JP3978765B2 - 油拡散ポンプの運転方法及び油拡散ポンプの制御装置並びに真空排気装置とその制御方法 - Google Patents

油拡散ポンプの運転方法及び油拡散ポンプの制御装置並びに真空排気装置とその制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空チャンバーに接続されてチャンバー内を真空引きするための油拡散ポンプの運転制御方法と、油拡散ポンプの制御装置、さらには、油拡散ポンプを利用した真空排気装置とその制御方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体プロセス装置等において、真空チャンバー内を真空引きする真空ポンプとして、油拡散ポンプが利用されている。
この油拡散ポンプは、作動油を収容したボイラ内にヒータを備えている。このヒータにより加熱された作動油は、ボイラ内で、排気方向に沿って斜めに配置されたノズルから、蒸気となって噴出される。この蒸気に対して、空気等の気体分子が衝突すると、蒸気の流れの方向に運動量が与えられて、排気側へ流れるようになっている。これにより、油拡散ポンプと接続されたチャンバー内の空気は、排気されて、チャンバー内に真空が作られる。
また、蒸気となった作動油は、ボイラ壁面で凝縮し、収容部に回収されて、ふたたびヒータで加熱されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような油拡散ポンプでは、機種によって異なるものの投入エネルギーにより、作動油温度が決まり、一般に作動油温度が高い程、排気速度が早くなる。このため、従来は、作動油温度を高温に維持するために、ヒータ温度が高くなるように投入エネルギーが設定されていた。
【0004】
ところが、実際の運転実験を種々行うと、作動油温度を高くして、排気速度を早めても、必ずしも、所望の真空度に達することができなかったり、また、所望の真空度に到達する場合にも、到達時間が多くかかってしまう場合があるという問題がある。
さらには、排気速度を早くするために、作動油温度を高くすると、真空排気装置と作動油温度の温度差が大きいために、ヒータへの投入エネルギーを大きくする必要があり、その分、エネルギー消費が大きくなってしまう。そして、真空排気装置が設置されるクリーンルームの排熱にエネルギーを多く消費することになるという点で、トータルエネルギー消費が増大する欠点がある。
また、作動油が高温で使用される分、作動油の酸化等による劣化が促進されてしまう。
【0005】
本発明の目的は、エネルギー消費を効率的に抑制させつつ、所望の真空度を得ることができる油拡散ポンプの運転方法と、油拡散ポンプの制御装置、及び油拡散ポンプを使用した真空排気装置とその制御方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的は、請求項1の発明によれば、真空チャンバーに接続されて、チャンバー内を真空引きする油拡散ポンプの運転方法において、前記油拡散ポンプを作動させた場合の作動油の油温に対応して、前記チャンバー内の到達圧力値及び当該到達圧力値に到達するための運転時間に関するデータを、対応する複数の油温についての複数のデータとして予め求めておき、目標とする真空度と到達時間条件に対応して、前記複数のデータから適合するデータを求めて、当該適合するデータに対応する作動油温度で運転するようにした、油拡散ポンプの運転方法により、達成される。
【0007】
請求項1の構成によれば、前記油拡散ポンプを作動させた場合の作動油の油温に対応して、前記チャンバー内の到達圧力値及び当該到達圧力値に到達するための運転時間に関するデータを、対応する複数の油温についての複数のデータとして予め求めて利用するようにしている。すなわち、本発明者等によれば、油拡散ポンプは、一般的には、その作動油の温度が高い程、圧力を降下させる圧力変化率が大きいと理解されているが、単純に作動油の温度を高くしても、所望の真空度を達成できない場合があることから、作動油の温度によって、最終的に到達する圧力(以下、「飽和圧力」と言う)が異なることを見いだした。
すなわち、油拡散ポンプの作動油の油温が高い方が、初期排気量が大きいが、飽和圧力が高く、到達真空度が劣る。また、油拡散ポンプの作動油の油温が低い方が、初期排気量が小さいが、飽和圧力が低く、到達真空度が優れている。
また、作動油の温度を高くするためには、作動油の加熱手段への投入エネルギーを増大させなければならないので、エネルギー消費が増大する。そこで、目標とする真空度と到達時間の条件に適合するように、より低い作動油の温度を、前記複数のデータから選択することで、所望の真空度を達成しつつ、投入エネルギーを抑えることで、省エネルギーをはかることができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、運転時間及び到達圧力値に関する前記複数の油温に対応した複数のデータを相互に比較し、運転開始時に前記複数のデータのうち圧力変化率の最も大きなデータを選択して、当該選択したデータによる作動油温で油拡散ポンプを運転し、以降の運転においては、当該選択した油温に対応したデータと他の油温に対応したデータとの間で、より圧力変化率が大きくなる時点で、当該圧力変化率が大きくなるデータに基づく作動油温に変更して、前記油拡散ポンプを運転することを特徴とする。
【0009】
請求項2の構成によれば、圧力を降下させる圧力変化率が、常に、一番大きくなる作動油の温度を選択することで、キャビティー内の圧力を迅速に降下させることができる。この場合、常に、最も高い作動油温を選択して、油温を固定した状態で運転する場合と比べて、投入エネルギーを節約できるので、あわせて、省エネルギーをはかることができる。
【0010】
