JP3980120B2 - 重合性マロン酸誘導体および硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合性不飽和化合物とその化合物を利用した硬化性組成物に関する。さらに詳しく言えば、(1) 塗料、接着剤等に用いられる熱硬化性樹脂の原料となる後記一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体、(2) 一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体と、分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物をモノマー成分とする共重合体を含む硬化性組成物、および (3)一般式(I)で示される化合物をモノマー成分とする重合体と分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合体を含む硬化性組成物に関する。
【0002】
【関連技術の説明】
アクリル系モノマーの(共)重合体は外観、機械的性質、耐候性等に優れているため、塗料、接着剤などに広く用いられている。この場合、重合体を溶媒に溶解または分散させた溶液を基材に塗布し、溶媒を蒸発させただけでは硬度、強度、耐久性等が不十分であるため、架橋させるのが普通である。
架橋の方法としては種々開発されているが、通常は、重合体中に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等を含ませておき、架橋剤として、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアナト基等を複数個含む化合物を反応させる方法が採られることが多い。
【0003】
また、ポリヒドロキシ化合物と、活性イソシアネート基をブロック(保護)したポリイソシアネートとを配合した硬化組成物が知られており、ブロック剤として、例えば、1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチルピラゾール、ブタノンオキシム、アセト酢酸エステル、マロン酸ジエステルなどが用いられている(特開平8-225630号公報、特開平8-104726号公報、特開平7-304843号公報等)。
さらに、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのイソシアネート基をアルコール系、フェノール系、オキシム系、ラクタム系などの化合物でブロックし、得られた化合物とメチルメタクリレートまたはエチルアクリレートとの共重合体をポリエステルポリオールに配合した組成物も知られている(Ind. Eng. Chem. Prod. Res. Dev, 1984, 23, 586-590)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来知られている架橋反応系では、穏和な条件下で容易に反応が起こるような系では保存安定性が悪いため、主剤と硬化剤(架橋剤)を別々に保存しておき、使用直前に所定の割合で混合しなければならない。これは手間がかかり、昨今の省力化の動きに反する上、混合割合を間違えると期待される性能が出ないという欠点をもっている。
一方、貯蔵安定性の良いものは反応させるために高温を要し、基材がポリオレフィンやABSのようなプラスチックの場合など熱に強くない場合は使用し難いという問題がある。
そこで、比較的穏和な条件で硬化し、かつ二液に分割しなくても保存安定性の良い架橋手段が求められている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため種々検討した結果、一般式(I)
【化3】
〔式中、R1は水素原子またはメチル基を表わし、R2は−CO−、−COOR3 −(R3は炭素原子数2〜6のアルキレン基である。)、式(II)
【化4】
(R6およびR7は、各々独立して水素原子またはメチル基を表わす。)で示される二価の基、または−COOCH2CH2OCONH−R8−(R8はジイソシアネート化合物からイソシアナト基を除いた二価の基である。)を表わし、R4およ びR5はそれぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基またはアリールアル キル基を表わす。〕
で示される新規な重合性マロン酸誘導体と、分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物とをモノマー成分として含む共重合体をベース樹脂として用いるか、あるいは一般式(I)で示される化合物をモノマー成分とする共重合体および分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合体の双方をベース樹脂として用いると、比較的低温で加熱することにより架橋が起こり、塗料として用いるときは硬度、外観共に優れた塗膜を与えること、更にマロン酸エステル類を添加すると保存安定性が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は
1)前記一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体、
2)前記一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体と、分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物とをモノマー成分として含む共重合体を含有する硬化性組成物、および
3)前記一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体をモノマー成分として含む共重合体および分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合体を含有する硬化性組成物を提供する。
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の硬化性組成物で使用される一般式(I)で示されるを重合性マロン酸誘導体製造する方法は各種考えられ、特に限定されるものではないが、例えば工業的に製造されている一般式(III)
【化5】
(式中、R1およびR2は一般式(I)の場合と同じ意味を表わす。)
で示される化合物とマロン酸エステル類を反応させる方法が便利である。
