JP3978289B2 - 光学式ピックアップ用支持軸およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光学式情報記録再生装置における光学式ピックアップ用支持軸およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビデオディスクプレーヤ、デジタルオーディオプレーヤや光ディスクファイル等の光学式情報記録再生装置において、ディスク上の信号トラック(情報ピット列)と情報を検出するための光ビームをディスク面上の適正位置に集光させる対物レンズの光軸とにずれ(光軸の径方向ずれ)があると正確な読み取りができないので、通常、対物レンズの焦点ずれに対してはフォーカシングサーボにより、また、信号トラックのずれに対してはトラッキングサーボによって補償されるようになつている。この補償機能を有する装置として、多くの光学式ピックアップが知られているが、一例として、図1および図2に示す光学式ピックアップが挙げられる。
【0003】
図1および図2において、ベース1には支持軸2、コア3および磁石4が設けられ、支持軸2にはレンズホルダ10が回動可能に嵌合されている。そして、レンズホルダ10はホルダ本体11の中心部に軸受孔5が設けられ、外周部に駆動用コイル13、および軸受孔5の偏心位置に対物レンズ15を取り付けるためのレンズ取り付け孔14を有している。
【0004】
ここで、駆動用コイル13は軸受孔5の軸芯を中心として巻かれたフォーカスコイルと対物レンズ15の光軸方向に巻かれた軸受孔5の軸芯を含む平面を基準面として対向位置に配置されるトラッキングコイル(図示省略)とを含んでいて、フォーカスコイルおよびトラッキングコイルに流れる電流に応じてレンズホルダ10の軸方向の移動量および回動量が制御される。
【0005】
このような制御の応答性を向上させるため、種々の改良がなされている。例えば、ホルダ本体11が支持軸2を支持する部分に軸受部が形成され、このホルダ本体11の支持軸と接する内面、およびこの内面に接する支持軸2の外周面とにフッ素樹脂含有の重合体で潤滑性被覆を形成させ、両者間の摺動特性を向上させることが考えられている(特開昭62−204440号公報参照)。また、被覆表面を滑らかにするため、被覆後、焼成され、研磨加工も行なわれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、コンピュータ等の記録媒体等に用いられるCD−ROMやCD−RAM等は、記録容量を大きくするため、トラックピッチ、ピット等が高密度化されつつある。また、デジタルビデオディスク(DVD)においては、記録容量を大きくするため、トラックピッチをコンパクトディスクやデジタルオーディオディスクの 1.6μm から 0.74 μm へ短縮し、また、最短ピット長さを0.87μm から O.4μm へ短縮し、高密度化を図っている。
【0007】
このように高密度化されたディスク上の信号トラックに光ビームを結像させるには、これまで以上の高精度が要求されるので、フォーカシングサーボ、トラッキングサーボの性能を向上させる他、支持軸2の寸法精度および嵌合すきまの精度を向上させて支持軸2による対物レンズの支持精度を上げ、ディスクの高密度化に対応する正確な読み取りを行なわせる必要がある。
【0008】
一方、その精度を向上させるために嵌合すきまを狭くすると、支持軸被覆層表面の微細形状が摺動特性に大きく影響するようになる。例えばセンターレス加工などの研磨工程による円周方向の微細な溝がレンズホルダの軸方向の動作不良原因となるおそれがある。
このため、従来の研磨加工、製造方法では、ディスクの高密度化に対応した要求精度を満足できないという問題がある。
【0009】
