JPH10316643A - 重合性マロン酸誘導体および硬化性組成物 - Google Patents

重合性マロン酸誘導体および硬化性組成物

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JPH10316643A
JPH10316643A JP12829097A JP12829097A JPH10316643A JP H10316643 A JPH10316643 A JP H10316643A JP 12829097 A JP12829097 A JP 12829097A JP 12829097 A JP12829097 A JP 12829097A JP H10316643 A JPH10316643 A JP H10316643A
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優人 二上
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正志 畠中
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的穏和な条件で硬化し、かつ二液に分割
しなくても保存安定性の良い、アクリル系(共)重合体
をベース樹脂として含む硬化性組成物およびそのベース
樹脂原料となる化合物を提供する。 【解決手段】 (1)一般式(I) 〔式中の記号は明細書に記載の意味を表わす。〕で示さ
れる新規重合性マロン酸誘導体、 (2)一般式(I)で示
される重合性マロン酸誘導体と、分子内に水酸基、アミ
ノ基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物
とをモノマー成分として含む共重合体を含有する硬化性
組成物、および (3)一般式(I)で示される重合性マロ
ン酸誘導体をモノマー成分として含む共重合体と分子内
に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合
体とを含む硬化性組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重合性不飽和化合
物とその化合物を利用した硬化性組成物に関する。さら
に詳しく言えば、(1) 塗料、接着剤等に用いられる熱硬
化性樹脂の原料となる後記一般式(I)で示される重合
性マロン酸誘導体、(2) 一般式(I)で示される重合性
マロン酸誘導体と、分子内に水酸基、アミノ基、または
カルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物をモノマー成
分とする共重合体を含む硬化性組成物、および (3)一般
式(I)で示される化合物をモノマー成分とする重合体
と分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を
持つ重合体を含む硬化性組成物に関する。
【0002】
【関連技術の説明】アクリル系モノマーの(共)重合体
は外観、機械的性質、耐候性等に優れているため、塗
料、接着剤などに広く用いられている。この場合、重合
体を溶媒に溶解または分散させた溶液を基材に塗布し、
溶媒を蒸発させただけでは硬度、強度、耐久性等が不十
分であるため、架橋させるのが普通である。架橋の方法
としては種々開発されているが、通常は、重合体中に水
酸基、アミノ基、カルボキシル基等を含ませておき、架
橋剤として、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアナ
ト基等を複数個含む化合物を反応させる方法が採られる
ことが多い。
【0003】また、ポリヒドロキシ化合物と、活性イソ
シアネート基をブロック(保護)したポリイソシアネー
トとを配合した硬化組成物が知られており、ブロック剤
として、例えば、1,2,4−トリアゾール、3,5−
ジメチルピラゾール、ブタノンオキシム、アセト酢酸エ
ステル、マロン酸ジエステルなどが用いられている(特
開平8-225630号公報、特開平8-104726号公報、特開平7-
304843号公報等)。さらに、2−メタクリロイルオキシ
エチルイソシアネートのイソシアネート基をアルコール
系、フェノール系、オキシム系、ラクタム系などの化合
物でブロックし、得られた化合物とメチルメタクリレー
トまたはエチルアクリレートとの共重合体をポリエステ
ルポリオールに配合した組成物も知られている(Ind. E
ng.Chem. Prod. Res. Dev, 1984, 23, 586-590)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来知られている架橋反応系では、穏和な条件下で容易
に反応が起こるような系では保存安定性が悪いため、主
剤と硬化剤(架橋剤)を別々に保存しておき、使用直前
に所定の割合で混合しなければならない。これは手間が