上述の目的は、請求項3の発明によれば、真空チャンバーと、この真空チャンバーに接続され、チャンバー内を真空引きする油拡散ポンプと、この油拡散ポンプに接続されたロータリポンプと、少なくとも、前記油拡散ポンプの作動油温と、前記ロータリポンプの駆動周波数とを制御する制御手段を備える真空排気装置の制御方法であって、前記油拡散ポンプを作動させた場合の作動油の油温に対応して、前記チャンバー内の到達圧力値及び当該到達圧力値に到達するための運転時間に関するデータを、対応する複数の油温についての複数のデータとして予め求めておき、目標とする真空度と到達時間条件に対応して、前記複数のデータから適合するデータを求めて、当該適合するデータに対応する作動油温度で運転するようにした、真空排気装置の制御方法により、達成される。
【0011】
請求項3の構成によれば、真空チャンバーと、この真空チャンバーに接続され、チャンバー内を真空引きする油拡散ポンプと、この油拡散ポンプに接続されたロータリポンプと、少なくとも、前記油拡散ポンプの作動油温と、前記ロータリポンプの駆動周波数とを制御する制御手段を備える真空排気装置においても、目標とする真空度と到達時間の条件に適合するように、油拡散ポンプの作動油について、より低い作動油の温度を、前記複数のデータから選択することで、所望の真空度を達成しつつ、投入エネルギーを抑えることで、省エネルギーをはかることができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、到達圧力値及び運転時間に関する前記複数の油温に対応した複数のデータを相互に比較し、運転開始時に前記複数のデータのうち圧力変化率の最も大きなデータを選択して、当該選択したデータによる作動油温で油拡散ポンプを運転し、以降の運転においては、当該選択した油温に対応したデータと、他の油温に対応したデータとの間で、より圧力変化率が大きくなる時点で、当該圧力変化率が大きくなるデータに基づく作動油温に変更して、前記油拡散ポンプを運転することを特徴とする。
【0013】
請求項4の構成によれば、真空チャンバーと、この真空チャンバーに接続され、チャンバー内を真空引きする油拡散ポンプと、この油拡散ポンプに接続されたロータリポンプと、少なくとも、前記油拡散ポンプの作動油温と、前記ロータリポンプの駆動周波数とを制御する制御手段を備える真空排気装置においても、前記油拡散ポンプのキャビティ内の圧力を降下させる圧力変化率が、常に、一番大きくなる作動油の温度を選択することで、キャビティー内の圧力を迅速に降下させることができる。この場合、常に、最も高い作動油温を選択して、油温を固定した状態で運転する場合と比べて、投入エネルギーを節約できるので、あわせて、省エネルギーをはかることができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項3または4のいずれかの構成において、前記チャンバー内が高い真空度に達したら、前記ロータリポンプの駆動周波数を高い周波数から低い周波数に切り換えることを特徴とする。
請求項5の構成によれば、ロータリポンプの駆動周波数について、最初は高い周波数で駆動することで、効率的に排気し、チャンバー内が高い真空度に達したら、ロータリポンプの駆動周波数を高い周波数から低い周波数に切り換えて駆動することで、消費電力を低減することができる。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5の構成において、前記油拡散ポンプの排気部の圧力を検出する背圧検出手段により、油拡散ポンプの動作特性曲線と、切り換え後の周波数によるロータリポンプの動作特性曲線との交点に対応した圧力であって、前記油拡散ポンプの臨界背圧よりもより高真空であることを検出することにより、前記ロータリポンプの駆動周波数を、前記低い周波数に切り換えることを特徴とする。
請求項6の構成によれば、油拡散ポンプが確実に動作する状態において、ロータリポンプの駆動周波数を高い周波数から低い周波数に切り換えて駆動することで、消費電力を低減することができる。
【0016】
上述の目的は、請求項7の発明によれば、真空チャンバーに接続された油拡散ポンプの作動油温を自動制御する制御装置であって、この制御装置が、前記油拡散ポンプを作動させた場合の作動油の油温に対応して、前記チャンバー内の到達圧力値及び当該到達圧力値に到達するための運転時間に関するデータを、対応する複数の油温についての複数のデータを取得し、目標とする真空度と到達時間条件に対応して、前記複数のデータから適合するデータを求めて、当該適合するデータに対応する作動油温度で運転するようにした、油拡散ポンプの制御装置により、達成される。
請求項7の構成によれば、真空チャンバーに接続された油拡散ポンプの作動油温を自動制御する場合の制御装置が、目標とする真空度と到達時間の条件に適合するように、より低い作動油の温度を、前記複数のデータから選択することで、所望の真空度を達成しつつ、投入エネルギーを抑えることで、省エネルギーをはかることができる。
【0017】
請求項8の発明は、請求項7の構成において、運転時間及び到達圧力値に関する前記複数の油温に対応した複数のデータを相互に比較し、運転開始時に前記複数のデータのうち圧力変化率の最も大きなデータを選択して、当該選択したデータによる作動油温で油拡散ポンプを運転し、以降の運転においては、当該選択した油温に対応したデータと他の油温に対応したデータとの間で、より圧力変化率が大きくなる時点で、当該圧力変化率が大きくなるデータに基づく作動油温に変更して、前記油拡散ポンプを運転することを特徴とする。
請求項8の構成によれば、真空チャンバーに接続された油拡散ポンプの作動油温を自動制御する場合の制御装置が、前記油拡散ポンプのキャビティ内の圧力を降下させる圧力変化率が、常に、一番大きくなる作動油の温度を選択することで、キャビティー内の圧力を迅速に降下させることができる。この場合、常に、最も高い作動油温を選択して、油温を固定した状態で運転する場合と比べて、投入エネルギーを節約できるので、あわせて、省エネルギーをはかることができる。
