JP3985125B2 - 塩化第二鉄溶液の製造方法、そのシステム、並びにその装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化第一鉄溶液中の塩化第一鉄を酸化して塩化第二鉄溶液を得る方法に関するもので、塩化鉄系エッチング廃液の再生に適したものであり、特に塩化鉄系エッチング液として使用されたエッチング廃液をエジェクターを用いることにより安全で簡便に再生する方法、そのシステムおよびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化第二鉄溶液は無機系凝集剤として使用される他、各種の金属をエッチングするためのエッチャントとして使用されている。
【0003】
塩化第二鉄溶液を用いて、鉄材、ニッケル含有の鉄鋼または銅張プリント基板等をエッチングすると、例えば鉄材との反応では(1)式に従って、同様に銅張プリント基板等をエッチングすると、(2)式に従って反応が進み、反応後の液には塩化第一鉄が含まれることになる。
2FeCl3 + Fe → 3FeCl2 (1)
2FeCl3 + Cu → 2FeCl2 + CuCl2 (2)
【0004】
塩化第一鉄にはエッチング能力がないため、塩化第一鉄濃度が高くなったエッチング廃液は再生処理をする必要がある。
エッチング廃液の再生方法としては、酸化剤を添加して塩化第一鉄を塩化第二鉄に酸化する方法が一般的であり、酸化剤としては塩素が通常使用されている。
【0005】
塩素による酸化反応は(3)式によるため簡単であり反応も速やかに進むので効率的である。
2FeCl2 + Cl2 → 2FeCl3 (3)
【0006】
しかし、上記酸化反応は、有害な塩素ガスを用いるため、排ガスの完全なる除害等の安全対策のために大きな設備が必要であり、コスト面で大きな欠点となる。特にエッチング設備に付帯したオンサイトで実施する場合には問題となっている。このため、塩素を酸化剤としない方法が多く提案されてきた。特開昭57−67027号、特開平2−30776号には酸化剤として塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩等の酸化剤による方法が、特開平1−215985号には塩素酸塩と硝酸による方法が示されている。しかし、これら多くの酸化剤は、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩で使用されるために、再生された塩化鉄中にナトリウム、カリウム等が蓄積するために繰り返し再生に限度がある。
【0007】
これを改善した方法として、塩化鉄中に不要な塩類の蓄積しない方法が提案されている。特開昭62−230992号あるいは特開平7−331461号にはオゾンによる酸化が示されている。この方法は、不要な塩類の蓄積もなく、反応も速やかであるが、高価なオゾンガスを使用するために、工業的に採用することは困難である等の欠点を有する。空気等の酸素含有気体の使用は比較的安価であるが、反応が非常に遅いのが欠点であった。
【0008】
そのため、酸化促進剤を使用する方法が提案されている。特開平1−129982号には、硝酸存在下で空気酸化する方法が示されており、特開昭51−98699号には、クロム、コバルト、マンガン、銅等の陽イオンの存在下に空気酸化する方法が示されている。しかし、促進剤が得られた再生された塩化鉄系エッチング液中に残存するために、エッチングにおいて問題となる。酸化促進剤を用いずに空気酸化反応を進める方法もあり、特開昭48−21697号には、高温高圧下で反応させる方法が示されているが、反応条件が厳しく装置上の問題がある。また、例えば特開平1−240685号には、スプレー法にて行う方法が示されており、特開平4−337089号には、酸素ガスと廃液を静的混合装置で接触させる方法が示されている等反応装置の改良による方法もあるが、反応速度において充分とは言えない。
【0009】
