JP3978313B2 - 塗膜形成方法及び自動車車体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、親水化処理剤を用いる塗膜形成方法に関し、更に詳しくは、親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材上に親水化処理剤を塗布し乾燥する工程を含む塗膜形成方法、及び、上記塗膜形成方法により形成されてなる塗膜を有する自動車車体に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の上塗り塗料は、塗料としての最低限の性能である貯蔵安定性のほか、自動車車体塗装用塗膜の最外層を構成するものであることから、美粧性、耐候性等を基本性能として有することが要求されている。また、煤煙や砂塵等の汚染物質が塗膜に付着した場合の汚れの落ちやすさ、即ち、耐汚染性が要求されるようになってきた。
【0003】
特開平10−140077号公報には、酸エポキシ硬化系の塗料にテトラメチルシリケート及び/又はテトラエチルシリケートの縮合度2〜10の低縮合物(シリケート低縮合物)を配合した自動車上塗り塗料が開示されている。この塗料は、上記した耐汚染性に関する問題点を解消しようとするものである。この技術においては、テトラメチルシリケート及び/又はテトラエチルシリケートの低縮合物を用いることにより、アルコキシル基の炭素数を抑えて水との反応性を保たせる工夫をしている。そして、この塗料組成物による塗膜は、塗膜表面近傍に多く存在するシリケート低縮合物のメトキシ基又はエトキシ基が、曝露することや酸で処理することにより水と反応して水酸基となり、この水酸基に起因する高い親水性を示し、耐汚染性を発揮することを基本原理とするものである。
【0004】
しかしながら、ここで得られる塗膜は雨が降らなければ加水分解して親水性塗膜表面に変化するまでに1カ月以上要し、降雨が多い場合でも1〜2週間要するものであった。親水性表面になるまでは、疎水性の汚染物質が一度付着すると降雨だけでは汚れが落ちにくい問題があった。
【0005】
また、自動車塗装ラインでは上塗り塗装後の塗装面にゴミ、ブツ、キズ等が発見された場合には、このゴミ、ブツを除去した上で、#2400、#4000のサンドペーパーでポリッシュして仕上げる工程がある。
【0006】
上記の塗膜をポリッシュした部分は、塗膜表面近傍に多く存在するシリケート含有層が削り取られているため、親水性が消失して耐汚染性が低下する。従って、自動車塗膜全体を見るとポリッシュした部位の有無により、親水化レベルが異なる部位が発生し、耐汚染性レベルに著しい差ができているために、曝露すると白黒のまだら模様が発生する問題がある。
【0007】
特開2000−256619号公報には、シリコン化合物若しくはその加水分解縮合物(a)、又は、(a)とシリコン化合物を加水分解できる触媒及び/若しくは有機溶剤との混合物を上塗り塗膜上に塗布する上塗り塗膜の耐汚れ処理方法が開示されている。しかしながら、この耐汚れ処理方法により表面に形成される親水化塗膜は、降雨により少しずつ溶解し、消失していくため、数カ月でこの親水化塗膜の効果が無くなるという問題点があった。
【0008】
さらに国際公開95/17349号公報には、テトラメトキシシランを水に配合して得られるハードコート用組成物が開示されている。この組成物は、含浸法により膜を形成することは可能であるが、スプレー法では膜切れが発生する問題点を有している。また、この組成物によって表面を親水化する目的については何の記載もない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の現状に鑑み、親水化速度が速く、降雨前であっても耐汚染性を発揮し、かつ、表面をポリッシュした部分の耐汚染性にも優れており、耐汚染性が長期にわたり持続する塗膜形成方法、及び、それを用いた自動車車体を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材上に、特定のシリケート化合物を含有する親水化処理剤を塗布することによって、降雨前等のように基材上の塗膜が充分に親水性になっていない状況下においても、その上に塗布された親水性を付与する親水化処理剤によって、耐汚染性が発揮され、かつ、表面をポリッシュした部分も親水化処理剤が塗布されているため、このポリッシュ部分の耐汚染性にも優れていること、更に、長期暴露時には表面の親水化処理剤の塗膜は雨で少しずつ溶解して、消失していくが、基材上に予め形成されている親水性又は親水化可能な塗膜が充分に親水性となっているため、継続して親水性を保つことができ、初期から継続して優れた耐汚染性を発揮することを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明は、親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材上に、親水化処理剤を塗布し、乾燥する工程を含む塗膜形成方法であって、上記親水化処理剤は、下記式(1)で表わされるシリケート化合物の加水分解物、ノニオン系界面活性剤、水、親水性有機溶剤及び触媒からなり、上記ノニオン系界面活性剤が、アルキレンオキサイドユニットを有しており、そのHLBが10〜15であって、上記水に対する量が0.02〜10質量%であるものである塗膜形成方法である。
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、nは、1〜30の整数を表す;R1 は、異なるものを表わしてもよく、置換基を有するか又は置換基を有しない炭素数1〜8のアルキル基を表す)
また、上記シリケート化合物の加水分解物の含有量は、親水化処理剤中に0.05〜10質量%であることが好ましい。
【0014】
上記親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材は、基材に上塗り塗料が塗布されたものであり、上記上塗り塗料が、ベース塗料及びクリヤー塗料からなるものであって、上記上塗り塗料の塗布が、上記ベース塗料及び上記クリヤー塗料をこの順で塗布するものである場合、上記クリヤー塗料は、下記式(2)で表されるシリケート化合物(i)、及び/又は、下記式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を含むものであることが好ましい。
【0015】
【化5】
【0016】
(式中、mは、1〜30の整数を表す;R2 は、異なるものを表してもよく、水素原子、又は、置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜20の有機基を表す)
上記クリヤー塗料は、式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を含むものであって、ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)及びエポキシ基含有アクリル共重合体(II)を含んでいるものであることが好ましい。
【0017】
また、上記親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材は、基材に上塗り塗料が塗布されたものであり、上記上塗り塗料が、ソリッドカラー塗料からなるものである場合には、上記ソリッドカラー塗料は、下記式(2)で表されるシリケート化合物(i)、及び/又は、下記式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を含むものであることが好ましい。
【0018】
【化6】
【0019】
(式中、mは、1〜30の整数を表す;R2 は、異なるものを表してもよく、水素原子、又は、置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜20の有機基を表す)
上記ソリッドカラー塗料は、式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を含むものであって、更に、硬化剤を含むものであることが好ましい。
上記親水化処理剤は、乾燥膜厚0.01〜10μmに塗布されるものであることが好ましい。
本発明はまた、上記の塗膜形成方法により形成されてなる塗膜を有する自動車車体でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0020】
本発明の塗膜形成方法は、親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材上に、親水化処理剤を塗布し、乾燥する工程を含むものである。
親水化処理剤
上記親水化処理剤は、シリケート化合物の加水分解物、ノニオン系界面活性剤、水及び親水性有機溶剤を含んでいる。
上記シリケート化合物の加水分解物は、上記式(1)で表わされるシリケート化合物を加水分解して得られるものである。
【0021】
上記式(1)において、nは、1〜30の整数を表す。30を超えると、シリケート化合物の粒子性が高くなり、塗膜が白濁するなど外観に不具合が生じる。シリケート化合物の加水分解物を適度な粘度とする観点から、1〜25が好ましく、5〜25がより好ましい。
【0022】
上記式(1)において、R1 は、異なるものを表わしてもよく、置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数が8を上回ると、加水分解性が低下するため好ましくない。炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましく、炭素数1又は2のアルキル基が特に好ましい。最も好ましいものはメチル基である。
【0023】
上記置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、ネオアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖状又は分岐状のものが挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が好ましい。より好ましくは、メチル基及びエチル基であり、特に好ましいのはメチル基である。
上記アルキル基の置換基としては限定されず、例えば、クロロ、ブロモ等のハロゲン;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、シアノ基、ジメチルアミノ基等を挙げることができる。上記置換基を有する場合であっても、アルキル基の炭素数は1〜8であることが好ましい。
【0024】
上記R1 が置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜8のアルキル基であるシリケート化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラ−n−ペントキシシラン、テトラ−iso−ペントキシシラン、テトラネオペントキシシラン等;それらの1種又は2種以上の縮合物等が挙げられる。好ましくは、メチルシリケート及び/若しくはその縮合物、又は、エチルシリケート及び/又はその縮合物であり、最も好ましいのがメチルシリケートの縮合物である。
【0025】
上記メチルシリケートの縮合物としては、例えば、「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」、「MKCシリケートMS60」(いずれも商品名、三菱化学社製)等の市販品が挙げられる。
上記エチルシリケートの縮合物としては、例えば、「エチルシリケート28」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート48」(いずれも商品名、コルコート社製)等の市販品が挙げられる。
【0026】
