JP3978703B2 - ハイブリッド車両 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハイブリッド自動車において、ノッキング検出時に点火時期をリタードさせると共に、不足トルク分をモータによりアシストするもの(特開平9−140006号公報や特開平10−23609号公報)が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ハイブリッド自動車では、エンジンの脈動トルクによるトルク変動や自動変速機の変速時のトルクショックをモータの駆動トルクにより吸収できるため、エンジンをトルク変動が大きい低回転高負荷領域で運転できるのであるが、高温又は低温環境下でバッテリ電力が低下したり、バッテリの充電量が少ないとモータからトルク変動に必要なトルクを出力できず、エンジンのトルク変動を抑制できないという不都合がある。特に、バッテリは小型化される程使用環境に左右され易く、使用方法が難しくなる。そこで、エンジンのトルク変動をモータにより吸収できる領域まで低下させる必要がある。
【0004】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされ、その目的は、エンジンのトルク変動吸収に必要なトルクをモータから出力できない時でもエンジンのトルク変動を抑制してバッテリ電力の低下を防止できるハイブリッド車両を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明のハイブリッド車両は、以下の構成を備える。即ち、
エンジンと、該エンジンに駆動力を伝達可能なモータにより車輪を駆動するハイブリッド車両において、前記エンジンのトルク変動を吸収するように該モータを制御するモータ制御手段と、前記エンジンのトルク変動を抑制するように該エンジンを制御するエンジン制御手段と、前記モータに電力を供給する電源と、を備え、前記エンジン及び前記モータが駆動されている運転領域において前記電源から供給される電力の関連値が所定値以下のとき前記モータ制御手段によりエンジンのトルク変動を吸収できるように、前記エンジン制御手段により前記エンジンのトルク変動を抑制して前記モータにより吸収できる状態まで前記エンジンのトルク変動を低下させ、前記エンジンのみが駆動され前記モータが駆動されていない運転領域においては、前記電源から供給される電力の関連値が所定値以下のとき前記モータ制御手段によりエンジンのトルク変動を吸収できるように、前記エンジンによるトルク量を予め設定したトルク量よりも減少方向に補正して前記モータのトルク量を設定できるようにしておいて、前記エンジン制御手段により前記エンジンのトルク変動を抑制して前記モータにより吸収できる状態まで前記エンジンのトルク変動を低下させ、前記電力の関連値が小さいほど前記エンジン制御手段によるエンジンのトルク変動の抑制を大きくする
【0007】
また、好ましくは、前記エンジン制御手段は、前記モータから出力されるトルクに異常が発生した時に前記エンジンのトルク変動を抑制する。
【0008】
また、好ましくは、前記エンジン制御手段は、エンジン燃焼を緩慢にすることにより前記エンジンのトルク変動を抑制する。
【0009】
また、好ましくは、前記エンジン制御手段は、前記爆発時期を遅角させることにより前記エンジンのトルク変動を抑制する。
【0010】
また、好ましくは、前記エンジンは排気ガスの一部を吸気通路に還流させる排気還流手段を備え、前記エンジン制御手段は前記排気還流率の関連値を増加することにより前記エンジンのトルク変動を抑制する。
【0011】
また、好ましくは、前記エンジン制御手段は、前記エンジンの運転状態を高回転側に移行させる。
【0012】
また、好ましくは、前記エンジンからの駆動力は変速機を介して車輪に伝達され、前記エンジン制御手段は該変速機の変速比が大きくなるように補正することにより前記エンジンのトルク変動を抑制する。
【0013】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、エンジン制御手段は、エンジン及びモータが駆動されている運転領域において、モータによる出力トルクが所定値以下ならば、エンジンのトルク変動をモータにより吸収できる状態まで低下させることにより、エンジンのトルク変動吸収に必要なトルクをモータから出力できない時でもエンジンのトルク変動を抑制してバッテリ電力の低下を防止できる。
また、電源から供給される電力の関連値が所定値以下ならばエンジンのトルク変動を抑制することにより、エンジンのトルク変動吸収に必要なトルクをモータから出力できない時でもエンジンのトルク変動を抑制してバッテリ電力の低下を防止できる。
