JP2014126787A - 光学部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明樹脂からなる光学レンズ及びそれを保持する樹脂性のホルダーからなる光学部品であって、二色成形により製造することができ、光学レンズとホルダー間の接着性に優れるとともに、高い摺動性や耐摩耗性を有することにより実使用時の位置精度の低下がない光学部品を提供する。
【解決手段】熱可塑性の透明樹脂からなる光学レンズ又はミラー及びこれを保持するホルダーからなり、前記光学レンズ又はミラーとホルダー間は熱融着されており、前記ホルダーは、前記光学レンズ又はミラーと同一の熱可塑性の透明樹脂を主体として形成されかつ固体潤滑剤を含有することを特徴とする光学部品。
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂製の光学レンズやミラー(以後、ミラーも含めてレンズと言う場合がある)及びそれを保持するホルダーからなり、光コネクタや光学レンズ複合体等として各種の電子装置に用いられる光学部品に関する。
光ケーブルを連結するための光コネクタは、レンズ、及びレンズを保持するとともに光ファイバーが挿抜されるホルダーからなる。又、発光素子、受光素子等のレンズ部品は、光学レンズ及びそれを保持するホルダーからなる光学レンズ複合体であり、金属端子に嵌合されて各種の電子装置に用いられている。これらの光学部品を構成する光学レンズには高い透明性が要求されるが、近年は、無機ガラスレンズの代わりに、比重が小さい、破損しにくい、成形しやすい等の利点から、透明性に優れる樹脂製の光学レンズが広く用いられている。
一方、光学部品の実使用では、光学部品と金属端子や光ファイバーを嵌合させたり挿抜させるため、受け手の穴が嵌合による変形を起こしたり、繰り返し挿抜や斜めからの挿抜により、摺動摩耗を起こすことがある。また、発塵により光学特性を損なうこともある。これらを防止するため、ホルダーを構成する樹脂には優れた機械的強度や高い耐摩耗性が求められる。透明性に優れる樹脂は一般に機械特性が劣るので、従来は、ホルダーをレンズとは異なる材料で構成し、アクティブアライメントを行った上でUV硬化接着剤等によりレンズとホルダーを組み立てる方法が行われている。
しかし、この組み立てには高精度が要求されるため高コストとなり、また、光学レンズとホルダー間の接着性が不十分となり環境の影響で両者間のズレや剥離が発生し光学特性が損なわれる可能性があった。そこで特許文献1では、光学レンズとホルダーを二色成形した後架橋する方法が提案されている。この方法によれば、異なった材料の光学レンズとホルダーからなる光学部品を優れた位置精度で量産することができ、かつ接着性の問題も防ぐことができると言われている。
近年の光学部品には、光学レンズとホルダー間の位置関係、及び基板やデバイスのフォトダイオードや発光素子等のチップ間の位置関係にミクロンオーダーの精度が要求されており、前記の接着性についてもさらに向上が望まれている。又、光学部品に要求される精度がミクロンオーダーに細密化しているため、光ファイバーの挿抜による摩耗等の影響、すなわちレンズの位置のずれの光学特性への影響はより大きな問題となる。そこで、ホルダーには、光学レンズとの優れた接着性とともに、挿抜や摺動による摩耗等の影響を防ぐためのより高い摺動性や耐摩耗性が求められている。
特開2007−141416号公報
本発明は、透明樹脂からなる光学レンズ及びそれを保持する樹脂性のホルダーからなる光学部品であって、二色成形により製造することができ、光学レンズとホルダー間の接着性に優れるとともに、高い摺動性や耐摩耗性を有し、実使用による位置精度の低下が低減されている光学部品を提供することを課題とする。
本発明者は鋭意検討した結果、光学レンズ及びホルダーを同一の樹脂を主体とする材料により形成してこれらを熱融着するとともに、ホルダーに固体潤滑剤を含有させることにより、前記の課題が達成されることを見出し、本発明を完成した。
請求項1に記載の発明は、熱可塑性の透明樹脂からなる光学レンズ又はミラー及びこれを保持するホルダーからなり、前記光学レンズ又はミラーとホルダー間は熱融着されており、前記ホルダーは、前記光学レンズ又はミラーと同一の熱可塑性の透明樹脂を主体として形成されかつ固体潤滑剤を含有することを特徴とする光学部品である。
