JP3977472B2 - 低熱膨張係数を有する高密度等方性黒鉛材の製造方法 - Google Patents

低熱膨張係数を有する高密度等方性黒鉛材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばチョクラルスキー(CZ)法を用いてシリコン単結晶を引き上げる工程で使用される黒鉛ルツボ材等の半導体製造用部材に適した、低熱膨張係数で高密度な等方性黒鉛材を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
等方性黒鉛材は、ピッチコークス微粉からなるフィラー原料にバインダーピッチを配合し、加熱しながら混練し、混練物を粉砕した原料粉を静水圧プレス(CIP)により等方的に成型し、得られた成型体を焼成炭化したのち黒鉛化処理をすることにより得ることができる。
【0003】
このようにして製造される等方性黒鉛材は、半導体製造用のルツボやヒーター、SiC被覆サセプター等の素材として有用されているが、これら製品の耐久寿命は黒鉛材質の特性に大きく依存しており、これまで材質的な検討がなされている。
【0004】
例えばチョクラルスキー(CZ)法を用いてシリコン単結晶を引き上げる工程で使用される黒鉛ルツボ材では、嵩密度、熱膨張係数、気孔径、ガス不透過度、電気比抵抗等の材質特性を限定したもの(特開平7−187878号公報、特公平5−77640号公報)が提案されている。これら特性のうち耐久寿命を延ばすには、消耗劣化を防止するために嵩密度が高く、SiC生成物との歪みを低減するために熱膨張係数をSiCのそれ以下に低く制御することが好ましい。
【0005】
等方性黒鉛材の熱膨張係数を制御する方法としては、原料となるモザイクコークスの組織サイズ及び粉砕粒径の最適化を行うこと(特公平5−80405号公報)が提案されている。また、熱膨張係数を低減する方法としては、良黒鉛化性の針状コークスを配合したフィラー原料を用いることが知られている。
【0006】
ところが単一のコークス原料系では、熱膨張係数と嵩密度を独立して制御することは困難であり、また単純にモザイクコークス粉に針状コークス粉を配合しただけでは、熱膨張係数は低下するものの、嵩密度が低下してしまい、製品向け部材としては耐久性に劣ることとなる。
【0007】
この問題を解決するために、易黒鉛化性の針状コークス微粉末と黒鉛化度合が進行した天然黒鉛微粉末を配合したフィラー原料(特開平7−165467号公報)を用いて、熱膨張係数の低下と共に緻密化を行うことが提案されている。
しかしながら、上記先行技術による発明で示されたような天然黒鉛微粉末の配合は、材質強度が低下し易く、また、原料価格の上昇を招くことから、工業的には不利である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、これまで黒鉛材の熱膨張係数を制御する製造方法としては、原料フィラー種の選択及びフィラー粒径の制御によりなされており、黒鉛材の熱膨張係数を決定する本質的な要因を制御することなくなされており、このことから熱膨張係数と嵩密度を、効果的かつ経済的に独立して制御することが困難であった。
【0009】
本発明の目的は、熱膨張係数が低く、同時に緻密性や材料強度に優れた高密度な等方性黒鉛材の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、等方性黒鉛材の熱膨張係数に影響する原因について鋭意研究した結果、黒鉛材の熱膨張係数と嵩密度の物性値を独立して制御するには、黒鉛組織を形成するフィラー原料のアスペクト比に着目して調製すればよいことを見い出した。
【0011】
一般に、黒鉛材の熱膨張係数については、炭素結晶の熱膨張を吸収することができる気孔の存在が影響する(改訂「炭素材料入門」第60頁、炭素材料学会)と考えられており、緻密な黒鉛組織の状態で熱膨張係数を低減するには、炭素結晶の熱膨張を吸収し得るに十分な最小限の気孔を形成させればよい。
【0012】
