JP3980393B2 - シート端部検出方法及びシート端部検出装置 - Google Patents
シート端部検出方法及びシート端部検出装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録紙や原稿等のシートを搬送するシート搬送機能を有する装置に搭載され、搬送中のシートの端部(先端・後端)を検出するシート端部検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、画像形成装置においては、記録紙等のシートに所定の画像を形成する画像形成プロセス部における画像形成のタイミングと、用紙を搬送するタイミングとを合わせることで、シートの所定の位置に画像を正確に形成させるようになっている。
【0003】
具体的には、画像形成プロセス部にシートを搬入する直前で一旦シートの搬送を停止し、画像形成プロセス部のタイミングと合わせてシートの搬送を再開させることで、両者のタイミングを合わせる。そのため、搬送中のシートの先端位置を正確に検出する必要がある。
【0004】
シート端部を検出する先行技術として、シート搬送路にアクチュエータを設けておき、シートの先端がアクチュエータに当接してオンすることで、シートの先端を検出する構成が、例えば、特開平1−98543号公報に記載されている。また、特開昭62−212670号公報(1987年9月18日公開)には、シート搬送路における停止したシートの先端が到達する部位に、発光部とフォトセンサとを配設しておき、シートが光を遮ることによる受光部の受光量変化から、シート先端の位置を正確に検出することが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した従来のシート端部の検出技術では、アクチュエータやフォセンサと受光部といった、シート端部検出のために専用の検出機構を必要とし、コスト高を招来する。しかも、該専用の検出機構を、シート搬送路といった限られた空間部に配設するため、シート搬送路内のジャムの要因ともなる。
【0006】
また、アクチュエータは、その構成上、作動時間が必要である。そのため、アクチュエータを用いた端部検出では、シートが高速で連続搬送されてシート間が狭くなると、アクチュエータの戻り時間を確保できず、シート端部を検出できなくなる。
【0007】
また、フォトセンサと受光部とを用いた端部検出では、受光部が紙粉などで汚れると検出不能となる。これを回避するためには、頻度の高いメンテナンスが必要となり、メンテナンス性が低い。また、シートがOHP等の透明な材質の検出は不可能であり、対応可能なシートは、紙等の不透明な素材のものに限定されてしまう。
【0008】
本願発明は、上記課題に鑑み成されたもので、高速連続搬送にも対応可能であると共に、紙粉等による汚れにも強く、検出可能なシートの素材が不透明なものに限定されることもなく、しかも、シート搬送路にジャムの要因となるような専用のシート端部検出機構を設けることなく簡単かつ安価な構成でシート端部を検出することのできるシート端部検出方法及び装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のシート端部検出方法は、上記課題を解決するために、シート搬送路にシート搬送方向に沿って併設された2つの導電性のシート搬送部材間に所定のバイアス電圧を印加しておき、これらシート搬送部材間の抵抗値を測定することで、シート搬送路を搬送されるシートの端部を検出することを特徴としている。
【0010】
シート搬送方向に沿って併設された2つのシート搬送部材を導電性とし、これらシート搬送部材間にバイアス電圧を印加しておくと、2つのシート搬送部材間に跨るような状態でシートが搬送されている期間のみ、シートを通って電流が流れる。これに対し、これ以外の状態、つまり2つのシート搬送部材の何れにもシートが到達していない状態、及び、シートが2つのシート搬送部材の何れか一方にのみ達している状態では、2つのシート搬送部材間を繋ぐものがないため、電流は流れない。
【0011】
したがって、このようなシート搬送部材間の抵抗値を測定しておくことで、その抵抗値の変化より、シートの端部を検出することができる。つまり、シートが2つのシート搬送部材間に跨るように搬送されることで、抵抗値が小さく変化したときが、シートの先端がシート搬送方向下流側に位置するシート搬送部材に到達したときであり、抵抗値が再び大きい値に戻ったときが、シートの後端がシート搬送方向上流側のシート搬送部材を抜け出たときである。
【0012】
このような方法によるシート端部の検出は、シート搬送路にもともと備えられているシート搬送部材を用いており、シート搬送路に別途に、アクチュエータやフォトセンサ等のシート端部検出のための機構を備えるものではないので、シート搬送路を狭めるようなことはなく、ジャムの要因とはならない。しかも、シート搬送部材を導電性とし、これらにバイアス電圧を印加すると共に、シート搬送部材間の抵抗値を測定するのみであるので、シート搬送装置等に備えられている電源部や制御部の改良にて対応でき、コスト高ともならない。
【0013】
また、このような方法によるシート端部の検出は、フォトセンサを用いた場合のように、紙粉による汚染で、誤検出するようなことはなく、かつ、検出可能なシートの素材は、抵抗値変化によるシート端部の検出が可能な程度な導電性を有していれば、不透明なものに限定されることもない。また、アクチュエータを用いた場合のように、アクチュエータの戻り時間等を考慮する必要がなく、高速連続搬送であっても問題なくシート端部を検出することができる。
【0014】
本発明のシート端部検出装置は、上記課題を解決するために、シート搬送路を搬送されるシートの端部を検出するシート端部検出装置であって、シート搬送路にシート搬送方向に沿って併設された2つの導電性のシート搬送部材と、上記2つのシート搬送部材間に、所定のバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、上記2つのシート搬送部材間の抵抗値を検知するシート搬送部材間抵抗値検知手段と、上記シート搬送部材間抵抗値検知手段の検知結果に基づいてシートの端部を検出するシート端部検知判定手段とを備えたことを特徴としている。
【0015】
これは、上記したシート端部検出方法を実現し得るシート端部検出装置の構成を提供するものである。これによれば、シート搬送路にシート搬送方向に沿って併設された2つの導電性のシート搬送部材には、電圧印加手段にて所定のバイアス電圧が印加されており、上記2つのシート搬送部材間の抵抗値をシート搬送部材間抵抗値検知手段が検知し、上記シート搬送部材間抵抗値検知手段の検知結果に基づいて、シート端部検知判定手段がシートの端部を検出するようになっている。なお、上記電圧印加手段やシート端部検知判定手段は、シート搬送装置等に備えられている電源部や制御部を改良し、それらの機能を付加することで、おお幅なコスト高を招来することなく実現できる。
【0016】
シート端部検出方法として既に説明したように、導電性としたシート搬送方向に並ぶ2つのシート搬送部材間の抵抗値を測定しておくことで、その抵抗値の変化より、シートの端部を検出することができる。
【0017】
そして、このようなシート端部の検出は、高速連続搬送にも対応可能であると共に、紙粉等による汚れにも強く、検出可能なシートの素材が不透明なものに限定されることもなく、かつ、シート搬送路にジャムの要因となるような専用のシート端部検出機構を設けることなく簡単かつ安価な構成である。