本発明の光学部品は、従来の光コネクタや光学レンズ複合体と同様に光学レンズ及びこれを保持するホルダーからなるものであるが、
光学レンズとこれを保持するホルダーが同一の熱可塑性の透明樹脂を主体として形成されていること、
これらが熱融着されていること、及び
ホルダーを形成する透明樹脂が固体潤滑剤を含有すること、
を特徴とする。光学レンズとこれを保持するホルダーが同一の熱可塑性の透明樹脂を主体として形成され、これらが熱融着されていることにより、光学レンズとホルダー間の優れた接着性が得られ、両者間のズレや剥離の発生を防ぐ効果を向上させることができる。その結果、実使用におけるレンズとホルダー間のずれ等を防ぐことができ、光学特性への影響を低減することができる。
又、ホルダーを形成する透明樹脂が固体潤滑剤を含有することにより、ホルダーの摺動性が向上し、光ファイバーの挿抜や金属端子との嵌合により生じるホルダーの摩耗等を防ぐ効果を向上させることができる。その理由からも、実使用中における光学部品の位置のずれやそのずれによる光学特性への影響を低減することができる。
請求項2に記載の発明は、ホルダーが、スラスト摩耗試験(10分間、無給油、500rpm、15kg荷重、金属円筒の外径Φ11mm/内径9mm)での摩耗量が30mg以下となる摺動性を有することを特徴とする請求項1に記載の光学部品である。
ホルダーを形成する樹脂中の固体潤滑剤の配合量が増大する程、ホルダーの摺動性が向上し、摩耗等を防ぐ効果を向上させることができる。固体潤滑剤の添加量の好ましい範囲は、固体潤滑剤の種類等により変動するので、具体的な範囲を定めることはできないが、ホルダーの摺動性が、スラスト摩耗試験(10分間、無給油、500rpm、15kg荷重、金属円筒の外径Φ11mm/内径9mm)での摩耗量が30mg以下となるように、固体潤滑剤の量を調整することが好ましい。
一方、固体潤滑剤の添加量が増大する程、接着面に存在する接着する樹脂の割合が減少し、かつ材料が脆くなるため、レンズとホルダー間の接着性が低下する。そこで、レンズとホルダー間の接着性が優れるとの本発明の趣旨が達成される範囲で、固体潤滑剤の添加量の上限が定められる。一般的には、摺動性を付与するための下限と、接着性の低下を防ぐための上限から、固体潤滑剤の添加量は、樹脂100質量部に対して、0.1質量部から100質量部の範囲内が好ましい。
請求項3に記載の発明は、前記熱可塑性の透明樹脂が、ポリエーテルイミド、熱可塑ポリイミド、透明ポリアミド樹脂、透明フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂及び環状ポリオレフィン、透明ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、透明ポリプロピレンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学部品である。
光学部品に使用されるレンズやミラーには透明性が要求される。センサや通信用途ならば、波長650nmや850nmや1300nm等のLEDやVCSELや、その他レーザー、シリコンフォトニクス等の発光素子から発生する光の厚さ1mmにおける透過率が80%以上必要である。又、撮影・監視用途ならば、全光可視域で80%以上の透過率が必要である。従って、光学レンズを形成する樹脂は、好ましくは、この透過率を達成できる透明樹脂から選ばれる(本発明では、ホルダーも光学レンズと同一の樹脂により形成されるので、ホルダーについても同様である)。なお、ここで透過率とは、透明性を表す指標であり、その測定は、JIS K 7361に規定される測定法を用いて行い、所定の波長の光について、入射光量T1と試験片を通った全光量T2との比の百分率で示される値である。
さらに、光学レンズを形成する成形体には、基板実装される用途が多い。このため、はんだリフローによる実装における変形等を防止するため、優れた耐熱性(リフロー耐熱性)等が望まれる。そこで、光学レンズ(及びホルダー)を形成する樹脂としては、ポリエーテルイミド、熱可塑ポリイミド、及び、透明ポリアミド樹脂、環状ポリオレフィン、透明フッ素樹脂、透明ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、透明ポリプロピレン及びポリオレフィン系やフッ素系等のアイオノマー樹脂等を架橋した樹脂が好ましい。光学レンズ(及びホルダー)は、好ましくは、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂を主体とした材料からなる成形体である。なお、ここで主体とするとは、前記例示の樹脂のみからなるか、又は例示の樹脂を少なくとも10重量%以上、好ましくは70重量%以上含む場合を言う。なお、他の樹脂を含む場合、当該他の樹脂は、アロイまたはブレンド後に、例示の樹脂の光学特性を損ねないものから選択される。