【0015】
請求項の発明によれば、エンジン制御手段は、モータから出力されるトルクに異常が発生した時にエンジンのトルク変動を抑制することにより、エンジンのトルク変動吸収に必要なトルクをモータから出力できない時でもエンジンのトルク変動を抑制してバッテリ電力の低下を防止できる。
【0016】
請求項の発明によれば、エンジン制御手段は、エンジン燃焼を緩慢にすることによりエンジンのトルク変動を抑制することにより、エンジンのトルク変動を抑制できる。
【0017】
請求項の発明によれば、エンジン制御手段は、爆発時期を遅角させることによりエンジンのトルク変動を抑制することにより、エンジンのトルク変動抑制時の応答性が良くなる。
【0018】
請求項の発明によれば、エンジンは排気ガスの一部を吸気通路に還流させる排気還流手段を備え、エンジン制御手段は排気還流率の関連値を増加することによりエンジンのトルク変動を抑制することにより、トルク変動抑制時のパワーロスを低減し、エミッションの悪化を防止できる。
【0019】
請求項の発明によれば、エンジン制御手段は、エンジンの運転状態を高回転側に移行させることにより、トルク変動抑制時のエミッションの悪化を防止できる。
【0020】
請求項の発明によれば、エンジンからの駆動力は変速機を介して車輪に伝達され、エンジン制御手段は変速機の変速比が大きくなるように補正することによりエンジンのトルク変動を抑制するので、エンジン回転数を高めてトルク変動を抑制できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
[ハイブリッド自動車の機械的構成]
図1は、本実施形態のハイブリッド自動車の機械的構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のハイブリッド自動車は、駆動力を発生するためのパワーユニットとして、鉛蓄電池やNi−H2電池が使用されるバッテリ3から供給される電力により駆動される走行用モータ2とガソリン等の液体燃料の爆発力により駆動されるエンジン1とを併用して走行し、後述する車両の走行状態に応じて、走行用モータ2のみによる走行、エンジンのみによる走行、或いは走行用モータ2及び/又は発電機4とエンジン1の双方による走行とが実現される。
【0023】
エンジン1はトルクコンバータ5を介してクラッチ6の締結により自動変速機7に駆動力を伝達する。自動変速機7は、エンジン1から入力された駆動力を走行状態に応じて(或いは運転者の操作により)所定のトルク及び回転数に変換して、ギヤトレイン11及び差動機構8を介して駆動輪9、10に伝達する。また、エンジン1はバッテリ3を充電するために発電機4を駆動する。
【0024】
走行用モータ2はバッテリ3から供給される電力により駆動され、ギアトレイン11を介して駆動輪9、10に駆動力を伝達する。
【0025】
発電機4は、通常時はエンジン1により駆動されてバッテリを充電するが、エンジン始動時にバッテリ3から電力が供給されてエンジンをクランキングさせたり、急加速時にエンジン1を介して車輪9、10に駆動力を伝達可能となっている。
【0026】
エンジン1は、例えば直噴式や可変バルブタイミング式の高燃費ガソリンエンジンが搭載され、走行用モータ2は例えば最大出力20KWのIPM同期式モータが使用され、発電機4は例えば最大出力10KWのものが使用され、バッテリ3は例えば最大出力30KWのニッケル水素電池が搭載される。
【0027】
統括制御ECU100はCPU、ROM、RAM、インターフェース回路及びインバータ回路等からなり、エンジン1の点火時期や燃料噴射量等をコントロールすると共に、走行用モータ2の出力トルクや回転数等をエンジン1のトルク変動や自動変速機7の変速ショックを吸収するようにコントロールする。また、統括制御ECU100は、エンジン1の作動時に発電機4にて発電された電力を、走行用モータ2に供給したり、バッテリ3に充電させるように制御する。
【0028】
次に、下記表1を参照して主要な状態下におけるエンジン、発電機、走行用モータ及びバッテリの制御について説明する。尚、表1において「力行」とは駆動トルクを出力している状態を意味する。
【0029】
【表1】
Figure 0003978703
[停車時]
表1に示すように、停車時では、エンジン1、発電機4、走行用モータ2は停止される。但し、エンジンは冷間時とバッテリ蓄電量低下時に運転され、発電機4はエンジン運転中は発電するために駆動されてバッテリ3を充電する。
[緩発進時]
表1に示すように、緩発進時では、エンジン1、発電機4は停止され、走行用モータ2が駆動トルクを出力する。