かかり、昨今の省力化の動きに反する上、混合割合を間
違えると期待される性能が出ないという欠点をもってい
る。一方、貯蔵安定性の良いものは反応させるために高
温を要し、基材がポリオレフィンやABSのようなプラ
スチックの場合など熱に強くない場合は使用し難いとい
う問題がある。そこで、比較的穏和な条件で硬化し、か
つ二液に分割しなくても保存安定性の良い架橋手段が求
められている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するため種々検討した結果、一般式(I)
【化3】 〔式中、R1は水素原子またはメチル基を表わし、R2
−CO−、−COOR3−(R3は炭素原子数2〜6のア
ルキレン基である。)、式(II)
【化4】 (R6およびR7は、各々独立して水素原子またはメチル
基を表わす。)で示される二価の基、または−COOC
2CH2OCONH−R8−(R8はジイソシアネート化
合物からイソシアナト基を除いた二価の基である。)を
表わし、R4およびR5はそれぞれ独立して、アルキル
基、シクロアルキル基またはアリールアルキル基を表わ
す。〕で示される新規な重合性マロン酸誘導体と、分子
内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重
合性不飽和化合物とをモノマー成分として含む共重合体
をベース樹脂として用いるか、あるいは一般式(I)で
示される化合物をモノマー成分とする共重合体および分
子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ
重合体の双方をベース樹脂として用いると、比較的低温
で加熱することにより架橋が起こり、塗料として用いる
ときは硬度、外観共に優れた塗膜を与えること、更にマ
ロン酸エステル類を添加すると保存安定性が改善される
ことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】すなわち、本発明は 1)前記一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導
体、 2)前記一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体
と、分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基
を持つ重合性不飽和化合物とをモノマー成分として含む
共重合体を含有する硬化性組成物、および 3)前記一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体
をモノマー成分として含む共重合体および分子内に水酸
基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合体を含
有する硬化性組成物を提供する。
【0007】以下、本発明を詳しく説明する。本発明の
硬化性組成物で使用される一般式(I)で示されるを重
合性マロン酸誘導体製造する方法は各種考えられ、特に
限定されるものではないが、例えば工業的に製造されて
いる一般式(III)
【化5】 (式中、R1およびR2は一般式(I)の場合と同じ意味
を表わす。)で示される化合物とマロン酸エステル類を
反応させる方法が便利である。
【0008】一般式(III)で示される化合物として
は、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、
メタクリロイルイソシアネート、m−イソプロペニル−
α,αジメチルベンジルイソシアネート、2−ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレートとジイソシアナト化合物
との1:1反応生成物が使用できる。
【0009】ここで、2−ヒドロキシエチル(メタ)ア
クリレートと反応させるジイソシアナト化合物として
は、例えば2,4−または2,6−トリレンジイソシア
ネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソ
シアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネー
ト、3,5,5−トリメチル−3−イソシアナトメチル
シクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、m−また
はp−キシリレンジイソシアネート(m−またはp−X
DI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシア
ネート(H12MDI)、1,3−または1,4−ビス
(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、リジンジ(ま
たはトリ)イソシアネート等が使用できる。これらの中
