JP3985084B2 - 架橋した極性樹脂粒子からの油性液体の除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は油性液体を含む架橋した極性樹脂粒子から、油性液体を除去する方法に関するものである。本発明によれば油性液体を含む架橋した極性樹脂粒子から、極性樹脂粒子を変質させたりせずに、油性液体をその残存量が極微量になるまで容易に除去することができる。
【0002】
【従来の技術】
極性基、例えばアミノ基や第4級アンモニウム基などを有する架橋した極性樹脂粒子の製造法の一つとして懸濁重合による方法があり、イオン交換樹脂など粒径の揃った球状粒子を必要とする場合には、専らこの方法が用いられている。この方法では、油性液体中に反応原料を溶解した水溶液が分散した懸濁状態で重合が行われる。例えば特殊な用途に用いられるイオン交換樹脂であるポリアルキレンポリアミンとエピクロロヒドリンとの反応による架橋共重合体粒子や、イミダゾール化合物とエピクロロヒドリンとの反応による架橋共重合体粒子の製造などは、この懸濁重合により行われている。
【0003】
生成した架橋共重合体粒子は、通常は濾過して懸濁媒体の油性液体から分離するが、得られた架橋した極性樹脂粒子は油性液体により汚染されているので、濾過に引続き樹脂粒子から油性液体を除去する精製処理を必要とする。通常はこの油性液体を含む樹脂粒子を水に懸濁させ、加熱・沸騰させて油性液体を水と一緒に蒸発させて除去する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
油性液体を含む架橋した極性樹脂粒子を水と混合し、加熱して油性液体を水と共に蒸発させて除去する方法の問題点の一つは、加熱して蒸発させるに際して突沸を生じ易いことである。また、生成した蒸気を凝縮させて生ずる凝縮水は、油性液体を溶解していてそのままでは公共水域に放流できないので、その処理に費用を要するという問題もある。本発明はこれらの問題を解決する方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、0.05重量%以上の油性液体が溶解している水中に油性液体を含む架橋した極性樹脂粒子が懸濁しているスラリーを調製し、このスラリーを加熱・沸騰させて油性液体と水とを蒸発させて留去することにより、油性液体を含む架橋した極性樹脂粒子から突沸等を生ずることなく、安定して油性液体を除去することができる。
また、この方法において発生した油性液体と水との蒸気を凝縮させて得た油性液体が溶解している凝縮水を、次回の架橋した極性樹脂粒子が懸濁しているスラリーの調製に用いるならば、処理すべき廃水量を著るしく減少させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は油性液体を含む架橋した極性樹脂粒子からの油性液体の除去に広く適用することができる。通常は油性液体中での懸濁重合により生成した架橋した極性樹脂粒子からの油性液体の除去に適用される。油性液体としては、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類など、懸濁重合の媒体として用いられている任意のものが挙げられる。油性液体は水と一緒に蒸発させるに際し蒸発し易いものであるのが好ましく、通常は水よりも低沸点のものが好ましい。特に好ましいのは、1気圧以下の圧力下で水と共沸組成物を形成するものである。
【0007】
架橋した極性樹脂粒子としては通常は塩基性イオン交換樹脂のような、極性基としてアミノ基又は第4級アンモニウム基を含むものが挙げられる。例えば(1)式で表されるイミダゾール化合物と、(2)式で表されるエピハロヒドリン化合物とを共重合させて得られる架橋共重合体が挙げられる。このものは経口投与によるコレステロール低減剤として用い得ることが知られており、この用途には、安全性を確保するため、樹脂中の油性液体の含有量は極微量に低減させなければならないが、本発明方法によれば容易に無害な量にまで低減させることができる。
【0008】
【化3】
【0009】
式中、R1 は水素原子又は炭素数1〜17のアルキル基若しくは炭素数6〜8のアリール基を表し、R2 及びR3 は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。好ましくはR1 は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2 及びR3 は水素原子である。
【0010】
【化4】
【0011】
式中、R4 は水素原子又はメチル基を表し、Xは塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表す。