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、ディスクの高密度化に対応してレンズの支持精度がきわめて高い光学式ピックアップ用支持軸およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学式ピックアップ用支持軸は、レンズホルダの軸受孔に挿通して、レンズホルダの回動および軸方向移動を案内する支持軸であって、該支持軸は金属製円柱からなり、その円柱表面の少なくとも上記軸受孔との摺動面に被覆層を有し、該被覆層はフッ素系樹脂である固体潤滑剤とポリイミド系樹脂であるバインダ樹脂との混合物からなる焼き付け被膜を、研磨加工後にそのまま焼成することで研磨加工によって発生する被覆層表面の微細な凹凸が平坦化された被覆層であることを特徴とする。
【0011】
他の光学式ピックアップ用支持軸は、金属製円柱表面の被覆層がフッ素系樹脂である固体潤滑剤とポリイミド系樹脂であるバインダ樹脂との混合物からなる焼き付け被膜を、研磨加工後にラッピング仕上げした後、そのまま焼成することで研磨加工によって発生する被覆層表面の微細な凹凸が平坦化された被覆層であることを特徴とする。
【0013】
本発明の光学式ピックアップ用支持軸の製造方法は、金属製円柱の表面にフッ素系樹脂である固体潤滑剤とポリイミド系樹脂であるバインダ樹脂との混合物からなる被覆層を焼成して形成する工程と、上記被覆層表面を研磨する研磨工程と、研磨工程後にそのまま研磨表面を焼成する焼成工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
他の光学式ピックアップ用支持軸の製造方法は、金属製円柱の表面に固体潤滑剤とバインダ樹脂との混合物からなる被覆層を焼成して形成する工程と、上記被覆層表面を研磨する研磨工程と、上記研磨工程後にラッピング仕上げをする工程と、前記ラッピング工程後に、そのままラッピング仕上げ表面を焼成する焼成工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、上記焼成工程での焼成温度が 270〜 320℃であることを特徴とする。
【0016】
光学式ピックアップ用支持軸の被覆層が固体潤滑剤とバインダ樹脂との混合物からなる焼き付け被膜を研磨加工後に焼成した被覆層であるので、研磨加工により発生する円周方向の微細な溝や凸部が平坦化される。その結果、支持軸と軸受孔との隙間(嵌合隙間精度)を 4〜10μm にすることができるとともに、支持軸の軸方向の動作不良を抑えることができる。これにより対物レンズの支持精度を上げて高密度化された記録トラックヘ光ビームを集光させることができるようになる。
固体潤滑剤がフッ素系化合物、バインダ樹脂がポリイミド系樹脂であることにより、焼成による平坦化がより向上する。
【0017】
また、焼き付け被膜を研磨加工後にラッピング仕上げするか、あるいはラッピング仕上げ後、さらに焼成することにより、固体潤滑剤が被覆表面の微細な凹凸を覆い、研磨加工により発生する円周方向の微細な溝や凸部が平坦化される。その結果、上記作用に加えて支持軸の軸方向のレスポンス性が向上する。
【0018】
本発明の製造方法によれば、研磨加工のみの場合と比較して、支持軸の寸法精度が安定するので、高精度の光学式ピックアップ用支持軸を容易かつ確実に製造できるようになり、不良品の発生率(不良率)を削減することができる。
また、焼成温度を 270〜 320℃とすることにより、寸法精度の向上とともに、表面硬度が向上する。
【0019】
また、ラッピング仕上げ工程、またはさらに焼成工程とを含むことにより、上記作用に加えて、得られた支持軸を用いた光学式ピックアップのフォーカシング、トラッキング動作がスムーズに行なわれ、情報の検出精度がさらに向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の光学式ピックアップ用支持軸を図1を参照して説明する。
図1に示すように、光学式ピックアップ用支持軸2は、レンズホルダ本体11の軸受孔5に挿通してホルダ本体11の回動および軸方向移動を案内する機能を有する。支持軸2の本体(基材)は金属製円柱で形成されるとともに支持軸2の少なくとも軸受孔5との摺動面に固形潤滑剤とバインダ樹脂との混合物からなる焼き付け被膜を、研磨加工後に焼成した被覆層2aが設けられている。
または、研磨加工後にラッピング仕上げするか、あるいはラッピング仕上げ後、さらに焼成した被覆層2aが設けられている。
