JP2023064932A - 熱硬化性樹脂組成物、フィルム、フィルムを備えた物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルムの成形性および耐薬品性を両立することのできる、熱硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】(A)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル樹脂と、(B)前記成分(A)とは異なるポリオール化合物と、(C)ポリイソシアネート化合物と、を含み、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の少なくとも1つが複素多環式骨格を有する、熱硬化性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物、フィルムおよびフィルムを備えた物品に関する。
自動車内装部品や、生活関連部品、家具建材関連部品等については、その部品の保護や加飾のため、表面にフィルムを貼り付けることが一般的である。このような物品を保護するためのフィルムや膜は、樹脂組成物等から形成されることが多く、フィルム形成用途の樹脂組成物について様々な開発がなされている。
特許文献1には、アクリル系ポリオールと、イソシアネートの反応生成物であるポリウレタン、およびアンヒドロ糖アルコールによる鎖延長部分を含有するポリウレタンが記載され、当該ポリウレタンはコート材料等に使用されることが記載されている。
また、特許文献2には、イソソルバイドジ(メタ)アクリレート、水酸基含有樹脂およびイソシアネート基含有化合物を含むことを特徴とする塗料組成物が記載されている。
特表2017-519052号公報 特開2012-246351号公報
上述したような、自動車内装部品に代表される各種部品は、3次元曲面を有する複雑な形状をしていることが多い。したがって、そのような部品に貼り付けるフィルムは、曲面に合わせて良く伸びることで貼り付けを容易にする特性(成形性)が求められる。
さらに、上述したような自動車内装部品や、生活関連部品は、人の生活に密着した製品である。そのため、日焼け止め剤や虫除け剤といった、生活周りの各種製剤に曝される場合に、それらの薬剤に対して耐性を有している(耐薬品性)ことが前提となる。
しかしながら、本発明者は、従前の技術においては、成形体にフィルムを貼り付ける際の成形性および耐薬品性については、改善の余地があることを見出した。
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものである。本発明の目的は、フィルムとしたときの、成形性および耐薬品性を両立することのできる熱硬化性樹脂組成物を提供することである。
本発明の目的は、フィルムの成形性および耐薬品性を両立することのできる、熱硬化性樹脂組成物を提供することである。
本発明によれば、
(A)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル樹脂と、
(B)前記成分(A)とは異なるポリオール化合物と、
(C)ポリイソシアネート化合物と、を含み、
前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の少なくとも1つが複素多環式骨格を有する、熱硬化性樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記の熱硬化性樹脂組成物により形成されたフィルムが提供される。
また、本発明によれば、上記のフィルムを備えた物品が提供される。
本発明によれば、フィルムの成形性および耐薬品性を両立することのできる、熱硬化性樹脂組成物が提供される。
本実施形態のフィルムおよび形状物(成形体)の一例を、模式的に表した図である。 本実施形態のフィルムおよび形状物(成形体)の一例を、模式的に表した図である。 本実施形態のフィルムおよび形状物(成形体)の一例を、模式的に表した図である。 本実施形態のフィルムをアウトモールド法により物品に貼り付ける場合の工程を、模式的に表した図である。 実施例の成形性評価にて用いた成形体の形状を、模式的に表した図である。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書における「フィルム」とは、本実施形態における熱硬化性樹脂から形成される塗膜、フィルム単体および機能層、基材層、形状物(物品)等に貼り付けられたフィルム等を包含するものとする。
<熱硬化性樹脂組成物>
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、
(A)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル樹脂と、
(B)前記成分(A)とは異なるポリオール化合物と、
(C)ポリイソシアネート化合物と、
を含む。
そして、上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の少なくとも1つが複素多環式骨格を有する。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、成形性および耐薬品性を両立することのできるフィルムが得られる。このメカニズムについては、詳細は明らかではないが、以下のように説明することができる。念のため述べておくと、以下説明により本発明の範囲は限定されない。
本実施形態における熱硬化性樹脂組成物は、例えば、硬化して、形状のある物品(成形体など)に貼り付けるフィルムを形成できるものである。
本発明者らの知見によれば、熱硬化性樹脂組成物から形成されたフィルムのガラス転移温度が高いと、成形体への貼り付け時や成形体へ貼り付けた後において、フィルムに破断や剥がれが起きにくいことが明らかとなった。
本実施形態では、フィルムを形成する熱硬化性樹脂組成物に含まれる成分のいずれかに、複素多環式骨格を導入することにより、フィルムのガラス転移温度を高くすることが可能となった。
さらに複素多環式骨格の有する酸素、窒素、硫黄等と、熱硬化性樹脂組成物の他の成分との間に水素結合が形成されることにより、フィルムに粘り強さが与えられ、成形体への貼り付け時や成形体へ貼り付けた後においてより破断や剥がれが起きにくいフィルムとすることができると考えられる。
またさらに、本発明者らの知見によれば、フィルムのガラス転移温度を高くすることで、耐薬品性が高くなることが明らかとなった。
このように、フィルムとした場合のガラス転移温度を高くすることで、フィルムを物品に貼り付ける際の成形性および耐薬品性を両立することができると考えられる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されたフィルムは、加熱延伸等を行って成形体に貼り付けることができる。これの利点について、補足説明しておく。
成形体にフィルムを貼り付ける場合、一般的に接着シートを介して貼り付けることが多い。接着シートには様々な種類があるが、加熱できることにより、加熱粘着タイプの接着シート(ヒートシール)を利用することができ、接着シートの選択の幅が広がるというメリットがある。また、後述の、基材層を備える積層構造フィルムを成形体に貼り付ける場合、材質などによっては基材層が常温では伸びにくいので、加熱による軟化が可能であると、積層構造フィルムを成形体にきれいに貼り付けることができる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物においては、後述する(A)(メタ)アクリル樹脂、(B)ポリオール化合物および(C)ポリイソシアネート化合物の少なくとも一つが、複素多環式骨格を有する。すなわち、成分(A)が複素多環式骨格を有する場合、成分(B)が複素多環式骨格を有する場合、成分(C)が複素多環式骨格を有する場合がある。複素多環式骨格は、成分(A)、成分(B)および成分(C)のうち、1成分のみに含まれていてもよいし、2以上の成分に含まれていてもよい。
複素多環式骨格とは、炭素および炭素以外の原子(ヘテロ原子)で構成された複数の閉じた環を有する骨格である。
複素多環式骨格中の環としては、たとえば三員環から八員環が挙げられる。環は、好ましくは五員環および六員環であり、より好ましくは五員環である。五員環の構造としては、たとえばテトロヒドロフラン等であり、六員環の構造としては、たとえばピリジン等である。
複素多環式骨格は、二つ以上の環を有していればよいが、好ましくは二環式および三環式である。これにより、フィルムに適度な強靭性を付与することができる。
複素多環式骨格における炭素以外の原子(ヘテロ原子)としては、酸素、窒素、硫黄等が挙げられ、好ましくは酸素である。複素多環式骨格におけるヘテロ原子は、熱硬化性樹脂組成物中の他の成分(A)、成分(B)および成分(C)との間に水素結合を形成することができ、これにより、フィルムに粘り強さが付与され、成形体に貼り付けた後の破断や剥がれが起きにくくなると考えられる。
(A)(メタ)アクリル樹脂、(B)ポリオール化合物または(C)ポリイソシアネート化合物に複素多環式骨格を導入する場合、成分(A)、成分(B)または成分(C)を合成する際に、複素多環式化合物を添加することにより、複素多環式骨格と各成分との間に共有結合等の化学結合を形成させることができる。
また、複素多環式骨格が導入された上記成分の市販品を用いてもよい。
また、複素多環式化合物が成分(A)、成分(B)または成分(C)そのものであってもよい。
複素多環式骨格は、好ましくは、以下式(1)で表されるイソソルバイドに由来する骨格である。
イソソルバイドは、その化学構造上、水素結合性を有するため、熱硬化性樹脂組成物中の成分(A)、成分(B)および成分(C)の少なくとも一つがイソソルバイドに由来する骨格を含むことにより、フィルムに、より効果的に粘り強さが付与され、成形体への貼り付け時や成形体へ貼り付けた後において、破断や剥がれの発生を抑えることができる。
Figure 2023064932000001
複素多環式骨格がイソソルバイドに由来する骨格である場合において、熱硬化性樹脂組成物中の複素多環式骨格を含む構成単位の含有比率は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。また、この比率は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは23質量%以下、さらに好ましくは21質量%以下である。
