JP3977696B2 - 電解質組成物用原料キット、電解質組成物及び光増感型太陽電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質組成物用原料キット、この電解質組成物用原料キットから得られる電解質組成物、並びにこの電解質組成物を用いた光増感型太陽電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光増感型太陽電池の一般的な構造が、特開平1−220380に記載されている。この太陽電池は、金属酸化物の微粒子からなる透明半導体層の表面に色素を担持させたものから構成された電極(酸化物電極)と、この電極と対向する透明電極と、前記電極間に介在される液状のキャリア移動層とを備える。このような太陽電池は、キャリア移動層が液状であるため、湿式方式の光増感型太陽電池と呼ばれる。
【0003】
前記光増感型太陽電池は以下の過程を経て動作する。すなわち、透明電極側より入射した光が、透明半導体層表面に担持された色素に到達し、この色素を励起する。励起した色素はすみやかに透明半導体層へ電子を渡す。一方、電子を失うことによって正に帯電した色素は、キャリア移動層から拡散してきたイオンから電子を受け取り電気的に中和される。電子を渡したイオンは透明電極に拡散し、電子を受け取る。この酸化物電極とこれに対向する透明電極をそれぞれ負極、正極とすることにより湿式光増感型太陽電池が作動する。
【0004】
湿式光増感型太陽電池では低分子の溶媒を使用する。この液漏れを防ぐためにシールドを厳重に行う必要がある。しかし、長い年月の間シールドを維持するのは困難であり、溶媒分子の蒸発や液漏れによる溶媒消失によって、素子機能の劣化と環境に対する影響が心配される。このようなことから、液状のキャリア移動層の代わりに、低分子溶媒を含まないイオン伝導性の固体電解質あるいは電子伝導性の固体有機物質などを用いることが提案されている。このような太陽電池は、全固体光増感型太陽電池と呼ばれる。
【0005】
これら固体光増感型太陽電池では、液漏の恐れはないが、新たな問題点が生じている。すなわち、半導体電極と固体伝導材料の熱膨張係数が異なるために熱サイクルにおいて半導体電極と固体伝導材料の接合界面がはがれやすく、そのためのエネルギー変換効率の劣化が生じている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光増感型太陽電池において高いエネルギー変換効率を得ることが可能な電解質組成物用原料キットを提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、光増感型太陽電池において高いエネルギー変換効率を得ることが可能な電解質組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、高いエネルギー変換効率が得られる光増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の光増感型太陽電池は、色素を保持したn型半導体電極と、対向電極と、前記n型半導体電極と前記対向電極の間に配置され、ヨウ素を含む電解質及びゲル化剤を含有するゲル電解質とを具備する光増感型太陽電池であって、
前記ゲル化剤は、ポリスルホン酸が二価以上の金属イオンにより架橋された第1のポリマー、ポリカルボン酸が二価以上の金属イオンにより架橋された第2のポリマー、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩が二価以上の金属イオンにより架橋された第3のポリマー及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩が二価以上の金属イオンにより架橋された第4のポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーを含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る第1の電解質組成物用原料キットは、2種類以上の原料を備え、前記2種類以上の原料を混合することによって電解質組成物を得る電解質組成物用原料キットであって、
前記2種類以上の原料は、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種類のアンモニウム塩を含む第1の原料と、二価以上の金属のハロゲン化物を含む第2の原料とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る第1の電解質組成物は、ヨウ素を含有する電解質と、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種類のアンモニウム塩と、二価以上の金属のハロゲン化物とを含む混合物であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る第2の光増感型太陽電池は、色素を保持したn型半導体電極と、対向電極と、前記n型半導体電極と前記対向電極の間に配置され、ヨウ素を含む電解質及びゲル化剤を含有するゲル電解質とを具備する光増感型太陽電池であって、
前記ゲル化剤は、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物が、カルシウムを除くアルカリ土類金属のイオン、ホウ素イオン、スカンジウムイオン、ケイ素イオン、リンイオン、アルミニウムイオンおよび遷移金属イオンよりなる群から選択される少なくとも1種類の金属イオンで架橋されたポリマーを含むことを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る第2の電解質組成物用原料キットは、2種類以上の原料を備え、前記2種類以上の原料を混合することによって電解質組成物を得る電解質組成物用原料キットであって、
前記2種類以上の原料は、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物を含む第1の原料と、カルシウムを除くアルカリ土類金属のハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Pのハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物および遷移金属イオンのハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属ハロゲン化物を含む第2の原料とを含むことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る第2の電解質組成物は、ヨウ素を含有する電解質と、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物と、カルシウムを除くアルカリ土類金属のハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Pのハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物及び遷移金属のハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属ハロゲン化物とを含む混合物であることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る第1の電解質組成物用原料キットの一例及び本発明に係る第1の電解質組成物の一例について説明する。
【0016】
本発明に係る第1の電解質組成物用原料キットは、混合すると電解質組成物となる2種類以上の原料を備える。前記2種類以上の原料に、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種類のアンモニウム塩を含む第1の原料と、二価以上の金属のハロゲン化物を含む第2の原料とが含まれる。この2種類以上の原料は、さらに、ヨウ素を含有する電解質を含む第3の原料を具備することができる。なお、第1〜第3の原料を含む原料キットを使用する場合、第1〜第3の原料は互いに混合されていない。
【0017】
また、原料キットを構成する原料の一部または全部に混合物を使用しても良い。混合物が原料キットに含まれる場合、例えば、前記電解質に前記アンモニウム塩が溶解された混合物A(第1の原料)と、前記電解質に前記金属ハロゲン化物が溶解された混合物B(第2の原料)とを備える原料キットを使用することができる。
【0018】
電解質組成物は、ヨウ素を含有する電解質と、前記電解質に溶解され、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種類のアンモニウム塩と、前記電解質に溶解され、二価以上の金属のハロゲン化物とを含む混合物である。
【0019】
電解質組成物は、前記原料キットの前記2種類以上の原料を混合することにより得られる。混合方法としては、例えば、以下の(a)〜(b)に説明する方法が挙げられる。
【0020】
(a)前記電解質と前記アンモニウム塩と前記金属ハロゲン化物とが互いに混合されていない状態の原料キット、つまり、前述した第1〜第3の原料を用意する。前記第3の原料の電解質に前記第1の原料のアンモニウム塩及び前記第2の原料の金属ハロゲン化物を溶解させることにより電解質組成物を調製する。
【0021】
(b)前記電解質に前記アンモニウム塩を溶解させることにより電解質A(第1の原料)を調製し、かつ前記電解質に前記金属ハロゲン化物を溶解させることにより電解質B(第2の原料)を調製し、得られた電解質Aと電解質Bを含む原料キットを保管する。保管された電解質Aと電解質Bを必要な時に混合し、得られた混合電解質を電解質組成物として使用する。
【0022】
(アンモニウム塩)
このアンモニウム塩としては、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩のみを用いても、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩のみを用いても、あるいはポリスルホン酸の4級アンモニウム塩とポリカルボン酸の4級アンモニウム塩の混合物を用いても良い。
【0023】
ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩は、例えば、ポリスルホン酸に1〜3級のアミン化合物およびアンモニウム水酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を反応させることにより得られる。ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩において、アンモニウム塩の基(−SO3NR4)が1分子中に2以上含まれていることが好ましく、さらに好ましいのは、かかる基がポリマーに側鎖として置換しているものである。
【0024】