研磨加工後の被覆層は、円筒度が 0〜9 μm 、同軸度が 0〜6 μm となることが好ましく、また、支持軸2の基材となる金属製円柱が 0〜9 μm の円筒度を満足することも必要である。
なお、円筒度とは、円筒部分の幾何学的円筒面からの狂いの大きさをいい、最も半径の小さい円筒面の半径と、最も半径の大きい円筒面の半径との差異で表わされる。また、同軸度とは、円筒が有する軸線の基準軸線からの狂いの大きさをいう。
【0021】
この支持軸2の本体は、SUS301、SUS303S、SUS420F、SUS420J2、SUS630等のステンレス鋼その他の種々の金属であつてもよいが、例えばSUS420J2等のステンレス鋼またはこれらに焼入れ等の熱処理を施した鋼材は、支持軸2の本体の寸法精度を高めることができ、また後述する焼成などの高温熱処理を行なっても、その寸法精度を維持できるので好ましい。また、ステンレス鋼を用いると、例えば光学式情報記録再生装置内で、電源のオン/オフなどによる温度変化で結露が発生することがあっても錆が発生しないことからも好ましく、さらに後述する焼成工程中、またはこの工程の後に錆が発生することを防止できることからも好ましい。
【0022】
支持軸2の本体は、一様な外径寸法の円柱体であって、その寸法形状が高精度化されおり、不良品の発生率が低く製造コストを低減できるものである。支持軸の長さは約 5〜 20mm 、支持軸の直径は 0.8〜3mm 、直径の寸法精度は 0〜 10 μm 、好ましくは 0〜 8μm の公差の範囲内にあることが高精度であって好ましい。
【0023】
この支持軸2の摺動性を向上させるため、支持軸2の少なくとも軸受部と摺動する部分、すなわち支持軸2の軸受孔5に挿入される部分に固体潤滑剤とバインダ樹脂との混合物からなる被覆層を有している。この被覆層は、フッ素系化合物などの固体潤滑剤とポリイミド系樹脂などのバインダ樹脂との混合物を含むコーティング液を塗布・焼成して得られる。
【0024】
混合物における固体潤滑剤の配合割合は 5〜 95 重量%、バインダ樹脂の配合割合は 95 〜 5重量%である。この配合割合は、上記範囲内において、支持軸の使用条件や摩擦・摩耗特性等の仕様等に基づき決定すればよく、具体的には制御の応答性を向上させることや、被膜の摩耗量を少なくして寸法精度を長期間保つなど、要求される特性に応じて決定される。
上記の理由により、より好ましい配合量は、固体潤滑剤 15 〜 85 重量%、バインダ樹脂 85 〜 15 重量%であり、さらに好ましくは固体潤滑剤 30 〜 70 重量%、バインダ樹脂 70 〜 30 重量%であり、光学式ピックアップ用支持軸のように低面圧下での仕様・条件下であれば、固体潤滑剤 40 〜 60 重量%、バインダ樹脂 60 〜 40 重量%のものが比較的好ましい。また、固体潤滑剤が 5重量%未満であると摺動特性が期待できず、一方バインダ樹脂が 5重量%未満であると支持軸ヘの被覆層の結着性が不安定となる。
【0025】
固体潤滑剤の具体例としては、フッ素系樹脂およびフッ化黒鉛等のフッ素系化合物粉末、黒鉛等の炭素系粉末、二硫化モリブデン等のモリブデン系粉末等が挙げられる。
これらの中でフッ素系化合物粉末が焼成による平坦化を向上することができるので好ましい。
【0026】
フッ素系化合物の一例としてのフッ素系樹脂は、フッ素を含有する樹脂であり、具体例としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル−フルオロオレフイン共重合体(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素系樹脂が挙げられる。
【0027】
PTFEなどのフッ素系樹脂の形態は、成形用の粉末であってもよく、またいわゆる固体潤滑剤の微粉末であってもよい。その平均粒径は、 0.1〜 20 μm 、好ましくは 0.2〜 10 μm の範囲である。平均粒径がその範囲のものは、塗布液中で凝集を起こさず、また塗布・乾燥・焼成後の被覆層の平滑性を維持する。
【0028】