熱硬化性樹脂組成物中の複素多環式骨格を含む構成単位の含有比率を上記範囲内とすることにより、フィルムに、より効果的に、粘り強さを付与することができ、成形体に貼り付けた後の、フィルムの破断や剥がれを一層抑えることができると考えられる。
複素多環式骨格がイソソルバイドに由来する骨格である場合における、熱硬化性樹脂組成物中の複素多環式骨格を含む構成単位の含有比率は、以下のように表されるものである。
以下式(1)で表されるイソソルバイドから、五員環に結合する二つのヒドロキシ基から水素原子を除いた部分に相当する分子量の含有比率を、熱硬化性樹脂組成物中の複素多環式骨格を含む構成単位の含有比率(質量%)とする。
Figure 2023064932000002
((A)(メタ)アクリル樹脂)
本実施形態における熱硬化性樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリル樹脂を含む。
(A)(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルのモノマーに由来する構造単位を含む樹脂(高分子)を意味する。すなわち、(A)(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル系ではないモノマーに由来する構造単位を一部含んでいてもよい。ただし、(メタ)アクリル構造に由来する効果を十二分に得る観点では、(A)(メタ)アクリル樹脂は、好ましくは、(A)(メタ)アクリル樹脂の全構造単位100質量%に対して、50質量%以上(より好ましくは、全構造単位の60質量%以上)が、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルのモノマーに由来する構造単位である。
別観点として、(A)(メタ)アクリル樹脂は、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエーテルからなる群より選択される少なくともいずれかの部分構造を有していてもよい。これらの化学構造は、適度に柔軟で弾力性を有しているため、フィルムの柔軟性・弾力性を高めることができる。
ちなみに、これらの部分構造は、(A)(メタ)アクリル樹脂の側鎖に存在することが好ましい。
本実施形態における(A)(メタ)アクリル樹脂は、構成単位として、好ましくは以下(i)~(iv)からなる群から選ばれる1種または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーを含む。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、一般式CH=CR-COO-R'で表されるものが好ましい。ここで、Rは水素原子またはメチル基、R'は水素原子または一価の有機基である。R'の一価の有機基としては、好ましくはアルキル基、単環または多環のシクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
なお、(メタ)アクリル系モノマーは、例えば、(i)に該当するものの中から2種以上が選択されてもよい。
(i)一般式CH=CR-COO-R'において、R'が一価の有機基であり、その有機基が、アルキル基、単環または多環のシクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基であるモノマー。
この具体例としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で、R'の炭素数が少ないアルキル基であるものは、ガラス転移温度(℃)が高くなり、R'の炭素数が多いアルキル基であるものは、ガラス転移温度(℃)が低くなる。目的とする(A)(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(℃)に応じて、R'の炭素数の異なるアルキル基のモノマーを組み合わせて用いることができる。
(A)(メタ)アクリル樹脂が、このモノマーに由来する構造単位を含む場合、その含有量は、(A)(メタ)アクリル樹脂の全構造単位100質量%に対して、好ましくは0.5~98質量%、より好ましくは0.7~95質量%、さらに好ましくは1~93質量%である。
(ii)一般式CH=CR-COO-R'において、R'の一価の有機基が、ヒドロキシ基やアミノ基等の極性基で置換されたモノマー。
この具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(A)(メタ)アクリル樹脂が、このモノマーに由来する構造単位を含む場合、その含有量は、(A)(メタ)アクリル樹脂の全構造単位100質量%に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%である。
(iii)一般式CH=CR-COO-R'において、R'が、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエーテルからなる群より選択される少なくともいずれかの部分構造を含むモノマー。
この具体例としては、株式会社ダイセルの商品名「プラクセルF」シリーズや、エチレンオキシド付加モル数3~20のメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、等が挙げられる。
上記(iii)のモノマーに由来する構造単位を含む樹脂は、フィルムの柔軟性を向上させる点で、特に好ましいと考えられる。
(A)(メタ)アクリル樹脂が、このモノマーに由来する構造単位を含む場合、その含有量は、(A)(メタ)アクリル樹脂の全構造単位100質量%に対して、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは5~50質量%である。
(iv)一般式CH=CR-COO-R'において、R'が水素原子であるモノマー。
この具体例としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
(A)(メタ)アクリル樹脂が、このモノマーに由来する構造単位を含む場合、その含有量は、(A)(メタ)アクリル樹脂の全構造単位100質量%に対して、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%である。
本実施形態における(A)(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸にも由来せず、(メタ)アクリル酸エステルのモノマーにも由来しない構造単位として、具体的には、(メタ)アクリルアミドモノマーに由来する構造単位を含んでもよい。(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩などが挙げられる。
(A)(メタ)アクリル樹脂が、(メタ)アクリルアミドモノマーに由来する構造単位を含む場合、その含有量は、(A)(メタ)アクリル樹脂の全構造単位100質量%に対して、例えば0.1~50質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1~10質量%である。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物における(A)(メタ)アクリル樹脂は、ヒドロキシ基を有する。(A)(メタ)アクリル樹脂のヒドロキシ基と、後述の(C)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とが反応し、架橋構造を形成することができる。
(A)(メタ)アクリル樹脂に含まれるヒドロキシ基の定量化の方法として、水酸基価を用いることが知られている。本実施形態において、(A)(メタ)アクリル樹脂の水酸基価は、20mgKOH/g以上であることが好ましく、30~150mgKOH/gであることがより好ましく、30~120mgKOH/gであることがさらに好ましい。
この数値範囲とすることで、後述の(C)ポリイソシアネート化合物と、(A)(メタ)アクリル樹脂とが適度に反応し、架橋構造が適切に制御される。そのため、フィルムの柔軟性・弾力性を維持しつつ、フィルムのガラス転移温度を高くすることができる。
ちなみに、水酸基価とは、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数のことである。具体的には、JIS K 0070「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」の、「7.1 中和滴定法」に規定された方法に準じて測定および算出することができる。
(A)(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000~50000であることが好ましく、7000~40000であることがより好ましく、10000~30000であることがさらに好ましく、15000~25000であることが特に好ましい。
この下限値以上とすることで、フィルムの成形体への密着性をより良好にできる。また、この上限値以下とすることで、フィルム中に気泡が発生することなどが抑制され、より良好なフィルムが得られる。
(A)(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、重合反応時間、反応温度、重合開始剤の使用量などの条件により調節することができる。
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算で測定することができる。
(A)(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(℃)は、1~100℃であることが好ましく、30~100℃であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、フィルムのガラス転移温度を調整しやすくなる。また、上記範囲とすることで、(A)(メタ)アクリル樹脂と、(C)ポリイソシアネート化合物等との相溶性が良好となり、また熱硬化性樹脂組成物の混合時または調製時の取り扱い性を良好とすることができる。
(A)(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(℃)は、使用した単量体(モノマー)の配合比より、以下のフォックス(Fox)の式を用いて計算を行って算出することができる。
1/Tg=(W/Tg)+(W/Tg)+(W/Tg)+・・・+(W/Tg