【0018】
上述の目的は、請求項9の発明によれば、真空チャンバーと、この真空チャンバーに接続され、チャンバー内を真空引きする油拡散ポンプと、この油拡散ポンプに接続されたロータリポンプと、少なくとも、前記油拡散ポンプの作動油温と、前記ロータリポンプの駆動周波数とを制御する制御手段を備える真空排気装置であって、前記制御手段が、前記油拡散ポンプを作動させた場合の作動油の油温に対応して、前記チャンバー内の到達圧力値及び当該到達圧力値に到達するための運転時間に関するデータを、対応する複数の油温についての複数のデータとして記憶した記憶手段を備えており、目標とする真空度と到達時間条件に対応して、前記複数のデータから適合するデータを求めて、当該適合するデータに対応する作動油温度で運転する構成とした真空排気装置により、達成される。
【0019】
請求項10の発明は、請求項9の構成において、前記制御手段が、到達圧力値及び運転時間に関する前記複数の油温に対応した複数のデータを相互に比較し、運転開始時に前記複数のデータのうち圧力変化率の最も大きなデータを選択して、当該選択したデータによる作動油温で油拡散ポンプを運転し、以降の運転においては、当該選択した油温に対応したデータと、他の油温に対応したデータとの間で、より圧力変化率が大きくなる時点で、当該圧力変化率が大きくなるデータに基づく作動油温に変更して、前記油拡散ポンプを運転する構成としたことを特徴とする。
【0020】
請求項11の発明は、請求項9または10のいずれかの構成において、前記チャンバー内が高い真空度に達したら、前記ロータリポンプの駆動周波数を高い周波数から低い周波数に切り換える構成としたことを特徴とする。
【0021】
請求項12の発明は、請求項11の構成において、前記油拡散ポンプの排気部の圧力を検出する背圧検出手段により、油拡散ポンプの動作特性曲線と、切り換え後の周波数によるロータリポンプの動作特性曲線との交点に対応した圧力であって、前記油拡散ポンプの臨界背圧よりもより高真空であることを検出することにより、前記ロータリポンプの駆動周波数を前記低い周波数に切り換える構成としたことを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の真空排気装置の実施形態の概略構成を示す系統図である。
図において、真空チャンバー11は、例えば圧電デバイス(図示せず)の製造工程の一部として、パッケージ内に圧電振動片をマウントして、真空雰囲気中で蓋体を接合封止する工程や、透明な蓋体を接合した後で、真空雰囲気中で、蓋体を透過させて、圧電振動片にレーザを照射し、質量削減方式により周波数調整する工程等の他、真空雰囲気中で行われる半導体プロセス等に広く利用することができる。
【0023】
真空チャンバー11に接続される管路12内には、例えば、半導体を利用した圧力センサ等でなる高真空センサ39が接続されており、真空チャンバー11内の気圧が高真空となったか否かを検出できるようになっている。この高真空センサ39は、後述するように、油拡散ポンプ31の背圧検出手段を兼ねることができる。
管路12は、本引き弁(MV)16を介して、吸引管路14が接続され、吸引管路14は、油拡散ポンプ(DP)31の吸気部に接続されている。また、真空チャンバー11に接続される管路12は、本引き弁(MV)16よりも真空チャンバー11側で分岐部13を介して分岐管路15に接続されている。分岐管路15は、分岐部17を介して、管路18に接続されており、管路18には、リーク弁(VV)19が設定されている。
【0024】
また、分岐管路15は、分岐部13よりも先で、粗引き弁(RV)22を介して管路21と接続されている。この管路21は、分岐部23を介して、ロータリポンプである油回転ポンプ(油回転真空ポンプ)(RP)41と接続されている。また、管路21は、油拡散ポンプ31の排気部33と接続された管路24と分岐部23にて接続されている。この管路24には、分岐部23よりも油拡散ポンプ31側に拡散補助弁(FV)25と、分岐部23を挟んで油拡散ポンプ31から遠い側に、タイミングリーク弁26とが設定されている。
【0025】
真空排気装置10は、その動作を制御するための制御手段としての制御装置60を備えている。制御装置60は、CPU等の処理回路を含む制御回路61と、この制御回路61に内蔵もしくは接続される記憶手段としてのメモリ62と、ロータリポンプ41を運転制御する手段としてのロータリポンプ制御回路64と、油拡散ポンプ31を運転制御する手段としての油拡散ポンプ制御装置63とを含んでおり、さらに、制御装置60の制御回路61には、上述した高真空センサ39と接続された高真空センサ駆動回路53が接続されている。
【0026】
また、制御装置60の制御回路61には、本引き弁16、リーク弁19、粗引き弁22、拡散補助弁25、タイミングリーク弁26の各弁が接続されており、これらの弁は、制御回路61の所定のシーケンスに従って開閉されるようになっている。
また、制御装置60の制御回路61には、油拡散ポンプ31の排気部33の圧力を検出するための背圧検出手段として、高真空センサ39とは別に圧力センサ38が接続されていてもよい。
【0027】
さらに、油拡散ポンプ31には、補助ポンプとしてロータリポンプ41が接続されており、油拡散ポンプ31が排気した気体は、ロータリポンプ41が吸引して、図示しない経路により排出するようになっている。
【0028】
ここで、ロータリポンプ41は、例えば、公知の油回転ポンプが使用されており、例えば、回転翼型のものが好適に使用される。すなわち、ロータリポンプ41のシリンダー内には、回転するロータがあり、シリンダーには吸気口と排気口がそれぞれ独立して開口している。シリンダー内で回転するロータには、可動するベーンが取り付けられ、ロータの遠心力によりベーンの外縁がシリンダー内壁に押しつけられるようになっている。これにより、ロータが回転すると、ロータ、ベーン、シリンダー内壁で区画される容積が変化することで、気体を送り出すようになっている。