バインダ樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノ一ル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などのポリアリーレンスルフィド系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂等を挙げることができる。
これらの中でもポリイミド系樹脂が好ましい。研磨加工とその後の焼成、あるいは研磨加工後のラッピングによる平坦化が向上するためである。
また、バインダ樹脂は、架橋性を有する樹脂材であることが好ましい。焼成時に架橋することによって支持軸の基材または下地材料とフッ素系化合物とを良好に密着させることができる。
【0029】
上記ポリイミド系樹脂は、分子内に少なくともイミド結合を有する樹脂であって、レンズホルダの軸受孔との摺動時に摩滅することなく、フッ素系樹脂を結着するとともに支持軸本体である金属製円柱との密着性に優れた樹脂であればよい。例えばポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエステルアミドイミド樹脂等を挙げることができる。
【0030】
これらポリイミド系樹脂の中で、ポリアミドイミド樹脂およびポリイミド樹脂が好ましく、特にポリアミドイミド樹脂が焼成による平坦化がより向上するため好ましい。
また、イミド結合またはアミド結合とが芳香族基を介して結合している芳香族ポリイミド系樹脂が好ましい。芳香族系樹脂であるとフッ素系樹脂との結着性に優れ、かつ得られる被覆層の耐摩耗性や耐熱性が優れる。
【0031】
ポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンとをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)やジメチルアセトアミド(DMAC)等の非プロトン系極性溶媒中で開環重付加反応により得られるポリイミド前駆体のポリアミドカルボン酸を加熱脱水閉環することなどにより得られる。バインダ樹脂としては、ポリアミドカルボン酸の状態であっても、またポリイミドの状態であっても、さらにはこれらが混在している状態であっても使用することができる。
【0032】
ポリアミドイミド樹脂は、分子内にイミド結合とアミド結合とを有する樹脂である。また、芳香族ポリアミドイミド樹脂のイミド結合は、ポリアミドカルボン酸などの前駆体であっても、また閉環したイミド環であってもよく、さらにはそれらが混在している状態であってもよい。
【0033】
このような芳香族ポリアミドイミド樹脂は、芳香族第一級ジアミン、例えばジフェニルメタンジアミンと芳香族三塩基酸無水物、例えばトリメリット酸無水物のモノまたはジアシルハライド誘導体から製造されるポリアミドイミド、芳香族三塩基酸無水物と芳香族ジイソシアネート化合物、例えばジフェニルメタンジイソシアネートとから製造されるポリアミドイミドなどがあり、さらにアミド結合に比べてイミド結合の比率を大きくしたポリアミドイミドとして、芳香族、脂肪族または脂環族ジイソシアネート化合物と芳香族四塩基酸二無水物および芳香族三塩基酸無水物とから製造されるポリアミドイミド等があり、いずれのポリアミドイミド樹脂であっても使用することができる。
【0034】
また、これらの樹脂をそれぞれ 2種類以上を混合して使用することもできる。このようにして形成された被膜を支持軸の少なくとも摺動面に設け、研磨加工後に焼成することにより、摩擦摩耗性、寸法精度等の諸特性を備えた被覆層を有する支持軸が得られる。
【0035】
フッ素樹脂を含む表面被覆層を形成する被覆用混合物の具体例としては、NTN精密樹脂社製のベアリ−FL7060が挙げられる。
【0036】
被覆方法は、例えば吹き付け等の霧化塗布法(スプレーコーティング)、浸漬法(ディッピング)等を採用できる。霧化塗布方法は、塗布液が微小な粒子となって被塗物に付着するので被覆層の厚みを精度よく形成することができる。浸漬法では塗布液の歩留りを向上でき、塗布液を無駄にしないので好ましい。
支持軸は、被覆用混合物(コーティング用組成物)をコーティングした後、乾燥し、さらに加熱される。
【0037】