上記加水分解は、上記シリケート化合物が有するアルコキシシリル基と当量以上の水と上記シリケート化合物とを反応させることにより得られる。反応は室温で進行するが、必要に応じて加熱することができる。好ましくは、触媒の存在する大過剰量の水中にシリケート化合物を添加して放置しておくことにより、上記シリケート化合物の加水分解物を得ることができる。上記触媒としては、一般的に加水分解反応に用いられるものが使用できる。例えば、塩酸、酢酸、硝酸、ギ酸、硫酸、リン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸などの有機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等のアルカリ触媒;有機金属;金属アルコキシド、例えばジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)及びジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の金属キレート化合物、ホウ素ブトキシド、ホウ酸等のホウ素化合物等を挙げることができる。上記触媒の量は特に限定されないが、通常、上記シリケート化合物に対して、0.1〜5質量%とすることができる。
【0027】
また、上記シリケート化合物は、水に対する溶解性が充分でないため、効率的に加水分解反応を進行させるためには親水性有機溶剤を加えて、系を均一化することが好ましい。このような親水性有機溶剤としては、水に自由に混和するものが好ましく、例えば、アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等;またグリコール誘導体としてはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が使用できる。上記親水性有機溶剤の添加量は、上記シリケート化合物が溶解する量以上であれば特に限定されない。
【0028】
上記加水分解物は、IRスペクトルを測定することにより、アルコキシシリル基に基づくピークが消失していることを確認することができる。すなわち、上記シリケート化合物の加水分解物は、先の式(1)におけるアルコキシシリル基がシラノール基に加水分解された構造を有していると考えられる。このシラノール基を有していることで、塗布直後から親水性が発現するものと考えられる。ただし、上記加水分解物は、アルコキシシリル基が全てシラノール基に加水分解されていなくてもよい。通常、触媒を含む均一な系では、室温で12時間以上放置することで、目的とする加水分解物を得ることができる。
このようにして得られる加水分解物は、単離する際に、加水分解物間での縮合反応が進行してしまう恐れがあるため、加水分解を行って得られた溶液のまま使用することが好ましい。
【0029】
上記シリケート化合物の加水分解物の親水化処理剤中における含有量は、上記加水分解前のシリケート化合物として、0.05〜10質量%に相当する量が好ましい。0.05質量%未満であると、充分な親水性を付与することができず、10質量%を超えると得られる膜の外観が低下する恐れがある。更に好ましくは、0.1〜5質量%であり、特に好ましくは0.1〜3質量%である。
【0030】
上記親水化処理剤に含まれる上記ノニオン系界面活性剤は、水の表面張力を低下させることにより、塗布手段に依らずに親水化処理剤の均一な塗布を可能にする。一方、カチオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤では、親水化処理剤の安定性が低下したり、均一な塗布ができない場合がある。
【0031】
上記ノニオン系界面活性剤としては、親水性基としてアルキレンオキサイドユニットを有しているものが用いられる。このようなものとしてはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。上記ノニオン系界面活性剤の親水性と疎水性とのバランスの指標であるHLBは、10〜15である。これらの範囲外では均一に塗布することができない恐れがある。なお上記HLBは、ノニオン系界面活性剤全体の分子量をアルキレンオキサイドユニット部の分子量で割った値を20倍して得られる値である。
【0032】
上記アルキレンオキサイドユニットの種類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイドが挙げられ、この中でエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが好ましい。また、上記アルキレンオキサイドユニットの繰返し数は7〜10であることが好ましい。また、アルキルエーテルのアルキル基の炭素数は12〜18であることが好ましい。
【0033】
上記ノニオン系界面活性剤の親水化処理剤中における含有量は、親水化処理剤中に含まれる水に対して、0.02〜10質量%である。0.02質量%未満であると、親水化処理剤を均一に塗布することができず、10質量%を超えても効果の向上が認められず、塗膜性能に劣る場合がある。より好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0034】
上記親水化処理剤は、溶剤として、水及び親水性有機溶剤を含んでいる。親水性有機溶剤としては、先に挙げたものが使用できるが、揮発性や溶解性を考慮すると、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。水と親水性有機溶剤との質量比は、特に限定されないが、例えば、5/95〜95/5とすることができる。
【0035】
上記親水化処理剤は、先の各成分を混合することにより得られるが、上記シリケート化合物の加水分解を行って得られる溶液、又は加水分解を行う前の溶液に、所定量のノニオン系界面活性剤を加える方法によっても得ることができる。
これらの場合、各成分が所定の濃度になるように配合することが好ましいが、シリケート化合物の加水分解を行って得られる溶液に対して、水及び/又は親水性有機溶剤で希釈することにより、所定の濃度に調整することもできる。なお、この方法で得られる親水化処理剤は、加水分解に用いられた上記触媒を含んでいる。
【0036】
上記親水化処理剤の塗布方法としては特に限定されず、例えば、スプレー塗装、ロールコーター法、刷毛塗り、浸漬塗装、ワイプ塗装等を挙げることができる。上記塗布した後の乾燥方法としては、室温で乾燥するまで放置してもよく、40〜100℃で1〜30分程度加熱することにより行ってもよい。
上記親水化処理剤の乾燥膜厚としては、0.01〜10μmが好ましい。0.01μm未満であると、長期にわたり耐汚染性を得ることができない場合があり、10μmを超えると、塗膜の透明性に劣ったり、ワレ等が生じたりする恐れがある。より好ましくは、0.01〜5μmである。
【0037】
親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材
本発明において、上記親水化処理剤は、親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材に塗布されるものである。上記親水性の塗膜表面を有する基材とは、水接触角が50°以下である塗膜表面を有する基材を意味するものであり、親水化可能な塗膜表面を有する基材とは、JIS K 5400 9.9に準拠して6カ月間屋外曝露試験を行った場合に、水接触角が50°以下である塗膜表面を有する基材を意味するものである。塗膜表面の水接触角が50°以下であれば、50°を超える場合に比較して、格段に汚染されにくく、汚染された場合であっても水や降雨のみで容易に汚染が除去できる等耐汚染性に優れている。好ましくは、水接触角が35°以下の場合である。
【0038】
上記親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材は、通常、基材の最表面に上塗り塗料が塗布され上塗り塗膜が形成されているものである。この上塗り塗料としては特に限定されず、例えば、ベース塗料及びクリヤー塗料からなるものであって、上塗り塗料の塗布は、ベース塗料及びクリヤー塗料をこの順で塗布するもの、並びに、ソリッドカラー塗料からなるものを挙げることができる。
【0039】
上記ベース塗料及びクリヤー塗料を用いる場合、上記クリヤー塗料は、ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)及びエポキシ基含有アクリル共重合体(II)を含む酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料であることが好ましい。
一方、上記ソリッドカラー塗料を用いる場合、メラミン系硬化剤等の硬化剤を含むものであることが好ましい。
【0040】
酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料の場合
上記酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料は、ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)及びエポキシ基含有アクリル共重合体(II)を樹脂成分とするものである。
【0041】
上記ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)は、酸無水物基含有ラジカル重合性単量体(I−a)とその他のラジカル重合性単量体(I−b)とにより共重合体を得た後、上記酸無水物基を低分子量のアルコール系化合物によってハーフエステル化することにより得られるものである。
【0042】
上記酸無水物基含有ラジカル重合性単量体(I−a)としては、上記ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)を得るための酸無水物基を含有するラジカル重合可能な単量体であれば特に限定されず、例えば、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記その他のラジカル重合性単量体(I−b)としては特に限定されず、例えば、水酸基含有ラジカル重合性単量体を挙げることができる。
上記水酸基含有ラジカル重合性単量体としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;プラクセルFM−1(商品名、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとポリカプロラクトンとの付加物、ダイセル化学工業社製);ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
更に、その他の単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類やビニルトルエン等の芳香族ビニル系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n、i又はt−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n、i又はt−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有単量体類;アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記酸無水物基含有ラジカル重合性単量体(I−a)と上記その他のラジカル重合性単量体(I−b)とにより共重合体を得る際の共重合組成において、上記酸無水物基含有ラジカル重合性単量体(I−a)は、全単量体質量に対し、10〜40質量%、特に15〜30質量%が好ましい。
【0046】
上記共重合方法としては特に限定されず、上述した単量体成分をラジカル重合開始剤により共重合して得ることができる。上記共重合方法としては特に限定されず、通常のラジカル重合等の溶液重合等により行うことができ、例えば、重合温度100〜140℃、重合時間3〜8時間で行うことができる。
【0047】
上記ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記ラジカル重合開始剤は、上述した単量体の全量に対して、3〜15質量%使用するのが好ましい。上記共重合には、添加剤として連鎖移動剤等を添加してもよい。
【0048】
上記共重合体の数平均分子量(Mn)は、500〜10000、特に1000〜8000が好ましい。上記数平均分子量(Mn)が500未満であると、塗料の硬化性が充分でなく、10000を超えると、共重合体の粘度が高くなり、塗装時に多量の有機溶剤を使用することになるため環境に悪影響を与える恐れがある。
【0049】
上記共重合体における上記酸無水物基は、1分子中に少なくとも2個含有する。2個より少ないと、硬化性が充分でない欠点を有する。好ましくは2〜15個である。
【0050】