【0018】
また、本発明のシート端部検出装置においては、さらに、上記シート搬送部材は、一対のローラ間にシートを挟み込んで搬送するローラ対構成であることを特徴とすることもできる。
【0019】
シート搬送部材としては、ローラ対構成以外に、例えば搬送ガイドと搬送ローラとでシートを挟持して搬送する構成等も考えられるが、ローラ対構成としたほうが、シートとローラとのニップを確保できるので、搬送性が良好となることに加え、抵抗値を測定する際に接点が不安定にならず、安定するといった利点がある。
【0020】
また、本発明のシート端部検出装置においては、さらに、上記シート搬送部材間抵抗値検知手段は、上記電圧印加手段と上記シート搬送部材との間に配設された抵抗部材の両端電圧を測定することで、シート搬送部材間の抵抗値を検知するようになっていることを特徴とすることもできる。
【0021】
なお、シート搬送部材間抵抗値検知手段の構成として、2つのシート搬送部材間の抵抗値そのものを直接測定して、抵抗値の変化を直に検出可能な装置を具備させる構成も考えられるが、通常、シート搬送装置等のCPU等よりなる制御部には、抵抗値そのものを直接測定する機能は具備されていないため、装置の大型化は免れない。これに対し、抵抗変化を電位差、つまり電圧印加手段と上記シート搬送部材との間に配設された抵抗部材の両端電圧を検出してシート端部の検知を行うことで、制御部がもともと有する機能のみを用いて構成でき、装置の大型化並びにコスト高を招来することがない。
【0022】
また、本発明のシート端部検出装置は、さらに、上記シート端部検知判定手段は、シートの搬送開始と同期し、所定のサンプリング周期で、上記シート部材間抵抗値検知手段の検知結果に基づくシート端部の検出を行うようになっていることを特徴とすることもできる。
【0023】
上述したように、上記シート端部検知判定手段は、シート搬送装置等の制御部にその機能を付与することで簡単に実現することができる。しかしながら、制御部自体は、その他の機能も司っているため、常に、シート搬送部材間抵抗値検知手段の検知結果を基に、シート端部の検出を行っておくことはできない。
【0024】
そこで、このように、シートの搬送開始と同期し、所定のサンプリング周期で、上記シート部材間抵抗値検知手段の検知結果に基づくシート端部の検出を行うことで、制御部としてその他の機能を実行しながら、確実にシート端部を検出することができる。シート搬送部材のシート送り速度等は常に制御部にて監視されているので、所定のサンプリング周期で検出したとしても、シート先端が下流側のシート搬送部材に達した瞬間、及びシート後端が上流側のシート搬送部材より抜け出た瞬間を精度良く検出することができる。
【0025】
また、本発明のシート端部検出装置においては、さらに、シートの抵抗値を検知するシート抵抗値検知手段がさらに備えられ、上記シート端部検知判定手段は、上記シート抵抗値検知手段の検出結果を加味してシート端部の検出を行うようになっていることを特徴とすることもできる。
【0026】
シートの抵抗値は、環境や材質・厚み等によっても変化するため、シートを電流が流れることによるシート搬送部材間の抵抗値変化を基にシート端部の検出を行う場合、シートの抵抗値に左右されて、シート端部の検出を誤る恐れがある。
【0027】
そこで、このように、シートの抵抗値を検知するシート抵抗値検知手段をさらに設け、シート端部検知判定手段は、このシート抵抗値検知手段の検出結果を加味してシート端部の検出を行うことで、シート自体の抵抗値の変化に左右されることなく、正確にシート端部の検出を行うことができる。
【0028】
また、本発明のシート端部検出装置は、さらに、上記シート抵抗値検知手段はシートの体積抵抗を検知する体積抵抗値検知手段であることを特徴とすることもできる。
【0029】
シートの材質としては紙が圧倒的に多く、紙の場合、体積抵抗と表面抵抗は同一ではないが、ほぼ比例関係にあることは周知のことである。そして、シートの体積抵抗値は、シートを挟持する部材間にバイアス電圧を印加し、一方の部材とバイアス電圧を印加する電源部材との間に配設した抵抗部材の両端の電圧を測定することで、簡単に検出することができる。
【0030】
したがって、シート抵抗値検知手段を別途搭載させた場合、コスト高及び装置の大型化は避けられないが、このように、シート抵抗値検知手段として体積抵抗値検知手段を設けることで、シート自体の抵抗値の変化に左右されることのない正確なシート端部の検出を簡単かつ安価に実現することができる。
【0031】
また、本発明のシート端部検出装置は、さらに、上記体積抵抗値検知手段は、上記2つのシート搬送部材のうちのシート搬送方向上流側に位置する方に設けられていることを特徴とすることもできる。
【0032】
上流側のシート搬送部材に体積抵抗値検出手段を設けることにより、シートが搬送されると同時にシートの体積抵抗値の測定が可能となるので、シート自体の抵抗値の変化に左右されることのない正確なシート端部の検出を、簡単かつ安価に加えて、より確実に実現させることができる。
【0033】
さらに、本発明のシート端部検出装置は、以下のように表現することもできる。
【0034】
すなわち、用紙を搬送するための2つの導電性ローラと、導電性ローラに電圧を供給する電源手段と、2つの導電性ローラ間の抵抗値を検知する検知手段と、検知手段からの検知結果に基づいて用紙端部の検出を行う検出手段とを備えたことを特徴とする。これによれば、2つのローラ間の抵抗値を常に監視することにより、特別な検知機構を設けることなく用紙の先端・後端の検出が可能となる。
【0035】
また、さらに、前記導電性ローラはローラ対であることを特徴としてもよい。これによれば、ローラ対を用いることにより、用紙とローラとのニップが確保できるので、安定した抵抗の測定が可能となる。
【0036】
また、さらに、前記検知手段は導電性ローラと電源手段の間に配された抵抗器の両端電圧を測定することを特徴としてもよい。これによれば、抵抗器の両端電圧から用紙の抵抗値を算出するので、装置が大型化することなく低価格で用紙の抵抗値の測定が可能となる。
【0037】
また、さらに、前記2つの導電性ローラの駆動源は同一であることを特徴としてもよい。これによれば、同一の駆動源を用いることにより、安定した用紙搬送が可能となると共に、常に安定した用紙抵抗の測定が可能となる。
【0038】
また、さらに、前記検出手段は用紙搬送と同期し、所定の周期でサンプリングすることを特徴としてもよい。これによれば、導電性ローラの回転速度・回転角は常に監視されているので、ローラの導電性ローラの駆動(用紙搬送)と同期して、サンプリングすることにより、正確な用紙の先端・後端が可能となる。
【0039】
また、さらに、前記導電性ローラに用紙の体積抵抗を検知する体積抵抗検知手段を備えたことを特徴としてもよい。これによれば、用紙の体積抵抗を検出することにより、環境(温度・湿度)の変化、または用紙の種類に関係なく正確な用紙の先端・後端が可能となる。
【0040】
また、特に体積抵抗検出手段は上流側の導電性ローラに備えたことを特徴としてもよい。これによれば、上流側の導電性ローラに体積抵抗検出手段を設けることにより、用紙搬送が搬送されると同時に用紙の体積抵抗の測定が可能となり、その体積抵抗を基準として用紙の先端・後端検知を行うことにより、正確な用紙の先端・後端が可能となる。
【0041】