コーティング膜の加熱温度は、たとえば上記フッ素系樹脂の融点よりも低い温度で加熱されればよく、通常、 150〜300 ℃、好ましくは 180〜280 ℃である。 150℃未満ではバインダ樹脂の架橋が進行せず、混合樹脂被覆層の支持軸に対する密着性が期待できない。
【0038】
研磨加工前における被覆層に対する加熱焼成温度は、具体的には充分な密着強度を得るために、 200〜 270℃で行なうことが好ましい。
なお、短時間で急激に加熱して被覆層を加熱焼成しようとすると、ポリイミド系樹脂の閉環反応により発生する水や、溶剤が沸点を越えて気化し、蒸発しようとする時に体積が膨張し、被覆層に泡状の膨れや穴等のいわゆる「はじき」、「へこみ」、「わき」、「われ」、「ふくれ」等の不具合が発生するが、徐々に一定時間の間で一定温度に保持しその後に加熱焼成工程に移るようにすることにより、このような不具合の発生を防ぐことができる。
【0039】
上記工程でできる被覆層の厚みは 20 〜 50 μm 、研磨加工後の被覆層の厚さは、 5〜 15 μm が適当である。被覆層が薄すぎると耐摩耗性に期待できず、厚すぎると被覆層が無駄になるばかりか剥離するおそれがある。
【0040】
上述の被覆層は、支持軸本体の長さに対して支持軸端部から 50 〜 95 %、好ましくは 60 〜 90 %、より好ましくは 70 〜 80 %の長さであれば、研磨加工、特にセンターレス研磨加工の精度が確保できる。被覆層部分の長さが 50 %より少ないと、光学式ピックアップ装置全体の小型化(コンパクト化)に寄与できず、また基板の取り付け孔へ支持軸を圧入嵌合する時の嵌合長さが多くなるので、取り付け性が低下する。また、センターレス研磨加工時の支持軸の姿勢が不安定となり、所望の円筒度および同軸度が得られない。
【0041】
被覆層部分の長さが 95 %を越えると、ラッピング時のチャック長さが不足し、姿勢が不安定となり、所望の円筒度および同軸度が得られなくなる。また、支持軸と基板の取り付け孔がタイト(整合)であるために、支持軸を基板に取り付けたときに被覆層が剥離する可能性がある。また、例えば支持軸2の未被覆部分(金属製円柱の金属露出長さ部分)の軸方向長さは、支持軸2の直径と等しい軸方向長さか、または支持軸2の直径の長さよりも約 1〜5 倍の長さ、好ましくは約 1〜3 倍の軸方向長さとすることも好ましい。支持軸2の直径よりも未被覆部分が短かければ、コーティング時やベース1(基板)の取り付け後の支持軸2の安定性に期待できず、支持軸2の軸方向長さが支持軸2の直径の約 5倍を越える軸方向長さでは、光学式ピックアップ装置全体が小型化できず、また支持軸2のベース(基板)1への圧入嵌合性等の取扱いが低下すると考えられる。もう一方の支持軸端部から支持軸全体に対して 5〜 50 %の未被覆部分(金属露出部分)は、マスキング等により形成される。
【0042】
上記被覆層を形成した後、研磨加工を行なうことにより、支持軸と軸受孔との隙間の均一性(嵌合隙間精度)を上げる。研磨加工の方法は、周知の方法であつてもよいが、特に支持軸の軸両端を保持せずに転動させながら、その外周面を研磨するセンターレス研磨加工を行なうことにより、さらに嵌合隙間精度を上げることができる。
【0043】
上記加工による支持軸の所要の精度は、少なくとも支持軸の表面に被覆層が被覆されてレンズホルダが回動・揺動および軸方向に往復移動する部分において、円筒度で 0〜9 μm 、好ましくは 0〜5 μm である。また、所要の同軸度は、 0〜6 μm である。円筒度が 9μm を越えたり、同軸度が 6μm を越えると、レンズが信号トラックに焦点を合わせにくくなるという不都合が生じる。また、円筒度および同軸度の数値範囲でいずれも 0μm を含んでいるが、このときは被覆層が完全に均一に塗布されていて最も望ましい状態である。
【0044】
また、研磨加工後の上記支持軸の表面粗さ、特にJIS B 0601-1994 で定義される算術平均粗さ(Ra)は、 0〜1 μm 、好ましくは 0〜0.1 μm がよく、さらに 0〜0.08μm がより好ましい。Raが 0.1μm を越え、特に 1μm を越えると、支持軸のスムーズな動きを妨げることになり、レスポンス性が悪くなる場合が生ずる。また、Raが 0.1μm 以下であっても、軸受孔の形状や荷重等の条件によっては動作不良が発生する場合がある。