一方、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩は、例えば、ポリカルボン酸に1〜3級のアミン化合物およびアンモニウム水酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を反応させることにより得られる。ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩においては、アンモニウム塩の基(−COONR4)が1分子中に2以上含まれていることが好ましく、さらに好ましいのは、かかる基がポリマーに側鎖として置換しているものである。側鎖の少なくとも一部が−SO3NR4もしくは−COONR4で置換されたポリマーは、電解質への溶解性を向上させることができると共に、少量で電解質組成物をゲル化させることができる。
【0025】
−SO3NR4及び−COONR4において、Rは、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換あるいは縮環したアリール基、および置換あるいは縮環した複素環基よりなる群から選択される1種類の基である。Rは、互いに同じでも、異なっていても良い。
【0026】
置換または無置換のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、置換または無置換のアルキル基の炭素数は1〜22の範囲内にすることが好ましい。アルキル基に結合し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、複素環基等が挙げられる。このような置換または無置換のアルキル基の好ましい具体例としては、例えばメチル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘプチル、2−メチルヘキシル、トリフルオロメチル、ベンジル、3−メトキシプロピル等が挙げられる。
【0027】
置換あるいは縮環したアリール基の炭素数は6〜22の範囲内にすることが好ましい。アリール基に結合し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基等を挙げることができる。このような置換または無置換のアリール基の好ましい具体例としては、例えばフェニル、4−メチルフェニル、3−シアノフェニル、4−ブロモフェニル、1−ナフチル等が挙げられる。
【0028】
置換あるいは縮環した複素環基の含窒素複素環の炭素数は3〜22の範囲内にすることが好ましい。複素環基に結合し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基等を挙げることができる。このような置換または無置換の複素環基の好ましい具体例としては、例えば4−ピリジル、3−ピリジル、2−ピリジル、2−ピリミジル、2−イミダゾリル、2−チアゾリル等が挙げられる。
【0029】
ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩およびポリスルホン酸の4級アンモニウム塩は、いずれも二価以上の金属のハロゲン化物と反応して金属塩と副生成物として下記(1)式で表わされる組成のアンモニウム塩を生成することができる。
【0030】
R4NX (1)
ただし、Rは、前述した−SO3NR4及び−COONR4に含まれるRと同様な種類のものである。Xはハロゲン元素である。このXがヨウ素であるアンモニウム塩は、電解質成分として特に好ましく、太陽電池のエネルギー変換効率を向上することができる。
【0031】
−SO3NR4の少なくとも一つのRが水素原子であるポリスルホン酸の4級アンモニウム塩及び−COONR4の少なくとも一つのRが水素原子であるポリカルボン酸の4級アンモニウム塩によると、副生成物のアンモニウム塩中に窒素原子に直接結合した水素原子(N−H)が含まれる。その結果、光増感型太陽電池において、高いエネルギー変換効率を得られなくなる恐れがある。Rがすべて炭化水素基であると、副生成物のアンモニウム塩中に窒素原子に直接結合した水素原子が存在しないため、光増感型太陽電池において、高いエネルギー変換効率を得ることができる。最も好ましいのは、−COONR4のRが水素原子以外の上記いずれかの置換基であるポリカルボン酸の4級アンモニウム塩である。
【0032】
ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩としては、たとえば、ポリビニルベンゼンスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩、ポリビニルベンゼンスルホン酸トリエチルフェニルアンモニウム塩などを挙げることができる。一方、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩としては、たとえば、ポリメタクリル酸テトラメチルアンモニウム塩、ポリアクリル酸テトラメチルアンモニウム塩、ポリアクリル酸トリメチルフェニルアンモニウム塩、ポリアクリル酸トリメチルベンジルアンモニウム塩、ポリメタクリル酸テトラエチルアンモニウム塩、ポリメタクリル酸テトラプロピルアンモニウム塩、ポリメタクリル酸テトラブチルアンモニウム塩、ポリメタクリル酸テトラヘキシルアンモニウム塩、ポリビニル安息香酸テトラエチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0033】
ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩の重量平均分子量およびポリスルホン酸の4級アンモニウム塩の重量平均分子量は、それぞれ、500〜10,000,000の範囲内にすることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。重量平均分子量を500未満にすると、電解質組成物のゲル化が困難になる恐れがある。一方、重量平均分子量が10,000,000を超えると、電解質組成物の粘度が著しく増大して電解質組成物をセルに注入するのが困難になる恐れがある。重量平均分子量のより好ましい範囲は、1,000から1,000,000である。
【0034】
ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩は、−SO3NR4で表わされる第1の官能基を有するものである。このポリスルホン酸の4級アンモニウム塩は、−SO3NR4で表わされる官能基の他に、スルホン基(−SO3H)を有していても良い。−SO3Hと−SO3NR4との合計官能基数を100%とした際の−SO3NR4の置換基数は、5〜100%の範囲内にすることが望ましい。前記置換基数を20%以上にすることによって、電解質中の前述した(1)式で表わされる4級アンモニウム塩の濃度を高くすることができるため、太陽電池のエネルギー変換効率をさらに向上することができる。前記置換基数のさらに好ましい範囲は、30〜100%である。
【0035】
ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩は、−COONR4で表わされる第2の官能基を有するものである。このポリカルボン酸の4級アンモニウム塩は、−COONR4で表わされる官能基の他に、カルボキシル基(−COOH)を有していても良い。−COOHと−COONR4との合計官能基数を100%とした際の−COONR4の置換基数は、5〜100%の範囲内にすることが望ましい。前記置換基数を20%以上にすることによって、電解質中の前述した(1)式で表わされる4級アンモニウム塩の濃度を高くすることができるため、太陽電池のエネルギー変換効率をさらに向上することができる。前記置換基数のさらに好ましい範囲は、30〜100%である。
【0036】
(金属ハロゲン化物)
金属ハロゲン化物の金属の価数を二価以上にすることによって、アンモニウム塩間に金属イオンによって架橋構造を形成することができるため、この架橋構造を持つ金属塩により電解質組成物をゲル化させることができる。特に、金属の価数は、2〜4価にすることが好ましい。これは、金属の価数が4価を超えると、カルボキシル基と金属ハロゲン化物との塩が不安定になる恐れがあるからである。
【0037】
二価以上の金属のハロゲン化物としては、例えば、Mgのハロゲン化物、Caのハロゲン化物、Znのハロゲン化物、Alのハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Gaのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Tiのハロゲン化物、Geのハロゲン化物、Pのハロゲン化物等を挙げることができる。使用する金属ハロゲン化物の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。中でも、Mgのハロゲン化物、Znのハロゲン化物が好ましい。二価以上の金属のハロゲン化物の具体例としては、ZnI2、MgI2、CaCl2、ZnCl2、AlI3、BCl3、ScBr3、PCl3、GaI4、SiI4、TiBr4、GeI4などを挙げることができる。中でも、金属ヨウ化物を使用することが好ましく、最も好ましいのはZnI2である。
【0038】
本発明に係る第2の電解質組成物用原料キットの一例及び本発明に係る第2の電解質組成物の一例について説明する。
【0039】
本発明に係る第2の電解質組成物用原料キットは、混合すると電解質組成物となる2種類以上の原料を備える。前記2種類以上の原料には、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物を含む第1の原料と、カルシウムを除くアルカリ土類金属のハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Pのハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物および遷移金属イオンのハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属ハロゲン化物を含む第2の原料とが含まれる。この2種類以上の原料は、さらに、ヨウ素を含有する電解質を含む第3の原料を具備することができる。なお、第1〜第3の原料を含む原料キットを使用する場合、第1〜第3の原料は互いに混合されていない。
【0040】
また、原料キットを構成する原料の一部または全部に混合物を使用しても良い。混合物が原料キットに含まれる場合、例えば、前記電解質に前記二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物が溶解された混合物A(第1の原料)と、前記電解質に前記金属ハロゲン化物が溶解された混合物B(第2の原料)とを備える原料キットを使用することができる。
【0041】
電解質組成物は、ヨウ素を含有する電解質と、前記電解質に溶解され、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物と、前記電解質に溶解され、カルシウムを除くアルカリ土類金属のハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Pのハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物及び遷移金属のハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属ハロゲン化物とを含む混合物である。
【0042】