また、前記体積抵抗検知手段は導電性ローラより上流の用紙搬送手段の駆動に応じて体積抵抗検知手段を作動させることを特徴としてもよい。これによれば、上流の用紙搬送手段の駆動に応じて体積抵抗検知手段を作動させることにより、正確な用紙の先端検知が可能となる。
【0042】
また、前記体積抵抗検知手段は体積抵抗の平均値を用いることを特徴としてもよい。これによれば、体積抵抗の平均値を用いることにより、正確な用紙の先端検知が可能となる。
【0043】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明に係る実施の一形態について、図1〜図5を基に以下に説明する。
【0044】
なお、本実施の形態では、本発明に係るシート端部到来検出装置が、記録材であるシートを画像形成プロセス部へと搬送する画像形成装置のシート搬送部に搭載されている場合を例示するが、本発明に係るシート端部到来検出装置の適用範囲は、何らこれに限定されるものではなく、例えばシートが原稿であり、原稿を搬送する自動原稿搬送装置等に本発明に係るシート端部検出装置を搭載させることもできる。
【0045】
図2に示すように、画像形成装置1はその上部に、原稿セットトレイ上にセットされた複数枚の原稿を1枚ずつ原稿台3上へ給送する自動原稿搬送装置2を備えている。
【0046】
また、自動原稿搬送装置2の下方には、原稿台3上に載置された原稿の画像を走査して読み取るスキャナ装置4が備えられている。スキャナ装置4は、原稿台3上に載置された原稿の画像だけでなく、自動原稿搬送装置2と関連した動作により、自動原稿搬送装置2にて原稿台3上に搬送される原稿の画像も、所定の露光位置にて読み取るようになっている。
【0047】
スキャナ装置4は、原稿面上を露光するランプリフレクターアセンブリ5、原稿からの反射光像を光電変換素子であるCCD9に導くための第1,第2,第3の反射ミラー6a〜6c、各反射ミラー6a〜6cにて導かれた原稿からの反射光像をCCD9に結像させるための光学レンズ8、及び原稿からの反射光像を電気的画像信号に変換する上述したCCD9から構成されている。このうち、ランプリフレクターアセンブリ5と第1の反射ミラー6aとは、第1の走査ユニット7aに搭載され、第2,第3の反射ミラー6b・6cは、第2の走査ユニット7bに搭載されている。
【0048】
このようなスキャナ装置4にて読み取られた原稿画像は、画像データとして図示しない画像処理部へと送られて画像データに対して所定の画像処理が施された後、画像メモリに一旦記憶される。そして、その後、出力指示に応じて適宜読み出され、読み出された画像データは、画像形成プロセス部11のレーザー書き込みユニット(以下、LSU)10へと転送される。
【0049】
LSU10は、画像メモリから読み出した画像データや、外部の装置から転送されてきた画像データに応じてレーザー光を出射して、感光体ドラム12に画像データに応じた静電潜像を形成する装置である。LSU10は、特に図示してはいないが、レーザー光を出射する半導体レーザー光源、レーザー光を等角速度偏向するポリゴンミラー、及び等角速度で偏向されたレーザー光が感光体ドラム12上において等角速度で偏向されるように補正するf−θレンズなどから構成されている。
【0050】
画像形成プロセス部11は、スキャナ装置4の下方に設置された画像プリンタ装置13に搭載されており、上記LSU10にて感光体ドラム12に形成された静電潜像を現像剤であるトナーを用いて顕像化し、顕像であるトナー像を、記録材であるシートに転写させる機能を有している。
【0051】
画像形成プロセス部11には、上記感光体ドラム12を中心としてその周囲に、感光体ドラム12を所定の電位に帯電させる帯電器14、感光体ドラム12上に形成された静電潜像にトナーを供給して顕像化する現像器15、感光体ドラム12表面に形成されたトナー像をシートに転写する転写器16、余分なトナーを回収するクリーニング器17、及び除電器(図示せず)等が備えられている。なお、LSU10の露光位置は、帯電器14と現像器15との間である。
【0052】
LSU10によって感光体ドラム12表面に形成された静電潜像は、現像器15内のトナーにより顕像化されてトナー像となり、該トナー像は、転写器16によって、感光体ドラム12と転写器16との間(転写位置)にタイミングを合わせて搬送されたシート上に静電転写され、その後、定着ユニット18へと送られる。
【0053】
上記定着ユニット18は、シート上に転写されたトナー像を、加熱・加圧して定着させる装置である。定着ユニット18の排出側には、シートをプリンタ装置13より排出する排出ローラ24と、シートの裏面に再度画像を形成するためにシートの前後を反転させるスイッチバック路19とが配設されている。定着ユニット18を通過したシートは、排出ローラ24或いはスイッチバック路19の何れかへ搬送されるようになっている。
【0054】
スイッチバック路19へと搬送されたシートは、両面ユニット25内へ搬送され、再度、画像形成プロセス部11へと送り込まれる。一方、排出ローラ24側へと搬送されたシートは、プリンタ装置13の排出側に設けられたシート後処理装置22へと搬送される。
【0055】
シート後処理装置22は、画像が形成されたシートに対してステープルやパンチング等の所定の後処理を行う装置であって、排出されたシートを積載する積載トレイ20・21も設けられている。画像が形成され、必要に応じて後処理が施されたシートは、何れかの積載トレイ20・21上に排出される。
【0056】
また、画像形成プロセス部47の下方には、トナー像が転写されるシートを収容し、必要に応じてシートの供給と搬送とを担うシート供給搬送部30が備えられている。このシート供給搬送部30は、プリンタ装置13からそのさらに下方に設置された多段給紙装置31へと跨って形成されている。
【0057】
シート供給搬送部30は、手差トレイ31や、上記した両面ユニット25、第1,第2,第3のシートカセット26a〜26b等のシート給紙機構を備えたシート収容部と、これらシート収容部から給紙されたシートを、画像形成プロセス部11の転写位置を経て定着ユニット18へと搬送し、その後必要に応じて、シート後処理装置22へ、或いはスイッチバック路19を介して両面ユニット25へと搬送するシート搬送部とを備えている。
【0058】
このうち、シート搬送部は、シートを案内する搬送ガイドと、該搬送ガイドの要所毎に設置された、シートを搬送する搬送ローラ対(搬送ローラ)とからなる。特に複数ある搬送ローラ対の中でも、画像形成プロセス部11における上述の転写位置直前に配設されている搬送ローラ対38は、レジストローラ対と称される。レジストローラ対38は、シートを転写位置に搬入する直前で一旦停止させ、画像形成プロセス部11のタイミングに合わせてシートの搬送を再開させることで、画像形成動作とシート搬送動作とのタイミングを合わせ、シートの所定の位置に画像を正確に形成させる機能を有している。
【0059】
このような画像形成動作とシート搬送動作とのタイミング合わせには、搬送中のシートの先端位置を正確に検出する必要があり、詳細については後述するが、この転写位置の直前のレジストローラ38にシート端部が到達したことを検出可能なように、本発明に係るシート端部検出装置が搭載されている。
【0060】