上記ハーフエステル化は、上記共重合体を得た後に行う。上記酸無水物基を上記ハーフエステル化するために用いるハーフエステル化剤としては、低分子量のアルコール系化合物であれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、アセトール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に好ましい化合物としては、アセトール、アリルアルコール、プロパギルアルコール、メタノールである。上記ハーフエステル化剤として用いられる低分子量のアルコール系化合物は、N原子、S原子等の他のヘテロ原子や炭素−炭素不飽和結合等を含むものであってもよい。
【0051】
上記ハーフエステル化の反応方法としては特に限定されず、例えば、通常の方法に従い、室温から120℃の温度で、触媒の存在下に行うことができる。上記触媒としては特に限定されず、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記エポキシ基含有アクリル共重合体(II)は、全単量体の合計を100質量部として、エポキシ基含有ラジカル重合性単量体(II−a)30〜70質量部、水酸基含有ラジカル重合性単量体(II−b)10〜50質量部、及び、その他のラジカル重合性単量体(II−c)20〜60質量部を共重合して得られる共重合体である。
【0053】
上記エポキシ基含有ラジカル重合性単量体(II−a)としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4−エポキシシクロヘキサニルメチルメタクリレート等のエポキシ基含有アクリル単量体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記水酸基含有ラジカル重合性単量体(II−b)及びその他のラジカル重合性単量体(II−c)としては、それぞれ、上記例示したものを挙げることができ、重合の方法としても上記方法と同様にして行うことができる。
【0055】
上記エポキシ基含有アクリル共重合体(II)は、数平均分子量(Mn)が1000〜8000であり、分子中にエポキシ基を2〜10個有し、及び、水酸基を2〜12個有し、また、エポキシ当量が100〜800であり、水酸基価が5〜200mgKOH/gである。上記エポキシ当量が100未満であると、硬化塗膜が硬くなりすぎ、耐候性が悪くなり、800を超えると、塗料の硬化性が充分でなくなる。上記水酸基価が5mgKOH/g未満であると、密着性が劣り、200mgKOH/gを超えると、硬化塗膜の耐水性が充分でなくなる。好ましくは、分子中にエポキシ基を3〜8個有し、及び、水酸基を4〜10個有し、また、エポキシ当量が200〜600であり、水酸基価が10〜150mgKOH/gである。
【0056】
本発明で用いられる酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料は、更に、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)を樹脂成分とするものであることが好ましい。上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)は、低分子多価アルコールにラクトン化合物を付加させて鎖延長反応を行うことにより得られるポリエステルポリオールを、酸無水物基含有化合物とハーフエステル化することにより得られるものである。
【0057】
上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)は、分子量分布がシャープであることから、上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)を樹脂成分とすることにより、本発明で用いられるクリヤー塗料の高固形分化(ハイソリッド化)が可能となり、耐候性及び耐水性に優れた塗膜が得られると同時に耐チッピング性と肌外観の優れた塗膜となる。
【0058】
上記低分子多価アルコールとしては特に限定されず、例えば、1分子中に少なくとも3個の水酸基を有するものであって、分子量300以下のアルコールが好ましく、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4−ブタントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
上記ラクトン化合物は、環内に酸素原子を有するために求核試薬と反応して開環し、末端に水酸基を生成する環状化合物であればよい。開環付加反応を起こし易いことから、上記ラクトン化合物は炭素数4〜7個のものが好ましい。
【0060】
上記ラクトン化合物としては特に限定されず、例えば、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン及びγ- ブチロラクトンが好ましい。
【0061】
上記鎖延長反応は、通常の開環付加反応と同様の条件で行うことができる。例えば、適当な溶媒中で、又は、無溶媒で、温度80〜200℃で5時間以内反応させることにより上記低分子多価アルコールが鎖延長された上記ポリエステルポリオールが得られる。このとき、スズ系触媒等を用いてもよい。
【0062】
上記鎖延長反応の際、上記低分子多価アルコールの水酸基のモル量に対し、上記ラクトン化合物のモル量は0.2〜10倍量である。上記低分子多価アルコールの水酸基のモル量に対する上記ラクトン化合物のモル量が0.2倍量未満であると、塗膜が固くなって塗膜の耐衝撃性が低下し、10倍量を超えると、塗膜の硬度が低下する。好ましくは0.25〜5倍量であり、より好ましくは0.3〜3倍量である。
【0063】
上記ポリエステルポリオールと上記酸無水物基含有化合物とのハーフエステル化の反応方法としては特に限定されず、例えば、通常の方法に従い、上記ポリエステルポリオールと上記酸無水物基含有化合物とを、室温から150℃の温度で、常圧にて行うことができる。
【0064】
上記酸無水物基含有化合物としては特に限定されず、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水コハク酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
一般に、上記ポリエステルポリオールの水酸基のモル量に対する上記酸無水物基含有化合物の酸無水物基のモル量を0.2〜1.0倍量、特に0.5〜0.9倍量とすることが好ましい。上記ポリエステルポリオールの水酸基のモル量に対する上記酸無水物基含有化合物の酸無水物基のモル量が0.2倍量未満であると、塗料の硬化性が不足する。
【0066】
但し、上記ポリエステルポリオールの全ての水酸基をカルボキシル基に変性する必要はなく、水酸基を残してもよい。即ち、水酸基を有する上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)は、塗膜の表面にカルボキシル基と水酸基とを同時に提供するので、例えば、リコートしたような場合、水酸基を有しない上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)に比べて、優れた密着性を提供することができる。
【0067】
上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)は、酸価が50〜350mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)が400〜3500であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.8以下である。酸価が50未満であると、塗料の硬化性が不足し、酸価が350を超えると、上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)の粘度が高くなりすぎ、塗装時に多量の有機溶剤を使用することになるため環境に悪影響を与える恐れがある。分子量が400未満であると、塗料の硬化性が不足又は塗膜の耐水性が低下し、分子量が3500を超えると、上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)の粘度が高くなりすぎて取扱が困難となり、塗装時に多量の有機溶剤を使用することになるため環境に悪影響を与える恐れがある。重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.8を超えると、塗膜の耐水性又は耐候性が低下する。
【0068】
好ましくは、酸価が100〜300mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)が500〜2500であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.5以下である。より好ましくは、酸価が150〜250mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)が700〜2000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.35以下である。
【0069】
上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)を水酸基を有するものとする場合、上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)は、水酸基価が150mgKOH/g以下である。水酸基価が150mgKOH/gを超えると、塗膜の耐水性が低下する。好ましくは、5〜100mgKOH/g、より好ましくは、10〜80mgKOH/gである。
【0070】
また、水酸基とカルボキシル基とを有する上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)は、後述するように、エポキシ基含有アクリル共重合体(II)、シリケート化合物(i)、シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)等と反応し結合し得るので、より強固な塗膜を得ることができる。この場合、1分子中に平均0.1個以上の水酸基を有するものが好ましい。
【0071】
上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)は、樹脂成分全量に対して5〜70質量%含まれるのが好ましい。5質量%未満であると、塗装時に多量の有機溶剤を使用することになるため環境に悪影響を与える恐れがあり、70質量%を超えると、塗膜の耐候性が低下する。好ましくは、5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。なお、上記質量%は、固形分換算の値である。
【0072】
本発明で用いられる酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料中の樹脂成分において、[上記エポキシ基含有アクリル共重合体(II)のエポキシ基総数]/[上記ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)及び上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)のハーフエステル化された酸無水物基及びカルボキシル基総数]=0.5〜1.5、特に0.6〜1.3であるのが好ましく、また、[上記エポキシ基含有アクリル共重合体(II)の水酸基総数]/[上記ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)のハーフエステル化された酸無水物基総数]=0.1〜1.5、特に0.3〜1.2であるのが好ましい。
【0073】
具体的には、そのような比を与える上記エポキシ基含有アクリル共重合体(II)の配合量は、例えば、上記ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)及び上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)の合計100質量部に対し、50〜250質量部、特に80〜150質量部が好ましい。上記エポキシ基含有アクリル共重合体(II)の配合量が50質量部未満であると、充分な塗膜硬化が行われず、硬化塗膜の耐水性、耐候性等が低下し、250質量部を超えると、未反応のカルボキシル基が残存して耐薬品性が低下する。