特開平3−60432号に示されるエジェクターにて酸素含有気体を供給する方法は、酸化の反応は充分であるが、含水酸化鉄(FeOOH)が生成するため、これを濾過等により除去しなければエッチング液として使用できない。予め塩酸を添加しておくことによって含水酸化鉄を生成させないことができるとの記載もあるが、塩酸を多く存在させると反応が遅くなるという欠点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、塩化第一鉄溶液中の塩化第一鉄を酸素含有気体を用いて酸化して塩化第二鉄溶液を製造する方法を改良しようとするもので、特に塩化鉄系エッチング廃液を再生する方法において、従来のエジェクター法における前記のような欠点を改良し、簡単な方法によりエッチング廃液を再生する方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはエッチングに使用され塩化第一鉄を多く含有するようになった塩化第二鉄水溶液からなるエッチング廃液を再生する方法に関して、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、次の手段によって前記の目的を達成することができる。
即ち、エッチング廃液等の塩化第一鉄を含有する溶液に必要に応じて塩酸を添加して遊離塩酸を特定の範囲にし、本液を循環させて、その循環途中にエジェクターを設け、このエジェクターの吸引力を利用して酸素含有気体と液とを接触させて液を酸化させることによって、式(2)の如く塩化第二鉄を製造し、またはエッチング廃液を再生するものである。
4FeCl2 + O2 + 4HCl → 4FeCl3 + 2H2O (2)
【0013】
本発明では、酸素含有気体の供給方法として、エジェクターを用いるものである。エジェクターにおいては、循環する液の量を変化させることによって酸素含有気体の供給量が変化するので、反応速度を容易に制御することが可能である。
【0014】
本発明の塩化第二鉄溶液の製造方法では、反応液中の遊離塩酸の濃度を1%以下に保持していることを特徴とするものであり、具体的には0.01〜0.88質量%である。1質量%を超えると、塩化第一鉄の酸化反応速度が低下し、並びに生成した塩化第二鉄中に塩酸分が残存するために製品として好ましくなく、製品として実用的な濃度は0.88質量%以下である。一方、0.01質量%未満では、塩化第一鉄の酸化により副生される含水酸化鉄が沈殿を生成する恐れがあるので実用的でない。本発明では、反応全般にわたって、遊離塩酸の濃度を前記範囲内の量を保持させることを特徴とするものである。最初から遊離塩酸を含有する塩化第二鉄溶液を用いて塩酸の追加を行わない場合や、初期のみに塩酸を添加した場合には、反応後期に塩酸不足となって、含水酸化鉄が生成するおそれがある。
【0015】
本発明は、溶液中の遊離塩酸濃度を制御し易い点から、遊離塩酸の少ない塩化第一鉄含有溶液に適した塩化第二鉄の製造方法であるが、予め塩酸が多量に含まれているプリント基板のエッチング廃液等の処理にも問題無く適用される。この場合には、塩酸濃度を制御するために、エッチング廃液の反応器への流量を制御することによって達成される。
【0016】
本発明における塩化第一鉄溶液とは、塩化第二鉄溶液を製造する際の原料である塩化第一鉄溶液以外に、金属のエッチング廃液のように、他の金属と共に塩化第一鉄を含有する水溶液も対象となる。
【0017】
酸化の反応温度は50〜150℃が好ましく、更に好ましくは70〜100℃である。これ以上に温度が高くなると、水の蒸気圧が高くなり、エジェクターによる酸素含有気体の吸引効果が小さくなり、逆に低すぎると反応速度が低下してしまうため好ましくない。
酸素含有気体としては、酸素でも空気のような酸素を含有する不活性ガスでも構わないが、空気の方が経済的であり好ましい。
【0018】
更に図面を用いて本発明を説明する。
図1に、本発明による連続反応による塩化第二鉄溶液の製造装置の一例を示す。図1において、反応器1には、エッチング廃液5が供給される。このエッチング廃液の一部または全部を循環ポンプ3によりエジェクター2を通して反応器1に循環させる。酸素含有気体7は、エジェクター2に吸引され酸化反応が進む。未反応ガスは、排ガス8となって系外へ排出される。塩酸4は、循環ラインに供給されるが、反応器1に直接供給してもかまわない。また、エッチング廃液も循環ラインに供給することもできる。再生液6は、反応器1より抜き出される。また、この装置において、エジェクターの出口管が反応器内部の液面より下部に設置されていると、エッチング廃液と酸素含有気体との接触が長く保持されるという理由から好ましい。
【0019】
図2に、通常のエッチングラインの一例を示す。塩化鉄系エッチング液11は、エッチング槽12に循環タンク13から循環供給されてエッチングが行われる。エッチング液の疲労度を一定に保つために、新しい塩化鉄系エッチング液14を循環タンク13に供給し、エッチング廃液15が抜き出されている。