【0008】
一般式(III)で示される化合物としては、2−メタクリロイルオキシエチル イソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,αジメチルベンジルイソシアネート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとジイソシアナト化合物との1:1反応生成物が使用できる。
【0009】
ここで、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと反応させるジイソシアナト化合物としては、例えば2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、3,5,5−トリメチル−3−イソシアナトメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、m−またはp−キシリレンジイソシアネート(m−またはp−XDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、リジンジ(またはトリ)イソシアネート等が使用できる。これらの中で高純度品の入手の容易さと取り扱いの容易さから、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、およびm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートが特に好ましく、反応性の点から2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが最も好ましい。
【0010】
一般式(III)の化合物と反応させるマロン酸エステル類としては、例えば脂 肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソ−およびn−プロパノール、各種ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール)、脂環式アルコール(例えばシクロヘキシルメタノール)、芳香環を含むアルコール(例えば、ベンジルアルコール)などとマロン酸とのジエステル、あるいは二つのアルコールが異なる混合エステルを用いることができるが、入手の容易さ、コスト上および品質上からジメチルエステルまたはジエチルエステルを用いるのが有利である。
【0011】
反応は、マロン酸エステルを単独で用いるか不活性溶媒に溶解させておき、これに一般式(III)で示される化合物、またはそれを不活性溶媒に溶かした溶液 を加えて行く。
加え終わった後、しばらくそのまま反応させて反応を完結させる。
【0012】
反応を円滑に進めるためには、触媒を用いることが望ましい。
触媒としてはナトリウムメトキサイド、ナトリウムフェノレートなどのアルカリ金属のアルコラート、または亜鉛アセチルアセトナートのような亜鉛化合物が好ましい。使用する触媒量は、一般式(I)の化合物の0.1〜3モル%、特に0.5〜2モル%がよい。また触媒は数回に分割して加える方が反応を完結させる上で有利である。
【0013】
マロン酸エステルと一般式(III)で示される化合物との比率は、理論的には 1:1(モル比)でよいが、反応を完結させやすくするためにマロン酸エステルを1%以上過剰に用いる方がよい。少なすぎると反応完結までに時間がかかったり、場合によっては完結しないことがある。多い場合はマロン酸エステルそのものが溶媒となるため、反応には差し支えない。
【0014】
不活性溶媒としては一般式(III)で示される化合物と反応しないものなら何 でもよく、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等が用いられる。またこれらの溶媒のいくつかを混合して用いてもよい。
【0015】
反応温度は一般式(III)で示される化合物の種類によって異なるが、大体室 温から120℃くらいまでが好ましい。温度が低すぎると反応が遅くなりすぎるし、高すぎるとC=C(二重結合)の重合によりゲル化するおそれがある。また、反応温度に応じて転化率の上限があるので、反応の進行が止まった場合は徐々に温度を下げていって完結させる必要がある。
【0016】
反応系には重合を防止するために重合禁止剤を添加しておくことが望ましい。重合禁止剤としては、フェノチアジン、p−メトキシフェノール、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BHT)など、一般に使用されているものを用いることができるが、特にフェノチアジンおよび/またはBHTが重合防止効果の点で適している。
かくして得られる一般式(I)で示される化合物は、それ自体新規であり、本願発明の対象である。
上記で得られた一般式(I)で示される化合物は、硬化性組成物のベース樹脂として使用される。なお、重合禁止剤を含む場合も、必ずしもこれを除去する必要はなく、そのまま使用することができる。
【0017】
本発明の硬化性組成物では、ベース樹脂として、一般式(I)で示される化合物と、分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物とをモノマー成分として一分子中に含む共重合体を用いてもよいし、一般式(I)で示される化合物をモノマー成分として含む共重合体と、分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合体とを混合したものを用いてもよい。
【0018】
水酸基を持つ重合体あるいは共重合体(以下(共)重合体という。)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等をモノマー成分の一つとするものを用いてもよいし、またビニルアセテート(共)重合体の鹸化物、さらにはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、あるいはエポキシ樹脂等のようなビニルモノマー以外の成分からなるものを用いてもよい。
【0019】
アミノ基を持つ(共)重合体としては、2−アミノエチル(メタ)アクリレート(共)重合体、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンなどがある。