〔式中、Tgは、樹脂のガラス転移温度(K)、W、W、W・・・Wは、モノマーそれぞれの質量分率、Tg、Tg、Tg・・・Tgは、各モノマーそれぞれの質量分率に対応するモノマーからなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す。〕
なお、特殊モノマー、多官能モノマーなどのようにガラス転移温度が不明のモノマーについては、ガラス転移温度が判明しているモノマーのみを用いてガラス転移温度が求められる。
(A)(メタ)アクリル樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
上記範囲とすることにより、フィルムとした時のガラス転移温度を適切な範囲とし、フィルムの成形性および耐薬品性を一層良好なものとすることができる。
また、(A)(メタ)アクリル樹脂が複素多環式骨格を有する場合、(A)(メタ)アクリル樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、また好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
上記範囲とすることにより、フィルムに適度に粘り強さが付与され、成形体に貼り付けた後の破断や剥がれが一層起きにくくなると考えられる。
(A)(メタ)アクリル樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜適用可能である。例えば、重合反応により製造することが好ましく、ラジカル重合により製造することがより好ましい。また、重合は、溶液重合、懸濁重合、および乳化重合などの公知の方法のいずれであってもよい。これらのうち、重合の精密な制御等の観点から、溶液重合が好ましい。
ラジカル重合の重合開始剤としては、公知のものを用いることができる。たとえば、1,1-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、および2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクタノエート、ジイソブチルパーオキサイド、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシピバレート、デカノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、およびt-ブチルパーオキシベンゾエートなどの過酸化物系開始剤、過酸化水素と鉄(II)塩、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなど、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、重合するモノマーの混合液全体を100質量部とした場合に、0.001~10質量部とすることが好ましい。
また、重合反応に際しては、適宜、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤、分子量調整剤などを用いてもよい。さらに、重合反応は、1段階で行ってもよいし、2段階以上で行ってもよい。重合反応の温度は特に限定されないが、重合開始剤の10時間半減期温度を考慮して、適宜調整する。典型的には50~200℃、好ましくは70~150℃の範囲内である。
((B)ポリオール化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、(B)ポリオール化合物、すなわち、1分子中にヒドロキシ基を2以上有する化合物を含む。ポリオール化合物のヒドロキシ基は、後述の(C)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応することができる。そして、フィルムを硬化させることができる。
(B)ポリオール化合物が1分子中に有するヒドロキシ基の個数は、通常2以上、好ましくは2~6、より好ましくは2~4である。
なお、前述した(A)(メタ)アクリル樹脂は、ヒドロキシ基を含むため、ポリオールに該当する。しかし、本実施形態における(B)ポリオール化合物は、前述した(A)(メタ)アクリル樹脂を除いたものとする。
(B)ポリオール化合物は、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールからなる群より選択される少なくともいずれかのポリオールを含むことが好ましい。これらの化学構造は、適度に柔軟で、かつ弾力性を有している。このため、フィルムの柔軟性・弾力性をより高めることができる。よって、外力の吸収の点で望ましい。
ポリカプロラクトンポリオールは、一分子中に、カプロラクトンの開環構造および2以上のヒドロキシ基を有する化合物であれば特に制限なく使用可能であるが、具体的には、以下の一般式(P-1)~(P-3)のいずれかで表されるポリオールが挙げられる。
Figure 2023064932000003
一般式(P-1)において、
Rは、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、例えば、-CH-や-C-などの直鎖アルキレン基、-CH-C(CH-CH-などの分岐アルキレン基、-C-O-C-などのエーテル含有基、などが挙げられる。
Xは、それぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキレン基である。このアルキレン基の炭素数は、好ましくは3~7、より好ましくは4~6である。
mおよびnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。mおよびnは、それぞれ、2~20の整数であることが好ましい。また、mとnの和が4~35であることが好ましい。
一般式(P-2)において、
Rは、3価の有機基を表す。3価の有機基としては、例えば、直鎖または分岐アルカンから水素原子を3つ取り除いた構造、あるいは、イソシアヌル骨格を有するトリアルコールから水素原子を3つ取り除いた構造などが挙げられる。
Xは、それぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキレン基である。このアルキレン基の炭素数は、好ましくは3~7、より好ましくは4~6である。
l、mおよびnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。l、mおよびnは、それぞれ、2~20の整数であることが好ましい。また、l、mおよびnの和が3~40であることが好ましい。
一般式(P-3)において、
Rは、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、例えば、直鎖または分岐アルカンから水素原子を4つ取り除いた構造などが挙げられる。
Xは、それぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキレン基である。このアルキレン基の炭素数は、好ましくは3~7、より好ましくは4~6である。
k、l、mおよびnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k、l、mおよびnは、それぞれ、2~20の整数であることが好ましい。また、k、l、mおよびnの和が4~50であることが好ましい。
ポリカプロラクトンポリオールの市販品としては、例えば、株式会社ダイセルの、プラクセル200シリーズ、プラクセル300シリーズ、プラクセル400シリーズなどの商品名のものが利用可能である。
ポリカーボネートポリオールは、一分子中に、-O-(C=O)-O-で表されるカボネート基および2以上のヒドロキシ基を有する化合物であれば、特に制限なく使用可能である。
ポリカーボネートポリオールは、1種以上のポリオール原料(多価アルコール)と、炭酸エステルやホスゲンとを反応させることにより得ることができる。
ポリオール原料としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族ポリオール、脂環構造を有するポリオール、芳香族ポリオール等が挙げられる。本実施形態においては、フィルムの柔軟性の観点から、脂環構造を有しない脂肪族ポリオールが好ましい。
炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル、ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステルが挙げられる。中でも、入手や製造のしやすさから、脂肪族炭酸エステルが好ましく、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
ポリカーボネートポリオールの中でも、ポリカーボネートジオールを含むことが特に好ましい。これにより、フィルムの柔軟性・弾力性をより高くすることにより、成膜時のクラックの発生を特に抑制できる。
ポリエステルポリオールは、一分子中に、エステル基(-COO-または-OCO-)および2以上のヒドロキシ基を有する化合物であれば特に制限なく使用可能である。
ポリエステルポリオールは、1種以上のポリオール原料(多価アルコール)と、ポリカルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性化合物との反応により得ることができる。
ポリオール原料は特に制限されず、上記のポリカーボネートポリオールの原料と同様のポリオール原料を挙げることができる。
ポリカルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性化合物についても特に制限されず、脂肪族ジカルボン酸化合物、芳香族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物等の多価カルボン酸、これらのポリカルボン酸の酸無水物、ハライド、低級エステル化合物等を挙げることができる。
ポリエーテルポリオールは、一分子中に、エーテル結合(-O-)および2以上のヒドロキシ基を有する化合物であれば特に制限なく使用可能である。
具体的な化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体等が挙げられる。
なお、本実施形態において、ポリオールは、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールのうち、複数に該当する化合物であってもよい。例えば、ポリオールは、エーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルポリエステルポリオール等であってもよい。