上記レジストローラ対38を用いたタイミング合わせを含め、画像形成装置1における各部の動作は、画像形成装置1に備えられたCPU(Central Processing Unit :中央処理装置)等からなる制御部33によって制御される。この制御部33には、スキャナ装置4にて読み取った画像データ等を一時的に記憶する画像メモリや、画像データに対して画像処理を施す画像処理部等も備えられている。
【0061】
次に、図1、図3〜図5を用いて、シート端部検出装置の構成を詳細に説明する。
【0062】
シート端部検出装置は、シート供給搬送部30におけるシート端部の検出が必要な個所に設けられるもので、例えば本画像形成装置1では、レジストローラ対38にシート端部、詳細にはシート先端が到達したことを検出できるように設けられている。
【0063】
本発明に係るシート端部検出装置は、シートを搬送するシート搬送方向上流側と下流側の2つの搬送ローラ対間に所定のバイアス電圧しておく一方、これら搬送ローラ対間の抵抗値を絶えず測定しておき、搬送ローラ対間にシートが介在することで起こる抵抗値の変化を捉えてシート端部を検出するものである。
【0064】
図1に、シート端部検出装置の概略構成を示す。シート端部検出装置は、シートSを搬送するシート搬送方向(矢印Aの方向)上流側と下流側の2つの搬送ローラ対(導電性のシート搬送部材)50・51と、これら搬送ローラ対50・51にバイアス電圧を供給する電源部(電圧印加手段)54と、これら搬送ローラ対50・51間の抵抗値を検知する抵抗値検知部(抵抗値検知手段)55と、該抵抗値検知部55にて検知された抵抗値を基にシートSの端部を検出する端部検知判定部(端部検知判定手段)57とからなる。
【0065】
上記搬送ローラ対50・51には、電源部54より所定のバイアス電圧が印加され、両搬送ローラ対50・51間の抵抗値が測定される。したがって、搬送ローラ対50・51を構成する一方の搬送ローラ対50a・51aは、導電性であることが必須であり、これら搬送ローラ50a・51aに対向する搬送ローラ50b・51bは共に電気的にフロートな状態となっている。
【0066】
なお、ここでは上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51を共にローラ対構成としたが、例えば電気的にフロートな搬送ガイドをそれぞれ対向配置し、搬送ローラ50a・51aと各搬送ガイドとでシートSを挟持して搬送する構成とすることもできる。但し、ローラ対構成としたほうが、シートSと搬送ローラ50a・51aとのニップを確保できるので、搬送性が良好となることに加え、抵抗値を測定する際に接点が不安定にならず、安定するといった利点がある。
【0067】
また、このような上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51は、駆動源を同一とすることが好ましい。同一駆動源とすることで、安定したシートSの搬送が可能となると共に、常に安定して搬送ローラ対50・51間の抵抗測定が実施できる。
【0068】
電源部54は定電圧電源で、電源部54の正極側が上流側の搬送ローラ50aに接続され、負極側が下流側の搬送ローラ51aに接続されている。
【0069】
抵抗値検知部55は、電源部54と下流側の搬送ローラ対51との間に接続されたシート検知用抵抗(抵抗部材)53と、シート検知用抵抗53の両端の各電圧を測定し、その電位差V1を端部検知判定部57へ出力する電圧測定部56とからなる。電圧測定部56は、シート検知用抵抗53の両端の電位差V1を、搬送ローラ対50・51間の抵抗値を表す情報として端部検知判定部57に出力する。なお、ここでは、シート検知用抵抗53を、電源部54と下流側の搬送ローラ51aとの間に配設したが、電源部54と上流側の搬送ローラ50aとの間に配設することもできる。
【0070】
端部検知判定部57は、シート検知用抵抗53の両端の電位差V1を基に、搬送ローラ対50・51間の抵抗値が、搬送ローラ対50・51間におけるシートSの介在の状態で変化することを捉え、該変化よりシート端部の検出を行う。
【0071】
ここで、電圧測定部56と端部検知判定部57とは、前述したCPU等よりなる画像形成装置1の制御部33にて構成されている。なお、抵抗値検知部55の構成として、上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51間の抵抗値そのものを直接測定して、抵抗値の変化を直に検出可能な装置を具備させる構成も考えられるが、端部検知判定部57を構成するCPUには、抵抗値そのものを直接測定する機能は具備されていないため、装置の大型化は免れない。これに対し、抵抗変化を電位差、つまりシート検知用抵抗53の両端の電圧を基に抵抗変化を検出してシート端部の検知を行う上記構成は、CPUがもともと有する機能のみを用いて構成できるので、装置の大型化を招来せず有利である。
【0072】
このような構成のシート端部検出装置は、例えば、図2の手差しトレイ31より給紙されたシートSの端部を、手差しトレイ31から上述の転写位置に搬送されるまでの間で検出するのであれば、図中、破線で囲んだ部分35の上流側及び下流側に位置する2つの搬送ローラ間の抵抗値を測り得るように設けられる。
【0073】
つまり、手差しトレイ31の給紙ローラ36に連動するように設けられた搬送ローラ対37が上流側の搬送ローラ対50に相当し、転写位置直前に設けられたレジストローラ対38が、下流側の搬送ローラ対51に相当し、これら搬送ローラ対50・51間の抵抗値を測定し得るように設けられる。
【0074】
続いて、端部検知判定部57による、シート検知用抵抗53の両端の電位差V1に基づくシート端部の検出方法を説明する。
【0075】
図3に、図1に示したシート端部検出装置の等価回路を示す。この等価回路において、Rm1はシート検知用抵抗53の抵抗値、Rr1は上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51の有する各抵抗値を合成したローラ合成抵抗値、Rp1は搬送ローラ対50・51間のローラ間抵抗値を意味している。
【0076】
この等価回路で示されるように、これら直列に接続された各抵抗値Rm1・Rr1・Rp1には、電源部54により定電圧Vappが印加されている。このとき、シート検知用抵抗53の両端の電位差V1は、以下の(1)式で表される。
【0077】
【数1】
【0078】
一方、図4(a)〜(d)に、上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51に対して、この間を搬送されるシートSのとり得る状態を示す。シートSのとり得る状態は、同図(a)〜(d)に示す4種類となる。
【0079】
同図(a)は、上流側の搬送ローラ対50にシートSが到達し、上流側の搬送ローラ対50にのみシートSが挟み込まれた状態を示している。同図(b)は、同図(a)の状態よりもシートSがさらに搬送され、下流側の搬送ローラ対51aにもシートSが到達し、上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51の両方に、シートSが跨るように挟まれた状態を示している。同図(c)は、同図(b)の状態よりもさらにシートSが搬送され、上流側の搬送ローラ対50から抜け出て、下流側の搬送ローラ対51にのみシートSが挟み込まれた状態を示している。同図(d)は、同図(a)の状態となる前、或いは、同図(c)の状態よりもシートSがさらに搬送された状態である、上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51の両方共にシートSが挟まれていない状態を示している。