前記の樹脂の中でも、透明性、耐熱性、機械的特性や二色成形しやすさ(レンズとホルダーとの接着力)の点でポリエーテルイミド、熱可塑ポリイミド、透明ポリアミド樹脂、透明フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂及び環状ポリオレフィンからなる群より選ばれる樹脂が好ましい。特に、架橋透明ポリアミド樹脂や熱可塑ポリイミドやポリエーテルイミドは、鉛フリー半田を用いた半田リフローにも耐えられる優れたリフロー耐熱性や、レーザーやキセノンランプによる高温に耐えられる耐熱性が得られるので好ましい。
請求項4に記載の発明は、前記ホルダーを形成する熱可塑性の透明樹脂が、架橋していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光学部品である。
ホルダーの、優れた機械的強度、さらに優れた耐熱性、特に優れたリフロー耐熱性を得るためには、前記ホルダーを形成する樹脂を架橋することが好ましい。架橋することによりホルダーの高温時の剛性も高めることができ、後述するように、はんだリフローによる実装を容易にすることができる。さらに、光学レンズを形成する樹脂についても、優れた耐熱性、特に優れたリフロー耐熱性を得るために架橋することが好ましい。
又、成形の容易さの観点からは融点等が比較的低い樹脂が好ましいが、この樹脂は、通常、耐熱性、機械的特性は劣る。しかし、架橋前は融点等が比較的低い樹脂や剛性が低く機械的強度が低い樹脂(例えば、融点が250℃以下の樹脂)であっても、樹脂を架橋することにより、優れた機械的強度や優れた耐熱性を得ることができる。従って、樹脂の選択の範囲を広げることができるので好ましい。
請求項5に記載の発明は、光学レンズ又はミラー及びホルダーが、260℃での貯蔵弾性率が10MPa以上となる耐熱性を有することを特長とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光学部品である。
貯蔵弾性率とは、粘弾性体に正弦的振動ひずみを与えたときの応力と、ひずみの関係を表わす複素弾性率を構成する一項(実数項E’)であり、粘弾性測定器(DMS)により測定した値である。より具体的には、粘弾性測定器(例えば、アイティー計測制御社製DVA−200)により10℃/minの昇温速度にて測定される値である。光学レンズ及びホルダーが、260℃での貯蔵弾性率が10MPa以上となる高い剛性、耐熱性(リフロー耐熱性)を有することにより、鉛フリーはんだを用いたはんだリフローにより部品が実装される場合でも、変形等を生じず、高い位置精度での実装を可能とし、又実装時の光学特性の低下を防ぐことができる。
260℃での貯蔵弾性率が10MPa以上となる耐熱性は、樹脂の架橋により達成することができる。特に、透明樹脂として架橋ポリアミド樹脂を用い、電離放射線を照射して架橋することにより容易に260℃で10MPa以上の貯蔵弾性率を得ることができる。又、後述するように無機フィラーを添加することによっても貯蔵弾性率を向上させることができ、260℃で10MPa以上の貯蔵弾性率を得ることができる。
請求項6に記載の発明は、前記ホルダーの体積固有抵抗が1×10の12乗Ω・cm以下であることを特長とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光学部品である。
光学部品が通信用途の場合、ノイズを防止するため電磁波シールド性が要求されることがある。この場合、ホルダーに導電性を付与することが有効である。体積固有抵抗が1×10の12乗Ω・cm以下のホルダーは、ホルダーを形成する透明樹脂に、(固体潤滑剤等とともに)導電性フィラー等の導電性材料を配合して成形(場合によりさらに架橋)することにより作製することができる。
