JP3982203B2 - ポリブタジエン及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制御されたミクロ構造及び制御されたリニアリティを有するポリブタジエン、並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリブタジエンは、いわゆるミクロ構造として、1, 4−位での重合で生成した結合部分(1, 4−構造)と1, 2−位での重合で生成した結合部分(1, 2−構造)とが分子鎖中に共存する。1, 4−構造は、更にシス構造とトランス構造の二種に分けられる。一方、1, 2−構造は、ビニル基を側鎖とする構造をとる。
【0003】
重合触媒によって、上記のミクロ構造が異なったポリブタジエンが製造されることが知られており、それらの特性によって種々の用途に使用されている。
特に、分子のリニアリティ(線状性)の高いポリブタジエンは、耐摩耗性、耐発熱性、反発弾性において優れた特性を有する。リニアリティの指標としては、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるム−ニ−粘度(ML1+4)との比であるTcp/ML1+4 が用いられる。Tcpは、濃厚溶液中での分子の絡合いの程度を示し、Tcp/ML1+4 が大きい程、分岐度は小さく線状性は大きい。
【0004】
特開平9−291108号公報などで開示されているように、バナジウム金属化合物のメタロセン型錯体並びに非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルミノキサンからなる重合触媒により、ハイシス構造に適度に1, 2−構造を含みトランス構造が少ないミクロ構造を有し且つ分子のリニアリティ(線状性)の高いポリブタジエンが製造されることが、本出願人により見出されている。このポリブタジエンは優れた特性を有することから、耐衝撃性ポリスチレン樹脂やタイヤなどへの応用が検討されている。しかしながら、比較的高いコールドフローを示すため、貯蔵や輸送の際に改善を求められる場合があった。
【0005】
一方、分岐構造を持った共役ジエンの製造方法が、特開平5−52406号公報に開示されている。該公報には、希土類元素の有機化合物、有機金属アルミニウム化合物、およびハロゲン含有ルイス酸からなる複合触媒の存在下に共役ジエン類を重合し、次いでカルボン酸とアルコール、またはフェノールとのエステル化合物などから選ばれるカップリング剤を添加し、分岐構造を有したジエン重合体を製造することが開示されている。
また、特開平8−208751号公報には、ネオジム触媒で重合されたジエンゴムを、塩化硫黄系化合物で処理することにより、コールドフローが改善され、ゴムの固有臭気も改善することが開示されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ハイシス構造に適度に1, 2−構造を含みトランス構造が少ないミクロ構造を有し、且つコールドフローなどの特性が改善されたポリブタジエン及びその製造方法を提供するものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記の特性及びミクロ構造を有する原料ポリブタジエンを、(1)コバルト化合物、(2)有機アルミニウム、及び(3)水からなる遷移金属触媒の存在下で変性させて得られることを特徴とする下記の特性及びミクロ構造を有する変性ポリブタジエンを提供するものである。
原料ポリブタジエンの特性:25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が2.5以上。
原料ポリブタジエンのミクロ構造:1,2−構造含有率が4〜30%、シス−1,4−構造含有率が65〜95%、トランス−1,4−構造含有率が5%以下。
変性ポリブタジエンの特性:コールドフロー速度(CF)が20mg/min未満。
変性ポリブタジエンのミクロ構造:1,2−構造含有率が4〜30%、シス−1,4−構造含有率が65〜95%、トランス−1,4−構造含有率が5%以下。
【0008】
また、本発明は、上記の本発明の変性ポリブタジエンの製造方法として下記(1) 及び(2) の方法を提供するものである。
(1) 「(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルモキサンからなる触媒を用いて、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が2.5以上である原料ポリブタジエンを製造した後、さらに、(1)コバルト化合物、(2)有機アルミニウム、及び(3)水からなる遷移金属触媒を添加して変性させることを特徴とする変性ポリブタジエンの製造方法。」
(2) 「(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物、(C)周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物、及び(D)水からなる触媒を用いて、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が2.5以上である原料ポリブタジエンを製造した後、さらに、(1)コバルト化合物、(2)有機アルミニウム、及び(3)水からなる遷移金属触媒を添加して変性させることを特徴とする変性ポリブタジエンの製造方法。」
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリブタジエン及びその製造方法について詳述する。
本発明で反応に用いられる原料のポリブタジエンは、1,2−構造含有率が4〜30%、好ましくは5〜25%、より好ましくは7〜15%、シス−1,4−構造含有率が65〜95%、好ましくは70〜95%、より好ましくは70〜92%、トランス−1,4−構造含有率が5%以下、好ましくは4.5%以下、より好ましくは0.5〜4%である。
【0010】
ミクロ構造が上記の範囲外であると、ポリマ−の反応性(グラフト反応や架橋反応性など)が適当でなく、添加剤などに用いたときのゴム的性質が低下し、物性のバランスや外観などに影響を与え好ましくない。
【0011】
本発明における原料のポリブタジエンのトルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるム−ニ−粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)は2.5以上であり、好ましくは3〜5である。
【0012】
また、本発明における原料のポリブタジエンのトルエン溶液粘度(Tcp)は、25〜600が好ましく、60〜300が特に好ましい。
【0013】