【0029】
この実施形態では、ロータリポンプ41の制御回路64は、制御回路61の指示により、ロータリポンプ41の駆動周波数を変化させるように制御することを特徴としている。
すなわち、ロータリポンプ41は、その駆動電流が印加されるタイミングを一定周波数の駆動信号で指示されている。そして、駆動信号の周波数が高い程、ロータリポンプ41の回転数が高く、排気速度が早くなるが、その分消費電力は大きくなる。このため、ロータリポンプ41の制御回路64は、駆動信号の周波数を後述するように変化させて、排気効率を損なうことなく、消費電力を節約するようにしている。
【0030】
図2は、真空排気装置10の油拡散ポンプ(油拡散真空ポンプ)31の構成例を示す概略断面図である。
図において、油拡散ポンプ31は、底部が塞がれて、作動油34を貯留できる貯留部55を備えるようにされた筒状の本体32と、本体32内に配置され、加熱された作動油34が蒸発して上昇した蒸気を図において斜め下方の排気方向に沿って噴射するための複数のノズル35a,35b,35cを備えている。
複数のノズル35a,35b,35cは、それぞれ、本体32の内壁との間隔が、図において下方にいくに従って、次第に狭くなるようにされている。
【0031】
本体32の底部に隣接して、下端部には、格納部54内に電気ヒータ51が設けられており、ヒータ51には、油拡散ポンプ制御装置63としての温度制御回路が設けられている。油拡散ポンプ制御装置63は、ヒータ51の温度を検出するための熱電対等で構成した温度センサ52からの信号が入力され、図1の制御回路61から指示された温度になるように、ヒータ51に対する駆動電流である入力パワーを自動制御するようになっている。例えば、油拡散ポンプ制御装置63である温度制御回路は、PDI(比例、微分、積分制御)回路により構成され、図1の制御回路61から指示された温度に対して、温度センサ52からの現在温度と比較して、フィードバック制御をおこない、迅速に、指示された温度となるようにヒータ51への入力パワーを決定するようになっている。
【0032】
油拡散ポンプ31の図において上端部の開口は、図1の吸引管路14が接続された吸気部37となっている。これにより、図1の真空チャンバー11内の気体が本体32内に導入されるようになっている。本体32の作動油34の貯留部であるボイラの上方には、斜めに延びる管路としての排気部33が形成されている。この排気部33は、図1の管路24と接続されている。また、この排気部33には、排気部33の圧力を検出する圧力センサ38が設定されていてもよい。
また、筒状の本体32の外周には、冷却管路36が螺旋状に取り巻いて当接 されており、冷却管路36内を冷媒が通されることで、本体32の壁面と熱交換されるようになっている。
尚、作動油34としては、例えば、シリコーン油系のものが使用でき、例えば、東レダウコーニングSH705を使用することができる。
【0033】
以上の構成において、油拡散ポンプ31は、油拡散ポンプ制御装置63の制御に基づいて、ヒータ51が発熱されることにより、本体32の底部に貯留された作動油34が加熱されて蒸発する。作動油34の蒸気は本体32の中心部を矢印方向に上昇し、排気方向,すなわち、図2において、下方に向けて、各ノズル35a,35b,35cより噴出される。
そして、ほぼ音速程度まで加速された蒸気に対して、吸気部37から導入される空気の分子が衝突すると、蒸気の流れの方向に運動量が与えられて、排気側へ流れ、排気部33から排出される。この過程で、各ノズル35a,35b,35cと本体32の壁面との間は次第に狭くされているので、ポンプ作用が働き、吸気部37では、負圧がつくられて、吸気部37と管路14及び管路12で接続された真空チャンバー11内の空気が排気されることで、チャンバー内に真空が作られる。
また、作動油34の蒸気は、本体32の壁面に当接し、冷却管路36との間で熱交換されて冷やされることで壁面の内側に結露する。結露した作動油は次第に落下して、本体32の下部に液体の作動油34として回収される。
【0034】
図3は、図2のヒータ51を収容した本体32の部分に着脱されるように構成した断熱手段70を示している。
本実施形態では、後述する油拡散ポンプ31の運転方法に加えて、油拡散ポンプ31に、このような断熱手段70を付加することで、熱損失を低減するようにしている。
図において、断熱手段70は、全体が断熱材により形成された断熱ジャケットとして形成されている。断熱手段70は、筒状をした上部ジャケット71と、所定の厚みを有する下部ジャケット77とを備えている。
ここで、この断熱手段70は、その全体が、例えば、ガラスクロスをフッ素コートガラスクロス生地で内包することにより形成することができる。
【0035】
上部ジャケット71は、分離部72で開くようにされた筒体であり、その内周が、油拡散ポンプ31のヒータ格納部54及び貯留部55の外周とほぼ一致するように形成されている。上部ジャケット71の分離部72に沿って、カバー74が設けられており、カバー74の内面には、面ファスナー等で形成した着脱部74aが設けられている。この着脱部74aは、上部ジャケット71の外周の分離部72に沿った箇所に設けられた面ファスナー等でなる着脱部75に対して着脱されることで、固定できるようになっている。
【0036】
また、上部ジャケット71の下端には、切り欠き79が設けられており、油拡散ポンプ31のヒータ格納部54及び貯留部55の周囲に上部ジャケット71を取り付けた場合の配線の出し入れ手段とされている。
下部ジャケット77は、油拡散ポンプ31の本体32の下端に当接される。この下部ジャケット77の上端には、周方向に沿って複数のカバー78が設けられており、各カバーの内面には、面ファスナー等でなる着脱部78aがそれぞれ設けられている。そして、上部ジャケット71の下端外周には、面ファスナー等でなる着脱部76が設けられている。