(1)式で表されるイミダゾール化合物と(2)式で表されるエピハロヒドリンとから架橋共重合体を生成させるには、水性媒体中でイミダゾール化合物とエピハロヒドリンとを、モル比1:0.9〜1.5、好ましくは1:0.95〜1.05、温度30〜150℃、好ましくは80〜100℃で反応させて共重合体を生成させ、生成した共重合体を含む水溶液に架橋剤を加えて油性液体中に分散させ、懸濁状態で反応させて架橋させればよい。共重合体の生成反応は下記式で表される。
【0012】
【化5】
【0013】
好ましくは、上記で得られた共重合体に更にエピハロヒドリンを反応させたのちアルカリで処理して、共重合体にエポキシ基を生成させ、このエポキシ基を含む共重合体の水溶液を油性液体中に分散させて加熱すると、架橋剤を用いずともエポキシ基の部分で架橋反応が生起して架橋した極性樹脂粒子が生成する。共重合体にエピハロヒドリンを反応させるには、水中で共重合体のイミダゾール基に対し0.18〜0.32モル倍のエピハロヒドリンを加えて40〜70℃、好ましくは45〜55℃に0.5〜10時間、好ましくは1〜4時間反応させればよい。次いで添加したエピハロヒドリンとほぼ等モルの水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを加えて0.5〜2時間程度攪拌すると、共重合体にエポキシ基が導入される。この共重合体の水溶液を油性液体中に0.1〜2mm、好ましくは0.3〜1mm程度の液滴として分散させ、60〜150℃で2〜15時間程度反応させると架橋した共重合体が生成する。油性液体は安定した懸濁状態を形成させるため、共重合体水溶液の0.5〜5容量倍となるように用いるのが好ましい。また、油性液体中には常法により懸濁安定剤を添加しておくのが好ましい。
【0014】
所定時間懸濁重合させたならば、濾過して生成し架橋した極性樹脂粒子を取得し、次いでこれを水に懸濁させてスラリーとする。好ましくは油性液体を0.05重量%以上溶解している水に懸濁させる。油性液体を水と共に蒸発させて除去するのが目的であるから、油性液体を含む水を懸濁媒体に用いるのは一般的には好ましくないと考えられる。しかし本発明者らの検討によれば、油性液体を含まない水に架橋した極性樹脂粒子を懸濁させて直ちに加熱すると、激しい発泡や突沸が生じ易く、蒸発操作を安定して行うことが困難である。これに対し油性液体を0.05重量%以上溶解している水に架橋した極性樹脂粒子を懸濁させた場合には、直ちに加熱しても突沸などを生ずることもなく安定して蒸発させることができる。これは油性液体を含む架橋した極性樹脂粒子は水との混合性が悪いが、水に油性液体が溶解していると混合性が改善されることによるものと考えられる。水中の油性液体の濃度は0.1重量%以上、特に0.2重量%以上であるのが好ましい。
【0015】
また、油性液体が溶解している水に架橋した極性樹脂粒子を懸濁させる代りに、油性液体を含まない水に樹脂粒子を懸濁させ、攪拌して樹脂粒子から溶出する油性液体により水中の油性液体の濃度が所定の値に達してから、加熱・沸騰させるようにしてもよい。スラリーを調製する際の水と樹脂粒子との比率は、スラリーの流動性を確保できる範囲であれば任意である。樹脂粒子が吸水して膨潤する場合には、このことを考慮して比率を決定する。
【0016】
なお、蒸発操作の途中で水を補給する場合には、油性液体を含む水を補給する必要は無い。すなわち水中に0.05重量%以上の油性液体の存在を必要とするのは、加熱・沸騰させる操作の初期であって、いったん正常に加熱・沸騰が始まれば、以後は水中の油性液体の濃度は蒸発に伴って漸次低下するにまかせ、最終的には残留する廃水をそのまま公共水域に放流できる濃度にまで、水中の油性液体の濃度を低下させることができる。
【0017】
本発明の好ましい態様の一つは、蒸発により生成した蒸気を凝縮させて得た凝縮水を、次回の油性液体を含む架橋した極性樹脂粒子からの油性液体の除去に用いることである。凝縮水、特に蒸発初期及び中期の凝縮水には油性液体が相当量溶解しているので、これに新たな油性液体を含む架橋した極性樹脂粒子を懸濁させて加熱・沸騰させると、突沸等を生ずることなく安定した蒸発を行わせることができ、かつ油性液体が溶解している凝縮水の処理費用を節減できる。
蒸発操作は、架橋した極性樹脂粒子の変質を防止するため、できるだけ低温で行うのが好ましく、通常40〜95℃で行われる。従って通常は減圧下で行う。
【0018】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
架橋した極性樹脂粒子の製造;
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下漏斗を備えた四つ口フラスコに、2−メチルイミダゾール41.1g(0.5モル)と水60mlを仕込んだ。これにエピクロロヒドリン46.3g(0.5モル)を、滴下漏斗から80℃で1時間かけて滴下した。次いで90℃に加熱し、この温度で14時間反応させた。47℃に冷却したのち、これにエピクロロヒドリン9.3g(0.1モル)を加えて2時間攪拌した。これを27℃に冷却し、25%水酸化ナトリウム水溶液16g(0.1モル)を加えて1時間攪拌した。