本発明では、炭素結晶の熱膨張を効率的に吸収可能な気孔は、アスペクト比が大きいフィラー粒子で囲まれて形成され、更にその内部の熱膨張の吸収に寄与していない部分を、アスペクト比が小さい小粒径のフィラー粒子で充填することにより、低い熱膨張係数を維持した状態で高密度化を達成したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、平均アスペクト比が3<a1≦8、及び粒径の範囲が10≦d1≦200μmのピッチコークス粉末(A)30〜60重量%と、平均アスペクト比がa2≦2、及び粒径の範囲がd2≦50μmであって、コークス粉末(A)により構成される空隙に入り込み、黒鉛組織の緻密化を促すためのピッチコークス粉末(B)70〜40重量%とを配合してフィラー原料とし、これをバインダーピッチと共に混練した後二次粉砕し、この二次粉末を静水圧プレスにより成型して、次いでこれを焼成炭化及び黒鉛化処理することにより、熱膨張係数4.0×10 -6 / ℃以下、嵩密度1.80 g/cm 3 を越す等方性黒鉛材を得ることを特徴とする低熱膨張係数を有する高密度等方性黒鉛材の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のフィラー原料は、石油系及び石炭系のピッチを原料として得られるピッチコークスを微粉砕したものである。粉砕後の粒子形状は、ピッチコークスを構成するモザイクあるいは流れ組織を構成する単位組織の大きさ及び粉砕粒径に応じて異なる。つまり、この単位組織が大きいほど、また粉砕粒径が大きいほど、粒子のアスペクト比は大きくなる。
【0015】
ここで、平均アスペクト比は、粉末をエポキシ樹脂中に分散させて研磨した面を適当な倍率で顕微鏡観察し、画像解析装置により検出した粒子と同一面積及び2次モーメントを持つ等価楕円形状に擬似粒子化処理し、短軸サイズに対する長軸サイズの比(長軸/短軸比)を全粒子で平均した値である。従って、平均アスペクト比の下限値は1である。
【0016】
また、粉末の粒径及び平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。この装置による粒径の測定原理はフランフォーファー回折によるものであり、粉末試料を水に分散させた懸濁液にレーザー光を照射したときに、粉末粒子によって散乱される散乱光をレンズで集光して得られる回折像を解析することで、各粒径とそれに対する含有率を測定することができる。従って、この装置で測定されるアスペクト比を有する粒子の粒径は、おおよそ長軸と短軸の平均的な値を示すと考えられる。
【0017】
等方性黒鉛材の熱膨張係数をSiCと同等あるいはそれ以下にするには、フィラー原料として平均アスペクト比が3<a1 ≦8のピッチコークス微粉末(A)(以下、粉末(A)と記す)を含有する必要がある。粉末(A)の平均アスペクト比a1 が3以下では熱膨張係数の低減を可能とする気孔組織の形成が困難となり、また、a1 が8を越えると、緻密な黒鉛組織が得られないと同時に、成型体が等方性を維持し難くなる。
【0018】
粉砕により上記平均アスペクト比を持つ粉末(A)を得るには、単位組織が20μmを越すモザイクあるいは流れ組織のピッチコークスを利用すればよく、単位組織が20μm以下のピッチコークスでは、平均アスペクト比を高位に制御することができない。
【0019】
粉末(A)の粒径の範囲は10≦d1 ≦200μmがよい。粒径d1 が200μmを越えると過大な気孔を形成して緻密な黒鉛組織を得ることができず、また、10μm未満の微粉末が存在すると、高アスペクト比のためそれ自身緻密にならない上に、その微粉末で形成される気孔は、低アスペクト比のピッチコークス粉末(B)(以下、粉末(B)と記す)が充填されるには小さ過ぎて高密度化が困難となる。粉砕後の粒度範囲が10≦d1 ≦200μmの範囲を満たさない場合は、必要に応じてふるい分けや分級操作を施せばよい。
【0020】
