JP3867538B2 - ポリブタジエンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、共役ジエン重合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
共役ジエンは、重合触媒によって種々のミクロ構造を有するポリマ−が得られることが知られている。コバルト化合物と有機アルミニウム化合物を用い、ハイシス構造のポリブタジエンを製造する方法が公知であるが、ハイシス構造に1,2−構造を適度に含んだポリブタジエンは、ビニル芳香族系重合体の耐衝撃性付与剤が期待されている。
【0003】
近年、メタロセン系型錯体を触媒として用いた各種のオレフィン重合の開発が活発に進められ、共役ジエンの重合についても研究が行われている。
【0004】
メタロセン系型錯体を用いた共役ジエンの重合としては、例えば、Macromol. Symp.,89,383(1995)に、周期律表第4族遷移金属化合物であるシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド(CpTiCl3)とメチルアルモキサンとからなる触媒系が報告されているが、重合活性が低い問題点がある。
【0005】
特公昭46−20494号公報には、CpVCl3+(i−C4H9)3Al/AlCl3+H2Oからなる触媒系によるポリブタジエンの製造方法が開示されているが、重合活性が低い問題点がある。
【0006】
また、Polymer vol.37 (2) p.363 (1996) には、周期律表第5族遷移金属のメタロセン型錯体であるCpVCl2 (PEt3 )2またはCp2VClなどのバナジウム(III)化合物とメチルアルモキサンとからなる触媒を用いて、ハイシス構造に10〜20%の1,2−構造を含んだポリブタジエンを製造する方法が報告されている。
【0007】
また、特開平9−20813号公報、特開平9−194526号公報には、特定構造のバナジウムメタロセン化合物+イオン化剤からなる触媒系にポリブタジエンの製造方法が開示されている。
【0008】
ブタジエン重合での分子量を調節する方法として、通常、コバルト化合物あるいはニッケル化合物−有機アルミニウム化合物によるハイシスポリブタジエン重合においては、例えば特公昭41−5474号公報にシクロオクタジエンを添加する方法が開示されている。
【0009】
しかし、周期律表第V族遷移金属化合物のメタロセン型錯体を用いた触媒系では、上記のシクロオクタジエンを重合系に添加すると、重合活性が低下したり、得られる共役ジエン重合体のミクロ構造が変化する問題点がある。
【0010】
特開平9−316122号公報、特開2000−119321号公報には、周期律表第V族遷移金属化合物のメタロセン型錯体を用いた触媒系には、共役ジエンを水素存在下に重合することにより、共役ジエンの重合体の分子量を調節する方法が開示されている。
【0011】
しかし、水素は重合槽に直接に導入されるため、重合体溶液の粘度が高くなると、重合槽内の水素濃度が不均一になり、分子量の調節が不安定になる場合があり改善が求められていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
不活性有機溶媒中での溶液重合において、水素による分子量調節を安定的に行う重合方法を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、不活性有機溶媒中での(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物、及び(C)周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物、から得られる触媒を用いる溶液重合において、あらかじめ該不活性有機溶媒と1,3−ブタジエンの混合溶液と水素ガスを、液中に水素ガスを通過させる方法で接触させ気液平衡により水素分圧を0.042〜0.069MPa(温度:5〜60℃)に調整させ、得られた水素含有不活性有機溶液を重合槽に添加させて1,3−ブタジエンを重合してポリブタジエンの分子量を調節し、該重合体の1,2−構造含有率が7〜15%、シス−1,4−構造含有率が70〜92%及びトランス1,4−構造含有率が0.5〜4%であるポリブタジエンの製造方法に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のおいて、溶液重合で重合できるモノマーとしては、1,3−ブタジエンを主成分とする共役ジエン化合物モノマーが好ましい。
【0019】
ここで重合すべき共役ジエン化合物モノマーとは、モノマーの全量であっても一部であってもよい。モノマーの一部の場合は、上記の接触混合物を残部のモノマーあるいは残部のモノマー溶液と混合することができる。共役ジエンの他に、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ブテン−2、イソブテン、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又はスチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等を少量含んでいてもよい。
【0020】
溶液重合での溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n-ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0021】
(A)成分の遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、周期律表第3〜8族遷移金属化合物のメタロセン型錯体が挙げられる。