で高純度品の入手の容易さと取り扱いの容易さから、2
−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、および
m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシ
アネートが特に好ましく、反応性の点から2−メタクリ
ロイルオキシエチルイソシアネートが最も好ましい。
【0010】一般式(III)の化合物と反応させるマロ
ン酸エステル類としては、例えば脂肪族アルコール(例
えば、メタノール、エタノール、イソ−およびn−プロ
パノール、各種ブタノール、2−エチルヘキシルアルコ
ール)、脂環式アルコール(例えばシクロヘキシルメタ
ノール)、芳香環を含むアルコール(例えば、ベンジル
アルコール)などとマロン酸とのジエステル、あるいは
二つのアルコールが異なる混合エステルを用いることが
できるが、入手の容易さ、コスト上および品質上からジ
メチルエステルまたはジエチルエステルを用いるのが有
利である。
【0011】反応は、マロン酸エステルを単独で用いる
か不活性溶媒に溶解させておき、これに一般式(III)
で示される化合物、またはそれを不活性溶媒に溶かした
溶液を加えて行く。加え終わった後、しばらくそのまま
反応させて反応を完結させる。
【0012】反応を円滑に進めるためには、触媒を用い
ることが望ましい。触媒としてはナトリウムメトキサイ
ド、ナトリウムフェノレートなどのアルカリ金属のアル
コラート、または亜鉛アセチルアセトナートのような亜
鉛化合物が好ましい。使用する触媒量は、一般式(I)
の化合物の0.1〜3モル%、特に0.5〜2モル%がよい。
また触媒は数回に分割して加える方が反応を完結させる
上で有利である。
【0013】マロン酸エステルと一般式(III)で示さ
れる化合物との比率は、理論的には1:1(モル比)で
よいが、反応を完結させやすくするためにマロン酸エス
テルを1%以上過剰に用いる方がよい。少なすぎると反
応完結までに時間がかかったり、場合によっては完結し
ないことがある。多い場合はマロン酸エステルそのもの
が溶媒となるため、反応には差し支えない。
【0014】不活性溶媒としては一般式(III)で示さ
れる化合物と反応しないものなら何でもよく、例えばト
ルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、シクロ
ヘキサノン、メチルイソブチルケトン等が用いられる。
またこれらの溶媒のいくつかを混合して用いてもよい。
【0015】反応温度は一般式(III)で示される化合
物の種類によって異なるが、大体室温から120℃くら
いまでが好ましい。温度が低すぎると反応が遅くなりす
ぎるし、高すぎるとC=C(二重結合)の重合によりゲ
ル化するおそれがある。また、反応温度に応じて転化率
の上限があるので、反応の進行が止まった場合は徐々に
温度を下げていって完結させる必要がある。
【0016】反応系には重合を防止するために重合禁止
剤を添加しておくことが望ましい。重合禁止剤として
は、フェノチアジン、p−メトキシフェノール、2,6
−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BH
T)など、一般に使用されているものを用いることがで
きるが、特にフェノチアジンおよび/またはBHTが重
合防止効果の点で適している。かくして得られる一般式
(I)で示される化合物は、それ自体新規であり、本願
発明の対象である。上記で得られた一般式(I)で示さ
れる化合物は、硬化性組成物のベース樹脂として使用さ
れる。なお、重合禁止剤を含む場合も、必ずしもこれを
除去する必要はなく、そのまま使用することができる。
【0017】本発明の硬化性組成物では、ベース樹脂と
して、一般式(I)で示される化合物と、分子内に水酸
基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽
和化合物とをモノマー成分として一分子中に含む共重合
体を用いてもよいし、一般式(I)で示される化合物を
モノマー成分として含む共重合体と、分子内に水酸基、
アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合体とを混合
したものを用いてもよい。
【0018】水酸基を持つ重合体あるいは共重合体(以
下(共)重合体という。)としては、2−ヒドロキシエ
チル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニ
ルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等を
モノマー成分の一つとするものを用いてもよいし、また
ビニルアセテート(共)重合体の鹸化物、さらにはポリ
エステルポリオール、ポリエーテルポリオール、あるい
はエポキシ樹脂等のようなビニルモノマー以外の成分か