高密度な等方性黒鉛材を得るには、粉末(A)に平均アスペクト比がa2 ≦2の粉末(B)を配合する必要がある。低アスペクト比の粉末(B)は、高アスペクト比の粉末(A)で構成される比較的大きな空隙に入り込み、黒鉛組織の緻密化を促すことを目的に配合する。従って、粉末(B)の平均アスペクト比a2 が2を越えると、空隙内での緻密化が不十分となり、よって高密度な黒鉛材料が得られない。
【0021】
微粉砕により低位なアスペクト比を持つ粉末(B)を得るには、単位組織が20μm以下の微細な組織のピッチコークスを利用すればよく、単位組織が20μmを越すピッチコークスでは、平均アスペクト比を低位に制御することができない。
【0022】
粉末(B)の粒径の範囲はd2 ≦50μmがよい。粒径d2 が50μmを越えると、粉末(A)により構成される気孔に粉末(B)が入り込むことが困難となり、緻密な黒鉛組織を得ることができない。
【0023】
フィラー原料の組成は、高アスペクト比の粉末(A)30〜60重量%、低アスペクト比の粉末(B)70〜40重量%の配合比率とする。粉末(A)の配合比率が30重量%未満で、粉末(B)が70重量%を越すと、嵩密度は高くなるものの空隙が小さくなり過ぎ、熱膨張係数を低減することができない。また、粉末(A)の配合比率が60重量%を越え、粉末(B)が40重量%未満の配合比率では、熱膨張係数は小さくなるものの必要以上の空隙が形成され、嵩密度が低下して実用的な製品を得ることができない。熱膨張係数を更に低位に抑えて高密度な等方性黒鉛材料を得るには、高アスペクト比粉末(A)40〜50重量%、低アスペクト比粉末(B)60〜50重量%の配合比率とすることが好ましい。
【0024】
上記のフィラー原料は、バインダーピッチと共にニーディング装置で180〜280℃の加熱下3〜20時間の範囲で均一に熱混練することで焼結性が賦与される。ここでバインダーピッチは石油系あるいは石炭系のいずれでもよい。バインダーピッチの配合量は、フィラー原料100重量部に対して50〜100重量部の範囲である。バインダーピッチの配合量が50重量部未満では焼結性が低下して強度が不十分となり、100重量部を越えると焼成時に収縮割れや発泡割れを発生する。安定した焼結性を得るには、バインダーピッチの配合量は60〜70重量部が好ましい。
【0025】
フィラー原料とバインダーピッチの混練物は、粉砕装置により再粉砕されて二次粉末とする。この二次粉末の最大粒径は、フィラー原料を構成する高アスペクト比粉末(A)の最大粒径の1〜2倍にするのがよい。
二次粉砕を、粉末(A)の最大粒径の1倍未満のサイズに小さく粉砕すると、低アスペクト比の粉末(B)を高アスペクト比の粉末(A)で取り囲んだ構造を破壊するため、低熱膨張係数を達成することが困難となり、2倍を越えると成型時の充填性が悪くなり緻密な組織が得られなくなる。
【0026】
成型体は、二次粉末をラバーケースに詰めて静水圧プレス(CIP)により、0.5〜2t/cm2 の圧力で加圧して作られる。得られた成型体は、非酸化性雰囲気で1000℃まで熱処理して焼成炭化される。焼成体は常法により黒鉛化炉で2800〜3000℃の範囲で熱処理して黒鉛化される。
【0027】
高アスペクト比に制御されたフィラー原料は、炭素結晶の熱膨張を効率的に吸収可能な気孔を持った組織を形成して、熱膨張係数の小さな黒鉛材を得ることができる。しかしながら、この状態での気孔サイズは熱膨張の吸収に作用する以上に過大であるため、高密度な黒鉛材が得られない。そこでこの熱膨張の吸収に寄与していない気孔の内部部分を、アスペクト比が小さい小粒径のフィラー原料で充填することにより、緻密化を達成したものである。
【0028】
従って、高アスペクト比粉末と充填性が良い小粒径の低アスペクト比粉末を配合したフィラー原料の利用により、SiCの熱膨張係数以下の低い熱膨張係数を維持した状態で、高密度な等方性黒鉛材の製造が可能となる。
【0029】
本発明により製造される等方性黒鉛材は、熱膨張係数がSiCと同等かそれ以下のため、SiCに対する歪みの発生が低く、しかも高密度であることから耐久性に優れており、シリコン単結晶引上げ用黒鉛ルツボやSiC被覆サセプター等の半導体向け黒鉛部材として有用な特性を保有するものである。