[急発進時]
表1に示すように、急発進時では、発電機4と走行用モータ2が駆動トルクを出力し、エンジン1は始動後高出力で運転される。バッテリ3は発電機4と走行用モータ2とに放電する。
[エンジン始動時]
表1に示すように、エンジン始動時では、発電機4がエンジン1をクランキングするために駆動トルクを出力してエンジン1が起動される。バッテリ3は発電機4に放電する。
[定常低負荷走行時]
表1に示すように、定常低負荷走行時では、エンジン1、発電機4は停止され、走行用モータ2が駆動トルクを出力する。バッテリ3は走行用モータ2に放電する。但し、エンジン1は冷間時とバッテリ蓄電量低下時に運転され、発電機4はエンジン運転中は発電するために駆動されてバッテリ3を充電する。
[定常中負荷走行時]
表1に示すように、定常中負荷走行時では、走行用モータ2は無出力とされ、エンジン1は高効率領域で運転され、バッテリ3は走行用モータ2には放電せず、発電機4はバッテリ3を充電する。
[定常高負荷走行時]
表1に示すように、定常高負荷走行時では、エンジン1は高出力運転され、発電機4と走行用モータ2が駆動トルクを出力する。バッテリ3は発電機4と走行用モータ2に放電する。但し、発電機4はバッテリ蓄電量低下時はバッテリ3を充電する。
[急加速時]
表1に示すように、急加速時では、エンジン1は高出力運転され、発電機4と走行用モータ2が走行のために駆動トルクを出力する。バッテリ3は発電機4と走行用モータ2に放電する。
[減速時(回生制動時)]
表1に示すように、減速時では、エンジン1及び発電機4は停止され、走行用モータ2は発電機として電力を回生してバッテリ3を充電する。
【0030】
次に、図2〜7を参照して本実施形態のハイブリッド自動車の走行状態に応じた駆動力の伝達形態について説明する。
[発進&低速走行時]
図2に示すように、発進及び低速走行時には、統括制御ECU100は走行用モータ2のみを駆動させ、この走行用モータ2による駆動力をギアトレイン11を介して駆動輪9、10に伝達する。また、発進後の低速走行時も走行用モータ2による走行となる。
[加速時]
図3に示すように、加速時には、統括制御ECU100はエンジン1と走行用モータ2の双方を駆動させ、エンジン1と走行用モータ2による駆動力を併せて駆動輪9、10に伝達する。
[定常走行時]
図4に示すように、定常走行時には、統括制御ECU100は、エンジン1のみを駆動させ、エンジン1からギアトレイン11を介して駆動輪9、10に駆動力を伝達する。定常走行時とは、エンジン回転数が2000〜3000rpm程度の最も高効率となる領域での走行である。
[減速時]
図5に示すように、減速時には、クラッチ6を解放して、駆動輪9、10の駆動力がギアトレイン11を介して走行用モータ2に回生され、走行用モータ2が駆動源となってバッテリ3が充電される。
[定常走行時&充電時]
図6に示すように、定常走行&充電時には、クラッチ6を締結して、エンジン1からギアトレイン11を介して駆動輪9、10に駆動力が伝達されると共に、エンジン1は発電機4を駆動してバッテリ3を充電する。
[充電時]
図7に示すように、充電時には、クラッチ6を解放してエンジン1から自動変速機7に駆動力が伝達されないようにし、エンジン1は発電機4を駆動してバッテリ3を充電する。
[通常時]
図8に示すように、通常時、即ちバッテリ3が発電機4を駆動するのに十分な蓄電量を有する時には、統括制御ECU100はバッテリ3から発電機4へ電力を供給し、発電機4がエンジン1をクランキングする。
[ハイブリッド自動車の電気的構成]
図9は、本実施形態のハイブリッド電気自動車の電気的構成を示すブロック図である。
【0031】
図9に示すように、統括制御ECU100には、車速を検出する車速センサ101からの信号、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ102からの信号、エンジン1に供給される電圧センサ103からの信号、エンジン1のスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ104からの信号、ガソリン残量センサ105からの信号、バッテリ3の蓄電残量を検出する蓄電残量センサ106からの信号、セレクトレバーによるシフトレンジを検出するシフトレンジセンサ107からの信号、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ108からの信号、エンジンのクランク角度を検出するクランク角度センサ109からの信号や、その他センサとして自動変速機4の作動油温度を検出する油温センサからの信号等を入力し、エンジン1のスロットルバルブ110、インジェクタ111、ディストリビュータ112及びEGRバルブ113により点火時期や燃料噴射量の制御等を行うと共に、走行用モータ2への電力供給量や発電機4への充電量や電力供給量の制御等を行う。また、統括制御ECU100は、上記各種センサ信号から車両の運転状態に関するデータ、車速、エンジン回転数、電圧、ガソリン残量、バッテリの蓄電残量、シフトレンジ、電力供給系統等をLCD等の表示部13を介して表示させる。