【0074】
ソリッドカラー塗料
本発明において、親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材が、上塗り塗料が塗布されたものであり、上塗り塗料としてソリッドカラー塗料を用いる場合、硬化剤を含むものである。
上記ソリッドカラー塗料は、水酸基含有アクリル樹脂及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂30〜85質量%、並びに、硬化剤15〜70質量%を樹脂成分とするものであるのが好ましい。
【0075】
上記水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有アクリル単量体と他のエチレン性不飽和基含有単量体とを通常の方法により共重合することにより得ることができる。
上記水酸基含有アクリル単量体としては特に限定されず、例えば、上述のものを挙げることができる。
上記他のエチレン性不飽和基含有単量体としては特に限定されず、例えば、上記その他の単量体(I−d)として挙げたもののほか、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸を主成分とした酸成分と、多価アルコールを主成分としたアルコール成分とを通常の方法により重縮合することにより得ることができる。
上記酸成分としては特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びこれらの無水物;2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類及びこれらの無水物;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類及びこれらの無水物;γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;p−オキシエトキシ安息香酸等の芳香族オキシモノカルボン酸類;トリメリット酸、トリメジン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸類;これらの対応するヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
上記アルコール成分としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSアルキレンオキシド付加物;1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール等の側鎖を有する脂肪族グリコール類;トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が100mgKOH/g以下、数平均分子量(Mn)800〜8000、水酸基価30〜200mgKOH/gのものであるのが好ましい。
酸価が100mgKOH/gを超えると、樹脂の粘度が高くすぎて取り扱いが困難となり、塗装時に多量の有機溶剤を使用することになるため環境に悪影響を与える恐れがある。水酸基価が30mgKOH/g未満であると、塗料の硬化性が不足し、200mgKOH/gを超えると、塗膜の耐水性が低下する。数平均分子量(Mn)が800未満であると、塗膜の強度が低下又は塗膜の耐水性が低下し、8000を超えると、上記水酸基含有アクリル樹脂の粘度が高くなりすぎて取扱いが困難となり、塗装時に多量の有機溶剤を使用することになるため環境に悪影響を与える恐れがある。
【0079】
上記硬化剤は、アミノ樹脂及び/又はブロックポリイソシアネート化合物である。好ましいものは、アミノ樹脂単独又はアミノ樹脂とブロックポリイソシアネート化合物とを組み合わせたものである。
上記アミノ樹脂としては特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、メラミン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂が一般的である。
【0080】
上記メラミン樹脂は、アルキルエーテル化してアルキルエーテル化メラミン樹脂とすることができ、このうちメトキシ基及び/又はブトキシ基で置換されたメラミン樹脂が好ましい。
【0081】
上記メトキシ基及び/又はブトキシ基で置換されたメラミン樹脂としては、メトキシ基を単独で有するものとしては、サイメル325、サイメル327、サイメル370、メトキシ基とブトキシ基との混合タイプとしては、サイメル202、サイメル204、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267(いずれも商品名、三井サイテック社製)、ブトキシ基を単独で有するものとしては、マイコート506(商品名、三井サイテック社製)、ユーバン20N60、ユーバン20SE(いずれも商品名、三井化学社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記ベンゾグアナミン樹脂についても同様に置換されたものが使用できる。
【0082】
上記ブロックポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックしたものである。
上記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくと2個のイソシアネート基をもつ化合物であれば特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネート類;ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、水素化されたTDI(HTDI)、水素化されたXDI(H6XDI)、水素化されたMDI(H12MDI)等の水添ジイソシアネート類;これらのジイソシアネート化合物の2量体、3量体、更に高分子量のポリイソシアネート類;トリメチロールプロパン等の多価アルコール若しくは水、又は、低分子量ポリエステル樹脂との付加物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
上記ブロック剤としては特に限定されず、例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;m−クレゾール、キシレノール等のフェノール類;メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;ε−カプロラクタム等のラクタム類、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル等のジケトン類;チオフェノール等のメルカプタン類;チオ尿素等の尿素類;イミダゾール類;カルバミン酸類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記ポリイソシアネート化合物を上記ブロック剤でブロックする方法としては特に限定されず、例えば、通常の方法により、フリーのイソシアネート基がなくなるまで反応させる方法等が挙げられる。
【0085】
上記ブロックポリイソシアネート化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、デスモジュールシリーズ(商品名、住友バイエルウレタン社製)、バーノックDシリーズ(商品名、大日本インキ化学工業社製)、タケネートBシリーズ(商品名、武田薬品工業社製)、コロネート2500シリーズ(商品名、日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられる。これらの中でも、オキシム、ラクタム又はジケトンでブロックしたものが好ましい。
【0086】
上記硬化剤がアミノ樹脂の場合、上記水酸基含有アクリル樹脂と上記アミノ樹脂との質量比を8/2〜5/5、好ましくは7/3〜6/4とするのが好ましい。また、ブロックイソシアネート化合物の場合、上記水酸基含有アクリル樹脂が有する水酸基の当量の0.8〜1.5倍の範囲のイソシアネート基当量となるような配合であれば差し支えない。上記水酸基価の当量の0.8倍未満であると、塗料の硬化性が充分でなく、軟弱な塗膜しか得られず、硬度のみならず塗膜の耐薬品性及び耐汚染性も低下し、1.5倍を超えると、ブロックポリイソシアネート化合物を配合しただけの効果が得られないばかりか、塗膜の強度、硬度、加工性、耐薬品性等が低下し、黄変性や耐候性も低下しやすい。好ましくは、1.0〜1.2倍である。また、アミノ樹脂にブロックイソシアネート化合物を組み合わせる場合、ブロックイソシアネート化合物の量はアミノ樹脂の質量の半分以下であることが好ましい。
【0087】
本発明において、上記クリヤー塗料及び上記ソリッドカラー塗料は、基材の最表面に、親水性又は親水化可能な塗膜を形成する必要があることから、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基を有する成分が含まれている必要がある。
上記アルコキシシリル基及び/又はシラノール基を有する成分としては、上記式(2)で表されるシリケート化合物(i)、及び/又は、上記式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)であることが好ましい。
【0088】
(i)シリケート化合物
上記式(2)で表されるシリケート化合物(i)は、加水分解により親水化可能な化合物である。上記式(2)中、mは、1〜30の整数を表す。R2 は、異なるものを表してもよく、水素原子、又は、置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜20の有機基を表す。
上記R2 の少なくとも1つは、置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜20の有機基であることが好ましい。
【0089】
上記式(2)中、mが30を超えると、シリケート化合物(i)をグラフトしてなる樹脂(ii)の粘度が高くなり、作業性が低下する。シリケート化合物(i)をグラフトしてなる樹脂(ii)を適度な粘度とする観点から、mは、5〜25が好ましい。
【0090】
上記置換基を有するか又は置換基を有しない炭素数1〜20の有機基は、シリケート化合物(i)やそれをグラフトしてなる樹脂(ii)が、塗装時にウェットな塗膜中で塗膜表面に展開して塗膜表面近傍に多く存在しやすくする、即ち、適度に他の樹脂成分との相溶性を少なくするとの観点から、炭素数が1〜8のものが好ましい。
【0091】
上記置換基を有するか又は置換基を有しない炭素数1〜20の有機基としては特に限定されず、例えば、置換基を有するか又は置換基を有しない炭素数1〜20である、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基等が挙げられる。これらの中でも、置換基を有するか又は置換基を有しない炭素数1〜20であるアルキル基及びアラルキル基が好ましい。
【0092】
上記置換基を有するか又は置換基を有しないアルキル基としては、上記例示したものを挙げることができる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が好ましい。
【0093】
上記置換基を有するか又は置換基を有しないシクロアルキル基としては特に限定されず、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。上記アリール基としては特に限定されず、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0094】