また、本発明における原料のポリブタジエンの100℃におけるム−ニ−粘度(ML1+4)は、10〜200が好ましく、25〜100が特に好ましい。
【0014】
本発明における原料のポリブタジエンの分子量は、トルエン中30℃で測定した固有粘度[η]として、0.1〜10が好ましく、1〜3が特に好ましい。
【0015】
また、本発明における原料のポリブタジエンの分子量は、ポリスチレン換算の分子量として下記の範囲のものが好ましい。
数平均分子量(Mn):0.2×105 〜10×105 、より好ましくは0.5×105 〜5×105
重量平均分子量(Mw):0.5×105 〜20×105 、より好ましくは1×105 〜10×105
また、本発明における原料のポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6〜10、さらに好ましくは1.8〜5である。
【0016】
本発明における原料のポリブタジエンは、例えば、(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルモキサンからなる触媒を用いて、ブタジエンを重合させて製造できる。
【0017】
あるいは、本発明における原料のポリブタジエンは、(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物、(C)周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物、及び(D)水からなる触媒を用いて、ブタジエンを重合させて製造できる。
【0018】
上記(A)成分の遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、周期律表第4〜8族遷移金属化合物のメタロセン型錯体が挙げられる。
【0019】
例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期律表第4族遷移金属化合物のメタロセン型錯体(例えば、CpTiCl3 など)、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体、クロムなどの第6族遷移金属化合物のメタロセン型錯体、コバルト、ニッケルなどの第8族遷移金属化合物のメタロセン型錯体が挙げられる。
【0020】
中でも、周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体が好適に用いられる。
【0021】
上記の周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、
(1) RM・La
(2) Rn MX2-n ・La
(3) Rn MX3-n ・La
(4) RMX3 ・La
(5) RM(O)X2 ・La
(6) Rn MX3-n (NR')
などの一般式で表される化合物が挙げられる(式中、nは1又は2、aは0、1又は2である)。
【0022】
中でも、RM・La、RMX3 ・La、RM(O)X2 ・Laなどが好ましく挙げられる。
【0023】
Mは、周期律表第5族遷移金属化合物であり、具体的にはバナジウム(V)、ニオブ(Nb)、またはタンタル(Ta)であり、好ましい金属はバナジウムである。
【0024】
Rは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、フルオレニル基又は置換フルオレニル基を示す。
【0025】
置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基又は置換フルオレニル基における置換基としては、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ヘキシルなどの直鎖状脂肪族炭化水素基または分岐状脂肪族炭化水素基、フェニル、トリル、ナフチル、ベンジルなど芳香族炭化水素基、トリメチルシリルなどのケイ素原子を含有する炭化水素基などが挙げられる。さらに、シクロペンタジエニル環がXの一部と互いにジメチルシリル、ジメチルメチレン、メチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、エチレン、置換エチレンなどの架橋基で結合されたものも含まれる。
【0026】
Xは、水素、ハロゲン、炭素数1から20の炭化水素基、アルコキシ基、又はアミノ基を示す。Xはすべて同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0027】
ハロゲンの具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0028】
炭素数1から20の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、プロピルなどの直鎖状脂肪族炭化水素基または分岐状脂肪族炭化水素基、フェニル、トリル、ナフチル、ベンジルなどの芳香族炭化水素基などが挙げられる。さらにトリメチルシリルなどのケイ素原子を含有する炭化水素基も含まれる。中でも、メチル、ベンジル、トリメチルシリルメチルなどが好ましい。
【0029】
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、プロポキシ、ブトキシなどが挙げられる。さらに、アミルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、メチルチオなどを用いてもよい。
【0030】
アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ビストリメチルシリルアミノなどが挙げられる。
【0031】
以上の中でも、Xとしては、水素、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル、エチル、ブチル、メトキシ、エトキシ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ビストリメチルシリルアミノなどが好ましい。
【0032】
Lは、ルイス塩基であり、金属に配位できるルイス塩基性の一般的な無機、有機化合物である。その内、活性水素を有しない化合物が特に好ましい。具体例としては、エ−テル、エステル、ケトン、アミン、ホスフィン、シリルオキシ化合物、オレフィン、ジエン、芳香族化合物、アルキンなどが挙げられる。
【0033】
NR' はイミド基であり、R' は、炭素数1から25の炭化水素置換基である。R' の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、ネオペンチルなどの直鎖状脂肪族炭化水素基または分岐状脂肪族炭化水素基、フェニル、トリル、ナフチル、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニル−2−プロピル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニルなどの芳香族炭化水素基などが挙げられる。さらにトリメチルシリルなどのケイ素原子を含有する炭化水素基も含まれる。