らなるものを用いてもよい。
【0019】アミノ基を持つ(共)重合体としては、2
−アミノエチル(メタ)アクリレート(共)重合体、ポ
リアリルアミン、ポリエチレンイミンなどがある。カル
ボキシル基を持つ(共)重合体としては、(メタ)アク
リル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等のカル
ボキシル基を持つ重合性不飽和化合物をモノマー成分の
一つとする(共)重合体、末端カルボキシル基のポリエ
ステル、ポリアミド酸などがある。
【0020】これらの(共)重合体のうちビニル(共)
重合体に属するものは、一般式(I)で示される化合
物、および分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキ
シル基を持つ重合性不飽和化合物の他に一種類以上のビ
ニル重合性モノマーをモノマー成分として含有させるこ
とができる。
【0021】このようなモノマーとしては、メチル(メ
タ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、各種
ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メ
タ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなど
の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、エチルビ
ニルエーテル、各種ブチルビニルエーテル類、シクロヘ
キシルビニルエーテル、トリフルオロクロロエチレン、
酢酸ビニルなどが挙げられ、製造しようとする重合体の
ガラス転移温度、溶解度パラメーターの値、その他の性
質によって適当なものが選択される。
【0022】一般式(I)で示される化合物と、分子内
に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を持つ重合
性不飽和化合物とをモノマー成分として一分子中に含む
共重合体において、あるいは一般式(I)で示される化
合物をモノマー成分とする共と分子内に水酸基、アミノ
基、またはカルボキシル基を持つ重合体と併用する組成
物において、「一般式(I)で示される化合物」と「水
酸基、アミノ基、またはカルボキシル基」は、(一般式
(I)で示される化合物)/(水酸基、アミノ基、また
はカルボキシル基の合計)の当量比で、0.1〜10が好
ましい。この当量比は基材の材質と目的とする塗料や接
着剤の性質によっても変わるが、一般的には0.5〜1.5程
度の当量比で使用される。
【0023】本発明の硬化性組成物中には、場合によっ
ては触媒を含んでいてもよい。触媒としては、トリエチ
ルアミン、トリエチレンジアミンなどの3級アミン類、
ジブチルスズジラウレートなどのスズ化合物などが好ま
しく用いられる。触媒の使用量は組成物全体の5重量%
以下がよい。多すぎると不経済な上、着色、その他、最
終製品の物性に悪影響を及ぼす。
【0024】また、この組成物には溶媒を含んでいても
よく、溶媒としては上記した一般式(III)の化合物と
マロン酸エステルとの反応で用いる溶媒が好ましい。更
に溶媒の一部としてマロン酸エステルを組成物全体の1
重量%以上含有させると保存安定性が増すので、より好
ましい。このようにして製造された組成物は、一液性で
保存安定性がよく、塗料や接着剤として使用したとき穏
和な条件で硬化させることができる。本発明の硬化性組
成物を塗料や接着剤として使用する場合、塗料や接着剤
組成物として、通常使用される他の成分を配合すること
ができる。この様な成分としては、例えば着色剤、UV
吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0025】
【実施例】以下に、一般式(I)で示される化合物の合
成例、その重合例および硬化性組成物の実施例を示して
本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例により
限定されるものではない。
【0026】合成例1:撹拌機、温度計、滴下ロート、
還流冷却器を備えた容量100mlの四つ口丸底フラス
コに、マロン酸ジエチルエステル48.1g(100%換
算,以下同じ。 0.3モル)、BHT 0.3g、2−メタク
リロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMO
I,昭和電工(株)製)31.03g(0.2モル)、およびキシ
レン/エチルグリコールアセテート(体積比で1/1)
98gを仕込んで撹拌し、油浴につけて温度を60℃に
上げた。ここへナトリウムメトキサイド溶液(メタノー
ル中28%) 0.4gを添加し、更に7時間後、および1
4時間後にナトリウムメトキサイド溶液を 0.4gずつ添