光学レンズやホルダーを形成する成形体には、さらに補強材としての充填剤を含有させることができる。充填剤を含有することにより、リフロー耐熱性をさらに向上させることができるので好ましい。又、架橋を促進するため架橋助剤や、前記のように導電性を付与するための導電材料等を配合することができる。
さらに、無機フィラーを含有させることにより、光学レンズやホルダーを形成する成形体の貯蔵弾性率(剛性)を向上させることができるので好ましい。光学レンズやホルダーを形成する成形体には、さらに又、本発明の趣旨が損なわれない範囲で、他の成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、耐候性安定剤、銅害防止剤、難燃剤、滑剤、導電剤、メッキ付与剤等を含有することができる。
本発明の光学部品は、光ケーブルの連結のための光コネクタとして好適に用いられる。光コネクタとして用いた場合は、光ファイバーの挿抜によるホルダーの摩耗を低減することができ、ホルダーの摩耗による光学特性の低下を防ぐことができる。本発明の光学部品は、又、光記録再生装置中の光ピックアップや、LEDレンズパッケージ等の発光素子、受光素子等の光学素子として、各種の電子装置、例えばCD、MD、DVDや、受発光素子が搭載された装置(例えば光通信装置)、イメージセンサー、カメラモジュール、IRセンサ、モーションセンサ、リモコン等に好適に用いられる。これらの光学部品は、光レンズ複合体であり実使用では金属端子との嵌合の際のホルダーの摺動、摩耗が生じやすいが、本発明の光学部品を使用することにより、この問題を防ぐことができる。
透明樹脂からなる光学レンズ及びそれを保持する樹脂性のホルダーからなる本発明の光学部品は、二色成形により製造することができ、光学レンズとホルダー間の接着性に優れるとともに、ホルダーは高い摺動性や耐摩耗性を有し、実使用による両者間のズレや剥離の発生が小さく、位置精度の低下、光学特性への影響が小さい光学部品である。
次に、本発明を実施するための形態及び実施例を説明するが、本発明の範囲はこの形態や実施例のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、種々の変更を加えることが可能である。
光学レンズやホルダーを形成する熱可塑性の透明樹脂としては、前記のようにポリエーテルイミド、透明ポリアミド樹脂、熱可塑ポリイミド、透明フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂及び環状ポリオレフィン、アクリル樹脂が特に好ましい。ポリエーテルイミドとしては、SABIC社製のULTEM(商品名)等を挙げることができる。熱可塑ポリアミドとしては、三井化学社製のオーラム(商品名)等を挙げることができる。
透明ポリアミド樹脂としては、特開昭62−121726号公報、特開昭63−170418号公報、特開2004−256812号公報等に開示されているものを挙げることができる。これらは、芳香環、脂環等の環を有するモノマーを用いて得られるポリアミド樹脂であり、非晶性でかつガラス転位点の高いポリアミドである。
透明ポリアミド樹脂の具体的な例としては、
テレフタル酸、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンとの異性体混合物からなるポリアミド、
イソフタル酸及び1,6−ヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド、
テレフタル酸/イソフタル酸、及び1,6−ヘキサメチレンジアミンからなるコポリアミド、
イソフタル酸、及び3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、及びラウリンラクタム又はカプロラクタムからなるコポリアミド、
1,12−ドデカン二酸又は1,10−ドデカン二酸、及び3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、場合によってはさらにラウリンラクタム又はカプロラクタムからなる(コ)ポリアミド、
イソフタル酸、及び4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、及びラウリンラクタム又はカプロラクタムからなるコポリアミド、
1,12−ドデカン二酸、及び4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンからなるポリアミド、
