成形機SAV−30/30(山城精機社製;金型温度50℃、ノズル先端温度240℃)にて射出成形して試験片を作成し、そのデュポン衝撃強度を測定した。その結果を表2に示した。
【0066】
参考例4、実施例4〜6、比較例4〜6]
ブロック共重合体Aの代わりに参考例2、実施例1〜3及び比較例1〜3で製造したブロック共重合体B〜Hを用いた以外は、参考例3と同様にしてポリスチレン樹脂組成物を作成し、同様にしてデュポン衝撃強度を測定した。その結果を表2に示した。
【0067】
【表2】
Figure 0003985293
(*1)比較例4を100とする指数
表2の結果より、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を用いた樹脂組成物(実施例4〜6)は、充分に耐衝撃性に優れることが分かる。
【0068】
実施例7](ブロック共重合体の製造例)
攪拌器、リフラックスコンデンサー及びジャケット付きの2キロリットルの反応器を、洗浄乾燥し、窒素置換後、予め精製、乾燥したシクロヘキサン700kg、及びブタジエン8kgを入れて、50℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)400mlを添加して重合を開始した(重合1段目)。反応転化率が約100%になったところで、引き続きブタジエン52kgとスチレン31kgのモノマー混合物を60分間かけて逐次添加した(重合2段目)。モノマー混合物の添加終了時のモノマー混合物の反応転化率は73%であった。モノマー混合物の反応転化率が約100%となるまで後反応を行い、引き続きスチレン9kgを添加してさらに重合した(重合3段目)。3段目の反応転化率が約100%になったところで、イソプロピルアルコールを1mol添加して重合を停止し、次いでフェノール系老化防止剤(チバガイギー社製、イルガノックス1076)200gを添加してから反応混合物を10kg取り出して、スチームストリッピング法により脱溶媒した後、真空乾燥してブロック共重合体Iを得た。
得られたブロック共重合体Iの芳香族ビニル結合単位の含有量、共役ジエン結合単位のビニル結合量、ブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)、ブロック芳香族ビニル部(A)量、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量部の割合、ブロック共重合体のベール成形性について検討し、その結果を表に示した。
【0069】
実施例8
記載の条件に変更したこと以外は、実施例7に準じてブロック共重合体Jを製造し、実施例7と同様な評価を行った。その結果を表3に示した。
【0070】
[比較例7]
攪拌器、リフラックスコンデンサー及びジャケット付きの2キロリットルの反応器を、洗浄乾燥し、窒素置換後、予め精製、乾燥したシクロヘキサン700kg、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)20mmol、及びブタジエン61kg、スチレン19kgを入れて、50℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)を420ml添加して重合を開始した(重合1段目)。反応転化率が約100%になったところで、引き続きスチレン20kgを添加して反応転化率が約100%になるまで重合を行った。その後、イソプロピルアルコールを1mol添加して重合を停止し、フェノール系老化防止剤(チバガイギー社製、イルガノックス1076)200gを添加してから反応混合物を10kg取り出して、スチームストリッピング法により脱溶媒した後、真空乾燥してブロック共重合体Kを得た。
得られたブロック共重合体Kの芳香族ビニル結合単位の含有量、共役ジエン結合単位のビニル結合量、ブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)、ブロック芳香族ビニル部(A)量、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量部の割合、ブロック共重合体のベール成形性について検討し、その結果を表に示した。
【0071】
【表3】
Figure 0003985293
(*1)TMEDA
(*2)2段目混合モノマー量に対する転化率(なお、モノマー混合物の逐次添加重合は、実施例7、8について行った。)
【0072】
表3の結果から、モノマー混合物の逐次添加重合工程を設けることにより、該モノマー混合物中でのスチレンの割合が比較的低い場合でも、ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の割合を確実に高められることが分かる(実施例7、8)。
【0073】
実施例9
攪拌装置つきステンレス製反応機で、実施例7で得られたブロック共重合体(I)180gをスチレンモノマー1820gに溶解させた後、連鎖移動剤(n−ドデシルメルカプタン)をスチレンモノマーに対し250ppmの割合で添加し、130℃で1時間20分攪拌し塊状重合を行った。次いで、内容物を取り出し、この内容物1250gとポリビニルアルコール2%水溶液3750gを8リットルの攪拌装置付きステンレス製反応機に入れ、70℃に昇温した。次に、ベンゾイルパーオキサイド2.5gとジクミルパーオキサイド1.26gを添加し、70℃で1時間、90℃で1時間、110℃で1時間、130℃で4時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、得られたポリスチレン樹脂組成物を濾過、回収し、水洗い洗浄後、60℃で6時間減圧乾燥した。