【0034】
これらの周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体の中でも特に、Mがバナジウムであるバナジウム化合物が好ましい。例えば、RV・La、RVX・La、R2 V・La、RVX2 ・La、R2 VX・La、RVX3 ・La、RV(O)X2 ・Laなどが好ましく挙げられる。特に、RV・La、RVX3 ・La、RV(O)X2 ・Laが好ましい。
【0035】
上記のRMX3 ・Laで示される具体的な化合物としては、以下の(i)〜(xvi)のものが挙げられる。
【0036】
(i) シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドが挙げられる。モノ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、メチルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、エチルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、プロピルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、イソプロピルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0037】
(ii) 1,2−ジ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0038】
(iia) 1,3−ジ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0039】
(iii) 1,2,3−トリ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0040】
(iv) 1,2,4−トリ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0041】
(v) テトラ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0042】
(vi) ペンタ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0043】
(vii)インデニルバナジウムトリクロライドが挙げられる。
(viii)置換インデニルバナジウムトリクロライド、例えば、(2−メチルインデニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0044】
(ix) (i)〜(viii)の化合物の塩素原子をアルコキシ基で置換したモノアルコキシド、ジアルコキシド、トリアルコキシドなどが挙げられる。例えば、シクロペンタジエニルバナジウムトリt−ブトキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムトリi−プロポキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムジメトキシクロライドなどが挙げられる。
【0045】
(x) (i)〜(ix)の塩素原子をメチル基で置換したメチル体が挙げられる。
【0046】
(xi) RとXが炭化水素基、シリル基によって結合されたものが挙げられる。例えば、(t−ブチルアミド)ジメチル(η5 −シクロペンタジエニル)シランバナジウムジクロライドなどが挙げられる。
【0047】
(xii) (xi)の塩素原子をメチル基で置換したメチル体が挙げられる。
【0048】
(xiii) (xi)の塩素原子をアルコキシ基で置換したモノアルコキシ体、ジアルコキシ体が挙げられる。
【0049】
(xiv) (xiii)のモノクロル体をメチル基で置換した化合物が挙げられる。
【0050】
(xv) (i)〜(viii)の塩素原子をアミド基で置換したアミド体が挙げられる。例えば、シクロペンタジエニルトリス(ジエチルアミド)バナジウム、シクロペンタジエニルトリス(i−プロピルアミド)バナジウムなどが挙げられる。
【0051】
(xvi) (xv)の塩素原子を、メチル基で置換したメチル体が挙げられる。
【0052】
上記のRM(O)X2 で表される具体的な化合物としては、以下の(イ)〜(ニ)のものが挙げられる。
(イ) シクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、メチルシクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、ベンジルシクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)オキソバナジウムジクロライドなどが挙げられる。
上記の各化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体も挙げられる。
【0053】
(ロ) RとXが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、(t−ブチルアミド)ジメチル(η5 −シクロペンタジエニル)シランオキソバナジウムクロライドなどのアミドクロライド体、あるいはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体などが挙げられる。
【0054】
(ハ) シクロペンタジエニルオキソバナジウムジメトキサイド、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジi−プロポキサイドなどが挙げられる。
上記の各化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体も挙げられる。
【0055】
(ニ) (シクロペンタジエニル)ビス(ジエチルアミド)オキソバナジウム、などが挙げられる。
【0056】
上記(B)成分のうち、非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物を構成する非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレ−ト、テトラ(フルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トなどが挙げられる。
【0057】