加して、合計20時間反応させたところ、IRスペクト
ルで、NCO基に基づく2270cm-1付近の吸収が消失
し、C=O基に基づく1720〜1750cm-1の吸収が増大し
た。得られた生成物は室温で淡黄色透明の液体であっ
た。そのIRスペクトルを図1に示す。
【0027】合成例2:2−メタクリロイルオキシエチ
ルイソシアネートの代わりにm−イソプロペニル−α,
α−ジメチルベンジルイソシアネート40.2gを用い、ナ
トリウムメトキサイド溶液の添加回数を5回とし、反応
時間を合計35時間とした以外は合成例1と同様にして
反応させたところIRスペクトルでNCO基に基づく22
70cm-1付近の吸収を示さず、C=O基に基づく1720〜
1750cm-1の吸収が増大した生成物を得た。
【0028】合成例3:合成例1と同じ装置を用い、マ
ロン酸ジイソプロピルエステル38.4g、ナトリウムフェ
ノキサイド 0.7g、BHT 0.3g、およびキシレン/エ
チルグリコールアセテート(体積比で1/1)98gを
仕込み、油浴につけて温度を50℃に上げて溶解させ
た。ここへメタクリロイルイソシアネート22.2gを脱水
したトルエン30gに溶かしたものをを45分かけて滴
下した。滴下が終了してから10分後にIRスペクトル
を測定したところ、NCO基に基づく2200cm-1付近の
吸収が消失し、C=O基に基づく1720〜1750cm-1の吸
収が増大したので反応を終了し、生成物を得た。
【0029】合成例4:撹拌機、温度計、滴下ロート、
還流冷却器を備えた容量500mlの四つ口丸底フラス
コに、3,5,5−トリメチル−3−イソシアナトメチル
シクロヘキシルイソシアネート(IPDI)66.6g、BH
T 0.5g、およびシクロヘキサノン100gを仕込み、
100℃に昇温後、2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト39gを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1
時間その温度で撹拌を続け、次いで2−ヒドロキシエチ
ルメタクリレート7.8gを更に25分かけて滴下した。
ここへ、マロン酸ジメチルエステル47.5g、亜鉛アセチ
ルアセトナート 1.7g、およびキシレン/エチルグリコ
ールアセテート(体積比で1/1)98gを仕込み、油
浴につけて温度を90℃に上げて溶解させた後、更にそ
のまま16時間加温を続けたところ、IRスペクトルに
NCO基に基づく吸収が変化しなくなった。そこで1時
間に20℃の割合で温度を50℃まで下げ、8時間その
まま反応を続けた後放置して室温まで下げたところ、N
CO基に基づく2270cm-1付近の吸収が消失し、C=O
基に基づく1720〜1750cm-1の吸収が増大した生成物を
得た。
【0030】重合例1:一般式(I)で示される化合物
の共重合体の調製 撹拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器を備えた容量
300mlの四つ口丸底フラスコにシクロヘキサノン7
0gを仕込み、窒素で系内を置換した後、油浴につけて
温度を60℃に上げた。ここへ、合成例1で得られた生
成物63g、スチレン8g、メチルメタクリレート20
g、n−ブチルアクリレート40g、2−ヒドロキシエ
チルメタクリレート10g、2,2′−アゾビス(4−
メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)8gのモ
ノマー混合液を3時間かけて滴下し、終了後滴下ロート
内壁に付着したものをシクロヘキサノン2gでフラスコ
内に洗い流した。次いで温度を70℃に上げ、2,2′
−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニ
トリル) 0.5gをシクロヘキサノン6gに溶かしたもの
を滴下し、滴下ロート内壁に付着したものをシクロヘキ
サノン 1.5gでフラスコ内に洗い流した。そのままさら
に1時間加熱を続けた後室温まで冷却し、共重合体溶液
(A)を得た。このものを5℃の冷蔵庫に保存したとこ
ろ、6ヶ月間液状を保っていた。
【0031】重合例2:一般式(I)で示される化合物
の共重合体の調製 滴下するモノマー混合液を、合成例1で得られた生成物
125g、メチルメタクリレート40g、n−ブチルア
クリレート40g、2,2′−アゾビス(4−メトキシ
−2,4−ジメチルバレロニトリル)8gからなる混合
液とした以外は重合例1と同様の操作を行ない、共重合
体溶液(B)を得た。
【0032】重合例3:水酸基およびカルボキシル基を
持つ重合体の合成 滴下するモノマー混合液を、スチレン16g、n−ブチ
ルアクリレート40g、2−ヒドロキシエチルメタクリ
レート40g、アクリル酸10g、2,2′−アゾビス
(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)8
