JP3979130B2 - 腐食環境施設用モルタル組成物及びコンクリート構造物腐食防止工法 - Google Patents

腐食環境施設用モルタル組成物及びコンクリート構造物腐食防止工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水処理場や汚泥処理場等の腐食環境が発生し易い施設の建設、改修、修繕に使用される、耐腐食性に優れた腐食環境施設用モルタル組成物及び該モルタル組成物を利用するコンクリート構造物腐食防止工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水処理場や汚泥処理場で処理される廃水中には硫酸塩、有機酸が含まれているが、これ等硫酸塩、有機酸は、廃水中に棲息する硫酸塩還元菌によって分解され硫化水素が発生し、気相に出て行く。下水処理場や汚泥処理場施設の気相と接する内壁表面には、生存に適した環境下にあることから硫黄酸化菌が棲息しており、前記気相中の硫化水素は、該硫黄酸化菌の酸化を受け硫酸が生成する。生成硫酸は、揮発性を有しない事から内壁表面に滞留する事になる。
下水処理場や汚泥処理場では、当然、コンクリートが多用されていることから、コンクリート表面は硫酸酸性雰囲気に曝され続ける事になり、コンクリートの溶出すなわち腐食が起こる。
【0003】
腐食が進むと、下水の漏洩に繋がることは元より、施設そのものの崩壊に繋がりかねないことから、腐食の抑制は、下水道の発達した都市における重要な課題であり、腐食抑制の種々の方法が開示されている。
例えば、耐酸性セメントを使用したモルタル、抗菌剤混入モルタル、超微粉スラグ混入モルタル等、構成成分によって耐腐食性を高めるのが一つの方法であり、製品が市場に出ているが、その耐腐食性は十分に高いものではなく、改善が要求されているのが実情である。
一方、耐腐食性材料で防食被覆するライニング工法では、その効果は確かに高いものの、施工欠陥を生じ易い。耐摩耗性に弱いため、所定の効果を再現または持続させることが困難である。また、施工期間、技術に制約がある。更に、費用が嵩む欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、従来品に比してより耐腐食性の向上した硬化体を与えるモルタル組成物の提供を目的とする。また、該モルタル組成物を表面に塗着するコンクリート構造物腐食防止工法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、水硬性成分に耐腐食性に優れるアルミナセメントを使用するだけでなく、高耐腐食性の骨材を使用することにより、モルタルの耐腐食性が大幅に向上することを知見し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、アルミナセメントとアルミナセメントクリンカーを必須成分とする腐食環境施設用モルタル組成物に関する。
また、コンクリート構造物表面に、上記腐食環境施設モルタル組成物を塗着することを特徴とする、コンクリート構造物腐食防止工法に関する。
以下に、本発明を詳しく説明する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明では、モルタル組成物の水硬性成分として、耐腐食性に優れたアルミナセメントを使用する。アルミナセメントは、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、何れも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、何れも使用出来るが、モノカルシウムアルミネート含有量が50質量%以上のものの使用が好ましい。
【0007】
モルタルを構成する骨材として、アルミナセメントクリンカー骨材を使用することが本発明の特徴の一つである。アルミナセメントクリンカー骨材は、アルミナセメントと鉱物組成が基本的に同じであるため耐腐食性に優れ、アルミナセメントとの結合性も非常に良好である。また、水和反応が継続して起こることから、アルミナセメント水和物の転移の抑制、耐腐食性の持続効果を有する。
アルミナセメントクリンカー骨材は、粒径150μm〜4mmのものの使用が好ましく、吹き付け、鏝塗り作業性を低下させないためには、粒径2.5mm以下のものを使用するのが更に好ましい。