(B)ポリオール化合物が複素多環式骨格を有する場合として、(B)ポリオール化合物が上述したイソソルバイドそのものである場合が挙げられる。イソソルバイドは、二つのヒドロキシ基を有するため、ポリオールに分類される。
また、上記以外に(B)ポリオール化合物が複素多環式骨格を有する場合として、ポリカーボネートジオールにイソソルバイドが結合した化合物の市販品を用いることができる。そのような化合物の市販品としては、三菱ケミカル株式会社製のBENEBiOL HS0840B(商品名)が挙げられる。
さらに、イソソルバイドのヒドロキシ基がアルキレングリコールで変性された化合物、イソソルバイドのヒドロキシ基がε-カプロラクトンで変性された化合物、イソソルバイドのヒドロキシ基がラクチドで変性された化合物、イソソルバイドのヒドロキシ基が多官能イソシアネートで変性された化合物、イソソルバイド骨格を有するポリエステルポリオール(具体的には、特開2013-142128号公報に記載されているもの)、なども(B)ポリオール化合物が複素多環式骨格を有する場合として挙げることができる。
(B)ポリオール化合物の分子量は、例えばカタログ値において、好ましくは50~3000、より好ましくは100~2000である。適度な分子量とすることで、フィルムの柔軟性・弾力性を一層向上させることができる。
(B)ポリオール化合物の水酸基価は、例えばカタログ値において、好ましくは50~900mgKOH/g、より好ましくは55~800mgKOH/gである。適度な水酸基の量とすることで、後述の(C)イソシアネート化合物との反応による架橋構造が適切に制御され、フィルムの伸びをより良好とし、成形性を一層高めることが期待できる。
(B)ポリオール化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、通常10~60質量%であり、好ましくは20~50質量%であり、より好ましくは25~40質量%である。また、(B)ポリオール化合物の量は、(A)(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して通常30~150質量部、好ましくは40~140質量部、より好ましくは50~120質量部である。この数値範囲とすることで、(B)ポリオール化合物に由来する性能を十分得ることができるとともに、他成分とのバランスを取ることもできる。
また、(B)ポリオール化合物が複素多環式骨格を有する場合、(B)ポリオール化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
上記範囲とすることにより、フィルムに適度に粘り強さが付与され、成形体に貼り付けた後の破断や剥がれが一層起きにくくなると考えられる。
(B)ポリオール化合物が複素多環式骨格を有する場合、複素多環式骨格を有する(B)ポリオール化合物以外の(B)ポリオール化合物をさらに含んでもよい。
また、上記複素多環式骨格を有する(B)ポリオール化合物以外の(B)ポリオール化合物の分子量は、好ましくは5000以下であり、より好ましくは3000以下であり、さらに好ましくは2000以下である。この分子量の下限は特にないが、下限は例えば50、好ましくは100、より好ましくは200である。
上記範囲の分子量の(B)ポリオール化合物をさらに含むことで、フィルムの柔軟性を一層高めることができる。
熱硬化性樹脂組成物が、複素多環式骨格を有する(B)ポリオール化合物以外の(B)ポリオール化合物を含む場合、複素多環式骨格を有する(B)ポリオール化合物以外の(B)ポリオール化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
また、複素多環式骨格を有する(B)ポリオール化合物以外の(B)ポリオール化合物の含有量は、複素多環式骨格を有する(B)ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは90質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下である。
上記範囲内とすることにより、フィルムの柔軟性を適度に調整し、例えば成形性や形状維持性を一層良好なものとできる。
((C)ポリイソシアネート化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物を含む。
(C)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は、前述の(A)(メタ)アクリル樹脂および/または(B)ポリオール化合物の有するヒドロキシ基と反応し、架橋構造を形成することができる。
(C)ポリイソシアネート化合物は、多官能であること、すなわち、1分子中に2以上のイソシアネート基(脱離性基で保護されたイソシアネート基を含む)を有する化合物である。(C)ポリイソシアネート化合物の官能基数は、好ましくは1分子あたり2~6個、より好ましくは1分子あたり2~4個である。
(C)ポリイソシアネート化合物としては、リジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-(又は2,6)-ジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及び1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の環状脂肪族ジイソシアネート、並びに、リジントリイソシアネート等の3官能以上のイソシアネートが挙げられる。イソシアネート化合物の多量体であるイソシアヌレート及びビウレット型付加物、さらにはイソシアネート化合物を多価アルコール又は低分子量ポリエステル樹脂に付加したものを(C)ポリイソシアネート化合物として用いることもできる。
なお、ポリイソシアネート化合物としては、ビウレット型、イソシアヌレート型、アダクト型などが知られている。本実施形態においては、いずれも用いることができるが、中でも、イソシアヌレート型のポリイソシアネート化合物、すなわち、イソシアヌル酸の環状骨格を有するポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
(C)ポリイソシアネート化合物は、いわゆるブロックイソシアネートであってもよい。換言すると、(C)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部又は全部は、保護基によりブロックされた、ブロックイソシアネート基の形態であってもよい。例えば、アルコール系、フェノール系、ラクタム系、オキシム系、及び活性メチレン系などの活性水素化合物によってイソシアネート基がブロックされてブロックイソシアネート基が形成される。特に、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物が1液系である場合は、保存性(経時安定性)の観点から、ブロックイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。
(C)ポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、旭化成株式会社製のデュラネート(商品名)シリーズを用いることができる。
(C)ポリイソシアネート化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、通常5~60質量%、好ましくは10~50質量%である。また、(C)ポリイソシアネート化合物の量は、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、通常20~300質量部、好ましくは30~200質量部である。
(C)ポリイソシアネート化合物の含有量を上記下限値以上とすることで、アクリル樹脂と(C)ポリイソシアネート化合物との間の架橋を密にし、強いフィルムとすることができ、耐薬品性を一層高めることができる。また(C)ポリイソシアネート化合物の含有量を上記上限値以下とすることで、未反応のイソシアネート基がフィルムとなった後に空気中の水分と反応することが抑えられ、フィルムの高品質化につながる。
また、(C)ポリイソシアネート化合物が複素多環式骨格を有する場合、(C)ポリイソシアネート化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
上記範囲とすることにより、フィルムに適度に粘り強さが付与され、成形体への貼り付け時や成形体へ貼り付けた後において、破断や剥がれが一層起きにくくなると考えられる。
別の観点として、(A)(メタ)アクリル樹脂や(B)ポリオール化合物が有するヒドロキシ基と、(C)ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基(ブロックイソシアネート基を含む)とのモル比を適切な値とすることが好ましい。このモル比は、「当量比」とも呼ばれる。具体的には、(A)(メタ)アクリル樹脂や(B)ポリオール化合物が有するヒドロキシ基に対する、(C)ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、0.5~1.5であることが好ましく、0.6~1.1であることがより好ましい。モル比を上記範囲とすることで、各成分間の架橋構造を制御し、フィルムの成形性、形状維持性を一層向上させ、かつ、耐薬品性を一層向上させることができる。
(レベリング剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じてレベリング剤を含んでもよい。
レベリング剤としては、公知のものを適宜用いることができる。例えば、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物等のシリコン系樹脂が挙げられる。また、アセチレングリコール系の界面活性剤なども挙げられる。
レベリング剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物がレベリング剤を含む場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して通常0.05~15質量%、好ましくは0.1~10質量%である。
(ウレタン化触媒)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じてウレタン化触媒を含んでもよい。