【0080】
同図(a)〜(d)に示す4種類の各状態において、上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51間のローラ間抵抗値Rp1を考えると、以下のようになる。
【0081】
図4(b)のように、上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51に同一のシートSが挟まれている状態では、シートS内を電流が流れる。したがって、図4(b)の状態におけるローラ間抵抗値Rp1(b)は、シートSの抵抗値で決定される。
【0082】
これに対し、図4(b)以外の(a)または(c),(d)の状態では、上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51間、或いは、これら搬送ローラ対50・51とシートSとの間には空隙ができる。空隙の抵抗値は、紙等からなるシートSの抵抗値に比べて非常に大きいため、図4(a)または(c),(d)の状態におけるローラ間抵抗値Rp1(a)またはRp1(c),Rp1(d)と、シートSの抵抗値で決定されるローラ間抵抗値Rp1(b)とは、以下のような関係となる。
【0083】
Rp1(a)またはRp1(c),Rp1(d) >> Rp1(b)
ここで、シート検知用抵抗値Rm1とローラ合成抵抗値Rr1の両値は変化しないので、上記した(1)式より、図4(a)〜(d)の各状態におけるシート検知用抵抗53の両端の電位差V1(a)〜V1(d)とは、以下のような関係となる。
【0084】
V1(a)またはV1(c),V1(d) << V1(b)
この様子を、時間とシート検知用抵抗53の両端の電位差V1との関係としてグラフで表すと、図5のようになる。
【0085】
図5に示すように、シートSの搬送に伴い、上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51に対するシートSの位置状態が、図4(d)から図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)へと移り変わる。このとき、電位差測定部56より端部検知判定部57へ入力される電位差V1は、図4(a)から図4(b)の状態へと移行するタイミング、つまり、シートSの先端が下流側の搬送ローラ51aに噛み込んだタイミングで、V1(a)またはV1(c),V1(d)の低電位からV1(b)の高電位に立ち上がり、図4(d)から図4(c)の状態へと移行するタイミング、つまり、シートSの後端が上流側の搬送ローラ50aから離れたタイミングで、V1(b)の高電位からV1(a)またはV1(c),V1(d)の低電位に立ち上がる。
【0086】
したがって、端部検知判定部57は、電位差V1をモニタしておくことで、シートSの先端が下流側の搬送ローラ対51に到達したこと、及びシートSの後端が上流側の搬送ローラ対50より離れたことを検知し、シートSの先端、後端を検出する。
【0087】
このようなシート端部検出装置が、図2の手差しトレイ31の給紙ローラ36に連動する搬送ローラ対37を搬送ローラ対50とし、レジストローラ対38を下流側の搬送ローラ対51として構成されている場合、端部検知判定部57は、シートSの先端がレジストローラ対38に到達したタイミングでシート先端を検出し、シートSの後端が搬送ーラ対37を抜けたタイミングでシート後端を検出する。
【0088】
ところで、上述したように、端部検知判定部57は、画像形成装置1に備えられた制御部33にて構成されているが、制御部33自体は、その他の機能を司っているため、常に、シート端部の検出を行うことはできない。
【0089】
そこで、ここでは、端部検知判定部57は、シートSの搬送開始と同期し、所定のサンプリング周期で、シート端部の検出を行うようになっている。これにより、制御部33としてその他の機能を実行しながら、確実にシート端部を検出することができる。上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51の回転速度・角速度等は、常に制御部33にて監視されているので、所定のサンプリング周期で検出したとしても、シート先端が下流側の搬送ローラ対51に達した瞬間、及びシート後端が上流側の搬送ローラ対50より抜け出た瞬間を精度良く検出することができる。
【0090】
上記制御部33は、シートSの先端が検出されると、一旦レジストローラ対38の回転を停止し、画像形成プロセス部における画像形成のタイミングと合わせて搬送を再開する。また、上記制御部33は、シートSの後端が検出されると、手差しトレイ31より次ページの画像を形成するシートSの給紙タイミング、つまり、給紙ローラ36の駆動タイミングを決定する。
【0091】
このようなシート端部の検出を可能にする具体的な条件の一例を以下に示す。
【0092】
・上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51間にシートSが挟まれている図4(b)の状態のローラ間抵抗値Rp1(b):1010Ω
・上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51のどちらか一方にシートSが挟まれている図4(a)(c)の状態、又はどちらの搬送ローラ対50・51にもシートSが挟まれていない図4(d)の状態のローラ間抵抗値Rp1(a),Rp1(c),Rp1(d):1015Ω
・ローラ合成抵抗値Rr1:1010Ω
・シート検知用抵抗53の抵抗値Rm1:1010Ω
・電源部54の電源電圧Vapp:24V
このような条件の場合、図4(a)〜(d)の各状態における電位差V1(a)〜V1(d)の値は、前述した(1)式より以下のようになる。
【0093】
ここで、シートSの有無を判定する判定電圧V1jud=4Vであると、シート検知用抵抗53の両端の電位差は、シートSの先端及び後端を検知するのに充分な値であることがわかる。
【0094】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置に搭載されたシート端部検出装置は、シートSを搬送する上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51の2つの搬送ローラ間に電源部54にて所定のバイアス電圧(Vapp)を印加しておく一方、これら搬送ローラ対50・51間の抵抗値を絶えず抵抗値検知部55にて測定させておくことで、端部検知判定部57が、搬送ローラ対50・51間にシートSが介在することによる抵抗値の変化を捉えてシートSの先端及び後端を検出する構成である。
【0095】
このようなシート端部検出装置では、シート搬送路にもともと備えられているシート搬送部材を用いており、シート搬送路に別途に、アクチュエータやフォトセンサ等のシート端部検出のための機構を備えるものではないので、シート搬送路を狭めるようなことはなく、ジャムの要因とはならない。しかも、シートを搬送する搬送ローラ対を導電性とし、これらにバイアス電圧を印加すると共に、シート搬送対間の抵抗値を測定するのみであるので、ものもと画像形成装置に備えられている電源部や制御部の改良にて対応でき、コスト高ともならない。
【0096】