【0037】
これにより、油拡散ポンプ31のヒータ格納部54及び貯留部55の周囲に上部ジャケット71を取り付けた状態で、下部ジャケット77を、油拡散ポンプ31の本体32の下端に当接させる。そして、上部ジャケット71と下部キャケット77との境界をカバー78で覆って、下部ジャケット77の着脱部78aと上部ジャケット71の下端外周の着脱部76を固定することで、断熱手段70は、油拡散ポンプ31の本体32の下部をほぼ完全に覆うことができる。このため、ヒータ51の熱や加熱された作動油34の熱が外部に逃げないようにすることができる。
【0038】
本実施形態の真空排気装置10は、以上のように構成されており、次に、図4のフローチャートと、図5のタイムチャートを参照しながら、その概略動作について説明する。
真空排気装置10の動作は、制御装置60により制御されるようになっている。真空排気装置10を立ち上げた直後は、真空チャンバー11内が、真空であるかどうかに関わらず、真空チャンバー11と油拡散ポンプ31とをつなぐ本引き弁16と、粗引き弁22は閉じられている。拡散補助弁25は開かれており、ロータリポンプ41は、油拡散ポンプ31の排気側の背圧が臨界背圧(後述)を超えないようにするために、既に回転しているが、真空排気装置10の運転開始時においては、油拡散ポンプ31と本引き弁16の配管内は、既に、真空となっており、排出気体量が少ないため、例えば、30ないし40ヘルツで駆動されている。
このような状態から、先ず、粗引き弁22を開く(ST2)、これと同時に、制御装置60においては、ロータリポンプの制御回路64は、ロータリポンプ41の駆動周波数を高い周波数に変更し、排気速度を高くする(ST3)。
【0039】
ロータリポンプ41を高回転としたら、粗引き弁22を閉じ(ST4)、拡散補助弁25を開いて(ST5)、油拡散ポンプ31とロータリポンプ41とを接続する。次に、本引き弁16を開いて、真空チャンバー11と油拡散ポンプ31を接続する(ST6)。次いで、制御装置60は、油拡散ポンプ制御装置63に指示を出して、油拡散ポンプ31を駆動する(ST7)。油拡散ポンプ制御装置63による油拡散ポンプ31の運転方法は後で詳しく説明する。
【0040】
これにより、真空チャンバー11と、油拡散ポンプ31と、ロータリポンプ41とが接続され、真空チャンバー11内の気体は、油拡散ポンプ31により真空引きされ、さらに、油拡散ポンプ31の排気は、ロータリポンプ41により吸引されて、ロータリポンプ41から外部へ排気される。
これにより、高真空センサ39が所定の真空度を検出したら(ST8)、ロータリポンプの制御回路64は、駆動信号を、例えば30ヘルツないし40ヘルツという、より低い周波数に変更して、ロータリポンプ41の駆動周波数を低い周波数に変更する(ST9)。
すなわち、ロータリポンプの制御回路64は、ロータリポンプ41をインバータ制御することで、真空チャンバー11内を所望とされる真空度に維持しつつ、真空チャンバー11内で必要な作業時間を提供し、この間ロータリポンプ41の消費電力を抑制して、省エネルギーを実現することができる。
【0041】
この場合、次の理由により、高真空センサ39が検出する真空度の適切な設定が重要である。
図6は、油拡散ポンプ31と補助ポンプとしてのロータリポンプ41との関係を示す対数グラフである。図において、縦軸は、排気流量を示し、上昇する程排気流量は増大する。横軸は、油拡散ポンプ31の排気部33に設定された、もしくは排気部33と同じ圧力を検出するように設定された圧力センサ38の出力であり、右へいく程圧力が高くなる。この油拡散ポンプ31の排気部33の圧力を油拡散ポンプ31の背圧と呼ぶ。真空排気装置10が動作されて、真空チャンバー11の真空引きを行う過程で、排気が行われると、背圧は図6のグラフ上、左へ移動することになる。
【0042】
図6において、油拡散ポンプ31の動作を示す動作特性曲線はDPで示されている。ここで、油拡散ポンプ31は、所定の背圧以下でないと、排気できなくなる。これを臨界背圧という。
また、図6において、RP−1はロータリポンプ41を、例えば、周波数60ヘルツで駆動した場合の動作特性曲線を示し、RP−2はロータリポンプ41を、例えば、周波数30ヘルツで駆動した場合の動作特性曲線を示している。
【0043】
油拡散ポンプ31とロータリポンプ41を同時に動作させていて、ロータリポンプ41を周波数60ヘルツで駆動した場合には、DPとRP−1の交点Bで運転され、その時の排気流量はQ1であり、油拡散ポンプ31の背圧は、P2である。この状態から排気が進行し、油拡散ポンプ31の背圧がP1となっても支障なく真空引きを続けることができる。
流量がQ1である時に、ロータリポンプ41の駆動を切り換えて、周波数30ヘルツで駆動した場合には、流量Q1とRP−2との交点Dに移動すると、油拡散ポンプ31の背圧は、P3となってしまい、臨界背圧を越えてしまい、油拡散ポンプ31は排気できなくなってしまう。
【0044】
このように、ロータリポンプ41の駆動周波数を低い周波数に変更することは単純に行うことができない。本実施形態では、図1の制御回路61は、後述するように、油拡散ポンプ31の動作特性曲線DPと、補助ポンプであるロータリポンプ41の駆動される周波数に応じた動作特性曲線RP−1,RP−2の情報もしくは、油拡散ポンプ31の動作特性曲線DPと、補助ポンプであるロータリポンプ41の駆動される周波数に応じた動作特性曲線RP−1,RP−2の交点であるB点やE点における流量Q1,Q2と、この流量Q1,Q2に対応した油拡散ポンプ31の背圧P2,P4を予めメモリ62内に用意しておき、高真空センサ39が、所定の真空度として、この背圧P2,P4のうち、例えば、P4を検出した場合に、ロータリポンプ41の駆動周波数を、対応する低い周波数に切り換えるようにしている。