電解質組成物は、前記原料キットの前記2種類以上の原料を混合することにより得られる。混合方法としては、例えば、以下の(a)〜(b)に説明する方法が挙げられる。
【0043】
(a)前記電解質と前記二つ以上の含窒素複素環基と前記少なくとも1種類の金属ハロゲン化物とが互いに混合されていない状態の原料キット、すなわち、前述した第1〜第3の原料を用意する。前記第3の原料の電解質に前記第1の原料における二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物及び前記第2の原料における少なくとも1種類の金属ハロゲン化物を溶解させることにより電解質組成物を調製する。
【0044】
(b)前記電解質に前記二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物を溶解させることにより電解質A(第1の原料)を調製し、かつ前記電解質に前記少なくとも1種類の金属ハロゲン化物を溶解させることにより電解質B(第2の原料)を調製し、得られた電解質Aと電解質Bを含む原料キットを保管する。保管された電解質Aと電解質Bを必要な時に混合し、得られた混合電解質を電解質組成物として使用する。
【0045】
(二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物)
前記二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物の主鎖の骨格は、特に限定されず、炭素原子、酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子を有する2価の有機基なら何でもよい。例えば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル基、エステル基等、またはこれらの有機基の組み合わせにより構成される有機基などが挙げられる。
【0046】
アルキレン基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖構造のアルキレン基、分枝を有する炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。具体的には、−(CH2)n−(n=1〜10の整数)、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−CH2CH(CH3)CH2−などが挙げられる。
【0047】
アリーレン基としては、例えば、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、ビフェニレン、トリフェニレン、スチルベニレン、ナフェニレンなどを挙げることができる。また、芳香環の置換基としては、例えば、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ)、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ等が挙げられる。さらに、芳香環の置換基として、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリマーを用いても良い。
【0048】
前記含窒素複素環置換基としては、例えば、ピロイル基、イミダゾイル基、ピラゾイル基、イソチアゾイル基、イソオキサゾイル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドイル基、インドイル基、イソアゾイル基、プリニル基、クイノリジニル基、イソクイノイル基、クイノイル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサキニジル基、キノアキサゾリニル基、シノィニル基、フェリジニル基、カルバソール基、カルボリニル基、フェナンチリジニル基、アクチリニル基、ペリミジル基、フェナンシロィニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フィラザニル基、フェノキサジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラリゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルフォリニル基、1−メチルイミダゾイル基、1−エチルイミダゾイル基、1−プロピルイミダゾイル基等を挙げることができる。また、前記置換基として、前述した種類の中から選ばれる1種以上の含窒素複素環置換基から構成されるスピロ環体、前述した種類の中から選ばれる2種以上の含窒素複素環置換基の集合体(ヘテロ環集合体)などを用いても良い。
【0049】
二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物としては、例えば、ポリビニルイミダゾール、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリベンズイミダゾール、ビピリジル、ターピリジル、ポリビニルピロール、1,4−ジ(4−ピリジル)ブタン、2−(4−ピリジル)エチルエーテル、ポリ(4-ビニル−2,2´−ビピリジル)、下記化1〜化5に示す化合物a〜e等を挙げることができる。前記二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物には、前述した種類の中から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0050】
【化1】
【0051】
【化2】
【0052】
【化3】
【0053】
【化4】
【0054】
【化5】
【0055】
二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物の重量平均分子量は、500〜10,000,000の範囲内にすることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。重量平均分子量を500未満にすると、電解質組成物のゲル化が困難になる恐れがある。一方、重量平均分子量が10,000,000を超えると、電解質組成物の粘度が著しく増大して電解質組成物をセルに注入するのが困難になる恐れがある。重量平均分子量のより好ましい範囲は、1,000から1,000,000である。
【0056】
(金属ハロゲン化物)
金属ハロゲン化物は、カルシウムを除くアルカリ土類金属のハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Pのハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物及び遷移金属のハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の化合物から構成される。この金属ハロゲン化物は、架橋剤として機能する。
【0057】
金属ハロゲン化物の金属の価数は、二価以上にすることが望ましい。このような構成にすることによって、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物間に金属イオンによって架橋構造を形成することができるため、この架橋構造を持つ金属塩により電解質組成物をゲル化させることができる。価数のさらに好ましい範囲は、2〜4価である。これは、価数が大きくなると、ゲルが不安定になる恐れがある。
【0058】
二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物と金属ハロゲン化物とを反応させると、前記化合物が金属のイオンにより架橋されると共に、ハロゲンがゲル電解質中に残存する。金属ハロゲン化物として金属塩化物あるいは金属臭化物を用いると、ClもしくはBrがゲル電解質中に残存するため、太陽電池の電圧が損なわれる恐れがある。金属ハロゲン化物として金属ヨウ化物を用いることによって、太陽電池の電圧特性を確保することができる。
【0059】
ハロゲン化物を構成する遷移金属イオンとしては、例えば、Pb2 +、Zr4+、Mo3 +、Cr2 +、Sn2 +、Sn4+、Ge4+、Ga3 +、Ni2 +、Ti4+、Co2 + 、Zn2+、Cu2+、Ru3+、Pt4+、Mn2+、Os3+、Ir2+、Ir3+、Ir4+、Rh3+、Pd2+およびFe2+等を挙げることができる。遷移金属のハロゲン化物の具体例としては、PbI2、SnI2、SnI4、GeI4、GaI3、TiI4、NiI2、CoI2 、ZnI2、MgI2、MgCl2、CuI2、ZnI2、RuI3,PtI4、MnI2、OsCl3、IrBr3、RhI3、PdI2、FeI2などを挙げることができる。中でも、金属ヨウ化物を使用することが好ましい。
【0060】
金属ハロゲン化物には、ハロゲン原子以外の配位子、例えば、酢酸基やシュウ酸基などの有機酸基、炭酸基や硝酸基などの無機酸基などが存在していても良い。
【0061】
金属ハロゲン化物のうち、ルテニウムハロゲン化物、ロジウムハロゲン化物、オスミウムハロゲン化物、マグネシウムハロゲン化物、白金のハロゲン化物、亜鉛のハロゲン化物、銅のハロゲン化物あるいは鉄のハロゲン化物によると、電解質組成物のゲル化速度を適度に遅らせることができる。その結果、電解質組成物をセルに注入している途中で電解質組成物のゲル化が始まるのを回避することができるため、セルに均一に電解質組成物を含浸させることができる。その結果、太陽電池のエネルギー変換効率を向上することができる。金属ハロゲン化物の中でも、ルテニウムハロゲン化物、ロジウムハロゲン化物あるいはオスミウムハロゲン化物によると、セル中に電解質組成物を均一に含浸させることを最も容易に行える。
【0062】
本発明に係る第1、第2の電解質組成物用原料キットおよび本発明に係る第1、第2の電解質組成物に含まれる電解質について説明する。
【0063】
(電解質)
この電解質は、ヨウ素(I2)を含む。
【0064】
前記電解質は、I-とI3 -からなる可逆的な酸化還元対をさらに含むことが好ましい。かかる可逆的な酸化還元対は、たとえば、ヨウ素分子(I2)とヨウ化物の混合物から供給することができる。
【0065】
前記酸化還元対は、後述する色素の酸化電位よりも0.1〜0.6V小さい酸化還元電位を示すことが望ましい。色素の酸化電位よりも0.1〜0.6V小さい酸化還元電位を示す酸化還元対は、例えばI-のような還元種が、酸化された色素から正孔を受け取ることができる。この酸化還元対を含有する電解質によって、n型半導体電極と導電膜間の電荷輸送の速度を早くすることができると共に、開放端電圧を高くすることができる。
【0066】
前記電解質は、ヨウ素(I2)とヨウ化物を含むことが望ましい。前記ヨウ化物としては、例えば、アルカリ金属のヨウ化物、有機化合物のヨウ化物、ヨウ化物の溶融塩等を挙げることができる。
【0067】
前記ヨウ化物の溶融塩としては、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、第4級アンモニウム塩、ピロリジニウム塩、ピラゾリジウム塩、イソチアゾリジニウム塩、イソオキサゾリジニウム塩等の複素環含窒素化合物のヨウ化物を使用することができる。
【0068】
