JP3977248B2 - 切削工具 - Google Patents

Description

【０００１】
本発明は、特に回転工具として形成した切削工具に関する。この工具は、穴開き板の形に形成した切削挿入物、特に穴開き反転板のホルダとしての工具軸と、工具軸上で穴開き板を位置決めする調整手段としての穴開き板に穴中心線に対し直角に変位方向に作用する変位調整装置とを備える。穴開き板、特に穴開き反転板を固定するため、一層単純なねじ締付け固定が実施されている。その際、工具軸に穴開き板を固定すべくねじボルトが使われる。工具軸上での穴開き板の精確な位置決めは、穴開き板の横側当接面に作用しねじ穴と取付けねじボルトの頭部との位置をずれさせる調整手段で行われる。かかる手段は、例えば独国特許出願公開第１９７１７７４１号明細書で公知である。
【０００２】
工具本体から工具軸上の穴開き板の穴中心線に対しほぼ直角に横に変位調整できるそのような固定は、確かに安価に実現できる。しかし調整時にねじボルトが過負荷されないよう、当接面とねじ穴との間の公差は小さな限界内に維持せねばならない。他方、穴開き板幅の公差と工具軸の板座における載置面の位置が、切削工具の加工公差を制限し、それは中ぐり板工具では穴公差である。
【０００３】
切削技術の開発は、常に小さな穴公差の維持を必要とする。それについての開発は、穴開き板の有利なねじボルト応力と狭い範囲で組み合わせてしか実施できない。つまり、変位調整距離が増大すればするほど、ねじボルトは大きく曲げ荷重される。この曲げ荷重は、工具、ワークおよび機械を損傷するほかに、作業員がけがをする安全上の危険がある。その解決策として、欧州特許第０５５２７７４号明細書に、工具軸において任意の変位調整距離を有する穴開き板のスライダ状ホルダが記載されている。この方式は穴開き板座の下部構造を弱め、穴開き板の締付け時にその下部構造を変形させる。
【０００４】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の切削工具を、変位調整距離が大きいときもねじ継手の過負荷を防止すべく改良することにある。この課題は、請求項１に記載の手段により解決される。この解決策は、工具軸に直接設けた雌ねじの代わりに、或いは移動可能に案内される雌ねじのスライダ状ホルダの代わりに、工具軸上で、板座の下側でいわば浮動支持された控えナットで作動する。ナットとねじボルトとから成るユニットが全体としてねじ継手を形成し、本発明に基づきそのユニットを浮動支持することで、板穴中心線と工具軸の通し穴の中心線に対し、ねじボルト中心線の位置と方向を自動整合できる。部分的な揺動および／又は回転をも可能にする変位調整運動は、例えばその方向をも変更可能なねじボルト中心線と、これに対し直角に向いた変位方向で規定された平面内で行われる。
【０００５】
本発明の発展形態では、控えホルダ（控えナット）を変位方向および／又はその逆方向に弾力的に支持する。調整可能な横側当接面が穴開き板の方向に移動する際、控えナットはばね圧に抗し変位調整運動を追従する。この結果、変位調整運動に基づくねじボルトの追加的な曲げ荷重を防げる。従って当接面の復帰や穴開き板の交換時、控えナットの初期位置への自動的な復帰や戻り揺動が起る。
【０００６】
以下図に示した実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【０００７】
中ぐり盤工具（図３）は、主に工具軸１と、該軸１に締付け固定された硬質合金や酸化セラミックス製の穴開き板３とを備える。穴開き板３は、工具軸１の凹所２に設けられた板座４の内部に支えられている（図１参照）。板座４は、穴開き板３を精確に位置決めすべく載置面５と２つの横側当接面６、７とを備える。その際、工具軸１の回転中心線８に対し、一方の横側当接面６はほぼ垂直に延び、他方の横側当接面７はほぼ平行に延びている。
【０００８】
回転中心線８に対し略平行に延びる横側当接面７は、工具軸１に対し変位方向９に変位調整できる。その変位方向９は、工具軸１の回転中心線８および穴開き板３の穴中心線１０に対しほぼ垂直に延びている。この変位調整により、主として板座４の内部での穴開き板３の半径方向位置が決められる。
【０００９】