【0022】
例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期律表第4族遷移金属のメタロセン型錯体(例えば、CpTiCl3など)、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの周期律表第5族遷移金属のメタロセン型錯体、クロムなどの第6族遷移金属メタロセン型錯体、コバルト、ニッケルなどの第8族遷移金属のメタロセン型錯体が挙げられる。また、ネオジウム、サマリウム、イットリウムなどの第3族遷移金属の錯体が挙げられる。
【0023】
中でも、周期律表第5族遷移金属のメタロセン型錯体が好適に用いられる。
【0024】
上記の周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、
(1) RM・La
(2) Rn MX2-n ・La
(3) Rn MX3-n ・La
(4) RMX3 ・La
(5) RM(O)X2 ・La
(6) Rn MX3-n (NR' )
などの一般式で表される化合物が挙げられる(式中、nは1又は2、aは0,1又は2である)。
【0025】
中でも、RM・La、RMX3 ・La 、RM(O)X2 ・La などが好ましく挙げられる。
【0026】
Mは、周期律表第5族遷移金属化合物が好ましい。具体的にはバナジウム(V)、ニオブ(Nb)、またはタンタル(Ta)であり、好ましい金属はバナジウムである。
【0027】
Rはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、フルオレニル基又は置換フルオレニル基を示す。
【0028】
置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基又は置換フルオレニル基における置換基としては、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ヘキシルなどの直鎖状脂肪族炭化水素基または分岐状脂肪族炭化水素基、フェニル、トリル、ナフチル、ベンジルなど芳香族炭化水素基、トリメチルシリルなどのケイ素原子を含有する炭化水素基などが挙げられる。さらに、シクロペンタジエニル環がXの一部と互いにジメチルシリルなどの架橋基で結合されたものも含まれる。
【0029】
置換シクロペンタジエニル基の具体例としては、メチルシクロペンタジエニル基、1,2−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジ(t−ブチル)シクロペンタジエニル基などが挙げられる。
【0030】
Xは水素、ハロゲン、炭素数1から20の炭化水素基、アルコキシ基、又はアミノ基を示す。Xはすべて同じであっても、互いに異なっていてもよい。
以上の中でも、水素、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル、エチル、ブチル、メトキシ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが好ましい。
【0031】
Lは、ルイス塩基であり、金属に配位できるルイス塩基性の一般的な無機、有機化合物である。その内、活性水素を有しない化合物が特に好ましい。具体例としては、エ−テル、エステル、ケトン、アミン、ホスフィン、シリルオキシ化合物、オレフィン、ジエン、芳香族化合物、アルキンなどが挙げられる。
【0032】
NR'はイミド基であり、R'は炭素数1から25の炭化水素置換基である。R' の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチルなどの直鎖状脂肪族炭化水素基または分岐状脂肪族炭化水素基、フェニル、トリルの芳香族炭化水素基などが挙げられる。さらにトリメチルシリルなどのケイ素原子を含有する炭化水素基も含まれる。
【0033】
(A)周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、中でも、Mがバナジウムであるバナジウム化合物が好ましい。例えば、RV・La、RVX・La、R2V・La、RVX2・La 、R2VX・La、RVX3・La 、RV(O)X2・La などが好ましく挙げられる。特に、RV・La、RVX3・Laが好ましい。
【0034】
RM・La、すなわち、シクロアルカジエニル基の配位子を有する酸化数+1の周期律表第5族遷移金属化合物としては、シクロペンタジエニル(ベンゼン)バナジウム、シクロペンタジエニル(トルエン)バナジウム、シクロペンタジエニル(キシレン)バナジウム、シクロペンタジエニル(トリメチルベンゼン)バナジウム、シクロペンタジエニル(ヘキサメチルベンゼン)バナジウム、シクロペンタジエニル(ナフタレン)バナジウムなどを挙げることができる。
【0035】
Rn MX2-n・Laで表わされる化合物のうち、n=1、すなわち、シクロアルカジエニル基を配位子として一個有する場合には、他のシグマ結合性配位子として、水素原子、塩素、臭素、沃素などのハロゲン原子、メチル基、フェニル基などの炭化水素基、メトキシ基などの炭化水素オキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などの炭化水素アミノ基を有することができる。
【0036】
さらに、他の配位子としては、アミン、アミド、ホスフィン、エ−テル、ケトン、エステル、オレフィン、ジエン、芳香族炭化水素、アルキンなどの中性のルイス塩基を有することもできる。活性水素のないルイス塩基が好ましい。
【0037】