前記ヨウ化物の溶融塩としては、例えば、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−イソペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−イソプロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−プロピル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、ピロリジニウムアイオダイド、エチルピリジニウムアイオダイド、ブチルピリジニウムアイオダイド、ヘキシルピリジニウムアイオダイド、トリヘキシルメチルアンモニウムアイオダイド等を挙げることができる。前記ヨウ化物の溶融塩には、前述した種類の中から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0069】
(有機溶媒)
本発明に係る第1、第2の電解質組成物用原料キット及び本発明に係る第1、第2の電解質組成物は、それぞれ、有機溶媒をさらに備えることができる。有機溶媒を含有する電解質組成物は、粘度を下げることができるため、n型半導体電極へ浸透されやすい。また、ゲル電解質のイオン伝導度を大きくすることができる。
【0070】
特に、低粘度であるためにイオン移動度が高いか、または高誘電率であるために有効キャリアー濃度が高いか、あるいはその両方であるために、優れたイオン伝導性を発現できる溶媒を使用するのが望ましい。例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のテトラヒドロフラン類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル類、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリエステル類、N−メチルピロリドン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、スルホラン等の複素環化合物類、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が好ましい。これらの溶媒は必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい
電解質組成物用原料キット全体及び電解質組成物全体をそれぞれ100重量%とした際に、有機溶媒の含有量は、65重量%以下にすることが好ましい。有機溶媒の含有量が65重量%を超えると、ゲル電解質の変質が顕著に生じる恐れがあると共に、ゲル化が阻害される可能性がある。有機溶媒の含有量は、1重量%以上、20重量%以下にすることが好ましい。
【0071】
(水)
本発明に係る第1、第2の電解質組成物には、それぞれ水が含有されることが好ましい。水を含有する電解質組成物は、光増感型太陽電池のエネルギー変換効率をより高くすることができる。
【0072】
前記電解質組成物中の水の含有量は、ヨウ化物の溶融塩と水との合計量を100重量%とした際に10重量%以下にすることが好ましい。水の含有量のさらに好ましい範囲は、ヨウ化物の溶融塩と水との合計量を100重量%とした際に0.01重量%以上、10重量%以下で、最も好ましい範囲は前記合計量100重量%に対して0.5重量%以上、5重量%以下である。
【0073】
次いで、本発明に係る第1、第2の光増感型太陽電池の一例を説明する。
【0074】
本発明に係る第1、第2の光増感型太陽電池は、それぞれ、光受光面を有する基板と、前記基板の内面に形成される透明導電膜と、前記透明導電膜に形成され、かつ表面に色素が吸着されているn型半導体電極と、前記n型半導体電極と対向する対向基板及び前記対向基板の前記n型半導体電極と対向する面に形成される導電膜を有する対向電極と、前記対向電極の前記導電膜と前記n型半導体電極間に存在するゲル電解質とを具備する。
【0075】
以下、前記ゲル電解質、前記透明導電膜、前記n型半導体電極、前記色素、前記対向基板及び前記導電膜について説明する。
【0076】
1)ゲル電解質
本発明に係る第1の太陽電池に含まれるゲル電解質は、ヨウ素を含む電解質及びゲル化剤を含有する。ゲル化剤は、ポリスルホン酸が二価以上の金属イオンにより架橋された第1のポリマー、ポリカルボン酸が二価以上の金属イオンにより架橋された第2のポリマー、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩が二価以上の金属イオンにより架橋された第3のポリマー及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩が二価以上の金属イオンにより架橋された第4のポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーを含む。
【0077】
前記二価以上の金属イオンとしては、例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Al3+、B3+、Sc3+、Ga4+、Si4+、Ti4+、Ge4+およびP3+よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属イオンを挙げることができる。
【0078】
第1のポリマーには、例えば、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩に金属ハロゲン化物を作用させることにより得られる金属塩を用いることができる。一方、第2のポリマーには、例えば、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩に金属ハロゲン化物を作用させることにより得られる金属塩を用いることができる。なお、ゲル電解質中には、未反応のポリスルホン酸の4級アンモニウム塩あるいは未反応のポリカルボン酸の4級アンモニウム塩が含まれていても良い。また、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩に金属ハロゲン化物が部分的に反応することにより生成した−SO3NR4基が残存する架橋ポリマー(第3のポリマー)や、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩に金属ハロゲン化物が部分的に反応することにより生成した−COONR4基が残存する架橋ポリマー(第4のポリマー)を、ゲル化剤として用いることも可能である。
【0079】
金属塩の生成反応の一例を下記化6に示す。
【0080】
【化6】
【0081】
上記化6は、ポリメタクリル酸のテトラブチルアンモニウム塩とMgI2との反応式を示す。この反応により、ポリマー間が金属イオンにより架橋されて金属塩が生成すると共に、対イオンがハロゲンの4級アンモニウム塩が副生成物として生成する。この副生成物は、電解質成分として機能することができる。
【0082】
このゲル電解質は、たとえば、電解質組成物用原料キットの原料を混合して得られる電解質組成物をゲル化させることにより作製される。
【0083】
第1〜第4のポリマーにおける2価以上の金属イオンによる架橋構造の確認は、赤外線吸収スペクトルにより行うことができる。
【0084】
次いで、本発明に係る第2の太陽電池に含まれるゲル電解質について説明する。
【0085】
ゲル電解質は、ヨウ素を含む電解質及びゲル化剤を含有する。ゲル化剤は、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物が金属イオンで架橋されたポリマーを含む。ここで、金属イオンとしては、アルカリ土類金属のイオン(カルシウムイオンを除く)、ホウ素イオン、スカンジウムイオン、ケイ素イオン、リンイオン、アルミニウムイオンおよび遷移金属イオンよりなる群から選択される少なくとも1種類の金属イオンを用いることができる。また、このポリマーは、例えば、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物と、カルシウムを除くアルカリ土類金属のハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Pのハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物及び遷移金属のハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属ハロゲン化物との反応により生成した金属塩である。
【0086】
この金属塩の生成反応の一例を下記化7に示す。
【0087】
【化7】
【0088】
上記化7は、ポリビニルピリジンとMgI2との反応式を示す。この反応により、ポリマー間がマグネシウムイオンにより架橋されて高分子の金属塩が生成する。なお、ヨウ素は、マグネシウムイオンに配位している。
【0089】
このゲル電解質は、たとえば、電解質組成物用原料キットの原料を混合して得られる電解質組成物をゲル化させることにより作製される。
【0090】
前記ポリマーおける金属イオンによる架橋構造の確認は、赤外線吸収スペクトルにより行うことができる。
【0091】
2)透明導電膜
前記透明導電膜は、可視光領域の吸収が少なく、かつ導電性を有することが好ましい。かかる透明導電膜には、フッ素あるいはインジウムなどがドープされた酸化スズ膜、フッ素あるいはインジウムなどがドープされた酸化亜鉛膜などが好ましい。また、伝導性を向上させて抵抗の上昇を防ぐ観点から、前記透明導電膜と併用して低抵抗な金属マトリクスを配線することが望ましい。
【0092】
3)n型半導体電極
n型半導体電極は、可視光領域の吸収が少ない透明な半導体から構成することが望ましい。かかる半導体としては、金属酸化物半導体が好ましい。具体的には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、亜鉛、インジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデンあるいはタングステンなどの遷移金属の酸化物、SrTiO3、CaTiO3、BaTiO3、MgTiO3、SrNb2O6のようなペロブスカイト、あるいはこれら複合酸化物または酸化物の混合物、GaNなどを挙げることができる。
【0093】
前記n型半導体電極の表面に吸着される色素としては、例えば、ルテニウム−トリス型の遷移金属錯体、ルテニウム−ビス型の遷移金属錯体、オスミウム−トリス型の遷移金属錯体、オスミウム−ビス型の遷移金属錯体、ルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、フタロシアニン、ポルフィリン等を挙げることができる。
【0094】
4)対向基板
この対向基板は、可視光領域の吸収が少なく、かつ導電性を有することが好ましい。かかる基板には、酸化スズ膜、酸化亜鉛膜などが好ましい。
【0095】
5)導電膜
この導電膜は、例えば、白金、金、銀のような金属から形成することができる。
【0096】
本発明に係る第1、第2の太陽電池は、例えば、以下に説明する方法でそれぞれ製造される。
【0097】
まず、光受光面を有する基板と、前記基板の内面に形成される透明導電膜と、前記透明導電膜に形成され、かつ表面に色素が吸着されているn型半導体電極と、前記n型半導体電極と対向する対向基板及び前記対向基板の前記n型半導体電極と対向する面に形成される導電膜を有する対向電極とを備える電池ユニットを組み立てる。