ウレタン化触媒としては、公知のものを適宜用いることができる。例えば、酢酸第一スズ、酪酸第一スズ、ラウリン酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、オクタン酸ビスマス、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸カドミウム、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジ-2-エチルヘキサン酸ジブチルスズ、ジネオデカン酸ジメチルスズ等を含む有機金属触媒が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物がウレタン化触媒を含む場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して通常0.001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%である。
(その他成分)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分を更に含んでもよい。例えば、ウレタン化触媒以外の硬化促進剤(硬化触媒等)、紫外線硬化樹脂、光開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、分散剤、酸化防止剤などを含んでもよい。
(溶剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、典型的には、各成分を溶剤に溶解または分散させた状態で用いる。
溶剤は、一態様として有機溶剤である。有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
溶剤の使用量は、特に限定されないが、固形分(不揮発成分)の濃度が、例えば5~90質量%、好ましくは10~85質量%となるような量で用いることができる。
(各成分の比率など)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、各成分の量比を適切に調整することで、フィルムとした時の物性(柔軟性等)を良好なものとし、好適なフィルムを得ることができる。
(熱硬化性樹脂組成物の特性)
以下、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の特性について、詳細に説明する。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を用いてフィルムを形成した場合の、フィルムのガラス転移温度の上限値は、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。また、フィルムのガラス転移温度の下限値は、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に好ましくは75℃以上である。
フィルムのガラス転移温度が上記範囲内であることにより、フィルムが伸びやすくなり、成形品に貼り付ける時の成形性や、成形体への貼り付け時や成形体へ貼り付けた後においての形状維持性が一層良好となる。
フィルムのガラス転移温度は、以下のように測定する。
まず、上記熱硬化性樹脂組成物を、ポリプロピレン基板上にアプリケーターを用いて塗布厚10mil条件にて塗装し、1分間静置する。静置後の塗装された基板を80℃で5日間硬化させる。その後25℃、相対湿度50%の条件にて1週間静置し、ポリプロピレン基板から硬化膜を剥がすことにより、膜厚60μmのフィルムを得る。得られたフィルムを、幅5mm、長さ50mmのサイズに切り分けて試験片とする。
得られた試験片を用いて、周波数1.0Hz、温度-40~160℃の範囲で動的粘弾性測定した時の損失正接の最大値tanδmaxをフィルムのガラス転移温度(℃)とする。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を用いてフィルムを形成した場合の、フィルムの架橋間分子量の上限値は、好ましくは15000以下、より好ましくは13000以下、さらに好ましくは11000以下である。また、フィルムの架橋間分子量の下限値は、好ましくは500以上、より好ましくは550以上、さらに好ましくは600以上、特に好ましくは1000以上、とりわけ好ましくは1500以上である。
フィルムの架橋間分子量が上記下限値以上であることにより、(A)(メタ)アクリル樹脂や(B)ポリオール化合物のヒドロキシ基と、(C)イソシアネート化合物のイソシアネート基の間に形成される架橋が適度に密になる。したがって、薬剤が侵入する隙が減ることにより、フィルムに浸透しにくくなり、フィルムの耐薬品性を一層高められる。
また、フィルムの架橋間分子量が上記上限値以下であることにより、架橋が適度に疎になる。これにより、フィルムに適度な柔軟性が付与され、フィルムを成形品に貼り付ける場合の成形性や、成形体への貼り付け時や成形体へ貼り付けた後においての形状維持性を一層高められる。
架橋間分子量が上記範囲内であることによるメリットについて補足する。
熱硬化性樹脂組成物における(A)(メタ)アクリル樹脂や(B)ポリオール化合物と、(C)イソシアネート化合物との間に形成される架橋の度合いは、フィルムとした場合の物性に影響する。上述のように、架橋が密になると、フィルムが硬くなるため伸びにくく、物品に貼り付ける際の成形性が悪くなるが、耐薬品性は向上する。反対に、架橋が疎になるとフィルムが伸びやすくなり、成形性が良好となる一方、耐薬品性は悪くなる、というトレードオフの関係が生じる。
本実施形態においては、熱硬化性樹脂組成物全体の架橋度合いを、ある程度疎の状態とし、フィルムの成形性を保ちつつ、複素多環式骨格の導入によりフィルムのガラス転移温度を高めることで、架橋が疎であることによる耐薬品性の低下を補い、成形性および耐薬品性を両立することができると考えられる。
フィルムの架橋間分子量は、以下のように測定・算出する。
上述したガラス転移温度測定に用いた試験片と同一の試験片を用いて、周波数1.0Hz、温度-40~160℃の範囲で貯蔵弾性率(E')を測定する。貯蔵弾性率(E')の極小値E'minと、E'minにおける絶対温度Tおよび気体定数R、フィルムの密度ρから、以下式にて架橋間分子量を算出する。
架橋間分子量=3ρRT/E'min
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を用いてフィルムを形成した場合の、フィルムの110℃における破断伸び率の下限値は、好ましくは100%以上であり、より好ましくは105%以上であり、さらに好ましくは110%以上であり、さらにより好ましくは120%以上である。
フィルムの110℃における破断伸び率の上限値は、特に制限されないが、たとえば350%以下である。
フィルムの110℃における破断伸び率が上記範囲内であることにより、フィルムの加熱加工時の成形性が良好となる。また、加熱しながらフィルムを成形体に貼り付けた後、冷える過程において、フィルムの剥がれや破断を抑制することができ、貼り付け直後のフィルムの形状を維持することができる(形状維持性)。
本実施形態の110℃における破断伸び率は、以下のように測定する。
上述したガラス転移温度測定に用いた試験片と同一の試験片を、動的粘弾性測定装置用いて、温度110℃、チャック間距離5mm、引張速度0.083mm/s、引張モードの条件にて、引っ張りを行い、破断する時の試験片の伸長率(%)を破断伸び率(%)とする。
<フィルム、フィルムを備えた物品>
本実施形態のフィルムは、例えば、上記の各成分を溶媒に溶解または分散させた熱硬化性樹脂組成物を、離型フィルムや接着シートに塗工することで得ることができる。
塗工方法は特に限定されず、例えばエアレススプレー法、エアスプレー法、静電塗装法、ロールコーター法、フローコーター法、スピンコート法、浸漬法などが挙げられる。
塗工後、例えば20~160℃で10分~10日間、好ましくは60~120℃で20分~7日間硬化し、そして常温で放冷することで、最終的なフィルムを得ることができる。なお、ここでの硬化の温度や時間は、離型フィルムや接着シートの耐熱性などを踏まえて適宜調整してよい。
また、本実施形態のフィルムは、フィルムの少なくとも一方の面に機能層が積層されているフィルムであってもよい。
フィルムの構造について、図面を用いて説明する。
図1~3は、本実施形態のフィルムおよび形状物(成形体)の一例を、模式的に表した図である。
図1は、形状物4の上に、フィルム1および機能層2がこの順で設けられていることを示す。すなわち機能層2は物品の最外層となる。
図2は、形状物4の上に、機能層3およびフィルム1がこの順で設けられていることを示す。すなわち、機能層3は形状物4とフィルム1に挟まれた層となる。
図3は、形状物4の上に、第1の機能層3、フィルム1および第2の機能層2がこの順で設けられていることを示す。
これら図において、物品の最外層となる機能層としては、反射防止層、防汚層、防曇層、帯電防止層、抗菌・抗ウイルス層、加飾層などが挙げられる。
これら図において、形状物とフィルムに挟まれた機能層としては、接着層、加飾層などが挙げられる。
また、本実施形態のフィルムは、機能層が積層されていないフィルムであってもよい。
また、本実施形態のフィルムは、機能性成分を含むことで、フィルム自体に機能性が付与されたものであってもよい。
機能性成分は、特に限定されず、物品の表面に貼り付けて用いられるフィルムに含有される公知の成分を適用できる。
さらに、本実施形態においては、合成樹脂製のフィルムに本実施形態のフィルムを形成後、適当な転写プロセスにより、フィルム状に形成されたフィルムを物品に転写後、合成樹脂製のフィルムを剥がして、フィルムを有する物品を得てもよい。
本実施形態のフィルムは、上述のフィルムと、合成樹脂製のフィルムなどの基材層とを備える積層構造フィルムであってもよい。このような積層構造フィルムを、合成樹脂製のフィルムごと物品に貼りつけることもできる。
基材層とは、上述した機能層とは異なるものである。
積層構造フィルムは、上述の熱硬化性樹脂組成物(溶剤を含むもの)を、適当な基材層の表面に塗布し、溶剤を乾燥させ、熱硬化させるなどして得ることができる。
基材層の材質は、特に限定されず、加工性(伸びやすさ)や耐久性などの観点から適宜選択することができる。好ましくは、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロース、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネートおよび熱可塑性ポリイミドからなる群より選ばれる少なくともいずれかである。特に、熱可塑性のポリウレタンが、加工性(伸びやすさ)の観点から好ましい。