一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。
【0058】
カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンを挙げることができる。
【0059】
アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(i−プロピル)アンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。
【0060】
ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオンなどのトリアリ−ルホスホニウムカチオンを挙げることができる。
【0061】
該イオン性化合物は、上記で例示した非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを好ましく用いることができる
【0062】
中でも、イオン性化合物としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、トリフェニルカルボニウムテトラキス(フルオロフェニル)ボレ−ト、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、1,1' −ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トなどが好ましい。イオン性化合物を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
また、(B)成分として、アルモキサンを用いてもよい。アルモキサンとしては、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(−Al(R’)O)n で示される鎖状アルミノキサン、あるいは環状アルミノキサンが挙げられる。(R' は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/ 又はアルコキシ基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である)。R' としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられる。
【0064】
トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムの混合物を原料として用いたアルモキサンを好適に用いることができる。
【0065】
また、縮合剤としては、典型的なものとして水が挙げられるが、この他に該トリアルキルアルミニウムが縮合反応する任意のもの、例えば無機物などの吸着水やジオ−ルなどが挙げられる。
【0066】
(A)成分及び(B)成分に、さらに(C)成分として周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物を組合せて共役ジエンの重合を行ってもよい。(C)成分の添加により重合活性が増大する効果がある。周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。
【0067】
具体的な化合物としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ビストリメチルシリルメチルリチウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジエチル亜鉛、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリフッ化ホウ素、トリフェニルホウ素などを挙げられる。
【0068】
さらに、エチルマグネシウムクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドのような有機金属ハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機金属化合物も含まれる。また有機金属化合物は、二種類以上併用できる。
【0069】
上記の触媒各成分の組合せとして、(A)成分としてシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl3 )などのRMX3 、あるいは、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド(CpV(O)Cl2 )などのRM(O)X2 、(B)成分としてトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、(C)成分としてトリエチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムの組合せが好ましく用いられる。
【0070】
また、(B)成分としてイオン性化合物を用いる場合は、(C)成分として上記のアルモキサンを組み合わせて使用してもよい。
【0071】
各触媒成分の配合割合は、各種条件及び組合せにより異なるが、(A)成分のメタロセン型錯体と(B)成分のアルモキサンのモル比(B)/(A)は、好ましくは1〜100000、より好ましくは10〜10000である。
【0072】
(A)成分のメタロセン型錯体と(B)成分のイオン性化合物とのモル比(B)/(A)は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜5である。
【0073】
(A)成分のメタロセン型錯体と(C)成分の有機金属化合物とのモル比(C)/(A)は、好ましくは0.1〜10000、より好ましくは10〜1000である。
【0074】
また、本発明においては、触媒系として 更に、(D)成分として水を添加することが好ましい。
(C)成分の有機金属化合物と(D)成分の水とのモル比(C)/(D)は、好ましくは0.66〜5であり、より好ましくは0.7〜1.5である。
【0075】
触媒成分の添加順序は、特に、制限はない。
【0076】
また重合時に、必要に応じて水素を共存させることができる。
【0077】
水素の存在量は、ブタジエン1モルに対して、好ましくは500ミリモル以下、あるいは、20℃1気圧で12L以下であり、より好ましくは50ミリモル以下、あるいは、20℃1気圧で1.2L以下である。
【0078】
ここの段階(遷移金属触媒を添加して変性させる前の段階)で重合すべきブタジエンモノマ−は、全量であっても一部であってもよい。該段階で重合すべきブタジエンモノマ−がモノマ−の一部の場合は、上記触媒成分の混合物を残部のブタジエンモノマ−あるいは残部のブタジエンモノマ−溶液にも混合しておくことができる。これらの残部のブタジエンモノマ−あるいは残部のブタジエンモノマ−溶液は、重合反応後、後述する遷移金属触媒の添加前あるいは添加後に、追加添加される。