【0098】
次いで、電解質組成物を、前記基板と前記対向基板の間に存在する間隙に注入する。ひきつづき、電池ユニットを密封した後、電解質組成物をゲル化させることにより本発明に係る光増感型太陽電池を得る。
【0099】
ゲル化の際に電池ユニットを加熱することが望ましい。加熱処理の温度は、50〜200℃の範囲内にすることが好ましい。これは次のような理由によるものである。熱処理温度を50℃未満にすると、ゲル化を促進する効果を得られない恐れがある。一方、熱処理温度が200℃を超えると、色素の分解が起こりやすくなる。より好ましい範囲は、70〜150℃である。
【0100】
(作用)
本発明に係る第1の電解質組成物用原料キットは、電解質組成物を得るための2種類以上の原料を備える。前記2種類以上の原料は互いに混合されていないか、もしくは一部が混合物の状態にある。また、前記2種類以上の原料には、ヨウ素を含有する電解質と、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種類のアンモニウム塩と、二価以上の金属のハロゲン化物とが含まれる。このような原料キットによれば、ヨウ素を含む電解質の存在下で電解質組成物をゲル化させることができる。
【0101】
すなわち、ゲル化剤となる重合体の合成方法として、少量の触媒の存在下でモノマーをラジカル的またはイオン的な連鎖反応で重合させる方法が知られている。しかしながら、ヨウ素を含む電解質の存在下では、ラジカル発生剤およびアニオン重合開始剤は効力を発揮しないため、連鎖反応的な重合は生じない。このようなモノマーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。また、他の合成方法として、エステル交換反応に代表されるような小分子副生成物である水、アルコールなどを除去しながら重合がなされる方法がある。ポリエステル、ポリアミドなどがこの方法で合成される。しかしながら、重合反応の際に生成する副生成物は、電解質及び色素分子に悪影響を及ぼす。
【0102】
ところで、前記アンモニウム塩と前記金属ハロゲン化物は、イオン反応によりゲル化剤となる金属塩を生成するため、ヨウ素の存在下で、しかも触媒無添加で電解質組成物をゲル化させることができる。また、金属塩生成反応の際に、対イオンがハロゲンのアンモニウム塩が副生成物として生成するが、このアンモニウム塩は電解質成分として機能することができる。これらの結果、ゲル電解質のイオン伝導度を向上することができるため、エネルギー変換効率が向上された色素増感型太陽電池を実現することができる。
【0103】
また、前記金属塩を含むゲル化剤は、太陽電池を長期間に亘って使用したり、太陽電池の温度が太陽光の照射で50〜70℃程度に上昇した際にも安定であるため、ゲル電解質に相転移が生じるのを回避することができる。その結果、温度上昇時の液漏れを防止することができると共に、温度上昇時も高いエネルギー変換効率を維持することができる。
【0104】
本発明において、前記二価以上の金属のハロゲン化物として、Mgのハロゲン化物、Caのハロゲン化物、Znのハロゲン化物、Alのハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Gaのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Tiのハロゲン化物、Geのハロゲン化物及びPのハロゲン化物よりなる群から選択される1種類以上のハロゲン化物を使用することによって、色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率をさらに向上することができる。
【0105】
また、本発明において、前記二価以上の金属のハロゲン化物として、二価以上の金属のヨウ化物を使用することによって、金属塩生成反応の際の副生成物であるアンモニウム塩がヨウ素の塩となるため、ゲル電解質のイオン伝導度をより向上することができ、色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率をさらに向上することができる。
【0106】
本発明において、前記電解質がヨウ素(I2)及び複素環含窒素化合物のヨウ素塩を含むことによって、前記アンモニウム塩の電解質に対する溶解性を向上することができる。また、電解質組成物の初期粘度を低くすることができるため、電極に電解質組成物を速やかに浸透させることができる。
【0107】
(作用)
本発明に係る第2の電解質組成物用原料キットは、電解質組成物を得るための2種類以上の原料を備える。前記2種類以上の原料は互いに混合されていないか、もしくは一部が混合物の状態にある。また、前記2種類以上の原料には、ヨウ素を含有する電解質と、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物と、カルシウムを除くアルカリ土類金属のハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Pのハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物及び遷移金属のハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属ハロゲン化物とが含まれる。
【0108】
このような原料キットによれば、ヨウ素を含む電解質の存在下で電解質組成物をゲル化させることができる。すなわち、前記二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物と前記少なくとも1種類の金属ハロゲン化物は、付加反応によりゲル化剤となる金属塩を生成するため、ヨウ素の存在下で、しかも触媒無添加で電解質組成物をゲル化させることができる。また、金属塩生成反応の際に、副生成物が生成しないため、高いエネルギー変換効率を有する色素増感型太陽電池を実現することができる。
【0109】
また、前記金属塩を含むゲル化剤は、太陽電池を長期間に亘って使用したり、太陽電池の温度が太陽光の照射で50〜70℃程度に上昇した際にも安定であるため、ゲル電解質に相転移が生じるのを回避することができる。その結果、温度上昇時の液漏れを防止することができると共に、温度上昇時も高いエネルギー変換効率を維持することができる。
【0110】
本発明において、金属化合物の金属の価数を二価以上にすることによって、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物間に金属イオンによって架橋構造を形成することができるため、この架橋構造を持つ金属塩により電解質組成物をゲル化させることができる。
【0111】
前記少なくとも1種類の金属ハロゲン化物として、SrI2、BaI2、BI3、ScI3、AlI3、PI3、SiI4、PbI2、SnI2、SnI4、GeI4、GaI3、TiI4、NiI2、CoI2 、ZnI2、MgI2、MgCl2、CuI2、ZnI2、RuI3,PtI4、MnI2、OsCl3、IrBr3、RhI3、PdI2およびFeI2よりなる群から選択される1種類以上の化合物を用いることによって、色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率をさらに向上することができる。
【0112】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0113】
(実施例1)
平均一次粒径が30nmの高純度酸化チタン(アナターゼ)粉末に硝酸を添加した後、純水とともに混練し、さらに界面活性剤で安定化させたペーストを作製した。ガラス基板上に形成された緻密な部分の上にこのペーストをスクリーン印刷法で印刷し、温度450℃で熱処理を行うことにより、酸化チタン(アナターゼ)粒子からなる厚さ2μmのn型半導体電極を形成した。このスクリーン印刷と熱処理を複数回繰り返し、最終的にフッ素ドープした酸化すず導電膜2(透明導電膜2)上に厚さ8μmのアナターゼ相からなる酸化チタン粒子3を含むn型半導体電極4を形成した。このn型半導体電極4のラフネスファクターは1500であった。ラフネスファクターは、基板の投影面積に対する、窒素吸着量から求めた。
【0114】
次いで、シス−ビス(シオシアナト)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)二水和物)の3×10-4M乾燥エタノール溶液(温度約80℃)に4時間浸漬したのち、アルゴン気流中で引き上げることにより、n型半導体電極4表面に色素であるルテニウム錯体を担持させた。
【0115】
対向電極5として白金をつけたフッ素ドープ酸化錫電極6(導電膜6)を形成したガラス基板7を、直径が15μmのスペーサーを利用して前述のn型半導体電極4を作製した基板1上に設置し、周囲を電解液注入口を残してエポキシ系樹脂8で固めて固定した。
【0116】
得られた光電変換素子ユニットの断面を図1の(a)に示す。
【0117】
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドに、よう化テトラプロピルアンモニウム0.5M,よう化カリウム0.02M及びヨウ素0.09Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリメタクリル酸のテトラブチルアンモニウム塩0.2gとMgI20.1gを添加し、電解質組成物を得た。なお、ポリメタクリル酸のテトラブチルアンモニウム塩としては、ポリメタクリル酸のカルボキシル基(−COOH)が全て−COON(C4H9)4に置き換わったものを使用した。すなわち、−COON(C4H9)4の置換基数は、100%である。
【0118】
図1の(b)、(c)に示すように、光電変換素子ユニットの開口部に注入口9から電解質組成物10を注入し、電解質組成物10をn型半導体電極4に浸透させると共に、n型半導体電極4と酸化錫電極6(導電膜6)の間に注入した。
【0119】
ひきつづき、図1の(d)に示すように、光電変換素子ユニットの開口部をエポキシ樹脂11で封口した後、60℃で30分間ホットプレートで加熱することにより、光電変換素子、つまり色素増感型太陽電池を製造した。得られた太陽電池の断面を図2に示す。
【0120】
すなわち、ガラス基板1上には、透明導電膜2が形成されている。透明なn型半導体電極4は、前記透明導電膜2上に形成される。この半導体電極4は、微粒子3の集合体であるため、極めて表面積が大きい。また、前記半導体電極4の表面には色素が単分子吸着している。透明半導体電極4の表面は樹脂状構造のように自己相似性を持ったフラクタル形状とすることが可能である。対向電極5は、ガラス基板7と、前記ガラス基板7の表面のうち前記半導体電極4と対向する表面に形成された導電膜6とから構成される。ゲル状電解質10は、前記半導体電極4中の細孔に保持されると共に、前記半導体電極4と前記導電膜6との間に介在される。このような光増感型太陽電池では、前記ガラス基板1側から入射した光12をn型半導体電極4の表面に吸着されている色素が吸収した後、前記色素がn型半導体電極4へ電子を渡すと共に、前記色素がゲル状電解質10にホールを渡すことによって光電変換を行う。