テレフタル酸/イソフタル酸混合物、及び3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、及びラウリンラクタムからなるコポリアミド、等を挙げることができる。
又、透明ポリアミドは、異なるポリアミドの配合物であってよい。配合物自体が透明であれば、この配合物成分に結晶性のものが含まれていてもよい。透明ポリアミドの具体的商品例としては、透明ナイロン(商品名グリルアミドTR−55、TR−90(エムスケミー・ジャパン製))等が挙げられる。これらの透明ポリアミドは、耐UV性に優れており、キセノンの発光等によるUVに対しても、変色や変形等を生じにくい。
透明フッ素樹脂としては、フッ化ポリイミド、フッ化アクリレート、フッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等を挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂としては、商品名ユーピロン(三菱化学社製)等として市販されているものを使用することもできる。
環状ポリオレフィンとは、環状オレフィンモノマーを含む単量体を重合して得ることができるポリオレフィン系樹脂である。環状オレフィンモノマーとは、特開平8−20692号公報等により公知のものであって、例えば、シクロペンテン、2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン系化合物が好ましく挙げられる。
これらの樹脂としては、その主鎖又は側鎖に架橋を形成することができる部分(架橋サイト)を有する樹脂、すなわち加熱や放射線照射により架橋反応を起こす能力を有する架橋用樹脂が好ましい。例えば、架橋ナイロンは、ウエルド強度が強く、二色成型時に樹脂間の接合が強くなるため、本製品を製造するためには好適である。この樹脂を成形後、加熱や放射線照射を施すことにより架橋された成形体を容易に得ることができる。
光学レンズやホルダーの形成に用いられる透明樹脂に添加することができる無機フィラーとしては、ガラスファイバー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ等の無機系ウィスカ、モンモリロナイト、合成スメクタイト、セルロース、ケナフ、アラミド繊維、アルミナ、カーボンファイバー等の無機フィラーや有機化クレー等を挙げることができる。
光学レンズやホルダーを形成する透明樹脂を架橋する場合の架橋方法としては、電離放射線の照射による放射線架橋や、加熱による熱架橋等を挙げることができる。電離放射線の照射による架橋は、成形時の温度、流動性の制限を伴わず、架橋の制御が容易であるため好ましい。電離放射線としては、電子線の他、γ線、エックス線等を挙げることができる。放射線の照射線量は、ホルダーのリフロー耐熱性を、鉛フリー半田を用いた半田リフローにも十分耐えられるようにするために必要な量以上が好ましい。その具体的な範囲は、使用する樹脂や照射条件により変動し特に限定できないが、通常10〜1000kGy程度である。
電離放射線の照射による架橋は、通常、架橋助剤の存在下で行われる。架橋助剤の併用により、架橋が促進され優れた耐熱性や剛性が得られるので好ましい。架橋助剤としては、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム類;エチレンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸/酸化亜鉛混合物、アリルメタクリレート等のアクリレート又はメタクリレート類;ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等のビニルモノマー類;ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のアリル化合物類;N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(4,4’−メチレンジフェニレン)ジマレイミド等のマレイミド化合物類等が挙げられる。これらの架橋助剤は単独で用いてもよいし、組合わせて使用することもできる。架橋助剤としてTAICが特に好ましく用いられる。