【0079】
ブタジエンモノマ−以外にイソプレン、1, 3−ペンタジエン、2−エチル−1, 3−ブタジエン、2, 3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2, 4−ヘキサジエンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ブテン−2、イソブテン、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又はスチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1, 5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等を少量含んでいてもよい。
【0080】
重合方法は、特に制限はなく、溶液重合、又は、1, 3−ブタジエンそのものを重合溶媒として用いる塊状重合などを適用できる。重合溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n −ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒や、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0081】
本発明においては、上記の触媒を用いて所定の温度で予備重合を行うことが好ましい。予備重合は、気相法、溶液法、スラリ−法、塊状法などで行うことができる。予備重合において得られた固体あるいは溶液は分離してから本重合に用いるか、あるいは、分離せずに本重合を続けて行うことができる。
【0082】
重合温度は−100〜200℃の範囲が好ましく、−50〜120℃の範囲が特に好ましい。重合時間は2分〜12時間の範囲が好ましく、5分〜6時間の範囲が特に好ましい。
【0083】
重合反応が所定の重合率を達成した後、遷移金属触媒を添加し、反応させることによってポリマー鎖を変性する。
【0084】
本発明における遷移金属触媒は、遷移金属化合物、有機アルミニウム、および水からなる系であることが好ましい。
【0085】
遷移金属触媒における遷移金属化合物としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、バナジウム化合物、クロム化合物、マンガン化合物、鉄化合物、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物、銅化合物、銀化合物、亜鉛化合物などが挙げられる。中でも、コバルト化合物が特に好ましい。
【0086】
コバルト化合物としては、コバルトの塩や錯体が好ましく用いられる。特に好ましいものは、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、酢酸コバルト、マロン酸コバルト等のコバルト塩や、コバルトのビスアセチルアセトネートやトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルコバルト、ハロゲン化コバルトのトリアリールホスフィン錯体、トリアルキルホスフィン錯体、ピリジン錯体、ピコリン錯体等の有機塩基錯体、もしくはエチルアルコール錯体などが挙げられる。
【0087】
中でも、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、コバルトのビスアセチルアセトネート及びトリスアセチルアセトネートが好ましい。
【0088】
遷移金属触媒における有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、ジブチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムアイオダイドなどのジアルキルアルミニウムハロゲン化物、メチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイドなどのアルキルセスキハロゲン化アルミニウム、メチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイドなどのモノアルキルアルミニウムハロゲン化物が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を選択して混合して用いても良い。なかでも、ジエチルアルミニウムクロライドが好ましく用いられる。
【0089】
本発明における遷移金属触媒において、コバルト化合物の添加量は、所望の分岐度によって、いかなる範囲の触媒量も使用できるが、好ましくは変性反応時に存在するブタジエン1モルあたり、遷移金属化合物1×10-7〜1×10-3モルであり、特に好ましくは5×10-7〜1×10-4モルである。
【0090】
有機アルミニウムの添加量は、所望の分岐度によって、いかなる範囲の触媒量も使用できるが、好ましくは変性反応時に存在するブタジエン1モルあたり、有機アルミニウム1×10-5〜5×10-2モルであり、特に好ましくは5×10-5〜1×10-2モルである。
【0091】
水の添加量は、所望の分岐度によって、いかなる範囲の量も使用できるが、好ましくは有機アルミニウム化合物1モルあたり、1.5モル以下であり、特に好ましくは1モル以下である。
【0092】
所定時間重合を行った後、アルコ−ルなどの停止剤を注入して重合を停止した後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。
【0093】
本発明で得られる変性ポリブタジエンは、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるム−ニ−粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が、好ましくは3以下、より好ましくは0.9〜3、特に好ましくは1.2〜2.5である。
【0094】
また、本発明で得られる変性ポリブタジエンは、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)が、好ましくは30〜300であり、より好ましくは45〜200である。
【0095】
また、本発明で得られる変性ポリブタジエンは、100℃におけるム−ニ−粘度(ML1+4)が、好ましくは10〜200、より好ましくは25〜100である。
【0096】
また、本発明で得られる変性ポリブタジエンは、コールドフロー速度(CF)が、20mg/min未満であり、15mg/min未満であることが特に好ましい。