得られたポリスチレン樹脂組成物を、180℃のロールで練りシート状に成形し、シートペレタイザーでペレット状にした。試験サンプルは、得られたペレットを射出成形機SAV−30/30(山城精機社製;金型温度50℃、ノズル先端温度240℃)にて射出成形して試験片を作成し、そのデュポン衝撃強度を測定した。その結果を表4に示した。
【0074】
実施例10、比較例8]
ブロック共重合体Iの代わりに実施例8及び比較例7で製造したブロック共重合体J〜Kを用いたこと以外は、実施例9と同様にしてポリスチレン樹脂組成物を作成し、そして、同様にデュポン衝撃強度を測定した。その結果を表4に示した。
【0075】
【表4】
Figure 0003985293
(*1)比較例8を100とする指数
表4の結果より、本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を用いたポリスチレン樹脂組成物(実施例9、10)は、充分に耐衝撃性に優れることが分かる。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、ベール成形性に優れ、かつ、樹脂に対する耐衝撃性の改善効果にも充分に優れる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体が提供される。本発明によれば、共役ジエン結合単位のビニル結合割合を高めることなく、GPCで測定したブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合を高めた、ベール成形性に優れ、かつ、樹脂に対する耐衝撃性の改善効果にも充分に優れる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、ベール成形性に優れ、かつ、樹脂に対する耐衝撃性の改善効果にも充分に優れる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を有効成分とする樹脂改質剤、それを含む樹脂組成物、及びその製造方法が提供される。本発明の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体は、耐衝撃性ポリ芳香族ビニル系樹脂の弾性高分子成分として特に有用である。

Claims (6)

  1. 芳香族ビニル結合単位と共役ジエン結合単位とからなり、少なくともブロック芳香族ビニル部を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体において、
    (1)ブロック共重合体中の芳香族ビニル結合単位の含有割合が30〜50重量%であり、
    (2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)が5,000以上80,000未満の範囲内であり、
    (3)該ブロック芳香族ビニル部(A)の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(A−Mp)の1/3以下の分子量に相当する部分の含有割合が、ブロック芳香族ビニル部(A)全量の55〜70モル%の範囲内であり、
    (4)共役ジエン結合単位のビニル結合割合が13%以下であり、かつ、
    (5)GPCによって測定したブロック共重合体の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量(Mp)が100,000〜600,000の範囲内であることを特徴とする芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体。
  2. 炭化水素系溶媒中、有機活性金属化合物を開始剤として用いて、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とを共重合する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法において、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とのモノマー混合物を逐次添加重合する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法。
  3. モノマー混合物の逐次添加速度が、逐次添加終了時の該モノマー混合物の転化率が20重量%以上となる速度である請求項2記載の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の製造方法。
  4. 請求項1記載の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を有効成分とする樹脂用改質剤。
  5. 樹脂成分とゴム成分とを含有する樹脂組成物において、ゴム成分が、請求項1記載の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有するゴム成分であることを特徴とする樹脂組成物。
  6. ゴム成分の存在下で、芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体とそれと共重合可能な他の単量体との混合物をラジカル重合する樹脂組成物の製造方法において、ゴム成分として、請求項1記載の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有するゴム成分を使用することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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