本発明の光学部品は、好ましくは二色成形により製造される。二色成形とは、1台の成形機中で2種類の樹脂を熱融着する成形方法であり、安定した製品品質を得られる方法と言われている。二色成形では、通常、材質の異なる2種類の材料を1つの金型から成形する。本発明の光学部品は、好ましくは、二色成形により光学レンズの成形体及びホルダーの成形体が熱融着されたものを得た後、一体となった成形体に電離放射線照射等を行い一体として樹脂の架橋が行われる。
具体的には
(1)先ず、光学レンズを構成する樹脂を成形して光学レンズの成形体を形成し、当該成形体(冷却固化したもの)を金型等の型内に装着した後、当該型内にあるキャビティー(空洞)にホルダーを構成する樹脂を射出成形(二色成形)してホルダーを形成し、さらにその後、ホルダーを構成する樹脂及び光学レンズを構成する樹脂を架橋する方法、及び
(2)先ず、ホルダーを構成する樹脂を成形してホルダーの成形体を形成し、当該成形体(冷却固化したもの)を金型等の型内に装着した後、当該型内にあるキャビティー(空洞)に光学レンズを構成する樹脂を射出成形(二色成形)して光学レンズを形成し、さらにその後、ホルダーを構成する樹脂及び光学レンズを構成する樹脂を架橋する方法
等を挙げることができる。本発明においては、(1)及び(2)の方法いずれも可能であるが、光学レンズの汚れを防ぐ観点からは(2)の方法が好ましい。
なお、(2)の方法において、ホルダーの成形体の形成後、光学レンズを構成する樹脂の射出成形前に、ホルダーを構成する樹脂を架橋してホルダーのみを架橋する方法等も行うことができるが、レンズとホルダー間の接着力が低下する傾向があるので、ホルダーを構成する樹脂と光学レンズを構成する樹脂を同時に架橋する方法が好ましい。
特開2010−243659号公報には、二色成形により樹脂製の光学レンズと樹脂製のホルダーからなる光学レンズ複合体を製造する方法が記載されているが、本発明の光学部品も、同様な方法、同様な条件にて二色成形することができる。
配線やリードフレームが設けられた光学部品の製造においては、配線やリードフレーム等の金属部材を金型等の型内に装着した状態で、前記二色成形等を行う方法(インサートモールド)が知られている。本発明の光学部品に配線やリードフレームが設けられている場合も、インサートモールドは、生産性が高く、又金属部材とレンズホルダーとの接着性にも優れるので好ましい方法である。インサートモールドにより熱可塑性樹脂と一体成形される金属部材としては、光ピックアップにおける配線やリードフレーム、LED素子搭載用パッケージにおけるリードフレーム等が挙げられる。
先ず、実施例の光学部品の作製に使用した材料を以下に示す。
[熱可塑性透明樹脂]
ポリカーボネート樹脂:三菱化学社製、商品名 ユーピロン
環状ポリオレフィン:三井化学社製、商品名 アペル6015T
ポリエーテルイミド:SABIC社製、商品名 ウルテム1000
透明フッ素樹脂:ダイキン社製、商品名 RP4020
透明ポリアミド樹脂:EMS社製、商品名 グリルアミドTR90
[固体潤滑剤]
超高分子量ポリエチレン:三井化学社製、商品名 ミペロンXM220
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パウダー:ダイキン社製、商品名 ルブロンL−5
[無機フィラー]
炭素繊維:東レ社製、商品名 トレカTV14
(光学部品の作製:二色成形)
表1、2のホルダーの欄に示す処方で配合した熱可塑性樹脂組成物を、金型を用いて射出成形して、外径5mm、内径3mmの円筒状のホルダーを成形した。ホルダーの作製後、金型を約80℃に加熱し、その金型内の空間に、表1、2のレンズの欄に示す処方で配合した熱可塑性樹脂組成物を射出した。その後、冷却して、外径5mm、中心部厚さ1mm(レンズのアールは5mm)の光学レンズとホルダーが一体となった成形体(光学製品1、2、3及び5並びに光学製品4及び6の架橋前の成形体)を得た。光学製品4及び6では、このようにして得られた成形体に、240kGyの電子線を照射し架橋を行った。このようにして得られた光学製品1〜6について、下記の方法により、接着性を測定した。その結果を表1、2に示す。
[接着性]
レンズとホルダーの界面を目視し、界面が白化しているか、透明であるかによりレンズとホルダー間の接着性を判定した。すなわち、樹脂が冷却する課程で、接着性が不十分である場合は、界面剥離して空気層が生じ反射により白化するので、界面が白化している場合は接着性が不十分であることを示し、界面が透明な場合は十分な接着が得られていることを示す。表中の「接着性」の欄では、界面が白化している場合は×、透明な場合は○で示す。