【0097】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。但し、実施例14は参考例である。
尚、ミクロ構造、固有粘度( [η] )、トルエン溶液粘度(Tcp)、ムーニー粘度(ML1+4 、100℃)及びコールドフロー速度(CF)の測定方法は、次の通りである。
【0098】
ミクロ構造は、赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス740cm-1、トランス967cm-1、ビニル910cm-1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
【0099】
固有粘度([η])は、トルエン溶液を使用して、30℃で測定した。
【0100】
トルエン溶液粘度(Tcp)は、ポリマー2.28g をトルエン50mlに溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS Z 8809)を用い、キャノンフェンスケ粘度計No.400を使用して、25℃で測定した。
【0101】
ムーニー粘度(ML1+4 、100℃)は、JIS K 6300に準拠して測定した。
【0102】
コールドフロー速度(CF)は、得られたポリマーを50℃に保ち、内径6.4mmのガラス管で180mmHgの差圧により10分間吸引し、吸い込まれたポリマー重量を測定することにより、1分間当たり吸引されたポリマー量として求めた。
【0103】
合成例1(原料ポリブタジエンの製造)
内容量1.7Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン260ml、ブタジエン140mlを仕込んで攪拌する。次いで、水6μlを添加して30分間攪拌を続けた。20℃、1気圧換算で90mlの水素を積算マスフロメーターで計量して注入し、次いで、トリエチルアルミニウム(TEA)1mol/Lのトルエン溶液0.36mlを添加して3分間攪拌後、シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl3 )5mmol/Lのトルエン溶液0.4ml、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3 CB(C6 F5 )4 )2.5mmol/Lのトルエン溶液1.2mlの順に加え、重合温度40℃で30分間重合を行った。
反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥させてポリブタジエン40g得た。得られたポリマーを以下実施例1〜7並びに比較例1〜2の原料ポリブタジエンとみなした。表2(合成例1)に原料ポリブタジエンの物性を示した。
【0104】
実施例1(変性ポリブタジエンの製造)
合成例1と同様の操作で、重合温度40℃で30分間重合を行った後、さらに、水を300mg/L含むトルエン4.2ml、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)1mol/Lのトルエン溶液4ml、オクチル酸コバルト(Co(Oct)2 )5mmol/Lのトルエン溶液2mlを加えて40℃で10分間反応させた。
反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥させて、変性ポリブタジエンを得た。表1、2に重合結果を示した。
【0105】
実施例2(変性ポリブタジエンの製造)
重合後に添加する含水トルエン(300mg/L)を8.4mlとした他は実施例1と同様の操作を行った。表1、2に重合結果を示した。
【0106】
実施例3(変性ポリブタジエンの製造)
重合後に添加する含水トルエン(300mg/L)の代わりに、水5μlを加えた他は実施例1と同様の操作を行った。表1、2に重合結果を示した。
【0107】
実施例4(変性ポリブタジエンの製造)
重合後に添加する含水トルエン(300mg/L)の代わりに、水10μlを加えた他は実施例1と同様の操作を行った。表1、2に重合結果を示した。
【0108】
実施例5(変性ポリブタジエンの製造)
重合後の反応時間を5分間にした他は実施例2と同様の操作を行った。表1、2に重合結果を示した。
【0109】
実施例6(変性ポリブタジエンの製造)
重合後の反応時間を5分間にした他は実施例3と同様の操作を行った。表1、2に重合結果を示した。
【0110】
実施例7(変性ポリブタジエンの製造)
重合後の反応時間を15分間にした他は実施例3と同様の操作を行った。表1、2に重合結果を示した。
【0111】
比較例1(ポリブタジエンの製造)
合成例1と同様の操作で、重合温度40℃で30分間重合を行った後、何も添加せずに、さらに10分間攪拌を続けた(すなわち、40分間重合を行った)ほかは、実施例1と同様の操作を行った。表1、2に重合結果を示した。
【0112】
比較例2(ポリブタジエンの製造)
実施例1において、重合後にオクチル酸コバルトを添加しなかった以外は同様の操作を行った。表1、2に重合結果を示した。
【0113】
合成例2(原料ポリブタジエンの製造)
内容量1.7Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン260ml、ブタジエン140mlを仕込んで攪拌する。次いで、水6μlを添加して30分間攪拌を続けた。20℃、1気圧換算で95mlの水素を積算マスフロメーターで計量して注入し、次いで、トリエチルアルミニウム(TEA)1mol/Lのトルエン溶液0.36mlを添加して3分間攪拌後、シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl3 )5mmol/Lのトルエン溶液0.42ml、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3 CB(C6 F5 )4 )2.5mmol/Lのトルエン溶液1.25mlの順に加え、重合温度40℃で30分間重合を行った。
反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥させてポリブタジエン41g得た。表4(合成例2)に原料ポリブタジエンの物性を示した。得られたポリマーを以下実施例8〜11並びに比較例3の原料ポリブタジエンとみなした。
【0114】
実施例8(変性ポリブタジエンの製造)
合成例2と同様の操作で、重合温度40℃で30分間重合を行った後、さらに、水を300mg/L含むトルエン8.4ml、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)1mol/Lのトルエン溶液2ml、オクチル酸コバルト(Co(Oct)2 )5mmol/Lのトルエン溶液1mlを加えて40℃で5分間反応させた。