[ハイブリッド自動車の駆動制御]
次に、本実施形態のハイブリッド自動車の駆動制御ついて説明する。
【0032】
図10は、本実施形態の統括制御ECU100による駆動制御を示すフローチャートである。図11は、バッテリ電力VBと点火遅角量θgとの関係を示すマップである。図12はバッテリ電力VBとトルク補正量Tθgとの関係を示すマップである。
【0033】
図10に示すように、ステップS2では、括制御ECU100は乗員によりスタートスイッチがオンされるのを待ち、スタートスイッチがオンされたならば(ステップS2でYES)、ステップS4で図9に示す各センサからデータを入力する。ステップS6では、アクセル開度αと実車速Vとから、不図示の変速マップにより目標トルクTRを設定する。ステップS8では、表1に示す基本運転モードに設定すると共に、エンジン1の目標トルク量ETB、走行用モータ2の目標トルク量MTB、発電機4の目標トルク量GTBを演算する。尚、基本運転モードでは、エンジン1の目標トルク量ETBが目標トルクTRより小さい場合、走行用モータ2の目標トルク量MTBを加算し(ETB+MTB)、更に目標トルクTRが大きい時には発電機4の目標トルク量GTBを加算する(ETB+MTB+GTB)。また、走行用モータ2と発電機4とを効率に応じて選択して駆動してもよい。
【0034】
ステップS10では、エンジン始動条件が成立したか否かを判定する。但し、ステップS10でのエンジン始動条件とは、エンジンが車輪を駆動するためにトルク出力する時であり、車速零でバッテリ3の蓄電量が不足している時のエンジン始動条件を除く。ステップS10でエンジン始動条件が成立したならば(ステップS10でYES)、ステップS12に進み、トルク変動補償領域か否かを判定する。ステップS12でトルク変動補償領域ならば(ステップS12でYES)、ステップS14に進み、トルク変動補償領域でないならば(ステップS12でNO)、ステップS32に進む。
【0035】
一方、ステップS10でエンジン始動条件が不成立ならば(ステップS10でNO)、ステップS11に進んで、走行用モータ2の基本制御量MTを演算し、その後ステップS34に進む。
【0036】
続いて、ステップS14で走行用モータ2の目標トルク量MTBが設定されていれば(ステップS14でYES)、走行用モータ2が駆動されるので、ステップS20に進み、トルク変動補償量TMを演算する。
【0037】
上記トルク補償領域では、エンジンの脈動トルクと逆位相の駆動トルクをモータから出力してトルク変動を抑制したり、自動変速機7の変速時のトルクショックを抑えるようにモータから駆動トルクを出力する。
【0038】
一方、ステップS14で走行用モータ2の目標トルク量MTBが設定されていなければ(ステップS14でNO)、走行用モータ2は駆動されないので、ステップS16でエンジン1の目標トルク量ETBを減少方向に補正して(ETB←ETB−a)、ステップS18で走行用モータ2の目標トルク量MTBを設定し(MTB←b)、ステップS20に進む。
【0039】
ステップS22では、バッテリ蓄電量VBが所定値VB0を下回るか否かを判定する。ステップS22でバッテリ蓄電量VBが所定値VB0を下回るならば(ステップS22でYES)、ステップS24に進み、バッテリ蓄電量VBが所定値VB0以上ならば(ステップS22でNO)、後述するステップS34に進む。
【0040】
ステップS24では図11のマップAから点火遅角量θgを設定し、ステップS26では図12のマップBから点火遅角量θgに応じたトルク補正量Tθgを設定する。
【0041】
ステップS28では、ステップS20で設定されたトルク変動補償量TMからトルク補正量Tθgを減算して最終的なトルク変動補償量TMを設定する(TM←TM−Tθg)。ステップS30では、ステップS8で設定された走行用モータ2の目標トルク量MTBにトルク変動補償量TMを加算して最終的な目標トルク量MTを設定する(MT←MTB+TM)。
【0042】
ステップS32では、上記ステップで演算された各制御量ET、MT、GTに基づいてエンジン1、走行用モータ2或いは発電機4を駆動する。
【0043】