また、これによれば、フォトセンサを用いた場合のように、紙粉による汚染で、誤検出するようなことはなく、かつ、検出可能なシートの素材は、抵抗値変化によるシート端部の検出が可能な程度な導電性を有していれば、不透明なものに限定されることもない。また、アクチュエータを用いた場合のように、アクチュエータの戻り時間等を考慮する必要がなく、高速連続搬送であっても問題なくシート端部を検出することができる。
【0097】
なお、上記の説明では、上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51を、搬送ローラ対37及びレジストローラ対38とし、手差しトレイ31から給紙されたシートSの端部を検出する場合を説明したが、両面ユニット25や、第1,第2,第3のシートカセット26a〜26b等より給紙されたシートSを対象としてシート端部を検出する場合は、図2に示す搬送ローラ対40或いは搬送ローラ対41をそれぞれ上流側の搬送ローラ対50とし、レジストローラ38を下流側の搬送ローラ対51とすればよい。
【0098】
また、ここではシートSの材質として紙を例示したが、空隙つまり空気に対して抵抗値が判定可能な程度に小さければシートSの材質は問わない。例えば、シートSがOHPであっても、その表面に適当な改質処理が施されており、空気に対するその抵抗値が判定可能な程度であれば検出可能である。
【0099】
〔実施の形態2〕
本発明のその他の実施の形態について、図6〜図9を用いて、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1にて用いた部材と同じ機能を有する部材については同じ部材番号を付記し説明を省略する。
【0100】
ところで、シートSの抵抗値は、環境や材質・厚み等によっても変化する。シートSの抵抗値が変化した場合でも、実施の形態1で示したV1(a),V1(c)及びV1(d)とV1(b)との関係は保たれるが、シートSの抵抗値が高くなったときに検出される電位差V1(b)は低い値となる。そのため、判定電圧V1judが固定である場合、電位差V1(b)の方が判定電圧V1judより小さくなってしまい、シートSの有無を判断することができず、シート端部の判定を間違える恐れがある。
【0101】
そこで、本実施の形態では、シート端部検出装置が、シートSの抵抗値変化に応じて、シートS有無を判断する判定電圧V1judを切り換えるようになっている。これにより、シートSの抵抗値に左右されることなく、環境や材質、厚み等でシートSの抵抗が変化した場合にも正しくシートSの有無を検出して、シートSの先端及び後端を検知可能となる。
【0102】
シートSの抵抗値変化に応じて、判定電圧V1judを切り換えるにあたり、シートSの抵抗値そのものを検知するシート抵抗値検知手段を具備させる構成が最も望ましいことは言うまでもないが、コスト高の招来は否めない。
【0103】
そこで、本実施の形態では、シートSの体積抵抗値を測定するようにしている。シートSの材質としては紙が多用されており、紙の場合、体積抵抗と表面抵抗は同一ではないが、ほぼ比例関係にあることは周知のことである。シートSの体積抵抗値は、シートSを挟持するある搬送ローラ対間にバイアス電圧を印加して電流路を設けると共に該電流路に抵抗部材を配設しておき、その両端の電圧を測定することで、簡単に検出することができる。
【0104】
図6に、本実施の形態の画像形成装置1に搭載されたシート端部検出装置の概略構成を示す。
【0105】
図6に示すように、上流側の搬送ローラ対50に、該搬送ローラ対50に挟持されたシートSの体積抵抗を検知できるように体積抵抗値検知部(体積抵抗値検知手段)62が設けられている。
【0106】
体積抵抗値検知部62は、上流側の搬送ローラ対50を構成する2つの導電性の搬送ローラ50a・50b間に所定のバイアス電圧を印加する電源部54と、搬送ローラ50bと電源部54との間に配設された体積抵抗値検知用抵抗61と、この体積抵抗値検知用抵抗61の両端の電圧を測定し、その電圧差V2を端部検知判定部57へと出力する電圧測定部60とからなる。なお、ここでは、対を成す搬送ローラ50a・50b間に所定のバイアス電圧を印加する電源部54を、実施の形態1で説明した搬送ローラ対50・51間の抵抗値を測定するための電源部54と共用して部材点数を削減しているが、別に電源部を設けてもよい。
【0107】
端部検知判定部57は、この体積抵抗値検知用抵抗61の両端の電位差V2を基にシートSの体積抵抗値を算出し、算出した体積抵抗値に応じて判定電圧V1judを切り換える。
【0108】
なお、体積抵抗値検知部62がさらに設けられ、端部検知判定部57が、この体積抵抗値検知部62による体積抵抗値をシート端部の検知判定に加味する点以外は、実施の形態1のシート端部検出装置と同じ構成を有している。
【0109】
図7に、シート端部検出装置の等価回路を示す。この等価回路において、実施の形態1と同様に、Rm1はシート検知用抵抗53の抵抗値、Rr1は上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51の有する各抵抗値を合成したローラ合成抵抗値、Rp1は搬送ローラ対50・51間のローラ間抵抗値を意味している。そして、Rm2は体積抵抗値検知用抵抗61の抵抗値、Rr2は上流側の搬送ローラ対50の有する抵抗値、つまり、搬送ローラ50a・50bの各抵抗値を合成したローラ合成抵抗値、Rp2は搬送ローラ50a・50b間のローラ間抵抗値を意味している。
【0110】
この等価回路で示されるように、これら直列に接続された各抵抗値Rm1・Rr1・Rp1には、電源部54により定電圧Vappが印加されると共に、これら直列に接続された各抵抗値Rm2・Rr2・Rp2にも、電源部54により定電圧Vappが印加されている。
【0111】
このとき、シート検知用抵抗53の両端の電位差V1は、前述と同じ(1)式で表される一方、体積抵抗値検知用抵抗61の両端の電位差V2は、(2)式で表される。
【0112】
【数2】
【0113】
シートSの抵抗値(体積抵抗値に比例)が環境により変化し、シートSを挟んで状態で搬送ローラ50a・50b間で検出されるローラ間抵抗値Rp2が、Rp2(High)>Rp2(Medium)>Rp2(Low)のように変化したとする。
【0114】
ここで、体積抵抗値検知用抵抗61の抵抗値Rm2とローラ合成抵抗値Rr2の両値は変化しないので、上記した(2)式より、シートSを挟んだ状態における体積抵抗値検知用抵抗61の両端の電位差V2(High)〜V2(Low)は、以下のような関係となる。
【0115】
V2(High) < V2v(Medium) < V2(Low)
端部検知判定部57は、電位差V2判定用の判定電圧V2judと測定した電位差V2toの関係が、
V2jud>V2
の場合には、シートSの有無を判断する判定電圧V1judを下げる。これにより、シートSの抵抗値が変化しても、正しくシートSの有無を検知し、ひいては正確にシート端部を検出することができる。
【0116】
図8に、シートSの抵抗値と、搬送ローラ対50・51間に跨るようにシートSが挟まれた図4(b)の状態におけるシート検知用抵抗53の両端の電位差V1(b)との関係を表したグラフを示す。
【0117】
シートSの抵抗値が図8の実線Bより小さい場合、電位差V1(b)が8V以上なので、シートSの有無を判断する判定電圧V1jud=4Vとすれば十分余裕をもって判定可能なことがわかる。しかしながら、シートSの抵抗値がそれより高くなると電位差V1(b)の値は8Vより小さくなり、判定電圧V1jud=4Vに対して充分な余裕がなくなり、判定を間違える可能性がある。