上記置換基を有するか又は置換基を有しないアラルキル基としては特に限定されず、例えば、ベンジル基、2−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、4−クロロベンジル基、2−ブロモベンジル基、3−ブロモベンジル基、4−ブロモベンジル基、2−ヨードベンジル基、3−ヨードベンジル基、4−ヨードベンジル基、ジクロロベンジル基等のハロゲン化ベンジル基;2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、3,4,5−トリメチルベンジル基、4−エチルベンジル基、4−イソプロピルベンジル基、4−ブチルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基等のアルキル置換ベンジル;ジメトキシベンジル基、2−エトキシベンジル基、3−エトキシベンジル基、4−エトキシベンジル基、4−ブトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基等のアルコキシ置換ベンジル基;フェネチル基、ベンゾイン基、フェニルプロピル基のベンジル基類、フェネチル基類等が挙げられる。これらの中でも、ベンジル基、クロロベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基が好ましい。
【0095】
上記置換基を有するか又は置換基を有しないアシル基としては特に限定されず、例えば、アセチル、プロピニオル、ブチリル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル等が挙げられる。
【0096】
上記置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1〜20の有機基の一部又は全部は、塗膜が充分な親水性を発揮するとの観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。これらの中でもメチル基が最も好ましい。また、塗膜が充分な親水性を発揮し、かつ、充分な貯蔵安定性を有するとの観点から、上記有機基の一部がメチル基であることがより好ましい。
【0097】
上記シリケート化合物(i)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラ−n−ペントキシシラン、テトラ−iso−ペントキシシラン、テトラネオペントキシシラン等;それらの1種又は2種以上の縮合物等が挙げられる。
【0098】
また、上記シリケート化合物(i)としては、メチルシリケート及び/若しくはその縮合物、又は、エチルシリケート及び/若しくはその縮合物を反応基質として、アルコール交換反応させて得られるものも挙げられる。
本発明においては、このようなアルコール変性させたシリケート化合物が好ましい。
上記メチルシリケートの縮合物、又は、エチルシリケートの縮合物としては、上記例示したものを挙げることができる。
【0099】
上記アルコール変性させたシリケート化合物においては、メチルシリケート及び/若しくはその縮合物、又は、エチルシリケート及び/若しくはその縮合物のメチル基又はエチル基の一部が、アルコール交換反応により変性されている。
この場合、上記式(2)中、R2 のうちの一部は、置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数2〜20、好ましくは炭素数3〜15、より好ましくは炭素数3〜10のアルキル基及び/又は置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数7〜20、好ましくは7〜10のアラルキル基を表し、残りのR2 は、メチル基を表す。炭素数が上記未満では、反応性が高すぎ、貯蔵安定性が悪くなり、上記を超えると、親水性機能が出なくなる。本発明においては、R2 のうちの少なくとも1つがアルコール交換反応により変性されているものが好ましい。
【0100】
上記アルコール交換反応は、上記メチルシリケート及び/若しくはその縮合物、又は、上記エチルシリケート及び/若しくはその縮合物を反応基質として、アルコール化合物を反応試剤として反応させることにより行う。
【0101】
上記アルコール化合物としては、置換基を有するか又は置換基を有しない炭素数2〜20、好ましくは炭素数3〜15のアルキルアルコール化合物、置換基を有するか又は置換基を有しない炭素数7〜20のアラルキルアルコール化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
上記置換基を有するか又は置換基を有しない炭素数2〜20のアルキルアルコール化合物としては特に限定されず、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等のアルキルアルコール化合物;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、ブチルジグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
これらの中でも、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール;ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、エトキシプロパノールを用いるのが好ましい。
【0104】
上記置換基を有するか又は置換基を有しない炭素数7〜20のアラルキルアルコール化合物としては特に限定されず、例えば、ベンジルアルコール、2−クロロベンジルアルコール、3−クロロベンジルアルコール、4−クロロベンジルアルコール、2−ブロモベンジルアルコール、3−ブロモベンジルアルコール、4−ブロモベンジルアルコール、2−ヨードベンジルアルコール、3−ヨードベンジルアルコール、4−ヨードベンジルアルコール、ジクロロベンジルアルコール等のハロゲン化ベンジルアルコール;2−メチルベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルアルコール、3,4,5−トリメチルベンジルアルコール、4−エチルベンジルアルコール、4−イソプロピルベンジルアルコール、4−ブチルベンジルアルコール、4−tert−ブチルベンジルアルコール等のアルキル置換ベンジルアルコール;ジメトキシベンジルアルコール、2−エトキシベンジルアルコール、3−エトキシベンジルアルコール、4−エトキシベンジルアルコール、4−ブトキシベンジルアルコール、2−メトキシベンジルアルコール、3−メトキシベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール等のアルコキシ置換ベンジルアルコール;フェネチルアルコール、ベンゾイン、フェニルプロパノール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
これらの中でも、ベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、エチルベンジルアルコール、メトキシベンジルアルコールを用いるのが好ましい。
【0106】
上記アルコール交換反応の際にはアルコール交換触媒を用いてもよい。上記アルコール交換触媒としては特に限定されず、例えば、酸又は塩基が挙げられる。上記酸としては特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、スルホン酸等のブレンステッド酸;有機スズ化合物等のルイス酸等が挙げられる。上記塩基としては特に限定されず、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等の第3級アミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
上記アルコール交換反応の際の溶媒は、特に使用しなくてもよいが、例えば、反応試剤であるアルコール化合物を溶媒として、上記反応基質に対して過剰に用いてもよい。
上記溶媒としては特に限定されず、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;THF、ジオキサン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルカーボメート、アセトニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
上記溶媒の使用量としては特に限定されず、例えば、反応基質であるメチルシリケート及び/若しくはその縮合物、又は、エチルシリケート及び/若しくはその縮合物と反応試剤であるアルコール化合物との合計質量に対して、10倍量以下であることが好ましい。
【0109】
上記アルコール交換反応の際の反応基質であるメチルシリケート及び/又はその縮合物、又は、エチルシリケート及び/若しくはその縮合物と反応試剤であるアルコール化合物との割合としては特に限定されず、例えば、アルコール化合物が反応基質に対して少なくとも1モル%以上で、変性に必要な量又はそれ以上の量となるようにすればよい。
【0110】
上記アルコール交換反応は、変性によって生成するメタノール又はエタノールを、アゼオトロピックに留去して行ってもよい。
上記アルコール交換反応の反応温度としては特に限定されず、一般に、0℃〜200℃である。反応時間としても特に限定されず、例えば、24時間以内であることが好ましい。反応時の圧力としても特に限定されず、一般に、常圧であるが、必要に応じて、生成するメタノールを留去するために減圧下で行ってもよい。
【0111】
上記アルコール交換反応における反応率は、生成したメタノールの量の測定、NMRスペクトル又はGC(ガスクロマトグラフィー)分析等により調べることができる。上述したようにして得られる生成物は、一般に、無色〜薄黄色の油状物質である。
【0112】
上記シリケート化合物(i)は、上述のようにアルコール交換反応によって得られるアルコール変性させたシリケート化合物が好ましいが、その他の製造方法として、例えば、重合性ポリシロキサン化合物又は連鎖移動能を有するシラン化合物と単官能性単量体とを共重合する方法によって得られるシリケート化合物も挙げることができる。
【0113】
上記シリケート化合物(i)としては、塗膜の親水性発現機構から、メチルシリケートの縮合物をアルコール変性させたシリケート化合物が好ましいが、その理由を、以下に詳述する。
上記アルコール変性シリケート化合物のメトキシ基は、経時により水酸基となりやすいことから、塗膜表面の水接触角が低くなり、塗膜に親水性が付与される。従って、塗膜表面に付着した汚染物質が洗い流されやすくなるため、塗膜に高い耐汚染性が発現するものと考えられる。
【0114】
また、メトキシ基の存在により、上記アルコール変性シリケート化合物は他の樹脂成分と適度な相溶性を有しており、形成された塗膜表面においては充分な耐汚染性が発揮される。
【0115】
更に、アルコール交換反応により得られる上記アルコール変性シリケート化合物は、例えば、R2 がメチル基の場合、テトラメチルシリケート縮合体のメチル基のうち最も活性の高いメチル基から順に、炭素数の多いアルキル基又はアラルキル基に置換され、活性の高い部分がブロックされるため、単なるテトラメチルシリケート縮合体に比べて、塗料貯蔵中に縮合反応や他の樹脂成分と反応を起こしにくく、塗料の貯蔵安定性に優れ、貯蔵後の塗料から得られる塗膜も充分な親水性を示し、塗膜表面に高い耐汚染性を、貯蔵後も安定的に発現する。
【0116】
本発明で用いられる上塗り塗料が、上記アルコール変性シリケート化合物を含み、上記酸/エポキシ硬化系塗料の場合には、上記アルコール交換反応によって上記アルコール変性シリケート化合物を得る際に用いる反応試剤であるアルコール化合物を溶剤として添加してもよい。
【0117】
上記アルコール化合物の添加量は、上記シリケート化合物(i)100質量部に対して、10〜200質量部であることが好ましい。上記アルコール化合物を添加することにより、加熱硬化工程における塗膜異常を防止することができ、また、下記のシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)の場合には、貯蔵中の上塗り塗料を安定化させることができる。
【0118】
シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)
上記式(2)で表されるシリケート化合物(i)の代わりに、又は、これと組み合わせて、式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を使用することができる。
本発明においては、上記酸/エポキシ硬化型のクリヤー塗料及び上記ソリッドカラー塗料に、式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を配合することが好ましい。