穴開き板３の横側当接面７に関する変位方向９での位置変更は、変位調整装置１１により行う。この装置１１の構造と機能は、独国特許出願公開第１９７１７７４１号明細書に記載の装置にほぼ相当する。ここでは、不必要な説明を回避するため、上記独国特許出願公開明細書の開示内容を参照されたい。本発明の理解には、変位調整装置１１の機能を簡単に説明するだけで足りる。
【００１０】
変位調整装置１１の主な機能部品は、上端に円錐状調整頭部１２を備えたねじ込み軸ピン１３である。該ピン１３は、その円錐状調整頭部１２で工具軸１にねじ込まれる。そのねじ込み中に、円錐状調整頭部１２が変位調整装置１１の調整片１４を変位方向９に押し出す。調整片１４の円錐状調整頭部１２と反対側の側面は、変位調整装置１１の調整可能な横側当接面７を形成する。即ち、変位調整装置１１へのねじ込み軸ピン１３のねじ込みは、調整片１４をその横側当接面７と共に、穴開き軸ピン３に向けて変位方向９に移動させる。
【００１１】
穴開き板３の板座４内部での固定、即ち板座４の載置面５に向けての締付け方向１５における穴開き板３の締付けは、特別なねじ継手で行う。この継手は、ねじボルト１７と、このボルト１７がねじ込まれる控えナット１８とから成る。ねじボルト１７は、穴開き板３の穴１９と工具軸１の通し穴２２を貫通する。ねじボルト１７のねじ２０を、控えナット１８の雌ねじ２１にねじ込む。控えナット１８は、その頭部２４が通し穴２２の下側に位置している。
【００１２】
穴開き板３を板座４の載置面５上に置いた際、ねじボルト１７はその頭部２３で穴開き板３を締付け方向１５に締付ける。その際、ねじボルト１７を控えナット１８にねじ込み、頭部２４を、工具軸１の板座４と反対側面に、ねじ込み圧と逆方向、即ちねじボルト１７の締付け方向１５と逆向に締付ける。控えナット１８は工具軸１に対しねじボルト中心線３８を中心に回転不能に保持する。控えナット１８は工具軸１の通し穴２２に隙間ばめで置かれている。該隙間ばめは、特に変位方向９と逆方向とに有効である。その結果、控えナット１８は工具軸１の通し穴２２内で、穴中心線１０ならびに通し穴中心線２５に対し直角に、穴開き板３の変位方向９及びそれと逆方向に移動可能に案内されている。
【００１３】
控えナット１８のねじ軸部２６は、直径線上で対向する両側位置に、互いに平行に延びる両側面２７、２８の形で、互いに平行な２つの揺動ガイドを持つ。工具軸通し穴２２の外壁範囲に、控えナット１８の両側面２７、２８に対し平行に延びる揺動ガイド平面２９、３０があり、該平面２９、３０は、好適には通し穴２２の中心線１０に対し平行に延びる。控えナット１８の両側面２７、２８は、それらに対応した工具軸通し穴２２の揺動ガイド平面２９、３０に接する。
【００１４】
ねじボルト頭部２３は、例えば締付け方向１５に先細の円錐形をなす。この頭部２３はその締付け方向１５に先細の円錐状外周面を形成する頭部側面３１で、同様に締付け方向１５にその内径が徐々に狭まる板穴１９の内側壁３２に押付けられる。その際、それらの互いに接触する接触面の少なくとも一方、即ち頭部側面３１の円錐状外周面および／又は締付け方向１５にその内径が徐々に狭まる穴開き板穴１９の内側壁３２の表面が球面状、即ち僅かに凸面状に形成されている。これは、変位調整装置１１の変位方向９およびねじボルト中心線３８で規定された揺動運動平面内でのねじ継手１７、１８の浮遊揺動可動性を特に助長する。またその揺動運動平面は、その両側が、工具軸１の通し穴２２の両側揺動ガイド平面２９、３０により挟まれている。
【００１５】
控えナット１８の頭部２４は、その環状側面３４が、直径線上で対向して位置し軸方向ストッパとして工具軸１の通し穴２２内に半径方向に突出する両側の接触支持突起３５に、締付け方向１５と逆向きの接触支持方向３３に向いて下から押付けられる（図２）。控えナット１８の環状側面３４は、ねじボルト１７の締付け方向１５と逆向きの控えナット１８の接触支持方向３３に先細になっている。控えナット１８の環状側面３４は、略円錐状外周面を形成する。少なくとも控えナット１８の環状側面３４又は接触支持突起３５の対向側面３６は、球面又は凸面状に形成されている。
【００１６】