(透過率及び摩耗量の測定)
表1、2のレンズの欄及びホルダーの欄に示す処方で配合した熱可塑性樹脂組成物を、射出成形して、50×60mm角、厚さ1mmの板状成形体(光学製品1、2、3及び5並びに光学製品4及び6の架橋前の成形体)を作製した。光学製品4及び6については、このようにして得られた板状成形体に、240kGyの電子線を照射し架橋を行った。
このようにして得られた光学製品1〜6のレンズ及びホルダーのそれぞれについて、JIS K 7361に準拠して850nmにおける透過率を測定した。又、以下に示す方法により摩耗量を測定した。これらの結果を表1、2に示す。
[摩耗量の測定方法]
スラスト摩耗試験(リングオンディスク式摩耗評価)により、摩耗量を測定し、耐摩耗性を評価した。具体的には、サンプル(上記で作製した光学製品1〜6のレンズ及びホルダーの板状成形体)上に置いたS45C円筒を加圧しながら回転させ10分間試験後のサンプル重量変化を測定した。
Figure 2014126787
Figure 2014126787
表1、2における「接着性」の欄に示されるように、光学部品1〜6のいずれについてもレンズとホルダー間の優れた接着性が得られていることが示されている。レンズとホルダーが同一の熱可塑性の透明樹脂を主体として形成されているためと思われる。
表1、2に示されるように、光学部品1〜6のレンズはいずれも高い光線透過率を有しているが、固体潤滑剤が添加された光学部品1〜6のホルダーは、いずれも摺動性に優れ、レンズと同じ樹脂で作製されているにも関わらず、スラスト摩耗試験においてはレンズよりもはるかに小さい摩耗量であった。この結果より、レンズとホルダーを(優れた接着性を達成するため)同一の樹脂を主体とする材料で形成しても、固体潤滑剤をホルダーに含有させることにより、摺動性が向上し、耐摩耗性にすぐれるホルダーが得られることが示されている。
又、光学部品5、6の結果より、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、透明フッ素樹脂、透明ポリアミド樹脂の中でも、透明ポリアミド樹脂を用いた場合は、より耐摩耗性に優れる成形体が得られることが示されている。さらに、光学部品5、6の比較より、電子線照射により樹脂を架橋させると耐摩耗性が向上することが示されている。

Claims (6)

  1. 熱可塑性の透明樹脂からなる光学レンズ又はミラー及びこれを保持するホルダーからなり、前記光学レンズ又はミラーとホルダー間は熱融着されており、前記ホルダーは、前記光学レンズ又はミラーと同一の熱可塑性の透明樹脂を主体として形成されかつ固体潤滑剤を含有することを特徴とする光学部品。
  2. ホルダーが、スラスト摩耗試験(10分間、無給油、500rpm、15kg荷重、金属円筒の外径Φ11mm/内径9mm)での摩耗量が30mg以下となる摺動性を有することを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
  3. 前記熱可塑性の透明樹脂が、ポリエーテルイミド、熱可塑ポリイミド、透明ポリアミド樹脂、透明フッ素樹脂、透明ポリカーボネート樹脂及び環状ポリオレフィン、透明ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、透明ポリプロピレンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学部品。
  4. 前記ホルダーを形成する熱可塑性の透明樹脂が、架橋していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光学部品。
  5. 光学レンズ又はミラー及びホルダーが、260℃での貯蔵弾性率が10MPa以上となる耐熱性を有することを特長とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光学部品。
  6. 前記ホルダーの体積固有抵抗が1×10の12乗Ω・cm以下であることを特長とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光学部品。
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