Rn MX2-n・Laで表わされる化合物のうち、n=2、すなわち、シクロアルカジエニル基を配位子として二個有する場合には、各々のシクロアルカジエニル環が互いにMe2Si基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、エチレン基、置換エチレン基等の架橋基で結合されたものも含まれる。
【0038】
本発明のRnMX2-n・Laで表わされる化合物のうち、n=1、すなわち、シクロアルカジエニル基を配位子として一個有する酸化数+2の周期律表第5族遷移金属化合物の具体例としては、クロロシクロペンタジエニル(テトラヒドロフラン)バナジウム、クロロシクロペンタジエニル(トリメチルホスフィン)バナジウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリメチルホスフィン)バナジウム、クロロシクロペンタジエニル(1,2−ビスジメチルホスフィノエタン)バナジウム、クロロシクロペンタジエニル(1,2−ビスジフェニルホスフィノエタン)バナジウムなどが挙げられる。
【0039】
本発明のRn MX2-n ・Laで表わされる化合物のうち、n=2、すなわちシクロアルカジエニル基を配位子として二個有する酸化数+2の周期律表第5族遷移金属化合物の具体例としては、ビスシクロペンタジエニルバナジウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)バナジウム、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウム、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウム、ビス(1−メチル−3−ブチルシクロペタジエニル)バナジウム、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)バナジウムなどが挙げられる。
【0040】
Rn MX3-n・Laで表される具体的な化合物のうち、n=1の化合物としては、シクロペンタジエニルバナジウムジクロライド、メチルシクロペンタジエニルバナジウムジクロライド、(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムジクロライドなどのジクロライド体、あるいはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したジメチル体などが挙げられる。
【0041】
RとXが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、(t−ブチルアミド)ジメチル(η5−シクロペンタジエニル)シランバナジウムクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランバナジウムクロライドなどのアミドクロライド体、あるいはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体などが挙げられる。
【0042】
シクロペンタジエニルバナジウムジメトキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムジi−プロポキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムジt−ブトキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムジフェノキサイドなどのアルコキシド体、あるいはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体などが挙げられる。
【0043】
(シクロペンタジエニル)ビス(ジエチルアミド)バナジウム、(シクロペンタジエニル)ビス(ジi−プロピルアミド)バナジウムなどのビスアミド体が挙げられる。
【0044】
Rn MX3-n・Laで表される具体的な化合物のうち、n=2の化合物としては、ジシクロペンタジエニルバナジウムクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)バナジウムクロライドなどのクロライド体、あるいはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体などが挙げられる。
【0045】
ジシクロペンタジエニルバナジウムメトキサイド、ジシクロペンタジエニルバナジウムi−プロポキサイドなどが挙げられる。
【0046】
Rが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、ジメチルビス(η5−シクロペンタジエニル)シランバナジウムクロライドなどのクロライド体、あるいはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体などが挙げられる。
【0047】
RMX3で示される具体的な化合物としては、以下の(i)〜(xvi)のものが挙げられる。
【0048】
(i) シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドが挙げられる。モノ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、メチルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、エチルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0049】
(ii) 1,2−ジ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
(iia) 1,3−ジ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