【0020】
図3に、エッチングラインにオンサイト方式で組み込まれた本発明の一例を示す。塩過鉄系エッチング液21は、エッチング槽22に循環タンク23から循環供給されてエッチングが行われる。循環タンク23よりのエッチング廃液24を、図1で詳しく示される再生装置25に供給して、再生液26が循環タンクに戻される。
図4には、図2の循環タンクに再生装置を組み込んだ例を示す。
【0021】
従来の塩素ガスを用いた酸化反応では、大きな設備が必要であり、エッチング設備に付帯したオンサイトで実施することは困難であったが、本発明では、設備がコンパクトであるため、塩化鉄系エッチング液によるエッチング装置のエッチング液循環系内で行う、所謂オンサイトシステムとすることができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
80℃に加温された、FeCl2=8.88質量%、FeCl3=33.77質量%のエッチング廃液1260gに、塩酸を添加して濃度0.88質量%とした後、エジェクターを通して1〜1.5リットル/分で空気を通気して反応させた。2時間毎の試料につき、塩化第一鉄、塩化第二鉄および遊離塩酸濃度を測定し、また、全反応液中の含水酸化鉄の量を測定した。結果は、表1の通りであり、スラリー(含水酸化鉄)の生成がなく再生ができた。
【0023】
【表1】
Figure 0003985125
【0024】
実施例2
80℃に加温された、FeCl2=8.74質量%、FeCl3=35.59質量%のエッチング廃液1300gに、塩酸を少量ずつ添加し、エジェクターを通して1〜1.5リットル/minで酸素を通気して反応させた。結果は、表2の通りであり、塩酸を含む場合においては、実施例1と同様スラリー(含水酸化鉄)の生成がなかったが、塩酸分がなくなるとスラリー(含水酸化鉄)の生成が起きた。
【0025】
【表2】
Figure 0003985125
【0026】
比較例1
実施例2と同じエッチング廃液に、塩酸添加をせずに反応させたところ、表3の通りとなり、酸化は起こったが、スラリーが生成した。
【0027】
【表3】
Figure 0003985125
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、塩酸添加と空気による酸化という簡単な方法で、塩化第一鉄を塩化第二鉄に酸化でき、これにより、オンサイト等で簡単にエッチング廃液を処理できることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による連続反応による塩化第二鉄溶液の製造装置の一例を示す工程図である。
【図2】 従来のエッチングラインを示す工程図である。
【図3】 本発明の塩化第二鉄溶液の製造のオンサイトシステムを示す工程図である。
【図4】 図2の循環タンクに再生装置を組込んだ塩化第二鉄溶液の製造のオンサイトシステムを示す工程図である。
【符号の説明】
1 反応器
2 エジェクター
3 循環ポンプ
4 塩酸
5 エッチング廃液
6 再生液
7 酸素含有気体
8 排ガス
11 塩化鉄系エッチング液
12 エッチング槽
13 循環タンク
14 新しい塩化鉄系エッチング液
15 エッチング廃液
21 塩化鉄系エッチング液
22 エッチング槽
23 循環タンク
24 エッチング廃液
25 再生装置
26 再生液
31 反応器兼循環タンク
32 エッチング液循環ポンプ
33 塩化鉄系エッチング液
34 エッチング槽
35 エジェクター
36 再生液循環ポンプ
37 塩酸
38 酸素含有気体
39 排ガス

Claims (3)

  1. 塩化第一鉄を含有する溶液に、エジェクターにより酸素含有気体を供給して前記溶液中の塩化第一鉄を酸化させてなる塩化第二鉄溶液の製造方法において、酸化反応液中の遊離塩酸濃度を0.01〜0.88質量%に保持することを特徴とする塩化第二鉄溶液の製造方法。
  2. 塩化第一鉄溶液が塩化鉄系エッチング廃液であることを特徴とする請求項1の塩化第二鉄溶液の製造方法。
  3. 酸素含有気体が空気であることを特徴とする請求項1または2の塩化第二鉄溶液の製造方法。
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