gからなる混合液とした以外は重合例1と同様の操作を
行ない、共重合体溶液(C)を得た。
【0033】実施例1:共重合体溶液(A)を、アプリ
ケーターを用いて50μmの厚さでガラス板に塗布し、
10分間風乾後、90℃の熱風乾燥機中で20分間焼き
付けた。次いでこれを取り出し、室温まで冷却してから
HBの鉛筆で引っ掻いたところ、傷はつかなかった。ま
たメチルエチルケトンを含ませた脱脂綿で100回擦っ
たが、塗膜は剥がれなかった。
【0034】実施例2:共重合体溶液(B)と共重合体
溶液(C)を 1.5:1の割合で混合した。得られた混合
液を用いて実施例8と同様の処理を行なったところ、H
Bの鉛筆で引っ掻いても、傷はつかなかった。またメチ
ルエチルケトンを含ませた脱脂綿で100回こすった
が、塗膜は剥がれなかった。一方、混合溶液は1週間放
置しても液状を保っていた。
【0035】比較例1:合成例1で得られた生成物を用
いない以外は重合例1と同様にして重合させた。得られ
た共重合体溶液を用いて実施例1と同様の処理を行なっ
たが、塗膜は軟らかく、HBの鉛筆による引っ掻き傷が
ついた。またメチルエチルケトンを含ませた脱脂綿で擦
ったところ、塗膜は溶けてしまった。
【0036】比較例2:滴下するモノマー溶液を、2−
メタクリロイルオキシエチルイソシアネート11.7g、ス
チレン8g、メチルメタクリレート8g、n−ブチルア
クリレート50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト10g、アクリル酸5g、2,2′−アゾビス(4−
メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)8gから
なる混合液とした以外は重合例1と同様の操作を行なっ
たところ、ゲル化してしまい、共重合体溶液は得られな
かった。
【0037】
【発明の効果】本発明は、一般式(I)で示される新規
な重合性マロン酸誘導体、一般式(I)で示される重合
性マロン酸誘導体と、分子内に水酸基、アミノ基、また
はカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物とをモノマ
ー成分として含む共重合体を含有する硬化性組成物、お
よび一般式(I)で示される重合性マロン酸誘導体をモ
ノマー成分とする共重合体と分子内に水酸基、アミノ
基、またはカルボキシル基を持つ重合体を含む硬化性組
成物を提供したものである。本発明による硬化性組成物
は、二液に分割しなくても保存安定性がよく、比較的低
温で加熱することにより架橋が起こり、塗料や接着剤と
して用いたとき硬度、外観共に優れた塗膜を与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 合成例1で得られた化合物のIRスペクトル
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 畠中 正志 神奈川県川崎市川崎区扇町5−1 昭和電 工株式会社化学品研究所内 (72)発明者 木原 宗代 神奈川県川崎市川崎区扇町5−1 昭和電 工株式会社化学品研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 〔式中、R1は水素原子またはメチル基を表わし、R2
    −CO−、−COOR3−(R3は炭素原子数2〜6のア
    ルキレン基である。)、式(II) 【化2】 (R6およびR7は、各々独立して水素原子またはメチル
    基を表わす。)で示される二価の基、または−COOC
    2CH2OCONH−R8−(R8はジイソシアネート化
    合物からイソシアナト基を除いた二価の基である。)を
    表わし、R4およびR5は、それぞれ独立してアルキル
    基、シクロアルキル基またはアリールアルキル基を表わ
    す。〕で示される重合性マロン酸誘導体。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の一般式(I)で示され
    る重合性マロン酸誘導体と、分子内に水酸基、アミノ
    基、またはカルボキシル基を持つ重合性不飽和化合物と
    をモノマー成分として含む共重合体を含有する硬化性組
    成物。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の一般式(I)で示され
    る重合性マロン酸誘導体をモノマー成分として含む共重
    合体と分子内に水酸基、アミノ基、またはカルボキシル
    基を持つ重合体とを含有する硬化性組成物。
  4. 【請求項4】 さらに、マロン酸エステルを組成物全体
    の1重量%以上含有させる請求項2または3に記載の硬
    化性組成物。
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