JP3980708B2 - 汚水用ポンプの羽根車及び汚水用ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水処理装置における下水送水用ポンプ等に用いられる汚水用ポンプの羽根車に関し、特に異物が羽根車内で閉塞しないよう羽根車内の通路を大きくした一枚翼を具備する汚水用ポンプの羽根車、及び該羽根車を用いた汚水用ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は従来のこの種の汚水用ポンプの羽根車の構造を示す図で、同図(a)はB−B断面図、同図(b)はA−A断面図である。図示するように、羽根車10は主板4と側板5との間に一枚の翼8を具備する構造である。翼8は翼前縁部3から翼後縁部9まで厚み(翼圧力面1と翼負圧面2との間の寸法)が略一定で、翼8は吸い込み部6の外側に位置している。矢印C方向に回転することにより、吸い込み部6から吸い込まれた汚水は主板4と側板5の間を通ってポンプケーシングの吐出口から吐き出される。図2の破線Bはこの翼8を巻角θに沿って展開したものを示す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、この種の汚水用ポンプの羽根車においては、異物による羽根車10の閉塞を防ぐため羽根車10内の流路として76mm(3インチ)径以上の異物が通過し得る構造が要求される場合がある。図5に示す構造の羽根車10において、76mmの流路を確保すると、図示するように翼8の巻角θが360°以下になってしまう場合が多く、主に下記の点で羽根車10の水力効率を低下させる要因となっていた。
【0004】
図6に示すように、巻角概略θ=0°〜180°の範囲で翼圧力面1の側に大きな逆流領域A1が発生する。また、翼流入部の翼負圧面2の側に流速が極めて低い領域A3が発生する。翼流入部の翼前縁部3の付近に逆流領域A2が発生する。これらの逆流領域A1,A2の発生や低流速領域A3の発生はいずれも翼8の流入側に発生するものであり、異物が停滞したり、翼8の翼前縁部3で異物が絡みつく等によって、羽根車10内で異物閉塞の原因となっていた。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、羽根車内に76mm径以上の大きな流路を確保し、羽根車の無閉塞性を高めると同時に、従来の汚水用ポンプの羽根車における上記問題点、即ち翼入口側の圧力面側における逆流領域、翼入口側の負圧面側の低流速領域及び翼流入部前縁部における翼圧力面側から負圧面側への逆流を軽減させ、水力効率を高めると同時に、より異物が閉塞しにくい汚水用ポンプの羽根車、及び該羽根車を用いた汚水用ポンプを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため請求項に記載の発明は、一枚の翼で構成される羽根車を具備する汚水用ポンプの羽根車であって、羽根車は翼の厚みと翼角(翼の表面の接線と、その表面における羽根車と同心円の接線との間の角度)を翼巻角によって変化させる構成とし、該翼の翼圧力面の翼角は巻角0°から60°〜150°の範囲で翼入口角度β1から徐々に0°に変化させ、該巻角60°〜150°から180°の範囲で0°とし、巻角100°〜180°から翼角を徐々に立上げ翼出口角度β2に円滑につないだことを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、一枚の翼で構成される羽根車を具備する汚水用ポンプの羽根車であって、羽根車は翼の厚みと翼角を翼巻角によって変化させる構成とし、該羽根車の翼負圧面の翼角を翼流入側の巻角0°から90°〜180°の範囲で0°とし、該巻角90°〜180°から翼流出側の翼出口角度β2へと徐々に変化させ、翼圧力面の翼角は巻角0°から60°〜150°の範囲で翼入口角度β1から徐々に0°に変化させ、該巻角60°〜150°から180°の範囲で0°とし、巻角100°〜180°から翼角を徐々に立上げ翼出口角度β2に円滑につないだことを特徴とする。
【0009】
また、請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の汚水用ポンプの羽根車において、羽根車のメリディアン断面における翼流入側の巻角0°から180°の範囲で、翼負圧面の径方向位置を吸い込み径より所定量内径側に位置させたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項に記載の発明は、吸込口及び吐出口を有するポンプケーシングに羽根車を回転自在に配置した汚水用ポンプにおいて、羽根車に請求項1乃至のいずれか1項に記載の羽根車を用いることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の汚水用ポンプの羽根車の構造を示す図で、同図(a)はB−B断面図、同図(b)はA−A断面図である。図示するように、羽根車は主板4と側板5との間に一枚の翼8を具備する構造である。