尚、この実施形態では、この背圧の検出は、管路12内の高真空センサ39の検出値から推定するようにしているが、油拡散ポンプ31の排気部33に設定した圧力センサ38から知るようにしてもよい。
そして、真空チャンバー11内で、所定の作業が終了したら、本引き弁16を閉め(ST10)、次いで、リーク弁19を開いて真空引き作業を終了する(ST11)。
【0045】
次に、図4のST7における油拡散ポンプ31の運転方法の第1の実施形態について説明する。
図7は、油拡散ポンプ31の作動油34の温度を種々変更して運転した場合の排気速度について、真空チャンバー11内の到達圧力値を縦軸にとり、当該到達圧力値に至るまでの運転時間を横軸にとったデータに関して、本発明者等が求めたものである。
【0046】
各データは、図7に示されているように、作動油34の温度によって異なるが、その変化特性は、次の一般式により表すことができる。
f=Ae-kt +C(Cは飽和圧力)・・・・(1)式
ここで、図7のデータから判明したことは、油拡散ポンプ31の作動油の油温が高い方がkの値が大きく、初期排気量が大きいが、Cの定数が大きく、到達真空度が劣る。
また、油拡散ポンプ31の作動油の油温が低い方がkの値が小さく、初期排気量が小さいが、Cの定数も小さく、到達真空度が優れている。
【0047】
油拡散ポンプ31では、その作動油の油蒸気の噴出量は、ヒータ51への投入エネルギー(作動油34に伝達された熱量)と、単位質量当たりの蒸発量に比例して、ポンプ作用が高まると考えられている。
しかしながら、作動油の温度が高いと、図1において、図2で示される吸気部37から管路14,管路12を介して、真空チャンバー11内に拡散する成分も増えることが考えられる。このため、作動油の油蒸気の噴出量から、拡散による損失を引いたものが、実際に働くポンプ作用として利用できる。
【0048】
このような点から、目的とされる真空度や所要時間の条件により、作動油の最適な加熱条件を選択する必要がある。
図8は、図7で示した作動油温度に対応した多数のデータを理解の便宜のために2つのデータに整理したものである。
図において、データAは、油拡散ポンプ31を作動油の温度を図1の油拡散ポンプ制御装置63により摂氏310度になるように制御して運転したものである。データBは、油拡散ポンプ31を作動油の温度を図1の油拡散ポンプ制御装置63により摂氏250度になるように制御して運転したものである。
【0049】
データAは運転初期の圧力変化率が大きく、効率よく真空引きできるが、運転開始から9分程度で、データAとデータBの圧力変化率は逆転し、作動油の温度をデータAよりも低い摂氏250度としたデータBの方が圧力変化率が大きくなる。そして、それぞれの飽和圧力は、C1とC2で示されるように、データBのほうがはるかに低く、到達真空度において優れている。
【0050】
このようにして、本実施形態では、油拡散ポンプ31の作動油の温度を、通常の設定である摂氏300度程度の高い温度ではなく、予め取得した作動油温度毎に複数もしくは多数のデータ(図7参照)から選択し、より低い作動油温度で運転することにより、高い真空度と、省エネルギーを達成でき、しかも作動油の劣化を効果的に抑制することができる。
【0051】
かくして、本実施形態の真空排気装置10においては、油拡散ポンプ31の作動油の温度を、従来の摂氏307度から、上述の方法により選択したデータに基づく作動油温度として、例えば、摂氏250度を選択して運転することで、所定の稼働時間だけ通年で実施した場合、油拡散ポンプ31の使用電力量に関して、電気料金換算で、年間約67.6パーセント程度の省エネルギーを達成することができる。
また、図3で説明した断熱手段70を油拡散ポンプ31に採用することにより、所定の稼働時間だけ通年で実施した場合、油拡散ポンプ31の使用電力量に関して、電気料金換算で、年間約10.3パーセント程度の省エネルギーを達成することができる。
さらに、図5で説明したように、ロータリポンプ41の駆動周波数を低い周波数に切り換えて制御することにより、所定の稼働時間だけ通年で実施した場合、ロータリポンプ41の使用電力量に関して、電気料金換算で、年間約39.7パーセント程度の省エネルギーを達成することができる(切り換え後の周波数を30ヘルツで換算)。
そして、これら全体を実行することにより、所定の稼働時間だけ通年で実施した場合、真空排気装置10の使用電力量に関して、電気料金換算で、年間約59.4パーセント程度の省エネルギーを達成することができる。
【0052】
次に、図4のST7における油拡散ポンプ31の運転方法の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態に係る運転方法においても、図7で説明した作動油の温度に対応した多数のデータもしくは、これらのデータの一部である複数のデータが使用される。
すなわち、運転時間及び到達圧力値に関する前記複数の油温に対応した複数のデータである図7のデータを相互に比較し、運転開始時に図7の複数のデータのうち圧力変化率の最も大きなデータを選択して、そのデータによる作動油温で油拡散ポンプ31を運転し、以降の運転においては、当該選択した油温に対応したデータと他の油温に対応したデータとの間で、より圧力変化率が大きくなる時点で、当該圧力変化率が大きくなるデータに基づく作動油温に変更して、前記油拡散ポンプを運転する方法である。
【0053】
具体的には、概略次のような手法を採用する。図9のグラフは、図7で示した運転時間及び到達圧力値に関する前記複数の油温に対応した多数のデータから、説明の便宜のために、3つの作動油温に対応したデータを選んで示したものである。
直線で示すデータCは、図9のデータの中では最も高い作動油温として、例えば、摂氏310度に対応したデータである。鎖線で示すデータBは、次に高い油温である摂氏280度に対応したデータである。点線で示すデータCは、図9のデータの中では、最も低い油温である摂氏250度に対応したデータである。