上記式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)においてグラフトされるシリケート化合物としては、上記シリケート化合物(i)を挙げることができる。塗膜の親水性発現機構から、メチルシリケートの縮合物が好ましい。また、上記グラフトさせるシリケート化合物は、1種のものを用いてもよく、2種以上のものを用いてもよい。
【0119】
上記シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)の組成としては、上記酸/エポキシ硬化型のクリヤー塗料又は上記ソリッドカラー塗料の樹脂成分のうちの少なくとも1つに、シリケート化合物をグラフトさせたものを使用することもできるし、上記酸/エポキシ硬化型のクリヤー塗料又は上記ソリッドカラー塗料の樹脂成分とは別に調製したものを使用することもできる。更に、上記の組成を組み合わせることも可能である。
【0120】
上記シリケート化合物を酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料の樹脂成分のうちの少なくとも1つにグラフトさせたものを使用する場合、ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)にシリケート化合物をグラフトしてなるもの、エポキシ基含有アクリル共重合体(II)にシリケート化合物をグラフトしてなるもの、及び、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)にシリケート化合物をグラフトしてなるものから選択される少なくとも1つを使用することができる。
【0121】
また、ソリッドカラー塗料の場合には、水酸基含有アクリル樹脂及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂にシリケート化合物をグラフトしてなるものを使用することができる。
【0122】
上記ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)、上記エポキシ基含有アクリル共重合体(II)及び/又は上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)の一部が上記シリケート化合物をグラフトしていればよく、その共重合体の全部がグラフトしている必要はなく、上記ソリッドカラー塗料を用いる場合には、上記水酸基含有アクリル樹脂の一部が上記シリケート化合物をグラフトしていればよく、その全部がグラフトしている必要はない。
【0123】
これらの場合には、シリケート化合物をグラフトするための樹脂を調製する必要がなくなるので、製造工程が簡素化する点で好ましい。
上記酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料の場合であって、上記ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)にグラフトさせるときには、上記ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)の製造において、水酸基含有ラジカル重合性単量体を共重合して水酸基を含有させておくことが好ましい。
【0124】
上記酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料を用いる場合には、上記ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)とグラフトした上記シリケート化合物との架橋反応により架橋密度が向上する点から、上記エポキシ基含有アクリル共重合体(II)は、上記シリケート化合物をグラフトしてなるものであることが好ましい。
【0125】
上記シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を別に調製して含有させる場合、水酸基含有重合体(ii−a)にシリケート化合物をグラフトしてなるものを使用する。
上記水酸基含有重合体(ii−a)は、水酸基を含有する重合体であれば特に限定されず、例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アルキド樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アルキド樹脂としては特に限定されず、例えば、上述したものと同様のものやポリエステル樹脂の重縮合において、必要により半乾性油、不乾性油等を用いることにより得られるもの等が挙げられる。
【0126】
上記半乾性油としては特に限定されず、例えば、大豆油、サフラワー油、トール油等が挙げられる。上記不乾性油としては特に限定されず、例えば、ヤシ油、ヒマシ油等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂及び上記水酸基含有アルキド樹脂は、油長40%以下のものである。好ましくは油長30%以下である。
【0127】
上記水酸基含有重合体(ii−a)は、水酸基を有すれば、更に、カルボキシル基、エポキシ基等を有していてもよい。上記水酸基含有重合体(ii−a)は、水酸基価が20〜200mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)が500〜10000であることが好ましい。
【0128】
水酸基価が20mgKOH/g未満であると、グラフト効率及びグラフト量が制限され、200mgKOH/gを超えると、塗膜の耐水性が低下する。数平均分子量(Mn)が500未満であると、塗膜の強度が低下し、10000を超えると、塗料の粘度が高くなり、外観が低下したり、塗装時に有機溶剤を多量に用いることになり環境負荷が大きくなる。好ましくは、水酸基価が40〜150であり、数平均分子量が800〜8000である。
【0129】
上記グラフト反応の方法としては特に限定されず、通常の方法より行うことができ、例えば、無溶媒で行ってもよく、有機溶媒中で行ってもよい。
【0130】
上記有機溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられ、蒸留等の操作によって溶媒を容易に除去できる観点から、沸点が100℃以下のものが好ましい。
【0131】
上記グラフト反応における反応温度及び反応時間は、原料の種類によっても異なるが、通常、室温〜150℃で、24時間以内の範囲であることが好ましい。反応温度が室温より低いと、シリケート化合物(i)が充分にグラフトされず、150℃を超えるか又は24時間を超えると、シリケート化合物(i)同士の縮合が生じる。上記グラフト反応における圧力は、1×10-3〜7600Torrの範囲であることが好ましい。
【0132】
上記シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)において、式(2)に由来するR2 O−基が特にメトキシ基である場合は、経時により水酸基となりやすいことから、塗膜表面の水接触角が低くなり、塗膜に親水性が付与される。従って、塗膜表面に付着した汚染物質が洗い流されやすくなるため、塗膜に高い耐汚染性が発現するものと考えられる。また、メトキシ基等の存在により、上記シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)は、他の樹脂成分と適度な相溶性を有しており、形成された塗膜表面においては充分な耐汚染性が発揮される。
【0133】
更に、上記シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)は、上記シリケート化合物の最も反応性の高いアルキル基と上述した重合体中の水酸基とが反応し、上記シリケート化合物の最も反応性の高い部分をブロックするため、テトラメチルシリケート及び/又はテトラエチルシリケートの低縮合物に比べて、塗料貯蔵中に縮合反応や他の樹脂成分と反応を起こしにくく、塗料の貯蔵安定性に優れ、貯蔵後の塗料から得られる塗膜も充分な親水性を示し、塗膜表面に高い耐汚染性を、貯蔵後も安定的に発現する。
【0134】
また、上記シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)が、上述した樹脂成分に上記シリケート化合物をグラフトしたものである場合、塗料中の他の樹脂成分との相溶性に優れ、塗装後における親水基の塗膜表層への局在化が適度に抑えられることから、テトラメチルシリケート及び/又はその低縮合物に比べて、耐水性が向上する。
【0135】
塗料配合
本発明において、酸/エポキシ硬化型のクリヤー塗料及びソリッドカラー塗料における添加するシリケート化合物(i)の量、及び、シリケート化合物のグラフト量は、各樹脂成分全量に対して、上記シリケート化合物(i)及びシリケート化合物のグラフト量の合計として0.1〜50質量%である。0.1質量%未満であると、塗膜の親水性の発現が充分ではなく、耐汚染性が劣り、50質量%を超えると、塗膜が優れた外観性を保つのに充分な耐水性を有さないおそれがある。好ましくは3〜25質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。なお、上記質量%は、固形分換算の値であり、上記樹脂成分全量とは、上記シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を含む場合には、上記水酸基含有重合体(ii−a)を含む量とする。
【0136】
本発明で用いられる上塗り塗料として酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料を使用する場合には、通常、硬化触媒が含まれる。
上記硬化触媒としては特に限定されず、エステル化反応(酸とエポキシとの反応)に通常用いられるものでよいが、例えば、第4級アンモニウム塩が好ましい。具体的には、上述した第4級アンモニウム塩の他に、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0137】
また、上記上塗り塗料としてソリッドカラー塗料の場合であって、硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を用いる場合の硬化触媒としては特に限定されず、例えば、ジブチルスズラウレート、ジブチルスズオクテート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物類;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタニウムビス(アセチルアセトナート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトナート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトナート)等の金属キレート化合物類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機スズ化合物類が一般的である。
【0138】
上記アミノ樹脂を硬化剤として用いる場合には、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等の有機ホスホン酸類;これらのアミン塩等の硬化触媒を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記硬化触媒の配合量は、全樹脂固形分に対し、0.01〜3.0質量%が好ましい。
【0139】
上記上塗り塗料がソリッドカラー塗料の場合は、顔料を含む。クリヤー塗料の場合には、通常、顔料を含まないものであるが、塗膜の透明感を損なわない程度に、着色顔料を含めてもよい。
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料;黄塩、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等の無機系着色顔料;炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0140】
上記クリヤー塗料及びソリッドカラー塗料には、架橋密度を上げ、耐水性の向上を図るためのメラミン・ホルムアルデヒド樹脂、塗膜の耐候性向上のための紫外線吸収剤や光安定剤等、レオロジーコントロールのためのマイクロジェルや表面調整剤、粘度調整等のための希釈剤等を配合してもよい。