【0045】
研磨加工により被覆層表面を研磨した支持軸をさらに焼成する。研磨加工後の加熱焼成条件は、 270〜320 ℃の範囲の温度で 15 〜180 分保持するのが好ましい。この条件で焼成することにより、研磨加工により発生する被覆層表面の微細な凹凸が平坦化できる。具体的には、JIS B 0601-1994 で定義される算術平均粗さ(Ra)および十点平均粗さ(Rz)の値が小さくなる。
平坦化が促進される結果、真円度が向上し、特に動作不良が発生しやすい小さな隙間の場合にも良好な摺動性能が得られるようになる。また、上記加熱焼成条件であると、ポリイミド系樹脂の脱水素、再結合反応等が起こりやすくなり、その結果架橋構造となりやすく被覆層の表面硬度が向上し、摩擦係数の低下など摺動特性が向上する。
【0046】
ラッピング仕上げを組み合わせる場合には、研磨加工により被覆層表面を研磨した支持軸をラッピング仕上げする。ラッピング仕上げは、研磨加工に用いた砥石より粒度の細かい研磨シートまたは研磨ロールを使用し、好ましくはJISで定められた2000番〜8000番の研磨シートまたは研磨ロールであればよい。
また、ラッピング仕上げ後、さらに焼成することができる。焼成条件は、上記 270〜320 ℃の範囲の温度で 15 〜180 分を採用することができる。
ラッピング仕上げすることにより、あるいは、さらに焼成することにより、研磨加工により発生する被覆層表面の微細な凹凸が平坦化でき、算術平均粗さ(Ra)および十点平均粗さ(Rz)の値が小さくなる。その結果、真円度が向上し、特に動作不良が発生しやすい小さな隙間の場合にも良好な摺動性能が得られるようになる。
【0047】
【実施例】
実施例1
直径 1.5mm、長さ 10mm のステンレス(SUS420J2)製の光学式ピックアップ用支持軸を準備し、ラッピング研磨および洗浄を行なった。その後、NTN精密樹脂社製ベアリーFL7060を霧化吹付けコーティング後、段階的に加熱して最終的に 230℃で 1時間加熱することにより約 30 μm の被膜を形成した。この支持軸をセンターレス研磨加工して約 10 μm の厚さの被覆層を有する支持軸を得た。この支持軸を 300℃で 1時間加熱焼成した。なお、支持軸の金属面はテンパーカラーがつき薄茶色に変色していた。
センターレス研磨加工前後での支持軸表面における表面粗さを測定した。その測定結果を粗さ曲線として図3に示す。図3(a)は研磨加工後焼成前を、図3(b)は焼成後をそれぞれ示す。
図3の測定結果から求めたRaは、センターレス研磨加工後であって加熱焼成前の値が 0.0578 μm 、加熱焼成後の値が 0.0424 μm であり、Rzは焼成前の値が 0.3347 μm 、焼成後の値が 0.2229 μm であり、RaおよびRzとも加熱焼成後の値が小さくなっており、被覆層表面がより平坦になった。
また、得られた支持軸の円筒度は 0.5μm 、同軸度が 1.0μm であった。
【0048】
実施例2
実施例1と同様の材料、方法により光学式ピックアップ用支持軸に約 30 μm の被膜を形成し、センターレス研磨加工して約 10 μm の厚さの被覆層を有する支持軸を得た。この支持軸の表面を2000番の研磨シート(エメリー紙)を用いてラッピング仕上げを行なった。
ラッピング仕上げ後のRaは 0.0401 μm 、Rzは 0.389μm であり、平坦な被覆層表面が得られた。
また、得られた支持軸の円筒度は 0.6μm 、同軸度が 1.0μm であった。
【0049】
実施例3
実施例2において、ラッピング仕上げ後の支持軸を、 300℃で 1時間加熱焼成した。
得られた支持軸のRaは 0.0352 μm 、Rzは 0.311μm であり、実施例2より平坦な被覆層表面が得られた。