【0030】
【実施例】
次いで、本発明を実施例により比較例と対比しながら具体的に説明する。
【0031】
実施例1
単位組織30μmの石炭系ピッチコークスをアトマイザー粉砕機により粉砕した後、分級機により投入量の30%の微粉を除去して得た、平均アスペクト比3.5、粒径の範囲が10≦d1 ≦120μmの粉末(A)60重量部と、単位組織10μmの石炭系ピッチコークスを粉砕して得た、平均アスペクト比1.2、粒径d2 ≦30μmの粉末(B)40重量部をフィラー原料とした。このとき粉末(A)と粉末(B)の平均粒径は、それぞれ22μmと5μmであった。
【0032】
各粉末の平均アスペクト比は、粉末をエポキシ樹脂中に分散させて研磨した表面について、光学的異方性組織解析装置〔日鉄テクノス(株)製〕により、275倍の倍率で観察される粉末粒子を等価楕円形状に擬似粒子化処理して、長軸と短軸のサイズ比を測定し平均した値である。また、粒径dはレーザー回折式粒度分布測定装置(CILAS社製)により測定して得た値である。
【0033】
このフィラー原料100重量部をバインダーピッチ80重量部と共にニーディング装置に投入し、200℃で加熱しながら15時間熱混練した。この混練物を冷却後、最大粒径200μmに再粉砕して成型用の二次粉末を得た。これをラバー容器に充填して静水圧プレス(CIP)により1t/cm2 の圧力で成型した。得られた成型体を焼成炉に詰めて非酸化性雰囲気下で1000℃まで焼成炭化処理し、更に黒鉛化炉に移して非酸化性雰囲気下で3000℃まで昇温加熱して黒鉛化処理した。
【0034】
実施例2
単位組織45μmの石炭系ピッチコークスを実施例1と同様にして粉砕分級して得た、平均アスペクト比4.8、粒径の範囲が14≦d1 ≦150μmの粉末(A)50重量部と、実施例1で用いた粉末(B)50重量部をフィラー原料とした。このとき粉末(A)の平均粒径は30μmであった。このフィラー原料を用いて実施例1と同一方法により黒鉛材を得た。
【0035】
実施例3
石炭系針状ピッチコークス(単位組織100μm以上)を実施例1と同様にして粉砕分級して得た、平均アスペクト比6.2、粒径の範囲が18≦d1 ≦180μmの粉末(A)40重量部と、実施例1で用いた粉末(B)60重量部をフィラー原料とした。このとき粉末(A)の平均粒径は40μmであった。このフィラー原料を用いて実施例1と同一方法により黒鉛材を得た。
【0036】
実施例4
石油系針状ピッチコークス(単位組織100μm以上)を実施例1と異なる回転速度で粉砕後、分級機により投入量の30%の微粉を除去して得た、平均アスペクト比8.0、粒径の範囲が20≦d1 ≦200μmの粉末(A)30重量部と、実施例1で用いた粉末(B)70重量部をフィラー原料とした。このとき粉末(A)の平均粒径は50μmであった。このフィラー原料を用いて実施例1と同一方法により黒鉛材を得た。
【0037】
実施例5
実施例4で用いた粉末(A)30重量部と、単位組織10μmの石炭系ピッチコークスを実施例1と異なる回転速度で粉砕して得た、平均アスペクト比2.0、粒径d2 ≦50μmの粉末(B)(平均粒径8μm)70重量部をフィラー原料とした以外は、実施例4と同一方法により黒鉛材を得た。
【0038】
比較例1
実施例1で用いた粉末(A)と粉末(B)の配合を、各々100重量部と0重量部とした以外は、実施例1と同一方法により黒鉛材を得た。
【0039】
比較例2
実施例1で用いた粉末(A)と粉末(B)の配合を、各々70重量部と30重量部とした以外は、実施例1と同一方法により黒鉛材を得た。
【0040】
比較例3
実施例4で用いた粉末(A)と粉末(B)の配合を、各々20重量部と80重量部とした以外は、実施例4と同一方法により黒鉛材を得た。
【0041】
比較例4
実施例4で用いた粉末(A)と粉末(B)の配合を、各々0重量部と100重量部とした以外は、実施例4と同一方法により黒鉛材を得た。
【0042】
比較例5