反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥させて、変性ポリブタジエンを得た。表3、4に重合結果を示した。
【0115】
実施例9(変性ポリブタジエンの製造)
重合後に添加する含水トルエン(300mg/L)の代わりに、水5μlを加えた他は実施例8と同様の操作を行った。表3、4に重合結果を示した。
【0116】
実施例10(変性ポリブタジエンの製造)
重合後に添加する含水トルエン(300mg/L)の代わりに、水8μlを加えた他は実施例8と同様の操作を行った。表3、4に重合結果を示した。
【0117】
実施例11(変性ポリブタジエンの製造)
ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)1mol/Lのトルエン溶液の添加量を1ml、オクチル酸コバルト(Co(Oct)2 )5mmol/Lのトルエン溶液の添加量を0.5mlとした他は実施例9と同様の操作を行った。表3、4に重合結果を示した。
【0118】
比較例3(ポリブタジエンの製造)
合成例2と同様の操作で、重合温度40℃で30分間重合を行った後、何も添加せずに、さらに5分間攪拌を続けた(すなわち、35分間重合を行った)ほかは、実施例8と同様の操作を行った。表3、4に重合結果を示した。
【0119】
合成例3(原料ポリブタジエンの製造)
内容量1.7Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン260ml、ブタジエン140mlを仕込んで攪拌する。次いで、水5μlを添加して30分間攪拌を続けた。20℃、1気圧換算で100mlの水素を積算マスフロメーターで計量して注入し、次いで、トリエチルアルミニウム(TEA)1mol/Lのトルエン溶液0.36mlを添加して3分間攪拌後、シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl3 )5mmol/Lのトルエン溶液0.5ml、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3 CB(C6 F5 )4 )2.5mmol/Lのトルエン溶液1.5mlの順に加え、重合温度40℃で30分間重合を行った。
反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥させてポリブタジエン40g得た。表6(合成例3)に原料ポリブタジエンの物性を示した。得られたポリマーを以下実施例12〜16の原料ポリブタジエンとみなした。
【0120】
実施例12(変性ポリブタジエンの製造)
水素の添加量を20℃、1気圧換算で115mlとした他は合成例3と同様の操作で、重合温度40℃で30分間重合を行った後、さらに、水を300mg/L含むトルエン10ml、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)1mol/Lのトルエン溶液0.2ml、オクチル酸コバルト(Co(Oct)2 )5mmol/Lのトルエン溶液0.5mlを加えて40℃で15分間反応させた。反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥させて、変性ポリブタジエンを得た。表5、6に重合結果を示した。
【0121】
実施例13(変性ポリブタジエンの製造)
水素添加量を20℃、1気圧換算で130mlとし、重合後に含水トルエン(300mg/L)の代わりに水7μlを添加し、DEACの1mol/Lトルエン溶液添加量を0.5mlとした他は実施例12と同様の操作を行った。表5、6に重合結果を示した。
【0122】
実施例14(変性ポリブタジエンの製造)
内容量1.7Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン260ml、ブタジエン140mlを仕込んで攪拌する。次いで、水5μlを添加して30分間攪拌を続けた。20℃、1気圧換算で110mlの水素を積算マスフロメーターで計量して注入し、次いで、トリエチルアルミニウム(TEA)1mol/Lのトルエン溶液0.36mlを添加して3分間攪拌後、シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl3 )5mmol/Lのトルエン溶液0.5ml、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3 CB(C6 F5 )4 )2.5mmol/Lのトルエン溶液1.5mlの順に加え、重合温度40℃で30分間重合を行った。さらに、水を300mg/L含むトルエン4.8ml、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)1mol/Lのトルエン溶液0.1ml、オクチル酸コバルト(Co(Oct)2 )5mmol/Lのトルエン溶液0.5mlを加えて40℃で30分間反応させた。
反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥させて、変性ポリブタジエンを得た。表5、6に重合結果を示した。
【0123】
実施例15(変性ポリブタジエンの製造)
水素添加量を20℃、1気圧換算で140mlとし、重合後に含水トルエン(300mg/L)の代わりに水5μlを添加し、DEACの1mol/Lトルエン溶液添加量を0.3mlとした他は実施例14と同様の操作を行った。表5、6に重合結果を示した。
【0124】
実施例16(変性ポリブタジエンの製造)
重合後に添加する水の量を8μlとし、DEACの1mol/Lトルエン溶液添加量を0.5mlとした他は実施例15と同様の操作を行った。表5、6に重合結果を示した。
【0125】
合成例4(原料ポリブタジエンの製造)
内容量1.7Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン260ml、ブタジエン140mlを仕込んで攪拌する。次いで、水5.4 μlを添加して30分間攪拌を続けた。20℃、1気圧換算で100mlの水素を積算マスフロメーターで計量して注入し、次いで、トリエチルアルミニウム(TEA)1mol/Lのトルエン溶液0.36mlを添加して3分間攪拌後、シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl3 )5mmol/Lのトルエン溶液0.5ml、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3 CB(C6 F5 )4 )2.5mmol/Lのトルエン溶液1.5mlの順に加え、重合温度40℃で30分間重合を行った。