基材層は、典型的には実質透明であるが、意匠性などの観点から、着色されていてもよい。
基材層の厚みは、好ましくは30~250μm、より好ましくは50~200μmである。厚みを適切に調整することで、成形体に貼り付ける際の成形性や形状維持性を一層向上させることができると考えられる。
本実施形態のフィルムが貼り付けられる物品(成形体)は、特に限定されないが、例えば、以下のような物品が挙げられる。
・携帯電話、スマートフォン、パソコン、パソコン周辺機器(キーボード、プリンタ、外付けディスク等)、腕時計、オーディオ機器、各種OA機器等の電気・電子機器。
・冷蔵庫、掃除機、電子レンジ等の家電製品。
・階段、床、机、椅子、タンス、その他の家具等の木工製品。
・自動車やオートバイ等の車両またはその部品:より具体的には、車両のボディ、内装品(メーターパネル、ダッシュボード、ハンドル等)、バンパー、スポイラー、ドアノブ、ヘッドライト、テールライト、アルミホイール、オートバイのガソリンタンク等。
なお、上記物品には、塗工前に、脱脂や表面処理等を施してもよい。さらに、密着性向上等のために下塗り等を行ってもよい。
フィルムは、最終的な膜厚が、10~200μmであることが好ましく、30~150μmであることがより好ましい。フィルムの膜厚を適切に調整することで、良好な外観と、フィルムとしての柔軟性・弾力性をより高度に両立することが期待できる。
<物品へのフィルムの貼り付け方法>
本実施形態のフィルムを物品(形状物)に貼り付ける方法は、適宜公知の方法を用いることができるが、具体的には、アウトモールド法、インモールド法等が挙げられる。
アウトモールド法は、真空圧空成形機等を用いて、成形済の形状物にフィルムを貼り付ける方法である。以下、図面を用いて具体的に説明する。
真空圧空成形機とは、典型的には、図4のI.に表されるような、密閉時に内部を任意の圧力に調整できる一対のボックス(上部ボックス10Aおよび下部ボックス10B)と、ボックス内を高温とすることができる加熱手段(ヒーター30)と、可動式の台座(台座90)とを備えた装置である。
この装置を用いて、例えば、以下手順のようにしてフィルムを物品(形状物)に貼り付けることができる。
(1)図4のI.に表されるように、物品(形状物)70を台座90の上に、フィルム110を下部ボックス10Bの上部の開口部にセットする。図4のI.においては、物品(形状物)70は、ぐらついたり移動したりしないよう、型50を介して台座90の上にセットされている。
(2)上部ボックス10Aと下部ボックス10Bをはめ合わせて、装置内を密閉状態とする。そして、ヒーター30を用いて、フィルム110を加熱し、軟化させる。また、物品(形状物)70がセットされている下部ボックス10Bの内部を減圧する(図4のII.)。
(3)台座90を下から上に突き上げることにより、物品(形状物)70を、軟化したフィルム110に接触させる。この際、下からの突き上げとともに、上部ボックス10A内を高圧とすることが好ましい。これにより、突き上げによる力に加え、フィルム110の側と物品(形状物)70側との圧力差により、フィルム110が基材に十分に密着しやすくなる(図4のIII.)。
(4)冷却後、フィルム110が貼り付けられた物品(形状物)70を取り出す。必要に応じて余分なフィルム110をトリミングする(図4のIV.)。
アウトモールド法とは異なり、インモールド法では、物品(形状物)の成形と同時にフィルムを貼り付ける。
インモールド法では、射出成形金型に、予めフィルムを挟み込む。そこへ物品の材料となる樹脂等を射出成形することにより、物品の成形と、物品へのフィルムの貼り付けを同時に完了する。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
<(A)(メタ)アクリル樹脂>
以下合成例1~4に従って、(A)(メタ)アクリル樹脂を合成した。
(A)(メタ)アクリル樹脂の合成に用いた材料は以下である。メーカー名の記載のないものは、市販品を適宜用いた。
・MAA:メタクリル酸
・MMA:メタクリル酸メチル
・BA:アクリル酸-n-ブチル
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
・IB-XA:アクリル酸イソボルニル
・プラクセルFA5:株式会社ダイセル製、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(カプロラクトン5モル付加物、分子量689、水酸基価74~84mgKOH/g)
・プラクセルFA2D:株式会社ダイセル製、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(カプロラクトン2モル付加物、分子量344、水酸基価157~167mgKOH/g)
・カレンズMOI:昭和電工株式会社製、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
・イソソルバイド:POLYSORB PA:ROQUETTE社製のイソソルバイド(分子量146,水酸基価768mgKOH/g、固形分100質量%)
・2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABN-E):株式会社日本ファインケム製、製品名ABN-E
<合成例1> ヒドロキシ基を含む(A)(メタ)アクリル樹脂の合成
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、メチルエチルケトン90質量部を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温した。
別の容器に、メタクリル酸メチル(MMA)64質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)10質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(プラクセルFA-5)25質量部、メタクリル酸(MAA)1質量部、メチルエチルケトン10質量部、及び2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABN-E)2質量部を加えた混合溶液(モノマー溶液)を調製した。
このモノマー溶液を2時間かけて上記フラスコに滴下し、攪拌しながら80℃で6時間反応させ、(A)(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂溶液(固形分50質量%)を得た。なお、得られた(A)(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は19,000であった。
<合成例2> ヒドロキシ基を含む(A)(メタ)アクリル樹脂の合成
合成例1と同様にして、表1に記載の配合比(数値は、質量部である)で、(A)(メタ)アクリル樹脂を得た。
<合成例3> ヒドロキシ基を含む(A)(メタ)アクリル樹脂の合成
合成例1と同様にして、表1に記載の配合比(数値は、質量部である)で、(A)(メタ)アクリル樹脂を得た。
<合成例4> 複素多環式骨格とヒドロキシ基を含む(A)(メタ)アクリル樹脂の合成
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えたフラスコに、イソソルバイド50質量部とメチルエチルケトン50質量部を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温した。
別の容器に、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI)50質量部、ウレタン化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.06質量部、重合禁止剤(ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ))0.2質量部、及びメチルエチルケトン50質量部を加えた混合溶液を調整した。
この混合溶液を2時間かけて上記フラスコに滴下し、攪拌しながら80℃で6時間反応を行い、理論上、イソソルバイドの2つの水酸基のうち一つがイソシアネート化合物と反応したもの(以下、モノマーAという)を得た。
次に、攪拌機、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコにメチルエチルケトン56質量部を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温した。
別の容器に、MMAを65質量部、モノマーAを68質量部、MAAを1質量部、メチルエチルケトン10質量部、及びABN-Eを2質量部加えた混合溶液(モノマー溶液)を調製した。
このモノマー溶液を2時間かけて上記フラスコに滴下し、攪拌しながら80℃で6時間重合反応させ、複素多環式骨格とヒドロキシ基を含む(A)(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂溶液(固形分50質量%)を得た。
合成例1~4で得られた各(A)(メタ)アクリル樹脂の水酸基価、重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度は、以下の方法により求めた。結果を後掲の表1に示す。
<水酸基価>
JIS K 0070「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」の、「7.1 中和滴定法」に規定された方法に準じて測定および算出した。
なお、水酸基価の算出に際しては、酸価の値も必要である。酸価の値についても、同JIS規格の「3.1 中和滴定法」に規定された方法に準じて測定および算出した。
<重量平均分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、算出した。用いた装置、条件等は以下の通りである。
使用機器:HLC8220GPC(株式会社東ソー製)
使用カラム:TSKgel SuperHZM-M、TSKgel GMHXL-H、TSKgel G2500HXL、TSKgel G5000HXL(株式会社東ソー製)
カラム温度:40℃
標準物質:TSKgel 標準ポリスチレンA1000、A2500、A5000、F1、F2、F4、F10(株式会社東ソー製)
検出器:RI(示差屈折)検出器
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