更に、ステップS34では、バッテリ3をリフレッシュ中か否かを判定する。このバッテリのリフレッシュは、複数のセル間の電圧バラツキが大きくなった時に、バッテリを放電させてそのバラツキを抑えるものである。
【0044】
ステップS34でバッテリのリフレッシュ中ならば(ステップS34でYES)、ステップS24に進み、バッテリのリフレッシュ中でないならば(ステップS34でNO)、ステップS36に進む。
【0045】
ステップS36では、インバータ温度が所定温度以上か否かを判定する。ステップS36でインバータ温度が所定温度以上ならば(ステップS36でYES)、インバータが異常になる可能性があるので、ステップS24に進み、インバータ温度が所定温度を下回るならば(ステップS36でNO)、ステップS38でバッテリ温度が所定温度以上又は以下か否かを判定する。ステップS38でバッテリ温度が所定温度以上又は以下ならば(ステップS38でYES)、バッテリ電圧が補償できない可能性が高いので、ステップS24に進み、バッテリ温度が所定温度以上又は以下でないならば(ステップS38でNO)、ステップS40で、ステップS8で設定された走行用モータ2の目標トルク量MTBにステップS20で設定されたトルク変動補償量TMを加算して最終的な目標トルク量MTを設定する(MT←MTB+TM)。しかる後に、ステップS32に進む。
【0046】
尚、上記ステップS24の別実施形態として、例えば図13に示すマップCからEGR補正量EGCを設定し、このEGR補正量EGCを用いて最終的なトルク変動補償量TMを設定したり、変速段を1段低速側にして変速比を大きくしてエンジン回転数を上昇させてもよい。
【0047】
上記ハイブリッド制御によれば、バッテリ電力VBが低い時、バッテリのリフレッシュ時、インバータの高温時、バッテリの高温又は低温時にモータからトルク変動に必要なトルクを出力できず、エンジンのトルク変動を抑制できない場合があるため、エンジンのトルク変動をモータにより吸収できる領域まで低下させてモータの出力トルクを補正している。これにより、エンジンのトルク変動吸収に必要なトルクをモータから出力できない時でもエンジンのトルク変動を抑制してバッテリ電力の低下を防止できる。
[ハイブリッド自動車のエンジン制御]
次に、本実施形態のハイブリッド自動車のエンジン制御ついて説明する。
【0048】
図14、15は、本実施形態の統括制御ECU100によるエンジン制御を示すフローチャートである。
【0049】
尚、本フローチャートはエンジン1のクランク角度毎に実行される。
【0050】
図14、15に示すように、ステップS52では表1に示す基本運転モードに応じてエンジン始動条件が成立したか否か判定する。ステップS52でエンジン始動条件が成立したならば(ステップS52でYES)、ステップS54に進み、クランキング制御を実行する。また、ステップS52でエンジン始動条件が不成立、つまりエンジン停止条件が成立したならば(ステップS52でNO)、ステップS55に進み、エンジンを停止させる。
【0051】
ステップS56ではエンジン始動が完了するまでクランキング制御を実行する。ステップS58では、括制御ECU100は図9に示す各センサからデータを入力する。ステップS60では、図10のステップS8で設定されたエンジン1の目標トルク量ETBを読み込む。ステップS62では、走行用モータ2の制御量ETと車速Vから変速段を演算し、変速段が決まると車速Vからエンジン回転数Neが決まるので、エンジン回転数Neに対するエンジン1の制御量ETから基本スロットル開度αB、基本燃料噴射量TB、基本点火時期θB及び基本EGR率EGBを演算する。
【0052】
ステップS64では、スロットルバルブ及び自動変速機のバルブアクチュエータを駆動してステップS62で演算されたスロットル開度αBと変速段をセットする。ステップS66では基本EGR率EGBの補正量EGCを演算する。ステップS68では、基本EGR率EGBに補正量EGCを加算してEGR制御量EGTを演算する(EGT=EGB+EGC)。ステップS70では、ステップS68で演算されたEGR制御量EGTによりEGRバルブを駆動する。
【0053】
図18のステップS72では、酸素濃度OXが所定値OX1以上か否かを判定することにより空燃比の酸素フィードバック制御を実行する。即ち、ステップS72で酸素濃度OXが所定値OX1以上ならば(ステップS72でYES)、空燃比がリッチなのでステップS74でフィードバック補正量TCから所定値aを減算して燃料噴射量を減量方向に補正する(TC→TC−a)。また、ステップS72で酸素濃度OXが所定値OX1を下回るならば(ステップS72でNO)、空燃比がリーンなのでステップS74でフィードバック補正量TCに所定値aを加算して燃料噴射量を増加方向に補正する(TC→TC+a)。