【0118】
図9に、シートSの抵抗値と、上流側の搬送ローラ対50にシートSが挟まれた状態における体積抵抗値検知用抵抗61の両端の電位差V2との関係を表したグラフを示す。
【0119】
シートSの有無を判断する判定電圧V1judの値を、下流側で測定したシートSの体積抵抗値に応じる電位差V2の1/2の値に設定することで、シートSの抵抗値が高くなっても判定を間違えることはない。
【0120】
なお、体積抵抗値の算出にあたっては、正確な値を求めるために、平均値を用いることがより望ましい。また、上流側の搬送ローラ対50に体積抵抗検出部62を設けているので、シートSが搬送されると同時にシートSの体積抵抗値の測定が可能となり、その体積抵抗値を基準としてシートS先端・後端検知を行うことで、より正確な用紙の先端・後端が可能となる。また、体積抵抗値検知部62の動作タイミングとしては、これら搬送ローラ対50・51より上流の他の搬送ローラ対の駆動に応じて作動させることが望ましい。これにより、適切なタイミングで体積抵抗値に応じて判定電圧V1judを切り換えることができ、より正確な用紙の先端・後端が可能となる
このようなシート端部の検出を可能にする具体的な条件の一例を以下に示す。
【0121】
・上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51間にシートSが挟まれている図4(b)の状態のローラ間抵抗値Rp1(b):1011Ω
・上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51のどちらか一方にシートSが 挟まれている図4(a)(c)の状態、又はどちらの搬送ローラ対50・51にもシートSが挟まれていない図4(d)の状態のローラ間抵抗値Rp1( a),Rp1(c),Rp1(d):1015Ω
・ローラ合成抵抗値Rr1:1010Ω
・シート検知用抵抗53の抵抗値Rm1:1010Ω
・電源部54の電源電圧Vapp:24V
・上流側搬送ローラ50対を構成する搬送ローラ50a・50b間にシートSが挟まれている状態の搬送ローラ50a・50b間のローラ間抵抗値Rp2:1011Ω
・ローラ合成抵抗値Rr2:1010Ω
・体積抵抗値検知用抵抗61の抵抗値Rm2:1010Ω
このような条件の場合、シートSを挟んだ状態における体積抵抗値検知用抵抗61の両端の電位差V2(High)〜V2(Low)の値は、前述した(1)式及び(2)式より以下のようになる。
【0122】
よって、ここでは、シートSの有無を判定する判定電圧V1jud=V2/2=1Vとすることで、シート検知用抵抗53の両端の電位差V1より、シートSの先端及び後端を正確に検知することができる。
【0123】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置に搭載されたシート端部検出装置は、シートSを搬送する上流側及び下流側の搬送ローラ対50・51の2つの搬送ローラ間に電源部54にて所定のバイアス電圧(Vapp)を印加しておく一方、これら搬送ローラ対50・51間の抵抗値を絶えず抵抗値検知部55にて測定させておくことで、端部検知判定部57が、搬送ローラ対50・51間にシートSが跨ることによる抵抗値の変化を捉えてシートSの先端及び後端を検出する構成に加えて、搬送ローラ対50・51間にシートSが跨っている状態を判別する判別電圧V1を、シートSの抵抗値に応じて切り換えるようになっている。
【0124】
したがって、シートSの抵抗値に左右されることなく、環境や材質、厚み等でシートSの抵抗が変化した場合にも正しくシートSの有無を検出して、シートSの先端及び後端を検知可能となり、実施の形態1に記載したシート端部検出装置よりも正確なシート端部検知を実現する。
【0125】
【発明の効果】
本発明のシート端部検出方法は、以上のように、シート搬送路にシート搬送方向に沿って併設された2つの導電性のシート搬送部材間に所定のバイアス電圧を印加しておき、これらシート搬送部材間の抵抗値を測定することで、シート搬送路を搬送されるシートの端部を検出することを特徴としている。
【0126】
シート搬送方向に沿って併設された2つのシート搬送部材を導電性とし、これらシート搬送部材間にバイアス電圧を印加しておくと、2つのシート搬送部材間に跨るような状態でシートが搬送されている期間のみ、シートを通って電流が流れるので、その抵抗値の変化より、シートの端部を検出することができる。
【0127】
このような方法によるシート端部の検出は、シート搬送路にもともと備えられているシート搬送部材を用いており、シート搬送路に別途に、アクチュエータやフォトセンサ等のシート端部検出のための機構を備えるものではないので、シート搬送路を狭めるようなことはなく、ジャムの要因とはならない。しかも、シート搬送部材を導電性とし、これらにバイアス電圧を印加すると共に、シート搬送部材間の抵抗値を測定するのみであるので、シート搬送装置等に備えられている電源部や制御部の改良にて対応でき、コスト高ともならない。
【0128】
また、このような方法によるシート端部の検出は、フォトセンサを用いた場合のように、紙粉による汚染で、誤検出するようなことはなく、かつ、検出可能なシートの素材は、抵抗値変化によるシート端部の検出が可能な程度な導電性を有していれば、不透明なものに限定されることもない。また、アクチュエータを用いた場合のように、アクチュエータの戻り時間等を考慮する必要がなく、高速連続搬送であっても問題なくシート端部を検出することができる。
【0129】
これにより、高速連続搬送にも対応可能であると共に、紙粉等による汚れにも強く、検出可能なシートの素材が不透明なものに限定されることもなく、かつ、シート搬送路にジャムの要因となるような専用のシート端部検出機構を設けることなく簡単かつ安価なシート端部検出方法を提供できるという効果を奏する。
【0130】
本発明のシート端部検出装置は、以上のように、シート搬送路を搬送されるシートの端部を検出するシート端部検出装置であって、シート搬送路にシート搬送方向に沿って併設された2つの導電性のシート搬送部材と、上記2つのシート搬送部材間に、所定のバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、上記2つのシート搬送部材間の抵抗値を検知するシート搬送部材間抵抗値検知手段と、上記シート搬送部材間抵抗値検知手段の検知結果に基づいてシートの端部を検出するシート端部検知判定手段とを備えたことを特徴としている。
【0131】
これは、上記したシート端部検出方法を実現し得るシート端部検出装置の構成を提供するものである。
【0132】
これにより、高速連続搬送にも対応可能であると共に、紙粉等による汚れにも強く、検出可能なシートの素材が不透明なものに限定されることもなく、かつ、シート搬送路にジャムの要因となるような専用のシート端部検出機構を設けることなく簡単かつ安価な構成のシート端部検出装置を提供できるという効果を奏する。
【0133】
また、本発明のシート端部検出装置においては、さらに、上記シート搬送部材は、一対のローラ間にシートを挟み込んで搬送するローラ対構成であることを特徴とすることもできる。
【0134】
これにより、シートとローラとのニップを確保できるので、搬送性が良好となることに加え、抵抗値を測定する際に接点が不安定にならず、安定化するといった効果を併せて奏する。