【0054】
油拡散ポンプ31の運転開始時には、図1の制御装置60は、メモリ62内に格納されている図9のデータを参照して、運転初期の圧力変化率が最も大きなデータCを選択し、油拡散ポンプ制御装置63に指示を出し、油拡散ポンプ制御装置63は、ヒータ51に、作動油34を摂氏310度に加熱させるように制御する。
ここで、図1の制御装置60は、データCとデータBを比較して、運転開始であるT1時間から所定時間が経過したT2時間後には、データCとデータBの圧力変化率が逆転し(bのポイント)、データBの方が圧力変化率が大きくなるので、データBに対応した作動油温度である摂氏280度となるように、油拡散ポンプ制御装置63に指示を出し、油拡散ポンプ制御装置63は、ヒータ51に、作動油34を摂氏280度に加熱させるように制御する。
【0055】
同様にして、制御装置60は、データBとデータAを比較して、cのポイントでデータBとデータAの圧力変化率が逆転し、データAの方が圧力変化率が大きくなるので、cのポイントとなる時点もしくは、これが予想された時点である運転開始T1時間から所定時間が経過したT3時間後に、データAに対応した作動油温度である摂氏250度となるように、油拡散ポンプ制御装置63に指示を出し、油拡散ポンプ制御装置63は、ヒータ51に、作動油34を摂氏250度に加熱させるように制御する。
そして、図10は、このようにして、作動油温度を変更して油拡散ポンプを運転する場合のデータの一例を示すものである。
【0056】
かくして、本実施形態では、運転開始T1の時点からT2時間までは、データCに基づく作動油温摂氏310度で油拡散ポンプ31を運転して、大きな圧力降下速度CPを達成し、T2時間からT3時間までは、データBに基づく作動油温摂氏280度で油拡散ポンプ31を運転して、データBに基づく大きな圧力降下速度BPを達成し、T3時間からT4時間めでは、データAに基づく作動油温摂氏250度で油拡散ポンプ31を運転して、データAのもつ大きな飽和圧力である到達真空度を得ることができる。
【0057】
この場合、最も高い作動油温をもつデータCに基づいて運転した場合と比べて、矢印Dに示すように、きわめて大きな到達真空度の差を得ることができる。また、その到達真空度を得るためには、従来、データAに対応した作動油温で運転する必要があるが、その場合、当該到達真空度に達するのは、図9においてポイントaであるから、運転開始からT5時間必要となる。しかし、この実施形態では、ポイントdにおいて、これと同じ真空度を得ることができ、これに要する時間はT4時間で済むことになる。
【0058】
したがって、本実施形態によれば、従来よりも短い時間で、高い真空度を達成することができ、しかも、作動油温度を低減することで、エネルギー消費と作動油の劣化を効果的に抑制することができるものである。
尚、図9は、本実施形態の手法を説明するための概念的なグラフであり、油拡散ポンプ制御装置63の指示によりヒータ51が、作動油34の温度を変更して、実際の温度がこれに追従するのには、所定の時間が必要であるから、温度切り換えのタイミングであるT2,T3は、特定の油温に対応したあるデータと他の油温に対応したデータとの間で、実際に圧力変化率が大きくなる時点でなくても、制御装置60により図7のデータに基づいて、圧力変化率が大きくなることが予想される時点で、油拡散ポンプ制御装置63による作動油温の変更の制御がなされてもよい。
【0059】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、言及されない他の構成や手法と組み合わせることができる。
【0060】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、エネルギー消費を効率的に抑制させつつ、所望の真空度を得ることができ、作動油の劣化を抑制することができる油拡散ポンプの運転方法と、油拡散ポンプの制御装置、及び油拡散ポンプを使用した真空排気装置とその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる真空排気装置の概略構成を示す系統図。
【図2】図1の真空排気装置に用いる油拡散ポンプの構成を示す概略断面図。
【図3】図2の油拡散ポンプに着脱される断熱手段の構成例を示す概略斜視図。
【図4】図1の真空排気装置の動作の概略を示すフローチャート。
【図5】図4のフローチャートに対応したタイミングチャート。
【図6】図1の真空排気装置に用いる油拡散ポンプとロータリポンプの動作特性曲線と油拡散ポンプの臨界背圧の関係を示す図。
【図7】本発明の実施形態における油拡散ポンプの使用方法に用いるデータを示すグラフ。
【図8】図7のデータを用いた油拡散ポンプの使用方法の第1の実施形態を説明するためのグラフ。
【図9】図7のデータを用いた油拡散ポンプの使用方法の第2の実施形態を説明するためのグラフ。
【図10】図9の油拡散ポンプの使用方法に対応したデータを示すグラフ。
【符号の説明】
10 真空排気装置
11 真空チャンバー
31 油拡散ポンプ
41 ロータリポンプ
60 制御装置

Claims (12)

  1. 真空チャンバーに接続されて、チャンバー内を真空引きする油拡散ポンプの運転方法において、
    前記油拡散ポンプを作動させた場合の作動油の油温に対応して、前記チャンバー内の到達圧力値及び当該到達圧力値に到達するための運転時間に関するデータを、対応する複数の油温についての複数のデータとして予め求めておき、
    目標とする真空度と到達時間条件に対応して、前記複数のデータから適合するデータを求めて、当該適合するデータに対応する作動油温度で運転するようにした
    ことを特徴とする、油拡散ポンプの運転方法。