【0054】
ステップS76では、基本燃料噴射量TBにフィードバック補正量TCを加算してトータル燃料噴射量TTを演算する(TT=TB+TC)。ステップS78では基本点火時期θBの補正量θCを演算する。ステップS80では、基本点火時期θBに補正量θCを加算してトータル点火時期θTを演算する(θT=θB+θC)。
【0055】
ステップS82で燃料噴射時期になった時点で、ステップS84でインジェクタにより燃料噴射を実行する。ステップS86で燃料噴射時期になった時点で、ステップS84でインジェクタにより燃料噴射を実行する。ステップS86で点火時期になった時点で、ステップS88でディストリビュータにより点火を実行する。
【0056】
尚、エンジン側でトルク変動を抑制するためには、点火時期の遅角、EGR率の増加、空燃比のフィードバック制御の他に、燃料噴射時期の遅延、分割噴射、等の方法も適用できる。分割噴射は1サイクル内で少なくとも2回燃料を噴射するものである。
【0057】
上記エンジン制御によれば、バッテリ電力VBが低い時、バッテリのリフレッシュ時、インバータの高温時、バッテリの高温又は低温時においてモータからトルク変動に必要なトルクを出力できない場合に、点火時期の遅角、EGR率の増加、空燃比のフィードバック制御により、エンジン燃焼を緩慢にしてエンジンのトルク変動をモータにより吸収できる領域まで低下させるので、エンジンのトルク変動吸収に必要なトルクをモータから出力できない時でもエンジンのトルク変動を抑制してバッテリ電力の低下を防止できる。
[ハイブリッド自動車のモータ制御]
次に、本実施形態のハイブリッド自動車のモータ制御ついて説明する。
【0058】
図16は、本実施形態の統括制御ECU100によるモータ制御を示すフローチャートである。
【0059】
図16に示すように、ステップS92では表1に示す基本運転モードに応じてモータ駆動条件が成立したか否か判定する。ステップS92でモータ駆動条件が成立したならば(ステップS92でYES)、ステップS94に進み、図10のステップS11、S30で設定された走行用モータ2の制御量MTBを読み込む。また、ステップS95でモータ駆動条件が不成立、つまりモータ停止条件が成立したならば(ステップS92でNO)、ステップS95に進み、走行用モータ2を停止させる。
【0060】
ステップS96では制御量MTから走行用モータ2に出力する制御パルス幅を設定し、ステップS98で走行用モータ2に出力する。
[ハイブリッド自動車の発電機制御]
次に、本実施形態のハイブリッド自動車の発電機制御ついて説明する。
【0061】
図17は、本実施形態の統括制御ECU100による発電機制御を示すフローチャートである。
【0062】
図17に示すように、ステップS102では表1に示す基本運転モードに応じて発電機駆動条件が成立したか否か判定する。ステップS102で発電機駆動条件が成立したならば(ステップS102でYES)、ステップS104に進み、図8で設定された発電機4の制御量GTBを読み込む。また、ステップS102で発電機駆動条件が不成立、つまり発電機停止条件が成立したならば(ステップS102でNO)、ステップS103に進み、発電機4を停止させる。
【0063】
ステップS106では制御量GTBから発電機4に出力する制御パルス幅を設定し、ステップS108で発電機4に出力する。
【0064】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0065】
上記エンジンはガソリン以外にディーゼルエンジンを含む。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態のハイブリッド自動車の機械的構成を示すブロック図である。
【図2】 本実施形態のハイブリッド自動車の発進&低速走行時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図3】 本実施形態のハイブリッド自動車の加速時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図4】 本実施形態のハイブリッド自動車の定常走行時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図5】 本実施形態のハイブリッド自動車の減速時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図6】 本実施形態のハイブリッド自動車の定常走行&充電時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図7】 本実施形態のハイブリッド自動車の充電時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図8】 本実施形態のハイブリッド自動車のエンジン始動時の駆動力の伝達形態を説明する図である。