カルボキシル基を持つ(共)重合体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等のカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物をモノマー成分の一つとする(共)重合体、末端カルボキシル基のポリエステル、ポリアミド酸などがある。
【0020】
これらの(共)重合体のうちビニル(共)重合体に属するものは、一般式(I)で示される化合物、および分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物の他に一種類以上のビニル重合性モノマーをモノマー成分として含有させることができる。
【0021】
このようなモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、各種ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、エチルビニルエーテル、各種ブチルビニルエーテル類、シクロヘキシルビニルエーテル、トリフルオロクロロエチレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、製造しようとする重合体のガラス転移温度、溶解度パラメーターの値、その他の性質によって適当なものが選択される。
【0022】
一般式(I)で示される化合物と、分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物とをモノマー成分として一分子中に含む共重合体において、あるいは一般式(I)で示される化合物をモノマー成分とする共と分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合体と併用する組成物において、「一般式(I)で示される化合物」と「水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基」は、(一般式(I)で示される化合物)/(水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基の合計)の当量比で、0.1〜10が好ましい。この当 量比は基材の材質と目的とする塗料や接着剤の性質によっても変わるが、一般的には0.5〜1.5程度の当量比で使用される。
【0023】
本発明の硬化性組成物中には、場合によっては触媒を含んでいてもよい。触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミンなどの3級アミン類、ジブチルスズジラウレートなどのスズ化合物などが好ましく用いられる。触媒の使用量は組成物全体の5重量%以下がよい。多すぎると不経済な上、着色、その他、最終製品の物性に悪影響を及ぼす。
【0024】
また、この組成物には溶媒を含んでいてもよく、溶媒としては上記した一般式(III)の化合物とマロン酸エステルとの反応で用いる溶媒が好ましい。更に溶 媒の一部としてマロン酸エステルを組成物全体の1重量%以上含有させると保存安定性が増すので、より好ましい。
このようにして製造された組成物は、一液性で保存安定性がよく、塗料や接着剤として使用したとき穏和な条件で硬化させることができる。
本発明の硬化性組成物を塗料や接着剤として使用する場合、塗料や接着剤組成物として、通常使用される他の成分を配合することができる。
この様な成分としては、例えば着色剤、UV吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0025】
【実施例】
以下に、一般式(I)で示される化合物の合成例、その重合例および硬化性組成物の実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例により限定されるものではない。
【0026】
合成例1:
撹拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器を備えた容量100mlの四つ口丸底フラスコに、マロン酸ジエチルエステル48.1g(100%換算,以下同じ。 0.3モル)、BHT 0.3g、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI,昭和電工(株)製)31.03g(0.2モル)、およびキシレン/エチルグリコールアセテート(体積比で1/1)98gを仕込んで撹拌し、油浴につけて温度を60℃に上げた。ここへナトリウムメトキサイド溶液(メタノール中28%) 0.4gを添加し、更に7時間後、および14時間後にナトリウムメトキサイド溶液を 0.4gずつ添加して、合計20時間反応させたところ、IRスペクトルで、NCO基に基づく2270cm-1付近の吸収が消失し、C=O基に基づく1720〜1750cm-1の吸収が増大した。得られた生成物は室温で淡黄色透明の液体であった。そのIRスペクトルを図1に示す。
【0027】
合成例2:
2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの代わりにm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート40.2gを用い、ナトリウムメトキサイド溶液の添加回数を5回とし、反応時間を合計35時間とした以外は合成例1と同様にして反応させたところIRスペクトルでNCO基に基づく2270cm-1付近の吸収を示さず、C=O基に基づく1720〜1750cm-1の吸収が増大した生成物を得た。
【0028】
合成例3:
合成例1と同じ装置を用い、マロン酸ジイソプロピルエステル38.4g、ナトリウムフェノキサイド 0.7g、BHT 0.3g、およびキシレン/エチルグリコールアセテート(体積比で1/1)98gを仕込み、油浴につけて温度を50℃に上げて溶解させた。ここへメタクリロイルイソシアネート22.2gを脱水したトルエン30gに溶かしたものをを45分かけて滴下した。滴下が終了してから10分後にIRスペクトルを測定したところ、NCO基に基づく2200cm-1付近の吸収が消失し、C=O基に基づく1720〜1750cm-1の吸収が増大したので反応を終了し、生成物を得た。
【0029】
合成例4:
撹拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器を備えた容量500mlの四つ口丸底フラスコに、3,5,5−トリメチル−3−イソシアナトメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)66.6g、BHT 0.5g、およびシクロヘキサノン100gを仕込み、100℃に昇温後、2−ヒドロキシエチルメタクリレート39gを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間その温度で撹拌を続け、次いで2−ヒドロキシエチルメタクリレート7.8gを更に25分かけて滴下した。
ここへ、マロン酸ジメチルエステル47.5g、亜鉛アセチルアセトナート 1.7g、およびキシレン/エチルグリコールアセテート(体積比で1/1)98gを仕込み、油浴につけて温度を90℃に上げて溶解させた後、更にそのまま16時間加温を続けたところ、IRスペクトルにNCO基に基づく吸収が変化しなくなった。そこで1時間に20℃の割合で温度を50℃まで下げ、8時間そのまま反応を続けた後放置して室温まで下げたところ、NCO基に基づく2270cm-1付近の吸収が消失し、C=O基に基づく1720〜1750cm-1の吸収が増大した生成物を得た。
【0030】
重合例1:一般式(I)で示される化合物の共重合体の調製
撹拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器を備えた容量300mlの四つ口丸底フラスコにシクロヘキサノン70gを仕込み、窒素で系内を置換した後、油浴につけて温度を60℃に上げた。ここへ、合成例1で得られた生成物63g、スチレン8g、メチルメタクリレート20g、n−ブチルアクリレート40g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10g、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)8gのモノマー混合液を3時間かけて滴下し、終了後滴下ロート内壁に付着したものをシクロヘキサノン2gでフラスコ内に洗い流した。次いで温度を70℃に上げ、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル) 0.5gをシクロヘキサノン6gに溶かしたものを滴下し、滴下ロート内壁に付着したものをシクロヘキサノン 1.5gでフラスコ内に洗い流した。そのままさらに1時間加熱を続けた後室温まで冷却し、共重合体溶液(A)を得た。このものを5℃の冷蔵庫に保存したところ、6ヶ月間液状を保っていた。
【0031】
重合例2:一般式(I)で示される化合物の共重合体の調製
滴下するモノマー混合液を、合成例1で得られた生成物125g、メチルメタクリレート40g、n−ブチルアクリレート40g、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)8gからなる混合液とした以外は重合例1と同様の操作を行ない、共重合体溶液(B)を得た。
【0032】
重合例3:水酸基およびカルボキシル基を持つ重合体の合成
滴下するモノマー混合液を、スチレン16g、n−ブチルアクリレート40g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート40g、アクリル酸10g、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)8gからなる混合液とした以外は重合例1と同様の操作を行ない、共重合体溶液(C)を得た。
【0033】
実施例1:
共重合体溶液(A)を、アプリケーターを用いて50μmの厚さでガラス板に塗布し、10分間風乾後、90℃の熱風乾燥機中で20分間焼き付けた。次いでこれを取り出し、室温まで冷却してからHBの鉛筆で引っ掻いたところ、傷はつかなかった。またメチルエチルケトンを含ませた脱脂綿で100回擦ったが、塗膜は剥がれなかった。
【0034】
実施例2:
共重合体溶液(B)と共重合体溶液(C)を 1.5:1の割合で混合した。得られた混合液を用いて実施例8と同様の処理を行なったところ、HBの鉛筆で引っ掻いても、傷はつかなかった。またメチルエチルケトンを含ませた脱脂綿で100回こすったが、塗膜は剥がれなかった。一方、混合溶液は1週間放置しても液状を保っていた。
【0035】
比較例1:
合成例1で得られた生成物を用いない以外は重合例1と同様にして重合させた。得られた共重合体溶液を用いて実施例1と同様の処理を行なったが、塗膜は軟らかく、HBの鉛筆による引っ掻き傷がついた。またメチルエチルケトンを含ませた脱脂綿で擦ったところ、塗膜は溶けてしまった。
【0036】
比較例2:
滴下するモノマー溶液を、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート11.7g、スチレン8g、メチルメタクリレート8g、n−ブチルアクリレート50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10g、アクリル酸5g、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)8gからなる混合液とした以外は重合例1と同様の操作を行なったところ、ゲル化してしまい、共重合体溶液は得られなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、一般式(I)で示される新規な重合性マロン酸誘導体、一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体と、分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物とをモノマー成分として含む共重合体を含有する硬化性組成物、および一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体をモノマー成分とする共重合体と分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合体を含む硬化性組成物を提供したものである。
本発明による硬化性組成物は、二液に分割しなくても保存安定性がよく、比較的低温で加熱することにより架橋が起こり、塗料や接着剤として用いたとき硬度、外観共に優れた塗膜を与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 合成例1で得られた化合物のIRスペクトルである。
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