また、得られた支持軸の円筒度は 0.6μm 、同軸度が 1.0μm であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明の光学式ピックアップ用支持軸は、固体潤滑剤とバインダ樹脂との混合物からなる焼き付け被膜を研磨加工後にさらに焼成した被覆層とするので、円筒度が 0〜9 μm 、同軸度が 0〜6 μm となるとともに、支持軸表面の平坦化が図れる。その結果、良好な摺動特性を維持しながら、軸受部の嵌合隙間精度を向上させることができ、対物レンズの支持精度を上げることができる。これにより、高密度化された記録トラックヘ光ビームを集光させることが容易となる。
【0051】
また、研磨加工後にラッピング仕上げしたので、微細な凹凸を固体潤滑剤で覆うことにより、円筒度が 0〜9 μm 、同軸度が 0〜6 μm となるとともに、支持軸表面の平坦化が図れる。その結果、良好な摺動特性を維持しながら、軸受部の嵌合隙間精度を向上させることができ、対物レンズの支持精度を上げることができる。これにより、高密度化された記録トラックヘ光ビームをレスポンスよく集光させることが容易となる。
【0052】
また、固体潤滑剤がフッ素系化合物、バインダ樹脂がポリイミド系樹脂であることにより、焼成による平坦化がより向上する。
【0053】
本発明の製造方法は、ディスクの高密度化に対応し、寸法精度がきわめて高い光学式ピックアップ用支持軸を容易かつ確実に製造できるようになり、不良品の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学式ピックアップの断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】支持軸表面における表面粗さを測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
1 ベース
2 支持軸
2a 固体潤滑剤
3 コア
4 磁石
5 軸受孔
10 レンズホルダ
11 ホルダ本体
13 駆動用コイル
14 レンズ取り付け孔
15 対物レンズ
Claims (5)
- 光学式ピックアップのレンズホルダの軸受孔に挿通して、レンズホルダの回動および軸方向移動を案内する支持軸であって、該支持軸は金属製円柱からなり、その円柱表面の少なくとも前記軸受孔との摺動面に被覆層を有し、該被覆層はフッ素系樹脂である固体潤滑剤とポリイミド系樹脂であるバインダ樹脂との混合物からなる焼き付け被膜を、研磨加工後にそのまま焼成することで研磨加工によって発生する被覆層表面の微細な凹凸が平坦化された被覆層であることを特徴とする光学式ピックアップ用支持軸。
- 光学式ピックアップのレンズホルダの軸受孔に挿通して、レンズホルダの回動および軸方向移動を案内する支持軸であって、該支持軸は金属製円柱からなり、その円柱表面の少なくとも前記軸受孔との摺動面に被覆層を有し、該被覆層はフッ素系樹脂である固体潤滑剤とポリイミド系樹脂であるバインダ樹脂との混合物からなる焼き付け被膜を、研磨加工後にラッピング仕上げした後、そのまま焼成することで研磨加工によって発生する被覆層表面の微細な凹凸が平坦化された被覆層であることを特徴とする光学式ピックアップ用支持軸。
- 金属製円柱の表面にフッ素系樹脂である固体潤滑剤とポリイミド系樹脂であるバインダ樹脂との混合物からなる被覆層を焼成して形成する工程と、前記被覆層表面を研磨する研磨工程と、前記研磨工程後にそのまま研磨表面を焼成する焼成工程とを含むことを特徴とする光学式ピックアップ用支持軸の製造方法。
- 金属製円柱の表面にフッ素系樹脂である固体潤滑剤とポリイミド系樹脂であるバインダ樹脂との混合物からなる被覆層を焼成して形成する工程と、前記被覆層表面を研磨する研磨工程と、前記研磨工程後にラッピング仕上げをする工程と、前記ラッピング工程後に、そのままラッピング仕上げ表面を焼成する焼成工程とを含むことを特徴とする光学式ピックアップ用支持軸の製造方法。
- 前記焼成工程での焼成温度が 270〜 320℃であることを特徴とする請求項3または請求項4記載の光学式ピックアップ用支持軸の製造方法。
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-
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