少なくとも一方では、ねじボルト頭部２３と穴開き板３の穴内側壁３２との相互接触面および／又は他方では、控えナット１８の頭部２４と、この頭部２４で締付けられる工具軸１の通し穴２２の接触支持突起２５との相互の接触面の球面状形成は、ねじ継手（ねじボルト１７と控えナット１８）の工具軸１に対する相応した揺動および／又は回転で、そのねじ継手の自動位置整合を助長する。その結果、ねじボルト１７によって加えられる曲げ荷重は十分に回避される。
【００１７】
図５ａは、一方でねじ継手としてのねじボルト１７および控えナット１８と、他方ではボルト１７と工具軸１、即ちその接触支持突起３５との間の応力状態を示す。互いに締付けたこれら部品の共同作用の原理は、特に図４と５から明らかである。穴開き板応力の初期状態では、一方でねじ継手（ねじボルト１７と控えナット１８）と、他方で接触支持突起３５との間のバイアスは、応力ベクトルＬ₀に相当する（図４、５ａ）。変位調整装置１１の調整片１４で変位方向９に加わる調整力は、ねじ継手（ねじボルト１７）のねじボルト中心線３８を、板穴中心線１０に対し角度αだけ揺動させる（図５参照）。このため、接触支持突起３５に対するねじ継手（ねじボルト１７、控えナット１８）のバイアスが増す。該バイアスは、応力ベクトルＬ₁に相当する（図５ａ）。ねじボルト中心線３８の下端の変位調整運動と変位調整距離を、図５ａに位置決めベクトルΔｓで示す。
【００１８】
変位調整運動を単純化する要素は、環状段部（接触支持突起３５）上に位置し控えナット１８に固定された弾性素子３７である。該素子３７は変位方向９および／又は逆方向に圧縮・弛緩する。弾性素子３７はゴム状成形体、即ちゴム弾性成形体であり、２つの半ドーナツ状リングセグメントの形をなし、控えナット１８のねじ軸部２６の両側面２７、２８を除いた範囲を環状に包囲している。
【００１９】
これら両セグメント３７は、組立位置で環状段部３５のナット頭部２４と反対側に置くことで、工具軸１に対する控えナット１８の脱落防止体を形成する。
【００２０】
工具軸１に穴開き板３を固定するため、まず穴開き板３を板座４上に置き、ねじボルト１７と控えナット１８とから成るねじ継手で、工具軸１に固定する。その際、ねじボルト１７の頭部２３を板穴１９内に置き、ねじ２０を有するねじ軸部を工具軸１の通し穴２２に通す。そのねじ２０を、下から工具軸１の通し穴２２内で、接触支持突起３５に対し間隔を隔てて突出する控えナット１８の雌ねじ２１に、穴開き板３を板座４に少なくとも僅かな摩擦結合で締付けるまでねじ込む（図４）。その場合、変位方向９での穴開き板３の最終的な位置決めは、工具軸１への軸ピン１３のねじ込みで行う。その際、軸ピン１３の調整円錐状頭部１２が、穴開き板３の隣接する自由面に接する調整片１４を変位方向９に変位させる（図５）。その時点では、穴開き板３をまだ最終的に締付けておらず、ねじボルト頭部２３とナット頭部２４が僅かな摩擦結合で接するだけなので、その変位調整運動は妨げられない。ねじボルト１７と控えナット１８からなるユニットは、控えナット１８の対向側面３４と接触支持突起３５の対向側面３６の球面形状により、穴開き板３の穴内側面３２とねじボルト頭部２３の外側面３１の球面と共同して、工具軸１における摩擦結合終端位置に殆ど支障なく、即ちいわば浮遊して揺動できる。これは、締付けたねじ継手１７、１８の変位方向９の揺動性により可能となるか助長される。最終的なねじ結合は、変位調整の完了後に行う。
【図面の簡単な説明】
【図１】 切削工具に対する板座付き工具軸の分解斜視図。
【図２】 ねじボルトに対する控えナットの斜視図。
【図３】 本発明に基づいて固定された穴開き板を備えた中ぐり盤工具の正面斜視図。
【図４】 穴開き板に穴中心線に対して直角に調整力が作用していない状態の図３におけるＩＶ−ＩＶ線に沿った断面図。
【図５】 穴開き板が変位方向に変位調整が行われた後の図４に相当した図。図５ａは、ねじボルトおよびこれと共働する控えナットの異なった調整位置における応力状態を示したベクトル図。
【図６】 穴開き板とねじボルトが外され、通し穴の下側に控えナットが置かれている工具本体の板座の図４における矢印ＶＩの方向から見た平面図。
【図７】 図５に類似して工具軸凹所に穴開き板が置かれ締付けられた図６におけるＶＩＩ−ＶＩＩ線に沿った断面図。
【符号の説明】