尚、ここで言う粒度は、例えば150μm〜4mmは、目開き150μmと4mm二種の篩を用いて捕捉される粒分を言う。
【0008】
モルタル組成物中におけるアルミナセメントクリンカー骨材の配合比は、アルミナセメント/アルミナセメントクリンカー骨材の質量比が0.3〜2.5の範囲にするのが良い。0.4〜1.2の範囲は更に好ましい。水硬性成分であるアルミナセメント量が少ないと、十分な強度が発現し難く、一方、アルミナセメント量が多すぎると、収縮、クラック防止が困難となるのに加え、吹き付け、鏝塗り作業性等、施工性の低下に繋がるからである
【0009】
本発明のモルタル組成物は、アルミナセメント、アルミナセメントクリンカー骨材の存在だけで十分な耐腐食性を示すモルタル硬化体を与えることから、この必須二成分のみを含む組成物とすることで、十分目的を達することができるが、モルタルやコンクリート調製の際に一般的に使用される減水剤、増粘剤、凝結調整剤、セメント混和用ポリマー等の市販混和剤の一種又は二種以上を添加するのが好ましい。また、繊維を加えるのが好ましい。
減水剤は、低い水/セメント比においても高い流動性を確保する効果が在り、増粘剤は高い流動性下に於ける材料分離の抑制に効果を示す。凝結調整剤は、施工時の可使時間及び強度発現をコントロールする効果があり、セメント混和用ポリマーは、下地コンクリートとの接着性を上げる効果を有している。また、繊維は、耐クラック性を向上させる効果を有している。
【0010】
混和剤を添加する場合、その添加量はアルミナセメントに対して10質量%以下とする。添加量が多すぎると初期強度発現にマイナス要因として働くだけでなく、高価な混和剤の浪費に繋がり不経済である。
繊維の添加量もアルミナセメントに対して10質量%以下とする。過剰な添加量は強度の低下に繋がると共に、下地コンクリートからの剥離の要因となる。
【0011】
本発明のモルタル組成物では、高炉スラグを添加することが出来る。高炉スラグは、それの持つ潜在水硬性による硬化体強度を向上させる効果と共に、アルミナセメントクリンカー骨材同様、アルミナセメント水和物の転移に起因する強度低下を抑制する効果を有する、化学的反応性、特に耐酸性に優れた添加物である。
【0012】
高炉スラグは、セメント混和材として一般的なものであり、市販されている。混和剤として市販されているものは、何れも問題なく使用できるが、JIS A 6206(コンクリート用高炉スラグ微粉末)の規格に適合するものが好ましい。また、その粉末度は、混和材用として市販されている物であれば特に制限されないが、2000〜10000cm2/gのブレーン比表面積を有する微粉末を使用するのが、添加効果発現性の面から好ましい。
また、過度の添加は逆に強度発現性の低下に繋がることから、添加する場合、その添加量は、アルミナセメントに対して10質量比以下の範囲とする。
【0013】
本発明のモルタル組成物には、更に、川砂、海砂、山砂等のシリカ質骨材を添加することができる。シリカ質骨材の添加は、耐腐食性に余り影響を与えることなくコストダウンに繋がる。シリカ質骨材を添加する場合には、その添加量はアルミナセメントクリンカー骨材に対して、10質量比以下とする。添加量が多すぎると耐腐食性の低下を招く。
【0014】
本発明のモルタル組成物では、水/セメント比を0.2〜0.6とするのが好ましい。水セメント比が高すぎると強度発現性が不十分となり、一方低すぎると流動性が低すぎ、作業特性が低下するだけでなく、強度特性に劣る硬化体を与える場合が在る。
【0015】
本発明のモルタル組成物は、一般のモルタル同様、各粉末材料を混合したものに所定量の水を加え、一般的な混練機を用いて混練して調製することができる。
【0016】
調製後のモルタル組成物は、コンクリート構造物表面に塗着させて使用される。塗着施工は、モルタルの施工に一般的に用いられている、コテ塗り又は吹付けで行なうことが出来る。吹付けで塗着させる場合には、モルタルポンプを用いて圧送するが、予めセメントノロを通し、圧送ホースとの摩擦を低減させて置くのが好ましい。
【0017】