  2. 運転時間及び到達圧力値に関する前記複数の油温に対応した複数のデータを相互に比較し、運転開始時に前記複数のデータのうち圧力変化率の最も大きなデータを選択して、当該選択したデータによる作動油温で油拡散ポンプを運転し、以降の運転においては、当該選択した油温に対応したデータと他の油温に対応したデータとの間で、より圧力変化率が大きくなる時点で、当該圧力変化率が大きくなるデータに基づく作動油温に変更して、前記油拡散ポンプを運転することを特徴とする、請求項1に記載の油拡散ポンプの運転方法。
  3. 真空チャンバーと、この真空チャンバーに接続され、チャンバー内を真空引きする油拡散ポンプと、この油拡散ポンプに接続されたロータリポンプと、少なくとも、前記油拡散ポンプの作動油温と、前記ロータリポンプの駆動周波数とを制御する制御手段を備える真空排気装置の制御方法であって、
    前記油拡散ポンプを作動させた場合の作動油の油温に対応して、前記チャンバー内の到達圧力値及び当該到達圧力値に到達するための運転時間に関するデータを、対応する複数の油温についての複数のデータとして予め求めておき、
    目標とする真空度と到達時間条件に対応して、前記複数のデータから適合するデータを求めて、当該適合するデータに対応する作動油温度で運転するようにした
    ことを特徴とする、真空排気装置の制御方法。
  4. 到達圧力値及び運転時間に関する前記複数の油温に対応した複数のデータを相互に比較し、運転開始時に前記複数のデータのうち圧力変化率の最も大きなデータを選択して、当該選択したデータによる作動油温で油拡散ポンプを運転し、以降の運転においては、当該選択した油温に対応したデータと、他の油温に対応したデータとの間で、より圧力変化率が大きくなる時点で、当該圧力変化率が大きくなるデータに基づく作動油温に変更して、前記油拡散ポンプを運転することを特徴とする、請求項3に記載の真空排気装置の制御方法。
  5. 前記チャンバー内が高い真空度に達したら、前記ロータリポンプの駆動周波数を高い周波数から低い周波数に切り換えることを特徴とする、請求項3または4に記載の真空排気装置の制御方法。
  6. 前記油拡散ポンプの排気部の圧力を検出する背圧検出手段により、油拡散ポンプの動作特性曲線と、切り換え後の周波数によるロータリポンプの動作特性曲線との交点に対応した圧力であって、前記油拡散ポンプの臨界背圧よりもより高真空であることを検出することにより、前記ロータリポンプの駆動周波数を前記低い周波数に切り換えることを特徴とする、請求項5に記載の真空排気装置の制御方法。
  7. 真空チャンバーに接続された油拡散ポンプの作動油温を自動制御する制御装置であって、
    この制御装置が、
    前記油拡散ポンプを作動させた場合の作動油の油温に対応して、前記チャンバー内の到達圧力値及び当該到達圧力値に到達するための運転時間に関するデータを、対応する複数の油温についての複数のデータを取得し、
    目標とする真空度と到達時間条件に対応して、前記複数のデータから適合するデータを求めて、当該適合するデータに対応する作動油温度で運転するようにした
    ことを特徴とする、油拡散ポンプの制御装置。
  8. 運転時間及び到達圧力値に関する前記複数の油温に対応した複数のデータを相互に比較し、運転開始時に前記複数のデータのうち圧力変化率の最も大きなデータを選択して、当該選択したデータによる作動油温で油拡散ポンプを運転し、以降の運転においては、当該選択した油温に対応したデータと他の油温に対応したデータとの間で、より圧力変化率が大きくなる時点で、当該圧力変化率が大きくなるデータに基づく作動油温に変更して、前記油拡散ポンプを運転することを特徴とする、請求項7に記載の油拡散ポンプの制御装置。
  9. 真空チャンバーと、この真空チャンバーに接続され、チャンバー内を真空引きする油拡散ポンプと、この油拡散ポンプに接続されたロータリポンプと、少なくとも、前記油拡散ポンプの作動油温と、前記ロータリポンプの駆動周波数とを制御する制御手段を備える真空排気装置であって、
    前記制御手段が、
    前記油拡散ポンプを作動させた場合の作動油の油温に対応して、前記チャンバー内の到達圧力値及び当該到達圧力値に到達するための運転時間に関するデータを、対応する複数の油温についての複数のデータとして記憶した記憶手段を備えており、
    目標とする真空度と到達時間条件に対応して、前記複数のデータから適合するデータを求めて、当該適合するデータに対応する作動油温度で運転する構成とした
    ことを特徴とする、真空排気装置。
  10. 前記制御手段が、到達圧力値及び運転時間に関する前記複数の油温に対応した複数のデータを相互に比較し、運転開始時に前記複数のデータのうち圧力変化率の最も大きなデータを選択して、当該選択したデータによる作動油温で油拡散ポンプを運転し、以降の運転においては、当該選択した油温に対応したデータと、他の油温に対応したデータとの間で、より圧力変化率が大きくなる時点で、当該圧力変化率が大きくなるデータに基づく作動油温に変更して、前記油拡散ポンプを運転する構成としたことを特徴とする、請求項9に記載の真空排気装置。
  11. 前記チャンバー内が高い真空度に達したら、前記ロータリポンプの駆動周波数を高い周波数から低い周波数に切り換える構成としたことを特徴とする、請求項9または10に記載の真空排気装置。
  12. 前記油拡散ポンプの排気部の圧力を検出する背圧検出手段により、油拡散ポンプの動作特性曲線と、切り換え後の周波数によるロータリポンプの動作特性曲線との交点に対応した圧力であって、前記油拡散ポンプの臨界背圧よりもより高真空であることを検出することにより、前記ロータリポンプの駆動周波数を前記低い周波数に切り換える構成としたことを特徴とする、請求項11に記載の真空排気装置。
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