１ 工具軸、３ 穴開き板、４ 板座、９ 変位方向、１０ ねじボルト中心線、１１ 変位調整装置、１５ ねじ込み圧力、１７ ねじボルト、１８ 控えナット、１９ 板穴、２０ ねじ、２１ ナット雌ねじ、２２ 通し穴、２３ ねじボルト頭部、２４ ナット頭部、２７、２８ 側面、２９、３０ 揺動ガイド平面、３１、３４、３６ 側面、３３ 接触支持方向、３５ 接触支持突起（環状段部）、３７ 弾性素子

Claims (13)

1. 穴開き板（３）として形成された切削挿入物のホルダとしての工具軸（１）と、工具軸（１）において穴開き板（３）を位置決めする調整手段としての穴開き板（３）に穴中心線（１０）に対して直角に変位方向（９）に作用する変位調整装置（１１）と、穴開き板（３）の穴（１９）を貫通して延びるねじボルト（１７）とを備え、このねじボルト（１７）の頭部（２３）が、穴開き板（３）を工具軸（１）における載置面（５）に締付け固定し、ねじボルト（１７）のねじ部（２０）が、工具軸（１）の通し穴（２２）を貫通して控えナット（１８）の雌ねじ（２１）にねじ込まれ、この控えナット（１８）が、ねじボルト中心線（１０）を中心として回転不能に、工具軸（１）の穴開き板座（４）と反対側面にねじ込み圧（１５）に抗して支持され、一方ではねじボルト頭部（２３）と穴開き板（３）との相互接触面および他方では控えナット（１８）と工具軸（１）との相互接触面が、その形状に伴い、変位調整運動に追従する可動性を与えていることを特徴とする切削工具。
2. ねじボルト（１７）と控えナット（１８）で形成されたねじ継手が、変位調整装置（１１）の変位方向（９）とねじボルト中心線（１０）で規定された揺動運動平面内で揺動可能であることを特徴とする請求項１記載の工具。
3. ねじボルト頭部（２３）が、ねじ込み方向（１５）に先細の外側面（３１）を、ねじ込み方向（１５）に内径が徐々に狭まる穴開き板穴（１９）の内側壁に押付けられ、その接触面（側面３１、板穴１９の内側壁）の少なくとも片側が球面状に形成されたことを特徴とする請求項１又は２記載の工具。
4. 控えナット（１８）の頭部（２４）が、雌ねじ（２１）のねじ込み方向（３３）に先細の外側面（３４）で、工具軸（１）の通し穴（２２）の環状段部（３５）に押付けられ、その少なくとも片側の接触面（３４、３６）が球面状に形成されたことを特徴とする請求項１から３の１つに記載の工具。
5. 控えナット（１８）が、工具軸（１）の通し穴（２２）に隙間ばめで、窪ませて置かれたことを特徴とする請求項１から４の１つに記載の工具。
6. 控えナット（１８）が、工具軸（１）の通し穴（２２）に、その締付け方向（３３）に対して直角に、或いは穴開き板（３）の変位方向（９）およびその逆方向に移動可能に支持されたことを特徴とする請求項１から５の１つに記載の工具。
7. ねじボルト中心線（１０）に対し平行な少なくとも１つの平らな控えナット（１８）の側面（２７、２８）が、通し穴（２２）の内側壁部を形成する揺動ガイド平面（２９、３０）に接することを特徴とする請求項６記載の工具。
8. 通し穴（２２）の中に半径方向に突出する接触支持突起（３５）の、控えナット（１８）の頭部（２４）に接する対向側面（３６）が、控えナット（１８）の雌ねじ（２１）の接触支持方向（３３）において、通し穴（２２）の中心線および穴開き板穴中心線（１０）に対し傾斜していることを特徴とする請求項４記載の工具。
9. 控えナット（１８）を変位調整装置（１１）の変位方向（９）および／又はその逆方向に押付ける弾性素子（３７）を備えることを特徴とする請求項１から８の１つに記載の工具。
10. 弾性素子（３７）の控えナット（１８）の頭部（２４）と反対側端が、工具軸（１）の通し穴（２２）の内側壁で支持されたことを特徴とする請求項９記載の工具。
11. 弾性素子（３７）がゴム状成形体であることを特徴とする請求項９又は１０記載の工具。
12. 弾性素子（３７）が、被せられたリング或いはリングセグメントの形で控えナット（１８）に固定されたことを特徴とする請求項９から１１の１つに記載の工具。
13. 弾性素子（３７）が、工具軸（１）の通し穴（２２）内で接触支持突起（３５）の控えナット（１８）の頭部（２４）と反対側に置かれたことを特徴とする請求項９から１２の１つに記載の工具。

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