(iii) 1,2,3−トリ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0050】
(iv) 1,2,4−トリ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0051】
(v) テトラ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
(vi) ペンタ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、例えば、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
(vii)インデニルバナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
(viii)置換インデニルバナジウムトリクロライド、例えば、(2−メチルインデニル)バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0052】
(ix) (i)〜(viii)の化合物の塩素原子をアルコキシ基で置換したモノアルコキシド、ジアルコキシド、トリアルコキシドなどが挙げられる。例えば、シクロペンタジエニルバナジウムトリt−ブトキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムi−プロポキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムジメトキシクロライド、トリメチルシリルシクロペンタジエニルバナジウムジi−プロポキシクロライドなどが挙げられる。
(x) (i)〜(ix)の塩素原子をメチル基で置換したメチル体が挙げられる。
【0053】
(xi) Rが炭化水素基、シリル基によって結合されたものが挙げられる。例えば、(t−ブチルアミド)ジメチル(η5−シクロペンタジエニル)シランバナジウムジクロライドなどが挙げられる。
(xii) (xi)の塩素原子をメチル基で置換したメチル体が挙げられる。
(xiii) (xi)の塩素原子をアルコキシ基で置換したモノアルコキシ体、ジアルコキシ体が挙げられる。
(xiv) (xiii)のモノクロル体をメチル基で置換した化合物が挙げられる。
【0054】
(xv) (i)〜(viii)の塩素原子をアミド基で置換したアミド体が挙げられる。例えば、シクロペンタジエニルトリス(ジエチルアミド)バナジウム、シリルシクロペンタジエニルトリス(i−プロピルアミド)バナジウム、シクロペンタジエニルトリス(n−オクチルアミド)バナジウム、シクロペンタジエニルビス(ジエチルアミド)バナジウムクロライドなどが挙げられる。
【0055】
(xvi) (xv)の塩素原子を、メチル基で置換したメチル体が挙げられる。
【0056】
RM(O)X2 で表される具体的な化合物としては、
シクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、メチルシクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、ベンジルシクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライドなどが挙げられる。
上記の各化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体も挙げられる。
【0057】
RとXが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、(t−ブチルアミド)ジメチル(η5−シクロペンタジエニル)シランオキソバナジウムクロライドなどのアミドクロライド体、あるいはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体などが挙げられる。
上記の各化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体も挙げられる。
【0058】
(シクロペンタジエニル)ビス(ジエチルアミド)オキソバナジウムなどが挙げられる。
【0059】
Rn MX3-n (NR')で表される具体的な化合物としては、
シクロペンタジエニル(メチルイミド)バナジウムジクロライド、シクロペンタジエニル(フェニルイミド)バナジウムジクロライド、シクロペンタジエニル(2,6−ジメチルフェニルイミド)バナジウムジクロライドなどが挙げられる。
【0060】
RとXが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、(t−ブチルアミド)ジメチル(η5−シクロペンタジエニル)シラン(フェニルイミド)バナジウムクロライドあるいはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体などが挙げられる。
【0061】
Rが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、ジメチルビス(η5−シクロペンタジエニル)シラン(フェニルイミド)バナジウムクロライドあるいはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体などが挙げられる。
【0062】
本発明の(B)成分のうち、非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物を構成する非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレ−ト、テトラ(フルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレ−トなどが挙げられる。