【0121】
(実施例2〜5)
MgI2の代わりに下記表1に示す金属ハロゲン化物を用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。
【0122】
(実施例6)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドにヨウ素0.03Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリアクリル酸のテトラメチルアンモニウム塩0.2g及びZnCl20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0123】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0124】
(実施例7〜10)
ZnCl2の代わりに下記表1に示す金属ハロゲン化物を用いること以外は、前述した実施例6で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。
【0125】
(実施例11)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドにヨウ素0.03Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリスチレンスルホン酸のテトラプロピルアンモニウム塩0.2g及びCaCl20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0126】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0127】
(実施例12〜13)
CaCl2の代わりに下記表1に示す金属ハロゲン化物を用いること以外は、前述した実施例11で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。
【0128】
(実施例14)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドにヨウ素0.03Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリメタクリル酸のテトラメチルアンモニウム塩0.2g及びMgCl20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0129】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0130】
(実施例15)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドにヨウ素0.03Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリメタクリル酸のテトラエチルアンモニウム塩0.2g及びSrBr20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0131】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0132】
(実施例16)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドにヨウ素0.03Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリメタクリル酸のテトラプロピルアンモニウム塩0.2g及びBaI20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0133】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0134】
(実施例17)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドにヨウ素0.03Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリメタクリル酸のテトラヘキシルアンモニウム塩0.2g及びMgCl20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0135】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0136】
(実施例18)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドにヨウ素0.03Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリビニルベンゼンスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩0.2g及びZnI20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0137】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0138】
(実施例19)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドにヨウ素0.03Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリビニル安息香酸テトラエチルアンモニウム塩0.2g及びCaBr20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0139】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0140】
(実施例20)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドに、よう化テトラプロピルアンモニウム0.5M,よう化カリウム0.02M及びヨウ素0.09Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリメタクリル酸にトリブチルアンモニウムヒドロキシドを作用して得られたポリメタクリル酸のアンモニウム塩(重量平均分子量10,000)0.2gとMgI20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0141】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0142】
(実施例21)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドに、よう化テトラプロピルアンモニウム0.5M,よう化カリウム0.02M及びヨウ素0.09Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリメタクリル酸にジヘキシルアンモニウムヒドロキシドを作用して得られたポリメタクリル酸のアンモニウム塩(重量平均分子量10,000)0.2gとMgI20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0143】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0144】
(実施例22)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドに、よう化テトラプロピルアンモニウム0.5M,よう化カリウム0.02M及びヨウ素0.09Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリメタクリル酸にヘキシルアンモニウムヒドロキシドを作用して得られたポリメタクリル酸のアンモニウム塩(重量平均分子量10,000)0.2gとMgI20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0145】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0146】
(実施例23)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドに、よう化テトラプロピルアンモニウム0.5M,よう化カリウム0.02M及びヨウ素0.09Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリメタクリル酸にアンモニウムヒドロキシドを作用して得られたポリメタクリル酸のアンモニウム塩(重量平均分子量10,000)0.2gとMgI20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0147】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0148】
(実施例24)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドにヨウ素0.03Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、ポリスチレンスルホン酸にトリブチルアンモニウムヒドロキシドを作用して得られたアンモニウム塩(重量平均分子量10,000)0.2g及びCaCl20.1gを添加し、電解質組成物を得た。
【0149】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0150】
(比較例1)
実施例1で説明したのと同様な電解質10gに、自己組織化を起こす化合物であるポリアクリロニトリル0.2gを溶解させることにより、電解質組成物を得た。
【0151】
前述した実施例1で説明したのと同様な光電変換素子ユニットの開口部に注入口から電解質組成物を注入し、電解質組成物をn型半導体電極に浸透させると共に、n型半導体電極と酸化錫電極(導電膜)の間に注入した。
【0152】
ひきつづき、光電変換素子ユニットの開口部をエポキシ樹脂で封口した後、50℃で200分間ホットプレートで加熱することにより、光電変換素子、つまり色素増感型太陽電池を製造した。
【0153】
(比較例2)
プロピレンカーボネートに、よう化リチウム0.5M及びヨウ素0.05Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質90重量%に分子量が2000のポリ(4−ビニルピリジン)10重量%(10g)を溶解させた。その後、その溶液に、1,6−ジブロモヘキサンを10g溶解させることにより、電解質組成物を得た。
【0154】
このような電解質組成物を用いること以外は、前述した実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0155】
得られた実施例1〜24及び比較例1〜2の太陽電池を分解し、電解質の状態を確認したところ電解質はゲル化していた。また、実施例1〜5の太陽電池に含まれるゲル化剤の組成を確認したところ、実施例1〜5のゲル化剤は、ポリメタクリル酸がMg2 +、Zn2 +、Al3 +、Ga4+またはGe4+の各金属イオンにより架橋されたポリマーとポリメタクリル酸のテトラブチルアンモニウム塩がMg2 +、Zn2 +、Al3 +、Ga4+またはGe4+の各金属イオンにより架橋されたポリマーとの混合物であった。