上記希釈剤の配合量は、上記希釈剤を添加した塗料の総質量に対し、60質量%以下、特に55質量%以下が好ましい。
【0141】
上記紫外線吸収剤、光安定剤としては特に限定されず、例えば、チヌビン−900(チバガイギー社製)、サノールLS−292(三共社製)等が挙げられる。上記希釈剤としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ハイドロカーボン、エステル等の溶剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0142】
上記クリヤー塗料及びソリッドカラー塗料の調製法としては特に限定されず、上述した各配合物を攪拌機等により攪拌することにより行うことができ、上記顔料を含む場合は、ニーダー、ロール等を用いて混練することにより行うこともできる。
【0143】
上記クリヤー塗料及びソリッドカラー塗料の固形分含有量は、通常40質量%以上である。また、塗布時における固形分含有量は、通常15〜65質量%である。
【0144】
上記シリケート化合物(i)及び/又はそれをグラフトしてなる樹脂(ii)は、塗布する前に塗料中に添加して混合してもよく、塗料を製造する段階で、予め塗料中に添加して混合しておいてもよい。予め塗料中に添加して混合しておく場合には、加水分解や縮合反応が進行しないように、水が混入しない条件で保管しておくことが好ましい。
【0145】
ベース塗料
上記上塗り塗料として、ベース塗料及びクリヤー塗料を用いる場合、ベース塗料としては特に限定されず、例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤、顔料及びその他の添加剤からなるものを挙げることができる。
上記塗膜形成性樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。上記硬化剤及びそれとともに用いる硬化触媒としては、上述のものを使用することができる。
【0146】
上記顔料としては、着色顔料、体質顔料及び/又は光輝性顔料を単独で、又は、2種以上を併用することができる。
上記着色顔料および体質顔料としては、上記例示したものを挙げることができる。
上記光輝性顔料としては特に限定されず、例えば、アルミニウム粉、銅粉、ニッケル粉、ステンレス粉、マイカ粉、干渉マイカ粉、着色マイカ粉、アルミナフレーク、グラファイトフレーク等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0147】
上記ベース塗料の固形分含有量は、通常60質量%以下である。また、塗布時における固形分含有量は、通常10〜50質量%である。
上記ベース塗料に添加することができる添加剤やその調製方法としては、上述のもの等を挙げることができる。
【0148】
塗膜形成方法
本発明において、基材には、上記親水性又は親水化可能な塗膜を形成する前に、防食性、耐チッピング性等を担保する観点から、予め、下塗り塗膜層(電着塗膜層、又は、必要により中塗り塗膜層)が形成されていることが好ましい。
【0149】
本発明においては、上記の工程を含むものであれば、更に他の工程を含むものであってもよい。
具体的には、ベース塗料及びクリヤー塗料の場合には、それぞれを塗装した後、各々焼き付け硬化を行ってもよいし、プレヒートを行うこともできる。ただし、本発明の塗膜形成方法は、自動車等のライン内補修又は再塗装に使用するものであることから、最外層であるクリヤー塗料やソリッドカラー塗料を塗装した後は焼き付けが必要である。
【0150】
また、上記ベース塗料を塗装し、クリヤー塗料をウェットオンウェットで塗装して、加熱硬化させることにより、2コート1べーク(2C1B)の複層塗膜を形成させておくことができる。
更に、ベース塗料としてカラーベース塗料と呼ばれる着色顔料含有ベース塗料及び光輝性顔料含有ベース塗料の2種類を用いる場合、上記カラーベース塗料を塗装して単独で加熱硬化させ、その上に上記光輝性顔料含有ベース塗料及びクリヤー塗料をウェットオンウェットで塗装して、加熱硬化させることができる。また、上記カラーベース塗膜を単独で加熱硬化させないときには、その上にウェットオンウェットで上記光輝性顔料含有ベース塗料を塗装し、更にその上に、クリヤー塗料をウェットオンウェットで塗装した後、加熱硬化させることもできる。即ち、上記カラーベース塗膜、上記光輝性顔料含有ベース塗膜及び上記クリヤー塗膜をウェットオンウェットで組合わせ、複合塗膜を形成した後に加熱硬化することにより、3コート1ベーク(3C1B)の複合塗膜を形成することができ、更に優れた意匠性を示す複合塗膜を形成することができる。
【0151】
更に、ベース塗料及びクリヤー塗料をウェットオンウェットで塗装、加熱硬化させ、更にその上に上塗り用クリヤー塗料をウェットオンドライで塗装した後加熱硬化させることもできる。この場合には、最外層に塗装される上塗り用クリヤー塗料が、親水性又は親水化可能な塗膜を形成することができればよい。
【0152】
上記ベース塗料及びクリヤー塗料、並びに、ソリッドカラー塗料は、スプレー塗装、刷毛塗り塗装、浸漬塗装、静電塗装、ロール塗装、流れ塗装等により塗装することができる。硬化温度は、100〜180℃、好ましくは120〜160℃で高い架橋度の硬化塗膜となる。硬化時間は、硬化温度等により変化するが、120〜160℃で10〜30分が適当である。
【0153】
上記ベース塗料による乾燥膜厚は、一般に8〜40μm程度が好ましく、より好ましくは10〜30μm程度である。乾燥膜厚が8μm未満であると、下地が隠蔽できず、40μmを超えると、塗装時にワキ、タレ等の不具合が起こることもある。
【0154】
また、クリヤー塗料、及び、クリヤー塗料を塗装しない場合のソリッドカラー塗料による乾燥膜厚は、所望の用途により変化するが、多くの場合10〜80μmが好ましく、より好ましくは15〜60μm程度である。乾燥膜厚が10μm未満であると、下地が隠蔽できず、60μmを超えると、塗装時にワキ、タレ等の不具合が起こることもある。
【0155】
本発明においては、親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材上に、シラノール基を含有する親水化処理剤を塗布することによって、降雨前等のように基材上の塗膜が充分に親水性になっていない状況下においても、耐汚染性が発揮される。また、表面をポリッシュした部分には、シリケート化合物及び/又はこれをグラフトした樹脂が残存しているが、加水分解が十分に進行していないため、親水性になっていないが、親水化処理剤が塗布されていることにより、このポリッシュ部分の耐汚染性にも優れている。
【0156】
更に、長期暴露時には、表面の親水化処理剤の塗膜は雨で少しずつ溶解して、消失していくが、基材上に予め形成されている親水性又は親水化可能な塗膜が充分に親水性となっているため、継続して親水性を保つことができる。これは、この親水化処理剤を塗布して得られる被膜が、水分を完全に遮断するわけではなく、その下に位置する親水化可能な塗膜が十分に加水分解できる量の水を供給しているものによると考えられる。
【0157】
また、本発明において、上記上塗り塗料のうち、クリヤー塗料が酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料の場合には、以下の優れた効果が期待できる。
本発明で用いられる酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料は、酸無水物基を変性(ハーフエステル化)しているため、活性水素化合物を混合してもそれ以上の反応が起こらず一液化(ワンパック化)が可能である。しかし、単に酸無水物基を含有する重合体を用いるときには、活性水素化合物との反応が常温付近でも進行するため、同一系内に保存することはゲル化を引き起こし適当でない。
【0158】
また、塗膜形成時の活性水素化合物との硬化反応においては、酸無水物基の変性剤を種々変更することにより、硬化速度を変えることが可能であり、優れた外観を有する塗膜が形成可能である。
【0159】
本発明で用いられるクリヤー塗料が酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料の場合の硬化反応は、以下のように進行していると考えられる。先ず、ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)中のハーフエステル化されて開環している酸無水物変性基が硬化温度で再び閉環して酸無水物基に一旦戻る。
次いで、エポキシ基含有アクリル共重合体(II)中の水酸基が反応して再びハーフエステルを形成する。次いで、ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)中の残りのカルボキシル基がエポキシ基含有アクリル共重合体(II)中のエポキシ基と反応して、ジエステルを形成する。
【0160】
更に、シリケート化合物(i)及び/又はそれをグラフトしてなる樹脂(ii)中のR2 O−基が、ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)の酸触媒作用により、加水分解縮合すると同時にエポキシ基含有アクリル共重合体(II)中の水酸基と反応して硬化が進行する。
【0161】
すなわち、上記硬化反応は、エポキシ基含有アクリル共重合体(II)中のエポキシ基及び水酸基の2つの基が、ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)中の酸無水物変性基であるカルボキシル基及びエステル基に結合し、並びに、エポキシ基含有アクリル共重合体(II)中の水酸基が、シリケート化合物(i)及び/又はそれをグラフトしてなる樹脂(ii)やその加水分解縮合物にそれぞれ結合して、2種類又は3種類の成分が相互に反応することにより硬化が進行すると考えられる。
【0162】
また、上記酸/エポキシ硬化型クリヤー塗料が、更に、上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)を樹脂成分とする場合には、上述した樹脂成分と、上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(III)とも、相互に反応することにより硬化が進行すると考えられる。
【0163】
一方、上塗り塗料がソリッドカラー塗料の場合の硬化反応は、水酸基含有アクリル樹脂と硬化剤との硬化反応に加え、シリケート化合物(i)及び/又はそれをグラフトしてなる樹脂(ii)中のR2 O−基が触媒の存在により、加水分解縮合すると同時に水酸基含有アクリル樹脂及び硬化剤と反応して硬化が進行すると考えられる。
従って、本発明の塗膜形成方法により形成された硬化塗膜は堅固な構造となり、耐候性、耐薬品性、耐擦傷性等に優れることとなる。
【0164】
更に、シリケート化合物(i)としてアルコール変性シリケート化合物を使用する場合、及び、上記シリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を使用する場合は、塗料貯蔵中に縮合反応や他の樹脂成分と反応を起こしにくいために、貯蔵安定性に優れている。
【0165】
本発明の塗膜形成方法により形成されてなる塗膜を有する自動車車体は、耐候性、耐薬品性、耐擦傷性等の基本性能を有し、また、高い親水性を有するために汚れがつきにくいだけでなく、降雨により洗車したのと同様な効果が得られ、メンテナンスフリーとすることができ、更に、耐水性に優れたものである。このような自動車車体もまた、本発明の一つである。
【0166】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、%は質量%を示す。
【0167】
合成例1 親水化処理剤A
「MKCシリケートMS51」(三菱化学社製のメチルシリケートの縮合物、SiO2 含有量51%;式(1)におけるnは平均値として5)100gにトリス(2,4−ペンタンジオナート)アルミニウム10%エタノール溶液2.5gを加えて溶解させた。この混合液1.5gにポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(エチレンオキサイドユニットの繰返し数10;HLB14.1)0.0285g(水に対して0.05質量%)を加え、エタノール41gに溶解させた。ついで水57gを徐々に加えて撹拌し、室温で一夜放置して親水化処理剤Aを得た。