【0135】
また、本発明のシート端部検出装置においては、さらに、上記シート搬送部材間抵抗値検知手段は、上記電圧印加手段と上記シート搬送部材との間に配設された抵抗部材の両端電圧を測定することで、シート搬送部材間の抵抗値を検知するようになっていることを特徴とすることもできる。
【0136】
これにより、シート搬送部材間抵抗値検知手段を、シート搬送装置等の制御部がもともと有する機能のみを用いて構成できるので、装置の大型化並びにコスト高を招来することがないという効果を併せ奏する。
【0137】
また、本発明のシート端部検出装置は、さらに、上記シート端部検知判定手段は、シートの搬送開始と同期し、所定のサンプリング周期で、上記シート部材間抵抗値検知手段の検知結果に基づくシート端部の検出を行うようになっていることを特徴とすることもできる。
【0138】
上述したように、上記シート端部検知判定手段は、シート搬送装置等の制御部にその機能を付与することで簡単に実現することができるが、制御部自体は、その他の機能も司っているため、常に、シート搬送部材間抵抗値検知手段の検知結果に基に、シート端部の検出を行っておくことはできない。
【0139】
しかしながら、これにより、制御部としてその他の機能を実行しながら、確実にシート端部を検出することができるという効果を併せて奏する。
【0140】
また、本発明のシート端部検出装置においては、さらに、シートの抵抗値を検知するシート抵抗値検知手段がさらに備えられ、上記シート端部検知判定手段は、上記シート抵抗値検知手段の検出結果を加味してシート端部の検出を行うようになっていることを特徴とすることもできる。
【0141】
シートの抵抗値は、環境や材質・厚み等によっても変化するため、シートを電流が流れることによるシート搬送部材間の抵抗値変化を基にシート端部の検出を行う場合、シートの抵抗値に左右されて、シート端部の検出を誤る恐れがあるが、これにより、シート自体の抵抗値の変化に左右されることなく、正確にシート端部の検出を行うことができるという効果を併せて奏する。
【0142】
また、本発明のシート端部検出装置は、さらに、上記シート抵抗値検知手段はシートの体積抵抗を検知する体積抵抗値検知手段であることを特徴とすることもできる。
【0143】
このように、紙等の場合、体積抵抗と表面抵抗とが比例関係にあるため、このように、シート抵抗値検知手段としてシートの体積抵抗値を測定する体積抵抗値検知手段を具備させることで、シート自体の抵抗値の変化に左右されることのない正確なシート端部の検出を簡単かつ安価に実現することができるという効果を併せて奏する。
【0144】
また、本発明のシート端部検出装置は、さらに、記体積抵抗値検知手段は、上記2つのシート搬送部材のうちのシート搬送方向上流側に位置する方に設けられていることを特徴とすることもできる。
【0145】
これにより、シートが搬送されると同時にシートの体積抵抗値の測定が可能となるので、シート自体の抵抗値の変化に左右されることのない正確なシート端部の検出を、簡単かつ安価に加えて、より確実に実現させることができるという効果を併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示すもので、画像形成装置のシート搬送部に搭載されたシート端部検出装置の概略構成図である。
【図2】上記画像形成装置の構成を示す縦断面図である。
【図3】上記シート端部検出装置の等価回路図である。
【図4】(a)〜(d)共に、上記シート端部検出装置における2つの導電性の搬送ローラ対に対するシートの搬送状態を示す図面である。
【図5】シート搬送に伴う、時間と、上流側及び下流側の両搬送ローラ対間にシートが跨っている状態におけるシート検知用抵抗の両端の電位差V1との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施のその他の形態を示すもので、画像形成装置のシート搬送部に搭載されたシート端部検出装置の概略構成図である。
【図7】上記シート端部検出装置の等価回路図である。
【図8】シートの抵抗値と、上流側及び下流側の両搬送ローラ対間にシートが跨っている状態におけるシート検知用抵抗の両端の電位差V1との関係を示すグラフである。
【図9】シートの抵抗値と、上流側搬送ローラ対に挟持されている状態におけるシート体積抵抗値検知用抵抗の両端の電位差V2との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 画像形成装置
50 搬送ローラ対(シート搬送部材)
51 搬送ローラ対(シート搬送部材)
53 シート検知用抵抗(抵抗部材)
55 抵抗値検知部(シート搬送部材間抵抗値検知手段)
57 端部検知判定部(シート端部検知判定手段)
62 体積抵抗値検知部(シート抵抗検知手段,体積抵抗値検知手段)
Claims (8)
- シート搬送路にシート搬送方向に沿って併設された2つの導電性のシート搬送部材間に所定のバイアス電圧を印加しておき、これらシート搬送部材間の抵抗値を測定することで、シート搬送路を搬送されるシートの端部を検出することを特徴とするシート端部検出方法。
- シート搬送路を搬送されるシートの端部を検出するシート端部検出装置であって、
シート搬送路にシート搬送方向に沿って併設された2つの導電性のシート搬送部材と、
上記2つのシート搬送部材間に、所定のバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、
上記2つのシート搬送部材間の抵抗値を検知するシート搬送部材間抵抗値検知手段と、
上記シート搬送部材間抵抗値検知手段の検知結果に基づいてシートの端部を検出するシート端部検知判定手段とを備えたことを特徴とするシート端部検出装置。 - 上記シート搬送部材は、一対のローラ間にシートを挟み込んで搬送するローラ対構成であることを特徴とする請求項2に記載のシート端部検出装置。
- 上記シート搬送部材間抵抗値検知手段は、上記電圧印加手段と上記シート搬送部材との間に配設された抵抗部材の両端電圧を測定することで、シート搬送部材間の抵抗値を検知するようになっていることを特徴とする請求項2又は3に記載のシート端部検出装置。
- 上記シート端部検知判定手段は、シートの搬送開始と同期し、所定のサンプリング周期で、上記シート部材間抵抗値検知手段の検知結果に基づくシート端部の検出を行うようになっていることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載のシート端部検出装置。
- シートの抵抗値を検知するシート抵抗値検知手段がさらに備えられ、
上記シート端部検知判定手段は、上記シート抵抗値検知手段の検出結果を加味してシート端部の検出を行うようになっていることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載のシート端部検出装置。 - 上記シート抵抗値検知手段はシートの体積抵抗を検知する体積抵抗値検知手段であることを特徴とする請求項6に記載のシート端部検出装置。
- 上記体積抵抗値検知手段は、上記2つのシート搬送部材のうちのシート搬送方向上流側に位置する方に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のシート端部検出装置。
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