【0013】
図2の実線Aは本発明の羽根車の翼8を巻角θに沿って展開したものを示す。本発明の羽根車の翼8は翼流入側(翼前縁部3側)の翼厚を大きく変化させ、翼流入側における翼負圧面2の座標を羽根車の吸い込み部6の半径Rよりも小さくしている。また、翼流入部における翼圧力面1の座標も従来の翼(図5の翼8参照)よりも大きくしている。このため本発明の翼8では翼負圧面2の翼角を巻角0°から約140°の範囲で0°とし、巻角約140°から徐々に翼角を大きくし翼出口角度β2へと変化させている。
【0014】
一方、翼圧力面1側の翼角は巻角0°から約100°の範囲で翼8の入口角度β1から0°まで徐々に変化させ、巻角約100°から約140°の範囲は翼角を0°とし、巻角約140°から翼角を徐々に立ち上げて翼出口角度β2に滑らかに接続している。翼出口側では翼8の全長の内概略1/4は従来の翼と等しい翼厚とし、翼出口側から翼8の全長の略1/4〜2/4の範囲では徐々に翼厚を増し、一方、翼流入側では翼前縁部3から徐々に翼厚を増し、その後概略翼厚一定で且つ翼角0°の部分を経て、翼出口側へと接続した形状で翼8を形成している。
【0015】
また、翼流入側における翼負圧面2のメリデイアン断面形状7は一本の直線或いは曲線で構成するのではなく、羽根車の吸い込み部6の端面径位置から所定量ΔLだけ近い位置の断面Iの間を直線で結び、且つ、該断面Iと羽根車の主板4との間は翼8を鋳造する際に必要な抜き勾配を有する直線で結び、両直線D、Eを滑らかな円弧Fで結んで翼負圧面2の流入側の形状を構成している。
【0016】
図3は本発明の翼形状における羽根車内の流れ状況を示す図である。図6に示す従来の翼形状に比べ、翼圧力面1の側で発生する逆流領域A’1、翼流入部の翼負圧面2の側に発生する流速が極めて低い領域A’3、翼流入部の翼前縁部付近の逆流領域A’2が翼流入端の一部へと縮小していることが明らかである。即ち、翼流入部における翼圧力面1の座標を従来より大きくしたことによって、翼圧力面1側の逆流領域を大幅に低減させることができる。
【0017】
また、翼流入側における翼負圧面2の座標を羽根車の吸い込み部6の半径Rよりも小さくしたことで、翼流入側の翼負圧面2の低流速領域A’2も大幅に軽減できる。また、翼流入側の翼負圧面2の座標を径の小さい位置に移動させたことで、羽根車内に76mm以上の大きな流路を確保しつつ、より大きな翼巻角が得られるようになったので、翼流入部の翼前縁部3における翼圧力面1側から翼負圧面2側への逆流領域A’2も軽減できる。
【0018】
上記実施の形態例では、翼8の翼負圧面2の翼角を巻角0°から約140°の範囲で0°とし、巻角約140°から徐々に翼角を大きくし翼出口角度β2へと変化させているが、本発明の翼形状はこれに限定されるものではなく、翼負圧面2の翼角を巻角0°から90°〜180°の範囲で0°とし、該巻角90°〜180°から翼出口角度β2へ徐々に変化させた形状としても本発明の上記特徴は失われるものではない。
【0019】
また、上記実施の形態例では、翼圧力面1側の翼角は巻角0°から約100°の範囲で翼8の入口角度β1から0°まで徐々に変化させ、巻角約100°から約140°の範囲は翼角を0°とし、巻角約140°から翼角を徐々に立ち上げて翼出口角度β2に滑らかに接続しているが、本発明の翼形状はこれに限定されるものではなく、翼圧力面の翼角は巻角0°から60°〜150°の範囲で翼入口角度β1から徐々に0°に変化させ、該巻角60°〜150°から180°の範囲で0°とし、巻角100°〜180°から翼角を徐々に立上げ翼出口角度β2に円滑につないだ形状としても本発明の上記特徴は失われるものではない。
【0020】
図4は本発明の羽根車を組み込んだ汚水用水中ポンプの構造を示す縦断面図である。本汚水用水中ポンプは電動機と一体に構成された構造である。羽根車10は図1に示す構造のもので、電動機軸16の先端にボルト11により固着されている。ポンプケーシング12は吐出口12bと吸込口12aを有し、中間ケーシング28とボルト26で固着されポンプ室を形成している。ポンプケーシング12の吐出口12bには吐出曲管13が接続されている。
【0021】
ポンプケーシング12にはポンプを自立させるための複数の脚12cが設けられている。また、ポンプ部の圧力水が電動機側へ漏洩しないように、電動機部の間はメカニカルシール14によって軸封されている。該メカニカルシール14の軸封部の外側には油室15が設けられ、該油室15に油が封入されており、これによってメカニカルシール14の摺動面の潤滑と冷却を行なっている。
【0022】