【0168】
合成例2〜7 親水化処理剤B〜G
合成例1において、ノニオン系界面活性剤として、表1に示した種類及び量のものを用いたこと以外は同様にして、親水化処理剤B〜E及び比較用親水化処理剤F、Gを得た。
【0169】
【表1】
【0170】
合成例8 ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管及び滴下ロートを備えた3Lの反応槽に、キシレン330gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート110gとを仕込み127℃に昇温した。この反応槽に、滴下ロートを用い、スチレン300g、メタクリル酸−2−エチルヘキシル360g、アクリル酸イソブチル112g、アクリル酸26g、無水マレイン酸202g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート90gとキシレン100gとからなる溶液を3時間かけて滴下した。
【0171】
滴下終了後30分間にわたり127℃で保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10gとキシレン50gとからなる溶液を30分間で滴下した。この滴下終了後、更に1時間、127℃にて反応を継続させ、数平均分子量(Mn)3000のアクリルポリ酸無水物を含む不揮発分53%のワニスを得た。
【0172】
得られたワニス1990gに、メタノール100gを加え、70℃で23時間反応させ、酸価127mgKOH/g(固形分換算)のハーフエステル酸基含有アクリル共重合体を含むワニスを得た。なお、このハーフエステル酸基含有アクリル共重合体について赤外吸収スペクトルを測定し、酸無水物基の吸収(1785cm-1)が消失しているのを確認した。
【0173】
合成例9 カルボキシル基含有ポリエステル樹脂
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管、水分離機及び精留塔を備えた反応層に、ペンタエリスリトール136g、ε−カプロラクトン456g及びジブチル錫オキサイド0.1gを仕込み170℃に昇温し、3時間にわたり170℃で保持した。その後、加温して溶解したヘキサヒドロ無水フタル酸539gを加え、150℃で1時間保持した後、3−エトキシプロピオン酸エチル464gを加え、数平均分子量(Mn)1700、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=1.28、酸価174mgKOH/g(固形分換算)、水酸基価25mgKOH/g(固形分換算)のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を含む不揮発分71%のワニスを得た。
【0174】
合成例10 エポキシ基含有アクリル共重合体
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管及び滴下ロートを備えた2Lの反応槽に、キシレン500gを仕込み125℃に昇温した。この反応槽に滴下ロートを用い、メタクリル酸グリシジル380g、スチレン200g、メタクリル酸−2−エチルヘキシル292g、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル128g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート100gとキシレン100gとからなる溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後30分間にわたり125℃で保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10gとキシレン10gとからなる溶液を30分間で滴下した。この滴下終了後、更に1時間、125℃にて反応を継続させ、数平均分子量(Mn)3700、エポキシ当量400(固形分換算)、水酸基価47mgKOH/g(固形分換算)のエポキシ基含有アクリル樹脂を含む不揮発分62%のワニスを得た。
【0175】
合成例11 シリケートグラフトアクリル樹脂
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素導入管を備えた1Lの反応槽の内部を窒素ガスで置換し、メチルシリケートとしてMS−56(商品名、三菱化学社製;式(2)におけるmは平均値として10)100g、及び、合成例10で得たエポキシ基含有アクリル共重合体270gを加えて、90℃で12時間グラフト反応を行い、加水分解可能なシリケート化合物をグラフトしたエポキシ基含有アクリル共重合体であるシリケートグラフト重合体を含む不揮発分72%のワニスを得た。
【0176】
合成例12 クリヤー塗料の調製
下記に示した配合(配合量は樹脂固形分である)で各配合物を仕込み、ディスパー攪拌して、クリヤー塗料を得た。
ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体 30.8g
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂 20.0g
エポキシ基含有アクリル共重合体 34.1g
シリケートグラフトアクリル樹脂 26.6g
得られたクリヤー塗料は、酢酸ブチル/キシレン=1/1からなるシンナーにより、フォードカップNo.4で20秒の塗装粘度まで希釈・調整した。
【0177】
合成例13 ポリエステル樹脂
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応容器に、トリメチロールプロパン12.4g、ネオペンチルグリコール21.5g、ヒドロキシプロピオン酸ネオペンチルグリコールエステル8.3g、ヘキサヒドロ無水フタル酸28.7g、カージュラE−10(シェル化学製)9.3g、イソフタル酸20.6g、ジブチルスズオキサイド0.02gを仕込み、180℃まで昇温した。180℃から230℃まで3時間かけて昇湿させながら、エステル化反応で生成する反応水を系外に留去する。230℃で反応を継続し、酸価10で反応を終了し、120℃まで冷却した。プラクセルM(ダイセル社製)18.1gを仕込み、150℃で2時間攪拌をすることによりエステル交換反応を完結させた。その後、100℃に冷却し、キシレン37gで溶解してポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の不揮発分は74.5%、固形分酸価8mgKOH/g、数平均分子量2100であった。
【0178】
合成例14 ソリッドカラー塗料の調製
下記配合(配合量は樹脂固形分である)により白ソリッド塗料を得た後、ソルベッソ100(エッソスタンダード石油社製)/酢酸ブチル=1/1からなるシンナーにより、フォードカップNo.4で23秒の塗装粘度まで希釈・調整した。
ポリエステル樹脂 56g
ユーバン128(三井化学製、メラミン樹脂) 30g
酸化チタン 40g
【0179】
実施例1〜5、比較例1〜3
リン酸処理鋼板に日本ペイント社製カチオン電着塗料パワートップV−20及びポリエステル・メラミン系グレー中塗り塗料オルガH−870(いずれも商品名)をそれぞれ、乾燥膜厚が25μmおよび40μmになるように塗装して加熱硬化させた試験板に、日本ペイント社製オルガH−300−18G(商品名)のシルバーメタリックベース塗料を静電塗装機AutoREA(商品名、ランズバーグ社製)により霧化圧5Kg/cm2 で塗布し、約7分間セッティング後、その上にウエットオンウエットで、合成例12で得られたクリヤー塗料をスプレーで塗布し、約7分間セッティング後140℃で30分間焼き付け乾燥を行い、塗装方式として2コート1ベーク(2C1B)の1コート目の塗装試験板をそれぞれ作製し、デシケータ中で30分間放置した。30分間放置後のクリヤー膜の水接触角は86度であった。なお、ベース塗料およびクリヤー塗料による硬化塗膜は乾燥膜厚がそれぞれ15μmおよび40μmとなるように塗装した。
【0180】
続いて、合成例1〜7で得られた親水化処理剤A〜Gを塗装試験板にそれぞれスプレーで乾燥膜厚0.1〜0.5μmとなるように塗布し、60℃で5分間乾燥した。
得られた複層塗膜は以下に示す評価方法により評価した。その結果を表2に示した。尚、比較例3では親水化処理剤を用いなかった。
【0181】
評価方法
(1)塗布・乾燥直後の水接触角の測定及び濡れ性評価
上記で得られた試験板の水接触角を測定した。更に、濡れ性を目視により評価した。
(2)屋外曝露耐汚染性試験
JIS K5400 9.9に準拠して屋外曝露試験を行い、2週間、1月及び6月経過後に、水接触角及び初期塗膜との明度差(ΔL)を測定した。
【0182】
【表2】
【0183】
実施例6〜8、比較例4〜5
実施例1で得られた中塗り塗板(ベース塗料、クリヤー塗料を塗装していないもの)に、合成例14で得られた白ソリッド塗料をスプレーで塗布し、約7分間セッティング後140℃で30分間焼き付け乾燥を行った後、実施例1と同様にして30分間放置し、30分間放置後の水接触角は86度であった。なお、白ソリッド塗料による硬化塗膜は乾燥膜厚が40μmとなるように塗装した。
続いて、合成例1〜3、6に示した親水化処理剤A〜C、Fを塗装試験板にそれぞれスプレーで塗布し、60℃で5分間乾燥した。実施例1と同様にして評価し、結果を表3に示した。尚、比較例5では親水化処理剤を用いなかった。
【0184】
【表3】
【0185】
表2及び3から明らかなように、実施例1〜8で形成された複層塗膜は、表面に塗装された親水化処理剤によって、早期に水接触角が40°以下となって親水性を獲得し、6カ月後までも汚れが付着しなかった。
HLBが10〜15の範囲外である界面活性剤を使用した比較例1、2、4および親水化処理剤を用いなかった比較例3、5は、濡れ性が不均一であったり、及び/又は、水接触角が高く耐汚染性が発揮されるまでに時間がかかった。したがって、比較例1〜5は、約6カ月後にクリヤー塗膜やソリッドカラー塗膜の親水性が向上するまでに、汚れが付着してしまった。
【0186】
【発明の効果】
本発明の塗膜形成方法は、上述の構成よりなるので、表面に塗布された親水化処理剤により、親水化速度が速く、降雨前であっても耐汚染性を発揮し、かつ、表面をポリッシュした部分の耐汚染性にも優れており、耐汚染性が長期にわたり持続する。また、高い架橋密度を有するために耐候性等の基本性能をも有している。
本発明の自動車車体は、優れた外観及び塗膜性能を示し、洗車のいらないメンテナンスフリーとすることができる。
Claims (8)
- シリケート化合物の加水分解物の含有量は、親水化処理剤中に0.05〜10質量%である請求項1記載の塗膜形成方法。
- 親水性又は親水化可能な塗膜表面を有する基材は、基材に上塗り塗料が塗布されたものであり、
前記上塗り塗料は、ベース塗料及びクリヤー塗料からなるものであって、前記上塗り塗料の塗布は、前記ベース塗料及び前記クリヤー塗料をこの順で塗布するものであり、
前記クリヤー塗料は、下記式(2)で表されるシリケート化合物(i)、及び/又は、下記式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を含むものである請求項1又は2記載の塗膜形成方法。
- クリヤー塗料は、式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を含むものであって、ハーフエステル酸基含有アクリル共重合体(I)及びエポキシ基含有アクリル共重合体(II)を含んでいるものである請求項3記載の塗膜形成方法。
- ソリッドカラー塗料は、式(2)で表されるシリケート化合物をグラフトしてなる樹脂(ii)を含むものであって、更に、硬化剤を含むものである請求項5記載の塗膜形成方法。
- 親水化処理剤は、乾燥膜厚0.01〜10μmに塗布されるものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の塗膜形成方法。
- 請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の塗膜形成方法により形成されてなる塗膜を有する自動車車体。
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