【0063】
一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。
【0064】
カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリス(置換フェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリス(置換フェニル)カルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンを挙げることができる。
【0065】
アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。
【0066】
該イオン性化合物は、上記で例示した非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを好ましく用いることができる
【0067】
中でも、イオン性化合物としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、トリフェニルカルボニウムテトラキス(フルオロフェニル)ボレ−トなどが好ましい。
【0068】
イオン性化合物を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明における(C)成分の周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。
【0070】
具体的な化合物としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、ネオペンチルリチウム、トリメチルシリルメチルリチウム、ビストリメチルシリルメチルリチウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、三フッ化ホウ素、トリフェニルホウ素などを挙げられる。
【0071】
さらに、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドのような有機金属ハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機金属化合物も含まれる。
【0072】
本発明における(C)成分の周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物が好ましい。
有機アルミニウム化合物の具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどの有機アルミニウムハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機アルミニウム化合物などが挙げられる。
【0073】
また、(C)成分として、アルモキサンを用いることができる。アルモキサンとしては、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(−Al(R‘)O−)nで示される鎖状アルミノキサン、あるいは環状アルミノキサンが挙げられる。(R‘は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である)。R‘として、はメチル、エチル、プロピル、イソブチル基が挙げられるが、メチル基及びエチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられる。
【0074】
トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムの混合物を原料として用いたアルモキサンを好適に用いることができる。
【0075】
また、縮合剤としては、典型的なものとして水が挙げられるが、この他に該トリアルキルアルミニウムが縮合反応する任意のもの、例えば無機物などの吸着水やジオ−ルなどが挙げられる。
上記の有機金属化合物は、二種類以上併用することができる。
【0076】
(A)成分のメタロセン型錯体と(B)成分のイオン性化合物とのモル比は、好ましくは1:0.1〜1:10、より好ましくは1:0.2〜1:5である。
【0077】
(A)成分のメタロセン型錯体と(C)成分の有機金属化合物とのモル比は、好ましくは1:0.1〜1:1000、より好ましくは1:10〜1:1000である。
【0078】
(D)成分の水を用いる場合は、(C)成分の有機金属化合物と(D)成分の水とのモル比(C)/(D)は、0.66〜5であり、好ましくは0.7〜1.5、さらに好ましくは0.8〜1.5、である。
【0079】
触媒成分の添加順序は、特に、制限はないが、例えば次の順序で行うことができる。
▲1▼重合すべきモノマ−又はモノマ−と溶媒の混合物に(D)成分を添加し、(C)成分を添加した後、(A)成分と(B)成分を任意の順序で添加する。
▲2▼重合すべきモノマ−又はモノマ−と溶媒の混合物に(D)成分と(C)成分を添加した後、(A)成分と(B)成分を任意の順序で添加する。
【0080】
ここで、重合すべきモノマ−とは、全量であっても一部であってもよい。モノマ−の一部の場合は、上記の接触混合物を残部のモノマ−あるいは残部のモノマ−溶液と混合することができる。
【0081】
本発明においては、上記の触媒を用いて、水素の存在下に共役ジエン化合物を重合させて分子量を調節する。
【0082】
水素の存在量は、共役ジエン1モルに対して、好ましくは500ミリモル以下、あるいは、20℃1気圧で12L以下であり、より好ましくは50ミリモル以下、あるいは、20℃1気圧で1.2L以下であり、さらに好ましくは0.005〜20ミリモル、あるいは、20℃1気圧で0.00001〜0.48Lである。