反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥させてポリブタジエン42g得た。表8(合成例4)に原料ポリブタジエンの物性を示した。得られたポリマーを以下実施例17〜22の原料ポリブタジエンとみなした。
【0126】
実施例17(変性ポリブタジエンの製造)
水素添加量を20℃、1気圧換算で110mlとした他は合成例4と同様の操作で、重合温度40℃で30分間重合を行った後、さらに、水を6μl、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)1mol/Lのトルエン溶液1.0ml、オクチル酸コバルト(Co(Oct)2 )5mmol/Lのトルエン溶液0.5mlを加えて40℃で15分間反応させた。
反応後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含有するエタノールを注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥させて、変性ポリブタジエンを得た。表7、8に重合結果を示した。
【0127】
実施例18(変性ポリブタジエンの製造)
水素添加量を20℃、1気圧換算で125mlとし且つ重合後に1,3−ブタジエン31g(50ml)を追加した他は実施例17と同様の操作を行った。表7、8に重合結果を示した。
【0128】
実施例19(変性ポリブタジエンの製造)
水素添加量を20℃、1気圧換算で130mlとし且つ重合後に1,3−ブタジエン62g(100ml)を追加した他は実施例17と同様の操作を行った。表7、8に重合結果を示した。
【0129】
実施例20(変性ポリブタジエンの製造)
水素添加量を20℃、1気圧換算で100mlとし且つ重合後に水を300mg/L含むトルエン4.2ml、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)1mol/Lのトルエン溶液0.1ml、オクチル酸コバルト(Co(Oct)2 )5mmol/Lのトルエン溶液0.5mlを添加した他は実施例17と同様の操作を行った。表7、8に重合結果を示した。
【0130】
実施例21(変性ポリブタジエンの製造)
水素添加量を20℃、1気圧換算で105mlとし且つ重合後に1,3−ブタジエン31g(50ml)を追加した他は実施例20と同様の操作を行った。表7、8に重合結果を示した。
【0131】
実施例22(変性ポリブタジエンの製造)
水素添加量を20℃、1気圧換算で105mlとし且つ重合後に1,3−ブタジエン62g(100ml)を追加した他は実施例20と同様の操作を行った。表7、8に重合結果を示した。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
【表5】
【0137】
【表6】
【0138】
【表7】
【0139】
【表8】
【0140】
上記の実施例から明らかなように、本発明によれば、ハイシス構造に適度に1, 2−構造を含みトランス構造が少ないミクロ構造を持ち、分子のリニアリティが高いポリブタジエンを、そのミクロ構造を変えることなくリニアリティを低下させ、コールドフローの特性が改善されたポリブタジエンとすることができる。
【0141】
【発明の効果】
本発明の変性ポリブタジエンは、ハイシス構造に適度に1, 2−構造を含みトランス構造が少ないミクロ構造を有し、且つコールドフローなどの特性が改善されたものである。
また、本発明のポリブタジエンの製造方法によれば、上記の本発明の変性ポリブタジエンを得ることができる。
Claims (8)
- 下記の特性及びミクロ構造を有する原料ポリブタジエンを、(1)コバルト化合物、(2)有機アルミニウム、及び(3)水からなる遷移金属触媒の存在下で変性させて得られることを特徴とする下記の特性及びミクロ構造を有する変性ポリブタジエン。
原料ポリブタジエンの特性:25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が2.5以上。
原料ポリブタジエンのミクロ構造:1,2−構造含有率が4〜30%、シス−1,4−構造含有率が65〜95%、トランス−1,4−構造含有率が5%以下。
変性ポリブタジエンの特性:コールドフロー速度(CF)が20mg/min未満。
変性ポリブタジエンのミクロ構造:1,2−構造含有率が4〜30%、シス−1,4−構造含有率が65〜95%、トランス−1,4−構造含有率が5%以下。 - 原料ポリブタジエンが、(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルモキサンからなる触媒を用いて製造されたものである請求項1に記載の変性ポリブタジエン。
- 原料ポリブタジエンが、(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物、(C)周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物、及び(D)水からなる触媒を用いて製造されたものである請求項1に記載の変性ポリブタジエン。
- 変性ポリブタジエンの、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が3以下である請求項1に記載の変性ポリブタジエン。
- (A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルモキサンからなる触媒を用いて、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が2.5以上である原料ポリブタジエンを製造した後、さらに、(1)コバルト化合物、(2)有機アルミニウム、及び(3)水からなる遷移金属触媒を添加して変性させることを特徴とする変性ポリブタジエンの製造方法。
- 遷移金属触媒を添加する前あるいは後に、ブタジエンモノマーを追加添加する請求項5に記載の変性ポリブタジエンの製造方法。
- (A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物、(C)周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物、及び(D)水からなる触媒を用いて、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が2.5以上である原料ポリブタジエンを製造した後、さらに、(1)コバルト化合物、(2)有機アルミニウム、及び(3)水からなる遷移金属触媒を添加して変性させることを特徴とする変性ポリブタジエンの製造方法。
- 遷移金属触媒を添加する前あるいは後に、ブタジエンモノマーを追加添加する請求項7に記載の変性ポリブタジエンの製造方法。
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