実施例4で用いた粉末(A)30重量部と、単位組織10μmの石炭系ピッチコークスを実施例1と異なる回転速度で粉砕して得た、平均アスペクト比2.1、粒径d2 ≦60μmの粉末(B)(平均粒径10μm)70重量部をフィラー原料とした以外は、実施例4と同一方法により黒鉛材を得た。
【0043】
比較例6
石油系針状ピッチコークス(単位組織100μm以上)を実施例1と異なる回転速度で粉砕後、分級機により投入量の40%の微粉を除去して得た、平均アスペクト比8.7、粒径の範囲が30≦d1 ≦220μmの粉末(A)(平均粒径60μm)30重量部と、実施例1で用いた粉末(B)70重量部をフィラー原料とし、混練物の二次粉末の最大粒径を250μmとした以外は、実施例4と同一方法により黒鉛材を得た。
【0044】
比較例7
単位組織30μmの石炭系ピッチコークスを粉砕後、分級機により投入量の15%の微粉を除去して得た、平均アスペクト比3.0、粒径の範囲が8≦d1 ≦100μmの粉末(A)(平均粒径15μm)30重量部と、実施例1で用いた粉末(B)70重量部をフィラー原料とした以外は、実施例1と同一方法により黒鉛材を得た。
【0045】
用いられたフィラー原料について表1にまとめた。また、得られた各等方性黒鉛材の物性値を測定して表2に示した。なお、熱膨張係数は、室温から500℃における平均熱膨張係数として測定された値である。
【0046】
【表1】
Figure 0003977472
【0047】
表2の結果より、実施例1〜5の本発明の範囲にある高アスペクト比の粉末(A)と低アスペクト比の粉末(B)を配合したフィラー原料では、得られた黒鉛材はいずれもSiCの熱膨張係数(4.0×10-6/℃)と同等かそれ以下の小さな熱膨張係数であり、同時に嵩密度1.80g/cm3 を越す緻密な黒鉛材が得られた。
【0048】
これに対し、フィラー原料組成について、高アスペクト比粉末(A)が60重量%を越す比較例2では気孔率が高く嵩密度が低く、また低アスペクト比粉末(B)が70重量%を越す比較例3では熱膨張係数が大きくなり、小さな熱膨張係数と高密度な特性を同時に満たすことはできなかった。更に、粉末(A)と粉末(B)を単独で使用した比較例1、4でも同様であった。
【0049】
粉末(B)のアスペクト比が2を越す比較例5や、粉末(A)のアスペクト比が8を越す比較例6では気孔の緻密化が十分でないために嵩密度が低く、また粉末(A)のアスペクト比が3以下の比較例7では、熱膨張を効率的に吸収する気孔がないために熱膨張係数が高かった。
【0050】
【表2】
Figure 0003977472
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、アスペクト比と粒度範囲を制御した2種類のフィラー原料を、特定範囲の比率で配合した組成とすることにより、高密度な特性を維持して、しかも低水準の熱膨張係数を兼ね備えた等方性黒鉛材を製造することができる。従って、これらの特性が要求されるシリコン単結晶引上げ用黒鉛ルツボやSiC被覆用サセプター基材等の半導体用部材向けの黒鉛材を製造する技術として、工業上極めて顕著な効果を発現する。

Claims (1)

  1. 平均アスペクト比が3<a1≦8、及び粒径の範囲が10≦d1≦200μmのピッチコークス粉末(A)30〜60重量%と、平均アスペクト比がa2≦2、及び粒径の範囲がd2≦50μmであって、コークス粉末(A)により構成される空隙に入り込み、黒鉛組織の緻密化を促すためのピッチコークス粉末(B)70〜40重量%とを配合してフィラー原料とし、これをバインダーピッチと共に混練した後二次粉砕し、この二次粉末を静水圧プレスにより成型して、次いでこれを焼成炭化及び黒鉛化処理することにより、熱膨張係数4.0×10 -6 / ℃以下、嵩密度1.80 g/cm 3 を越す等方性黒鉛材を得ることを特徴とする低熱膨張係数を有する高密度等方性黒鉛材の製造方法。
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