<(A)(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度>
(A)(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度は、使用した単量体(モノマー)の配合比により、以下のフォックス(Fox)の式に基づいて計算を行って算出した。
1/Tg=(W/Tg)+(W/Tg)+(W/Tg)+・・・+(W/Tg
〔式中、Tgは、求める(A)(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(K)、W、W、W・・・Wは、モノマーそれぞれの質量分率、Tg、Tg、Tg・・・Tgは、各モノマーそれぞれの質量分率に対応するモノマーからなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す。〕
なお、表1に記載されているイソソルバイドについては、ガラス転移温度が不明であるため考慮せず、ガラス転移温度が判明しているモノマーのみを用いてガラス転移温度を求めた。
Figure 2023064932000004
[(B)ポリオール化合物]
(B)ポリオール化合物として、以下を用いた。
(複素多環式骨格を有する(B)ポリオール化合物)
・イソソルバイド:POLYSORB PA:ROQUETTE社製のイソソルバイド(分子量146,水酸基価768mgKOH/g、固形分100質量%)
・BENEBiOL HS0840B:三菱ケミカル株式会社製、イソソルバイド系ポリカーボネートジオール(分子量800、水酸基価140mgKOH/g、固形分100質量%)
(複素多環式骨格を有しない(B)ポリオール化合物)
・プラクセル220N:株式会社ダイセル製、ポリカプロラクトンジオール(分子量2000、水酸基価53~59mgKOH/g、固形分100質量%)
・プラクセル410D:株式会社ダイセル製(分子量1000、水酸基価224mgKOH/g、固形分100質量%)
[(C)ポリイソシアネート化合物]
以下合成例5に従って、複素多環式骨格を有する(C)ポリイソシアネート化合物を合成した。
<合成例5> 複素多環式骨格を有する(C)ポリイソシアネート化合物の合成
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、イソソルバイド25重量部とメチルエチルケトン25質量部を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温した。
別の容器に、イソホロンジイソシアネート75重量部、及びウレタン化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.06質量部を加えた混合溶液を調整した。この混合溶液を2時間かけて上記フラスコに滴下し、攪拌しながら80℃で6時間反応を行った。
反応終了後、メチルエチルケトン18重量部を加えて撹拌し、複素多環式骨格を含む硬化剤(固形分70質量%)を得た。
また、表2に記載されている、複素多環式骨格を有しない(C)ポリイソシアネート化合物として、以下を用いた。
・TKA-100:旭化成株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ(イソシアネート基含有率23質量%、固形分100質量%)、製品名デュラネートTKA-100
・D-127N:三井化学株式会社製、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレートタイプ(イソシアネート基含有率13.5質量%、固形分75質量%)、製品名タケネートD-127N
・Z4470BA:住化コベストロンウレタン株式会社製、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ(イソシアネート基含有率11.9質量%、固形分70質量%)、製品名デスモジュールZ4470BA
<実施例、比較例>
表2に示す配合比で各種材料を混合し、これにレベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン溶液、BYK-302)と、ウレタン化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)をそれぞれ適切な量を添加し、更に溶剤(メチルエチルケトン)を加えることによって固形分濃度を調整した。このようにして、各熱硬化性樹脂組成物(固形分50質量%)を作製した。
表2において、各材料は、溶剤を含む場合は固形分換算の量(単位は質量部)を表す。
表2においては、熱硬化性樹脂組成物中の複素多環式骨格を含む構成単位の含有量(質量%)を示す。
複素多環式骨格を含む構成単位の含有量(質量%)は、上述の式(1)で表されるイソソルバイドから、五員環に結合する二つのヒドロキシ基から水素原子を除いた部分に相当する分子量の含有比率として算出したものである。
ただし、BENEBiOL HS0840Bを用いた場合の含有量は、上述の含有比率として算出される値ではなく、BENEBiOL HS0840Bの炭素ベースで算出されたバイオ化度(ASTM D6866規格)に基づいて算出された参考値である。
<試験用フィルムの作製>
実施例、比較例で得られた各熱硬化性樹脂組成物を、ポリプロピレン基板(TP技研株式会社製、縦200mm×横200mm×厚み2mm、JIS-K6921に準じて作成されたもの)の表面に、アプリケーターを用いて塗布厚10mil条件にて塗装し、室温で1分間静置した。その後、温風乾燥機により、80℃で5日間硬化させた。その後、25℃、相対湿度50%の雰囲気下で1週間静置し、ポリプロピレン基板から硬化膜を剥がすことにより、膜厚60μmのフィルム(以下、試験用フィルムという)を得た。
このようにして得られた試験用フィルムを用いて、以下の各種物性試験および評価を行った。結果を、表2に示す。
<フィルムのガラス転移温度および架橋間分子量>
得られた各試験用フィルムを幅5mm、長さ50mmの試験片に切り分けた。この試験片を用いて、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、以下の条件で動的粘弾性測定を行った。この測定から得られた損失正接の最大値tanδmaxを、フィルムのガラス転移温度(℃)とした。
・装置 :動的粘弾性測定装置RSA-G2(TA Instruments社製)
・測定モード :非共振強制振動法(Spring Mode)
・昇温速度 :5.0℃/min
・チャック間距離:20mm
・周波数 :1.0Hz
・温度範囲 :-40~160℃
また、上記測定で得られた貯蔵弾性率(E')の極小値E'minと、E'minにおける絶対温度Tおよび気体定数R、試験用フィルムの密度ρから、下記式で表されるゴム粘弾性理論式に基づき架橋間分子量を算出した。
架橋間分子量=3ρRT/E'min
<破断伸び率>
得られた各試験用フィルムを幅5mm、長さ50mmの試験片に切り分けた。この試験片を用いて、以下の条件で110℃における破断伸び率(%)の測定を行った。
・装置 :動的粘弾性測定装置RSA-G2(TAInstruments社製)
・測定モード :引張モード(FRT Mode)
・引張速度 :0.083mm/s
・チャック間距離:5mm
・温度 :110℃
なお、25℃における破断伸び率の測定は、温度を25℃とした以外は、上記110℃における破断伸び率の測定と同様に行った。
<成形性評価>
得られた各試験用フィルムに、接着シート(日榮新化株式会社製、Mold Fit50)を貼り付け、これを成形用フィルムとした。また、この成形用フィルムを貼り付けるため、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)製の成形体(図5に示す。)を準備した。ちなみに、この成形体は、3次元曲面部を有するものであり、この成形体に隙間なく成形用フィルムを貼り付けようとする場合、成形用フィルムは最大100%伸長する必要がある(すなわち、成形用フィルムを元の面積の2倍以上に引き伸ばすことができれば(伸び率100%以上)、底面を除いた成形体の表面にフィルムを貼り付けることができる。)。
次に、粘着シートの接着層が成形体側に向くよう、成形用フィルムおよび成形体を真空圧空成形機(布施真空社製、NGF―406T)にセットし、25℃および110℃の条件でそれぞれアウトモールド真空圧空成形を行い、成形用フィルムを成形体に貼り付けた。成形後、25℃および110℃の各条件で成形用フィルムが貼り付けられた成形体を目視で観察し、以下の評価基準で評価を行った。3点以上を合格とした。
(評価基準)
1:成形体全面に渡り、成形用フィルムの剥がれが確認される。
2:成形体の端部の広範囲に渡り、成形用フィルムにシワや白化が確認される。
3:成形体の端部の成形用フィルムに、若干のシワや白化が確認される。
4:成形体の端部の成形用フィルムのごくわずかな部分に、シワや白化が確認される。
5:成形体全面に渡り、シワや白化等の不具合なく、成形用フィルムの貼り付けができている。
<形状維持性(安定性)評価>
上記<成形性評価>において、110℃の条件でアウトモールド真空圧空成形を行った成形体を、90℃に設定した金庫式オーブン中で1日静置した。加熱後の成形用フィルムの状態を目視で観察し、形状維持性の指標として、以下の評価基準で評価を行った。3点以上を合格とした。
(評価基準)
1:成形体全面に渡り、成形用フィルムの剥がれが確認される。
2:成形体の端部の広範囲に渡り、成形用フィルムの剥がれが確認される。
3:成形体の端部に若干の成形用フィルムの剥がれが確認される。
4:成形体の端部のごくわずかな部分に、成形用フィルムの剥がれが確認される。
5:成形体全面に渡り、加熱前の成形用フィルムの状態と比較して、特に変化は認められない。
<耐薬品性評価>
得られた各試験用フィルムの作製の際に使用したポリプロピレン基板をABS基板(TP技研株式会社製、JIS K 6873準拠品)に変更したこと以外は、<試験用フィルムの作製>と同様の操作を行って硬化膜を作製し、これをそのままABS基板から剥がすことなく、試験板とした。
得られた各試験板の表面(硬化膜側)に、日焼け止め剤(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製、製品名:ニュートロジーナSPF45)を、0.5g/100cmの条件で塗り広げ、温風乾燥機により、55℃で4時間加熱した。4時間加熱後、試験板を温風乾燥機から取り出して日焼け止め剤をウエスで拭き取った後、硬化膜の表面状態を目視で観察し、以下の評価基準で評価を行った。3点以上を合格とした。