【0156】
一方、実施例6〜10のゲル化剤は、ポリアクリル酸がZn2 +、Ca2 +、B3 +、Si4+またはP3+の各金属イオンにより架橋されたポリマーとポリアクリル酸のテトラメチルアンモニウム塩がZn2 +、Ca2 +、B3 +、Si4+またはP3+の各金属イオンにより架橋されたポリマーとの混合物であった。さらに、実施例11〜13のゲル化剤は、ポリスチレンスルホン酸がCa2 +、Sc3 +またはTi4+の各金属イオンにより架橋されたポリマーとポリスチレンスルホン酸のテトラプロピルアンモニウム塩がCa2 +、Sc3 +またはTi4+の各金属イオンにより架橋されたポリマーとの混合物であった。
【0157】
また、実施例1〜24及び比較例1〜2の太陽電池について、擬似太陽光を100mW/cm2の強度で照射した際のエネルギー変換効率を求め、その結果を下記表1、2に示す。次いで、実施例1〜24及び比較例1〜2の太陽電池を100℃で1ヶ月間貯蔵した後、擬似太陽光を100mW/cm2の強度で照射した際のエネルギー変換効率を求め、これを貯蔵前のエネルギー変換効率と比較し、低下率を求めた。その結果を下記表1〜2に示す。
【0158】
なお、表1〜表2には、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩に含まれる−COONR4およびポリスルホン酸の4級アンモニウム塩に含まれる−SO3NR4におけるRの種類と、ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩の重量平均分子量と、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩の重量平均分子量を併記する。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
表1、2から明らかなように、実施例1〜24の太陽電池は、比較例1〜2の太陽電池に比べて、エネルギー変換効率が高く、かつ温度上昇によるエネルギー変換効率の低下率を小さく、耐久性に優れることがわかる。
【0162】
実施例1と実施例20〜23の比較によって、アンモニウム塩中の窒素原子に結合されるR全てが炭化水素基である実施例1の太陽電池は、Rのうち少なくとも1種類が水素原子である実施例20〜23の太陽電池に比較してエネルギー変換効率が高く、かつエネルギー変換効率の100℃貯蔵後の低下率が低いことが理解できる。
【0163】
特に、Mgハロゲン化物またはZnハロゲン化物とテトラアルキルアンモニウム塩とを用いる実施例1,2,6,14,17,18は、エネルギー変換効率を8〜9%と高くすることができ、かつエネルギー変換効率の100℃貯蔵後の低下率を小さくすることができる。
【0164】
(実施例25)
実施例1で説明したのと同様な電解質10gに、重量平均分子量が5,000のポリメタクリル酸のテトラブチルアンモニウム塩0.2gを添加することによりスラリーを調製した。
【0165】
(実施例26)
実施例1で説明したのと同様な電解質10gに、重量平均分子量が250,000のポリメタクリル酸のテトラブチルアンモニウム塩0.2gを添加することによりスラリーを調製した。
【0166】
実施例25の粘度を1とした際の実施例26の粘度を下記表3に示す。粘度を相対比較した場合、実施例25の電解質含有スラリーの粘度は、実施例26の電解質含有スラリーに比較して3分の1程度である。この結果から、実施例25の電解質含有スラリーを用いるのは、セルに電解質組成物を速やかに注入する点で有利であることがわかる。
【0167】
【表3】
【0168】
(実施例1a)
ポリメタクリル酸のテトラブチルアンモニウム塩として、カルボキシル基(−COOH)と−COON(C4H9)4との双方を有し、−COOHと−COON(C4H9)4との合計官能基数を100%とした際の−COON(C4H9)4の置換基数を70%にすること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0169】
(実施例1b〜1c)
ポリメタクリル酸のテトラブチルアンモニウム塩として、カルボキシル基(−COOH)と−COON(C4H9)4との双方を有し、−COOHと−COON(C4H9)4との合計官能基数を100%とした際の−COON(C4H9)4の置換基数を下記表4に示す値にすること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
【0170】
実施例1a〜1cの太陽電池について、前述した実施例1で説明したのと同様にしてエネルギー変換効率と低下率を測定し、その結果を下記表4に示す。なお、表4には、実施例1の結果を併記する。
【0171】
【表4】
【0172】
表4から明らかなように、−COON(C4H9)4の置換基数が30%以上である実施例1、1a,1bの太陽電池は、実施例1cの太陽電池に比較してエネルギー変換効率が高く、100℃で貯蔵後の低下率が小さいことがわかる。なお、実施例1a〜1cの太陽電池を分解し、ゲル電解質に含まれるゲル化剤の組成を確認したところ、いずれのゲル化剤も、ポリメタクリル酸がマグネシウムイオン(Mg2 +)により架橋されたポリマーとポリメタクリル酸のテトラブチルアンモニウム塩がマグネシウムイオン(Mg2 +)により架橋されたポリマーとの混合物であった。
【0173】
(実施例27)
平均一次粒径が30nmの高純度酸化チタン(アナターゼ)粉末に硝酸を添加した後、純水とともに混練し、さらに界面活性剤で安定化させたペーストを作製した。ガラス基板上に形成された緻密な部分の上にこのペーストをスクリーン印刷法で印刷し、温度450℃で熱処理を行うことにより、酸化チタン(アナターゼ)粒子からなる厚さ2μmのn型半導体電極を形成した。このスクリーン印刷と熱処理を複数回繰り返し、最終的にフッ素ドープした酸化すず導電膜2(透明導電膜2)上に厚さ8μmのアナターゼ相からなる酸化チタン粒子3を含むn型半導体電極4を形成した。このn型半導体電極4のラフネスファクターは1500であった。ラフネスファクターは、基板の投影面積に対する、窒素吸着量から求めた。
【0174】
次いで、シス−ビス(シオシアナト)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)二水和物)の3×10-4M乾燥エタノール溶液(温度約80℃)に4時間浸漬したのち、アルゴン気流中で引き上げることにより、n型半導体電極4表面に色素であるルテニウム錯体を担持させた。
【0175】
対向電極5として白金をつけたフッ素ドープ酸化錫電極6(導電膜6)を形成したガラス基板7を、直径が15μmのスペーサーを利用して前述のn型半導体電極4を作製した基板1上に設置し、周囲を電解液注入口を残してエポキシ系樹脂8で固めて固定した。
【0176】
得られた光電変換素子ユニットの断面は、前述した図1の(a)に示すようなものであった。
【0177】
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドに、よう化テトラプロピルアンモニウム0.5M,よう化カリウム0.02M及びヨウ素0.09Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、重量平均分子量が50000であるポリビニルピリジン0.2gと、MgI20.1gとを添加し、電解質組成物を得た。
【0178】
前述した図1の(b)、(c)に示すように、光電変換素子ユニットの開口部に注入口9から電解質組成物10を注入し、電解質組成物10をn型半導体電極4に浸透させると共に、n型半導体電極4と酸化錫電極6(導電膜6)の間に注入した。
【0179】
ひきつづき、前述した図1の(d)に示すように、光電変換素子ユニットの開口部をエポキシ樹脂11で封口した後、60℃で30分間ホットプレートで加熱することにより、光電変換素子、つまり色素増感型太陽電池を製造した。得られた太陽電池の断面は、前述した図2に示すようなものであった。
【0180】
(実施例28〜36)
MgI2の代わりに下記表5に示す金属ハロゲン化物を用いること以外は、前述した実施例27で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。
【0181】
(実施例37)
ポリビニルピリジンの代わりに1,2,4,5−テトラキス(1−イミダゾリルメチル)ベンゼンを用いること以外は、前述した実施例27で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。
【0182】
(実施例38)
ポリビニルピリジンの代わりに2−(4−ピリジル)エチルエーテルを用いること以外は、前述した実施例27で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。
【0183】
(実施例39)
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドに、よう化テトラプロピルアンモニウム0.5M,t−ブチルピリジン0.03M,よう化カリウム0.02M及びヨウ素0.09Mを溶解させ、電解質を調製した。この電解質10gに、1,2,4,5−テトラキス(1−イミダゾリルメチル)ベンゼン0.2gと、RuI30.1gとを添加し、電解質組成物を得た。
【0184】
この電解質を用いること以外は、実施例37で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。
【0185】
(実施例40)
電解質組成物中にt−ブチルピリジン0.03Mを添加すること以外は、実施例27と同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。
【0186】
(比較例3)
MgI2の代わりにCaBr2を用いること以外は、前述した実施例27で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。
【0187】
得られた実施例27〜40及び比較例3の太陽電池を分解し、電解質の状態を確認したところ電解質はゲル化していた。
【0188】
また、実施例27〜40及び比較例3の太陽電池について、擬似太陽光を100mW/cm2の強度で照射した際のエネルギー変換効率を求め、その結果を下記表1に示す。次いで、実施例27〜40及び比較例3の太陽電池を100℃で1ヶ月間貯蔵した後、擬似太陽光を100mW/cm2の強度で照射した際のエネルギー変換効率を求め、これを貯蔵前のエネルギー変換効率と比較し、低下率を求めた。その結果を下記表5に示す。なお、表5には、前述した比較例1,2の結果を併記する。
【0189】
さらに、実施例27〜40及び比較例1〜3の太陽電池について、電解質組成物のゲル化時間を測定し、比較例2を基準にして相対比較した結果をそれぞれ表5に示した。
【0190】
【表5】
【0191】