電動機フレーム19内には電動機の固定子20が嵌合固定されており、該固定子20を電動機軸16に固定された回転子21が配置されている。電動機軸16は上下両端部を上部軸受18と下部軸受17で電動機フレーム19に回転自在に支持されている。
【0023】
電動機は水中で使用されるので、Oリング25等により電動機フレーム19内は気密に構成されており、水中ケーブル22を通して電力が供給されるようになっている。電動機フレーム19の上部には把手23が設けられており、これによって汚水槽内への水中ポンプの吊下げや移動を行なう。また、電動機フレーム19内にはプロテクタ24が設けられており、過電流や欠相運転等による電動機の焼損を防止している。
【0024】
上記構造の汚水用水中ポンプにおいて、電動機を起動し、電動機軸16が回転すると、羽根車10が回転し、ポンプケーシング12の吸込口12aから吸い込まれた汚水は、翼8の翼負圧面内及び翼圧力面とポンプケーシング12の間の流路を通って、ポンプケーシング12の吐出口12bから、吐出曲管13を通って送水される。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば下記のような優れた効果が得られる。
(1)羽根車の内部において、逆流や低流速部分の少ない羽根車を実現することができ、異物通過径を大きく設計する場合において、より効率の良い羽根車が実現できる。従って、同一のポンプ揚水性能を発揮するのに電動機の消費電力を抑えることができ、省エネルギー効果がある。
【0026】
(2)また、翼流入側の翼負圧面の低流速領域を少なくできたので、この部分における異物の堆積が軽減され、羽根車の無閉塞性も向上する。
【0027】
( ) また、汚水用ポンプに本発明に係る羽根車を用いることにより、羽根車の無閉塞性及び省エネルギーに優れた汚水用ポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の汚水用ポンプの羽根車の構造を示す図で、同図(a)はB−B断面図、同図(b)はA−A断面図である。
【図2】 本発明及び従来の羽根車の翼を巻角に沿って展開した展開図である。
【図3】 本発明の汚水用ポンプの羽根車の翼形状における羽根車内の流れ状況を示す図である。
【図4】 本発明の羽根車を組み込んだ汚水用水中ポンプの構造を示す縦断面図である。
【図5】 従来の汚水用ポンプの羽根車の構造を示す図で、同図(a)はB−B断面図、同図(b)はA−A断面図である。
【図6】 従来の汚水用ポンプの羽根車の翼形状における羽根車内の流れ状況を示す図である。
【符号の説明】
1 翼圧力面
2 翼負圧面
3 翼前縁部
4 主板
5 側板
6 羽根車の吸い込み部
7 翼負圧面のメリディアン断面形状
8 翼
10 羽根車
11 ボルト
12 ポンプケーシング
13 吐出曲管
14 メカニカルシール
15 油室
16 電動機軸
17 下部軸受
18 上部軸受
19 電動機フレーム
20 固定子
21 回転子
22 水中ケーブル
23 把手
24 プロテクタ
25 Oリング
26 ボルト

Claims (4)

  1. 一枚の翼で構成される羽根車を具備する汚水用ポンプの羽根車であって、
    前記羽根車は翼の厚みと翼角(翼の表面の接線と、その表面における羽根車と同心円の接線との間の角度)を翼巻角によって変化させる構成とし、該翼の翼圧力面の翼角は巻角0°から60°〜150°の範囲で翼入口角度β1から徐々に0°に変化させ、該巻角60°〜150°から180°の範囲で0°とし、巻角100°〜180°から翼角を徐々に立上げ翼出口角度β2に円滑につないだことを特徴とする汚水用ポンプの羽根車。
  2. 一枚の翼で構成される羽根車を具備する汚水用ポンプの羽根車であって、
    前記羽根車は翼の厚みと翼角を翼巻角によって変化させる構成とし、該羽根車の翼負圧面の翼角を翼流入側の巻角0°から90°〜180°の範囲で0°とし、該巻角90°〜180°から翼流出側の翼出口角度β2へと徐々に変化させ、翼圧力面の翼角は巻角0°から60°〜150°の範囲で翼入口角度β1から徐々に0°に変化させ、該巻角60°〜150°から180°の範囲で0°とし、巻角100°〜180°から翼角を徐々に立上げ翼出口角度β2に円滑につないだことを特徴とする汚水用ポンプの羽根車。
  3. 請求項1又は2に記載の汚水用ポンプの羽根車において、
    前記羽根車のメリディアン断面における翼流入側の巻角0°から180°の範囲で、翼負圧面の径方向位置を吸い込み径より所定量内径側に位置させたことを特徴とする汚水用ポンプの羽根車。
  4. 吸込口及び吐出口を有するポンプケーシングに羽根車を回転自在に配置した汚水用ポンプにおいて、
    前記羽根車に請求項1乃至のいずれか1項に記載の羽根車を用いることを特徴とする汚水用ポンプ。
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