表面が腐食、中性化した既設コンクリートにおいては、切削や研磨等の適当な手段で表面の劣化層を除去した後の表面に本発明のモルタル組成物を塗着させる補修材として使用する。この場合の塗膜厚みは、除去した劣化部の深さに依存することになる。
また、新設のコンクリートや、既設コンクリートでも未だ表面の腐食や中性化を受けていないコンクリートの表面に予め塗着しておくことで、コンクリート表面における腐食、中性化を抑制する使い方もできる。この場合の塗膜厚みは5mm以上とするのが好ましく、10〜20mmとすればより好ましい。
【0018】
【実施例】
以下では、具体的例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
(1)使用材料
・アルミナセメント:ラファージュ社製、ブレーン比表面積3200cm/g、モノカルシウムアルミネート含有率 53質量%
・ポルトランドセメント:宇部興産(株)社製・普通ポルトランドセメント
・アルミナセメントクリンカー骨材:アルミナ含有率 40%、粒度 〜2.5mm
・高炉スラグ:ブレーン比表面積 4500cm/g
・有機質混和剤:酢ビ・べオバ共重合系樹脂粉末、メチルセルロース系増粘剤、ポリカルボン酸系減水剤、ビニロン繊維、クエン酸ナトリウム
・シリカ質骨材:粒度 4mm以下の山砂
【0019】
(2)モルタル調製、供試体の作製
表1に示される所定量の原料および水を、ホバート社製モルタルミキサーで3分間混合してモルタルを得た。
得られたモルタルを径7.5cm×高さ15cmの円柱形鋼製型枠を用いて2層成形し、20℃−相対湿度65%の気中に静置した。24時間後脱型し、20℃の水中に28日間浸積を行い、供試体とした。
【0020】
(3)モルタルの耐腐食性試験
耐腐食性の評価は、耐硫酸性を測定して行った。測定は、東京都下水道局施設監理部発行「コンクリート改修技術マニュアル(汚泥処理施設編 平成12年10月)に従って行った。
結果を表1に示す。
【0021】
表1に記載の「実施例1〜3、実施例5」を下記の通り「参考例1〜3、参考例5」に変更します。
【表1】
Figure 0003979130
【0022】
【発明の効果】
表1に示されているように、本発明のモルタルは、5%硫酸浸積後の重量変化率、硫酸浸透深さ共に小さく、耐腐食性に優れた硬化体を与える。施工性にも優れる。従って、下水処理場や汚泥処理場等の、腐食環境に曝され易い施設における表面腐食が生じたコンクリート表面の信頼性の高い補修が可能になっただけでなく、予め塗着しておくことにより、コンクリート構造体の耐久性の向上を可能にした。

Claims (7)

  1. アルミナセメントとアルミナセメントクリンカー骨材と高炉スラグとを必須成分とし、さらにセメント混和用ポリマーとビニロン繊維とを含むことを特徴とする腐食環境施設用モルタル組成物。
  2. セメント混和用ポリマーは、酢酸ビニル・ベオバ共重合系樹脂粉末であることを特徴とする請求項1に記載の腐食環境施設用モルタル組成物。
  3. モルタル組成物は、さらに増粘剤、減水剤及び凝結調整剤を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の腐食環境施設用モルタル組成物。
  4. モルタル組成物は、さらにメチルセルロース系増粘剤、ポリカルボン酸系減水剤及びクエン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の腐食環境施設用モルタル組成物。
  5. アルミナセメントクリンカーの粒径が150μm〜4mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の腐食環境施設用モルタル組成物。
  6. アルミナセメント/アルミナセメントクリンカー骨材の質量比が0.3〜2.5であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の腐食環境施設用モルタル組成物。
  7. コンクリート構造物表面に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の腐食環境施設用モルタル組成物を、コテを用いて塗付け施工することを特徴とするコンクリート構造物腐食防止工法。
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