【0083】
また、あらかじめ該不活性溶媒中の水素濃度を気液平衡により調整を行なう。この時、液中に水素ガスを通過させる方法などを用いて、気液平衡に達する時間を短縮する。不活性有機溶液中の水素濃度としては、溶液及び条件により異なるが、例えば、気相中の水素分圧0.042〜0.069MPa(温度:5〜60℃)の条件下、気液平衡により溶解する水素濃度である。その結果として得られる水素濃度は、例えば、0.1〜50wtppmが好ましい。
【0084】
この方法によって、分子量調節剤の水素を均一に重合系に添加でき、安定的にポリマーを製造できる。
【0085】
重合温度は−100〜120℃の範囲が好ましく、−50〜100℃の範囲が特に好ましい。重合時間は10分〜12時間の範囲が好ましく、30分〜6時間が特に好ましい。
【0086】
所定時間重合を行った後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。
【0087】
本発明で得られるポリブタジエンは、1,2−構造含有率が7〜15%、シス−1,4−構造含有率が70〜92%、トランス−1,4−構造含有率が0.5〜4%である。
【0088】
ミクロ構造が上記の範囲外であると、ポリマ−の反応性(グラフト反応や架橋反応性など)が適当でなく、添加剤などに用いたときのゴム的性質が低下し、物性のバランスや外観などに影響を与え好ましくない。
【0089】
また、本発明の重合方法を用いることにより、トルエン中30℃で測定した固有粘度[η]が 0.1〜20であるポリブタジエンを製造することができる。また、本発明の重合方法を用いることにより、ポリスチレンを標準物質として用いたGPCから求めた重量平均分子量が、1万〜400万であるポリブタジエンを製造することができる。
【0090】
これらのポリブタジエンはポリスチレンの耐衝撃性付与剤として好適に用いることができる。
【0091】
【実施例】
ポリブタジエンのミクロ構造は、赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス−1,4−構造 740cm-1、トランス−1,4−構造 967cm-1、1,2−構造(ビニル) 911cm-1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
ポリブタジエンの[η]は、トルエン溶液、30℃で測定した。
また、ムーニー粘度(ML)は、ムーニーのプラストメーターにより、100℃で測定した。
【0092】
(実施例1〜3)
図1に示す装置により連続重合を行った。アルミ熟成槽にシクロヘキサンを34L仕込み、表1に示す水濃度に調整を行なった。次に、トリエチルアルミニウム(0.6mol/Lのトルエン溶液)を90mL注入し十分な時間攪拌を行なった。このシクロヘキサン溶液と1,3−ブタジエンを70wt%:30wt%となる比率で混合槽に連続的に流入した。混合槽内では、液相部に混合溶液(FB)、気相部には水素、窒素及び蒸気圧に相当するFBが存在する。気相部の混合気は約6NL/hで循環ラインを循環しており、循環ラインに窒素及び水素を注入することによって、ガス組成を調整し、ガスクロマトグラフィーによってその管理を行なった。FB中への水素の溶解は、温度と水素分圧による気液平衡で行い、水素を溶解させたFBを反応槽に連続的に送った。反応槽では、シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl3)(2.5mmol/Lのトルエン溶液)、及びトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト(Ph3CB(C6F5)4)(0.3mmol/Lのトルエン溶液)をFB中濃度が表1に相当する流量で注入した。重合は40℃で行なった。
重合後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾ−ルを少量含有するエタノ−ルとヘプタンの当量混合溶液を投入し、放圧し、エタノ−ル中に投入、ポリマ−を析出させ、ろ過、乾燥した。
生成したポリマーのトルエン溶液粘度[η]は混合槽の水素分圧の上昇とともに小さくなり、それぞれの水素分圧に対して、安定した関係がみられた。すなわち、水素によって、分子量が安定的に調整できた。
表1に重合結果をまとめた。
【0093】
【表1】
【0094】
【発明の効果】
水素を分子量調節剤として用いる溶液重合のおいて、安定的に分子量を調整できる方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で用いる連続重合設備を示す。
Claims (1)
- 不活性有機溶媒中での(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物、及び(C)周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物、から得られる触媒を用いる溶液重合において、あらかじめ該不活性有機溶媒と1,3−ブタジエンの混合溶液と水素ガスを、液中に水素ガスを通過させる方法で接触させ気液平衡により水素分圧を0.042〜0.069MPa(温度:5〜60℃)に調整させ、得られた水素含有不活性有機溶液を重合槽に添加させて1,3−ブタジエンを重合してポリブタジエンの分子量を調節し、該重合体の1,2−構造含有率が7〜15%、シス−1,4−構造含有率が70〜92%及びトランス1,4−構造含有率が0.5〜4%であるポリブタジエンの製造方法。
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