セルロースアセテートブチレート2.5gを溶解させた1,2−ジクロロエタン250mlに上記で得た反応液を加え、攪拌して十分に分散させた。これを70℃に加熱して20時間反応させたのち、冷却した。濾過して生成した架橋共重合体を取得した。得られた架橋共重合体の粒径は1〜2mmであった。
【0019】
樹脂粒子に含まれている1,2−ジクロロエタンの除去;
水1500mlに1,2−ジクロロエタン1.5gを溶解させた溶液を、温度計及び攪拌機を備えた四つ口フラスコに仕込んだ。これに上記で得た架橋共重合体を乾量基準で100g加え、常圧下で攪拌しながら徐々に加熱したところ、突沸などを生ずることもなく蒸発が始まり、72℃で1,2−ジクロロエタンと水との共沸物が留去し始めた。内部温度が80℃に達した時点で冷却して温度を60℃とし、減圧して150mmHgの圧力下で引続き水を留出させた。この際、留出した水に見合った量の水を補給して、内部の水量がほぼ一定に保たれるようにした。減圧下での留出水量が1600mlに達したところで留出を終了させた。内部の水中の1,2−ジクロロエタンの濃度は24ppbと極めて微量であった。また、凝縮液の分液により得られた1,2−ジクロロエタンは19.0g、水は1605gで、この水には1,2−ジクロロエタンが4.8g溶解していた。
【0020】
比較例1
実施例1におけると同様にして架橋共重合体を製造した。乾量基準で100gのこの共重合体を1,2−ジクロロエタンを含まない水1500mlと共に四つ口フラスコに入れ、実施例1と全く同様にして常圧下で攪拌しながら徐々に加熱したところ、65℃付近から発泡と突沸が起り、安定した蒸発を行わせることが困難であった。泡と一緒にフラスコから流出した樹脂量は仕込み樹脂量の約3%であった。
【0021】
実施例2
実施例1におけると同様にして架橋共重合体を製造した。乾量基準で100gのこの共重合体を、実施例1で得られた凝縮水1500mlと共に四つ口フラスコに入れ、実施例1と全く同様にして常圧下で攪拌しながら徐々に加熱した。発泡や突沸を起すことなく安定して蒸発が進行した。留出液が610gに達した時点でフラスコ内の水相中の1,2−ジクロロエタンの濃度を分析したところ25ppbと極めて微量であった。
Claims (4)
- 脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体を含む架橋した塩基性イオン交換樹脂粒子からの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体の除去方法であって、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体を含む架橋した塩基性イオン交換樹脂粒子を水と混合し、撹拌させ、塩基性イオン交換樹脂粒子から脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体を溶出させて、0.05重量%以上の該脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体が溶解している水中に該塩基性イオン交換樹脂粒子が懸濁しているスラリーを調製し、次いでこのスラリーを加熱沸騰させて該脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体と水とを蒸発させて留去することを特徴とする方法。
- 脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体を含む架橋した塩基性イオン交換樹脂粒子からの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体の除去方法であって、0.05重量%以上の該脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体が溶解している水に、該脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体を含む架橋した塩基性イオン交換樹脂粒子を懸濁させてスラリーを調製し、次いでこのスラリーを加熱沸騰させて該脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体と水とを蒸発させて留去することを特徴とする方法。
- 脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素類から選ばれた油性液体が水と共沸混合物を形成するものであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の方法。
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