【図9】 本実施形態のハイブリッド自動車の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】 本実施形態の統括制御ECU100による駆動制御を示すフローチャートである。
【図11】 バッテリ電力VBと点火遅角量θgとの関係を示す図である。
【図12】 点火遅角量θgとトルク補正量Tθgとの関係を示す図である。
【図13】 バッテリ電力VBとEGR補正量EGCとの関係を示す図である。
【図14】 本実施形態の統括制御ECU100によるエンジン制御を示すフローチャートである。
【図15】 本実施形態の統括制御ECU100によるエンジン制御を示すフローチャートである。
【図16】 本実施形態の統括制御ECU100によるモータ制御を示すフローチャートである。
【図17】 本実施形態の統括制御ECU100による発電機制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
2 走行用モータ
3 バッテリ
4 発電機

Claims (7)

  1. エンジンと、該エンジンに駆動力を伝達可能なモータにより車輪を駆動するハイブリッド車両において、
    前記エンジンのトルク変動を吸収するように該モータを制御するモータ制御手段と、
    前記エンジンのトルク変動を抑制するように該エンジンを制御するエンジン制御手段と
    前記モータに電力を供給する電源と、を備え、
    前記エンジン及び前記モータが駆動されている運転領域において前記電源から供給される電力の関連値が所定値以下のとき前記モータ制御手段によりエンジンのトルク変動を吸収できるように、前記エンジン制御手段により前記エンジンのトルク変動を抑制して前記モータにより吸収できる状態まで前記エンジンのトルク変動を低下させ、
    前記エンジンのみが駆動され前記モータが駆動されていない運転領域においては、前記電源から供給される電力の関連値が所定値以下のとき前記モータ制御手段によりエンジンのトルク変動を吸収できるように、前記エンジンによるトルク量を予め設定したトルク量よりも減少方向に補正して前記モータのトルク量を設定できるようにしておいて、前記エンジン制御手段により前記エンジンのトルク変動を抑制して前記モータにより吸収できる状態まで前記エンジンのトルク変動を低下させ、
    前記電力の関連値が小さいほど前記エンジン制御手段によるエンジンのトルク変動の抑制を大きくすることを特徴とするハイブリッド車両。
  2. 前記エンジン制御手段は、前記モータから出力されるトルクに異常が発生した時に前記エンジンのトルク変動を抑制することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
  3. 前記エンジン制御手段は、エンジン燃焼を緩慢にすることにより前記エンジンのトルク変動を抑制することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
  4. 前記エンジン制御手段は、前記爆発時期を遅角させることにより前記エンジンのトルク変動を抑制することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
  5. 前記エンジンは排気ガスの一部を吸気通路に還流させる排気還流手段を備え、前記エンジン制御手段は前記排気還流率の関連値を増加することにより前記エンジンのトルク変動を抑制することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
  6. 前記エンジン制御手段は、前記エンジンの運転状態を高回転側に移行させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
  7. 前記エンジンからの駆動力は変速機を介して車輪に伝達され、前記エンジン制御手段は該変速機の変速比が大きくなるように補正することにより前記エンジンのトルク変動を抑制することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
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