(評価基準)
1:日焼け止め剤を塗った領域において硬化膜が大きく剥がれ、基板が露出している。
2:日焼け止め剤を塗った領域の一部において硬化膜の剥がれが認められる。
3:日焼け止め剤を塗った領域の硬化膜に若干のひび割れや白化が認められる。
4:日焼け止め剤を塗った領域の硬化膜のごくわずかな部分に、わずかに白化が認められる。
5:加熱前と比較して、硬化膜の表面に特に変化は認められない。
Figure 2023064932000005
表2において、(A)(メタ)アクリル樹脂、(B)ポリオール化合物、(C)イソシアネート化合物を含み、成分(A)、成分(B)、成分(C)の少なくとも一つが複素多環式骨格を有する熱硬化性樹脂組成物は、110℃における成形性が良好で、かつ耐薬品性に優れていた。
より具体的には、成分(A)が複素多環式骨格を含む熱硬化性樹脂組成物(実施例9および11)、成分(B)が複素多環式骨格を含む熱硬化性樹脂組成物(実施例1~6、8および11)、成分(C)が複素多環式骨格を含む熱硬化性樹脂組成物(実施例7および10)のいずれにおいても、110℃における成形性および耐薬品性が両立できていた。ちなみに、実施例11は、成分(A)および成分(B)の両方に複素多環式骨格を含んでいた。
一方、いずれの成分にも複素多環式骨格を有しない熱硬化性樹脂組成物(比較例1、3)および成分(A)を含まない熱硬化性樹脂組成物(比較例2)においては、110℃における成形性および耐薬品性が両立できなかった。また、破断伸び率の評価結果も実施例に比べて劣っていた。
実施例をより詳細に分析すると、実施例5~10は、他の実施例と比べ、破断伸び率が大きく、成形性、形状維持性(安定性)および耐薬品性も良好な傾向がある。おそらく、フィルムのガラス転移温度が比較的高いこと、および/または、架橋間分子量が比較的大きいことが、これら良好な結果に関係していると推測される。
<補足>
上記実施例では、アウトモールド法により各試験用フィルムを成形体に貼り付けることにより成形性を評価し、実施例1~11において成形性は良好であった。この結果や、アウトモールド法とインモールド法の類似性などを踏まえれば、実施例1~11の熱硬化性樹脂組成物により形成されたフィルムは、インモールド法へも好ましく適用可能と言える。
1 フィルム
2 機能層(第2の機能層)
3 機能層(第1の機能層)
4 形状物
10A 上部ボックス
10B 下部ボックス
30 ヒーター
50 型
70 物品(形状物)
90 台座
110 フィルム

Claims (17)

  1. (A)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル樹脂と、
    (B)前記成分(A)とは異なるポリオール化合物と、
    (C)ポリイソシアネート化合物と、を含み、
    前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の少なくとも1つが複素多環式骨格を有する、熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記成分(A)が前記複素多環式骨格を有する、
    請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記成分(A)の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、10質量%以上70質量%以下である、
    請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記成分(B)が前記複素多環式骨格を有する、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 前記成分(B)の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、5質量%以上60質量%以下である、
    請求項4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記成分(C)が前記複素多環式骨格を有する、
    請求項1~5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 前記成分(C)の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、5質量%以上60質量%以下である、
    請求項6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 前記複素多環式骨格がイソソルバイドに由来する骨格である、
    請求項1~7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. 前記複素多環式骨格を含む前記成分(B)以外に、分子量5000以下のポリオール化合物を含む、
    請求項4または5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  10. 以下[フィルム形成条件]に記載の条件で形成したフィルムの、以下[ガラス転移温度測定条件]に記載の条件にて測定されるガラス転移温度(℃)が35℃以上140℃以下である、
    請求項1~9のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    [フィルム形成条件]
    当該熱硬化性樹脂組成物を、ポリプロピレン基板上にアプリケーターを用いて塗布厚10mil条件にて塗装し、1分間静置する。静置後の塗装された基板を80℃で5日間硬化させる。その後25℃・相対湿度50%の条件にて1週間静置し、ポリプロピレン基板から硬化膜を剥がすことにより、膜厚60μmのフィルムを得る。
    [ガラス転移温度測定条件]
    前記[フィルム形成条件]にて形成した前記フィルムを、幅5mm、長さ50mmのサイズに切り分けて試験片とする。当該試験片を用いて、周波数1.0Hz、温度-40~160℃の範囲で動的粘弾性測定した時の損失正接の最大値tanδmaxをガラス転移温度(℃)とする。
  11. 以下[フィルム形成条件]に記載の条件で形成したフィルムの、以下[架橋間分子量測定条件]に記載の条件にて測定される架橋間分子量が、500以上15000以下である、
    請求項1~10のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    [フィルム形成条件]
    当該熱硬化性樹脂組成物を、ポリプロピレン基板上にアプリケーターを用いて塗布厚10mil条件にて塗装し、1分間静置する。静置後の塗装された基板を80℃で5日間硬化させる。その後25℃・相対湿度50%の条件にて1週間静置し、ポリプロピレン基板から硬化膜を剥がすことにより、膜厚60μmのフィルムを得る。
    [架橋間分子量測定条件]
    前記[フィルム形成条件]にて形成した前記フィルムを、幅5mm、長さ50mmのサイズに切り分けて試験片とする。当該試験片を用いて、周波数1.0Hz、温度-40~160℃の範囲で測定した貯蔵弾性率(E')の極小値E'minと、E'minにおける絶対温度Tおよび気体定数R、フィルムの密度ρから、以下式にて架橋間分子量を算出する。
    架橋間分子量=3ρRT/E'min
  12. 以下[フィルム形成条件]に記載の条件で形成したフィルムの、以下[破断伸び率測定条件]に記載の条件にて測定される破断伸び率が100%以上である、
    請求項1~11のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    [フィルム形成条件]
    当該熱硬化性樹脂組成物を、ポリプロピレン基板上にアプリケーターを用いて塗布厚10mil条件にて塗装し、1分間静置する。静置後の塗装された基板を80℃で5日間硬化させる。その後25℃・相対湿度50%の条件にて1週間静置し、ポリプロピレン基板から硬化膜を剥がすことにより、膜厚60μmのフィルムを得る。
    [破断伸び率測定条件]
    前記[フィルム形成条件]にて形成した前記フィルムを、幅5mm、長さ50mmのサイズに切り分けて試験片とする。当該試験片を、動的粘弾性測定装置用いて、温度110℃、チャック間距離5mm、引張速度0.083mm/s、引張モードの条件にて、引っ張りを行い、破断する時の試験片の伸長率(%)を破断伸び率(%)とする。
  13. 前記複素多環式骨格がイソソルバイドに由来する骨格である場合において、
    以下[熱硬化性樹脂組成物中の複素多環式骨格を含む構成単位の含有比率(質量%)]に記載の方法で算出される、当該熱硬化性樹脂組成物中の複素多環式骨格を含む構成単位の含有比率が、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、3質量%以上25質量%以下である、
    請求項1~12のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    [熱硬化性樹脂組成物中の複素多環式骨格を含む構成単位の含有比率(質量%)]
    当該熱硬化性樹脂組成物中の、以下式(1)で表される前記イソソルバイドから、五員環に結合する二つのヒドロキシ基から水素原子を除いた部分に相当する分子量の含有比率を、熱硬化性樹脂組成物中の複素多環式骨格を含む構成単位の含有比率(質量%)とする。
    Figure 2023064932000006
  14. 請求項1~13のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されたフィルム。
  15. 請求項14に記載のフィルムの少なくとも一方の面に機能層が積層されているフィルム。
  16. 請求項14または15に記載のフィルムと、基材層とを備える、積層構造フィルムであって、
    前記基材層の材質が、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロース、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネートおよび熱可塑性ポリイミドからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、積層構造フィルム。
  17. 請求項14または15に記載のフィルムまたは請求項16に記載の積層構造フィルムを備える物品。
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