表5から明らかなように、実施例27〜40の太陽電池は、比較例1〜3の太陽電池に比べて、エネルギー変換効率が高く、かつ温度上昇によるエネルギー変換効率の低下率を小さく、耐久性に優れることがわかる。特に、架橋剤としてMgのヨウ化物、Ptのヨウ化物もしくはRuのヨウ化物を用いる実施例27〜29の太陽電池は、エネルギー変換効率が9%と高く、かつ100℃貯蔵によるエネルギー変換効率の低下率が3〜4%と低いことがわかる。
【0192】
また、電解質組成物のゲル時間については、ルテニウムのハロゲン化物、ロジウムのハロゲン化物あるいはオスミウムのハロゲン化物を架橋剤として用いる実施例29、31、32、37,38の太陽電池が15以上と長いことが理解できる。
【0193】
さらに、t−ブチルピリジンを加えた実施例39,40の太陽電池は、t−ブチルピリジンが無添加の実施例27、37に比較してゲル化時間がさらに長いことがわかる。これは、以下に説明するメカニズムによるものと推測する。すなわち、MgI2とt−ブチルピリジンは、溶融塩中で一旦錯体を形成する。この錯体形成反応は、平衡反応であるため、これにポリビニルピリジンを加えると、平衡状態にあるMgI2とt−ブチルピリジンの錯体の一部がフリーのMgI2を放出する。この放出されたMgI2とポリビニルピリジンが反応してゲル化が進行する。従って、フリーのMgI2が系内に放出された時のみポリビニルピリジンとMgI2とのゲル化反応が進行するため、ゲル化時間を遅らせることができる。
【0194】
(実施例41)
ポリビニルピリジンの代わりに下記化8に示す構造を有するポリ(2−ビニルピリジン)を用いること以外は、前述した実施例27で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。なお、ポリ(2−ビニルピリジン)の重量平均分子量は、50,000であった。
【0195】
【化8】
【0196】
(実施例42)
ポリビニルピリジンの代わりに前述した化合物e、つまり、ポリ(4−ビニル−2,2’−ビピリジル)を用いること以外は、前述した実施例27で説明したのと同様な構成の色素増感型太陽電池を製造した。なお、ポリ(4−ビニル−2,2’−ビピリジル)の重量平均分子量は、20,000であった。
【0197】
実施例41〜42の太陽電池について、擬似太陽光を100mW/cm2の強度で照射した際のエネルギー変換効率を求め、その結果を下記表6に示す。次いで、実施例41〜42の太陽電池を100℃で1ヶ月間貯蔵した後、擬似太陽光を100mW/cm2の強度で照射した際のエネルギー変換効率を求め、これを貯蔵前のエネルギー変換効率と比較し、低下率を求めた。その結果を下記表6に示す。
【0198】
さらに、実施例41〜42の太陽電池について、電解質組成物のゲル化時間を測定し、比較例2を基準にして相対比較した結果をそれぞれ表6に示した。なお、表6には、前述した実施例27の結果を併記する。
【0199】
【表6】
【0200】
表6から明らかなように、実施例41の太陽電池は、実施例27の太陽電池に比較してゲル化時間が長いことがわかる。これは、以下に説明するメカニズムによるものと推測される。ポリ(2−ビニルピリジン)は、ハロゲン化金属と反応する窒素原子が主鎖に近いところに位置している。一方、実施例27で使用したポリ(4−ビニルピリジン)は、下記化9に示すように、主鎖から最も遠い位置に、ハロゲン化金属と反応する窒素原子が位置している。したがって、ポリ(2−ビニルピリジン)は、立体的な効果のために架橋反応をポリ(4−ビニルピリジン)より遅くできると考えられる。その結果、実施例41の太陽電池は、ゲル化時間を遅くすることができ、セルの反応面積を大きくした際にもゲル電解質を細部まで含浸させることが可能になる。
【0201】
【化9】
【0202】
また、表6から、実施例42の太陽電池は、実施例27と比較してゲル化時間が長く、同時に耐久性が高いことが理解できる。これは、2,2−ピリジル基の金属への配位能力がピリジン基より優れているためにゲル電解質の安定性が高く、ゲル電解質の温度上昇による相転移が起こり難いことに起因すると考えられる。
【0203】
なお、前述した実施例においては、n型半導体電極側から太陽光を入射させる例を説明したが、対向電極側から太陽光を入射させる構成の太陽電池にも同様に適用することができる。
【0204】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、光増感型太陽電池において高いエネルギー変換効率が得られる電解質組成物用原料キットを提供することができる。また、本発明によれば、光増感型太陽電池において高いエネルギー変換効率が得られる電解質組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、高いエネルギー変換効率が得られる光増感型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の色素増感型太陽電池の製造工程を示す模式図。
【図2】実施例1の色素増感型太陽電池を示す断面図。
【符号の説明】
1…ガラス基板、
2…透明導電膜、
4…半導体電極、
5…対向電極、
6…導電膜、
7…ガラス基板、
10…ゲル状電解質、
12…入射光。
Claims (10)
- 色素を保持したn型半導体電極と、対向電極と、前記n型半導体電極と前記対向電極の間に配置され、ヨウ素を含む電解質及びゲル化剤を含有するゲル電解質とを具備する光増感型太陽電池であって、
前記ゲル化剤は、ポリスルホン酸が二価以上の金属イオンにより架橋された第1のポリマー、ポリカルボン酸が二価以上の金属イオンにより架橋された第2のポリマー、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩が二価以上の金属イオンにより架橋された第3のポリマー及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩が二価以上の金属イオンにより架橋された第4のポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーを含むことを特徴とする光増感型太陽電池。 - 前記二価以上の金属イオンは、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Al3+、B3+、Sc3+、Ga4+、Si4+、Ti4+、Ge4+およびP3+よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属イオンであることを特徴とする請求項1記載の光増感型太陽電池。
- 前記ゲル電解質は、下記(1)式で表わされる組成の4級アンモニウム塩をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の光増感型太陽電池。
R4NX (1)
ただし、Rは、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換あるいは縮環したアリール基、および置換あるいは縮環した複素環基よりなる群から選択される1種類の官能基でそれぞれあると共に、前記Rは、互いに同じでも、異なっていても良い。 - 2種類以上の原料を備え、前記2種類以上の原料を混合することによって電解質組成物を得る電解質組成物用原料キットであって、
前記2種類以上の原料は、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種類のアンモニウム塩を含む第1の原料と、二価以上の金属のハロゲン化物を含む第2の原料とを備えることを特徴とする電解質組成物用原料キット。 - 前記ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩は、−SO3NR4で表わされる第1の官能基を有し、スルホン基(−SO3H)と前記第1の官能基との合計官能基数を100%とした際の前記第1の官能基の量は、5〜100%であり、
前記ポリカルボン酸の4級アンモニウム塩は、−COONR4で表わされる第2の官能基を有し、カルボキシル基(−COOH)と前記第2の官能基との合計官能基数を100%とした際の前記第2の官能基の量は、5〜100%であり、
前記−SO3NR4及び前記−COONR4のRは、互いに同じでも異なっていても良く、それぞれ、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換あるいは縮環したアリール基、および置換あるいは縮環した複素環基よりなる群から選択される1種類の官能基であることを特徴とする請求項4記載の電解質組成物用原料キット。 - ヨウ素を含有する電解質と、ポリスルホン酸の4級アンモニウム塩及びポリカルボン酸の4級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種類のアンモニウム塩と、二価以上の金属のハロゲン化物とを含む混合物であることを特徴とする電解質組成物。
- 色素を保持したn型半導体電極と、対向電極と、前記n型半導体電極と前記対向電極の間に配置され、ヨウ素を含む電解質及びゲル化剤を含有するゲル電解質とを具備する光増感型太陽電池であって、
前記ゲル化剤は、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物が、カルシウムを除くアルカリ土類金属のイオン、ホウ素イオン、スカンジウムイオン、ケイ素イオン、リンイオン、アルミニウムイオンおよび遷移金属イオンよりなる群から選択される少なくとも1種類の金属イオンで架橋されたポリマーを含むことを特徴とする光増感型太陽電池。 - 前記遷移金属イオンには、Pb2 +、Zr4+、Mo3 +、Cr2 +、Sn2 +、Sn4+、Ge4+、Ga3 +、Ni2 +、Ti4+、Co2 + 、Zn2+、Cu2+、Ru3+、Pt4+、Mn2+、Os3+、Ir2+、Ir3+、Ir4+、Rh3+、Pd2+およびFe2+が含まれることを特徴とする請求項7記載の光増感型太陽電池。
- 2種類以上の原料を備え、前記2種類以上の原料を混合することによって電解質組成物を得る電解質組成物用原料キットであって、
前記2種類以上の原料は、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物を含む第1の原料と、カルシウムを除くアルカリ土類金属のハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Pのハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物および遷移金属イオンのハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属ハロゲン化物を含む第2の原料とを含むことを特徴とする電解質組成物用原料キット。 - ヨウ素を含有する電解質と、二つ以上の含窒素複素環基を有する化合物と、カルシウムを除くアルカリ土類金属のハロゲン化物、Bのハロゲン化物、Scのハロゲン化物、Siのハロゲン化物、Pのハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物及び遷移金属のハロゲン化物よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属ハロゲン化物とを含む混合物であることを特徴とする電解質組成物。
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